【解決手段】内部に空間を有する箱体6と、箱体6内に配置され当該箱体6内に少なくとも一つの容器収容領域を形成する内部保持部材7と、各容器収容領域7内に配置される少なくとも一つの試薬容器とを備えた試薬セット1。内部保持部材7は、複数の側面部30a,30b,30c,30dと、側面部30a,30cからそれぞれ延設され、複数の側面部により形成される開口を覆うことが可能な一対の天板部31a,31cと、を有している。一対の天板部31a,31cのそれぞれには、端部に試薬容器の口部を位置決めするための切り欠き部が形成されており、複数の側面部により形成される開口が一対の天板部31a,31cで覆われることにより、容器収容領域内に配置された試薬容器の口部が切り欠き部によって位置決めされる。
少なくとも一つの試薬容器を含む複数の容器を備えており、当該複数の容器が、それぞれ容器収容領域内に配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬セット。
前記一対の天板部には、当該天板部が試薬容器の口部を位置決めしている状態において、前記対向する側面部に当接可能な位置に谷折部がそれぞれ形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試薬セット。
前記天板部には、前記対向する側面部から離れた位置に山折部および谷折部が、側面部から離れる方向にこの順で形成されており、当該天板部が試薬容器の口部を位置決めしている状態において、前記山折部に外力を加えることにより前記側面部に当接可能な位置に谷折部が形成されるように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試薬セット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の試薬セット及び試薬容器梱包箱の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
〔試薬セットの全体構成〕
まず試薬セットの全体構成について説明する。
【0014】
図1および
図2に示されるように、本実施形態に係る試薬セット1は、試薬容器である希釈液容器4と、この希釈液容器4を収容する試薬容器梱包箱5とで主に構成されている。試薬容器梱包箱5は、箱体6と、内部保持部材7とを備えている。試薬セット1は、希釈液容器4及び試薬容器梱包箱5以外に、廃液容器8及び3つのボトル状の収容容器9、10、11を備えている。試薬セット1は、
図1に示されるように、箱体6の蓋部が切り取られた状態で、血液を分析する検体分析装置2(本実施形態では、血液中の血球を計数する血球計数装置)に試薬取出部材3を介して接続される。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0015】
なお、本明細書において「容器」とは、試薬を収容する試薬容器だけでなく、検体分析装置に用いられる試薬以外の各種の液体を収容する容器、及び、検体分析装置から排出される液体を収容する廃液容器8などの容器を含む概念である。したがって、「容器収容領域」には、試薬容器だけでなく廃液容器など他の容器が収容されることもある。
【0016】
[箱体]
図1、
図2、
図6に示されるように、箱体6は、4つの側面部20a、20b、20c、20dと、底部21と、蓋部22とを備えた直方体形状を呈しており、希釈液容器4などを収容するための空間を内部に有している。側面部20a及び側面部20cは、それぞれ矢印Y2方向側及び矢印Y1方向側に形成されており、側面部20b及び側面部20dは、それぞれ矢印X2方向側及び矢印X1方向側に形成されている。ここで、矢印Y2及び矢印Y1は、箱体6の短手方向(
図1中Y方向)に延びる矢印であり、矢印X2及び矢印X1は、箱体6の長手方向(
図1中X方向)に延びる矢印である。側面部20b及び側面部20dの略中央部には、箱体6を持ち運びする際に用いる取手を形成するための取手形成部23が形成されている。取手形成部23は長円形状を呈しており、その下端の中央部にはユーザが指で押し込むことで半円形状の開口を容易に形成することができる切取片24が形成されている。取手形成部23の周縁の一部(
図3において実線でC字状に示されている部分)には、切取部が形成されており、当該切取片24を箱体6の内部側に押し込んで、取手形成部23を指でつまみ、ついで当該取手形成部23を、その上端を支点として外側に拡げることで取手部25を形成することができる。また、側面部20b及び側面部20dの上部中央部には、後述する開封手段(箱体6の蓋部22を切り取って当該箱体6を開封するための手段)の一部を構成するつまみ部26が形成されている。
【0017】
蓋部22は、一方の対向する側面部20a、20cからそれぞれ延設された一対の第1蓋部片22a、22cと、他方の対向する側面部20b、20dからそれぞれ延設された一対の第2蓋部片22b、22dとで構成されている。これら4つの蓋部片により箱体6の上部開口を閉じることができる。上部開口は、4つの蓋部片が開かないように、接着テープや接着剤などを用いて閉じた状態を保つことができる。
【0018】
底部21も、図示しないが、蓋部22と同様、一方の対向する側面部20a、20cからそれぞれ延設された一対の第1底部片と、他方の対向する側面部20b、20dからそれぞれ延設された一対の第2底部片とで構成されている。これら4つの底部片により箱体6の下部開口を閉じることができる。下部開口も、4つの底部片が開かないように、接着テープや接着剤などを用いて閉じた状態を保つことができる。蓋部22の構成を、内側に折りたたまれた第2蓋部片22b、22dを第1蓋部片22a、22cが覆う構成とするとともに、底部21の構成も同様に内側に折りたたまれた第2底部片を第1底部片が覆う構成とすることで、箱体6の強度を向上させることができる。
【0019】
箱体6は、例えば段ボールを用いた一般的な製法により作製することができる。段ボールを用いる場合、その厚さは、本発明において特に限定されるものではないが、通常、3〜10mm程度である。また、箱体6の各種寸法(高さ、幅、奥行き)は、収容予定の容器の寸法に応じて適宜選定することができるが、例えば、
図3におけるX方向の寸法を約400mmとし、Y方向の寸法を約200mmとし、Z方向の寸法を約250mmとすることができる。
【0020】
[容器]
本実施形態に係る試薬セット1では、箱体6内に希釈液容器4、廃液容器8、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11が収容されている。試薬セット1の使用時には、これらの容器は箱体6から取り出されることなく所定場所に配置された状態で使用される。
【0021】
<希釈液容器、廃液容器>
希釈液容器4及び廃液容器8は、
図2及び
図8に示されるように、略同一の容器からなり、いずれも略立方体形状を呈している。希釈液容器4は、希釈液が収容される本体部4aと、本体部4aの上面(矢印Z2方向側の面)に形成された突起部4bとを有している。一方、廃液容器8は、廃液が回収される本体部8aと、本体部8aの上面(矢印Z2方向側の面)に形成された突起部8bとを有している。希釈液容器4の本体部4a及び廃液容器8の本体部8aは、その形状を多少変化させることができる程度の柔軟性を有する合成樹脂で作製されている。したがって、両本体部4a、8aは、しぼんで折りたたまれた形態と、膨らんで略立方体形状を呈する形態とをとることができる。
図6に示されるように、両本体部4a、8aの底部(矢印Z1方向側)は、箱体4の底部21の内側面(底面)21aで支持されている。すなわち、希釈液容器4及び廃液容器8は、略同じ高さで箱体6内に配置されている。
【0022】
図8に示されるように、希釈液容器4の突起部4bは、本体部4aの上面との境界に位置する境界部分4cと、境界部分4cの上部に形成された筒状の口部4eと、口部4eの下端部(境界部分4c側)に形成された鍔状の係止部4dとを有している。同様に、廃液容器8の突起部8bは、本体部8aの上面との境界に位置する境界部分8cと、境界部分8cの上部に形成された筒状の口部8eと、口部8eの下端部(境界部分8c側)に形成された鍔状の係止部8dとを有している。本実施形態において、境界部分4c及び8cは、可撓性を有しており、ユーザにより上方(矢印Z2方向側)に伸ばされることによって、上方に若干突出できるように構成されている。係止部4d及び8dは、それぞれ後述する内部保持部材7の切り欠き部31a6及び31c4に係止するように構成されている。係止部4d及び8dの形状や寸法は、本発明において特に限定されるものではないが、本実施形態では、直径が約60mm、厚さが約2mmのつば状ないしフランジ状に形成されている。
【0023】
口部4e及び8eは、上方から見て、それぞれ突起部4b及び8bの略中心に形成されている。試薬セット1の使用前及び使用後においては、口部4e及び8eは、それぞれキャップ4f及び8fが螺合されることにより密封されている。
【0024】
図6に示されるように、試薬セット1の使用前の状態において、希釈液容器4には希釈液が収容され、口部4eがキャップ4fにより密封されている。また、試薬セット1の使用前の状態において、廃液容器8の本体部8aには気体(
図6において斜線で示す)が封入された状態で口部8eがキャップ8fにより密封されている。この封入された気体によって、廃液容器8が略立方体形状を保持できるように構成されている。なお、廃液容器8の本体部8aの破裂防止のため、廃液容器8の本体部8aを完全に膨張させる程度にまでは気体は封入されていない。また、本実施形態では、気体として空気を封入しているが、窒素ガスなど他の気体を封入してもよい。
【0025】
口部4e及び8eには、それぞれ、試薬取出部材3の試薬吸引管3f及び廃液吐出管3g(
図7参照)が挿入されるように構成されている。希釈液容器4の口部4eは、本体部4aに収容された希釈液が、試薬取出部3d及びチューブ15dを介して、検体分析装置2によって取り出されることができるように構成されている。廃液容器8の口部8eは、検体分析装置2からチューブ15e及び廃液吐出部3eを介して廃液が流れ込むことができるように構成されている。口部8eはまた、本体部8aに廃液が収容された際に、当該廃液を外部に排出するための排出口をしても用いることができるように構成されている。
【0026】
希釈液容器4は、箱体6の内部のX方向の略中央部に配置されており、廃液容器8は、箱体6の内部の矢印X2方向側に配置されている。これにより、希釈液容器4は、矢印X1方向側に配置された内部保持部材7の後述する支持部33と矢印X2方向側に配置された廃液容器8とにより、X方向に挟まれるように配置されている。
【0027】
<溶血剤収容容器、染色剤収容容器>
溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11は、
図9に示されるように、いずれも同一のボトル形状を呈しており、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの硬質の合成樹脂で作製されている。溶血剤収容容器9はヘモグロビン測定用の溶血剤を試薬として収容し、溶血剤収容容器10は白血球分類測定用の溶血剤を試薬として収容し、染色剤収容容器11は網状赤血球測定用の染色剤を試薬として収容している。溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11の内容積は、本発明において特に限定されるものではなく、分析装置の規模などに応じて適宜選定することができる。本実施形態では、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11は、それぞれ約250mLの液体を収容できるように構成されている。
【0028】
図2に示されるように、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11は、矢印Y1方向側から矢印Y2方向側に向かって順次配置されている。各収容容器を区別し易くするために、溶血剤収容容器9の側面には青色の識別標識9aが設けられており、溶血剤収容容器10の側面には緑色の識別標識10aが設けられており、染色剤収容容器11の側面には赤色の識別標識11aが設けられている。
【0029】
図9に示されるように、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11の上部には、それぞれ、口部9b、10b及び11bが形成されている。口部9b、10b及び11bには、それぞれ、
図7に示される試薬取出部材3の試薬吸引管3f,3g,3hが挿入されるように構成されている。これにより、
図1に示されるように、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11に収容される試薬は、それぞれ、試薬取出部材3の試薬取出部3a、3b及び3cと、チューブ15a、15b及び15cとを介して、検体分析装置2によって取り出されることができるように構成されている。試薬セット1の使用前及び使用後においては、
図9に示されるように、口部9b、10b及び11bは、それぞれ、キャップ9c、10c及び11cが螺合されることにより密封されている。
溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11は、内部保持部材7の後述する支持部33の上に配置されている。
【0030】
[内部保持部材]
内部保持部材7は箱体6内に配置され、当該箱体6内に少なくとも一つ(本実施形態では2つ)の容器を配置するための容器収容領域を形成する。内部保持部材7は、箱体6内に収容される前述した各種容器の位置決めを行なうための部材である。内部保持部材7は、
図2および
図10に示されるように、4つの側面部30a、30b、30c、30dと、これら4つの側面部30a、30b、30c、30dのうちの対向する側面部30a、30c(矢印Y2方向側の側面部と矢印Y1方向側の側面部)からそれぞれ延設され、側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口を覆うことが可能な一対の天板部31a、31cと、を備えている。内部保持部材7はさらに、箱体6の内部に形成される容器収容領域を2つの領域に区切るための仕切り部32と、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11を箱体6内の所定位置に載置するための支持部33とを備えている。
【0031】
内部保持部材7は、
図11に示されるような一枚の段ボールから作製されており、当該段ボールに対して切断、折り曲げ、及び接着の各処理を施すことにより作製することができる。このように一枚の段ボールで作製することで、例えば仕切り部32や支持部33を別体で作製する場合に比べて部品点数を減らすことができ、試薬セットの組み立て工程を簡素化することができる。
【0032】
再び
図10を参照して、矢印Y1方向側の天板部31cは、側面部30c側に位置する基部31c1と、当該基部31c1を挟んで側面部30cの反対側に位置する端部31c2とを有している。天板部31cの端部31c2のX方向の中央部は台形状に先端側に突出している。一方、矢印Y2方向側の天板部31aは、側面部30a側に位置する基部31a1と、基部31a1に対して側面部30aの反対側に位置する中間部31a2と、中間部31a2に対して基部31a1の反対側に位置する端部31a3とを有している。すなわち、天板部31aでは、基部31a1と端部31a3との間に中間部31a2が形成されている。
【0033】
天板部31cの基部31c1と端部31c2との境界には、容易に折り曲げることができる折曲部b3が形成されている。本実施形態において、折曲部b3には、破線状の切り込みが形成されている。天板部31aの基部31a1と中間部31a2との境界、及び中間部31a2と端部31a3との境界にも、容易に折り曲げることができる折曲部b1、b2がそれぞれ形成されている。本実施形態では、折曲部b1、b2には、破線状の切り込みが形成されている。この切り込みは、天板部31a、31cの厚さ方向を貫通する切り込みであってもよいし、天板部31a、31cの片面だけに形成される深さの切り込みであってもよい。天板部31aの折曲部b1の中央付近には半円形状の開口31a4が形成されている。閉じられた状態の天板部31を開ける際に、この開口31a4内に指を挿入し、当該開口31a4の周縁部を摘んで軽く持ち上げることにより、谷折り状態にある基部31a1と中間部31a2との境界を山折り状態にすることができる。ついで、希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eを位置決めしている後述する切り欠き部31a6及び31c4を側面部30a側に移動させることで、簡単に切り欠き部31a6及び31c4と口部4e,8eとの係合を解放させることができる。
【0034】
天板部31aの端部31a3の先端側の縁部31a5には、容器収容領域内に配置された希釈液容器4の口部4e及び廃液容器8の口部8eを位置決めするための位置決め部である半円状の切り欠き部31a6が形成されている。天板部31cの端部31c2の先端側の縁部31c3にも、同じく容器収容領域内に配置された希釈液容器4の口部4e及び廃液容器8の口部8eを位置決めするための位置決め部である半円状の切り欠き部31c4が形成されている。天板部31a、31cを閉じることによって側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口を覆うことにより、これら切り欠き部31a6及び31c4により、希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eを両側から挟んで固定することができる。その結果、希釈液容器4及び廃液容器8を安定して固定することができる。切り欠き部31a6及び切り欠き部31c4は、容器収容領域内に配置された希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eに対応する位置に形成されている。
天板部31a,31cの矢印X1方向側及び矢印X2方向側の縁部には、それぞれ半円形状の切り欠きcが形成されている。この切り欠きcは、ユーザの指が入る程度の大きさであり、天板部31a,31cを閉じる際及び開く際などにおいて天板部31a,31cの縁部を持つことができるように構成されている。これにより、天板部31a,31cの開閉作業をスムーズに行うことができる。
天板部31cの縁部31cの中央には、切り欠き部31c4と同じく半円形状の切り欠きCが形成されている。天板部31a,31cが閉じられた状態においてこの切り欠きCの縁を指でつまんで側面部30c側へ天板部31cをずらすことで、天板部31cの切り欠き部31c4と希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eとの係合状態を容易に解除することができる。
【0035】
天板部31aの端部31a3の矢印X1方向側の縁部及び矢印X2方向側の縁部には、それぞれ先端方向に延設された延長部31a7が形成されている。かかる延長部31a7を設けることで、希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eの位置決めをより確実に行うことができる。
【0036】
支持部33は、溶血剤収容容器9などの3つのボトル状容器が載置される載置面33aと、この載置面33aを箱体6の底部21から所定の高さに配設するための脚部33b,33cとを備えている。本実施形態における支持部33は、
図11に示されるように、側面部30dと一体になっている。
【0037】
仕切部32は、容器収容領域を、希釈液容器4が配置される領域と、廃液容器8が配置される領域との2つの領域に区切るように、容器収容領域の略中央部に配設される仕切壁32aと、この仕切壁32aの先端側に設けられた固定部32bとを有している。固定部32bは、接着剤により側面部30cの内周面に固着される。仕切部32は、
図11に示されるように側面部30dと一体に形成されている。
【0038】
仕切壁32aの高さh1は、側面部30a〜30dの高さh2よりも、ほぼ天板部31a,31cの基部31a1,31c1の幅wの分だけ低くなるように設定されている。この結果、仕切り部32の高さが、容器収容領域内に配置される希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eの下端と略同じ高さになる。これにより、天板部31a,31cの切り欠き部31a6,31c4を希釈液容器4と廃液容器8の口部4e,8eに係合させた状態において、天板部31a,31cの端部31a3,31c2の下面(箱体の内部側に位置する面)を仕切壁32aの上端縁32a1に当接させることができる。その結果、試薬セット1の輸送時などにおいて希釈液容器4および廃液容器8が移動し、当該希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eが下方にずれた場合でも、天板部31a,31cの下方への移動が抑制されるので、当該天板部31a,31cの切り欠き部31a6,31c4による希釈液容器4および廃液容器8の固定状態を維持することができる。
【0039】
〔試薬セットの組み立て方法〕
試薬セット1は、例えば以下のようにして組み立てられる。
まず、底部21が閉じられ、蓋部22が開放された状態の箱体6が準備される。このような箱体6は、段ボールを用いた通常の製法により得ることができる。
【0040】
次いで、
図12に示されるように、箱体6内に内部保持部材7を挿入する。
その後、折りたたまれた状態の希釈液容器4及び廃液容器8に所定量の空気を注入して膨らませた状態にしてから、当該希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eにキャップ4f,8fを螺合して蓋をする。
【0041】
次いで、
図13に示されるように、蓋をした状態の希釈液容器4及び廃液容器8を仕切部32により区切られたた容器収容領域における各領域に配置する。本実施形態では、容器収容領域のうち、矢印X2方向側の領域に廃液容器8が配置され、矢印X1方向側の領域に希釈液容器4が配置される。これにより、仕切部32の仕切壁32aを挟んで、希釈液容器4と廃液容器8とがそれぞれ配置された状態となる。
【0042】
次いで、内部保持部材7の天板部31a,31cを開放した状態、すなわち、内部保持部材7の側面部30a,30b,30c,30dにより形成された開口が天板部31a,31cにより覆われていない状態の箱体6を、自動分注機の所定位置にセットする。自動分注機は、希釈液容器4のつば状の係止部4dを保持し、口部4eに螺合されているキャップ4fを外し、本体4a内に所定量の希釈液を分注し、分注が完了した後に口部4eにキャップ4fを螺合させる。
【0043】
次いで所定の液体がそれぞれ収容され、キャップ9c,10c,11cで密封された状態の溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11を内部保持部材7の支持部33の載置面33aの上に配置する。溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11は、矢印Y1方向側から矢印Y2方向側に向けて、この順に載置面33aの上に配置される。
【0044】
次いで、
図14に示されるように、中間部を備えていない方の天板部31cの切り欠き部31c4を希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eに係合させる。より詳細には、天板部31cの折曲部b3を谷折り状態にし、この状態で天板部31cの切り欠き部31c4を希釈液容器4及び廃液容器8の係止部4d、8dの下方に配置させる。
【0045】
次いで、
図15に示されるように、中間部を備えている方の天板部31aの切り欠き部31a6を希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eに係合させる。より詳細には、天板部31aの折曲部b1を山折り状態にし、折曲部b2を谷折り状態にし、この状態で天板部31aの切り欠き部31a6を希釈液容器4及び廃液容器8の係止部4d、8dの下方に配置させる(
図16の(a)参照)。その後、
図16の(b)に示されるように、山折り状態であった折曲部b1を内側に押し込むようにして谷折り状態にする。これにより、天板部31aの端部が希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8e側に移動するので、希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eを天板部31aの切り欠き部31a6で押圧するようにして保持することができる。これによって、内部保持部材7の側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口が一対の天板部31a,31cで覆われた状態になる。
【0046】
本実施形態では、側面部30aと基部31a1との境界、及び側面部30cと基部31c1との境界をいずれも谷折り状態にして希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eを保持している。これにより、当該口部4e,8eを確実に位置決めすることができる。
【0047】
次いで、箱体6の第2蓋部片22b,22dを内側に折り曲げ、その後、箱体6の第1蓋部片22a,22cを内側に折り曲げて箱体6の蓋部22を閉じた後、接着剤や接着テープなどにより蓋部22の閉じられた状態を保つ。
以上の工程により本実施形態の試薬セット1の組み立てが完了する。
【0048】
〔試薬セットの使用方法〕
前述した試薬セット1の使用方法を説明する前に、当該試薬セット1を使用する際に用いられる試薬取出部材3について説明する。
【0049】
[試薬取出部材]
試薬取出部材3は、
図1に示されるように、試薬セット1の使用前において、箱体6の上部開口部を覆うように配置される。この試薬取出部材3には、
図7に示されるように、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10、染色剤収容容器11及び希釈液容器4にそれぞれ対応するように、試薬取出部3a、3b、3c及び3dが形成されている。また、廃液容器8に対応するように廃液吐出部3eが形成されている。
【0050】
試薬取出部3a、3b、3c及び3dは、それぞれ、試薬を吸引するための試薬吸引管3f、3g、3h及び3iを含んでいる。廃液吐出部3eは、廃液を吐出するための廃液吐出管3jを含んでいる。
図7に示されるように、試薬取出部3a、3b、3c及び3d並びに廃液吐出部3eは、金属製のプレート3kに固定されている。これにより、試薬取出部3a、3b、3c及び3d並びに廃液吐出部3eは、互いに位置が変化しないように固定及び保持されている。
【0051】
図1に示されるように、試薬取出部3a、3b、3c及び3d並びに廃液吐出部3eは、それぞれ、チューブ15a、15b、15c、15d及び15eを介して、検体分析装置2の吸込口2a、2b、2c、2d及び2eに接続されており、接続状態を保ったまま、箱体6内に配置されることができるように構成されている。
【0052】
[使用手順]
試薬セット1を持ち運ぶに際し、ユーザは、前述したように箱体6の側面部20b及び20dに設けられた切取片24を箱体6の内部に押し込んで、取手形成部23を外側に拡げることで形成された取手部25をX方向の両側から支持した状態で試薬セット1(箱体6)を持ち運ぶ。
【0053】
試薬セット1を使用するに際しては、
図3に示される状態から、蓋部22が切り取られた
図4に示される状態にする。その際、側面部に設けられたつまみ部26を外側に引き出す。
図2及び
図10に示されるように、このつまみ部26には、箱体6をほぼ一周するように当該箱体6の内周面に固着された開封テープ26aの一端が固定されている。引き出したつまみ部26を引っ張ることにより、開封テープ26aに沿って箱体6の側面部が切断され、蓋部22が切り取られる。
【0054】
本実施形態では、蓋部22が切り取られた箱体6の上端位置が、当該箱体6内に配置されている内部保持部材7の上端位置よりも低くなるように、開封テープの固着位置(箱体内周面における上下方向の固着位置)が設定されている。このため、上方に突出した状態の側面部30cと基部31c1との山折り状態の境界部および側面部30aと基部31a1との山折り状態の境界部を利用することで試薬取出部材5の箱体6への配置を簡単かつ確実に行なうことができる。
【0055】
次いで、希釈液容器4及び廃液容器8の口部4e,8eに螺合されているキャップ4f,8fを取り外した後、ユーザは、試薬取出部材3を蓋部22が切り取られた箱体6の上部開口部を覆うように配置する。その際、各試薬吸引管3f、3g、3h及び3iを対応する試薬容器9,10,11および希釈液容器4の口部内に挿入するとともに、廃液吐出部3eの廃液吐出管3jを廃液容器8の口部8e内に挿入する。
【0056】
そして、ユーザが検体分析装置2を作動させることにより、
図1に示されるように、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11に収容されている試薬と、希釈液容器4に収容されている試薬とが、それぞれ、試薬吸引管3f、3g、3h及び3i及びチューブ15a,15b,15c,15dを介して検体分析装置2に送られる。一方、検体の分析に用いられた後の試薬は、チューブ15e及び廃液吐出部3eを介して、廃液容器8に廃液として回収される。
【0057】
検体分析装置2において所定回数の検体の分析が行われることにより、溶血剤収容容器9、溶血剤収容容器10及び染色剤収容容器11に収容されている試薬又は希釈液容器4に収容されている希釈液の残りが少なくなると、試薬セット1の交換を指示する旨のメッセージが検体分析装置2の表示部(図示せず)に表示されて、試薬セット1の使用は終了する。
【0058】
使用済みとなった試薬セット1は、所定の場所に保管され、試薬セット1全体が廃棄されるか、又は、廃液容器8に回収された廃液だけが他の箱体などとは別に廃棄される。
【0059】
上述したように、本実施形態における試薬セット1は、箱体6と、箱体6内に配置され当該箱体6内に容器収容領域を形成する内部保持部材7と、容器収容領域内に配置される希釈液容器4および廃液容器8と、を備える。内部保持部材7は、複数の側面部30a,30b,30c,30dと、対向する側面部30a,30cからそれぞれ延設され、側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口を覆うことが可能な一対の天板部31a,31cと、を有している。一対の天板部31a,31cのそれぞれには、その端部に希釈液容器4の口部4eおよび廃液容器8の口部8eを位置決めするための切り欠き部31a6,31c4が形成されており、側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口が一対の天板部31a,31cで覆われることにより、容器収容領域内に配置された希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eが切り欠き部31a6,31c4によって位置決めされる。
このように、一対の天板部31a,31cによって側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口を覆うことにより、容器収容領域内に配置された希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eが位置決めされるので、容器梱包作業が容易であり、且つ、希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eを安定して位置決めすることができる。また、内部保持部材7を箱体6内にセットした状態において、側面部30a,30b,30c,30dにより形成される開口が天板部31a,31cによって覆われていない状態にすることができるので、自動充填機の試薬充填用のノズルを希釈液容器4の口部4eに固定して接続する際に天板部31a,31cが邪魔にならないようにすることができる。したがって、容器収容領域内に配置された希釈液容器4および廃液容器8に対する試薬の自動充填が可能になる。その結果、試薬の充填効率を向上させることができる。
【0060】
本実施形態において、切り欠き部31a6,31c4は、希釈液容器4の口部4eおよび廃液容器8の口部8eを両側から挟んで固定する。これにより、希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eをより一層確実に安定して位置決めすることができる。
【0061】
本実施形態において、希釈液容器4の口部4eおよび廃液容器8の口部8eには、つば状の係止部4d,8dがそれぞれ設けられており、一対の天板部31a,31cの切り欠き部31a6,31c4は、係止部4d,8dの下方を挟んで固定する。これにより、希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eをさらに確実に安定して位置決めすることができる。
【0062】
本実施形態において、内部保持部材7は、容器収容領域を2つの領域に区切るための仕切り部32を含む。これにより、希釈液容器4および廃液容器8の位置決めを正確に行なうことができるとともに、希釈液容器4および廃液容器8を確実に固定することができる。
【0063】
本実施形態において、仕切り部32は側面部30dと一体に成形されている。これにより、仕切り部材32と側面部30dとを別体で作製する場合に比べて部品点数を減らすことができるので、試薬セット1の組み立て工程を簡素化することができる。
【0064】
本実施形態において、仕切り部32の高さは、容器収容領域内に配置される希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eの下端と略同じ高さである。これにより、試薬セット1の輸送時などにおいて希釈液容器4および廃液容器8が移動し、当該希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eが下方にずれた場合でも、天板部31a,31cの下方への移動が抑制されるので、当該天板部31a,31cの切り欠き部31a6,31c4による希釈液容器4および廃液容器8の固定状態を維持することができる。
【0065】
本実施形態において、天板部31a、31cには、当該天板部31a、31cが希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eを位置決めしている状態において、対向する側面部30a、30cに当接可能な位置に谷折り状態の折曲部b1,b3がそれぞれ形成されている。これにより、天板部31a、31cの切り欠き部31a6,31c4は、谷折り状態にしたことにより得られる付勢力で口部4e,8e側に押されるので、当該口部4e,8eを確実に位置決めすることができる。
【0066】
本実施形態において、天板部31aには、対向する側面部30aから離れた位置に山折り状態の折曲部b1と谷折り状態の折曲部b2が、側面部30aから離れる方向にこの順で形成されており、当該天板部31aが希釈液容器4および廃液容器8の口部4b,8bを位置決めしている状態において、山折り状態の折曲部b1に外力を加えることにより側面部30aに当接可能な位置に谷折り状態の折曲部b1が形成されるように構成されている。このように、山折り状態の折曲部b1を谷折り状態の折曲部b1にすることにより、天板部31aの切り欠き部31a6は、得られる付勢力で口部4e,8e側に押されるので、当該口部4e,8eを確実に位置決めすることができる。また、折曲部b1が山折り状態である場合には、天板部31aの切り欠き部31a6を移動させ易いので、容易に、切り欠き部31a6を口部4e,8eにセットすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、天板部31aが希釈液容器4および廃液容器8の口部4b,8bを位置決めしている状態において、折曲部b1は全て谷折り状態とされたが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、山折り状態の折曲部b1の一部に外力を加えることによって側面部30aに当接可能な位置に谷折り状態の折曲部b1が一部形成されるようにしてもよい。このような構成によっても、希釈液容器4および廃液容器8の口部4e,8eを確実に位置決めすることができる。
【0068】
本実施形態において、天板部31a、31cの周縁に、当該天板部31a、31cを持つための切り欠きcが形成されている。これにより、天板部31a,31cの開閉作業を円滑に行なうことができる。
【0069】
本実施形態において、箱体6の側面には、当該箱体6の蓋部22を切り取ることが可能な開封テープが、箱体の内周面をほぼ一周するように貼付けられている。これにより、箱体6の蓋部22を容易に切り取ることができる。
【0070】
本実施の形態において、蓋部22が切り取られた箱体6の上端位置が、内部保持部材7の上端位置よりも低い。これにより、試薬取出部材5の箱体6への配置を簡単かつ確実に行なうことができる。
【0071】
本実施形態において、箱体6は、4つの側面部20a,20b,20c,20dと、底部21と、蓋部22とを備えた立方体形状又は直方体形状を呈しており、蓋部22は、一方の対向する側面部20a,20cからそれぞれ延設された一対の第1蓋部片22a,22cと、他方の対向する側面部20b,20dからそれぞれ延設された一対の第2蓋部片22b,22dとで構成されている。これにより、蓋部22を閉じた際に、箱体6の強度を向上させることができる。
【0072】
〔その他の変形例〕
なお、今回開示された実施形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0073】
例えば、前述した実施形態では、容器収容領域は仕切り部23により2つに区切られていたが、区切られていない構成であってもよいし、3以上に区切られている構成であってもよい。
前述した実施形態では、切り欠き部31a6,31c4により位置決めされる試薬容器の数は1つ(希釈液容器4)であるが、2以上であってもよい。
【0074】
前述した実施形態では、位置決め部として半円状の切り欠き部31a6,31c4を採用しているが、半円状以外の矩形状や多角形状の切り欠き部を採用することもできる。
前述した実施形態では、箱体6の蓋部を切り取るための開封手段として、箱体6の内周面に貼付された開封テープ26aを用いているが、本発明はそのような実施の形態に限定されず、箱体6の蓋部を切り取ることができる公知の手段を適宜採用することができる。例えば、開封テープ26aの代わりに、箱体6の内周面に貼付されるひもを用いてもよいし、箱体6の周面に破線状の切り込みを形成し、その切込みに沿って蓋部を切り取ってもよい。