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特開2015-83637印刷インキ用ワニス、印刷インキ、及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-83637(P2015-83637A)
(43)【公開日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】印刷インキ用ワニス、印刷インキ、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/02 20140101AFI20150403BHJP
【FI】
   C09D11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-222238(P2013-222238)
(22)【出願日】2013年10月25日
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】堤 大士
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】寺田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 博
(72)【発明者】
【氏名】本間 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 清信
(72)【発明者】
【氏名】三上 幸泰
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE06
4J039BC19
4J039BE12
4J039BE13
4J039BE23
4J039EA44
4J039EA48
4J039GA01
4J039GA02
4J039GA03
4J039GA04
(57)【要約】
【課題】ロジン変性フェノール樹脂と同等な乳化特性や印刷作業性を有する、該ロジン変性フェノール樹脂に代替可能な印刷インキ用ワニス、印刷インキ、これを印刷してなる印刷物を提供する。
【解決手段】アルキッド樹脂を樹脂成分とする印刷インキ用ワニスであって、該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合が45質量%以上であり、前記アルキッド樹脂が、酸価が30mgKOH/g以下であって、かつ、酸価と水酸基価の合計が100mgKOH/g以下の範囲にあり、更に、その粘度が100〜3,500Pa・sの範囲にあることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキッド樹脂を樹脂成分とする印刷インキ用ワニスであって、該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合が45質量%以上であり、前記アルキッド樹脂が、酸価が30mgKOH/g以下であって、かつ、酸価と水酸基価の合計が100mgKOH/g以下の範囲にあり、更に、その粘度が100〜3,500Pa・sの範囲にあるものであることを特徴とする印刷インキ用ワニス。
【請求項2】
樹脂成分のアルキッド樹脂の油長が35質量%から80質量%の請求項1に記載の印刷インキ用ワニス。
【請求項3】
前記アルキッド樹脂に加え、更に植物油を含有する請求項1記載の印刷インキ用ワニス。
【請求項4】
前記アルキッド樹脂、及び植物油に加え、更に植物油の他の有機溶剤を含有する請求項3記載の印刷インキ用ワニス。
【請求項5】
前記アルキッド樹脂、植物油、及び植物油の他の有機溶剤に加え、更にキレート化剤又はゲル化剤を含有する請求項4記載の印刷インキ用ワニス。
【請求項6】
前記アルキッド樹脂に加え、更に植物油の他の有機溶剤を含有する請求項1記載の印刷インキ用ワニス。
【請求項7】
前記アルキッド樹脂、植物油の他の有機溶剤に加え、更にキレート化剤又はゲル化剤を含有する請求項6記載の印刷インキ用ワニス。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つに記載の印刷インキ用ワニスに、顔料を配合してなる印刷インキ。
【請求項9】
PS版用印刷インキである請求項8記載の印刷インキ。
【請求項10】
紙基材上に請求項9記載の印刷インキを用いて印刷してなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジンまたはトール油由来のインキ用樹脂、すなわちコロホニウム樹脂に代替可能な、アルキッド樹脂を主成分とする印刷インキ用樹脂ワニス、それを含有する印刷インキ、およびその印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット用平版インキ用ワニスには、ロジン変性フェノール樹脂がその性能の安定性に優れる点から広く使用されている。然しながら、現在、このロジン変性フェノール樹脂の原料として用いられるロジンは、松資源の保護の観点から生産量は減少している一方で、タイヤ、接着剤等の製造に使われるために需要は増加する傾向にあり、需給バランスが崩れている状況にある。そのため、これに代わるインキ用樹脂材料が切望されている。
【0003】
オフセット用平版インキにおけるロジン変性フェノール樹脂の他の樹脂材料としては、例えば、アルキッド樹脂が印刷物の光沢向上させる目的でロジン変性フェノール樹脂に一部配合して用いられている。
【0004】
然しながら、アルキッド樹脂を印刷インキ用ワニスとして使用する場合、インキ樹脂として一般に広く使用されているロジン変性フェノール樹脂に対して相溶性は必ずしも良好ではなく、また、アルキッド樹脂を処方した平版インキは粘度が低下して、印刷作業性に支障を来たすため、ロジン変性フェノール樹脂に対する配合割合はごく少量とならざるを得ないのが現状であった。更に、アルキッド樹脂は酸価、水酸基価が高いために印刷インキに用いた場合、乳化特性を低下させしまう問題があり、そのため、例えば酸価及び水酸基価を著しく低減し、この乳化特性を改善する技術などが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
然しながら、特許文献1記載のワニス配合処方ではアルキッド樹脂の酸価や水酸基が低い為にこれをロジン変性フェノール樹脂に対して一部配合してワニスを調整する場合には印刷インキ自体の乳化特性を改善することが出来るものの、アルキッド樹脂自体の粘度が低く、それ自体単独で使用しようとする場合にミスチングが生じやすい、といった印刷作業性に劣り、到底、ロジン変性フェノール樹脂に代替できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−174678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明が解決しようとする課題は、ロジン変性フェノール樹脂と同等な乳化特性や印刷作業性を有する、該ロジン変性フェノール樹脂に代替可能な印刷インキ用ワニス、印刷インキ、これを印刷してなる印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の酸価、及び、酸価と水酸基価に総量を調整し、かつ、粘度範囲の高いアルキッド樹脂がロジンフェノール樹脂と同等の印刷特性を発現することを発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、アルキッド樹脂を樹脂成分とする印刷インキ用ワニスであって、該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合が45質量%以上であり、前記アルキッド樹脂が、酸価30mgKOH/g以下、かつ、酸価と水酸基価の合計が10〜100mgKOH/gの範囲にあり、更に、その粘度が100〜3,500Pa・sの範囲にあるものであることを特徴とする印刷インキ用ワニスに関する。
【0010】
本発明は、更に、前記印刷インキ用ワニスに、顔料を配合してなる印刷インキに関する。
本発明は、更に、紙基材上に前記印刷インキを用いて印刷してなる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロジン変性フェノール樹脂と同等な乳化特性や印刷作業性などの印刷特性を有する、該ロジン変性フェノール樹脂に代替可能な印刷インキ用ワニス、印刷インキ、これを印刷してなる印刷物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の印刷インキ用ワニスに用いるアルキッド樹脂は、酸価30mgKOH/g以下、かつ、酸価と水酸基価の合計が10〜100mgKOH/gの範囲にあることを特徴としている。ここでアルキッド樹脂の酸価が30mgKOHを上回る場合、印刷インキ自体が乳化しやすくなり、印刷特性が低下する。本発明では、酸価は低い方が望ましいが、酸価が低すぎる場合には樹脂のゲル化を招きやすくなることが懸念されるため、酸価は、更に、0.1〜25mgKOH/gの範囲であることが特に好ましい。
【0013】
また、前記アルキッド樹脂における水酸基価は、特に、限定されるものではないが、酸価と水酸基価の合計が100mgKOH/gを上回る場合には、やはり、印刷インキの乳化特性が低下する。また、酸価と水酸基価の合計が低すぎる場合には、やはり、製造時間の反応時間が長くなり樹脂のゲル化を招きやすくなることや、生産効率が低下することから、酸価と水酸基価の合計が10〜100mgKOH/gの範囲であることが好ましく、特にそれらの性能バランスに優れる点から20〜60mgKOH/gの範囲であることが好しい。
【0014】
また、前記アルキッド樹脂は、その粘度が100〜3,500Pa・sの範囲にあることから、ミスチング防止といった印刷作業性が良好となり、アルキッド樹脂自体を主たるワニス用樹脂成分として使用すること、更に樹脂成分として単独使用することができる。ここで粘度は、E型粘度計を用い、アルキッド樹脂の0.2ml、スピンドルR9.7、回転数1〜10rpm、25℃の条件で測定した値である。本発明では、特に、適度な流動性が得られ、かつ、印刷物の階調に優れる点から、とりわけ、300〜3000Pa・sの範囲であることが好ましい。
【0015】
前記アルキッド樹脂は、また、その油長が、35%〜80%の範囲であることが、インキ溶剤への溶解性に優れる点から好ましい。特にアルキッド樹脂の油長を45%以上65%以下とした、いわゆる中油アルキッド樹脂を用いた場合には、初期乾燥性に優れたものとなり、また、アルキッド樹脂の油長を65%以上80%以下とした、いわゆる長油アルキッドを用いた場合には、浸透乾燥および酸化による乾燥性に優れた印刷インキとなる。
【0016】
上記したアルキッド樹脂は、具体的には、ポリオールと、多価カルボン酸又はその無水物と、植物油または脂肪酸とを反応させることによって製造することができる。
【0017】
ここで用いる、ポリオールは、アルコール化合物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、
1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール等の直鎖状アルカンジオール;ネオペンチルグリコール、2−エチルヘキシルジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチルペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4ートリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチ−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、キシレングリコール、シクロヘキサンジメチロール、ハイドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネペンチルグリコール等の分岐アルカンジオール;
【0018】
トリシクロデカンジメチロール、ジシクロペンタジエンジアリルアルコールコポリマー、
水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等の脂肪族環状ジオール;(モノまたはジまたはトリ)グリセリン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ−ルエタン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ−ルプロパン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ−ルアルカン、(モノまたはジまたはトリ)ペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の脂肪族アルコール;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、イノシトール等の三価以上の環状アルコール等が挙げられる。
【0019】
これらのなかでも、特に、揮発性が低く、また、得られるアルキッド樹脂の分岐度が高まること、更に、入手も容易であることからグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0020】
多価カルボン酸又はその無水物としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、
シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライ酸、ドデセニル無水コハク酸、ペンタデセニルコハク酸等のアルケニル無水コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、o−フタル酸またはその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸またはその無水物やメチルエステル等のエステル化合物、ヘキサヒドロフタル酸またはその無水物、(メチル)ハイミック酸またはその無水物、トリメリット酸またはその無水物、ピロメリット酸またはその無水物が挙げられる。
これらのなかでも、特に、ロジンとの反応性の点から無水マレイン酸が好ましい。
【0021】
次に、前記した植物油、即ち、不飽和基含有脂肪酸のトリグリセライドは、例えば、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、南洋油桐油(ジャトロファ)、脱水ヒマシ油などが挙げられる。その他、回収/再生された再生植物油も用いることができる。再生植物油としては、含水率を0.3重量%以下、ヨウ素価を100以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましい。
また、脂肪酸として、はオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸の他、上記各種植物油由来の脂肪酸が挙げられる。
これらのなかでも、特に、色相と入手の容易さの点から大豆油を主成分とすることが好ましい。
【0022】
前記アルキッド樹脂を製造する方法は、具体的には、油成分として植物油を使用する場合、以下の方法1〜3が挙げられる。
方法1:植物油とポリオールとを水酸基が過剰となる条件にて反応させ、次いで、この反応生成物と多価カルボン酸又はその無水物とを反応させる方法。
方法2:植物油と多価カルボン酸又はその無水物とをカルボキシル基が過剰となる条件にて反応させ、次いで、この反応生成物とポリオールとを反応させる方法。
方法3:ポリオールと多価カルボン酸又はその無水物とを反応させておき、次いで、植物油を加えてエステル交換反応を主に進める方法。
【0023】
また、油成分として脂肪酸を使用する場合、以下の方法4、5が挙げられる。
方法4:脂肪酸とポリオールとを反応させ、次いで、多価カルボン酸を加え反応させる方法。なお、任意の時期に植物油を加えて反応させることにより、反応が進みやすくなる。
【0024】
方法5:脂肪酸とポリオールと多価カルボン酸又はその無水物とを一度に、または、ほぼ同時に加えて縮合反応とエステル交換反応を並行して進める方法。
【0025】
以上詳述した方法1〜方法5の反応も、比較的高温条件下で良好に反応が進行する。よって、いずれの反応方法においても反応温度は200〜300℃の範囲であることが好ましい。この場合、縮合途中では160以上200℃未満の温度にコントールし、反応を制御してもよい。また、ポリオール、及び、多価カルボン酸又はその無水物は共に2官能の化合物を用いることが望ましいが、粘度やその他の性状値を調整するために、1価カルボン酸や3官能以上のカルボン酸を併用してもよい。また、副反応が生じたり、着色、原料等の揮発、昇華が起こる、縮合水や脱離アルコール等による発泡や揮散が生じる、といった現象が起こる場合などは、温度をより低温にして160〜200℃で緩やかな反応工程を採用してもよい。
【0026】
更に、縮合反応時に減圧にすることによって反応が良好に進行することから、原料仕込み時に水分を減圧等で除いてもよい。特に前記方法5では減圧下にて水分除去し乍ら反応を進める手段は有効である。
【0027】
上記方法1〜5における反応触媒は、通常、エステル化反応に使用される触媒が何れも使用できるが、鉛、スズ、クロム、カドミウム等の重金属を含まないことが好ましく、具体的には、酢酸亜鉛等の有機酸塩、チタンテトライソプロポキシド等の金属アルコキサイド、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物の他、リチウム、ナトリウム、カリウム、などのアルカリ金属の有機酸塩、無機酸塩、アルコキサイド、酸化物が挙げられる。
また、天然油の着色、重合を抑えるために重合禁止剤としてBHTなどを早い段階で1回または数回に分けて添加してもよい。
【0028】
上記各反応では、上記各成分の他、ロジン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を一部併用してもよい。ロジンとしては産地によらず、ガムロジン、トール油ロジンや半化石化したダンマル、マスチックも使用可能である。性状の調整、粘度の調整等にも利用可能で、使用割合は全仕込み量の0.1%以下から使用可能だが、0.1%から30%の範囲で任意に添加できる。
【0029】
また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂、シェル社製「カージュラE」に代表される脂肪族モノグリシジルエステル等の各種エポキシ樹脂又はエポキシ化合物が挙げられる。また、フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0030】
上記した方法1〜5の各製造方法では、上記した通り、200〜300℃の高温条件下で反応させることが好ましいことから反応工程中に添加剤を混合することが可能である。インキ用樹脂に使われる石油樹脂のような固形の添加剤、高分子の添加剤の添加はアルキッド反応工程中に行うことができる。分解し易い添加成分の場合は冷却して取り出す前に添加する、もしくは取り出し工程や、次工程への移送時や、次工程の容器で混合できる。
【0031】
上記方法1〜5において、水酸基やカルボキシル基の過剰率を調節することにより得られるアルキッド樹脂の粘度、分子量や親疎水性を調節することができる他、酸価や水酸基価を調整することができる。
【0032】
具体的には、水酸基とカルボキシル基との当量比[水酸基/カルボキシル基]が1.02〜1.40の範囲であることが好ましい。
【0033】
また、上記した方法1〜5の中でも、特に反応時間を短くでき、かつ、縮合水の生成を少なくできて生産性に優れる点から方法1,2が好ましく、また、原料選択や使用割合などの調節が容易であり、ポリマー設計の自由度が高くなる点から方法5が好ましい。
【0034】
この様にして得られるアルキッド樹脂は、これにインキ用の溶剤、植物油、又は脂肪酸エステルを加えて粘度とタックの調整がなされ、ワニスとなる。ここで、アルキッド樹脂を製造する際に使用した植物油が多量に系内に残存する場合には、そのままワニスとすることもできるが、通常は溶剤又は植物油を加えて粘度を調整し、更に必要により、更にキレート剤を配合して粘度調整することができる。
【0035】
ここで、溶剤を加える工程は、後述するインキ用の溶剤を、アルキッド樹脂を製造後に加える方法、及び、アルキッド樹脂を製造する当初から加える方法が挙げられる。後者の場合、反応生成物の粘度上昇に対して、攪拌をより容易にする他、縮合水の系外へ除くことを容易にすることができる。また、この場合に反応後に粘度の微調整を行うために、2回目以降の添加を行ってもよい。然しながら、前者のアルキッド樹脂を製造する反応が終了した後に溶剤を加える方法が、粘度調整が容易であり、かつ、調整を一度にできる方法であり好ましい。
【0036】
また、ワニス調整に使用できるインキ用の溶剤は、沸点160℃以上の溶剤であり、例えば、JX社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、三菱化学(株)製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学(株)製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;JX社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、ISU社製DSOL溶剤、「ソルベントH」;ISU(株)製「N−パラフィンC14−C18」;出光興産(株)「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;エクソン化学(株)の「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;マギーブラザーズ社製の「マギーソル−40」、「マギーソル−44」、「マギーソル−47」、「マギーソル−52」、「マギーソル−60」等が挙げられる。
【0037】
これらのなかでもAFソルベントが溶解性と芳香族成分が少ない点から好ましく、特に、芳香族成分が1.0%以下である所謂アロマフリー溶剤であることが好ましい。更に具体的には、例えば、熱乾燥型オフセット輪転インキ用ワニスの調製には、JX社製「AFソルベント4号」、JX社製「AFソルベント5号」、JX社製「AFソルベント7号」が好ましく、浸透乾燥型新聞インキ用ワニスの調整にはJX社製「AFソルベント6号」、ISU社製「DSOL300」が好ましく、酸化重合型枚葉インキ用ワニスの調整にはJX社製「AFソルベント6号」が好ましい。
【0038】
一方、植物油を溶剤として使用する場合には、前記したとおり、通常、アルキッド樹脂製造時に未反応のまま残存する植物油をそのまま溶剤として利用でき、更に、反応終了後に別途加えてワニスの粘度を調整することができる。
【0039】
ここで用いることのできる植物油は、例えば、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、南洋油桐油(ジャトロファ)、脱水ヒマシ油などが挙げられる。その他、回収/再生された再生植物油も用いることができる。再生植物油としては、含水率を0.3重量%以下、ヨウ素価を100以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましい。
【0040】
また、脂肪酸エステルを溶剤として使用する場合には、各種植物油由来の脂肪酸のエステル化合物を反応終了後に添加することによりワニスを調整できる。
【0041】
また、キレート剤によって粘度の調整を行う場合は、溶剤を先にアルキッド樹脂と混合溶解させて、次いで、キレート剤を均質にワニス中に分散できるため好ましい。この際、キレート化の温度は100℃以上、200℃以下であることが好ましい。また、キレート剤の量は通常、溶剤を除く樹脂分に対して0.1〜5質量%の範囲であることが好ましいが、更に0.5〜2質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0042】
ここで用いることのできるキレート剤は、例えば、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、有機亜鉛化合物、有機力ルシウム化合物等が挙げられる。これらのなかでも有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0043】
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート化合物が挙げられ、なかでもアルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプレピレート、エチルアセチルアセテートアルミニウムジ−n−ブチレート、エチルアセチルアセテートアルミニウム−n−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセチルアセテートが好ましい。
【0044】
本発明の印刷インキ用ワニスは、上記した各成分に加え、更に必要により、インキオイルを配合してもよい。インキオイルは、例えば長鎖脂肪酸とアルコールから得られるもの、及び揮発性の無いアルカン、アルケンなどが挙げられる。
このワニスには、更に、インキの粘度や光沢等の特性を与えるための石油樹脂、レベリング剤等の添加剤を添加することができる。
【0045】
本発明の印刷インキ用ワニスは、オフセットインキ、樹脂凸版インキに使用されるが、その中でも特に熱乾燥型オフセット輪転インキ、浸透乾燥型新聞インキ、又は、酸化重合型枚葉インキのワニスとしてとりわけ有用である。特に本発明では、熱乾燥型オフセット輪転インキに用いた場合、印刷特性が良好となるのみならず、その印刷物の光沢に優れたものとなる。
【0046】
上記印刷インキ用ワニスの各成分の配合割合は、アルキッド樹脂25〜60重量%、植物油、脂肪酸エステル、又は溶剤を40〜75質量%、その他キレート化剤またはゲル化剤、乾燥抑制剤など5質量%以下の範囲で加えることができる。また、必要に応じて上記のワニスに石油樹脂、ロジンエステル樹脂、又はロジン変性フェノール樹脂を一部添加してもよい。この場合、該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合が45質量%以上となることが重要である。本発明では、このようにアルキッド樹脂を多量に使用しても印刷作業性に優れ、実用的な印刷インキが得られることを特長としている。よって、斯かる観点から該ワニス中の全樹脂成分に占める前記アルキッド樹脂の存在割合は、更に、70質量%以上であることが好ましく、樹脂成分としてアルキッド樹脂を単独で使用することが望ましい。また、植物油を用いる場合には、ワニス中の該植物油の量は3〜60質量%であることが望ましい。
【0047】
この様にして調整される印刷インキ用ワニスは、ワニスのタック値が5〜20の範囲であること、ワニス粘度が30〜1000Pa・sの範囲であることが印刷インキにした際の印刷作業性が良好となる点から好ましい。また、n−ヘプタントレランスが5ml/g以上であるワニスがインキ調整時に加えられる植物油、溶剤への溶解性の点から好ましい。
【0048】
ここでワニスのタック値の測定は、25℃に空調された室内において、JISK5701−1(平版インキ試験方法)の4.2粘着性の項に記載のロータリータックメータにより、温度が32℃、ローラーの回転数が400rpmの条件で測定した場合の1分値である。測定サンプル量は1.31mlである。また、ワニス粘度は、E型粘度計を用い、被験試料0.2ml、スピンドルR9.7、回転数1〜10rpm、25℃の条件で測定した値である。ワニスのn−ヘプタントレランスは、ワニス1gを25℃に保ちながら、その溶液にn−ヘプタンを滴下し、完全に白濁した時のn−ヘプタンの添加量(ml)がn−ヘプタントレランスの値である(単位はml/g)。
【0049】
本発明の印刷インキは、上記した印刷インキ用ワニスに顔料を配合し、必要により更に添加剤等を配合して調整することができる。
【0050】
上記の印刷インキ用ワニスを使って作られる印刷インキ組成物中の必須成分の好ましい比率は以下のようになる。ヒートセット輪転インキ、すなわち熱乾燥型オフセット輪転インキの場合、有機又は無機顔料10〜30質量%、樹脂25〜35質量%、沸点160℃以上の炭化水素系溶剤が0〜45質量%、植物油又は植物油エステル、植物油エーテル7〜40質量%、乾燥抑制剤、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤0〜8質量%となる割合であることが好ましい。
【0051】
コールドセットインキ、すなわち浸透乾燥型新聞インキの場合、有機又は無機顔料10〜30質量%、樹脂15〜25質量%、溶剤が10〜30質量%、植物油又は植物油エステル20〜40質量%、乾燥抑制剤、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤1〜5質量%、となる割合であることが好ましい。ここで過乳化を防ぎ、画線と非画線部を分画よく印刷するためには、植物油は40%を上限とすることが好ましい。
【0052】
また、酸化重合型枚葉インキの場合、有機又は無機顔料10〜30質量%、樹脂25〜40質量%、溶剤が10〜30質量%、植物油又は植物油エステル10〜40質量%、金属ドライヤー0〜3.0質量%、汚れ防止剤、ワックス等の添加剤0〜10.0重量%
となる割合であることが好ましい。なお、ここで金属ドライヤーは、汎用のマンガン系ドライヤー、コバルト系ドライヤーがいずれも使用できる。
【0053】
本発明で用いることのできる有機顔料としては、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0054】
一方、本発明で用いることのできる無機顔料は、無機顔料は、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料の他、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。
【0055】
このようにして調整された本発明の印刷インキは、オフセットインキ、樹脂凸版インキ、その中でも特に熱乾燥型オフセット輪転インキ、浸透乾燥型新聞インキ、酸化重合型枚葉インキとして好適に用いることができる。また、本発明の印刷インキは、前記したとおり、優れた乳化特性を発現することから、特に、PS版など水を用いた印刷方式である、オフセット輪転印刷又はオフセット枚葉印刷によって印刷物を得ることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下に参考例、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれ制限されるものではない。なお、例中の部および%は、特に断りのない限り質量基準である。
また、各実施例及び比較例にて得られた樹脂及びワニスの各種性状値は以下の方法によって測定したものである。
【0057】
樹脂の粘度:E型粘度計を用い、被験試料0.2ml、スピンドルR9.7、回転数1〜10rpm、25℃の条件で測定を行った。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0058】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0059】
タック値:25℃に空調された室内において、JISK5701−1(平版インキ試験方法)の4.2粘着性の項に記載のロータリータックメータを、温度が32℃、ローラーの回転数が400rpmの条件で1分値である。測定サンプル量は1.31ccである。
ワニス粘度:E型粘度計を用い、被験試料0.2ml、スピンドルR9.7、回転数1〜10rpm、25℃の条件で測定を行った。
n−ヘプタントレランス: ワニス1gを25℃に保ちながら、その溶液にn−ヘプタンを滴下し、完全に白濁した時のn−ヘプタンの添加量(ml)をn−ヘプタントレランスの値とした(単位はml/g)。
【0060】
実施例1
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油脂肪酸280部およびイソフタル酸133部を仕込み、150℃まで昇温して1時間攪拌した。ペンタエリスリトール20部、グリセリン64部を仕込んで220℃まで5時間で昇温した後、更に3時間反応した。縮合水の発生が弱まった後に240℃まで更に昇温した。更に6時間脱水反応を行い、酸価22.0mgKOH/g、水酸基価23.0mgKOH/g、粘度は810Pa・sec、重量平均分子量97、000、数平均分子量3、600、油長65質量%のアルキド樹脂を得た。
(浸透乾燥型新聞インキ用のワニスの調整)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに、上記のアルキッド樹脂200部を仕込み、JX社製AFソルベント6号を8部仕込み160℃で2時間攪拌し浸透乾燥型新聞インキ用のワニスを得た。得られたワニスを以下「ワニス(a1)」と略記する。このワニス(a1)は、タック値14、ワニス粘度は190Pa・s、n−ヘキサントレランスは47ml/gであった。
【0061】
実施例2
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油脂肪酸280部およびイソフタル酸150部を仕込み、150℃まで昇温して1時間攪拌した。ペンタエリスリトール25部、グリセリン70部を仕込んで220℃まで5時間で昇温した後、更に3時間反応した。縮合水の発生が弱まった後に240℃まで更に昇温した。240℃一定温度で5時間脱水反応を行い、酸価20.0mgKOH/g、水酸基価22.0mgKOH/g、E型粘度は2970Pa・sec、重量平均分子量120、000、数平均分子量3,700、油長62質量%のアルキド樹脂を得た。
(熱乾燥型オフセットインキ用ワニスの調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに、上記のアルキッド樹脂200部を仕込み、JX社製AFソルベント7号を24部仕込み240℃で2時間攪拌し熱乾燥型オフセットインキ用のワニスを得た。得られたワニスを以下「ワニス(a2−1)」と略記する。このワニス(a2−1)は、本ワニスのタック値10、E型粘度は270Pa・s、n−ヘキサントレランスは49ml/gであった。
(浸透乾燥型新聞インキ用ワニスの調整)
また、攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに、上記のアルキッド樹脂200部を仕込み、JX社製AFソルベント6号を29部仕込み180℃で2時間攪拌し浸透乾燥型新聞インキ用のワニスを得た。得られたワニスを以下「ワニス(a2−2)」と略記する。
【0062】
実施例3
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油590部、テトライソプロピルチタネート0.2部およびイソフタル酸150部、無水フタル酸20部を仕込んで220℃まで3時間で昇温した後、このまま2時間エステル交換反応を行い180℃に降温した。ペンタエリスリトール75部、グリセリン5部を仕込んで250℃まで縮合水の発生を調節しながら3時間で昇温した後、一定温度で4時間反応した。この時点で、縮合水の発生が収まり、120℃に降温した後、無水マレイン酸を6部加えた後、3時間で220℃に昇温し、更に3時間反応した。このときの樹脂は、酸価4.5mgKOH/g、水酸基価21.0mgKOH/g、E型粘度は420Pa・s、重量平均分子量100,500、数平均分子量2,400、油長73質量%のアルキド樹脂を得た。
(熱乾燥型オフセット輪転インキ用ワニスの調製)
連続してJX社製AFソルベント7号を49部仕込み180℃で1時間攪拌し熱乾燥型オフセット印刷インキ用のワニスを得た。得られたワニスを以下「ワニス(a3)」と略記する。このワニス(a3)は、タック値9、E型粘度は240Pa・s、n−ヘキサントレランスは47ml/gであった。
【0063】
実施例4
攪拌機、温度計、脱水トラップ付還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに大豆油150部、水酸化リチウム0.06部およびペンタエリスリトール76部を仕込んで230℃で2時間アルコール交換反応を行った後に、180℃まで冷却した。ここにネオペンチルリコール37部、イソフタル酸173部を加えた後、230℃まで3時間で昇温させ、更に230℃一定温度で7時間脱水反応を行い、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価35.0mgKOH/g、E型粘度は900Pa/sec、重量平均分子量73,000、数平均分子量5,000、油長38質量%のアルキド樹脂を得た。
(浸透乾燥型新聞インキ用のワニスの調整)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた四ツ口フラスコに、上記のアルキッド樹脂200部を仕込み、JX社製AFソルベント6号を26部仕込み240℃で2時間攪拌し浸透乾燥型新聞インキ用のワニスを得た。得られたワニスを以下「ワニス(a4)」と略記する。このワニス(a4)は、タック値12、E型粘度は200Pa・s、n−ヘキサントレランスは42ml/gであった。
【0064】
比較例1
撹拌器および温度計を備えた加圧反応釜に、p−tert−ブチルフェノール150部を仕込み、120℃で加熱溶解し、92%パラホルムアルデヒド粉末(水分含有率8%)65部と水酸化カルシウム0.9部を加えて130℃まで加熱し、2時間反応させてレゾール型フェノール樹脂を調製した。得られたレゾール樹脂は、GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が920であった。
このレゾール樹脂40部にJX日鉱日石エネルギー製AFソルベント7号10部を加えて110℃で1時間攪拌し、樹脂分濃度80%のレゾール型フェノール樹脂溶液を調製した。以下、得られたレゾール型フェノール樹脂溶液を「レゾール樹脂溶液(1)」と略記する。
撹拌器、温度計、縮合水分離器および窒素導入管を備えた反応釜に、酸価165mgKOH/gのガムロジン100部、無水マレイン酸4部を仕込み、昇温して温度が200℃に到達した時点でペンタエリスリトール8部、グリセリン5部と蟻酸カルシウムの0.9部を加え、さらに270℃に昇温した。その後270℃で酸価が17mgKOH/g以下になった時点で温度を下げてロジンエステル樹脂を得た。以下、得られたロジンエステル樹脂を「RE樹脂(1)」と略記する。
このRE樹脂(1)100部にAFソルベント7号25部を加えて混合し170℃に保持した混合物を仕込み、さらに110℃に加温したレゾール樹脂溶液(1)30部を加えながら、220℃へ昇温し1時間反応させた時点で反応を終了させて、樹脂分濃度80質量%の印刷インキワニス用樹脂溶液(1)〔以下、「樹脂溶液(1)」と略記する。〕を得た。得られた樹脂溶液は、この樹脂溶液に同量のトルエンを加えた場合の25℃におけるガードナー粘度がK〔樹脂分の重量平均分子量(Mw)は11万であった。〕であった。
【0065】
(浸透乾燥型新聞インキ用のワニスの調整)
200℃の樹脂溶液(1)100部に大豆油27部を加え、温度を200℃に調整して60分間加熱混合し、次いでAFソルベント6号51部およびBHT0.2部を加えた。150℃でエチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート0.2部を加えて1時間加熱攪拌して、印刷インキ用ワニスを得た。以下、得られたワニスを「ワニス(1)」と略記する。
このワニス(1)は、タック値11、E型粘度は450Pa・s、nH−トレランスは16ml/gであった。
【0066】
比較例2(浸透乾燥型新聞インキ用のワニスの調整)
200℃の樹脂溶液(1)100部に大豆油30部を加え、温度を180℃に調整して60分間加熱混合し、次いでAFソルベント6号50部およびBHT0.2部を加えた。150℃でエチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート0.1部を加えて1時間加熱攪拌して、印刷インキ用ワニスを得た。以下、得られたワニスを「ワニス(2)」と略記する。
このワニス(2)は、本ワニスのタック値14、E型粘度は370Pa・s、nH−トレランスは15ml/gであった。
【0067】
比較例3(熱乾燥型オフセットインキ用ワニスの調製)
200℃の樹脂溶液(1)100部に大豆油33部を加え、温度を200℃に調整して60分間加熱混合し、次いでAFソルベント7号55部およびBHT0.2部を加えた。150℃でエチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート0.2部を加えて1時間加熱攪拌して、印刷インキ用ワニスを得た。以下、得られたワニスを「ワニス(3)」と略記する。
このワニス(3)は、タック値10、E型粘度は270Pa・s、nH−トレランスは14ml/gであった。
【0068】
比較例4(熱乾燥型オフセットインキ用ワニスの調製)
ロジン変性フェノール樹脂(「BECKACITE1126HV」DIC株式会社製)48部に対して、大豆油20部、AFソルベント7号(新日本石油(株)社製)15部を添加して、220℃で1時間保持した。
その後、AFソルベント7号15.7部、エチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート1部を添加して、160℃で1時間保持し、さらに、酸価2.3、固形分水酸基価11.0、イソフタル酸を酸成分として含有する油長78のアルキッド樹脂を12部加え、最後にBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)0.3部を加え、アルキッド樹脂添加ロジン変性フェノール樹脂ワニスを調製した(樹脂成分中に占めるアルキッド樹脂の割合:20質量%)。以下、得られたワニスを「ワニス(4)」と略記する。
【0069】
実施例4、5及び比較例5、6[浸透乾燥型新聞インキの調製例及び評価]
実施例1で調整したワニス(a1)、実施例2で調整したワニス(a2−2)、比較例1で調整したワニス(1)、および比較例2で調整したワニス(2)をそれぞれ用いて印刷インキの調製行った。
具体的には、下記の配合割合で、3本ロールミルを用いて練肉し、グラインドメーター値で7.5μm以下になるように調整した。25℃におけるインキのラレー粘度値が7.5〜8.5(Pa.s)になるようにJX日鉱日石エネルギー製AFソルベント6号を用いて調整した。
[配合]
前記の印刷インキ用樹脂ワニス・・・・・46質量部
カーボンブラック・・・・・・・・・・・23質量部
植物油・・・・・・・・・・・・・10−16質量部
AFソルベント6号・・・・・・・・・必要量。
尚、カーボンブラックは三菱化学株式会社製カラー用カーボンブラック#95である。
【0070】
[浸透乾燥型インキの評価]
ラレー粘度:JISK5701−1に記載のL型粘度計による方法にて測定した。
流度:25±0.5℃の恒温環境にて測定。インキ0.5CCをガラス板流度測定器(傾斜90°)の上端に置き、10分後、ガラス板上端からインキが流動した距離を測定した。
セット試験:インキ0.0625mlをRIテスター(株式会社明製作所製)を使用し、4分割ロールで新聞用更紙に展色後、展色紙と上質紙を重ねて自動セット試験機(東洋精機製作所製)により、セット時間(分)即ち、インキが上質紙に付着しなくなる時間を測定した。
乳化性:25℃に空調された室内において、リソトロニック乳化試験機(NOVOCONTROL社製)を用い、40℃、1500rpm、イオン交換水2ml/minの条件にて測定を行った。
ミスチング:25℃に空調された室内において、JIS K5701−1(平版インキ試験方法)の4.2粘着性の項に記載のロータリータックメータのローラー直下に用紙を静置し、温度が32℃、ローラーの回転数が2000rpmの条件で2分間回転転させたときの、用紙に堆積したインキの重量である。測定サンプル量は2.62mlである。
試験の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

[評価]
表1により明らかな様に、アルキッド樹脂を主成分とするワニスを使用したインキ系でも、従来からのロジン変性フェノール樹脂を主成分とするワニスを使用したインキ系とほぼ同等の物理的性状(粘度・流度・乳化性・ミスチング)を維持した浸透乾燥型オフセットインキを調製することが出来た。また、一般に、浸透乾燥型オフセットインキでは、セット時間が速いよりもむしろ、遅い方がオフセット印刷適性の安定化(機上安定性の向上)に寄与するが、アルキッド樹脂を主成分としたワニスを使用したインキ系は従来型と同等または、むしろセット時間が向上することが確認された。
【0072】
実施例6、及び比較例7、8[ヒートセット型印刷インキの調整及び評価]
実施例3で調整したワニス(a3)、比較例3で調整したワニス(3)、及び比較例4で調整したワニス(4)をそれぞれ用いて印刷インキの調整を行った。
具体的には、上記何れかのワニス70部、ファーストゲンブルー5396SD(藍顔料:DIC(株)製)16部、AFソルベント7号5部を三本ロールミルで混合練肉し、JISK5701−1に記載の練和度試験にて練和度が2.5μm以下になっている事を確認した。そして、25℃におけるインキのラレー粘度値が18〜20(Pa.s)になるようにAFソルベント7号、ワニスを追加し合計100部になるように調整した。
【0073】
[ヒートセット型印刷インキの評価]
濃度及び光沢: インキ0.125mlを、RIテスター(株式会社明製作所製)を用いて2分割ロールでアート紙に展色したのち、雰囲気温度100℃の乾燥機に10秒放置し、ヒートセットさせた展色物(インキを紙等の被印刷物に印刷・塗布したもの)を濃度、光沢測定に用いた。
そしてヒートセットしてから24時間後の展色物の光沢値を60°光沢計にて、濃度を濃度計にて測定した。
ヒートセット試験:
インキ0.15mlをRIテスター(株式会社明製作所製)で2分割ロールを使用してアート紙に展色したのち,雰囲気温度100℃の乾燥機に5秒間放置した。その後乾燥機から展色紙を取り出してインキ展色面のベタツキの程度を比較した。
乳化性:25℃に空調された室内において、リソトロニック乳化試験機(NOVOCONTROL社製)を用い、40℃、1500rpm、イオン交換水2ml/minの条件にて測定を行った。
ミスチング:25℃に空調された室内において、JISK5701−1(平版インキ試験方法)の4.2粘着性の項に記載のロータリータックメータのローラー直下に用紙を静置し、温度が32℃、ローラーの回転数が2000rpmの条件で2分間回転転させたときの、用紙に堆積したインキの重量である。測定サンプル量は2.62mlである。
【0074】
【表2】