【課題】軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することができ、しかも、組立分解が容易であると共に、更に、高速で動かしても中空ヘルドフレームの内部でサイドステーが動くことがなく、中空ヘルドフレームの内面を傷つける心配がない炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ、及び、フレームステーブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造を提供する。
【解決手段】少なくともサイドステー3が取付けられるフレーム本体2の中空部2Aの長手方向両端部にて、上板10a、下板10b及び両側板11a、11bにて形成される中空部2Aの内周面の全周に繊維強化複合材から成る補強体70が追加して、一体に配置され、補強体70は、少なくとも、上板10a、下板10b及び両側板11a、11bの長手方向に直交する方向に配列された連続した強化繊維fを有している。
前記補強体は、前記強化繊維がシート状に配列された強化繊維シートに樹脂含浸して形成され、前記中空部の内周面に沿って配置された前記強化繊維シートは、その両端部が前記上板又は前記下板の部位にて重ね継手により接続されることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記補強体は、強化繊維を一方向に配列して形成されたUD材、又は、2軸で織られたクロス材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記補強体の強化繊維は、炭素繊維、アラミド繊維若しくはガラス繊維であるか、又は、前記繊維を2種以上混合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記中空部には、前記補強体を配置した領域を除いてハニカム又は発泡材を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記上板及び前記下板は、炭素繊維、アラミド繊維若しくはガラス繊維か、又は、前記繊維を2種以上混合したものを長手方向に引き揃えて作製された一方向繊維強化複合材にて作製され、長手方向に直交する上下方向の厚さが5mm以上20mm以下とされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記サイドステーが取付けられる前記中空部の長手方向両端部にて、前記上板の下面側で且つ前記補強体の内面に第一の金属製バーが配置され、前記下板の上面側で且つ前記補強体の内面に第二の金属製バーが配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記補強体は、前記上板、前記下板及び前記両側板の長手方向に沿った前記補強体の長さが前記第一の金属製バー及び前記第二の金属製バーの両端部よりそれぞれ5mm以上長くなるように配置されていることを特徴とする請求項8に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ。
前記第一の金属製バーは、前記上板及び前記補強体を貫通するようにして挿通された固定ネジ部材に螺合されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のサイドステー取付部構造。
【背景技術】
【0002】
ヘルドフレームは、織機において経糸を通すためのヘルド(ソウコウ)を支持するものであり、製織に際し、一対のヘルドフレームを交互に上下運動させて経糸を開口させ、その開口に緯糸を打込むためのものである。
【0003】
一般に、ヘルドフレーム1は、
図1にその一例を示すように、長手方向(矢印A方向)に延在した上下枠フレームステーブ、即ち、両フレーム本体2と、両フレーム本体2の長手方向両端部に配置された、両フレーム本体2を連結するサイドステー3とを有する。またフレーム本体2の長さ方向に直交する短手方向(矢印B方向)の、互いに対向した一端側には、フレーム本体2の長手方向に沿ってヘルド4を支持するフックハンガー用の支持突起部5が一体に形成されている。
【0004】
また、フレーム本体2とサイドステー3は、一般的に、連結部6によって、取り外し可能な構造で接続されている。その他に、ヘルドフレーム1同志の干渉を防ぐための案内板7や、ヘルドフレーム1に上下動の動力を伝達する箇所のカップリング8がヘルドフレーム1には取付けられている。
【0005】
フレーム本体2は、現在ほとんどはアルミ製である。アルミ製フレーム本体の場合は、中空構造であるが、中空部分の強度を出すために数本の横リブの入った構造となっている。しかし、織機の織りスピードを上げると、アルミニウムの強度、特に疲労強度がもたず、現況では、連続使用すると早期に破壊に至るものが発生している。
【0006】
近年、織機の高速化に対応するために、種々の軽い繊維強化複合材(FRP)製ヘルドフレームが提案されている。
【0007】
そこで、本発明者らは、特許文献1に記載される炭素繊維強化複合材(CFRP)製ヘルドフレームステーブ、及び、サイドステー取付部構造を提案した。
【0008】
特許文献1に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ、及び、サイドステー取付部構造によると、本願添付の
図2に示すように、フレーム本体2は、上板10aに固着された第一の固定部材としての固定の金属製バー(第一の金属製バー)20の下方に所定距離離間して第二の固定部材としての可動の第二の金属製バー40が配置され、中空構造(即ち、中空部)2Aが構成されている。サイドステー3は、サイドステー本体30と、上記フレーム本体2の中空部2Aに挿入し取付けられる挿入部31とを有している。
【0009】
この構成にて、サイドステー3をフレーム本体2の中空部2Aの側部に挿入するに先立って、先ず、サイドステー固定ボルト38を、上板10aから第一の金属製バー20へと貫通穴12、21を貫いて貫通し、第二の金属製バー40のねじ穴41に螺合させる。次いで、第一の金属製バー20と第二の金属製バー40とで挿入部31を挟持するように、挿入部31のU字溝32に固定ボルト38の軸部が嵌合するようにしてサイドステー3の挿入部31をフレーム本体2の中空部2Aに挿入する。
【0010】
これにより、サイドステー3の挿入部31の上面凸状突起33が金属製バー20の溝22に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側面に一体的に装着される。サイドステー挿入部31の下面は、第二の固定金属製バー40の上面に当接される。
【0011】
従って、サイドステー3の挿入部31は、固定ボルト38により、第一の金属製バー20と第二の金属製バー40とによって挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
つまり、上記特許文献1に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2とサイドステー3とを連結するためのサイドステー取付部構造60は、ヘルドフレームステー2の中空部2Aの下面に配置した金属製バー40を、ヘルドフレームステーブ2の上面に配置した炭素繊維強化複合部材10aと金属製バー20、及び、サイドステー3の挿入部31を貫いたボルト38によるネジ機構により上方に引き上げることで、最外面の炭素繊維強化複合部材10aと金属製バー40との間に圧縮力を発生させ、それによりサイドステー3をヘルドフレームステーブ2に固定する方式である。
【0014】
斯かる上記特許文献1に記載の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2とサイドステー3とを連結するためのサイドステー取付部構造60は、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することができ、しかも、組立分解が容易であるという特徴を有している。
【0015】
しかしながら、本発明者らの更なる研究実験の結果によると、次のような問題を有していることが分かった。
【0016】
つまり、
(1)ヘルドフレームステーブ2の上面の炭素繊維強化複合部材10aにも、サイドステー3を固定するための圧縮力が入る。炭素繊維強化複合部材10aの圧縮力は、金属に比較し弱いことから、ボルト38を強く締め過ぎるとこの部分が破壊する可能性がある。例え、炭素繊維強化複合部材の上面に複合部材保護部材としての座金板を配置したとしても同じである。このために、サイドステー3の取付作業が繊細になり、作業効率を落としていた。
(2)また、サイドステー3の挿入部31の下面に配置した金属製バー40を上に引き上げながら、サイドステー3を固定することから、サイドステー挿入部31の下面が中空部2A内で、宙に浮いた状態となり、ヘルドフレーム1が高速で動いた際に、このサイドステー挿入部31の下面が揺れ、ヘルドフレームステーブ2の中空部2A内面を傷つける可能性がある。そのため、挿入部31を固定させるため、更に金属製バー40の下面にもう一つの金属製バーを中空部2A内に取付け、金属製バー40の揺れを防止する必要があった。このための作業が煩雑で、コストアップの原因となっていた。
【0017】
本発明は、上記観点から、繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2の構造を更に発展させたものである。
【0018】
本発明の目的は、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することができ、しかも、組立分解が容易であると共に、更に、高速で動かしても中空ヘルドフレームステーブの内部でサイドステーが動くことがなく、中空ヘルドフレームステーブの内面を傷つける心配がない炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ、及び、フレームステーブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ、及び、フレームステーブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、
長手方向に延在する矩形状の炭素繊維強化複合材製の両側板と、
前記両側板の上端及び下端を長手方向に沿って互いに連結する炭素繊維強化複合材製の上板及び下板と、
を備え、前記上板、前記下板及び前記両側板にて形成される中空部の長手方向両端部にサイドステーが取り付けられる中空構造を有した炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブにおいて、
少なくとも前記サイドステーが取付けられる前記中空部の長手方向両端部にて、前記上板、前記下板及び前記両側板にて形成される前記中空部の内周面の全周に繊維強化複合材から成る補強体が追加して、一体に配置され、
前記補強体は、少なくとも、前記上板、前記下板及び前記両側板の長手方向に直交する方向に配列された連続した強化繊維を有することを特徴とする炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブが提供される。
【0020】
第1の本発明の一実施態様によれば、前記補強体は、前記強化繊維がシート状に配列された強化繊維シートに樹脂含浸して形成され、前記中空部の内周面に沿って配置された前記強化繊維シートは、その両端部が前記上板又は前記下板の部位にて重ね継手により接続される。
【0021】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記補強体は、強化繊維を一方向に配列して形成されたUD材、又は、2軸で織られたクロス材である。
【0022】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記補強体の強化繊維は、炭素繊維、アラミド繊維若しくはガラス繊維であるか、又は、前記繊維を2種以上混合したものである。
【0023】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記中空部には、前記補強体を配置した領域を除いてハニカム又は発泡材を配置する。
【0024】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記上板及び前記下板は、炭素繊維、アラミド繊維若しくはガラス繊維か、又は、前記繊維を2種以上混合したものを長手方向に引き揃えて作製された一方向繊維強化複合材にて作製され、長手方向に直交する上下方向の厚さが5mm以上20mm以下とされる。
【0025】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記補強体の厚みは、0.1mm以上0.4mm以下とされる。
【0026】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記サイドステーが取付けられる前記中空部の長手方向両端部にて、前記上板の下面側で且つ前記補強体の内面に第一の金属製バーが配置され、前記下板の上面側で且つ前記補強体の内面に第二の金属製バーが配置されている。
【0027】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記補強体は、前記上板、前記下板及び前記両側板の長手方向に沿った前記補強体の長さが前記第一の金属製バー及び前記第二の金属製バーの両端部よりそれぞれ5mm以上長くなるように配置されている。
【0028】
第2の本発明によれば、前記第一の金属製バー及び前記第二の金属製バーが配置された上記いずれかの構成とされる中空構造を有した炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブを、前記サイドステーに取り付けるためのサイドステー取付部構造であって、
前記サイドステーは、垂直方向に延在するサイドステー本体と、前記サイドステー本体から前記ヘルドフレームステーブ側へと突出し、前記ヘルドフレームステーブの前記中空部内へと挿入可能なサイドステー挿入部とを備え、
前記サイドステー挿入部を前記ヘルドフレームステーブ内の前記第一の金属製バーと前記第二の金属製バーとの間に挿入し、
前記上板及び前記補強体を貫通するようにして取付けネジ部材を挿通し、前記取付けネジ部材を前記第一の金属製バーに形成されたネジ穴に螺合させ、更に、前記第一の金属製バーのネジ穴から突出した前記取付けネジ部材の先端を前記前記サイドステー挿入部の上面に当接し、前記サイドステー挿入部を前記第二の金属製バーの方へと押し付け、
前記ヘルドフレームステーブ内へと挿入された前記サイドステー挿入部を、前記取付けネジ部材の先端部と前記第二の金属製バーとにより挟持して前記ヘルドフレームステーブに固定する、
ことを特徴とするサイドステー取付部構造が提供される。
【0029】
第2の本発明の一実施態様によれば、
前記サイドステー挿入部は、
前記第一の金属製バーと対向する上面には、前記取付けネジ部材の先端が当接する平面部と、前記平面部と隣接して前記サイドステー挿入部の前記中空部への挿入方向に沿って前記第一の金属製バーの下面に形成された係合部と嵌合する被係合部とを有し、
前記第二の金属製バーと対向する下面には、前記サイドステー挿入部の前記中空部への挿入方向に沿って前記第二の金属製バーの上面に形成された係合部と嵌合する被係合部を有している。
【0030】
第2の本発明の他の実施態様によれば、
前記第一の金属製バーは、前記上板及び前記補強体を貫通するようにして挿通された固定ネジ部材に螺合されている。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、軽量化と高剛性化による、織機の高速化、制振性を達成することができ、しかも、組立分解が容易であると共に、更に、高速で動かしても中空ヘルドフレームステーブの内部でサイドステーが動くことがなく、中空ヘルドフレームステーブの内面を傷つける心配がない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ、及び、ヘルドフレームステーブとサイドステーとを連結するためのサイドステー取付部構造を図面に則して更に詳しく説明する。
【0034】
実施例1
(ヘルドフレームの全体構成)
図3〜
図7に、本発明の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ2の一実施例の概略構成を示す。
図3及び
図4は、それぞれ、ヘルドフレーム1(
図1参照)を構成する、炭素繊維強化複合材製の上枠(下枠)ヘルドフレームステーブ(フレーム本体)2、即ち、中空構造を有するフレーム本体2を示す斜視図及び横断面図である。上枠及び下枠ヘルドフレームステーブは同じ構造とされるので、以下の説明では、単に、ヘルドフレームステーブ(フレーム本体)として説明する。
図5は、本発明の特徴をなすフレーム本体内周補強体70を説明する図である。
図6は、フレーム本体2と、フレーム本体2の長手方向一方の側部に位置するサイドステー3の一部を示す斜視図であり、
図7は、フレーム本体2とサイドステー3とを連結するためのサイドステー取付部構造60の一実施例を示す。
【0035】
以下の説明では、本実施例のフレーム本体2の構成をより良く理解し得るように、単に説明のために、
図3にてY方向を上下方向(又は、短手方向)といい、X方向を左右方向(又は、長手方向)という。
【0036】
本実施例にて、ヘルドフレーム1は、全体構成は、
図1に示す従来のヘルドフレーム1と同様の構成とされ、細長形状の長手方向に延在する中空構造を有したフレーム本体とされるヘルドフレームステーブ2と、このフレーム本体2の長手方向両側部に一体に設けられたサイドステー3とを備えている。
【0037】
フレーム本体2は、
図3に示すように、長手方向に延在する中空の構造体とされ、中空部2Aを有しており、また、この中空部2Aの長手方向に直交する短手方向の一端側には、即ち、
図3にてフレーム本体2の長手方向に沿った下端縁側には、フレーム本体2の長手方向に沿ってヘルド4(
図1参照)を支持するフックハンガー用の支持突起部5が一体に形成されている。
【0038】
また、フレーム本体2の長手方向の両端部は、
図6及び
図7に示すように、サイドステー3とフレーム本体2とを結合するための構造、即ち、サイドステー取付部構造60とされる。
【0039】
本発明にて、炭素繊維強化複合材製のフレーム本体2の大きな目的は、軽量で、且つ、長手方向(左右方向)及び短手方向(上下方向)の曲げ剛性を上げることにある。限られたスペースで、且つ、より効率的にこれを達成するには、要求される箇所に効果的に材料を配置することが要求される。そのためには、フレーム本体2の全長に渡ってこの曲げ剛性を上げることを目的とした強化繊維の配置とし、端部のみに、要求されるサイドステー取付けのための周方向の強度対策を、追加して実施するのが最適な設計方法である。従って、本発明では、必要最小限の範囲でその対策を実施するものである。
【0040】
そこで、本実施例のヘルドフレーム1にて、炭素繊維強化複合材製のフレーム本体2の中空部2Aは、
図3及び
図4(a)に示すように、長手方向に延在する矩形状の両側板11(11a、11b)と、両側板11a、11bの上端及び下端を連結する横リブ10、即ち、上板10a及び下板10bと、にて構成される。
【0041】
このように、本発明では、中空構造とされるフレーム本体2の上下両端、即ち、中空部2Aの上下両端縁部に横リブ10(10a、10b)を配置する構造とされ、また、後述するように、横リブ10は、長手方向に長繊維が引き揃えて作製されたUD形状のFRP(一方向繊維強化複合材)で作製される。従って、ヘルドフレーム1は、斯かる構造によって、上下方向の撓みを決める上下方向のヘルドフレームステーブ2の断面剛性を、より少ない材料で最大に得られる構造となっている。
【0042】
更に、本発明の特徴ある構成によれば、フレーム本体2の中空部2Aの長手方向両端部の内周面には、長手方向両端縁から所定の幅W70に渡ってフレーム本体内周を補強するための繊維強化複合材製とされる補強体、即ち、フレーム本体内周補強体70がフレーム本体2の内周面全周に追加して、一体に配置される。この点については、後で更に詳しく説明する。
【0043】
更に、本発明によれば、上板10aの長手方向両端部には、即ち、フレーム本体内周補強体70が配置されたフレーム本体2の長手方向両端部には、各々、サイドステー取付部構造60を構成するために、上板10aの下面側で、フレーム本体内周補強体70の内面に細長形状の金属製のサイドステー固定部材、即ち、例えば、鋼、ステンレススチール、銅、アルミ等で作製された金属製バー(第一の金属製バー)20Aが設けられる。
【0044】
同様に、下板10bの長手方向両端部にも、即ち、フレーム本体内周補強体70が配置されたフレーム本体2の長手方向両端部にもまた、各々、サイドステー取付部構造60を構成するために、下板10bの上面側で、フレーム本体内周補強体70の内面に細長形状の金属製のサイドステー固定部材、即ち、例えば、鋼、ステンレススチール、銅、アルミ等で作製された金属製バー(第二の金属製バー)20Bが設けられる。
【0045】
本実施例では、金属製バー20(20A、20B)は、横断面形状が矩形状とされ、幅T20は両側板11a、11bの内面に配置されたフレーム本体内周補強体70の内面間の距離T70inと同じ(又は、少し小さく)され、上述のように、両側板11a、11bの内側に配置されたフレーム本体内周補強体70の内面間に配置される。金属製バー20(20A、20B)の側板11の長手方向に沿った長手方向長さL20(L20A、L20B)は所定長さ、例えば、3〜8cm、通常、5cm程度とされる。厚さH20(H20A、H20B)は、5〜10mmとされ、通常、5mm程度とされる。第一及び第二の金属製バー20A、20Bは、同じ形状、寸法とすることもでき、また、異なるものとすることもできる。
【0046】
ただ、第一、第二の金属製バー20A、20Bの長さL20A、L20Bは、補強体70の長手方向の長さ、即ち、幅W70より短くされる。つまり、補強体の幅70は、第一、第二の金属製バー20A、20Bの長さL20A、L20Bより、1cm以上は長くされ、例えば、4〜9cm、通常、6cm程度とされる。特に、
図7に示すように、補強体70は、上板10a、下板10b及び両側板11a、11bの長手方向に沿った長さ、即ち、幅W70が第一の金属製バー20A及び第二の金属製バー20Bの両端部よりそれぞれ△LA1、△LA2、△LB1、△LB2が5mm以上長くなるように配置されるのが好ましい。
【0047】
上記補強体70と第一、第二の金属製バー20A、20Bとの寸法配置関係の重要性については、後で詳しく説明する。
【0048】
更に、本実施例によると、詳しくは後述するが、
図6、
図7をも参照すると理解されるように、第一の金属製バー20Aには、その長手方向に略等間隔で3個のネジ穴84、85、86が形成されている。両端のネジ穴84、86には、第一の金属製バー20Aを上板10aに取付けるために、固定ネジ部材92、93が螺合され、中央部のネジ穴85には、フレーム本体2にサイドステー3を取付けるための取付けネジ部材90が螺合される。
【0049】
なお、第一の金属製バー20Aを固定ネジ部材92、93にて上板10aに固定することは必ずしも必須ではないが、後述するように、フレーム本体2へのサイドステー組み付け作業を容易とする点で有効である。
【0050】
本実施例では、矩形状をしたフレーム本体2の幅T1と同じ幅W80を有した板厚T80が3〜5mm程度とされる金属製の座金部材80をフレーム本体2の上面に配置し、第一の金属製バー20Aは、この座金部材80を介してネジ部材92、93により、上板10aの下面側で、フレーム本体内周補強体70の内面に取付けられる。なお、ネジ部材90には、ネジ頭90aと座金部材80との間に、緩み止めとして機能する圧縮バネ部材91が配置されている。
【0051】
図3及び
図4(a)を参照すると、フレーム本体2の下方に一体に形成される支持突起部5は、フレーム本体2の一方側の側板11aの下端縁長手方向に沿って、側板11aと一体に形成された矩形状の支持板5aと、支持板5aの下方端に隣接して形成された横断面形状が四角形とされる突部5bとにて構成される。実際には、
図4(b)に示すように、支持板5aは、フレーム本体2の側板11a、11bを、下方へと更に延長し、下端にて突起材5cを囲包するように互いに接合して形成することもできる。
【0052】
つまり、
図4(b)を参照すると、本実施例によれば、上記フレーム本体2に連接して一体に設けられるフックハンガー用の支持突起部5の支持板5aは、フレーム本体2の両側板11(11a、11b)を形成する炭素繊維強化複合材を互いに接着することにより形成される。また、支持突起部5の先端部は、フックハンガー用として機能するために所定の形状寸法を有した突起5bを有する。この突起5bは、支持板5aを形成する炭素繊維強化複合材11a、11bの間に、長繊維強化複合材、短繊維強化複合材、樹脂、或いは、樹脂発泡材から成る突起材5cを介在させて一体に形成することができる。突起材5cは、強化繊維は、炭素繊維に限定されず、ガラス繊維、有機繊維などを使用することができる。
【0053】
中空部2Aを有する中空構造体とされるフレーム本体2、及び、支持突起部5は、実質的に炭素繊維強化複合材にて作製される。理解を容易とするために一例として、本実施例におけるフレーム本体2の具体的寸法を挙げれば、以下の通りである。
【0054】
フレーム本体2の上下方向の長さW1は118mm、支持突起部5の上下方向の長さW2は37mmとされる。即ち、フレーム本体2の全体の幅Wは、155mm、フレーム本体2の下端、即ち、下板10bから突起部5bまでの上下方向の長さW3は25mmとされる。フレーム本体2の長手方向の長さLは、3500mmを越える長さとし得るが、本実施例では2374mmとした。
【0055】
また、本実施例では、両側板11a、11bの外表面間の大きさT1は9mmとされ、各側板11a、11bの厚さT2は1mm(即ち、両側板11a、11bの内側面間の距離T3は7mm)とした。また、支持板5aの厚さT4は、2mmとした。特に、フレーム本体2の上板10a及び下板10bは、長繊維の炭素繊維、アラミド繊維若しくはガラス繊維か、又は、これら繊維を2種以上混合したもののいずれかを一方向に揃えて、長手方向に配列して形成された一方向繊維強化複合材とされ、厚さH1、H2は5mm以上20mm以下(通常、5〜10mm)とされる。特に上板10a、下板10bに関して言えば、5mm未満では、ヘルドフレームステーブ2に要求される所要の強度が得られなくなる。一方、上限値としては、20mmとされるが、20mmを越えると、強度は上がるが、ヘルドフレームステーブ2を炭素繊維強化複合材で作製する重要な要因をなす、ヘルドフレームステーブの「軽量化」の点でメリットがなくなってしまう。つまり、ヘルドフレームステーブ2をアルミニウムにて作製した従来の場合と同様な重さとなってしまう虞がある。本実施例では、軽量化を考慮して、上板10a、下板10bの厚さH1、H2は、下限値である5mmとした。勿論、H1、H2の値は、設計に応じて、それぞれ異なる値とすることもできる。
【0056】
次に、本実施例の炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームステーブ(フレーム本体)2について詳しく説明する。
【0057】
(フレーム本体)
上述したように、炭素繊維強化複合材製のフレーム本体2は、軽量で、且つ、長手方向(左右方向)及び短手方向(上下方向)の曲げ剛性を上げるために、フレーム本体2の全長に渡ってこの曲げ剛性を上げることを目的とした強化繊維の配置とし、端部のみに、要求されるサイドステー取付けのための周方向の強度対策が施される。
【0058】
つまり、本実施例の繊維強化複合材製ヘルドフレーム1にて、中空構造とされるフレーム本体、即ち、ヘルドフレームステーブ2の両側板11(11a、11b)を形成する炭素繊維強化複合材に使用される長繊維の形態は、一方向に引き揃えられたUD形状、2軸に織られた平織り及び朱子織り形状、または、3軸に織られた3軸織り形状が単独で、または、複数組み合わされて使用することができる。横リブ10としての繊維強化複合材製の上板10a、下板10bは、上述のように、長手方向に沿って一方向に引き揃えられたUD形状とされる。
【0059】
また、炭素繊維強化複合材及び繊維強化複合材に使用されるマトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、または、フェノール樹脂のいずれかが使用できる。
【0060】
炭素繊維強化複合材及び繊維強化複合材の繊維体積含有率は、30〜70%、通常、50〜60%とされる。
【0061】
フレーム本体内周補強体70を形成する繊維強化複合材は、
図5(a)〜(c)に図示するように、長繊維fを一方向に引き揃えて作製したUD形状の長さL70、幅W70の矩形状とされる繊維強化シートを、
図5(b)に示すように、長繊維fがフレーム本体20の中空部2Aの内周面に沿って円周状に配向するように配置し、
図5(c)に示すように、繊維強化シートの長手方向両端部70a、70bを重ね継手により接合するようにして作製される。重ね継手部は、
図5(c)に示すように、上板10aに対向する部位(細幅部)が好ましい。勿論、下板10bに対向する部位(細幅部)であっても良い。フレーム本体側板11a11bに対向する位置では、重ね継手部にて段差が付くことが避けられず、好ましくない。
【0062】
補強体70は、上述のように、使用される長繊維fの配向形態は、上述のように、一方向に引き揃えられたUD形状とするのが好ましいが、2軸に織られた平織り及び朱子織り形状、または、3軸に織られた3軸織り形状が単独で、または、複数組み合わされて使用することもできる。横リブ10としての上板10a、下板10bも又、上述のように、フレーム本体2の長手方向に沿って一方向に引き揃えられたUD形状とされる。いずれにしても、補強体70を構成する強化繊維には、少なくとも、上板10a、下板10b、両側板11a、11bの長手方向に直交する方向に配列された連続した繊維fを有するものとされる。
【0063】
繊維強化複合材製補強体70に使用される強化繊維は、炭素繊維、アラミド繊維若しくはガラス繊維か、又は、前記繊維を2種以上混合したものとされる。また、繊維強化複合材製補強体70に使用されるマトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、または、フェノール樹脂のいずれかが使用できる。繊維強化複合材の繊維体積含有率は、30〜70%、通常、50〜60%とされる。
【0064】
補強体70の厚さT70は、0.1〜0.4mmとされ、従って、補強体70の狭幅部の内面間の距離T70inは、6.2〜6.8mmとされる。従って、上述した金属製バー20(20A、20B)の補強体狭幅部内面間における厚さ、即ち幅T20は、6.1〜6.7mmとされる。
【0065】
(サイドステー取付部構造)
上述のように、サイドステー取付部構造60を構成するためにフレーム本体2の両側端部上端及び下端にはサイドステー3の固定部材として第一、第二の金属製バー20(20A、20B)が配置されている。第一の金属製バー20Aは、上述したように、上板10aの下面に補強体70の上端部を介してネジ部材92、93にて固定することもできるが、固定しなくても良い。また、第二の金属製バー20Bは、下板10bの上面の補強体70の内面に接着剤などにて固定することもできる。
【0066】
図6、
図7に、上記フレーム本体2の長手方向右側端に設置された金属製バー20(20A、20B)と、右側のサイドステー3とを連結するためのサイドステー取付部構造60の一実施例を示す。フレーム本体2の左側端も右側端と同様にサイドステー3が配置され、同様のサイドステー取付部構造とされるが、
図6、
図7には省略されている。
【0067】
本実施例では、
図6、
図7に示すように、座金板80、上板10a、及び、上板10aに対面した補強体70の上端重ね継手部70a、70bには、座金板80から上板10a及び補強体70を上下方向に同中心にて貫いた貫通穴81(81a、81b、81c)、82(82a、82b、82c)、83(83a、83b、83c)が形成されている。
【0068】
座金板80は必ずしも必要ではないが、固定ネジ部材92、93(
図6、
図7)の頭の直ぐ下に配置して、及び、ネジ部材90のばね材91の下端に位置して設けることは、繊維強化複合材(上板)10aを保護する点から有用である。
【0069】
フレーム本体2の長手方向両端に各々設置された第一の金属製バー20Aには、貫通穴81、82、83と同中心にて上下方向にネジ穴84、85、86が形成されている。また、断面が矩形状とされる第一の金属製バー20Aは、好ましくは、その下面に長手方向に沿って、横断面が矩形状とされる凹状の溝(係合部)22が加工されている。
【0070】
フレーム本体2の長手方向両端に各々設置された第二の金属製バー20Bには、その上面に長手方向に沿って、横断面が矩形状とされる凹状の溝(係合部)23が加工されている。
【0071】
一方、サイドステー3は、上下方向に延在した横断面が矩形状とされる金属製部材とされるサイドステー本体30と、その上端に直角方向に突出して一体に形成され、フレーム本体中空部2Aへと挿入されてフレーム本体2に取り付けられる挿入部31とを有している。サイドステー3、即ち、サイドステー本体30及び挿入部31としては、鋼、ステンレススチール、アルミニウムなどが使用される。
【0072】
挿入部31は、サイドステー本体30から直角方向に所定の長さL30、例えば、30〜80mmだけ延び、フレーム本体2の側面中空部2Aへと装着可能とされる概略矩形状をした板状部材とされる。また、挿入部31の厚さT30は、側面中空部厚みT70in(本実施例ではT70in=6.7mm)より少し薄めで、6.60〜6.65mmとされ、高さH30は、中空部2Aにおける第一及び第二の金属製バー20A、20Bの間の距離L2Aより少し小さくされ、本実施例では、97.2〜97.6mmとされる。
【0073】
また、本実施例では、上述した第一の金属製バー20Aに形成された溝22に嵌合するために、挿入部31の上面には、挿入部31の先端部からの距離L33の位置からサイドステー本体30の方向へと長手方向に沿って所定長さL33A(=L30−L33)に亘って、金属製バー20の溝22に嵌合するに適した横断面形状、即ち、本実施例では矩形状とされる凸状突起(被係合部)33Aが形成される。通常、L33AはL30の半分(L33A=(1/2)L30)程度とされる。従って、挿入部31の先端部から凸状突起33Aの先端部の間には、取付けネジ部材90の先端90bが当接される平面部31Aが形成される。
【0074】
上記構成にて、サイドステー3の挿入部31をフレーム本体2の側端部中空部2Aへと差し込むと、サイドステー3の挿入部31の上面凸状突起33Aが金属製バー20Aの下面溝22に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側端部に一体的に長手方向に整列して装着される。
【0075】
同様に、上述した第二の金属製バー20Bに形成された溝23に嵌合するために、挿入部31の下面には、挿入部31の先端部からサイドステー本体30の方向へと長手方向に沿って所定長さL33B(=L30)に亘って、金属製バー20Bの溝23に嵌合するに適した横断面形状、即ち、本実施例では矩形状とされる凸状突起(被係合部)33Bが形成される。従って、サイドステー3の挿入部31をフレーム本体2の側端部中空部2Aへと差し込むと、サイドステー3の挿入部31の下面凸状突起33Bが金属製バー20Bの上面溝23に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側端部に一体的に長手方向に整列して装着される。
【0076】
なお、上記説明では、第一、第二の金属製バー20A、20Bには、係合部として溝22、23が形成され、サイドステー挿入部31の上面、下面に被係合部として凸状突起33A、33Bが形成されるものとして説明したが、逆に、第一、第二の金属製バー20A、20Bの係合部22を凸状突起とし、サイドステー挿入部31の被係合部を溝とすることもできる。
【0077】
上述したように、上板10aに設置された第一の固定部材としての金属製バー(第一の金属製バー)20Aの下方に所定距離(L2A)離間して、下板10bの上面に第二の固定部材としての第二の金属製バー20Bが設置されている。第一及び第二の金属製バー20(20A、20B)は、第二の金属製バー20Bにはネジ穴が形成されていない点を除けば、第一の金属製バー20Aと同様の材料及び形状寸法とすることができる。
【0078】
一例を挙げれば、第一及び第二の金属製バー20A、20Bは、
図3、
図4(a)、
図7にて、例えば、上述したように、厚さH20A、H20Bは5mmとされ、また、補強体70の幅W70は6cmとされる。従って、第一及び第二の金属製バー20A、20Bの長さL20A、L20Bは、上記補強体70の幅W70(6cm)より短くされ、5cmとされる。また、座金板80は、
図6にて、例えば、厚さT80が5mm、長さL80が5cm、幅W80は、フレーム本体2の幅T1と同様に9mmとされる。
【0079】
次に、サイドステー3のフレーム本体2への取付方法について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0080】
本実施例では、上記構成にて、サイドステー3をフレーム本体2の中空部2Aの側部に挿入するに先立って、座金板80をフレーム本体上板10aの両端部上面に配置し、ネジ部材92、93を、座金板80、上板10a及び補強体70を上下方向に同中心にて貫いた貫通穴81(81a、81b、81c)、及び、83(83a、83b、83c)を挿通して、第一の金属製バー20Aのネジ穴84、86に螺合させる。これにより、第一の金属製バー20Aをフレーム本体2の長手方向両端部のフレーム本体内周補強体70の内面にネジ止めする。
【0081】
次いで、第一の金属製バー20Aと第二の金属製バー20Bとの間の中空部2A内へと、挿入部31の上面突起33A及び下面突起33Bを、それぞれ、第一の金属製バー20Aと第二の金属製バー20Bの溝22、23に嵌合させながら挿入部31を中空部2A内へと挿入する。
【0082】
これにより、サイドステー3の挿入部31の上面凸状突起33Aが金属製バー20Aの溝22に嵌合し、下面凸状突起33Bが金属製バー20Bの溝23に嵌合し、サイドステー3がフレーム本体2の側面中空部2Aに装着される。
【0083】
次いで、取付けネジ部材90が、座金板80、上板10a及び補強体70を上下方向に同中心にて貫いた貫通穴82(82a、82b、82c)を挿通して、第一の金属製バー20Aのネジ穴85に螺合させる。本例では、取付けネジ部材90のネジ頭90aと座金位置80との間には緩み止めバネ91が設置されている。
【0084】
取付けネジ部材90は、更にネジ込まれ、そのネジ先端90bが、第一の金属製バー20Aを突き抜け、フレーム本体2の挿入部31の上面先端平面部31Aに当接する。
【0085】
更に、取付けネジ部材90をネジ込むと、ネジ先端90bが、フレーム本体2の挿入部31の上面先端平面部31Aを下方へと押圧し、挿入部31の下面31Bを第二の金属製バー20Bの上面に当接し、第二の金属製バー20Bを下方へと押下する。従って、取付けネジ部材90をネジ込むことにより、フレーム本体の挿入部31は、取付けネジ部材90の先端部90bと第二の金属製バー20Bとの間に挟持され、サイドステー3は、フレーム本体2の側端部にしっかりと固定される。
【0086】
本発明によると、上述のように、サイドステー3の取り付けはネジ部材90の反力により行っている。そのため、補強体70のステー本体2の長手方向に沿った長さ、即ち、幅W70は、上述したように、サイドステー固定部材である第一、第二の金属製バー20A、20Bの長さL20A、L20Bより、両端5mm以上長くするのが最適である。即ち、
図7にて、(△LA1、△LA2、△LB1、△LB2)≧5mmである。第一、第二の金属製バー20A、20Bには、サイドステー押し付け力の反力が働き、その端面には応力集中を発生することから、それを緩和するために、補強体70の幅W70を長くすることが必要であり、本発明者らの実験により上記△LA1、△LA2、△LB1、△LB2は5mm以上あれば問題ないことが判明した。
【0087】
また、補強体70の厚みT70に関して言えば、サイドステー3の取り付けはネジ部材90の反力により行っていることから、このネジ部材90の強度確保が必須である。ネジ部材90の締め付け力としては、4N(ニュートン)・m以上の力が必要であり、この程度の力が無いとサイドステーをしっかりと固定することはできない。そのためには、どうしてもネジ外径M5ボルト以上を持ったネジ部材90の使用が必須となる。また、このM5ボルトで反力をとるサイドステー固定部材、特に、第一の金属製バー20Aはこれ以上の厚み、即ち、幅T20が当然必要である。そのためには、第一の金属製バー20Aは最低でも6mm以上の幅T20が必須である。それを満足させるためには、本実施例では、補強体70の厚みT70は0.4mm以下が必須となる。厚みT70があまり薄すぎても、引っかき傷程度で強化繊維の破断の恐れが起こり、製品への信頼性低下となることから、0.1mm以上の厚みが必要である。従って、本実施例では、上述のように、金属製バー20(20A、20B)の補強体内面間狭幅部における幅T20は、6.1〜6.7mmとされる。
【0088】
上述にて理解されるように、本発明によれば、ヘルドフレームステーブ中空部2Aの上面に配置した第一の金属製バー20Aにネジを切り、そこを貫いて設けた取付けネジ部材90を回転させ、このネジ部材90によりサイドステー挿入部31に押し付け力を導入し、ヘルドフレームステーブ中空部2Aの下面に配置した第二の金属製バー20Bにサイドステー挿入部31を押し付け固定する。この方法によれば、ヘルドフレームステーブ中空部2A内の上下方向に引張力が発生することになる。この引張力をヘルドフレームステーブ中空部2A内面に配置した補強体70の連続した強化繊維fで持たせることになる。このため、力として一番大きなサイドステー取付け力がヘルドフレームステーブ2の他の箇所へと入らない構造になっている。補強体70の強化繊維fは、引張り方向へは強い強度を発現することから、強いサイドステー取付け力を入れても、補強体70自体、及び、他の繊維強化複合材である上板10a、下板10b、両側板11(11a、11b)などが破壊することはない。
【0089】
また、構造的にも、サイドステー取付構造部材、即ち、第一、第二の金属製バー20(20A、290B)、サイドステー挿入部31などが、ヘルドフレームステー取付部構造60にしっかりと押し付けられることから、高速で動かしても、フレーム本体2の内部で動くことは無く、内面を傷つける心配もない。
【0090】
つまり、本発明によれば、取付けネジ部材90のネジ込みによる挿入部上面先端平面部31Aの下方への押圧により生じる第一及び第二の金属製バー20A、20Bの互いに離間する方向への力は、補強体70により受け止められ、従って、上板10a、下板10b、及び、両側板11a、11bに伝達されることはない。つまり、上板10a、下板10b、及び、両側板11a、11bが、サイドステー挿入部31を取付けネジ部材90の先端90bと第二の金属製バー20Bとの間に挟持する挟持力の影響を受けることはない。また、このようにして取付けられたサイドステー3は、挿入部31が極めて強固に取付けネジ部材90の先端90bと第二の金属製バー20Bとの間に挟持されているので、ヘルドフレーム1が高速にて運転されたとしても中空のフレーム本体2内で動くことはなく、中空ヘルドフレームステーブの内面を傷つけることはない。
【0091】
又、上記説明にても理解されるように、本発明に従ったサイドステー3のフレーム本体2への取付方法は、簡単であり、本発明に係るサイドステー取付部構造60の組立分解は容易である。
【0092】
図8に、本発明の他の変更実施例を示す。
【0093】
ヘルドフレーム1には、静音性も当然要求されている。特に最近は環境問題ともなっており、特にヨーロッパでは静音性の高いヘルドフレームの要求が高くなっている。
【0094】
これに対し、炭素繊維強化複合材(CFRP)製ヘルドフレームステーブ2は、樹脂との複合であることから、フレームそのもので共振性が少なく、静音性の高い製品となっている。
【0095】
更に、その効果と高めるために、
図8に示すように、CFRP製ヘルドフレームステーブ2の中空部2Aに、サイドステー3を取り付ける端部を除いて、即ち、長さ(L−2×L90)において、ウレタンの発泡材や、ペーパーのハニカム90などを入れ、さらに効果を高めることも可能である。例えば、補強体70の幅W70が60mmとされた場合、L90は、2214〜2234mmとすることにより、極めて静音性を向上させ得ることが分かった。