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特開2015-8408PLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-8408(P2015-8408A)
(43)【公開日】2015年1月15日
(54)【発明の名称】PLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/093 20060101AFI20141212BHJP
   H03L 7/187 20060101ALI20141212BHJP
   H03L 7/22 20060101ALI20141212BHJP
   H03L 7/08 20060101ALI20141212BHJP
   H03L 7/10 20060101ALI20141212BHJP
【FI】
   H03L7/08 E
   H03L7/18 C
   H03L7/22
   H03L7/08 N
   H03L7/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-132903(P2013-132903)
(22)【出願日】2013年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】大谷 暢
(72)【発明者】
【氏名】倉光 康太
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106BB10
5J106CC01
5J106CC21
5J106CC41
5J106CC52
5J106DD09
5J106DD35
5J106DD36
5J106FF09
5J106GG01
5J106KK05
5J106KK26
5J106KK29
(57)【要約】
【課題】高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることができるPLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法を提供する。
【解決手段】基準信号とVCO13の出力信号との位相差に応じた信号を出力するPLL−IC21と、PLL−IC21の出力側とループフィルタ20の入力側が接続された状態で、出力信号の周波数が目標周波数になるためにVCO13に与えるべきVCOチューン電圧を測定するADC24と、VCOチューン電圧の変化に対する周波数の変化率を算出する感度算出部27と、目標周波数における変化率に応じて、ループフィルタ20のゲインや位相比較器19のチャージポンプ電流を調整するループゲイン調整部28と、位相比較器19の出力側とループフィルタ20の入力側が接続された状態で、VCOチューン電圧をVCO13に出力するDAC25とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部(13)と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部(17)と、基準信号を1/R分周する基準分周部(18)と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部(19)と、入力される信号の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタ(20)とを備えるPLLシンセサイザ(1)において、
前記基準信号と前記電圧制御発振部の前記出力信号が入力され、当該基準信号と当該出力信号との位相差に応じた信号を出力するPLL−IC(21)と、
前記位相比較部の出力または前記PLL−ICの出力を前記ループフィルタに与える切換部(22)と、
前記切換部により前記PLL−ICの出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定部(24)と、
前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出部(27)と、
前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整部(28)と、
前記切換部により前記位相比較部の出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力部(25)とを備えることを特徴とするPLLシンセサイザ。
【請求項2】
前記出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号を前記ループ内分周部に出力する周波数変換部(14〜16)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のPLLシンセサイザ。
【請求項3】
入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部(13)と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部(17)と、基準信号を1/R分周する基準分周部(18)と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部(19)と、前記位相比較部からの出力の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタ(20)と、前記出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号を前記ループ内分周部に出力する周波数変換部(14〜16)とを備えるPLLシンセサイザ(2)において、
前記電圧制御発振部の前記出力信号を前記周波数変換部を介して、あるいは、前記周波数変換部を介さずに前記ループ内分周部に与える切換部(29,30)と、
前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介さずに接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定部(24)と、
前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出部(27)と、
前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整部(28)と、
前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介して接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力部(25)とを備えることを特徴とするPLLシンセサイザ。
【請求項4】
周波数掃引が可能なローカル信号をローカル信号発生器(1,2)により生成して入力信号とともにミキサ(52)に与え、当該ミキサの出力から所定の中間周波数帯の信号をフィルタ(53)で抽出する周波数変換部(51)と、
前記入力信号のうち、指定された観測帯域の信号成分が前記周波数変換部の前記フィルタから時系列に出力されるように、前記ローカル信号発生器のローカル信号の周波数掃引制御を行う掃引制御部(54)と、
前記周波数変換部の出力信号をサンプリングしてデジタルの信号列に変換するA/D変換器(55)と、
前記ローカル信号の掃引中に前記A/D変換器から出力される信号列を記憶し、周波数対信号強度のスペクトラム特性を求める信号解析部(56)と、
前記信号解析部で得られたスペクトラム特性を波形表示する表示部(57)とを備え、
前記ローカル信号発生器が、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のPLLシンセサイザ(1,2)を含むことを特徴とする信号分析装置。
【請求項5】
ベースバンド信号を出力するベースバンド信号出力手段(61)と、
予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段(1,2)と、
前記ベースバンド信号と前記局部発振信号とを乗算して直交変調及び周波数変換を行うことにより無線周波数信号を生成する無線周波数信号生成手段(64)と、
前記無線周波数信号の信号レベルを所定信号レベルに設定して出力する信号レベル設定手段(65)と、
前記所定信号レベルに設定された無線周波数信号を所定の減衰値で減衰して出力するステップアッテネータ(68)とを備え、
前記局部発振信号生成手段が、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のPLLシンセサイザ(1,2)を含むことを特徴とする信号発生装置。
【請求項6】
入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部(13)と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部(17)と、基準信号を1/R分周する基準分周部(18)と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部(19)と、入力される信号の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタ(20)とを備えるPLLシンセサイザ(1)の校正方法であって、
前記基準信号と前記電圧制御発振部の前記出力信号が入力され、当該基準信号と当該出力信号との位相差に応じた信号を出力するPLL−IC(21)と、
前記位相比較部の出力または前記PLL−ICの出力を前記ループフィルタに与える切換部(22)とを備え、さらに、
前記切換部により前記PLL−ICの出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定ステップと、
前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出ステップと、
前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整ステップと、
前記切換部により前記位相比較部の出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力ステップとを含むことを特徴とする校正方法。
【請求項7】
入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部(13)と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部(17)と、基準信号を1/R分周する基準分周部(18)と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部(19)と、前記位相比較部からの出力の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタ(20)と、前記出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号を前記ループ内分周部に出力する周波数変換部(14〜16)とを備えるPLLシンセサイザ(2)の校正方法であって、
前記電圧制御発振部の前記出力信号を前記周波数変換部を介して、あるいは、前記周波数変換部を介さずに前記ループ内分周部に与える切換部(29,30)とを備え、さらに、
前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介さずに接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定ステップと、
前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出ステップと、
前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整ステップと、
前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介して接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力ステップとを含むことを特徴とする校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な位相雑音性能を持つシンセサイザは、スペクトラムアナライザや信号発生器等の発振回路として好適に用いられる。このようなシンセサイザは、マルチループ方式を取ることが一般的であり、例えばFineループ(微調整ループ)、Coarseループ(粗調整ループ)、Sumループ(粗調整ループと微調整ループの合成ループ)から構成される。
【0003】
合成ループの発振器には性能の面からYTO(YIG Tuned Oscillator)が使用され、粗調整ループの発振器には価格の面より電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)が使用されることが一般的である。
【0004】
図9に示すように、粗調整ループとして使用可能なPLLシンセサイザは、基準周波数Frefの信号をR分周して出力する分周器71、位相比較器72、ループフィルタ73、VCO74、周波数Floのローカル信号を出力するローカル発振器75、周波数混合器としてのミキサ76、ローパスフィルタ77、入力周波数をN分周する分周器78を基本構成として備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、特許文献1に開示されたPLLシンセサイザは、スイッチ79,80、電圧目標値記録部81、D/Aコンバータ(DAC)82、及び減算器83によりフィードバックループを形成して、ループフィルタ73の出力をDAC82の出力するアナログ信号の電圧に等しくする制御を行うことにより、VCO74の発振周波数を目標周波数にロックするようになっている。
【0006】
マルチループ方式のシンセサイザを構成する場合、位相雑音の悪化を抑制するためには、分周器の分周比を極力小さくすることが重要である。このため、上記のようなPLLシンセサイザにおいては、位相比較器72に入力される比較周波数を生成する手段として、分周器78に加えてミキサ76を使用して周波数変換を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−203558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ミキサを使用して周波数変換を行う場合には、VCOのプリチューンが正しく行われていないと、VCOの出力信号とミキサに入力されるローカル信号の周波数の高低関係が反転することがある。このような場合には、ループの制御方向が位相を同期させる方向と逆になってしまい、目標周波数からのロック外れやミスロックが発生する。
【0009】
合成ループの発振器として広く用いられるYTOはリニアリティに優れており、正確にプリチューンを行うことはさほど困難ではない。これに対して、粗調整ループの発振器として広く用いられる広帯域のVCOは、一般的に感度が高くリニアリティも悪いため、高精度にプリチューンを行うことが困難である。
【0010】
またリニアリティが悪いと言うことは、粗調整ループのループ帯域が大きく変わりやすいことを意味する。ループ帯域が大きく変わると、帯域内の位相雑音や、帯域外に発生するスプリアス性能が悪化してしまう。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたような従来のPLLシンセサイザは、VCO74を含まないフィードバックループを形成して、ループフィルタ73の出力をDAC82の出力するアナログ信号の電圧に等しくするものであり、感度やリニアリティが個々に異なるVCOに対してプリチューン電圧を正確に測定するものではなかった。このため、広帯域のVCOのリニアリティの改善が困難であり、位相雑音やスプリアス特性の向上ができないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることができるPLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1のPLLシンセサイザは、入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部と、基準信号を1/R分周する基準分周部と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、入力される信号の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタとを備えるPLLシンセサイザにおいて、前記基準信号と前記電圧制御発振部の前記出力信号が入力され、当該基準信号と当該出力信号との位相差に応じた信号を出力するPLL−ICと、前記位相比較部の出力または前記PLL−ICの出力を前記ループフィルタに与える切換部と、前記切換部により前記PLL−ICの出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定部と、前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出部と、前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整部と、前記切換部により前記位相比較部の出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力部とを備える構成を有している。
【0014】
この構成により、電圧制御発振部の調整電圧測定時に、PLL−IC及び調整電圧測定部を有する副PLL回路が主PLL回路と独立して構成されることにより、調整電圧と電圧制御発振部の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることが可能となる。
【0015】
また、ループフィルタのゲインと位相比較部のチャージポンプ電流とを主PLL回路のループ帯域が一定となるように調整できるため、スプリアスの低減とループ帯域内の位相雑音の安定化が可能になる。
【0016】
また、本発明の請求項2のPLLシンセサイザは、前記出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号を前記ループ内分周部に出力する周波数変換部をさらに備える構成を有している。
【0017】
この構成により、ループ内分周部の分周比を極力小さくして、位相雑音の悪化を抑制することが可能となる。
【0018】
また、本発明の請求項3のPLLシンセサイザは、入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部と、基準信号を1/R分周する基準分周部と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、前記位相比較部からの出力の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタと、前記出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号を前記ループ内分周部に出力する周波数変換部とを備えるPLLシンセサイザにおいて、前記電圧制御発振部の前記出力信号を前記周波数変換部を介して、あるいは、前記周波数変換部を介さずに前記ループ内分周部に与える切換部と、前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介さずに接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定部と、前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出部と、前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整部と、前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介して接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力部とを備える構成を有している。
【0019】
この構成により、電圧制御発振部の調整電圧測定時に、主PLL回路から周波数変換部を切り離した副PLL回路が構成されることにより、調整電圧と電圧制御発振部の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることが可能となる。
【0020】
また、ループフィルタのゲインと位相比較部のチャージポンプ電流とを主PLL回路のループ帯域が一定となるように調整できるため、スプリアスの低減とループ帯域内の位相雑音の安定化が可能になる。
【0021】
また、本発明の請求項4の信号分析装置は、周波数掃引が可能なローカル信号をローカル信号発生器により生成して入力信号とともにミキサに与え、当該ミキサの出力から所定の中間周波数帯の信号をフィルタで抽出する周波数変換部と、前記入力信号のうち、指定された観測帯域の信号成分が前記周波数変換部の前記フィルタから時系列に出力されるように、前記ローカル信号発生器のローカル信号の周波数掃引制御を行う掃引制御部と、前記周波数変換部の出力信号をサンプリングしてデジタルの信号列に変換するA/D変換器と、前記ローカル信号の掃引中に前記A/D変換器から出力される信号列を記憶し、周波数対信号強度のスペクトラム特性を求める信号解析部と、前記信号解析部で得られたスペクトラム特性を波形表示する表示部とを備え、前記ローカル信号発生器が、上記のいずれかのPLLシンセサイザを含む構成を有している。
【0022】
この構成により、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ったPLLシンセサイザを備えているため、精度良く入力信号のスペクトラム特性を求めることが可能となる。
【0023】
また、本発明の請求項5の信号発生装置は、ベースバンド信号を出力するベースバンド信号出力手段と、予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段と、前記ベースバンド信号と前記局部発振信号とを乗算して直交変調及び周波数変換を行うことにより無線周波数信号を生成する無線周波数信号生成手段と、前記無線周波数信号の信号レベルを所定信号レベルに設定して出力する信号レベル設定手段と、前記所定信号レベルに設定された無線周波数信号を所定の減衰値で減衰して出力するステップアッテネータとを備え、前記局部発振信号生成手段が、上記のいずれかのPLLシンセサイザを含む構成を有している。
【0024】
この構成により、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ったPLLシンセサイザを備えているため、信号純度の良いRF試験信号を出力することが可能となる。
【0025】
また、本発明の請求項6の校正方法は、入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部と、基準信号を1/R分周する基準分周部と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、入力される信号の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタとを備えるPLLシンセサイザの校正方法であって、前記基準信号と前記電圧制御発振部の前記出力信号が入力され、当該基準信号と当該出力信号との位相差に応じた信号を出力するPLL−ICと、前記位相比較部の出力または前記PLL−ICの出力を前記ループフィルタに与える切換部とを備え、さらに、前記切換部により前記PLL−ICの出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定ステップと、前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出ステップと、前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整ステップと、前記切換部により前記位相比較部の出力側と前記ループフィルタの入力側が接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力ステップとを含む。
【0026】
この構成により、調整電圧測定ステップにおいて、PLL−ICを有する副PLL回路が主PLL回路と独立して構成されることにより、調整電圧と電圧制御発振部の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることが可能となる。
【0027】
また、ループフィルタのゲインと位相比較部のチャージポンプ電流とを主PLL回路のループ帯域が一定となるように調整できるため、スプリアスの低減とループ帯域内の位相雑音の安定化が可能になる。
【0028】
また、本発明の請求項7の校正方法は、入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御する電圧制御発振部と、前記出力信号に基づく信号を1/N分周するループ内分周部と、基準信号を1/R分周する基準分周部と、前記ループ内分周部の出力と前記基準分周部の出力との位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、前記位相比較部からの出力の低周波成分を通過させて前記電圧制御発振部に与えるループフィルタと、前記出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号を前記ループ内分周部に出力する周波数変換部とを備えるPLLシンセサイザの校正方法であって、前記電圧制御発振部の前記出力信号を前記周波数変換部を介して、あるいは、前記周波数変換部を介さずに前記ループ内分周部に与える切換部とを備え、さらに、前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介さずに接続された状態で、前記出力信号の周波数が目標周波数になるために前記電圧制御発振部に与えるべき調整電圧を測定する調整電圧測定ステップと、前記調整電圧の変化に対する前記周波数の変化率を算出する感度算出ステップと、前記目標周波数における前記変化率に応じて、前記ループフィルタのゲインと前記位相比較部のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するループゲイン調整ステップと、前記切換部により前記電圧制御発振部の出力側と前記ループ内分周部の入力側が前記周波数変換部を介して接続された状態で、前記調整電圧を前記電圧制御発振部に出力する調整電圧出力ステップとを含む。
【0029】
この構成により、調整電圧測定ステップにおいて、主PLL回路から周波数変換部を切り離した副PLL回路が構成されることにより、調整電圧と電圧制御発振部の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることが可能となる。
【0030】
また、ループフィルタのゲインと位相比較部のチャージポンプ電流とを主PLL回路のループ帯域が一定となるように調整できるため、スプリアスの低減とループ帯域内の位相雑音の安定化が可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、電圧制御発振部の調整電圧測定時に、PLL−IC及び調整電圧測定部を有する副PLL回路が主PLL回路と独立して構成されることにより、調整電圧と電圧制御発振部の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることができるPLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態としてのPLLシンセサイザの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態としてのPLLシンセサイザのループフィルタの構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態としてのPLLシンセサイザの制御部が実行する処理を説明するためのフローチャート(その1)である。
図4】本発明の第1の実施形態としてのPLLシンセサイザの制御部が実行する処理を説明するためのフローチャート(その2)である。
図5】本発明の第1の実施形態としてのPLLシンセサイザの制御部が実行する処理を説明するためのフローチャート(その3)である。
図6】本発明の第2の実施形態としてのPLLシンセサイザの構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第3の実施形態としての信号分析装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第4の実施形態としての信号発生装置の構成を示すブロック図である。
図9】従来のPLLシンセサイザの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係るPLLシンセサイザ、それを用いた信号分析装置及び信号発生装置、並びに校正方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態としてのPLLシンセサイザ1の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように、本実施形態のPLLシンセサイザ1は、マルチループ方式を取るものであり、周波数fの基準信号が入力される粗調整ループ10と、周波数fの基準信号が入力される微調整ループ11と、粗調整ループ10と微調整ループ11の出力を合成する合成ループ12とから構成される。
【0036】
粗調整ループ10は、VCO13、ローカル発振器14、ミキサ15、ローパスフィルタ16、ループ内分周器17、基準分周器18、位相比較器19、ループフィルタ20、PLL−IC21、切換部としてのスイッチ22,23、A/Dコンバータ(ADC)24、D/Aコンバータ(DAC)25、及び制御部26を備える。
【0037】
VCO13、ローカル発振器14、ミキサ15、ローパスフィルタ16、ループ内分周器17、基準分周器18、位相比較器19、ループフィルタ20、及びスイッチ22,23は、主PLL回路を構成する。また、VCO13、ループフィルタ20、PLL−IC21、スイッチ22,23、ADC24、及びDAC25は、副PLL回路を構成する。
【0038】
VCO13は、入力信号の電圧に応じて出力信号の周波数を制御するものであり、具体的には入力信号の電圧に比例した発振周波数fvの信号を出力信号として出力するようになっている。
【0039】
ローカル発振器14は、ローカル周波数fのローカル信号を出力するようになっている。ミキサ15は、VCO13から出力された出力信号と、ローカル発振器14から出力されたローカル信号とを乗算することにより混合するようになっている。ローパスフィルタ16は、ミキサ15の出力の低周波成分を通すようになっている。
【0040】
ローカル発振器14、ミキサ15、及びローパスフィルタ16は、VCO13の出力信号の周波数を変換して、当該周波数が変換された信号をループ内分周器17に出力する周波数変換部を構成する。
【0041】
ループ内分周器17は、ローパスフィルタ16の出力を1/N分周して出力するようになっている。基準分周器18は、入力された周波数fの基準信号を1/R分周して出力するようになっている。ここで、N及びRは1以上の実数である。
【0042】
位相比較器19は、ループ内分周器17の出力と基準分周器18の出力との位相差を検出し、その位相差に比例したパルス幅の電圧信号を出力するようになっている。なお、位相比較器19は、位相差に比例したパルス幅の電圧信号を出力するためのチャージポンプを内部に有している。
【0043】
ループフィルタ20は、スイッチ22の出力の低周波成分を通過させてVCO13に与えるようになっている。つまり、位相比較器19の出力は、ループフィルタ20により平滑化され、VCO13の制御電圧となる。
【0044】
より詳細には図2に示すように、ループフィルタ20は、増幅器31を含んでなる4種の積分回路A1〜A4と、4種のラグ・リードフィルタP1〜P4と、共通フィルタC1と、積分回路A1〜A4のいずれかを選択するスイッチ32と、ラグ・リードフィルタP1〜P4のいずれかを選択するスイッチ33とで構成されている。
【0045】
このうち積分回路A4は、後述するVCO感度測定モード時にPLL−IC21を含むループに対してのみ用いるものとする。従って、粗調整ループ10のループゲイン調整用には3×4の12通りのループフィルタ設計で対応する。
【0046】
この4×4の積分回路A1〜A4及びラグ・リードフィルタP1〜P4の組み合わせを表1にまとめる。即ち、a1〜a3,b1〜b3,c1〜c3,d1〜d3が位相比較器19用のループフィルタとなり、c4,d4がPLL−IC21用のループフィルタとなる。
【表1】
【0047】
PLL−IC21は、分周器、位相比較器、チャージポンプ等の回路構成をワンチップに収納したものであり、周波数fの基準信号とVCO13の出力信号が入力され、当該基準信号と当該出力信号との位相差に応じた信号を出力するようになっている。本実施形態では、PLL−IC21としては、例えばアナログ・デバイセズ株式会社の「ADF4106」が好適に用いられる。
【0048】
スイッチ22は、後述するVCO感度測定モードにおいて、PLL−IC21の出力側とループフィルタ20の入力側を接続し、後述する粗調整ループモード及びプリチューン実行モードにおいて、位相比較器19の出力側とループフィルタ20の入力側を接続するようになっている。
【0049】
スイッチ23は、VCO感度測定モードにおいて、ループフィルタ20の出力側とADC24を接続し、プリチューン実行モードの開始時において、ループフィルタ20の出力側とDAC25を接続し、プリチューン実行モードの終了時において、ループフィルタ20の出力側をADC24及びDAC25から切断するようになっている。
【0050】
ADC24は、スイッチ22によりPLL−IC21の出力側とループフィルタ20の入力側が接続されるとともに、スイッチ23によりループフィルタ20の出力側とADC24が接続された状態で、ループフィルタ20から出力されたアナログの電圧信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号の値を図示しないメモリに記録するようになっている。ADC24は、調整電圧測定部を構成する。
【0051】
ここで、ADC24に記録されるデジタル信号の値は、VCO13の出力信号の周波数fvが目標周波数ftになるためにVCO13に与えるべき調整電圧としてのVCOチューン電圧Vである。つまり、ADC24は、VCOチューン電圧Vを測定するものである。
【0052】
DAC25は、スイッチ22により位相比較器19の出力側とループフィルタ20の入力側が接続されるとともに、スイッチ23によりループフィルタ20の出力側とDAC25が接続された状態で、ADC24のメモリに記録されたVCOチューン電圧Vをアナログの電圧信号に変換して、変換されたアナログの電圧信号をスイッチ23を介してVCO13に与えるようになっている。DAC25は、調整電圧出力部を構成する。
【0053】
制御部26は、例えばCPU、ROM、RAM等で構成され、粗調整ループ10を構成する上記各部の動作を制御するとともに、所定のプログラムを実行することにより、感度算出部27とループゲイン調整部28とをソフトウエア的に構成する。
【0054】
感度算出部27は、VCOチューン電圧Vの変化に対するVCO13の発振周波数fvの変化率、即ちVCO感度を算出するようになっている、例えば、このVCO感度は、VCO13の発振周波数fvをVCOチューン電圧Vで微分することにより得られる。
【0055】
ループゲイン調整部28は、目標周波数ftにおける上記VCO感度に応じて、ループフィルタ20のゲインと位相比較器19のチャージポンプ電流の少なくともいずれかを調整するようになっている。
【0056】
さらに、PLLシンセサイザ1は、図示しない操作部を介して、外部から制御部26に与えられたデータに対応した周波数の信号を出力できるように構成されていても良い。
【0057】
以下、本実施形態のPLLシンセサイザ1における粗調整ループ10の校正方法について説明する。ここでは、ミスロックの虞が少ないシンプルな構成とした副PLL回路を用いて、PLL−IC21及びループフィルタ20の設定を変えながら選択されるVCO13の発振周波数fvごとにVCOチューン電圧VをADC24で測定する処理が行われる。
【0058】
以下、第1の実施形態における粗調整ループ10の制御部26が実行する校正プログラムについて、図3〜5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0059】
<VCO感度測定モード>
図3は、VCO感度測定モードにおける処理を示すフローチャートである。図3のフローチャートの処理は、調整電圧測定ステップ(ステップS1〜S8)及び感度算出ステップ(ステップS9)の処理に相当する。
【0060】
まず、ステップS1では、制御部26は、PLL−IC21の出力側とループフィルタ20の入力側を接続する方向にスイッチ22をオンとして、制御モードをVCO感度測定モードに切り換える。
【0061】
次に、ステップS2では、制御部26は各種の初期設定を行う。ここでは、PLL−IC21の内部のNカウンタ及びRカウンタにおける分周比の初期値や、チャージポンプ電流の初期値がPLL−IC21に設定される。このとき、PLL−IC21におけるミスロックの発生を低減するために、VCO13の発振周波数fvとして、VCO感度がフラットになる周波数領域の値(例えば4800MHz)が用いられる。
【0062】
次に、ステップS3では、制御部26は、VCO13の発振周波数fvがロックするまでの所定時間(例えば500μsec)を待機する。
【0063】
次に、ステップS4では、制御部26は、PLL−IC21の分周比及びチャージポンプ電流の設定とループフィルタ20のフィルタ選択の設定を切り換えることにより、所望の発振周波数fvを設定する。
【0064】
次に、ステップS5では、制御部26は、VCO13の発振周波数fvがロックするまでの所定時間(例えば100μsec)を待機する。
【0065】
次に、ステップS6では、制御部26は、ループフィルタ20の出力側とADC24を接続する方向にスイッチ23をオンとし、ADC24を制御してループフィルタ20の出力電圧を測定する。
【0066】
次に、ステップS7では、制御部26は、測定したループフィルタ20の出力電圧に所定の補正値を乗じた値をVCOチューン電圧Vとして、ADC24のメモリ内のVCOチューン電圧テーブルに格納する。ここで、所定の補正値とは、ADC24を含む帰還回路の抵抗に起因するものである。
【0067】
表2は、VCOチューン電圧テーブルに記録されるVCOチューン電圧Vの例を示している。これは、ステップS4で発振周波数fvが100MHz刻みで設定された場合の例であり、測定対象となった発振周波数fv以外の周波数のVCOチューン電圧については線形補間で求めた値を用いている。
【表2】
【0068】
次に、ステップS8では、測定対象の全ての発振周波数fvに関するVCOチューン電圧Vの取得が終了したか否かを判定する。VCOチューン電圧Vの取得が終了していない場合には、制御部26はステップS4以降の処理を再び実行する。一方、VCOチューン電圧Vの取得が終了した場合には、制御部26はステップS9の処理を実行する。
【0069】
上記のステップS4〜S8の処理では、制御部26は、PLL−IC21の比較周波数が例えば12.5MHzの場合、PLL−IC21のRカウンタの値を2として、Nカウンタの値を160から320まで4刻み(N=160,164,168,・・・,320)で変化させる。
【0070】
これにより、VCO13の発振周波数fvを100MHz刻みで変化させることができる。なお、実際に測定される発振周波数fvの間隔は、上記の100MHzに限定されず、特に10MHz以下とすることがVCO13のリニアリティを改善する観点からはより好ましい。
【0071】
次に、ステップS9では、制御部26は、ステップS8までの処理で取得したVCOチューン電圧Vの周波数特性からVCO感度を計算する。具体的には、制御部26は、以下の表3に示した計算式から求まる値をVCO感度として、ADC24のメモリ内のVCO感度テーブルに格納する。
【0072】
ここでは、発振周波数fvが4000MHzのときのVCO感度は、4050MHzと4150MHzのVCO感度の延長線上にあるとして計算されている。同様に、発振周波数fvが8000MHzのときのVCO感度は、7850MHzと7950MHzのVCO感度の延長線上にあるとして計算されている。
【0073】
また、表3に記載されていない発振周波数fvにおけるVCO感度は線形補間で求めれば良く、VCO感度テーブルに記録されるVCO感度の周波数刻みは10MHz以下であることが好ましい。
【表3】
【0074】
なお、VCO感度測定モードにおけるステップS1〜S9の処理は、出荷前に行われても良いし、後述する粗調整ループモードの処理の前に毎回行われても良く、あるいは、ユーザにより任意のタイミングで行われても良い。また、ステップS2,S3の処理は省略されても良い。
【0075】
<粗調整ループモード>
本実施形態における粗調整ループ10を動作させる場合、制御部26によりVCO13の発振周波数fvが設定される。この発振周波数fvの設定に応じて、主PLL回路のフィードバック経路中にあるループ内分周器17の分周比が決まる。
【0076】
一般的に、PLL回路のループ帯域は、VCOの感度Kv、位相比較器の感度KΦ、ループフィルタのゲインG、ループの分周比Nにより決まる。これを数1に示す。
【数1】
【0077】
VCO13は発振周波数fvに応じて感度が変化し、その変化の範囲は例えば100[MHz/V]〜450[MHz/V]である。数1から明らかなように、VCO13の感度が変動すると、その分だけ主PLL回路のループ帯域が変動することになる。
【0078】
本実施形態では、粗調整ループ10における主PLL回路のループ帯域を一定に保つために、ループフィルタ20のフィルタ選択の設定と、位相比較器19のチャージポンプ電流の設定を適切に行うことによって、VCO13の感度の変動を吸収する。
【0079】
以下、図4のフローチャートを参照しながら粗調整ループモードにおける処理について説明する。ここで、図4のフローチャートの処理は、ループゲイン調整ステップの処理に相当する。
【0080】
まず、ステップS11では、制御部26は、位相比較器19の出力側とループフィルタ20の入力側を接続する方向にスイッチ22をオンとして、制御モードを粗調整ループモードに切り換える。
【0081】
次に、ステップS12では、制御部26は、数2に従って"VCO感度/フィードバック経路分周比"[MHz/V]を計算する。ここで、VCO感度はVCO感度測定モードで取得されたVCO感度テーブル(表3参照)から得られる。また、フィードバック経路分周比とは、位相比較器19のRカウンタの設定値Rであり、具体的にはRは1,2,4,または8の値を取る。
【数2】
【0082】
次に、ステップS13では、制御部26は、以降の処理ステップで用いるパラメータを下記の数3及び表4に示すように設定する。
【数3】
【表4】
【0083】
次に、ステップS14では、制御部26は、n=1,2,・・・,13の値を取り得る各nについて、下記の数4の不等式を満たすSCoarseの値の範囲を決定する。さらに、制御部26は、下記の表5に従って、各nについて適切なループフィルタ20のフィルタ選択を決定する。例えば、SCoarseが300のときには、n=2に対応する"b1"のフィルタの組み合わせ(表1参照)が選択され、SCoarseが200のときには、n=3に対応する"c1"のフィルタの組み合わせが選択される。
【数4】
【表5】
【0084】
さらに、制御部26は、ループフィルタ20のフィルタ選択に対応するパラメータG及びGを表4に従って決定する。例えば、n=2のときには、選択されるフィルタはA1とP2であるため、各パラメータの値は、G=1,G=b,GPS=zとなる。
【0085】
次に、ステップS15では、制御部26は、ステップS14で選択されたフィルタに応じて、数5を用いてループフィルタ20のゲインGLPを求める。
【数5】
【0086】
次に、ステップS16では、制御部26は、位相比較器19に設定すべきチャージポンプ電流の設定値CPを数6に従って算出する。さらに、制御部26は、数7により、求めた設定値CPを実際に位相比較器19に設定可能な20μA刻みの値CPsetに丸める。
【数6】
【数7】
【0087】
つまり、ステップS11〜S16の処理において制御部26は、表3のVCO感度テーブルに基づいて求めたSCoarseの値から、ループフィルタ20のフィルタ選択の設定、即ちループフィルタ20のゲインと、位相比較器19のチャージポンプ電流の設定を決定する。
【0088】
さらに、制御部26は、決定されたゲイン及びチャージポンプ電流の設定値をそれぞれループフィルタ20及び位相比較器19に設定する(ステップS17)。これにより、粗調整ループ10における主PLL回路のループ帯域を一定とすることが可能となる。
【0089】
なお、上記の説明では、ループフィルタ20のゲインの設定と位相比較器19のチャージポンプ電流の設定が両方とも行われるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、数6で求まったチャージポンプ電流CPが非常に小さい場合には、ループフィルタ20のゲインGLPの調整のみで粗調整ループ10における主PLL回路のループ帯域を一定とすることも可能である。
【0090】
また、例えば、既に設定されている値からループフィルタ20のゲインGLPを変更する必要がない場合には、チャージポンプ電流CPsetの調整のみで粗調整ループ10における主PLL回路のループ帯域を一定とすることも可能である。
【0091】
<プリチューン実行モード>
図5は、粗調整ループモードにおけるプリチューン実行モードの処理を示すフローチャートである。図5のフローチャートの処理は、調整電圧出力ステップの処理に相当する。ここで、プリチューンとは、目標周波数ftでVCO13を動作させるためのVCOチューン電圧VをDAC25から出力して、このDAC25の出力電圧とループフィルタ20の出力電圧とが加算された電圧をVCO13に印加する動作である。
【0092】
まず、ステップS21では、制御部26は、ループフィルタ20の出力側とDAC25を接続する方向にスイッチ23をオンとして、制御モードをプリチューン実行モードに切り換える。これにより、VCO13には、ループフィルタ20の出力に加えてDAC25の出力が入力されることになる。
【0093】
次に、ステップS22では、制御部26は、表2のVCOチューン電圧テーブルを参照して、所望の発振周波数fvのVCOチューン電圧Vを取得する。
【0094】
次に、ステップS23では、制御部26は、ステップS22で取得したVCOチューン電圧Vに所定の補正値を乗じた設定値をDAC25に入力する。ここで、所定の補正値とは、DAC25を含む帰還回路の抵抗に起因するものである。
【0095】
次に、ステップS24では、制御部26は、VCO13の発振周波数fvがロックするまでの所定時間(例えば100μsec)を待機する。
【0096】
次に、ステップS25では、制御部26は、スイッチ23をオフとして、ループフィルタ20の出力側をDAC25から切断して、プリチューン実行モードを終了させる。
【0097】
これらのステップS21〜S25の処理によって、VCO13の出力信号の発振周波数fvが目標周波数ftの近傍にて安定する。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、VCO感度測定モードにおいて、PLL−IC21及びADC24を有する副PLL回路が主PLL回路と独立して構成されることにより、プリチューン電圧としてのVCOチューン電圧VとVCO13の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることができる。
【0099】
また、ループゲインを決めるループフィルタ20が2段に分割された構成となっており、VCO13の感度に合わせた適切なフィルタ選択を行うことで、ループ帯域の変動を抑えることが可能となる。
【0100】
また、副PLL回路を構成することで、感度やリニアリティが個々に異なるVCOに対してVCOチューン電圧Vを正確に測定することが可能になる。これにより、主PLL回路のプリチューンを精度良く行うことが可能となる。
【0101】
また、VCO13の感度を測定することで、主PLL回路のループ帯域を一定にするためのVCOチューン電圧Vを得ることができるようになり、スプリアスの低減とループ帯域内の位相雑音の安定化が可能になる。加えて、リアルタイムにVCOチューン電圧Vを測定することで、温度変動や経年変化によるVCO13の発振周波数の変化も補正することが可能になる。
【0102】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態としてのPLLシンセサイザ2について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0103】
図6に示すように、本実施形態のPLLシンセサイザ2が備える粗調整ループ40は、VCO13、ローカル発振器14、ミキサ15、ローパスフィルタ16、ループ内分周器17、基準分周器18、位相比較器19、ループフィルタ20、切換部としてのスイッチ23,29,30、ADC24、DAC25、制御部26を備える。
【0104】
VCO13、ローカル発振器14、ミキサ15、ローパスフィルタ16、ループ内分周器17、基準分周器18、位相比較器19、ループフィルタ20、及びスイッチ29,30は、主PLL回路を構成する。
【0105】
また、VCO13、ループ内分周器17、基準分周器18、位相比較器19、ループフィルタ20、ADC24、DAC25、及びスイッチ29,30は、副PLL回路を構成する。
【0106】
ループフィルタ20は、位相比較器19の出力の低周波成分を通過させてVCO13に与えるようになっている。
【0107】
スイッチ29,30は、VCO感度測定モードにおいて、VCO13の出力側とループ内分周器17の入力側をミキサ15を介さずに接続するようになっている。また、スイッチ29,30は、粗調整ループモード及びプリチューン実行モードにおいて、VCO13の出力側とミキサ15の入力側を接続するとともに、ローパスフィルタ16の出力側とループ内分周器17の入力側を接続するようになっている。
【0108】
ADC24は、スイッチ29,30によりVCO13の出力側とループ内分周器17の入力側がミキサ15を介さずに接続されるとともに、スイッチ23によりループフィルタ20の出力側とADC24が接続された状態で、ループフィルタ20から出力されたアナログの電圧信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号の値を図示しないメモリに記録するようになっている。
【0109】
DAC25は、スイッチ29,30によりVCO13の出力側とループ内分周器17の入力側がミキサ15を介して接続されるとともに、スイッチ23によりループフィルタ20の出力側とDAC25が接続された状態で、ADC24のメモリに記録されたVCOチューン電圧Vをアナログの電圧信号に変換して、変換されたアナログの電圧信号をスイッチ23を介してVCO13に与えるようになっている。
【0110】
以下、第2の実施形態における粗調整ループ40の制御部26が実行する校正プログラムについて、既に示した図3〜5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0111】
<VCO感度測定モード>
まず、図3のフローチャートのステップS1では、制御部26は、VCO13の出力側とループ内分周器17の入力側をミキサ15を介さずに接続する方向にスイッチ29,30をオンとして、制御モードをVCO感度測定モードに切り換える。
【0112】
次に、ステップS2では、制御部26は各種の初期設定を行う。ここでは、ループ内分周器17及び基準分周器18に対して分周比の初期値が設定されるとともに、位相比較器19に対してチャージポンプ電流の初期値が設定される。このとき、副PLL回路におけるミスロックの発生を低減するために、VCO13の発振周波数fvとして、VCO感度がフラットになる周波数領域の値(例えば4800MHz)を用いることとする。
【0113】
次に、ステップS3では、制御部26は、VCO13の発振周波数fvがロックするまでの所定時間(例えば500μsec)を待機する。
【0114】
次に、ステップS4では、制御部26は、ループ内分周器17及び基準分周器18の分周比及び位相比較器19のチャージポンプ電流の設定と、ループフィルタ20のフィルタ選択の設定を切り換えることにより、所望の発振周波数fvを設定する。
【0115】
次に、ステップS5では、制御部26は、VCO13の発振周波数fvがロックするまでの所定時間(例えば100μsec)を待機する。
【0116】
次に、ステップS6では、制御部26は、ループフィルタ20の出力側とADC24を接続する方向にスイッチ23をオンとし、ADC24を制御してループフィルタ20の出力電圧を測定する。
【0117】
次に、ステップS7では、制御部26は、測定したループフィルタ20の出力電圧に所定の補正値を乗じた値をVCOチューン電圧Vとして、ADC24のメモリ内のVCOチューン電圧テーブルに格納する。
【0118】
次に、ステップS8では、測定対象の全ての発振周波数fvに関するVCOチューン電圧Vの取得が終了したか否かを判定する。VCOチューン電圧Vの取得が終了していない場合には、制御部26はステップS4以降の処理を再び実行する。一方、VCOチューン電圧Vの取得が終了した場合には、制御部26はステップS9の処理を実行する。
【0119】
上記のステップS4〜S8の処理では、制御部26は、位相比較器19の比較周波数が12.5MHzの場合、基準分周器18の分周比Rを2として、ループ内分周器17の分周比Nを160から320まで4刻み(N=160,164,168,・・・,320)で変化させる。
【0120】
次に、ステップS9では、制御部26は、ステップS8までの処理で取得したVCOチューン電圧Vの周波数特性からVCO感度を計算する。具体的には、制御部26は、表3に示した計算式から求まる値をVCO感度として、ADC24のメモリ内のVCO感度テーブルに格納する。
【0121】
<粗調整ループモード>
図4のフローチャートのステップS11では、制御部26は、VCO13の出力側とミキサ15の入力側を接続するとともに、ローパスフィルタ16の出力側とループ内分周器17の入力側を接続する方向にスイッチ29,30をオンとして、制御モードを粗調整ループモードに切り換える。
【0122】
以降のステップS12〜S16の処理の説明は、第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0123】
<プリチューン実行モード>
図5は、粗調整ループモードにおけるプリチューン実行モードの処理を示すフローチャートである。ステップS21〜S25の処理の説明は、第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0124】
以上説明したように、本実施形態によれば、VCO感度測定モードにおいて、主PLL回路から周波数変換部を切り離した副PLL回路が構成されることにより、VCOチューン電圧VとVCO13の感度を精度良く測定し、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図ることができる。
【0125】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態としての信号分析装置50について図面を参照しながら説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0126】
図7に示すように、本実施形態の信号分析装置50は、周波数掃引が可能なローカル信号Lを、ローカル信号発生器を構成する第1または第2の実施形態のPLLシンセサイザ1または2により生成して入力信号SINとともにミキサ52に与え、ミキサ52の出力から所定の中間周波数帯の信号Mをフィルタ53で抽出する周波数変換部51と、入力信号SINのうち、指定された観測帯域の信号成分が周波数変換部51のフィルタ53から時系列に出力されるように、PLLシンセサイザ1または2のローカル信号Lの周波数掃引制御を行う掃引制御部54と、周波数変換部51の出力信号をサンプリングしてデジタルの信号列に変換するA/D変換器55と、ローカル信号Lの周波数掃引中にA/D変換器55から出力される信号列Dmを記憶し、周波数対信号強度のスペクトラム特性を求める信号解析部56と、信号解析部56で得られたスペクトラム特性を波形表示する表示部57とを備える。
【0127】
即ち、入力信号SINは、周波数変換部51のミキサ52に入力され、PLLシンセサイザ1または2からのローカル信号Lとミキシングされ、その差または和(以下の説明では差とする。)の周波数成分のうち、所定の中間周波帯の信号成分Mがフィルタ53によって抽出される。
【0128】
ここで、フィルタ53の通過中心周波数をFIF、ローカル信号Lの周波数をFとし、中間周波帯に変換しようとする解析対象信号の周波数FINよりローカル周波数Fが高い上側ヘテロダインでミキシングすると仮定すると、
−FIF=FIN
の関係が成り立つ。
【0129】
ここで、例えば、FIF=8GHzとし、ローカル周波数Fを8.1GHzから9GHzまで掃引すれば、解析対象信号の周波数FINは、100MHzから1GHzまで変化することになる。つまり、フィルタ53からは、入力信号SINのうち100MHzから1GHzまでの信号成分がその元の周波数順に時系列に抽出されることになる。
【0130】
なお、ここでは周波数変換を1回行う回路例を示しているが、実際には周波数変換部51内で複数回の周波数変換処理(一般的には固定周波数のローカル信号による。)を行って、より低い周波数帯に変換している。
【0131】
PLLシンセサイザ1または2は、第1の実施形態で述べたように、外部から与えられたデータに対応した周波数のローカル信号Lを出力できるように構成されており、そのローカル信号Lの周波数掃引は掃引制御部54から入力される周波数データを順次更新することで行われる。
【0132】
掃引制御部54は、操作部58によって指定された基準周波数(スタート周波数あるいはセンター周波数)、掃引幅(スパン)、取得サンプル数等に応じて、ローカル信号Lの周波数を所定ステップで掃引させるとともに、その各周波数の情報fを信号解析部56に与える。
【0133】
一方、周波数変換部51から出力された信号Mは、A/D変換器55により所定のサンプリング周期(フィルタ53の通過帯域の上限の2倍以上の周波数)でサンプリングされ、そのサンプリングで得られたデジタルの信号列Dmが信号解析部56に入力される。
【0134】
信号解析部56は、周波数掃引によって得られたデジタルの信号列Dmと周波数情報fとを対応付けて受信して図示しないメモリに格納し、指定された帯域制限処理等を行って観測帯域内における周波数対信号強度S(f)の特性、即ちスペクトラム特性を求める。表示部57は、信号解析部56が求めたスペクトラム特性の波形を画面に表示する。
【0135】
上記のように構成された本実施形態の信号分析装置50は、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図った第1または第2の実施形態のPLLシンセサイザ1または2を備えているため、精度良く入力信号のスペクトラム特性を求めることができる。
【0136】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態としての信号発生装置60について図面を参照しながら説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0137】
図8に示すように、本実施形態の信号発生装置60は、波形データ記憶部61、DAC62及び63、直交変調器64、局部発振装置を構成する第1または第2の実施形態のPLLシンセサイザ1または2、自動レベル制御回路(ALC)65、操作部66、設定部67、ステップアッテネータ(ステップATT)68を備えている。
【0138】
波形データ記憶部61は、被試験装置を試験するための複数の試験信号データとして、デジタル値のベースバンドの波形データを記憶している。試験者は、操作部66を操作し、設定部67を介して、波形データ記憶部61に記憶された試験信号データを選択して出力できるようになっている。試験信号データは、I相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンドの波形データを含む。波形データは、例えば、図示しないDSP(Digital Signal Processor)によって生成される。なお、波形データ記憶部61は、ベースバンド信号出力手段を構成する。
【0139】
DAC62,63は、それぞれ、波形データ記憶部61が出力するI相成分及びQ相成分のデジタル値のベースバンド信号波形データをアナログ値に変換して直交変調器64に出力するようになっている。
【0140】
PLLシンセサイザ1または2は、設定部67からの設定信号に基づいた局部発振周波数の局部発振信号を生成し、直交変調器64に出力するように構成されている。PLLシンセサイザ1または2は、局部発振信号生成手段を構成する。
【0141】
直交変調器64は、DAC62からのI相成分及びDAC63からのQ相成分と、PLLシンセサイザ1または2から入力した局部発振信号とを乗算することにより直交変調及び周波数変換を行って無線周波数の信号(RF信号)を生成してALC65に出力するようになっている。この直交変調器64は、無線周波数信号生成手段を構成する。
【0142】
ALC65は、直交変調器64の出力信号の電力レベルを所定の電力レベルに調整してステップATT68に出力するようになっている。ALC65が設定する電力レベルは、設定部67からの設定信号によって設定されるようになっている。ALC65は、出力信号レベルを例えば0.1dB単位で調整できるものである。このALC65は、信号レベル設定手段を構成する。
【0143】
操作部66は、試験者が試験条件及び試験手順に関する設定等を行うために操作するものであり、例えば、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成される。試験者が設定する試験条件としては、例えば、波形データ記憶部61に記憶された波形データ、ステップATT68が出力するRF試験信号の出力レベル及び無線周波数等がある。
【0144】
設定部67は、例えばマイクロコンピュータによって構成されており、装置全体の制御を行うようになっている。また、設定部67は、試験者が操作部66を操作して設定した各試験条件に基づき、各試験条件を設定する設定信号を波形データ記憶部61、PLLシンセサイザ1または2、ALC65、ステップATT68にそれぞれ出力し、各試験条件を設定するようになっている。
【0145】
ここで、ALC65に対する設定としては、例えば、ユーザが信号発生装置60の出力レベルを−40.2dBmに設定した場合、設定部67は、ステップATT68の減衰量を30dBに設定し、ALC65に対し、出力信号レベルを−10.2dBmに設定するための制御信号を出力する。
【0146】
ステップATT68は、各々の減衰量が予め定められた複数のアッテネータセクションを備え、各アッテネータセクションの減衰量の組み合わせにより、入力したRF信号のレベルを所定の減衰量のステップで減衰することができるATTである。このステップATT68は、設定部67からの設定信号によって設定された減衰量で入力信号を減衰し、試験者が所望する電力レベルのRF試験信号を出力するようになっている。
【0147】
上記のように構成された本実施形態の信号発生装置60は、高精度なプリチューンとループ帯域の一定化を図った第1または第2の実施形態のPLLシンセサイザ1または2を備えているため、信号純度の良いRF試験信号を出力することができる。
【符号の説明】
【0148】
1,2 PLLシンセサイザ(ローカル信号発生器、局部発振信号生成手段)
10,40 粗調整ループ
11 微調整ループ
12 合成ループ
13 VCO(電圧制御発振部)
14 ローカル発振器(周波数変換部)
15 ミキサ(周波数変換部)
16 ローパスフィルタ(周波数変換部)
17 ループ内分周器(ループ内分周部)
18 基準分周器(基準分周部)
19 位相比較器(位相比較部)
20 ループフィルタ
21 PLL−IC
22,23,29,30 スイッチ(切換部)
24 ADC(調整電圧測定部)
25 DAC(調整電圧出力部)
26 制御部
27 感度算出部
28 ループゲイン調整部
50 信号分析装置
51 周波数変換部
52 ミキサ
53 フィルタ
54 掃引制御部
55 A/D変換器
56 信号解析部
57 表示部
60 信号発生装置
61 波形データ記憶部(ベースバンド信号出力手段)
64 直交変調器(無線周波数信号生成手段)
65 ALC(信号レベル設定手段)
68 ステップアッテネータ(ステップATT)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9