【課題】インバータ装置が複数並列接続された電力システムにおいて、監視装置を用いる場合に生じる問題点を解消でき、各インバータ装置の出力有効電力の抑制量を調整できる方法を提供する。
【解決手段】制御回路3において、入力電圧を制御するための有効電力補償値を生成する入力電圧制御部31と、連系点電圧補償値を生成する連系点電圧制御部32と、協調のための補正値を生成する協調補正値生成部33と、連系点電圧補償値に補正値を加算した補正補償値ΔId
前記演算手段は、前記受信補償値から前記重み付けされた補正補償値をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記通信手段が通信を行っている他のインバータ装置の数で除算することで、演算結果を演算する、
請求項2に記載の制御回路。
前記演算手段は、前記受信補償値から前記重み付けされた補正補償値をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記重み付けされた補正補償値を乗算することで、演算結果を演算する、
請求項2に記載の制御回路。
前記演算手段は、前記受信補償値を前記重み付けされた補正補償値からそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記重み付けされた補正補償値の2乗を乗算することで、演算結果を演算する、
請求項2に記載の制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る制御回路を太陽光発電所のインバータ装置に用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】
図1は、第1実施形態に係るインバータ装置を説明するための図である。
図2は、第1実施形態に係るインバータ装置が複数並列接続された太陽光発電所(電力システム)を示す図である。
【0030】
インバータ装置Aは、いわゆるパワーコンディショナと呼ばれるものであり、
図1に示すように、インバータ回路2、制御回路3、電流センサ4、電圧センサ5、および、直流電圧センサ6を備えている。インバータ装置Aは、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2によって交流電力に変換して出力する。なお、図示しないが、インバータ回路2の出力側には、交流電圧を昇圧(または降圧)するための変圧器が設けられている。
【0031】
また、
図2に示すように、インバータ装置Aは、他のインバータ装置Aと並列接続されている。
図2においては、4つのインバータ装置A(A1〜A4)が接続されている状態を示している。なお、実際の電力システムにおいては、より多くのインバータ装置Aが接続されているが、説明の簡略化のために極端に少ないケースを示している。
【0032】
図2に示す矢印は、通信を行っていることを示している。すなわち、インバータ装置A1はインバータ装置A2とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A2はインバータ装置A1およびインバータ装置A3とのみ相互通信を行っている。また、インバータ装置A3はインバータ装置A2およびインバータ装置A4とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A4はインバータ装置A3とのみ相互通信を行っている。
【0033】
図1に戻って、直流電源1は、直流電力を出力するものであり、太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0034】
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。インバータ回路2は、図示しないPWM制御インバータとフィルタとを備えている。PWM制御インバータは、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、制御回路3から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタは、スイッチングによる高周波成分を除去する。なお、インバータ回路2は、これに限られない。例えば、PWM制御インバータは、単相インバータであってもよいし、マルチレベルインバータであってもよい。また、PWM制御に限定されず、フェーズシフト制御など他の方式を用いるものであってもよい。
【0035】
電流センサ4は、インバータ回路2の三相の出力電流の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電流センサ4は、検出した瞬時値をディジタル変換して、電流信号Iu,Iv,Iw(3つの電流信号をまとめて「電流信号I」と記載する場合がある。)として制御回路3に出力する。電圧センサ5は、インバータ装置Aの三相の連系点電圧の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電圧センサ5は、検出した瞬時値をディジタル変換して、実効値を算出し、電圧信号Vとして制御回路3に出力する。直流電圧センサ6は、インバータ回路2の入力電圧を検出するものである。直流電圧センサ6は、検出した電圧をディジタル変換して、電圧信号Vdcとして制御回路3に出力する。
【0036】
制御回路3は、インバータ回路2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。本実施形態に係る制御回路3は、インバータ回路2の入力電圧、出力無効電力、出力電流、および、連系点電圧の制御を行っている。このうち、連系点電圧については、電力システムに接続されたすべてのインバータ装置A(A1〜A4)(
図2参照)が協調して制御を行う。
【0037】
以下に、本発明に係る連系点電圧の制御システムについて、
図3〜
図6を参照して説明する。
【0038】
図3は、インバータ装置Aの連系点電圧制御系を説明するための図である。
【0039】
図3(a)は、一般的なインバータ装置のモデルを示している。インバータ装置が出力する有効電力をP、無効電力をQ、インバータ装置の出力電流のd軸成分およびq軸成分をIdおよびIq(各目標値をId
*およびIq
*)としている。なお、d軸成分およびq軸成分は、後述する三相/二相変換処理および回転座標変換処理によって変換された後の回転座標系の二相の成分である。また、インバータ装置の内部位相が連系点電圧の位相に完全に追従していると仮定すると、出力電圧のq軸成分はVq=0となり、d軸成分はVd=V(連系点電圧の実効値)となるので、
P=Vd・Id+Vq・Iq=V・Id
Q=Vd・Iq−Vq・Id=V・Iq
となっている。
【0040】
本発明では、出力有効電力を抑制することで連系点電圧の上昇を緩和させるので、連系点電圧上昇抑制のための制御系を
図3(a)のモデルに追加する。
図3(b)は、連系点電圧上昇抑制のための制御系を追加したモデルを示している。
図3(b)では、連系点電圧Vの目標値からの偏差ΔVを入力されて連系点電圧補償値ΔId
*を出力する連系点電圧制御系を追加して、連系点電圧補償値ΔId
*を出力電流のd軸成分の目標値Id
*から減算するようにしている。
【0041】
電流制御系、PWMおよびインバータ主回路のダイナミクスは、電力制御系のダイナミクスと比較すると高速のため、無視することができる。
図3(c)は、これらを無視して近似したモデルである。なお、Id’
*=Id
*−ΔId
*である。
【0042】
図3(c)のモデルにおいて連系点電圧制御系だけに注目したモデルを、
図3(d)に示している。
【0043】
図4は、電力システム全体の連系点電圧制御系を説明するための図である。各インバータ装置A1〜A4が出力する有効電力をそれぞれΔP
1〜ΔP
4だけ変動させ、連系点に供給される有効電力は、これらを合算した変化量ΔPだけ変動する。連系点電圧Vは、供給される有効電力Pの変動により変動する。
図4では、これらを表している。なお、Rは、送電線の線路インピーダンスの抵抗成分である。また、有効電力の変動(外乱)ΔPwには、負荷変動や太陽電池の出力変化による変動などが含まれる。
図4が、連系点電圧の変動を各インバータ装置Aの有効電力調整によって抑制するシステムを表している。ただし、この場合、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を抑制するわけではないので、各インバータ装置Aが抑制する出力有効電力は、内部で設定されているゲインや、配置場所などによって定まってしまう。例えば、インバータ装置A1については他のものの半分だけ出力有効電力を抑制させ、インバータ装置A2〜A4については均等に抑制させるとか、各インバータ装置Aの容量に応じて抑制させるということができない。
【0044】
次に、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を抑制するための方法について説明する。
【0045】
複数の制御対象の状態の値を同じ値に収束させるコンセンサスアルゴリズムが知られている(非特許文献1,2参照)。各制御対象を頂点とし各制御対象間の通信状態を辺で表したグラフとして表現した場合、当該グラフがグラフ理論における無向グラフで連結であれば、コンセンサスアルゴリズムを用いて各制御対象の状態の値を同じ値に収束させて、コンセンサスを達成することができる。例えば、
図2に示す電力システムをグラフで表現すると、
図5(a)のようになる。頂点A1〜A4がそれぞれインバータ装置A1〜A4を表し、矢印付きの辺が各インバータ装置間の通信状態を表している。各辺は相互通信を行うことを示しており、当該グラフは無向グラフである。当該グラフの任意の2つの頂点に対して通信経路が存在しているので、当該グラフは連結である。したがって、
図2に示す電力システムの場合、コンセンサスを達成することができる。また、
図5(b)、(c)に示すグラフも無向グラフで連結であるので、
図2の電力システムにおける各インバータ装置A1〜A4の通信状態がこれらのグラフで示される場合にも、コンセンサスを達成することができる。このように、インバータ装置Aが、電力システムに接続しているインバータ装置Aのうち、少なくとも1つのインバータ装置Aと相互通信を行っており、電力システムに接続している任意の2つのインバータ装置Aに対して通信経路が存在している状態(以下ではこの状態を「連結状態」と言う。)であればよく、電力システムに接続しているすべてのインバータ装置Aと通信を行っている必要はない。
【0046】
本実施形態では、各制御対象の状態の値を同じ値に収束させるのではなく、重み付けを行って、重み付け後の値を同じ値に収束させる。すなわち、各インバータ装置Aの重み付け値W
iをそれぞれ設定しておき、状態の値を重み付け値W
iで除算することで重み付けを行い、重み付け後の値を同じ値に収束させる。これにより、各状態の値は重み付け値W
iに応じた値に収束する。例えば、W
1=W
2=W
3=1、W
4=10とすれば、インバータ装置A4の状態の値は、他のインバータ装置Aの状態の値の10倍の値に収束する。
【0047】
図6は、
図4に示すシステムにコンセンサスアルゴリズムと重み付けとを追加したものであり、各インバータ装置Aが協調して自分の負担分である有効電力を抑制することで連系点電圧の変動を抑制する制御システムを表している。
【0048】
コンセンサスアルゴリズムによって、補償値ΔId
i*を重み付け値W
iで除算した補償値ΔId
i’(=ΔId
i*/W
i)が同じ値に収束する。収束値をΔIdα’とすると、各インバータ装置A
iは、補償値ΔId
i*=W
i・ΔIdα’に応じた有効電力を抑制することになる。つまり、重み付け値W
iに応じた有効電力を抑制することになる。したがって、例えば、W
1=W
2=W
3=1、W
4=10とすれば、インバータ装置A4に、他のインバータ装置Aの10倍の有効電力を抑制させることができる。
【0049】
図1に戻って、制御回路3は、電流センサ4より入力される電流信号I、電圧センサ5より入力される電圧信号V、および、直流電圧センサ6より入力される電圧信号Vdcに基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。制御回路3は、無効電力制御部30、入力電圧制御部31、連系点電圧制御部32、協調補正値生成部33、加算器34、電流制御部35、指令信号生成部36、PWM信号生成部37、重み付け部38、および、通信部39を備えている。
【0050】
無効電力制御部30は、インバータ回路2の出力無効電力を制御するためのものである。図示していないが、無効電力制御部30は、電流センサ4が検出した電流の瞬時値と電圧センサ5が検出した電圧の瞬時値とからインバータ回路2の出力無効電力を算出し、その目標値との偏差に対してPI制御(比例積分制御)を行い、無効電力補償値を出力する。無効電力補償値は、目標値Iq
*として電流制御部35に入力される。なお、無効電力制御部30の制御はPI制御に限られず、I制御(積分制御)などの他の制御を行うようにしてもよい。
【0051】
入力電圧制御部31は、インバータ回路2の入力電圧を制御するためのものである。入力電圧制御部31は、入力電圧を制御することで、入力電力を制御して、インバータ回路2の出力有効電力を制御する。入力電圧制御部31は、直流電圧センサ6より入力される電圧信号Vdcとその目標値である入力電圧目標値Vdc
*との偏差ΔVdcを入力され、PI制御を行い、有効電力補償値を出力する。なお、入力電圧制御部31の制御はPI制御に限られず、I制御などの他の制御を行うようにしてもよい。
【0052】
連系点電圧制御部32は、連系点電圧を制御するためのものである。連系点電圧制御部32は、インバータ回路2が出力する有効電力を抑制制御することで、連系点電圧を制御する。連系点電圧制御部32は、電圧センサ5より入力される電圧信号Vとその目標値である連系点電圧目標値V
*との偏差ΔVを入力され、PI制御を行い、連系点電圧補償値を出力する。連系点電圧補償値は、加算器34に入力される。なお、連系点電圧制御部32の制御はPI制御に限られず、I制御などの他の制御を行うようにしてもよい。
【0053】
協調補正値生成部33は、各インバータ装置Aと協調するための協調補正値を生成するものである。協調補正値生成部33の詳細については、後述する。
【0054】
加算器34は、連系点電圧制御部32より入力される連系点電圧補償値に、協調補正値生成部33より入力される協調補正値を加算して、補正補償値ΔId
i*を算出する。入力電圧制御部31から出力される有効電力補償値は、加算器34から出力される補正補償値ΔId
i*を減算されて、目標値Id
*として電流制御部35に入力される。また、加算器34は、算出した補正補償値ΔId
i*を、重み付け部38にも出力する。
【0055】
電流制御部35は、インバータ回路2の出力電流の制御を行うためのものである。電流制御部35は、電流センサ4より入力される電流信号Iに基づいて電流補償値を生成し、指令信号生成部36に出力する。
【0056】
図7は、電流制御部35の内部構成を説明するための機能ブロック図である。
【0057】
電流制御部35は、三相/二相変換部351、回転座標変換部352、LPF353、LPF354、PI制御部355、PI制御部356、静止座標変換部357、および、二相/三相変換部358を備えている。
【0058】
三相/二相変換部351は、いわゆる三相/二相変換処理(αβ変換処理)を行うものである。三相/二相変換処理とは、三相の交流信号をそれと等価な二相の交流信号に変換する処理であり、三相の交流信号を静止した直交座標系(以下、「静止座標系」という。)における直交するα軸とβ軸の成分にそれぞれ分解して各軸の成分を足し合わせることで、α軸成分の交流信号とβ軸成分の交流信号に変換するものである。三相/二相変換部351は、電流センサ4から入力された三相の電流信号Iu,Iv,Iwを、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβに変換して、回転座標変換部352に出力する。
【0059】
三相/二相変換部351で行われる変換処理は、下記(1)式に示す行列式で表される。
【数1】
【0060】
回転座標変換部352は、いわゆる回転座標変換処理(dq変換処理)を行うものである。回転座標変換処理とは、静止座標系の二相の信号を回転座標系の二相の信号に変換する処理である。回転座標系は、直交するd軸とq軸とを有し、連系点電圧の基本波と同一の角速度で同一の回転方向に回転する直交座標系である。回転座標変換部352は、三相/二相変換部351から入力される静止座標系のα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを、連系点電圧の基本波の位相θに基づいて、回転座標系のd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqに変換して出力する。
【0061】
回転座標変換部352で行われる変換処理は、下記(2)式に示す行列式で表される。
【数2】
【0062】
LPF353およびLPF354は、ローパスフィルタであり、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分だけを通過させる。回転座標変換処理によって、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβの基本波成分が、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分に変換されている。つまり、LPF353およびLPF354は、不平衡成分や高調波成分を除去して、基本波成分のみを通過させるものである。
【0063】
PI制御部355は、d軸電流信号Idの直流成分と目標値との偏差に基づいてPI制御を行い、電流補償値Xdを出力するものである。入力電圧制御部31より出力される有効電力補償値から補正補償値ΔId
i*が減算されて、d軸電流信号Idの目標値Id
*として用いられる。PI制御部356は、q軸電流信号Iqの直流成分と目標値Iq
*との偏差に基づいてPI制御を行い、電流補償値Xqを出力するものである。無効電力制御部30より出力される無効電力補償値が、q軸電流信号Iqの目標値Iq
*として用いられる。
【0064】
静止座標変換部357は、PI制御部355およびPI制御部356からそれぞれ入力される電流補償値Xd,Xqを、静止座標系の電流補償値Xα,Xβに変換するものであり、回転座標変換部352とは逆の変換処理を行うものである。静止座標変換部357は、いわゆる静止座標変換処理(逆dq変換処理)を行うものであり、回転座標系の電流補償値Xd,Xqを、位相θに基づいて、静止座標系の電流補償値Xα,Xβに変換する。
【0065】
静止座標変換部357で行われる変換処理は、下記(3)式に示す行列式で表される。
【数3】
【0066】
二相/三相変換部358は、静止座標変換部357から入力される電流補償値Xα,Xβを、三相の電流補償値Xu,Xv,Xwに変換するものである。二相/三相変換部358は、いわゆる二相/三相変換処理(逆αβ変換処理)を行うものであり、三相/二相変換部351とは逆の変換処理を行うものである。
【0067】
二相/三相変換部358で行われる変換処理は、下記(4)式に示す行列式で表される。
【数4】
【0068】
なお、本実施形態では、インバータ装置Aが三相のシステムである場合について説明したが、単相のシステムであってもよい。単相のシステムの場合、電流制御部35は、インバータ回路2の出力電流を検出した単相の電流信号に対して制御を行えばよい。
【0069】
指令信号生成部36は、電流制御部35より入力される電流補償値Xu,Xv,Xwに基づいて指令信号を生成して、PWM信号生成部37に出力する。
【0070】
PWM信号生成部37は、PWM信号を生成するものである。PWM信号生成部37は、キャリア信号と指令信号生成部36より入力される指令信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。例えば、指令信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、指令信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、PWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ回路2に出力される。なお、PWM信号生成部37は、三角波比較法によりPWM信号を生成する場合に限定されず、例えば、ヒステリシス方式でPWM信号を生成するようにしてもよい。
【0071】
重み付け部38は、加算器34より入力される補正補償値ΔId
i*に重み付けを行うものである。重み付け部38には、重み付け値W
iがあらかじめ設定されている。重み付け部38は、補正補償値ΔId
i*を重み付け値W
iで除算した重み付け後の補正補償値ΔId
i’を通信部39および協調補正値生成部33に出力する。
【0072】
重み付け値W
iは、インバータ装置Aに抑制させる出力有効電力の大きさ(抑制量)に応じてあらかじめ設定しておく。例えば、インバータ装置A1(
図2参照)の容量がインバータ装置A2〜A4の容量より大きいので、インバータ装置A1の抑制量を大きくしたい場合(インバータ装置A2〜A4の抑制量をできるだけ小さくしたい場合)は、インバータ装置A1の重み付け値W
1には、他のインバータ装置A2〜A4の重み付け値W
2〜W
4と比べて大きな値を設定する。重み付け値W
2〜W
4については、抑制量を平等にするために同じ値とすればよい。また、インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルの大きさに応じて重み付け値W
iを設定するようにしてもよい。
【0073】
通信部39は、他のインバータ装置Aの制御回路3との間で通信を行うものである。通信部39は、重み付け部38より重み付け後の補正補償値ΔId
i’を入力され、他のインバータ装置Aの通信部39に送信する。また、通信部39は、他のインバータ装置Aの通信部39から受信した補償値ΔId
j’を、協調補正値生成部33に出力する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0074】
例えば、インバータ装置Aが
図2に示すインバータ装置A2の場合、通信部39は、重み付け後の補正補償値ΔId
2’をインバータ装置A1およびA3の通信部39に送信し、インバータ装置A1の通信部39から補償値ΔId
1’を受信し、インバータ装置A3の通信部39から補償値ΔId
3’を受信する。
【0075】
次に、協調補正値生成部33の詳細について説明する。
【0076】
協調補正値生成部33は、重み付け部38より入力される重み付け後の補正補償値ΔId
i’(以下では、「補償値ΔId
i’」と省略して記載する)と、通信部39より入力される、他のインバータ装置Aの補償値ΔId
j’とを用いて、各インバータ装置Aと協調するための協調補正値を生成する。補償値ΔId
i’と補償値ΔId
j’とが異なっていても、協調補正値生成部33での演算処理が繰り返されることで、補償値ΔId
i’と補償値ΔId
j’とが共通の値に収束する。
図1に示すように、協調補正値生成部33は、演算部331、乗算器332および積分器333を備えている。
【0077】
演算部331は、下記(5)式に基づく演算を行う。すなわち、演算部331は、通信部39より入力される各補償値ΔId
j’から、重み付け部38より入力される補償値ΔId
i’をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算した演算結果u
iを乗算器332に出力する。
【数5】
【0078】
例えば、インバータ装置Aがインバータ装置A2の場合(
図2参照)、演算部331は、下記(6)式の演算を行い、演算結果u
2を出力する。
【数6】
【0079】
乗算器332は、演算部331から入力される演算結果u
iに所定の係数εを乗算して積分器333に出力する。係数εは、0<ε<1/d
maxを満たす値であり、あらかじめ設定されている。d
maxは、通信部39が通信を行う他のインバータ装置Aの数であるd
iのうち、電力システムに接続しているすべてのインバータ装置Aの中で最大のものである。つまり、電力システムに接続しているインバータ装置Aのなかで、一番多くの他のインバータ装置Aと通信を行っているものの通信部39に入力される補償値ΔId
j’の数である。なお、係数εは、演算結果u
iが大きく(小さく)なりすぎて、協調補正値の変動が大きくなりすぎることを抑制するために、演算結果u
iに乗算されるものである。したがって、協調補正値生成部33での処理が連続時間処理の場合は、乗算器332を設ける必要はない。
【0080】
積分器333は、乗算器332から入力される値を積分することで協調補正値を生成して出力する。積分器333は、前回生成した協調補正値に乗算器332から入力される値を加算することで協調補正値を生成する。協調補正値は、加算器34に出力される。
【0081】
本実施形態では、制御回路3をディジタル回路として実現した場合について説明したが、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0082】
本実施形態において、協調補正値生成部33は、重み付け部38より入力される補償値ΔId
i’と、通信部39より入力される、他のインバータ装置Aの補償値ΔId
j’とを用いて、協調補正値を生成する。補償値ΔId
i’が各補償値ΔId
j’の相加平均値より大きい場合、演算部331が出力する演算結果u
iは負の値になる。そうすると、協調補正値は小さくなり、補償値ΔId
i’も小さくなる。一方、補償値ΔId
i’が各補償値ΔId
j’の相加平均値より小さい場合、演算部331が出力する演算結果u
iは正の値になる。そうすると、協調補正値は大きくなり、補償値ΔId
i’も大きくなる。つまり、補償値ΔId
i’は各補償値ΔId
j’の相加平均値に近づいていく。この処理が各インバータ装置Aそれぞれで行われることにより、各インバータ装置Aの補償値ΔId
i’は同じ値に収束する。コンセンサスアルゴリズムを用いることで制御対象の状態の値が同じ値に収束することは、数学的にも証明されている(非特許文献1,2参照)。本実施形態の場合、補償値ΔId
i’が制御対象の状態の値である。
【0083】
以下に、
図2に示す電力システムにおいて、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を抑制することで連系点電圧の変動を抑制することを確認したシミュレーションについて説明する。
図6に示す制御システムを用いてシミュレーションを行った。
【0084】
インバータ装置A1の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
1を「0.5」、積分ゲインKi
1を「6」、インバータ装置A2の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
2を「1」、積分ゲインKi
2を「10」、インバータ装置A3の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
3を「0.5」、積分ゲインKi
3を「3」、インバータ装置A4の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
4を「0.6」、積分ゲインKi
4を「7」とし、連系点電圧Vを「1[p.u.]」、送電線の線路インピーダンスの抵抗成分Rを「0.06[p.u.]」としている。
図8ないし
図10は、当該シミュレーションの結果を示すものである。
【0085】
図8および
図9は、インバータ装置A1〜A4の重み付け部38に設定されている重み付け値W
1〜W
4を、W
1=W
2=W
3=W
4=1としたものであり、各インバータ装置Aが協調して出力有効電力を抑制することを確認するためのものである。
図8は比較のためのもので、協調を行わなかった場合(すなわち、
図4に示す制御システムを用いた場合)のものであり、
図9は協調を行った場合(すなわち、
図6に示す制御システムを用いた場合)のものである。
【0086】
どちらも、シミュレーション開始から1秒後に、外乱ΔPwとして0.1[p.u.]をステップ注入した。
図8(a)および
図9(a)は、連系点電圧偏差ΔVの時間変化を示している。また、
図8(b)および
図9(b)は、各インバータ装置A1〜A4の出力有効電力の抑制量の時間変化を示している。図においては、出力有効電力を増加させる場合をプラスとしているので、抑制量はマイナスの値で示されている。
【0087】
図8の場合、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができているが、各インバータ装置A1〜A4の抑制量は、各ゲインに応じた値に固定されている。したがって、各インバータ装置A1〜A4の抑制量を制御することができない。
図8(b)の場合、インバータ装置A2の出力有効電力が最も多く抑制されており、この抑制量を小さくすることができない。
【0088】
図9の場合も、
図8の場合と同様に、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができている。また、
図9の場合、シミュレーション開始から約8秒で、各インバータ装置A1〜A4の抑制量が同じ値に収束している。すなわち、各インバータ装置A1〜A4が、協調して出力有効電力を抑制している。
【0089】
図2の電力システムの通信状態が
図5(b)、(c)に示すグラフとなる場合についてもそれぞれシミュレーションを行った。これらの場合も、
図9の場合と同様に、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができ、各インバータ装置A1〜A4の抑制量が同じ値に収束することが確認できた。また、
図5(b)のグラフの場合の方が、
図9の場合(
図5(a)のグラフの場合)より、収束するまでの時間が短く、
図5(c)のグラフの場合は収束するまでの時間がさらに短くなった。なお、シミュレーション結果の図示は省略している。
【0090】
図10は、インバータ装置A1〜A4の重み付け部38に設定されている重み付け値W
1〜W
4を、W
2=W
3=W
4=1とし、W
1を時間とともに変化させたものであり、重み付け値によって各インバータ装置Aの出力有効電力の抑制量が変化することを確認するためのものである。
図10の場合も、シミュレーション開始から1秒後に、外乱ΔPwとして0.1[p.u.]をステップ注入した。
図10(a)は、連系点電圧偏差ΔVの時間変化を示しており、
図10(b)は、各インバータ装置A1〜A4の出力有効電力の抑制量の時間変化を示している。シミュレーション開始時には重み付け値W
1を「1」としているが、シミュレーション開始から15秒後に「2」に変更し、30秒後に「4」に変更している。
【0091】
図10に示すように、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができており、シミュレーション開始から約8秒で、各インバータ装置A1〜A4の抑制量が同じ値に収束している。また、重み付け値W
1を「2」に変更した後は、インバータ装置A2〜A4の抑制量は小さく(
図10(b)においての値は大きく)なり、インバータ装置A1の抑制量は大きく(
図10(b)においての値は小さく)なっている。つまり、インバータ装置A2〜A4の抑制量の一部を、インバータ装置A1が負担するようになった。インバータ装置A2〜A4の抑制量は、インバータ装置A1の抑制量の半分になっている。さらに、重み付け値W
1を「4」に変更した後は、インバータ装置A2〜A4の抑制量は、インバータ装置A1の抑制量の4分の1になっている。このように、重み付け値によって各インバータ装置Aの出力有効電力の抑制量が変化することを確認することができた。
【0092】
本実施形態によると、協調補正値生成部33は、補償値ΔId
i’と補償値ΔId
j’とに基づく演算結果を用いて、協調補正値を生成する。各インバータ装置A1〜A4の協調補正値生成部33がこれを行うことで、すべてのインバータ装置A1〜A4の補償値ΔId
i’が同じ値に収束する。したがって、各インバータ装置A1〜A4の補正補償値ΔId
i*は、それぞれの重み付け値W
1〜W
4に応じた値になる。各インバータ装置A1〜A4の出力有効電力の抑制量は補正補償値ΔId
i*に基づいて調整されるので、各インバータ装置A1〜A4の出力有効電力の抑制量を、重み付け値W
1〜W
4に応じて調整することができる。
【0093】
また、電力システムに接続されている各インバータ装置Aがそれぞれ少なくとも1つのインバータ装置A(例えば、近隣に位置するものや、通信が確立されたもの)とだけ相互通信を行っており、電力システムが連結状態であればよく、1つのインバータ装置Aや監視装置が他の全てのインバータ装置Aと通信を行う必要はない。したがって、システムが大がかりにならない。また、あるインバータ装置Aが故障した場合や、あるインバータ装置Aを削減した場合でも、他の全てのインバータ装置Aがいずれかのインバータ装置Aと通信可能であり、電力システムが連結状態であればよい。また、インバータ装置Aを増加する場合は、そのインバータ装置Aが少なくとも1つのインバータ装置Aと相互通信を行うようにすればよいだけである。したがって、インバータ装置Aの増減に柔軟に対応できる。
【0094】
上記第1実施形態においては、インバータ装置Aが直流電源1からの入力を変換して電力系統Bに出力する場合について説明したが、これに限られない。例えば、インバータ装置Aは蓄電池の充放電を行うためのインバータ装置であってもよいし、電力調整可能な負荷用のインバータ装置であってもよい。これらの場合でも、有効電力の抑制を他のインバータ装置Aとの間で協調して行うことができる。
【0095】
なお、上記では、連系点電圧が上昇した場合について説明したが、連系点電圧が低下する場合もある。各インバータ装置AがMPPT制御を行っている場合、出力有効電力が最大になるように制御されているので、連系点電圧を上昇させるためにさらに出力有効電力を増加させることはできない。連系点電圧低下にも対応できるようにするためには、MPPT制御に代えて、出力有効電力を最大値の9割程度に制御するようにすればよい。または、連系点電圧が低下した場合は、出力有効電力を増加させられるインバータ装置(蓄電池または負荷用のインバータ装置)だけで通信を行うように切り替えて、これらの間でのみ協調して有効電力の増加をさせるようにすればよい。
【0096】
上記第1実施形態においては、演算部331に設定する演算式を上記(5)式とした場合について説明したが、これに限られない。インバータ装置A1〜A4の補償値ΔId
i’を同じ値に収束させる他の式を用いるようにしてもよい。
【0097】
例えば、演算部331に設定する演算式を下記(7)式とした場合にも、補償値ΔId
i’を同じ値に収束させることができる。d
iは、通信部39が通信を行う他のインバータ装置Aの数、すなわち、通信部39に入力される補償値ΔId
j’の数である。
【数7】
【0098】
また、演算部331に設定する演算式を下記(8)〜(10)式とした場合にも、補償値ΔId
i’を同じ値に収束させることができる。
【数8】
【0099】
上記第1実施形態においては、各インバータ装置Aの重み付け値として、固定値があらかじめ設定されている場合について説明したがこれに限られない。各インバータ装置Aの重み付け値を変更可能にしてもよい。
【0100】
図11は、第2実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。
図11においては、制御回路3のみを記載しており、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(
図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第2実施形態に係るインバータ装置Aは、インバータ回路2の温度に応じて重み付け値W
iを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。
図11に示すように、第2実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に温度検出部40および重み付け値設定部41をさらに備えている。
【0101】
図示しないが、インバータ回路2のヒートシンクには温度センサが取り付けられている。温度検出部40は、当該温度センサが検出した温度を検出し、検出した温度を重み付け値設定部41に出力する。重み付け値設定部41は、温度検出部40より入力される温度に応じた重み付け値W
iを重み付け部38に設定する。インバータ回路2の温度が高い場合、インバータ回路2に負担がかかっていると考えられるので、抑制量を大きくすることで出力有効電力を小さくして、負担を軽減する方がいい。したがって、重み付け値設定部41は、温度検出部40より入力される温度が高くなるほど、設定する重み付け値W
iを大きい値にする。本実施形態では、温度検出部40より入力される温度をあらかじめ設定しているしきい値と比較し、温度がしきい値より大きい場合に重み付け値W
iを大きい値に変更する。なお、複数のしきい値を設定しておき、重み付け値W
iを段階的に変更するようにしてもよい。また、温度検出部40より入力される温度から重み受け値W
iを線形的に算出する算出式を設定しておき、当該算出式の算出結果を設定するようにしてもよい。
【0102】
第2実施形態によると、インバータ装置Aのインバータ回路2に負担がかかりすぎてインバータ回路2の温度が高くなった場合、重み付け値W
iが大きい値に変更される。これにより、当該インバータ装置Aの出力有効電力の抑制量が大きくなり、その分、他のインバータ装置Aの出力有効電力の抑制量が小さくなる。これにより、当該インバータ装置Aの出力有効電力が抑制されて、負担が軽減される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0103】
図12は、第3実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。
図12(a)は、第3実施形態に係るインバータ装置Aの制御回路3のみを記載しており、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(
図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第3実施形態に係るインバータ装置Aは、日時や時刻によって重み付け値W
iを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。
図12(a)に示すように、第3実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に時計部42および重み付け値設定部41’をさらに備えている。
【0104】
時計部42は、日付および時刻(以下では、合わせて「日時」とする))を重み付け値設定部41’に出力する。
【0105】
重み付け値設定部41’は、時計部42より入力される日時に応じた重み付け値W
iを重み付け部38に設定する。太陽の位置は時刻によって変化するので、建物などの影がかかる領域は時刻によって変化する。また、太陽の軌道は日付によって変化する(例えば、夏至と冬至で太陽の軌道は大きく異なる)ので、建物などの影がかかる領域は日付によっても変化する。インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルに影がかかる場合、当該太陽電池パネルで発電される電力は小さくなる。この場合、インバータ装置Aの出力電力をさらに大きく抑制することを避けたいので、抑制量を小さくしたい。本実施形態では、影がかかる太陽電池パネルをあらかじめ調査しておき、影がかかる太陽電池パネルが接続されているインバータ装置Aの重み付け値W
iを、影がかかる日時に小さい値に切り替えるようにしている。また、影がかかる面積が大きいほど重み付け値W
iを小さくするようにしている。具体的には、重み付け値設定部41’は、
図12(b)に示す重み付け値W
iのテーブルをメモリに記憶してあり、時計部42より入力される日時に対応する重み付け値W
iを読み出して設定する。
図12(b)においては、1月の9:00〜12:00に太陽電池パネルに影がかかるので、この日時に通常より小さい値が設定されている。なお、重み付け値W
iは、日付に関係なく時刻によってのみ変更するようにしてもよいし、時刻に関係なく日付によってのみ変更するようにしてもよい。
【0106】
第3実施形態によると、インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルに影がかかる日時においては、重み付け値W
iが小さい値に変更され、出力有効電力の抑制量が小さくなる。これにより、影によって発電される電力が小さくなるときには、抑制量を小さくすることができる。また、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0107】
図13は、第4実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。
図13においては、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(
図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第4実施形態に係るインバータ装置Aは、インバータ回路2の出力有効電力に応じて重み付け値W
iを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。
図13に示すように、第4実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に有効電力算出部43および重み付け値設定部41”をさらに備えている。
【0108】
有効電力算出部43は、インバータ回路2の出力有効電力Pを算出するものであり、電流センサ4より入力される電流信号Iu,Iv,Iwと、電圧センサ5より入力される、三相の連系点電圧の瞬時値をディジタル変換した電圧信号Vu,Vv,Vwとから出力有効電力Pを算出する。有効電力算出部43は、算出した出力有効電力Pを重み付け値設定部41”に出力する。
【0109】
重み付け値設定部41”は、有効電力算出部43より入力される出力有効電力Pに応じた重み付け値W
iを重み付け部38に設定する。出力有効電力Pが大きい場合、インバータ装置Aの容量に対して余裕がないので、本実施形態においては、抑制量を大きくすることで出力有効電力を小さくするようにしている。すなわち、重み付け値設定部41”は、有効電力算出部43より入力される出力有効電力Pをあらかじめ設定しているしきい値と比較し、出力有効電力Pがしきい値より大きい場合に重み付け値W
iを大きい値に変更する。なお、複数のしきい値を設定しておき、重み付け値W
iを段階的に変更するようにしてもよい。また、出力有効電力Pから重み受け値W
iを線形的に算出する算出式を設定しておき、当該算出式の算出結果を設定するようにしてもよい。
【0110】
第4実施形態によると、インバータ装置Aの出力有効電力Pが大きい場合、重み付け値W
iが大きい値に変更される。これにより、当該インバータ装置Aの出力有効電力の抑制量が大きくなって、出力有効電力が抑制される。また、第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0111】
なお、直流電源1の発電量によって重み付け値W
iを変更するようにしてもよい。また、直流電源1が太陽電池の場合は日射量によって、直流電源1が風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置の場合は風量によって、重み付け値W
iを変更するようにしてもよい。また、売電価格に応じて重み付け値W
iを変更するようにしてもよい。
【0112】
本発明に係る制御回路、インバータ装置、電力システム、および、制御方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る制御回路、インバータ装置、電力システム、および、制御方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。