(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-84617(P2015-84617A)
(43)【公開日】2015年4月30日
(54)【発明の名称】充電回路
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20150403BHJP
【FI】
H02J7/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-222098(P2013-222098)
(22)【出願日】2013年10月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河メータ&インスツルメンツ株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大宮 正士
(72)【発明者】
【氏名】駒牧 盛年
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503CB11
5G503DA04
5G503DA19
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】機器内温度変化の安定化が図れ、機器の動作状況に応じた適切な値の充電電流による効率的な充電が行える充電回路を提供すること。
【解決手段】パルス幅制御手段から出力されるパルス幅制御信号により開閉制御されるスイッチング素子と充電電流検出手段を介して二次電池を充電するように構成された降圧型スイッチング方式の充電回路において、
前記充電電流検出手段はMOSFETであることを特徴とするもの。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅制御手段から出力されるパルス幅制御信号により開閉制御されるスイッチング素子と充電電流検出手段を介して二次電池を充電するように構成された降圧型スイッチング方式の充電回路において、
前記充電電流検出手段はMOSFETであることを特徴とする充電回路。
【請求項2】
前記MOSFETのゲートドレイン間にサーミスタが接続されたことを特徴とする請求項1に記載の充電回路。
【請求項3】
さらに負荷に供給する負荷電流の大きさを検出する負荷電流検出手段を設け、負荷電流の大きさに応じて機器全体の消費電力が一定になるように前記充電電流の大きさを制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充電回路。
【請求項4】
電圧値の異なる複数の負荷回路が選択的に接続できるように構成され、接続される負荷回路に合わせた最適な充電電流で充電を行うことを特徴とする充電回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電回路に関し、詳しくは、効率よく充電を行うことができ、機器内部の温度変化の安定化も図れる充電回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来の降圧型スイッチング方式の充電回路の一例を示す回路図、
図9はリチウムイオン電池の充電制御例図である。
【0003】
図8において、直流電源Vinの陽極には、スイッチング素子SWとインダクタLと電流検出抵抗Rsとたとえばリチウムイオン電池よりなる電池パックBPKの陽極が直列接続され、直流電源Vinの陰極には電池パックBPKの陰極が接続されている。
【0004】
スイッチング素子SWとインダクタLの接続点にはダイオードDの陰極が接続され、インダクタLと電流検出抵抗Rsの接続点にはコンデンサCの一端が接続され、ダイオードDの陽極およびコンデンサCの他端は直流電源Vinおよび電池パックBPKの陰極に接続されている。すなわち、これらダイオードDとコンデンサCは、直流電源Vinおよび電池パックBPKと並列に接続されている。なお、電流検出抵抗Rsの両端の電圧は、PWM(パルス幅変調)制御部CTLに入力されている。
【0005】
これにより、PWM制御部CTLは、充電電圧A’および充電電流Icの状態を検出することができ、これらの検出結果に応じてスイッチング素子SWのオン・オフをPWM制御することにより、
図9に示すように電池パックBPKの充電を制御する。
【0006】
図9において、縦軸は電圧値および電流値を示し、横軸は充電時間を示している。特性Aは充電電圧A’を表し、特性Bは充電電流Icを表している。
【0007】
充電電圧A’が規定値に達しない(電池パックBPKの電池電圧が低い)状態では、電流検出抵抗Rsの両端の電圧差が一定になるように制御する。すなわち、電流検出抵抗Rsに流れる充電電流Icが一定となるので、電池パックBPKは定電流で充電される。
【0008】
充電電圧A’が規定値(充電電圧の上限)に達すると、電池パックBPKに電流が流れなくなり、充電電流Icの電流値は徐々に減少していく。このとき、充電電圧は規定電圧上限で一定になるように定電圧制御される。これにより、電池パックBPKは定電圧で充電される。
【0009】
特許文献1には、定電圧充電回路や定電流定電圧充電回路を流用しつつ、二次電池の端子電圧が許容電圧範囲を超えるおそれを低減することが容易な電池パック、および充電システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−123560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の充電回路では、固定抵抗である電流検出抵抗Rsを用いて充電電流を検出しているため、充電電流を変化させて最適充電を行うことができない。たとえば、機器の動作中や停止中に拘わらず一定の電流で充電しているため、温度上昇や変化に敏感な測定機器などは充電による温度上昇の影響を受けることになり、最大性能を引き出すことができない。
【0012】
また、電力を供給するACアダプタとして、充電電力と機器動作を加算した出力電力を有するものを準備する必要があり、機種ごとの統一ができないばかりか、必要以上に大きな定格のものが必要となり、コストや消費電力も含めて不経済といえる。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、その目的は、電流検出素子として固定抵抗に代えて電気的または温度変化に追従して抵抗値が変化する素子を用いてスイッチング素子SWの開閉をPWM制御することにより、機器内温度変化の安定化が図れ、機器の動作状況に応じた適切な値の充電電流による効率的な充電が行える充電回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
パルス幅制御手段から出力されるパルス幅制御信号により開閉制御されるスイッチング素子と充電電流検出手段を介して二次電池を充電するように構成された降圧型スイッチング方式の充電回路において、
前記充電電流検出手段はMOSFETであることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の充電回路において、
前記MOSFETのゲートドレイン間にサーミスタが接続されたことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の充電回路において、
さらに負荷に供給する負荷電流の大きさを検出する負荷電流検出手段を設け、負荷電流の大きさに応じて機器全体の消費電力が一定になるように前記充電電流の大きさを制御することを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、
電圧値の異なる複数の負荷回路が選択的に接続できるように構成され、接続される負荷回路に合わせた最適な充電電流で充電を行うことを特徴とする充電回路である。
【発明の効果】
【0018】
これらにより、機器内温度変化の安定化が図れ、機器の動作状況に応じた適切な値の充電電流による効率的な充電が行える充電回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】本発明の他の実施例の主要部を示す回路図である。
【
図4】
図3の回路における温度に対するオン抵抗の変化特性例図である。
【
図5】本発明の他の実施例の主要部を示す回路図である。
【
図6】演算増幅器OPの出力電圧と負荷電流ILとの関係および出力電圧とオン抵抗の関係を示す特性例図である。
【
図7】本発明の他の実施例の主要部を示す回路図である。
【
図8】従来の降圧型スイッチング方式の充電回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す回路図であり、
図8と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1では、
図8の電流検出抵抗Rsに代えてPチャネル型の電界効果トランジスタQ(MOSFET)を設け、電界効果トランジスタQのオン抵抗が有する正の温度特性を利用する。
【0021】
電界効果トランジスタQのゲート・ドレイン間には抵抗R
1が接続され、ゲートは抵抗R
2と可変電圧源VSの並列回路を介して直流電源Vinおよび電池パックBPKの陰極に接続されている。なお、PWM制御部CTLを含むその他の部分は
図8と同一であり、それらの説明は省略する。
【0022】
このような構成において、電界効果トランジスタQのオン抵抗を充電電流検出抵抗として用いることにより、充電電流に温度変調をかけることができる。すなわち、機器内部の温度が上昇するとオン抵抗が増加して充電電流は減少し、温度が下降すると充電電流が増加する。この動作サイクルによって機器動作中の機器内温度変動が均一化され、精密測定器などの温度変動に敏感な機器の動作に対する温度変動の影響を軽減できる。
【0023】
また、電界効果トランジスタQのゲート・ソース間電圧Vgsの変化によるオン抵抗の変化を利用して機器動作中の充電による温度上昇を抑制する。電界効果トランジスタQは、ゲート・ソース間の電位差が小さいときにオン抵抗が大きく、電位差が大きいときにオン抵抗が小さくなる特性が知られている。
【0024】
この特性を用いて、
図2のオン抵抗と温度の特性図に示すように、機器が動作しているときは
図1の可変電圧源VSから小さなVgsを印加してオン抵抗を増加させて充電電流を少なくし、機器が停止しているときは大きなVgsを印加してオン抵抗を減少させて充電電流を増加させる。この動作によって機器動作中の充電による温度上昇を抑制し、機器が停止しているときは充電電流を大きくして充電時間を短縮させる。これら温度変動の影響軽減と充電時間の短縮は、同時に実現できる。
【0025】
ここで、従来の固定抵抗をたとえばスイッチなどで切り替えて同様な制御を行う場合には、抵抗値は連続変化しないため過渡的な応答などにより不安定となる期間が発生するおそれがあったが、本発明の電界効果トランジスタQのオン抵抗の変化は連続していて充電回路の制御を不安定にする要素を持たないことから、安定した動作が得られる。
【0026】
このような構成によれば、電界効果トランジスタQのオン抵抗が有する正の温度特性を利用して充電電流に温度変調をかけることで機内温度変化の安定化を図り、機器の性能を最大限引き出すことができる。
【0027】
また、電界効果トランジスタQのオン抵抗の変化を利用して充電電流を大きく可変することにより、機器動作中には最少電流で充電を行って温度上昇と消費電力を低減し、機器停止中には最大電流で充電を行うことで充電時間を短縮する。また、使用するACアダプタの出力容量を小さく選ぶことができ、電力的、コスト的な経済性を改善できる。
【0028】
図3は本発明の他の実施例の主要部を示す回路図であり、
図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
図3の実施例回路では、MOSFETのゲートドレイン間にサーミスタTMが接続されている。
【0029】
図4は、
図3の回路における温度に対するオン抵抗の変化特性例図である。
図3のようにサーミスタTMを追加することにより、
図4に点線で示すように温度に対するオン抵抗の変化率を大きくすることができる。よって、温度に対する充電電流の変化幅を大きくでき、所望の制御特性への調整も容易となる。なお、
図1の可変電圧源VSを温度変化に応じて制御することでも同様な結果が得られる。
【0030】
図5も本発明の他の実施例の主要部を示す回路図であり、
図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
図5の実施例回路では、負荷回路LDに流れる電流ILを検出抵抗R
3で電圧値として検出し、平滑回路RFで平滑化した後、演算増幅器OPを介してMOSFETのゲートに入力している。
【0031】
これにより、
図6に示すように、MOSFETのオン抵抗は演算増幅器OPの出力電圧に応じて制御され、負荷回路LDに流れる電流が少ないとVgsを大きくして充電電流を増加させ、逆に電流が少ないとVgsを小さくして充電電流を減少させる。
図6(A)は演算増幅器OPの出力電圧と負荷電流ILの関係を示す特性図であり、
図6(B)は演算増幅器OPの出力電圧とオン抵抗の関係を示す特性図である。
【0032】
このように機器全体での消費電力が一定になるように制御を行うことにより、発熱の均一化を図ることができ、ACアダプタの定格に整合した消費電力を実現できる。
【0033】
図7も本発明の他の実施例の主要部を示す回路図であり、
図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
図7の実施例回路では、電圧値の異なる複数の負荷回路が選択的に接続できるように構成されるとともに、電池パックBPKの充電を行うように構成されている。
【0034】
たとえば負荷回路1は1V、負荷回路2は2V、負荷回路nはnVに設定されているものとする。充電回路にこれら負荷回路のいずれかが機械的または電気的に接続されることにより、充電回路のMOSFETのゲートにはその負荷回路に設定されている所定の電圧値が印加される構造とする。この所定の電圧値でMOSFETのVgsが可変されることによりオン抵抗が変化し、各負荷回路に合わせた最適な充電電流で電池パックBPKの充電を行う。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、機器内温度変化の安定化が図れ、機器の動作状況に応じた適切な値の充電電流による効率的な充電が行える充電回路を実現できる。
【符号の説明】
【0036】
Vin 直流電源
SW スイッチ
CTL PWM制御部
Q(MOSFET) 電界効果トランジスタ
BPK 電池パック
VS 可変電圧源
TM サーミスタ