【実施例】
【0031】
以下、実施例を示し、本発明の効果をより明確にする。なお、例中のppmおよび%は重量基準を意味する。
【0032】
(実施例1)
品温70℃の食用パームオレイン(ヨウ素価:67)100重量部に対して、5%リン酸2水素ナトリウム水溶液を0.12重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、リン酸2水素ナトリウム含量60ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0033】
(実施例2)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、5%2リン酸ナトリウム水溶液を0.10重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、2リン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0034】
(実施例3)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、5%リン酸水素2ナトリウム水溶液を0.10重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、リン酸水素2ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0035】
(実施例4)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、5%トリポリリン酸ナトリウム水溶液を0.10重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、トリポリリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0036】
(実施例5)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.036重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量36ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0037】
(実施例6)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0038】
(実施例7)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.24重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量240ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0039】
(実施例8)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.30重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量300ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0040】
(実施例9)
5%トリポリリン酸ナトリウム水溶液を調製した。この水溶液のpHは9.1であり、40%リン酸水溶液を用いpHを6.0に中和し、5%トリポリリン酸ナトリウムの中和水溶液を調製した。
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、5%トリポリリン酸ナトリウムの中和水溶液を0.01重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、中和されたトリポリリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0041】
(比較例1)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)を用いた。
【0042】
(比較例2)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.0015重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量1.5ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0043】
(比較例3)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、レシチン(辻製油株式会社製、SLP-ペースト)を0.01重量部添加し、レシチン含量100ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0044】
(比較例4)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、レシチン(辻製油株式会社製、SLP-ペースト)を0.05重量部添加し、レシチン含量500ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0045】
(比較例5)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%リン酸水溶液を0.002重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、リン酸含量2ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0046】
(比較例6)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%リン酸水溶液を0.005重量部乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、リン酸含量5ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0047】
(比較例7)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%リン酸水溶液を0.019重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、リン酸含量19ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0048】
(比較例8)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸水溶液を0.005重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸含量5ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0049】
(比較例9)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸水溶液を0.03重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸含量30ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0050】
(比較例10)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、40%クエン酸水溶液を0.0125重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、クエン酸含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0051】
(比較例11)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、40%クエン酸3ナトリウム水溶液を0.0125重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、クエン酸3ナトリウウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0052】
(比較例12)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、5%エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム水溶液を0.06重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム含量30ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0053】
(比較例13)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、20%水酸化ナトリウム水溶液を0.0025重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、水酸化ナトリウム含量5ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0054】
(比較例14)
品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)100重量部に対して、10%塩化ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、塩化ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0055】
(加熱試験による色、においの評価)
実施例1〜9および比較例1〜14の油脂を内径24mmの試験管3本に各20g計量し、アルミブロック試験管加熱装置にて、190℃で24時間加熱した後の油の色調を測定した。色調は、ロビボンド比色計により、1インチセルを用いて測定し、10R+Y値で示した。加熱後の酸敗臭等の劣化臭の測定を、190℃、24時間加熱した油脂の臭いをパネラー5名が官能的に評価することにより行った。評点は、最良が5点、最低が1点とする5段階評価とした。
【0056】
実施例1〜9および比較例1〜14の結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
(表1の考察)
表1より、リン酸やリン脂質等に由来するリン分よりも、リン酸塩由来のリン分により効果的に、食用パームオレインの加熱着色が抑制され、加熱劣化臭が抑制されている事が明らかである。
【0059】
(実施例10)
品温70℃の食用菜種油(不二製油株式会社製、菜種白絞油、ヨウ素価:117)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0060】
(比較例15)
食用菜種油(不二製油株式会社製、菜種白絞油、ヨウ素価:117)を用いた。
【0061】
(実施例11)
品温70℃の食用大豆油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、ヨウ素価:131)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0062】
(比較例16)
食用大豆油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、ヨウ素価:131)を用いた。
【0063】
(実施例12)
品温70℃の食用調合油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、50部と、不二製油株式会社製、パームエースN、50部を混合したもの)100重量部に対して、10%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を0.05重量部、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)を0.01重量部添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量50ppmの加熱調理用油脂を得た。
【0064】
(比較例17)
食用調合油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、50部と、不二製油株式会社製、パームエースN、50部を混合したもの)を用いた。
【0065】
(加熱試験による色、においの評価)
実施例10〜12および比較例15〜17の油脂を内径24mmの試験管3本に各20g計量し、アルミブロック試験管加熱装置にて、190℃で24時間加熱した後の油の色調を測定した。色調は、ロビボンド比色計により、1インチセルを用いて測定し、10R+Y値で示した。加熱後の酸敗臭の測定を、190℃、24時間加熱した油脂の臭いをパネラー5名が官能的に評価することにより行った。評点は、最良が5点、最低が1点とする5段階評価とした。
【0066】
実施例10〜12および比較例15〜17の結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
(表2の考察)
表2よりリン酸塩由来のリン分による加熱着色抑制および酸敗臭抑制効果が、幅広い油脂に応用可能であることが明らかである。
【0069】
(実施例13)
実施例12の加熱調理用油脂を用いフライ試験を行った。フライ条件は、フライ鍋に、フライ用油脂を2Kg計量。油温を180±5℃に保ち。市販の冷凍コロッケを10分に1回1個4分揚げた。24時間連続してこの操作を繰り返し24時間後のフライ油の色調と風味を評価した。色調は、ロビボンド比色計により、1インチセルを用いて測定し、10R+Y値で示した。加熱後の酸敗臭等の劣化臭の測定は、パネラー5名が官能的に評価することにより行った。評点は、最良が5点、最低が1点とする5段階評価とした。
【0070】
(比較例18)
比較例17の加熱調理用油脂を用い、実施例13と同様にフライ試験を行った。
【0071】
実施例13および比較例18の結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
(表3の考察)
表3の結果より、リン酸塩由来のリン分による加熱着色抑制および酸敗臭抑制効果が実際の調理作業時にも効果的であることが明らかである。
【0074】
(調整例1)
(加熱調理用油脂用加熱劣化抑制剤の調整例)
70℃に加温したパームオレイン65重量部に対し、乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)を5重量部加えた後、20重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を30重量部加え良く攪拌し、ヘキサメタリン酸ナトリウム6重量%含有する加熱劣化抑制剤を得ることができる。
【0075】
(調整例2)
(加熱調理用油脂用加熱劣化抑制粉末製剤の調整例)
70℃に加温し完全に溶解した精製パーム油の極度硬化油65重量部に対し、乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)を5重量部加えた後、20重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を30重量部加え良く攪拌し冷却されたドラム上に流し、固化した油脂をかきとり粉砕した後、10メッシュの篩を通過させ、ヘキサメタリン酸ナトリウムを6重量%含有する加熱劣化抑制粉末製剤を得ることができる。
【0076】
(調整例3)
(加熱調理用油脂の調整例)
食用パームオレイン100重量部に対して、調整例1で得られる加熱劣化抑制剤を0.05重量部添加することで、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量30ppmである、加熱調理用油脂が得られる。
【0077】
(調整例4)
(加熱調理用油脂の調整例)
食用パームオレイン100重量部に対して、調整例2で得られる加熱劣化抑制粉末製剤を0.05重量部添加することで、ヘキサメタリン酸ナトリウム含量30ppmである、加熱調理用油脂が得られる。