特開2015-84783(P2015-84783A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-84783(P2015-84783A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20150410BHJP
【FI】
   A47C27/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-222956(P2013-222956)
(22)【出願日】2013年10月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068124
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 克躬
(74)【代理人】
【識別番号】100073117
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 令子
(72)【発明者】
【氏名】中村 勤
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】三藤 淳二
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一枚形状で構成されているプロファイル形状マットレスにおいて、変形の小さい領域での体圧分散が良好で、かつ、高変形領域での身体支持性良好なマットレスを得る
【解決手段】弾性発泡体材料よりなる基板の一面に、突起部3と深い凹部4とを交互に直線状に経緯方向に並列配置し、かつ、1つの深い凹部を囲む4つの突起部では斜めに隣接する突起部間に浅い鞍部を形成してなる弾性発泡構造体において、深い凹部が斜めに列設されている第1の深い凹部の列L1と、該列に並行し、かつ、適宜の数の深い凹部の間隔を置いて配された第2の深い凹部の列L2と該列L1,L2に交差する、適宜数の深い凹部間隔を有する深い凹部の第3,第4の列L3,L4を、切込み溝配置列Lとし、前記切込み溝配置列Lを構成する深い凹部に、深い凹部の底から基板裏面まで貫通する切込み溝8a,8bを形成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性発泡体材料よりなる基板(2)の一面に、突起部(3)と深い凹部(4)とを交互に直線状に経緯方向に並列配置し、かつ、1つの深い凹部(4)を囲む4つの突起部(3)では斜めに隣接する突起部間に浅い鞍部を形成してなる弾性発泡構造体において、深い凹部(4)が斜めに列設されている第1の深い凹部の列(L1)と、該列に並行し、かつ、適宜の数の深い凹部(4)の間隔を置いて配された第2の深い凹部(4)の列(L2)と該列(L1,L2)に交差する、適宜数の深い凹部4の間隔を有する深い凹部の第3,第4の列(L3,L4)を、切込み溝配置列Lとし、前記切込み溝配置列(L)を構成する深い凹部(4)に、深い凹部(4)の底から基板裏面まで貫通する切込み溝(8)を形成したことを特徴とするマットレス。
【請求項2】
切込み溝配置列(L)の深い凹部列(L1,L2,L3,L4)で囲まれることにより形成されるブロック塊(9)に、切込み溝(8)を有しない深い凹部(4)と突起部(3)とを複数個有することを特徴とする請求項1記載のマットレス。
【請求項3】
深い凹部列(L1,L2,L3,L4)よりなる切込み溝配置列(L)で囲まれてなるブロック塊(9)内に突起部(3)が4個から16個含まれることを特徴とする請求項1及び2に記載のマットレス。
【請求項4】
1つの深い凹部4に配する1つの切り込み溝(8)は、該切込み溝(8)の断面形状が矩形及び/又は円形形状で長さ(長辺:H)方向を平面視深い凹部の列の線と同方向及び又は交差する方向に向けて設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のマットレス。
【請求項5】
切込み溝(8)の断面形状が矩形形状で、該矩形の長さ(長辺:H)が5〜20mmであり、かつ、該切込み溝断面の短辺(D)が1〜7mmであることを特徴とする請求項4記載のマットレス。
【請求項6】
切込み溝は、その外径が4〜10mmφの円形断面状の管であることを特徴とする請求項4記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷き寝具として用いるマットレスに関する。
弾性発泡構造体を用いたマットレスで寝たとき、体圧分散のみならず良好な身体支持特性で寝姿勢を保ち、肩や腰への負担が掛りにくく、寝返りしやすい寝具を提供する。
【背景技術】
【0002】
敷き寝具の特性として、立った状態をそのまま横に倒した状態が良い寝姿勢と云われており、敷き寝具に要求される特性としては、体圧分散性と身体支持性が重要である。
【0003】
体圧分散性とは、敷き寝具に寝た時、身体にかかる体圧を分散させる性質であり、寝具材料の硬さや寝具表面に配した凹凸突起や切込み溝などにより、敷き寝具が身体の重みで圧縮変形し始める変形の小さい領域での影響が大きい。また、身体支持性とは、寝具に横たわったとき身体全体をしっかりと支え寝姿勢を保つ性質であり、寝返りする際でも、しっかりと身体を受け止め支えてくれる性質で、圧縮変形の大きい領域での敷き寝具の特性である。
したがって、敷寝具には変形の小さな領域から、変形の大きい領域までの敷き寝具の圧縮特性を調べることが重要である。
【0004】
敷き寝具が柔らか過ぎると、体圧分散は良好でも、身体は沈み込みすぎ身体支持性は悪くなり、寝返りもしにくくなる。また、硬すぎる寝具は、体圧は高くなるが、寝具の沈み込み変形は小さく寝返りし易くなる。敷き寝具には、適度な硬さと沈み込み変形が求められることになる。
【0005】
人が横たわると身体各部にかかる体重は、 頭部:胸部:臀部:足部(8:33:44:15)の凡その比率で敷き寝具に負荷がかかり、仰臥位姿勢の場合、身体形状は、胸部と臀部が沈み込みW型になる。頭部と胸部の沈み込み状態はこれをつなぐ頸椎への負荷となり、また、胸部と臀部の沈み込み状態は、胸部と臀部をつなぐジョイント部(腰椎)に負荷がかかる。そして、敷き寝具の胸部と臀部に大きな負荷が掛ることになり、敷き寝具の違いで身体部位での沈み込み量も変わり寝姿勢が変わる。
また、側臥位姿勢では、肩部(肩甲骨)と腰部(腰骨)が当たる部分などに大きな力が加わり、この部位での寝具の変形が大きく、寝具の体圧分散と身体支持性との違いが敷き寝具の違いとなる。
【0006】
敷き寝具の寝返りしやすさも、寝具の特性の影響を大きく受ける。寝返る際には身体のいろいろな部位、例えば、肘とか手をついて身体を回転させることもあり、寝具に加わる力は、仰臥位状態や側臥位姿勢状態よりも局部的に大きな力で寝具が変形することになる。
低反発ウレタンは柔らかく、身体が沈み込みやすく、体圧分散はよいが寝返りしにくい。一方、寝具が硬すぎると、寝返りはしやすくなるが就寝状態では臀部の体圧が高くなりすぎる。
したがって、敷き寝具には適度な硬さと沈み込みが求められることになる。
【0007】
敷寝具に使用するマットレスは、ポリウレタンフォームなどの連続或いは独立気泡を有する弾性発泡体の圧縮弾性を適宜選択して使用されているが、柔らかなマットレスは圧縮弾性力が少なく仰臥したときに重量のある腰部を受ける部分は他の脚部或いは頭部より沈み込みが深くなる。
これは荷重を受けたとき、その部分が沈み込むと同時に荷重を受けた部分の周囲の部分を引き込むことにより周囲の部分も変形し、該部の伸張弾性力が荷重部分の圧縮弾性力に影響を及ぼし、荷重部分の見掛上の圧縮弾性力が大きくなるからで、これは、材料の表面張力によるものであり、荷重拡散度と呼ばれ、この傾向は繊維ワタなどより、ウレタン発泡体などが特に大きい。
【0008】
荷重拡散度について図1と共に次に説明する。
図1Aは木綿の場合、図1Bはウレタンフォームの場合を示す。詰物に力を加えた場合(力方向の変位一定)、力の影響が、力と直角方向にどの程度広がるかという度合を、荷重拡散度と表現する。例えば木綿ふとん綿とウレタンフォームを比較した場合、木綿は図1Aのような、ウレタンフォームは図1Bのような挙動を示す。
【0009】
ポリウレタンフォームは弾力性に富み、繊維ワタに比べへたりにくい。
しかし、荷重拡散度は繊維ワタに比べて大きく、表面に凹凸を付与させたりスリットを入れることで荷重依存性を低減させて、さらには凹凸形状の大きさや材料の硬さを変えることで、様々な敷き寝具用マットレスが提案されている。
その一例として、基板の上に、複数の柱部分や溝部分を配列させるマットが提案されている(特許文献1参照)。また、平板の片面に凹凸形状を付与させたマットが提案(特許文献2参照)されている。
更に、複数の凹凸を有するクッション体を該クッション体の上側と下側に配された溝を作り、溝と溝で囲まれたブロックを形成させることで体圧分散と身体支持性(寝姿勢保持)に優れたクッション体が提供されている(特許文献3)。
【0010】
かかる角型形状(ブロック塊)を基板の上に配するマットレスは、たて方向・よこ方向に2次元方向からのカッティング操作により3次元構造を形成させることができ、大きさや、高さを適宜設定しての寝具提供が可能であり、構造体の上部分、下部分に溝を配し、様々な大きさのブロック塊を造ることができ、変形の小さな部分から大きな部分までの対応が容易となるが、製造上の煩雑さは免れない。
そこで、寝具用のウレタンフォームなどの加工品には、製造面の容易さから、プロファイル加工品が広く使われている(特許文献4)。
【0011】
プロファイル加工品は、表面に凹凸を有する一対の回転するローラーの凹凸間に、所定厚さのウレタンフォームシートを連続的に通し、該シートが圧縮されているときに、シート中央部をセンターカットすることで、片面に複数の突起凹凸を有する独特のプロファイル構造体シートが二枚得られることになる。
かかる手段で得られるプロファイル形状は、一枚の基板の片面に、たて方向・よこ方向に突起部および凹部が交互に列設され、かつ、斜め方向に隣接する突起部間の緩やかな鞍部(浅い凹部)が形成された複数の凹凸を有するマットレスが得られる。
【0012】
プロファイル加工品では、使用者の様々な体重・体型にマッチさせるべく、ウレタンフォームの硬さ・密度などを変えて対応されている。
プロファイル形状において、上部から寝具の厚さ方向にスリットを入れると体圧分散性は良くなるが、スリットがなくなる部分からは体圧分散性は低下し、身体支持性が増し、体圧は急に高くなるという欠点がある。
プロファイル形状を有するマットレスの厚さは、寝具に用いる場合、4cm〜12cm程度の厚さで用いられており、これ以上厚みのあるベッド用マットレスなどでは、基板部の厚さを積層させるなどの手段で厚みをだしている。
したがって、プロファイルの形状の凹凸部の一山の大きさ(ブロック)は、幅と高さが高々2〜6cm程度の大きさであり、マットレス高さの20〜50%程度の高さで、あとの50〜80%が基板部ということになる。
【0013】
突起を有するマットレスを突起の高さ方向に圧縮していくと、変形の少ない領域では、凸部突起の変形が始まり個々に独立して圧縮されていくが、変形がさらに大きくなると、身体の重みで山はすべて押しつぶされてしまい、基板部で体重を受けることになる。
変形の大きい領域では、個々の凹凸ブロックは身体の重みで押し潰され、基板部ですべての体重を受けることになり、基板部の身体支持性が重要になり、発泡体材料の硬さ・比重などの影響を受ける。プロファイル形状の基板部は平板状であり、この部分にまで変形が及ぶと圧縮力(体圧)は急激に高くなる。
【0014】
したがって、プロファイル方式で、身体の重みに耐え、圧縮変形の初期から、高圧縮領域まで体圧分散と身体支持性を良好に保つという課題に応えるには、プロファイル凹凸形状はそのまま残して、プロファイル基板部の高変形領域の圧縮特性の改善が求められることになり、基板部にある程度の大きさのブロックを形成することが求められることになる。
高変形領域でもブロック(塊)が押しつぶされない大きさとしては、マットレス基板部に、5〜15cm角程度の大きさのブロック塊を設けることが望ましい。
【0015】
例えば、上層部は柔らかく、下部になるほど硬度を高くする方法(特許文献5)や、凹凸形状の上部にスリットを入れる方法としてプロファイル上部から基板部分に向けてスリットを入れる手段が提案されている(特許文献6)が,圧縮初期の体圧分散性は良いが、基板部分にまで変形が及ぶと体圧は急に大きくなる。
凹凸面上部から基板を貫通させるスリットは基板部を分割することになり体圧分散には有効に働くことになる。しかし、スリットが他のスリットと交差したり連結したりすることで、基板部がバラバラに別れてしまうことになり、スリットは基板部には間欠的に配する必要がある。
プロファイル形状を有するマットレスは、基板面の上に凹凸突起部が配されており、基板部に通気性孔を設ける工夫として、凹凸構造の凹部に貫通孔を配する手段が提案されている(特許文献5)。
しかし、体圧分散や身体保持性までは考慮されておらず何の記述も見られない。ただ、通気性を向上させるための通気孔を設ける手段に過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実公昭58−100671号公報
【特許文献2】特開平11−103979号公報
【特許文献3】特許第4912535号公報
【特許文献4】特開2010−148819号公報
【特許文献5】特開平9−121985号公報
【特許文献6】特許第4096515号公報
【特許文献7】実用新案登録第3053595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、一枚形状で構成されているプロファイル形状マットレスにおいて、変形の小さい領域での体圧分散が良好で、かつ、高変形領域での身体支持性良好な寝返りし易いマットレスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明マットレスは、弾性発泡体材料よりなる基板の一面に、突起部と深い凹部とを交互に直線状に経緯方向に並列配置し、かつ、1つの深い凹部を囲む4つの突起部では斜めに隣接する突起部間に浅い鞍部を形成してなる弾性発泡構造体において、深い凹部が斜めに列設されている第1の深い凹部の列L1と、該列に並行し、かつ、適宜の数の深い凹部の間隔を置いて配された第2の深い凹部の列L2と該列L1,L2に交差する、適宜数の深い凹部間隔を有する深い凹部の第3,第4の列L3,L4を、切込み溝配置列Lとし、前記切込み溝配置列Lを構成する深い凹部に、深い凹部の底から基板裏面まで貫通する切込み溝を形成している。
【発明の効果】
【0019】
弾性発泡体材料よりなる基板の一面に、突起部と深い凹部とを交互に直線状に経緯方向に並列配置し、かつ、1つの深い凹部を囲み斜めに隣接する突起部を浅い鞍部により連係してなる弾性発泡構造体において、深い凹部の連続線で適宜範囲を方形に囲い該連続線上の深い凹部に、深い凹部の底から基板裏面まで貫通する切込溝を形成したために、身体周囲における体圧分散性を良好にすると共に、寝姿勢保持性を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】荷重拡散度を示すモデル図で(A)は繊維わたの場合、(B)はウレタンフォームの場合を示す。
図2】本発明マットレスの平面図。
図3図2のIII−III線断面図。
図4】本発明マットレスの一部拡大斜視図。
図5】本発明マットレスのブロック塊の構成を模式的に説明する平面図で、Aはスリット状切込み溝を有し、Bは管状の切込み溝とした例である。
図6】本発明マットレスの切込み溝の配置とブロック塊ユニットを模式的に示す平面図であり、深い凹部に配される切込み溝に囲まれることにより形成されるブロック塊ユニットの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明マットレス1を図面と共に説明する。
本発明マットレス1は、弾性発泡体樹脂よりなる基板2(図3図4に図示)の一面を突起部3と深い凹部4とを交互に直線状に経緯方向に並列配置した凹凸面5とし、裏面6は平面としたプロファイル加工による基礎形状をなしている。そして、1つの深い凹部4を四方から取り囲む4つの突起部3においては斜めに隣接する突起部3,3間に鞍状に浅く沈んだ鞍部7を形成している。
【0022】
また、深い凹部が斜めに列設されている深い凹部の第1の列L1と、該列に並行し、かつ、適宜の数の深い凹部の間隔を置いて配された深い凹部の第2の列L2との2つの列L1,L2に交差する、適宜数の深い凹部の間隔を有する深い凹部の第3,第4の列L3,L4を切込み溝配置列Lとする。
【0023】
そして、切込み溝配置列L上の深い凹部4に切込み溝8が入れられるが、切込み溝8は、プロファイル形状のたて方向、よこ方向に高い突起部3と深い凹部4が交互に列設されている中の、深い凹部4において基板部2を貫通して裏面6に開口しており、プロファイル形状の一つの深い凹部4に対して少なくとも一つの切込み溝8を配するが、切込み溝8の形状、切込み溝8の入れ方により、高い変形領域での体圧の加わり方は変わってくる。
【0024】
一つの突起3に隣接する4つの深い凹部4への切込み溝8の入れ方は、一つの凹部に一つの切込み溝8を入れる場合、その切り込み方向を考えることで、一つ及び又は複数個の突起を取り囲むように切り込みブロックを形成でき、該ブロック群により身体をしっかり支えることが可能となる。
一つの深い凹部4に入れる切込み溝8は、プロファイルマットレスの斜線L(右上がりL1、L2、左上がりL3、L4)に沿って配する切込み溝8がよい。プロファイルマットレスのたて方向、よこ方向に合わせた切込み溝8を配することは、寝具を折りたたむ場合、切込み溝8の方向と寝具の折り畳み方向が一致して、切込み溝8に応力が集中し裂けやすく耐久性の点で不安定であり、切込み溝8の方向は、たて方向・よこ方向に対し斜め方向に配するとよい。
【0025】
また、切込み溝8は、深い凹部4からマットレス基板部2を貫通し裏面6に開口しており、切込み溝8の断面は、矩形形状もしくは円形である。該断面形状の長辺(長径)をHとし、短辺(短径)をDとした場合、該溝の長辺(H)の長さは、突起部と突起部の間隔(ピッチ寸法)を超えない長さであれば基板部で隣り合う溝と溝とがつながる恐れはなく5〜20mm程度がよい。5mm以下では、応力が集中しやすく、20mmを超えると、沈み込みが大きくなりすぎ、体重がかかるとマットレス裏面まで底づきすることになる。
また、切込み溝の断面の短辺Dは1〜7mm程度が良好である。
カッターで切込み溝の短辺に1mm以下のスリットを入れるだけでも体圧分散性の効果はみられるが、スリット端部から裂けやすく、H/Dは大きければ、隣接する突起同士は区切られ、個々のブロックとして独立してくるが、H/Dが大きくなりすぎると裂けやすくなる。また、H/D=1は正方形断面、または円断面であるが、円断面の方が外力は円周に均一にかかることになり、径が小さすぎると応力が集中して裂けやすくなる。したがって、H/Dとしては1〜30程度、好ましくはH/D=1〜7程度がよい。
【0026】
円断面の場合は、直径4〜10mm程度で、プロファイル形状の大きさを超えない直径であることが必要である。また、径が大きすぎる場合には、高い変形領域での体圧が低くなり沈み込みすぎるので、こうした場合には、深い凹部4に切込みを有しない複数個の凹凸を取り囲むブロック塊の大きさを変えるか、あるいは取り囲むブロック線上に間欠的に配する孔の数を少なくして、変形の大きい領域での体圧が低くなり過ぎないように調整することができる。
【0027】
次に、切込み溝8(8a,8b)の入れ方と配置につき説明する。
図5は、本発明マットレス1の深い凹部4に配する切込み溝8(8a,8b)の入れ方と、配置例を模式的に説明する平面図である。マットレス1の突起部3と深い凹部4は平面視経方向、緯方向に、交互に並列配置されており、切込み溝8(8a,8b)は深い凹部4の中央部に配され、スリット状切込み溝8aの場合は太い斜め線で、管状の溝8bの場合は黒丸でそれぞれ表示している。
図5Aに図示する如く、切込み溝配置列L上の深い凹部4に切込み溝8(8a)が入れられる。但し、経緯の方向の異なる切込み溝配置列Lが交差する点上の深い凹部4には切込み溝8aを配しない例を示すが限定するものではない。そして、切込み溝8(8a)により取り囲まれた突起部3と、切込み溝8を有しない複数個の深い凹部4との集合体により一点鎖線で囲われたブロック塊ユニット9が形成される。したがって、切込み溝8の配置により、形成されるブロック塊ユニット9の大きさは変化させ得ることになる。
【0028】
ブロック塊ユニット9の構成は、突起部3と深い凹部4とよりなる凹凸部5の、切込み溝配置列Lの配置形状によって任意に選択出来、経緯に交差して配置された切込み溝8の経緯間隔を選択することにより、任意の数の突起を含むブロック塊ユニット9が切込み溝配置列Lで囲われることになる。図5Aはスリット状切込み溝8aタイプ、図5Bは切込み溝を管状とした管状の溝8bタイプにより本発明の切込み溝8の配置を例示する。
【0029】
図6で、ブロック塊ユニット9(9a,9b,9c)の幾つかについて説明する。
ブロック塊ユニットの大きさ(平面視では面積)は、切込み溝8の配置により変えることができる。切込み溝8はスリット状切込み溝8aと管状の溝8bの2種の形式が存在する。
図6Aに示すブロック塊ユニット9aは、突起部3に隣接する4つの深い凹部4には、切込み溝8の列Lの延長線で互いに交差するように、方向を異ならせた切込み溝8aが配されており、1つの突起部3に隣接する4つの深い凹部4すべてに切込み溝8aが配されている。したがって、切込み溝8aに囲まれたブロック塊ユニット9の中に1つの突起部3がある。
図6Bに示すブロック塊ユニット9bは、切込み溝を有しない1つの深い凹部4が4つの突起部3に囲まれ、更にそれらが8つの深い凹部4に囲まれてなる。したがって、ブロック塊ユニット9bの中には、1つの切込み溝を有しない深い凹部4と4つの突起部3がある。
図6Cは、切込み溝を管状8b(平面視では●で示す)とした例であり、切込み溝8配置は図5Aと同じで、管状の切込み溝8bに囲まれたブロック塊ユニット9の中には、4つの切込み溝のない深い凹部4と9つの突起部3がある。
【0030】
本発明マットレス1は、上記の如く、深い凹部4の連続線で適宜範囲を方形状に囲い、深い凹部4には凹部4の底から基板裏面まで貫通する切込み溝8を設けるために、該マット1上に横になったとき切込み溝8のため身体周囲における体圧分散性を良好にすると共に、マットレス中央における切込み溝8を設けない部分により寝姿勢保持性を高め、肩や腰への負担が掛り難く、寝返りし易い寝具としている。
【0031】
プロファイル形状に切り込み溝を入れたマットレスの体圧分散性を調べた処、次の如くであった。
隣接する突起と突起との間隔(ピッチ寸法)が、経方向54mm×緯方向52mmであり、厚さが90mmの発泡ポリウレタン製プロファイルマットレスの深い凹部に、長さH=14.4mm、巾D=4.6mm(H/D=3.1)の切込み溝を入れた本発明マットレスに、体重・身長・体型の異なる3名の男女を被験者として、仰臥位、側臥位で寝た時の体圧とマットレスの沈み込みを調べた。切込み溝の配置としては、ブロック塊の形状は9個の突起が、その周囲に配された切込み溝を有する深い凹部で囲まれているタイプである。
仰臥位での本発明マットレスの体圧分散性は、切込み溝を有しない比較品に比べて特に体圧が大きい臀部において顕著である。また、側臥位では臀部と肩部の体圧が集中しているが、臀部に着目すると本発面品の体圧が分散されていることが表1により明らかである。
【0032】
【表1】
【0033】
マットレスに体圧が加わる際、高変形領域において本発明の効果が大きく、同じ硬さのマットレス場合、体重の重い人ほど切込み溝の効果は大きくなる。
言い換えれば、高変形領域での硬さが柔らかいということになる。
JISK6400-2 D法では、ウレタンフォームの圧縮硬さ評価は、200mmφの円板で試料の厚さの25%圧縮した時の応力(ニュートンN)を用いている。
本発明のマットレスにおいては、低荷重領域として30%圧縮時応力、高荷重領域として70%圧縮時応力により、プロファイルマットレスを圧縮硬さと寝返り性を評価した。
【0034】
表2は、ポリウレタンフォームの密度45kg/m、厚さが80mm、突起部高さ5が35mm、基板部2の厚さが45mmであり、突起部と突起部とのピッチが経方向57mm、緯方向51mmである硬度90Nのマットレスの深い凹部から基板部2を貫通する切込み溝8を有するマットレスと、切込み溝を有しないマットレス(比較)で、圧縮特性と寝返り性を比較した。
【0035】
実験1は切込み溝の配置は(図6A)で、プロファイルの深い凹部すべてに切込み溝(スリット)を設けたマットレスである。実験2は切込み溝の配置は(図5A)で、9個の突起部を囲むように切込み溝(スリット)を設けたマットレスである。また、実験3の配置は(図6B)で実験2と同じであるが、切込み溝形状が円形断面である。
なお、実験1、実験2の切込み溝はスリットであり、幅20mm、2mm厚さの先の尖ったナイフでマットレスの深い凹部の所定の位置から基板部を貫通するスリット形状を設けた。
スリットの幅(長辺H)は20mmであり、力が加わらないときは、スリットの短辺Dは口が閉じられているが、突起部側から圧縮により力が加わると開口し、切込み溝の効果を発揮することになる。実験3の切込み溝形状は8mmφの円形形状である。
切込み溝の配置によりブロック塊の大きさは異なり、実験1では、一つの突起部の周りが全て切込み溝で囲まれている配置(図6B)であり、ブロック塊面積は29cmである。実験2の切込み溝配置は(図5A)であり、ブロック塊の大きさはプロファイル突起9個を含む大きさで260cmである。また。実験3は実験2と同じ配列であり、突起9個分が切込み溝で囲まれ260cmの面積を有するブロック塊のマットレスである。
【0036】
【表2】
【0037】
表2において、マットレス切込み溝の配列によりブロック塊の大きさが変わる。
ブロック塊が大きくなると30%圧縮時応力の変化よりも、70%圧縮時応力の変化の方が大きく体圧は高い。また切込み溝(スリット)の配置によりブロック塊が小さくなると70%圧縮応力も小さくなり寝返り性も悪くなっている。
寝返りしやすさは寝具寝心地の要因であり、マットレスに横たわり仰臥位5秒→(寝返り)→側臥位5秒→(寝返り)→仰臥位5秒→・・・を10回繰り返して主観評価した。
評価は5段階で通常のプロファイルふとんが約4級、低反発ウレタンマットレスが約2級であった。切込み溝によりブロック塊が小さくなると寝返りし難くなるので、ある程度のブロック塊の大きさが求められる。
表2において、70%変形時の圧縮応力が300Nより低くなると寝返り性が悪くなる。
即ち、寝返り性はプロファイルマットレスの70%変形時の圧縮応力が250〜400N程度、好ましくは300〜350N程度が良好であり、250N以下では柔らかすぎて沈み込みすぎ、体重の重い部分(臀部など)の変形が大きく、腰を痛めることにもなるし、寝返りもし難くなる。一方、70%変形時の圧縮応力が400Nを超えるとマットレスとして硬すぎ、体圧分散性はよくない。
ウレタンフォームの硬度を大きくすることで、沈み込み変形を抑えることは可能であるが、同じ硬さのウレタンフォームでもプロファイル形状の深い凹部から裏面に開口する切込み溝の形状、配列方法を変えることで高変形領域での体圧を調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 マットレス
2 基板
3 突起部
4 深い凹部
5 凹凸部
6 裏面
7 浅い鞍部
8 切込み溝
8a スリット状切込み溝
8b 管状の溝
9,9a,9b,9c ブロック塊ユニット
L1 第1の深い凹部の列
L2 第2の深い凹部の列
L3 第3の深い凹部の列
L4 第4の深い凹部の列
L 切込み溝配置列
図1
図2
図3
図4
図5
図6