【解決手段】本発明のゴルフボールは、構成部材の少なくとも一つが、(A)ポリアミド樹脂と、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種とを含有し、(A)成分と(B)成分との合計量100質量%中の(A)成分の含有率が、15質量%〜80質量%であり、スラブ硬度が、ショアD硬度で65以上、80以下であり、曲げ弾性率X(MPa)を、前記(A)成分の含有率(A:15質量%〜80質量%)で除した値(X/A)が、12.5以上であることを特徴とする。
前記(A)成分と前記(B)成分との合計100質量部に対して、(C)有機化層状珪酸塩を0.1質量部〜50質量部含有する請求項4〜6のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
前記(B)成分として、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の含有率が、16質量%以上のものを含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
コアと、前記コアを被覆する1層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを含有するゴルフボールであって、前記コア、1層以上の中間層、または、カバーの少なくとも一つが、請求項1〜9のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)ゴルフボール用樹脂組成物
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂と、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種とを含有し、(A)成分と(B)成分との合計量100質量%中の(A)成分の含有率が、15質量%〜80質量%であり、スラブ硬度が、ショアD硬度で65以上、80以下であり、曲げ弾性率X(MPa)を、前記(A)成分の含有率(A:15質量%〜80質量%)で除した値(X/A)が、12.5以上であることを特徴とする。
【0021】
まず、本発明で使用する(A)ポリアミド樹脂について説明する。前記(A)ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合(−NH−CO−)を複数有する重合体であれば特に限定されない。前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ラクタムの開環重合、アミノ酸の縮合反応、ジアミン成分とジカルボン酸成分との縮合反応により、アミド結合が分子内に形成された生成物が挙げられる。
【0022】
前記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどが挙げられる。前記アミノ酸としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などを挙げることができる。
【0023】
前記ジアミン成分としては、例えば、脂肪族ジアミンであるテトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンや、芳香族ジアミンであるメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、脂環族ジアミンである1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどのジアミンが挙げられる。
【0024】
前記ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸であるアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸や、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、脂環族ジカルボン酸である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸が挙げられる。
【0025】
前記(A)ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族系のポリアミド、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5Tなどの半芳香族系のポリアミド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族系ポリアミドが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、加工性、耐久性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族系ポリアミドが好適である。
【0026】
前記ポリアミド樹脂の具体例を商品名で示すと、例えば、アルケマ社から市販されている「リルサン(登録商標)B(例えば、BESN TL、BESN P20 TL、BESN P40 TL、MB3610、BMF O、BMN O、BMN O TLD、BMN BK TLD、BMN P20 D、BMN P40 Dなど)」、DSMエンジニアリングプラスチックス社から市販されている「ノバミッド(登録商標)(例えば、1010C2、1011CH5,1013C5,1010N2,1010N2−2、1010N2−1ES,1013G(H)10−1、1013G(H)15−1、1013G(H)20−1、1013G(H)30−1、1013(H)45−1、1015G33、1015GH35、1015GSTH、1010GN2−30、1015F2、ST220、ST145、3010SR、3010N5−SL4、3021G(H)30、3010GN30など)」、東レ社製「アミラン(登録商標)(例えば、CM1007、CM1017、CM1017XL3、CM1017K、CM1026、CM3007、CM3001−N、CM3006、CM3301Lなど)」などが挙げられる。
【0027】
前記ポリアミド樹脂のISO113に準拠した方法にて測定したメルトフローレイト(260℃×325g荷重)は、5g/min以上が好ましく、より好ましくは8g/min以上、さらに好ましくは20g/min以上であり、170g/min以下が好ましく、150g/10min以下がより好ましく、さらに好ましくは120g/10min以下である。前記ポリアミド樹脂のメルトフローレイト(260℃×325g荷重)が5g/10min以上であれば、流動性が良好となり、ゴルフボールの構成部材への成形が容易になる。また、前記ポリアミド樹脂組成物のメルトフローレイト(260℃×325g荷重)が170g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0028】
前記ポリアミド樹脂の曲げ弾性率はISO178に準拠した方法にて測定した際の値が、500MPa以上が好ましく、より好ましくは520MPa以上、さらに好ましくは550MPa以上であり、4,000MPa以下が好ましく、より好ましくは3,500MPa以下、さらに好ましくは3,200MPa以下である。前記ポリアミド樹脂の曲げ弾性率が500MPa以上であれば、得られるゴルフボールの構成部材が高弾性化される。その結果、ゴルフボールの初速が高くなる。また、前記(A)ポリアミド樹脂の曲げ弾性率が4,000MPa以下であれば、得られるゴルフボール構成部材が硬くなりすぎず、打球感および耐久性が良好となる。
【0029】
前記ポリアミド樹脂の重合度には、特に限定がなく、ISO307に準拠する方法で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲が好ましく、2.0〜4.0の範囲がより好ましい。
【0030】
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、結晶と非晶の混在状態で構成されているものが好ましい。この場合、前記ポリアミド樹脂の結晶化度は、5%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、6.5%以上がさらに好ましく、15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下がさらに好ましい。前記結晶化度Xは、次式で算出することができる。
X={dc(d−da)}/{d(dc−da)}
ここで、dc:結晶質の密度、da:非晶質の密度、d:試料の密度
【0031】
次に、本発明で使用する(B)成分について説明する。本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0032】
前記(b−1)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。また、前記(b−2)成分としては、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
【0033】
前記(b−3)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。前記(b−4)成分としては、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、α,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
【0034】
なお、本発明において、「(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体」を単に「二元共重合体」と称し、「(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物」を「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体」を単に「三元共重合体」と称し、「(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物」を「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
【0035】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(B)成分として、(b−2)二元系アイオノマー樹脂および/または(b−4)三元系アイオノマー樹脂を含有することが好ましい。本発明のゴルフボール用樹脂組成物が、(B)成分として、(b−1)二元共重合体および/または(b−3)三元共重合体のみを含有する場合には、さらに金属化合物を含有することが好ましい。ゴルフボール用樹脂組成物中で、(b−1)二元共重合体および/または(b−3)三元共重合体のカルボキシル基を金属化合物で中和することにより、二元系アイオノマー樹脂および/または三元系アイオノマー樹脂を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。
【0036】
(b−1)二元系共重合体および/または(b−3)三元系共重合体のカルボキシル基を中和するための金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。
【0037】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(B)成分として、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の含有率が、15質量%以上のものを含有することが好ましく、16質量%以上のものを含有することがより好ましく、17質量%以上のものを含有することがさらに好ましい。酸成分の含有率が15質量%以上であれば、得られるゴルフボール用樹脂組成物の反発性、硬度が良好となる。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の含有率の上限は、特に限定されないが、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。
【0038】
前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
【0039】
前記(b−1)二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましく、前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(b−3)三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましい。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0040】
前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
【0041】
前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは15g/10min以上であり、1700g/10min以下が好ましく、より好ましくは1500g/10min以下、さらに好ましくは1300g/10min以下である。前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が5g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い構成部材を成形しやすくなる。また、前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が1700g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0042】
前記(b−1)二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)5980I」で市販されているエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0043】
前記(b−3)三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルAN4319」)」、デュポン社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAE」)」、ダウケミカル社から市販されている商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)(例えば、「PRIMACOR AT310」、「PRIMACOR AT320」)」などを挙げることができる。前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体は、単独または二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0044】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、16質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、15質量%以上であれば、得られる構成部材を所望の硬度にしやすくなるからである。また、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、30質量%以下であれば、得られる構成部材の硬度が高くなり過ぎず、耐久性と打球感が良好になるからである。
【0045】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。一方、中和度が90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
【0046】
二元系アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0047】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂としては、ナトリウムで中和された二元系アイオノマー樹脂と、亜鉛で中和された二元系アイオノマー樹脂との混合物を使用することが好ましい。これらの混合物を使用することにより、反発性と耐久性とを両立しやすくなる。
【0048】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。
【0049】
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
【0050】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
【0051】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0052】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率は、140MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、550MPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。曲げ弾性率が上記範囲内であれば、ドライバーショットのスピン量が適正化され飛距離性能に優れるとともに、耐久性も良好となる。
【0053】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、例えば、得られる構成部材の薄肉化が可能となる。また、前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0054】
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で50以上であれば、得られる構成部材が高硬度となる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で75以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0055】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
【0056】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0057】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0058】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。さらにデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など)」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ弾性率は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは11MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは97MPa以下、さらに好ましくは95MPa以下である。曲げ弾性率が上記範囲内であれば、ドライバーショットのスピン量が適正化され飛距離性能に優れるとともに、耐久性も良好となる。
【0060】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、20g/10min以下が好ましく、より好ましくは15g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い構成部材の成形が可能となる。また、前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が20g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0061】
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、得られる構成部材が柔らかく成り過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好になる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0062】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物において、(A)成分と(B)成分との質量比率((A)/(B))は、15/85〜80/20であることが好ましく、20/80〜75/25であることがより好ましく、25/75〜70/30であることがさらに好ましい。(A)成分と(B)成分との質量比が、前記範囲内であれば、曲げ弾性が高いためドライバーショットのスピン量が低減し、また、反発弾性が良好であるため、ドライバーショットの飛距離が大きくなる。さらに、ゴルフボールの耐久性も良好となる。
【0063】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、さらに(C)有機化層状珪酸塩を含むことが好ましい。本発明で使用する(C)有機化層状珪酸塩について説明する。層状珪酸塩とは、層状の構造を有する珪酸塩である。有機化層状珪酸塩とは、層状珪酸塩がその結晶層間に本来有している金属陽イオンの一部または全部を、有機オニウムイオンに交換したものをいう。
【0064】
前記層状珪酸塩としては、層状の構造を有する珪酸塩であれば特に限定されず、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、クリソタイル、リザーダイト、アメサイトなどのカオリナイト族の層状珪酸塩;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト族の層状珪酸塩;二八面体型バーミキュライト、三八面体型バーミキュライトなどのバーミキュライト族、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライトなどの雲母族の層状珪酸塩;マーガライト、クリントナイト、アナンダイトなどの脆雲母族の層状珪酸塩;クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイトなどの緑泥石族の層状珪酸塩などが挙げられる。これらの層状珪酸塩は、天然のものでも、合成のものでもいずれであっても良く、単独または2種以上の混合物として使用することができる。これらの中でも、本発明に用いられる層状珪酸塩としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト族の層状珪酸塩;二八面体型バーミキュライト、三八面体型バーミキュライトなどのバーミキュライト族、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライトなどの雲母族の層状珪酸塩が好ましく、特にモンモリロナイト、雲母族の層状珪酸塩が好適である。
【0065】
前記層状珪酸塩を構成する各層(一次粒子)は、厚さが10nm以下のナノサイズの微粒子であることが好ましく、その長さと幅はそれぞれ、1μm以下の平板な形状を有することが好ましい。前記層状珪酸塩の大きさは、特に限定されないが、1μm以下が好ましく、700nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
【0066】
前記層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、30meq/100g以上であることが好ましく、より好ましくは40meq/100g以上、さらに好ましくは50meq/100g以上であり、200meq/100g以下であることが好ましく、より好ましく180meq/100g以下、さらに好ましくは160meq/100g以下である。陽イオン交換容量が30meq/100g以上であれば、有機化処理を行う際に、有機オニウムイオンの交換を十分に行うことができ、層間距離を所望の間隔に拡大することができ、陽イオン交換容量が200meq/100g以下であれば、結晶層間の結合力が強すぎることがなく、容易に層間距離を拡大することができる。なお、陽イオン交換容量とは、単位質量当たりの層状珪酸塩が含有する交換性を有する陽イオンの量である。
【0067】
前記有機化層状珪酸塩中のイオン交換率は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。有機化層状珪酸塩中のイオン交換率を50モル%以上とすることにより、樹脂成分に対する有機化層状珪酸塩の分散性を向上させることができる。ここで、有機化層状珪酸塩中のイオン交換率とは、有機化処理前の層状珪酸塩が含有する交換性を有する陽イオンのうち、どの程度の陽イオンが有機陽イオンに交換されたかという比率(百分率)である。
【0068】
層状珪酸塩の有機化処理に用いられる有機オニウムイオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機オニウムイオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオン、有機スルホニウムイオンなどが挙げられる。
【0069】
有機アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良い。
【0070】
1級アンモニウムイオンとしては、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0071】
2級アンモニウムイオンとしては、メチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0072】
3級アンモニウムイオンとしては、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0073】
4級アンモニウムイオンとしては、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン;トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0074】
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸などから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
【0075】
これらのアンモニウムイオンの中でも、アンモニウムイオンの分子内の炭素数の合計が11〜30の4級アンモニウムイオンが層状珪酸塩の分散性、イオン結合の形成性の点から特に好適である。具体的には、オクタデシルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどである。
【0076】
本発明における層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された有機化層状珪酸塩は、交換性の金属イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させたアンモニウム塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0077】
また、前記層状珪酸塩は上記の有機オニウムイオンに加え、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用しても良い。
【0078】
好ましいカップリング剤は、有機シラン系化合物であり、その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の炭素炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。特に、炭素炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0079】
これらカップリング剤での層状珪酸塩の処理は、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中、あるいはこれらの混合溶媒中でカップリング剤を層状珪酸塩に吸着させる方法か、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌混合機の中で層状珪酸塩を撹拌しながらカップリング剤溶液を滴下して吸着させる方法、さらには層状珪酸塩に直接シランカップリング剤を添加して、乳鉢等で混合して吸着させることによる方法のいずれを用いても良い。層状珪酸塩をカップリング剤で処理する場合には、カップリング剤のアルコキシ基の加水分解を促進するために水、酸性水、アルカリ性水等を同時に混合するのが好ましい。また、カップリング剤の反応効率を高めるため、水のほかにメタノールやエタノール等の水、カップリング剤両方を溶解する有機溶媒を混合してもかまわない。このようなカップリング剤で処理した層状珪酸塩を熱処理することによってさらに反応を促進させることも可能である。なお、予め層状珪酸塩のカップリング剤での処理を行わずに、層状珪酸塩と熱可塑性ポリアミド樹脂を溶融混練する際に、これらカップリング剤を添加するいわゆるインテグラルブレンド法を用いてもよい。
【0080】
層状珪酸塩の有機オニウムイオンによる処理とカップリング剤による処理の順序にも特に制限はないが、まず有機オニウムイオンで処理した後、カップリング剤処理をすることが好ましい。
【0081】
有機化層状珪酸塩の具体例としては、例えば、Laviosa Chimica Mineraria S.p.A.社から市販されている「Dellite(登録商標)43B(精製モンモリロナイト、粒子径500nm,厚み1nm、4級アンモニウム塩処理:ベンジル基、牛脂脂肪酸基及び2個のメチル基を有する4級アンモニウム塩)」、「Dellite(登録商標)67G(精製モンモリロナイト、粒子径500nm,厚み1nm、4級アンモニウム塩処理:2個の牛脂脂肪酸基及び2個のメチル基を有する4級アンモニウム塩)」、株式会社ホージュン製の「エスベン」などを挙げることができる。
【0082】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物が、(C)有機化層状珪酸塩を含有する場合、(C)有機化層状珪酸塩の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.12質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。有機化層状珪酸塩の含有率が、前記範囲内であれば、添加による物性改良効果が良好であり、かつ靭性低下が抑えられるからである。ゴルフボール用樹脂組成物中に(C)有機化層状珪酸塩を含有することにより、曲げ弾性率が向上しドライバーショットのスピン量が低減するため、ドライバーショットの飛距離を大きくすることができる。
【0083】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、必要に応じて、(D)有機オニウム塩を含有してもよい。(D)前記有機オニウム塩とはアンモニウム塩やホスホニウム塩、スルホニウム塩に代表される化合物群である。これらのなかではアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、特にアンモニウム塩が好んで用いられる。アンモニウム塩としては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのクロライド、ブロマイド、アセテート、スルフェートなどいずれでも良い。
【0084】
1級アンモニウム塩としては、デシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどの塩が挙げられる。
【0085】
2級アンモニウム塩としては、メチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどの塩が挙げられる。
【0086】
3級アンモニウム塩としては、ジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどの塩が挙げられる。
【0087】
4級アンモニウム塩としては、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウム塩;トリオクチルメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0088】
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などから誘導されるアンモニウム塩なども挙げられる。
【0089】
これらのアンモニウム塩の中でも、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドなどが好んで使用できる。
【0090】
層状珪酸塩の有機化処理に用いる有機オニウムイオンと、(D)成分としての有機オニウム塩を形成する有機オニウムイオンは同一であっても、異なっていても良い。同一の有機オニウムイオンを用いる場合には、(C)成分である有機化層状珪酸塩を製造する際に、有機オニウム塩を過剰に添加して(C)成分中に有機オニウム塩が残存する状態として用いても良い。
【0091】
(D)有機オニウム塩として、有機アンモニウム塩を配合する場合の配合量は、得られる樹脂組成物の物性及びガス発生の点から(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01質量部〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部〜5質量部、特に好ましくは0.1質量部〜3質量部の範囲である。
【0092】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、さらに、流動性改質剤を含有してもよい。前記流動性改質剤としては、脂肪酸および/またはその金属塩を挙げることができる。
【0093】
前記脂肪酸としては、特に限定されず、例えば、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ペラルゴン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、イコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸などの飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。
【0094】
前記脂肪酸金属塩としては、特に限定されず、例えば、前記脂肪酸の金属塩が挙げられる。前記脂肪酸金属塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩、脂肪酸リチウム塩などの1価の金属塩;脂肪酸マグネシウム塩、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸バリウム塩、脂肪酸カドミウム塩などの2価の金属塩;脂肪酸アルミニウム塩などの3価の金属塩が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸銅などの飽和脂肪酸の2価の金属塩が好ましい。
【0095】
前記流動改質剤の添加量は、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。流動性改質剤の添加量が、前記範囲内であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が改善される。そのため、薄い構成部材の成形が可能になる。
【0096】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、さらに、白色顔料(酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0097】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、例えば、(A)成分と(B)成分と、必要により(C)成分とをドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
【0098】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト(240℃×2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、8g/10min以上がより好ましく、10g/10min以上がさらに好ましく、100g/10min以下が好ましく、70g/10min以下がより好ましく、40g/10min以下がさらに好ましい。ゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイトが、上記範囲内であれば、成形性が良好である。
【0099】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で65以上が好ましく、67以上がより好ましく、69以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、78以下がより好ましく、76以下がさらに好ましい。スラブ硬度がショアD硬度で65以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、コアと中間層とからなる球体が、外剛内柔構造を有し、ドライバーショットに対して高打出角および低スピンのゴルフボールが得られる。その結果、ドライバーショットの飛距離が大きくなる。一方、スラブ硬度がショアD硬度で80以下のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、耐久性に優れるゴルフボールが得られる。ここで、ゴルフボール用樹脂組成物のスラブ硬度とは、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0100】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の曲げ弾性率X(MPa)は、400MPa以上が好ましく、より好ましくは430MPa以上、さらに好ましくは450MPa以上であり、4,000MPa以下が好ましく、より好ましくは3,500MPa以下、さらに好ましくは3,000MPa以下である。前記ゴルフボール用樹脂組成物の曲げ弾性率が400MPa以上であれば、得られるゴルフボールを外剛内柔構造とすることができ、飛距離が向上する。また、前記ゴルフボール用樹脂組成物の曲げ弾性率が4,000MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
【0101】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、ポリアミド樹脂の含有率に対して、曲げ弾性率が大きくなるという特徴がある。曲げ弾性率X(MPa)を前記(A)成分の含有率(A:15質量%〜80質量%)で除した値(X/A)が、12.5以上であり、より好ましくは、14以上であり、さらに好ましくは、16以上である。曲げ弾性率X(MPa)を前記(A)成分の含有率(A:15質量%〜80質量%)で除した値(X/A)が、12.5以上であれば、高弾性を有し、かつ十分な耐久性が得られる。なお、曲げ弾性率X(MPa)を前記(A)成分の含有率(A:15質量%〜80質量%)で除した値(X/A)の上限は、特に限定されないが、35である。
【0102】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の反発弾性率(%)は、48以上が好ましく、より好ましくは49以上、さらに好ましくは50以上である。前記ゴルフボール用樹脂組成物の反発弾性率(%)が48以上であれば、得られるゴルフボールの反発性が高くなり、飛距離が向上する。
【0103】
なお、前記ゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト、曲げ弾性率、反発弾性率、およびスラブ硬度は、前記(A)成分、(B)成分、および(C)成分などの種類、添加量などを適宜選択することによって調整することができる。
【0104】
(2)ゴルフボール
本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆する1層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コア、1層以上の中間層、または、カバーの少なくとも一つが、上述したゴルフボール用樹脂組成物から成形されていることを特徴とする。より好ましい態様では、コアと、前記コアを被覆する1層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも一層が、上述したゴルフボール用樹脂組成物から成形されていることを特徴とする。
【0105】
以下、本発明のゴルフボールを、コアと前記コアを被覆する1層以上の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)であって、前記中間層の少なくとも一つが、上述したゴルフボール用樹脂組成物から成形されている好ましい態様に基づいて詳述する。
【0106】
コア材料
前記コアの形状としては、球状が一般的であるが、球状コアの表面を分割するように突条が設けられた異形コアであってもよい。前記コアには、ゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を採用することが好ましい。前記コアは、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0107】
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0108】
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。0.3質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を減少する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0109】
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
【0110】
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、55質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
【0111】
コア用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、より好ましくは20質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0112】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
【0113】
前記有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類などを挙げることができる。
【0114】
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。前記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0115】
老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0116】
カバー材料
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成されることが好ましい。前記樹脂成分としては、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)」、デュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)」、および、エクソンモービル化学(株)から市販されている「アイオテック(Iotek)」などのアイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY85A」、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。また、(B)成分である(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、および、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体を用いることもできる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0117】
前記カバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。より好ましい態様では、カバー用組成物が、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含有する。ポリウレタンカバーを採用することにより、アプローチショットのコントロール性を向上させることができる。
【0118】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0119】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0120】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で65以下が好ましく、より好ましくは60以下、さらに好ましくは55以下である。カバー用組成物のスラブ硬度を65以下とすることによって、ショートアイアンなどのアプローチショット時のスピン量が高くなる。その結果、アプローチショット時のコントロール性に優れるゴルフボールが得られる。また、アプローチショット時のスピン量を十分確保するためには、前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。
【0121】
ゴルフボールの製造方法
本発明のゴルフボールのコアは、前述のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃〜200℃、圧力2.9MPa〜11.8MPaで10分間〜60分間で行われる。具体的には、前記ゴム組成物を130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは、130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
【0122】
中間層は、例えば、コアをゴルフボール用樹脂組成物で被覆して形成する。中間層を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ゴルフボール用樹脂組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130℃〜170℃で1分間〜5分間加圧成形するか、またはゴルフボール用樹脂組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法などが用いられる。本発明のゴルフボールの中間層は、射出成形法により成形されることが好ましい。射出成形法を採用することにより、中間層をより容易に生産することができるからである。
【0123】
ゴルフボール用樹脂組成物をコア上に射出成形して中間層を成形する場合、押出して得られたペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、樹脂成分や顔料などの材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。本発明では、押出して得られたペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を用いて射出成形することが好ましい。成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、加熱溶融されたゴルフボール用樹脂組成物を注入して、冷却することにより中間層を成形することができる。
【0124】
圧縮成形法により中間層を成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。ゴルフボール用樹脂組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、ゴルフボール用樹脂組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いて中間層を成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層に成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、ゴルフボール用樹脂組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する中間層を成形できる。
【0125】
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。またゴルフボール用樹脂組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を、プランジャー面積:1cm
2、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、.荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0126】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアと中間層とからなる球体を複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアと中間層とからなる球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコアと中間層とからなる球体上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0127】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアと中間層とからなる球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0128】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアと中間層とからなる球体を投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0129】
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0130】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0131】
ゴルフボールの構造
本発明のゴルフボールのコアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは35.0mm以上、さらに好ましくは35.2mm以上であり、41.2mm以下が好ましく、より好ましくは41.0mm以下、さらに好ましくは40.8mm以下である。前記コアの直径が34.8mm以上であれば、中間層またはカバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性がより良好となる。一方、コアの直径が41.2mm以下であれば、中間層またはカバー層が薄くなり過ぎず、中間層またはカバー層の機能がより発揮される。
【0132】
前記コアは、直径34.8mm〜41.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、1.90mm以上が好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下が好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が、1.90mm以上であれば打球感がより良好となり、4.00mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0133】
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で45以上が好ましく、より好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは62以下、さらに好ましくは60以下である。前記コアの表面硬度を、ショアD硬度で45以上とすることにより、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記コアの表面硬度をショアD硬度で65以下とすることにより、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0134】
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上であり、さらに好ましくは35以上である。コアの中心硬度がショアD硬度で30未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で50以下であることが好ましく、より好ましくは48以下であり、さらに好ましくは46以下である。前記中心硬度がショアD硬度で50を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
【0135】
また、コア表面硬度をコア中心硬度より大きくすることも好ましい。コア表面硬度をコア中心硬度より大きくすることによって、ドライバーショットに対して高打出角、低スピンのゴルフボールが得られる。高打出角および低スピンのゴルフボールは、飛距離が大きい。コア表面硬度とコア中心硬度との硬度差(表面硬度−中心硬度)は、ショアD硬度で、4以上とすることが好ましく、より好ましくは7以上である。また、前記硬度差(表面硬度−中心硬度)は、40以下とすることが好ましく、より好ましくは35以下である。硬度差が大きくなりすぎると、耐久性が低下するおそれがあるからである。
【0136】
本発明のゴルフボールの中間層の厚みは、1.5mm以下が好ましく、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下である。中間層の厚みが1.5mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記中間層の厚みは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上である。中間層の厚みが0.5mm以上であれば、中間層の成形がより容易となり、また得られるゴルフボールの耐久性がより向上する。
【0137】
本発明のゴルフボールが、少なくとも二以上の中間層を有する場合、中間層のうちの少なくとも一つが、上述したゴルフボール用樹脂組成物から形成されていればよい。この場合には、最外側の中間層が、上述したゴルフボール用樹脂組成物から形成された中間層とすることが好ましい。また、中間層のすべてが、上述したゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることも好ましい態様である。
【0138】
前記カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。カバーの厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。カバーの厚みが0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
【0139】
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【実施例】
【0140】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0141】
(1)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃×荷重2.16kg、210℃×荷重2.16kg、230℃×荷重2.16kg、240℃×荷重2.16kg、または260℃×荷重325gの条件で行った。
【0142】
(2)曲げ弾性率(3点曲げ、MPa)
ゴルフボール用樹脂組成物を射出成形により、長さ80.0±2mm、幅10.0±0.2mm、厚み4.0±0.2mmの試験片を作製し、直ちに防湿容器中で23℃±2℃で24時間以上保持した。この試験片を防湿容器から取り出した後、速やか(15分以内)に、曲げ弾性率をISO178に準じて測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHで行った。
【0143】
(3)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物およびゴルフボール用樹脂組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、スプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
【0144】
(4)コア硬度(ショアD硬度)
ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、コアの表面部において測定したショアD硬度をコア表面硬度Hsとした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したショアD硬度をコア中心硬度Hoとした。
【0145】
(5)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールまたはコアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールまたはコアが縮む量)を測定した。
【0146】
(6)反発弾性率(%)
ゴルフボール用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形にて厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片についてリュプケ式反発弾性試験(試験温湿度23℃、50RH%)を行った。なお、試験片の作製および試験方法は、JIS K6255に準じて行った。
【0147】
(7)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を45m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の前記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および質量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの反発係数とした。
【0148】
(8)ドライバー飛距離(m)、ボール初速(m/s)、および、スピン量(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト10.5°)を取り付け、ヘッドスピード50m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのボール初速、スピン速度、ならびに飛距離(発射始点から静止地点までの距離)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。
【0149】
[有機化層状珪酸塩の調製]
Na型モンモリロナイト(クニミネ工業:クニピアF,陽イオン交換容量120m当量/100g)100gを温水10リットルに撹拌分散し、ここにベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド51g(陽イオン交換容量と等量)を溶解させた温水2Lを添加して1時間撹拌した。生じた沈殿を濾別した後、温水で洗浄した。この洗浄と濾別の操作を3回行い、得られた固体を80℃で真空乾燥して、乾燥した有機化層状珪酸塩を得た。メタノールで5時間ソックスレー抽出をして、有機化層状珪酸塩中に含まれるベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドを定量したところ、有機化層状珪酸塩の0.1質量%以下であることが分かった。
【0150】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、170℃で30分間加熱プレスすることによりコアを得た。
【0151】
【表1】
【0152】
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR−730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D(ジクミルパーオキサイド)」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製ジフェニルジスルフィド
【0153】
(2)中間層の作製
次に、表2〜表4に示した配合材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のゴルフボール用樹脂組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。得られたゴルフボール用樹脂組成物を上述のようにして得られたコア上に射出成形して、中間層(厚み:1.0mm)を成形した。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
表2〜4で使用した原料の詳細は、以下の通りである。
ポリアミド樹脂1:東レ株式会社製アミランCM1017K(ポリアミド6、結晶化度7%、曲げ弾性率3.1GPa(23℃絶乾)、相対粘度2.65、メルトフローレイト(260℃×325g荷重)8.27g/min)
ポリアミド樹脂2:ノバミッドST120:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポリアミド6と水酸基、カルボキシル基、無水酸基、スルホン酸基およびエポキシ基(グリシジル基を含む)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂との混合樹脂(曲げ弾性率:2000MPa、メルトフローレイト(240℃×2.16kg荷重)30g/10min)
ポリアミド樹脂3:ノバミッドST220:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポリアミド樹脂(ポリアミド6、高衝撃グレード、曲げ弾性率:2000MPa)
ハイミランAM7327:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル三元共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):0.7g/10min、曲げ弾性率:35MPa、ショアD硬度42)
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):5g/10min、曲げ弾性率:240MPa、ショアD硬度62)
ハイミランAM7337:三井デュポンポリケミカル社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):5g/10min、曲げ弾性率:254MPa、ショアD硬度64)
サーリン9150:デュポン社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率17質量%以上、曲げ弾性率270MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):4.5、ショアD硬度64)
サーリン8150:デュポン社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(酸成分含有率17質量%以上、曲げ弾性率390MPa、メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):4.5、ショアD硬度68)
【0158】
(3)ハーフシェルの成形
表5に示したポリウレタンエラストマー100質量部に対して酸化チタン4質量部をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
【0159】
【表5】
エラストランXNY85A:BASF社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0160】
(4)カバーの成形
(2)で得られた中間層を(3)で得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバー(厚み0.5mm)を成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
【0161】
ゴルフボールの表面には、表6および
図1、
図2に示したディンプルパターンを形成した。なお、このゴルフボールの北半球Nおよび南半球Sは、120°回転対称のユニットUを備えている。北半球Nおよび南半球Sのそれぞれにおいて、ユニットUの数は3である。
図2においては、1つのユニットについてのみ、符号A〜Hによってディンプルの種類を示した。
【0162】
【表6】
【0163】
得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.3gのゴルフボールを得た。得られたゴルフボールついて評価した結果を併せて表2〜表4に示した。
【0164】
ゴルフボールNo.1〜No.18は、中間層が、(A)ポリアミド樹脂と、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種とを含有し、(A)成分と(B)成分との合計量100質量%中の(A)成分の含有率が、15質量%〜80質量%であり、スラブ硬度が、ショアD硬度で65以上、80以下であり、曲げ弾性率X(MPa)を、前記(A)成分の含有率(A:15質量%〜80質量%)で除した値(X/A)が、12.5以上であるゴルフボール用樹脂組成物から形成されている場合である。いずれもドライバーで打撃したときの飛距離が大きいことが分かる。