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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-85642(P2015-85642A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/16 20060101AFI20150410BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20150410BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20150410BHJP
   B29L 28/00 20060101ALN20150410BHJP
【FI】
   B29C67/14 C
   B29C67/14 J
   B29K105:08
   B29L28:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-227694(P2013-227694)
(22)【出願日】2013年10月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】田原 良祐
(72)【発明者】
【氏名】中尾 敬史
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA24
4F205AD16
4F205AG08
4F205AG15
4F205AJ02
4F205AJ08
4F205AJ09
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB01
4F205HC02
4F205HC13
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK31
4F205HK32
4F205HL03
4F205HL14
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】ライナーの外周面に繊維を巻き付けて筒網体を形成する際に、ライナーの周囲における繊維のずれを防止することにより、所望の位置に繊維を配置することができ、繊維のピッチ幅を均一にすることのできるフィラメントワインディング装置を提供する。
【解決手段】巻付部2により円筒状のライナー10に巻き付けられた複数本の繊維Fで筒網体Nを形成するフィラメントワインディング装置100であって、巻付部2は、ライナー10の軸に対して第一方向に傾斜する繊維である第一方向繊維F1をライナー10の外周面に巻き付ける第一巻付部と、ライナー10の軸に対して第一方向と逆の方向である第二方向に傾斜する繊維である第二方向繊維F2をライナー10の外周面に巻き付ける第二巻付部と、を備え、ライナー10の外周面には、第一方向に傾斜する第一溝D1と、第二方向に傾斜する第二溝D2と、が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のライナーの外周面に複数本の繊維を巻き付ける巻付部を備え、該巻付部によりライナーに巻き付けられた繊維で筒網体を形成するフィラメントワインディング装置であって、
前記巻付部は、前記ライナーの軸に対して第一方向に傾斜する繊維である第一方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第一巻付部と、前記ライナーの軸に対して前記第一方向と逆の方向である第二方向に傾斜する繊維である第二方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第二巻付部と、を備え、
前記ライナーの外周面には、前記第一方向に傾斜する第一溝と、前記第二方向に傾斜する第二溝と、が形成される、ことを特徴とする、フィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記巻付部は、前記ライナーの軸に対して平行な繊維である第三方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第三巻付部を備え、
前記ライナーの外周面には、前記ライナーの軸に対して平行な第三溝が形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記巻付部は、前記ライナーの軸に対して垂直な繊維である第三方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第三巻付部を備え、
前記ライナーの外周面には、前記ライナーの軸に対して垂直な第三溝が形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
前記ライナーの外周面に形成される溝の深さは、繊維の直径よりも大きく、且つ、繊維の交差点における高さの合計よりも小さい、ことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項5】
前記ライナーが周方向に分割可能に構成される、ことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維を芯材に巻き付けていくフィラメントワインディング装置が公知となっている(例えば特許文献1参照)。また、このようなフィラメントワインディング装置において、円筒状のライナーの外周面に複数本の繊維を巻き付けることにより筒網体を形成したい要望がある。
【0003】
ライナーの外周面に繊維を巻き付けて筒網体を形成する場合、ライナーの周囲において繊維がずれることにより、所望の位置に繊維を配置することができず、繊維のピッチ幅が不均一となり、美しい網目が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−23481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ライナーの外周面に繊維を巻き付けて筒網体を形成する際に、ライナーの周囲における繊維のずれを防止することにより、所望の位置に繊維を配置することができ、繊維のピッチ幅を均一にすることのできるフィラメントワインディング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、第1の発明は、
円筒状のライナーの外周面に複数本の繊維を巻き付ける巻付部を備え、該巻付部によりライナーに巻き付けられた繊維で筒網体を形成するフィラメントワインディング装置であって、
前記巻付部は、前記ライナーの軸に対して第一方向に傾斜する繊維である第一方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第一巻付部と、前記ライナーの軸に対して前記第一方向と逆の方向である第二方向に傾斜する繊維である第二方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第二巻付部と、を備え、
前記ライナーの外周面には、前記第一方向に傾斜する第一溝と、前記第二方向に傾斜する第二溝と、が形成される、とした。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記巻付部は、前記ライナーの軸に対して平行な繊維である第三方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第三巻付部を備え、
前記ライナーの外周面には、前記ライナーの軸に対して平行な第三溝が形成される、とした。
【0009】
第3の発明は、第1の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記巻付部は、前記ライナーの軸に対して垂直な繊維である第三方向繊維を前記ライナーの外周面に巻き付ける第三巻付部を備え、
前記ライナーの外周面には、前記ライナーの軸に対して垂直な第三溝が形成される、とした。
【0010】
第4の発明は、第1から第3のいずれかに係るフィラメントワインディング装置において、
前記ライナーの外周面に形成される溝の深さは、前記繊維の直径よりも大きく、且つ、繊維の交差点における高さの合計よりも小さい、とした。
【0011】
第5の発明は、第1から第4のいずれかに係るフィラメントワインディング装置において、
前記ライナーが周方向に分割可能に構成される、とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
第1の発明によれば、フィラメントワインディング装置でライナーの周囲における繊維のずれを防止することにより、所望の位置に繊維を配置することができ、繊維のピッチ幅を均一にすることができる。
【0014】
第2の発明によれば、フィラメントワインディング装置でライナーの軸に対して平行な繊維のずれを防止することにより、所望の位置に繊維を配置することができる。
【0015】
第3の発明によれば、フィラメントワインディング装置でライナーの軸に対して垂直な繊維のずれを防止することにより、所望の位置に繊維を配置することができる。
【0016】
第4の発明によれば、筒網体の強度を向上させることができる。
【0017】
第5の発明によれば、ライナーの周囲に巻き付けられた筒網体をライナーから取り外し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態のフィラメントワインディング装置の構成を示す図。
図2】第一フープ巻き装置の構成を示す図。
図3】第一実施形態のフィラメントワインディング装置で用いるライナーについて示す図。
図4】(a1)から(b2)はそれぞれ、繊維と溝との関係について示す図。
図5】(a)から(d)はそれぞれ、第一実施形態のフィラメントワインディング装置で用いるライナーから筒網体を取り外す手順について示す図。
図6】第二実施形態のフィラメントワインディング装置で用いるライナーについて示す図。
図7】(a)から(c)はそれぞれ、第二実施形態のフィラメントワインディング装置で用いるライナーから筒網体を取り外す手順について示す図。
図8】第三実施形態のフィラメントワインディング装置の構成を示す図。
図9】第三実施形態のフィラメントワインディング装置で用いるライナーについて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の第一実施形態に係るフィラメントワインディング装置100の構成について、図1から図5を用いて説明する。
【0020】
図1はフィラメントワインディング装置100の構成を示す図である。図中に示す矢印Xは、円筒状に形成された樹脂製のライナー10の送り出し方向(走行方向)を示している。即ち、図1において、ライナー10は右側から左側に向かって送られている。なお、ここでは、ライナー10が送り出される方向Fを「順方向」とし、その反対方向Rを「逆方向」と定義する。
【0021】
図1に示す如く、フィラメントワインディング装置100は、台床50によって支持されている。具体的に説明すると、フィラメントワインディング装置100は、床面に設置される台床50を具備しており、台床50の上に各部が配置されている。
【0022】
フィラメントワインディング装置100は、ライナー10の外周面に複数本の繊維F(第一方向繊維F1〜第三方向繊維F3)を巻き付ける巻付部2を備え、巻付部2によりライナー10に巻き付けられた繊維Fで筒網体N(図5を参照)を形成するものである。本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100においては、繊維FとしてPET(Polyethylene terephthalate)等の合成繊維が用いられるが、炭素繊維等を繊維Fとして用いることも可能である。
【0023】
フィラメントワインディング装置100は、ライナー10を順に送り出す構成を備える。具体的には、フィラメントワインディング装置100の上流側と下流側のそれぞれに支持柱1・1を備え、支持柱1・1の間に挿通軸1aが架け渡されている。ライナー10の内部に挿通軸1aが挿通されて、ライナー10が次々に送り出されるのである。また、フィラメントワインディング装置100は、ライナー10に接した状態で回転するローラ1rを備えている。フィラメントワインディング装置100は、ローラ1rの回転方向を切り替えることができるので、ライナー10を順方向から逆方向に戻すことも可能である。
【0024】
巻付部2は、ライナー10に繊維Fを巻き付ける部分である。本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100において、巻付部2は二台のフープ巻き装置(第一巻付部である第一フープ巻き装置20、第二巻付部である第二フープ巻き装置30)、及び、第三巻付部であるヘリカル巻き装置40を有している。
【0025】
第一フープ巻き装置20は、ライナー10の軸に対して第一方向(ライナー10の走行方向と逆の方向に向かって反時計回りに巻かれる方向)に傾斜する繊維である第一方向繊維F1をライナー10の外周面に巻き付けるように構成される。
第二フープ巻き装置30は、ライナー10の軸に対して第一方向と逆の方向である第二方向(ライナー10の走行方向と逆の方向に向かって時計回りに巻かれる方向)に傾斜する繊維である第二方向繊維F2をライナー10の外周面に巻き付けるように構成される。
ヘリカル巻き装置40は、ライナー10の軸に対して平行な繊維である第三方向繊維F3をライナー10の外周面に巻き付けるように構成される。
【0026】
第一フープ巻き装置20は、ライナー10の外周面に第一方向繊維F1を巻き付ける装置である。詳細には、第一フープ巻き装置20は、繊維Fの巻き付け角度がライナー10の送り出し方向に対して大きく(約90度に近く)なる、いわゆるフープ巻きを行なう装置である。第一フープ巻き装置20は、主に基台21と、動力機構22と、フープ巻き掛け装置と、で構成されている。
【0027】
台床50に立設された基台21には、サーボモータを備えた動力機構22によって回転されるフープ巻き掛け装置が設けられている。図2に示す如く、フープ巻き掛け装置は、円環板状の巻き掛けテーブル23と四個のボビン24とで構成され、巻き掛けテーブル23の内部にライナー10が挿通されることにより、ライナー10の外周面にフープ巻きを行なう。本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100においては、第一フープ巻き装置20が備えるボビン24を四個として構成したが、ボビン24の個数は他の個数であっても差し支えない。
【0028】
フープ巻き掛け装置は、主にフープ巻きを行なう巻き掛けテーブル23と、巻き掛けテーブル23に第一方向繊維F1を供給するボビン24と、で構成されている。そして、ボビン24に対応して巻き掛けテーブル23に設けられた繊維ガイド25によってライナー10の外周面に第一方向繊維F1が導かれる。第一フープ巻き装置20はフープ巻き掛け装置を回転させながら、その内部をライナー10が移動することで、ライナー10に対して第一方向繊維F1のフープ巻きを行なう。本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100においては、図2中の矢印rに示す如く、ライナー10の走行方向と逆方向Rを向いた場合に、フープ巻き掛け装置を反時計回りに回転させている。これにより、ライナー10の軸に対して第一方向(ライナー10の走行方向と逆の方向に向かって反時計回りに巻かれる方向)に傾斜する繊維である第一方向繊維F1をライナー10の外周面に巻き付けるように構成している。
【0029】
このような構成により、第一フープ巻き装置20は、ライナー10の軸に対して第一方向に傾斜する繊維である第一方向繊維F1の巻き付け角度がフィラメントワインディング装置100の前後方向に対して大きくなるように、フープ巻きを行うのである。
【0030】
第二フープ巻き装置30は、ライナー10の外周面に、第一方向とは逆の方向である第二方向繊維F2を巻き付ける装置である。第二フープ巻き装置30は、第二方向繊維F2の巻き方向以外は第一フープ巻き装置20と同じ構成を備える。即ち、第二フープ巻き装置30は、主に基台31と、動力機構32と、フープ巻き掛け装置と、で構成される。フープ巻き掛け装置は、円環板状の巻き掛けテーブル33と四個のボビン34とで構成され、巻き掛けテーブル33の内部にライナー10が挿通されることにより、ライナー10の外周面にフープ巻きを行なう。
【0031】
フープ巻き掛け装置は、主にフープ巻きを行なう巻き掛けテーブル33と、巻き掛けテーブル33に第二方向繊維F2を供給するボビン34と、で構成されている。そして、ボビン34に対応して巻き掛けテーブル33に設けられた繊維ガイド35によってライナー10の外周面に第二方向繊維F2が導かれる。第二フープ巻き装置30はフープ巻き掛け装置を回転させながら、その内部をライナー10が移動することで、ライナー10に対して第二方向繊維F2のフープ巻きを行なう。本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100においては、ライナー10の走行方向と逆方向Rを向いた場合に、フープ巻き掛け装置を時計回りに回転させている。これにより、ライナー10の軸に対して第二方向(ライナー10の走行方向と逆の方向に向かって時計回りに巻かれる方向)に傾斜する繊維である第二方向繊維F2をライナー10の外周面に巻き付けるように構成している。
【0032】
このような構成により、第二フープ巻き装置30は、ライナー10の軸に対して、第一方向とは逆の第二方向に傾斜する繊維である第二方向繊維F2の巻き付け角度がフィラメントワインディング装置100の前後方向に対して大きくなるように、フープ巻きを行うのである。
【0033】
ヘリカル巻き装置40は、ライナー10の外周面に繊維Fを巻き付ける装置である。詳細には、ヘリカル巻き装置40は、繊維Fの巻き付け角度がフィラメントワインディング装置100の前後方向に対して平行となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう装置である。ヘリカル巻き装置40は、主に基台41と、ヘリカル巻き掛け装置42と、で構成されている。
【0034】
基台41には、ヘリカル巻き掛け装置42が設けられている。ヘリカル巻き掛け装置42はライナー10の外周面にヘリカル巻きを行なう。具体的には、ヘリカル巻き掛け装置42は、ヘリカル巻きを行なうヘリカルヘッドを備え、ライナー10の軸に対して平行な繊維である第三方向繊維F3が複数のボビン43からヘリカルヘッドに導かれる。ヘリカル巻き装置40の内部にライナー10が挿通されることにより、ライナー10の外周面にヘリカル巻きを行なう。なお、ヘリカル巻き装置40は、ライナー10の外周面に対して近接又は離間する方向に図示しない繊維ガイドを伸縮できるため、ライナー10の形状に応じて適切に第三方向繊維F3を案内できる。
【0035】
このような構成により、ヘリカル巻き装置40は、ライナー10の軸に対して平行な繊維である第三方向繊維F3をライナー10の外周面に巻き付けるヘリカル巻きを行なうことを可能としている。なお、本実施形態においては、第一方向繊維F1〜第三方向繊維F3については同じ素材及び径の繊維Fを使用している。
【0036】
上記の如く、フィラメントワインディング装置100における巻付部2によりライナー10に巻き付けられた繊維Fで形成された筒網体Nは、ヒートローラーH(図4(a2)及び(b2)を参照)で加熱されるとともに押圧される。これにより、繊維Fが互いに溶着して接着し、筒網体Nが一体的に形成されるのである。
【0037】
図3に示す如く、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100において、ライナー10の外周面には、第一方向に傾斜する第一溝D1と、第二方向に傾斜する第二溝D2と、が形成されている。詳しくは、ライナー10の外周面に、ライナー10の走行方向と逆の方向に向かって反時計回りに巻かれる方向(第一方向)に傾斜して第一溝D1が形成されている。また、ライナー10の外周面に、ライナー10の走行方向と逆の方向に向かって時計回りに巻かれる方向(第二方向)に傾斜して第二溝D2が形成されている。
【0038】
上記の如く構成することにより、フィラメントワインディング装置100でライナー10の周囲における繊維Fのずれを防止することが可能となる。即ち、第一方向繊維F1を第一溝D1に沿って、第二方向繊維F2を第二溝D2に沿ってライナー10に巻き付けることができる。つまり、ライナー10の外周面における所望の位置に繊維Fを配置することができ、繊維Fのピッチ幅を均一にすることができるのである。
【0039】
また、図3に示す如く、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100において、ライナー10の外周面には、ライナー10の軸に対して平行な第三溝D3が形成されている。本実施形態において、第三溝D3は、図3に示す如く第一溝D1と第二溝D2との交点を通るように形成されている。つまり、第一溝D1、第二溝D2、及び、第三溝D3でライナー10の外周面に多数の同じ形状の三角形が表されるように形成されるのである。このため、筒網体Nにおいても、第一方向繊維F1、第二方向繊維F2、第三方向繊維F3で多数の同じ形状の三角形が形成されるように構成している。
【0040】
上記の如く構成することにより、フィラメントワインディング装置100でライナー10の軸に対して平行な第三方向繊維F3のずれを防止することが可能となる。即ち、第三方向繊維F3を第三溝D3に沿ってライナー10に巻き付けることができる。つまり、ライナー10の外周面における所望の位置に第三方向繊維F3を配置することができるのである。
【0041】
本実施形態においては、第一方向繊維F1、第二方向繊維F2、第三方向繊維F3が一点で交わるように構成されているため、繊維F(第一方向繊維F1〜第三方向繊維F3)の交差点における高さの合計は図4(b1)に示す如く繊維Fの直径hの3倍(h×3)となる。そして、図4(a1)から(b2)に示す如く、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100において、ライナー10の外周面に形成される溝D(第一溝D1〜第三溝D3)の深さdは、繊維F(第一方向繊維F1〜第三方向繊維F3)の直径hよりも大きく、且つ、繊維F(第一方向繊維F1〜第三方向繊維F3)の交差点における高さの合計(h×3)よりも小さくなるように形成されている。
【0042】
そして、図4(a1)に示す如く、溝Dの深さdは繊維Fの直径hよりも大きいため、溝Dから繊維Fが突出することはない。このため、図4(a2)に示す如く、筒網体NをヒートローラーHで加熱するとともに押圧しても、繊維Fは溝Dの内部に位置するため、ヒートローラーHによる熱及び押圧の影響を受けることがない。
【0043】
一方、図4(b1)に示す如く、溝Dの深さdは繊維Fの交差点における高さの合計(h×3)よりも小さいため、溝Dから繊維Fが突出する。このため、図4(b2)に示す如く、筒網体NをヒートローラーHで加熱するとともに押圧した場合、繊維Fは溝Dの内部に圧縮されて互いに溶着する。即ち、第一方向繊維F1〜第三方向繊維F3が互いの交点で接着し、筒網体Nが一体的に形成されるのである。換言すれば、上記の如く構成することにより、筒網体Nの強度を向上させることができるのである。
【0044】
また、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置100において、ライナー10は周方向に分割可能に構成される。具体的には図3に示す如く、ライナー10を略90度ごとに周方向に分割したライナー素材10a〜10d及び楔部材10wで構成する。より詳細には、ライナー素材10a〜10dを組み合わせた後に、ライナー素材10a・10bの間に楔部材10wを挿入することにより、円筒状のライナー10を形成するのである。
【0045】
上記の如く構成することにより、フィラメントワインディング装置100において、ライナー10の周囲に巻き付けられた筒網体Nをライナー10から取り外し易くすることができる。具体的には図5(a)〜(d)に示す如く、筒網体Nをライナー10から取り外す際には、まず、楔部材10wを内側に抜き取る。その後、ライナー素材10a及び10bをそれぞれライナー素材10c及び10dから取り外し、最後にライナー素材10c及び10dを筒網体Nから取り外すのである。このように、本実施形態によれば、筒網体Nの形状を維持したままで、筒網体Nをライナー10から取り外すことが可能となるのである。
【0046】
次に、本発明の第二実施形態に係るフィラメントワインディング装置で用いるライナー110について、図6及び図7を用いて説明する。以下の実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成には同符号を付してその説明を省略し、上記第一実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0047】
本実施形態におけるライナー110は、ライナー110を略90度ごとに周方向に分割したライナー素材110a〜110d及び楔部材110wの周囲を筒状の弾性素材111で被覆することにより形成される。具体的には、ライナー素材110a〜110dを組み合わせた後に、ライナー素材110a・110bの間に楔部材110wを挿入し、さらに弾性素材111を被せることにより、円筒状のライナー110を形成するのである。
【0048】
そして、図6に示す如く、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置において、ライナー110の外周面、即ち弾性素材111の外周面には、第一実施形態と同様に、第一方向に傾斜する第一溝D1と、第二方向に傾斜する第二溝D2と、ライナー10の軸に対して平行な第三溝D3と、が形成されている。
【0049】
図7(a)〜(c)に示す如く、本実施形態においてライナー110の周囲に巻き付けられた筒網体Nをライナー110から取り外す際には、前記第一実施形態と同様にライナー素材110a・110b及び楔部材110wを取り外す。そして、図7(c)に示す如く弾性素材111を変形させることにより、筒網体Nを弾性素材111から取り外すのである。
【0050】
上記の如く構成することにより、フィラメントワインディング装置でライナー110の周囲における繊維Fのずれを防止しつつ、ライナー110の形状変更を安価かつ容易に行うことができる。つまり、第一溝D1〜第三溝D3の形状を変更することにより筒網体Nの形状を変更する場合に、弾性素材111のみを交換すれば良いため、安価かつ容易にライナー110の形状を変更することができるのである。
【0051】
次に、本発明の第三実施形態に係るフィラメントワインディング装置200の構成について、図8及び図9を用いて説明する。
【0052】
フィラメントワインディング装置200は、ライナー210の外周面に複数本の繊維F(F1〜F3)を巻き付ける巻付部202を備え、巻付部202によりライナー210に巻き付けられた繊維Fで筒網体を形成するものである。
【0053】
巻付部202は、ライナー210に繊維Fを巻き付ける部分である。本実施形態に係るフィラメントワインディング装置200において、巻付部2は三台のフープ巻き装置(第一巻付部である第一フープ巻き装置20、第二巻付部である第二フープ巻き装置30、第三巻付部である第三フープ巻き装置240)を有している。第一フープ巻き装置20及び第二フープ巻き装置30は、第一実施形態に係るフィラメントワインディング装置100と同様の構成である。
【0054】
第三フープ巻き装置240は、ライナー210の軸に対して垂直な繊維である第三方向繊維F3をライナー210の外周面に巻き付けるように構成される。
具体的には、第三フープ巻き装置240は、ライナー210の外周面に第三方向繊維F3を巻き付ける装置である。詳細には、第三フープ巻き装置240は、繊維Fの巻き付け角度がライナー210の軸に対して垂直になる、いわゆるフープ巻きを行なう装置である。第三フープ巻き装置240は、主に基台241と、動力機構242と、フープ巻き掛け装置と、で構成されている。
【0055】
台床50に立設された基台241には、サーボモータを備えた動力機構242によって回転されるフープ巻き掛け装置が設けられている。図8に示す如く、フープ巻き掛け装置は、円環板状の巻き掛けテーブル243と一個のボビン244とで構成され、巻き掛けテーブル243の内部にライナー210が挿通されることにより、ライナー210の外周面にフープ巻きを行なう。
【0056】
フープ巻き掛け装置は、主にフープ巻きを行なう巻き掛けテーブル243と、巻き掛けテーブル243に第三方向繊維F3を供給するボビン244と、で構成されている。そして、ボビン244に対応して巻き掛けテーブル243に設けられた繊維ガイド245によってライナー210の外周面に第三方向繊維F3が導かれる。第三フープ巻き装置240はフープ巻き掛け装置を回転させながら、その内部をライナー210が移動することで、ライナー210に対して第三方向繊維F3のフープ巻きを行なう。
【0057】
このような構成により、第三フープ巻き装置240は、ライナー210の軸に対して垂直となるように、第三方向繊維F3のフープ巻きを行うのである。
【0058】
図9に示す如く、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置200において、ライナー210の外周面には、第一方向に傾斜する第一溝D1と、第二方向に傾斜する第二溝D2と、ライナー210の軸に対して垂直な第三溝D3と、が形成されている。詳しくは、ライナー210の外周面に、ライナー210の走行方向と逆の方向に向かって反時計回りに巻かれる方向(第一方向)に傾斜して第一溝D1が形成されている。また、ライナー210の外周面に、ライナー210の走行方向と逆の方向に向かって時計回りに巻かれる方向(第二方向)に傾斜して第二溝D2が形成されている。
【0059】
本実施形態において、第三溝D3は、図9に示す如く第一溝D1と第二溝D2との交点を通るように形成されている。つまり、第一溝D1、第二溝D2、及び、第三溝D3でライナー210の外周面に多数の同じ形状の三角形が表されるように形成されるのである。このため、筒網体においても、第一方向繊維F1、第二方向繊維F2、第三方向繊維F3で多数の同じ形状の三角形が形成されるように構成している。
【0060】
上記の如く構成することにより、フィラメントワインディング装置200でライナー210の周囲における繊維Fのずれを防止することが可能となる。即ち、第一方向繊維F1を第一溝D1に沿って、第二方向繊維F2を第二溝D2に沿ってライナー210に巻き付けることができる。また、ライナー210の軸に対して垂直な第三方向繊維F3を第三溝D3に沿ってライナー210に巻き付けることができる。つまり、ライナー210の外周面における所望の位置に繊維Fを配置することができ、繊維Fのピッチ幅を均一にすることができるのである。
【符号の説明】
【0061】
2 巻付部
10 ライナー
20 第一フープ巻き装置(第一巻付部)
30 第二フープ巻き装置(第二巻付部)
100 フィラメントワインディング装置
F1 第一方向繊維
F2 第二方向繊維
D1 第一溝
D2 第二溝
N 筒網体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9