【解決手段】気動車1には、ディーゼルエンジン10から駆動力が伝達される各回転駆動部材の異常を検知する異常検知装置90が設けられている。異常検知装置90は、サンプリング部91と異常判断部92を有する。サンプリング部91は、車輪径Dと円周率πと減速機34,35の減速比π
とを用いて、加速度センサ80の測定値に対して第1推進軸40の監視周波数領域と第2推進軸60の監視周波数領域を設定している。そして、一定の走行距離毎に加速度センサ80の測定値から各監視周波数領域に対応する周波数成分をバンドパスフィルタで抽出する。異常判断部92は、抽出された各周波数成分を正規化した各値と予め設定しているしきい値とを比較して、第1推進軸40及び第2推進軸60に異常が生じているか否かを判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、気動車において、第1推進軸140のようにエンジンから駆動力が伝達される回転駆動部材は、比較的大きく且つ重量が大きいものが多いため、異常振動や落下が生じた後、危険な状態が続いて危険度が非常に大きくなるおそれがある。例えば、第1推進軸140の一端部140aでボルト締結が緩んだり、溶接が部分的に切れると、第1推進軸140がアンバランスになって異常振動が生じる。その後、万一第1推進軸140の一端部140aが落下すると、第1推進軸140の他端部140bは台車側に連結されているため、仮にエンジンから駆動力の伝達を遮断したとしても、台車の大きな慣性により推進軸140がしばらくの間回転し続けることになる。
【0008】
これにより、落下した第1推進軸140は、車両の走行中に大きな回転力を持って第1落下防止枠150の下辺部150aに衝突し、第1落下防止枠150の左辺部150b又は右辺部150cにも衝突して、跳ね回るおそれがある。その結果、第1落下防止枠150が跳ね回る第1推進軸140によって大きく変形し又は破損する可能性を完全には否定できるものではなかった。こうして、第1推進軸140のように気動車の回転駆動部材で異常振動や落下が生じた場合には、一刻も早く車両の走行を停止する必要がある。しかし、従来では、運転士が回転駆動部材の異常振動や落下に気付き難く、異常事態を認識しないまま車両の走行を続けるおそれがあった。
【0009】
ここで、本出願人は、上記特許文献2と上記特許文献3と上記特許文献4に、鉄道車両の異常検知装置を提案している。しかし、この異常検知装置は気動車に対して適用されたものではなく、電動モータで走行する電車に対して台車の蛇行動や、電動モータのピニオン軸の異常振動を検知するものであった。従って、気動車の回転駆動部材に対する異常検知装置は未だ実用化されておらず、安全面で特に注目されている気動車において、回転駆動部材の異常を速やかに検知できることが求められていた。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、エンジンからの駆動力が伝達される複数の回転駆動部材の異常を速やかに検知することができる気動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る気動車は、車体に支持されるエンジンからの駆動力が変速機を介して第1推進軸に伝達され、前記第1推進軸に伝達された駆動力が、第1減速機を介して台車の第1輪軸に伝達されると共に、第2推進軸及び第2減速機を介して台車の第2輪軸に伝達されるものであって、車両の振動を測定する加速度センサの測定値に基づいて前記エンジンからの駆動力が伝達される複数の回転駆動部材の異常を検知する異常検知装置が設けられていて、前記異常検知装置は、異常検知対象である回転駆動部材毎に、前記加速度センサの測定値に対して監視する空間周波数の幅を監視周波数領域として設定していて、一定の走行距離毎に前記加速度センサの測定値から前記各監視周波数領域に対応する周波数成分をバンドパスフィルタで抽出するサンプリング部と、前記抽出された各周波数成分をそれぞれ四則演算により正規化し、前記正規化された各値と予め記憶しているしきい値とを比較して、前記回転駆動部材毎に異常が生じているか否かを判断する異常判断部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る気動車によれば、異常検知装置が、例えば回転駆動部材である第1推進軸、第2推進軸、補機軸、変速機の回転軸及び回転ギヤ等に対して、それぞれ監視する空間周波数の幅を監視周波数領域として予め設定していて、回転駆動部材毎に異常が生じているか否かを判断する。これにより、ボルト締結の緩み、溶接部分の切断、ギヤの破損等によって回転駆動部材が異常振動を生じさせても、その異常を速やかに検知することができる。
【0013】
また、本発明に係る気動車において、前記サンプリング部は、前記台車の車輪径と円周率とを乗算した車輪振動周期の逆数を車輪振動周波数として設定し、前記車輪振動周波数と前記第1推進軸から前記車輪までに至る変速比とを乗算して求められる第1推進軸振動周波数に基づいて、前記第1推進軸の監視周波数領域を設定していて、前記車輪振動周波数と前記第2推進軸から前記車輪に至る変速比とを乗算して求められる第2推進軸振動周波数に基づいて、前記第2推進軸の監視周波数領域を設定していて、前記異常判断部は、前記第1推進軸及び前記第2推進軸に異常振動が生じているか否かを判断すると良い。
この場合には、車輪径と第1減速機の減速比とを用いて、第1推進軸の監視周波数領域を設定することができるため、監視周波数領域の設定を比較的簡易にしつつ、第1推進軸の異常振動を的確に検知することができる。同様に、車輪径と第2減速機の減速比とを用いて、第2推進軸の監視周波数領域を設定することができるため、監視周波数領域の設定を比較的簡易にしつつ、第2推進軸の異常振動を的確に検知することができる。
【0014】
また、本発明に係る気動車において、前記各回転駆動部材には、前記エンジンと補記駆動装置とに連結された補機軸が含まれ、前記サンプリング部は、前記台車の車輪径と円周率とを乗算した車輪振動周期の逆数を車輪振動周波数として設定し、前記車輪振動周波数と前記補機軸から前記車輪までに至る変速比とを乗算して求められる補機軸振動周波数に基づいて、前記補機軸の監視周波数領域を設定していて、前記異常判断部は、前記補機軸に異常振動が生じているか否かを判断すると良い。
この場合には、車輪径と第1減速機の減速比と変速機の変速比とを用いて、補機軸の監視周波数領域を設定している。こうして、補機軸の異常振動に対しても的確に検知することができる。
【0015】
また、本発明に係る気動車において、前記各回転駆動部材には、前記変速機の内部の変速部材が含まれ、前記サンプリング部は、前記台車の車輪径と円周率とを乗算した車輪振動周期の逆数を車輪振動周波数として設定し、前記車輪振動周波数と前記変速部材から前記車輪までに至る変速比とを乗算して求められる変速部材振動周波数に基づいて、前記変速部材の監視周波数領域を設定していて、前記異常判断部は、前記変速部材に異常振動が生じているか否かを判断すると良い。
この場合には、車輪径と、変速機の内部の変速部材から車輪までに至る変速比とを用いて、変速部材の監視周波数領域を設定して、変速部材の異常振動を検知する。こうして、変速機の内部に設けられている回転軸及び回転ギヤであっても、異常振動が生じているか否かを検知することができる。
【0016】
また、本発明に係る気動車において、前記車体に取付けられていて前記第1推進軸が地面に接することを防止する第1落下防止枠と、前記第2推進軸が地面に接することを防止する第2落下防止枠とが設けられていて、前記サンプリング部は、前記第1推進軸の径と円周率とを乗算した値の逆数で求められる第1落下振動周波数に基づいて、前記第1推進軸の落下用監視周波数領域を設定していて、前記第2推進軸の径と円周率とを乗算した値の逆数で求められる第2落下振動周波数に基づいて、前記第2推進軸の落下用監視周波数領域を設定していて、前記異常判断部は、前記第1推進軸が落下したか否かを判断すると共に、前記第2推進軸が落下したか否かを判断しても良い。
この場合には、第1推進軸が落下して第1落下防止枠の下辺部に衝突した後に、第1落下防止枠の下辺部の上で回転し続けると、第1推進軸の径に基づく振動の周波数成分が測定値に表れる。同様に、第2推進軸が落下して第2落下防止枠の下辺部に衝突した後に、第2落下防止枠の下辺部の上で回転し続けると、第2推進軸の径に基づく振動の周波数成分が測定値に表れる。こうして、第1推進軸の径及び第2推進軸の径を利用して、落下用監視周波数領域を設定することで、第1推進軸の落下及び第2推進軸の落下を検知することができる。
【0017】
また、本発明に係る気動車において、前記車体に取付けられていて前記第1推進軸が地面に接することを防止する第1落下防止枠と、前記第2推進軸が地面に接することを防止する第2落下防止枠とが設けられていて、前記サンプリング部は、前記第1推進軸が落下して前記第1落下防止枠の内側で跳ね回る際の重心位置の回転径と円周率とを乗算した値の逆数で求められる第1跳ね回り振動周波数に基づいて、前記第1推進軸の跳ね回り用監視周波数領域を設定していて、前記第2推進軸が落下して前記第2落下防止枠の内側で跳ね回る際の重心位置の回転径と円周率とを乗算した値の逆数で求められる第2跳ね回り振動周波数に基づいて、前記第2推進軸の跳ね回り用監視周波数領域を設定していて、前記異常判断部は、前記第1推進軸が落下したか否かを判断すると共に、前記第2推進軸が落下したか否かを判断しても良い。
この場合には、第1推進軸が落下して第1落下防止枠の下辺部に衝突した後、第1落下防止枠の内側で跳ね回ると、第1推進軸が跳ね回る際の重心位置の回転径に基づく振動の周波数成分が、測定値に表れる。同様に、第2推進軸が落下して第2落下防止枠の下辺部に衝突した後、第2落下防止枠の内側で跳ね回ると、第2推進軸が跳ね回る際の重心位置の回転径に基づく振動の周波数成分が、測定値に表れる。こうして、跳ね回る際の重心位置の回転径を利用して、跳ね回り用監視周波数領域を設定することで、第1推進軸の落下及び第2推進軸の落下を検知することができる。
【0018】
また、本発明に係る気動車において、前記異常判断部は、異常検知対象である二つの回転駆動部材のうち一方の部材に関して、バンドパスフィルタで抽出された周波数成分を2乗平均した振動加速度パワーを算出し、前記二つの回転駆動部材のうち他方の部材に関して、バンドパスフィルタで抽出された周波数成分を2乗平均した振動加速度パワーを算出し、前記二つの回転駆動部材における振動加速度パワーの比の相対度数分布を作成し、前記作成された相対度数分布と予め設定している基準分布の差の絶対値の総和がしきい値以上であるときに、前記二つの回転駆動部材の一方が異常であると判断しても良い。
この場合には、二つの回転駆動部材の異常を判断する際に、例えば第1推進軸の異常振動と第2推進軸の異常振動とを別々で判断しないで、第1推進軸の振動成分と第2推進軸の振動成分との比を利用して異常の有無を判断する。これにより、レールの軌道狂いや加減速に依存する振動の影響を相殺することができ、異常の有無をより的確に検知することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の気動車によれば、エンジンからの駆動力が伝達される複数の回転駆動部材の異常を速やかに検知することができる。これにより、異常が検知されたときに、運転士はいち早く車両を停止させることができ、気動車における安全面を従来に比べて大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本発明に係る気動車の各実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、第1実施形態の気動車1を模式的に示した図である。また、
図2は、
図1に示したA部分を拡大した図である。
【0022】
気動車1は、ディーゼルエンジン10の回転出力を駆動力として走行するものであり、
図1に示すように、ディーゼルエンジン10と、変速機12と、車体20と、2台の台車30A,30Bと、第1推進軸40と、第1落下防止枠50とを備えている。ディーゼルエンジン10は、台車30Aを走行させるための駆動力を発生するものである。このディーゼルエンジン10は、
図2に示すように、車体20の台枠20aに吊り下げられていて、継手11(
図6参照)を介して変速機12に接続されていて、回転出力を変速機12で変速できるようになっている。変速機12には、自在継手41を介して第1推進軸40の一端部40aが連結されている。
【0023】
車体20は、
図1に示すように、レール方向に長く延びていて、2台の台車30A,30Bによって空気バネ25を介して支持されている。台車30Aは駆動側の台車であり、レール方向の一方側(
図1の左側)に第1輪軸31を有し、レール方向の他方側(
図1の右側)に第2輪軸32を有し、第1輪軸31及び第2輪軸32を組付ける台車枠33Aとを有している。これら第1輪軸31と第2輪軸32の枕木方向の両端には、各車輪31a,32aが組付けられている。台車30Bは従動側の台車であり、レール方向の一方側に第1輪軸38を有し、レール方向の他方側に第2輪軸39を有し、第1輪軸38及び第2輪軸39を組付ける台車枠33Bとを有している。これら第1輪軸38と第2輪軸39の枕木方向の両端には、各車輪38a,39aが組付けられている。
【0024】
第1推進軸40は、回転することでディーゼルエンジン10が発生した駆動力を伝達するものであり、レール方向に延びていて、車体20の台枠20aより下側に配置されている。第1推進軸40の一端部40a及び他端部40bは、ボルト締結や溶接によって自在継手41,42に連結されていて、揺動可能になっている。自在継手42は第1減速機34に連結されていて、第1減速機34は第1輪軸31に連結されると共に、自在継手43を介して第2推進軸60に連結されている。
【0025】
第2推進軸60は、回転することでディーゼルエンジン10が発生した駆動力を伝達するものであり、レール方向に延びていて、車体20の台枠20aより下側に配置されている。第2推進軸60の一端部60a及び他端部60bは、ボルト締結や溶接によって自在継手43,44に連結されていて、揺動可能になっている。自在継手44は第2減速機35に連結されていて、第2減速機35は第2輪軸32に連結されている。
【0026】
こうして、ディーゼルエンジン10が発生した駆動力は、変速機12を介して第1推進軸40に伝達される。そして、第1推進軸40に伝達された駆動力が、第1減速機34を介して第1輪軸31に伝達されると共に、第2推進軸60及び第2減速機35を介して第2輪軸32に伝達されるようになっている。これにより、第1輪軸31の車輪31a及び第2輪軸32の車輪32aが回転して、気動車1が走行する。ここで、
図3は、
図2のB−B線に沿った断面図である。
【0027】
第1落下防止枠50は、
図3に示すように、第1推進軸40が地面に接することを防止するものであり、車体20の台枠20aより下側に設けられていて、第1推進軸40の中間部40cに対応して配置されている。この第1落下防止枠50は、U字状に形成された鋼製の枠体であり、下辺部50aと左辺部50bと右辺部50cとで第1推進軸40の中間部40cを囲んでいて、左辺部50bと右辺部50cの上端が台枠20aに取付けられている。
図4は、
図2のC−C線に沿った断面図である。
【0028】
第2落下防止枠70は、
図4に示すように、第2推進軸60が地面に接することを防止するものであり、車体20の台枠20aより下側に設けられていて、第2推進軸60の中間部60cに対応して配置されている。この第2落下防止枠70は、U字状に形成された鋼製の枠体であり、下辺部70aと左辺部70bと右辺部70cとで第2推進軸60の中間部60cを囲んでいて、左辺部50bと右辺部50cの上端が台車30Aの牽引梁(図示省略)に取付けられている。なお、第2落下防止枠70の取付位置は適宜変更可能であり、車体20の台枠20aに取付けられていても良い。
【0029】
また、この気動車1では、
図1に示すように、補機駆動装置36が補機軸37(
図6参照)を介してディーゼルエンジン10に連結されている。補機軸37は、補機駆動装置36とディーゼルエンジン10に連結されていて、ディーゼルエンジン10の駆動力が伝達されて回転駆動する。補機駆動装置36は、補機軸37の回転駆動によりラジエータ、発電機、空気圧縮機等の補機を作動させるものである。
【0030】
また、
図2に示すように、変速機12の内部では、回転軸12a及び回転ギヤ12bが、ディーゼルエンジン10の駆動力が伝達されて回転駆動するようになっている。回転軸12a及び回転ギヤ12bは、変速機構を構成する部品であり、本発明の「変速部材」に相当する。こうして、本実施形態の第1推進軸40と第2推進軸60と補機軸37と回転軸12aと回転ギヤ12bが、本発明の「複数の回転駆動部材」に相当し、以下では適宜「回転駆動部材」と呼ぶことにする。
【0031】
ところで、例えば第1推進軸40において、両端部40a,40bの連結でボルト締結や溶接が用いられているため、仮にボルト締結が緩んだり、溶接が部分的に切れると、第1推進軸40がアンバランスになって異常振動するおそれがある。その後、最悪の事態として第1推進軸40が落下して第1落下防止枠50の下辺部50aに衝突して、第1落下防止枠50が破損するおそれがある。同様に、第2推進軸60、補機軸37、変速機12の回転軸12a及び回転ギヤ12bでも、連結が解除されたり、欠損や破損が生じることによって、異常振動又は落下する事態が生じる可能性がある。
【0032】
そこで、本実施形態の気動車1は、第1推進軸40、第2推進軸60、補機軸37、変速機12の回転軸12a及び回転ギヤ12bで異常が生じた場合に、その異常を速やかに検知できるように構成されている。具体的には、
図5に示すように、気動車1には、車両の振動を測定する加速度センサ80と、この加速度センサ80の測定値に基づいて各回転駆動部材の異常を検知する異常検知装置90と、車両に搭載されている機器を管理する管理装置100とが設けられている。
【0033】
加速度センサ80は、車体20に取付けられていて、上下方向、左右方向、前後方向の少なくとも一つの方向で車体20に生じる加速度を測定するものである。加速度センサ80の測定値は、異常検知装置90のサンプリング部91に送られる。この加速度センサ80の測定値には、各回転駆動部材の周期的な振動成分が表れる。このため、異常検知装置90は各回転駆動部材の周期的な振動成分を監視することで、各回転駆動部材の異常振動の有無を判断している。この加速度センサ80の取付位置は、測定値に各回転駆動部材の周期的な振動成分が表れる箇所であれば、車体20に限られず適宜変更可能である。
【0034】
異常検知装置90は、サンプリング部91と異常判断部92とを有している。ここで、各回転駆動部材の振動は、車輪31a,32a(以下、単に「車輪31a」と呼ぶ)の回転周期に比例するため、異常検知装置90は車輪31aの回転周期に着目している。そこで、サンプリング部91は、管理装置100から走行速度[m/s]を入力し、走行速度と走行時間を乗算して回転周期に応じた一定の走行距離(等間隔距離)を算出する。そして、サンプリング部91は、一定の走行距離毎に得られた加速度センサ80の測定値をサンプリングしている。
【0035】
ところで、各回転駆動部材で生じる振動は、車輪31aの回転周期に比例する。つまり、車輪31aの振動周期は車輪31aの円周であるため、車輪径をDとすると、円周率π×車輪径Dで表わされる。そして、車輪31aの振動周期と、各回転駆動部材のうち例えば第1推進軸40の振動周期との関係を考える場合、(第1推進軸40の回転速度)=(車輪31aの回転速度)×(第1減速機34の減速比τ
A1)であるため、(第1推進軸40の振動周期)=(車輪31aの振動周期)÷(第1減速機34の減速比τ
A1)で表わすことができる。更に、振動周期と振動周波数は逆数の関係であるため、(第1推進軸40の振動周波数)=1÷(第1推進軸40の振動周期)で表わすことができる。これらのことから、或る回転駆動部材の振動周波数は、車輪31aの振動周期と、その回転駆動部材から車輪31aまでに至る変速比とによって求めることができる。
【0036】
ここで、各回転駆動部材から車輪31aまでに至る変速比について、
図6を参照して説明する。
図6に示すように、第1減速機34が第1推進軸40の回転数を車輪31aに減速する比率を減速比τ
A1で表わし、第1減速機34が第1推進軸40の回転数を第2推進軸60に減速する比率を減速比τ
A2で表わし、第2減速機35が第2推進軸60の回転数を車輪32aに減速する比率を減速比τ
Bで表わす。また、変速機12がディーゼルエンジン10の回転数を第1推進軸40の回転数に変速する比率を変速比τ
C1〜τ
CNで表わすことにする。
【0037】
これにより、上述したように、第1推進軸40から車輪31aまでに至る変速比はτ
A1であり、第2推進軸60から車輪31bまでに至る変速比はτ
Bである。そして、補機軸37から車輪31aまでに至る変速比は、変速機12の変速比τ
C1〜τ
CNに応じて変化するが、変速機12の変速比がτ
C1である場合にはτ
C1×τ
A1であり、変速機12の変速比がτ
CNである場合にτ
CN×τ
A1である。なお、補機軸37から車輪31bまでに至る変速比は(τ
C1〜τ
CN)×τ
A2×τ
Bで表わすこともできるが、以下の説明では補機軸37から車輪31aまでに至る変速比を用いることにする。
【0038】
そして、図示していないが、変速機12の回転軸12aから第1推進軸40までに至る変速比をτ
D1とすると、変速機12の回転軸12aから車輪31aまでに至る変速比はτ
D1×τ
A1になる。同様に、変速機12の回転ギヤ12bから第1推進軸40までに至る変速比をτ
D2とすると、変速機12の回転ギヤ12bから車輪31aまでに至る変速比はτ
D2×τ
A1になる。
【0039】
以上により、
図7に示すように、車輪31aの振動周期と、各回転駆動部材から車輪31aまでに至る変速比とによって、各回転駆動部材の振動周波数を求めることができる。これにより、車輪31aの異常振動を判断するために、車輪31aの振動周波数(1/πD)に基づいて、加速度センサ80の測定値に対して監視する空間周波数の幅(監視周波数領域)がAu〜Aoに設定されている。また、第1推進軸40の異常振動を判断するために、第1推進軸40の振動周波数(τ
A1/πD)に基づいて、監視周波数領域がB1u〜B1oに設定され、第2推進軸60の異常振動を判断するために、第2推進軸60の振動周波数(τ
B/πD)に基づいて、監視周波数領域B2u〜B2oに設定されている。
【0040】
また、補機軸37の異常振動を判断するために、変速比τ
C1である場合には、補機軸37の振動周波数(τ
C1×τ
A1)/(πD)に基づいて、監視周波数領域がC1u〜C1oに設定されている。一方、変速比τ
CNである場合には、補機軸37の振動周波数(τ
CN×τ
A1)/(πD)に基づいて、監視周波数領域がCNu〜CNoに設定されている。また、変速機12の回転軸12aの異常振動を判断するために、回転軸12aの振動周波数(τ
D1×τ
A1)/(πD)に基づいて、監視周波数領域がD1u〜D1oに設定され、回転ギヤ12bの異常振動を判断するために、回転ギヤ12bの振動周波数(τ
D2×τ
A1)/(πD)に基づいて、監視周波数領域D2u〜D2oに設定されている。なお、監視周波数領域で下限から上限まで幅が生じているのは、車輪31aの削正によって車輪径Dの変化を考慮しているためである。
【0041】
こうして、サンプリング部91は、一定の走行距離毎にサンプリングした加速度センサ80の測定値から、上述のように設定した各監視周波数領域に対応する周波数成分を、回転駆動部材毎のバンドパスフィルタの通過領域を通して抽出する。ここで、例えば第1推進軸60の監視周波数領域がB1u〜B1oに設定されるため、第1推進軸40に対応するバンドパスフィルタの通過領域はB1u〜B1oを全て含むように設定される。各バンドパスフィルタによって、空間周波数に対応する周波数成分を走行時にレールから受ける振動等から分離し、高周波成分が低周波成分に埋もれることを防止している。この結果、高周波成分等の振幅が小さい異常振動に対して、早期の検知ができるようになっている。サンプリング部91によって抽出された各周波数成分は、異常判断部92に送られる。
【0042】
異常判断部92は、抽出された各周波数成分をそれぞれ四則演算により正規化し、正規化された各値と予め設定しているしきい値とを比較して、回転駆動部材毎に異常が生じているか否かを判断する。本実施形態において、異常判断部92の処理は、本出願人による上記特許文献3に記載されている演算部の処理と同様であるため、以下では
図8を参照して簡単に説明する。
図8では、異常検知装置90のデータ処理の流れが示されていて、一つの回転駆動部材に対して異常検知を行う処理が示されている。なお、ステップS1は、サンプリング部91が一定の走行距離毎に得られた加速度センサ80の測定値をサンプリングする処理であり、ステップS2は、サンプリング部91が監視周波数領域に対応する周波数成分をバンドパスフィルタで抽出する処理である。ステップS3〜ステップS12が異常判断部92によって行われる処理である。
【0043】
ステップS3では、抽出された周波数成分から振動ピークが検出される。ステップS4では、その振動ピークの絶対値が求められる。一方、ステップS5では、現時点での走行速度における振動ピーク絶対値平均が読み込まれる。そして、ステップS6では、ステップS4で求めた振動ピークの絶対値と、ステップS5で読み込んだ振動ピーク絶対値平均との比の値が算出される。これにより、ステップS7では、算出された比の値から相対度数分布が作成される。次に、ステップS8では、予め作成された基準分布と、ステップS7で作成された相対度数分布との差が算出される。なお、基準分布は、車両が完成した直後の試験走行時を正常時とし、この正常時の複数回の試験走行によって予め求めた相対度数分布である。
【0044】
そして、ステップS9では、ステップS8で算出された差に対して振動ピークの重み付けが行われる。続いて、ステップS10では、重み付けされた各振動ピークの差の絶対値が求められ、ステップS11では、その各絶対値が加算されて総和が求められる。その後、ステップS12では、ステップS11で求められた総和と、予め設定した異常検知しきい値とが判断される。こうして、異常判断部92は、回転駆動部材毎にステップS3〜ステップS12の処理を行い、ステップS11で求められた総和が異常検知しきい値以上であるときに、対象の回転駆動部材が異常であると判断するようになっている。なお、異常検知しきい値は、予め繰り返し行われた走行試験において、正常時にステップS11で求めた総和の最大値より僅かに大きい値として設定されている。
【0045】
図9では、異常振動が生じていない場合にステップS7で作成された相対度数分布Qと、基準分布Pとの関係が示されている。
図9(a)に示すように、相対度数分布Qと基準分布Pとのずれが小さいと、
図9(b)に示すように、分布Qと分布Pの差の絶対値Z1が小さくなり、対象の回転駆動部材が異常振動していない、即ち正常であると判断される。一方、
図10では、異常振動が生じている場合にステップS7で作成された相対度数分布Rと、基準分布Pとの関係が示されている。
図10(a)に示すように、相対度数分布Rと基準分布Pとのずれが大きいと、
図10(b)に示すように、分布Rと分布Pの差の絶対値Z2が大きくなり、対象の回転駆動部材が異常振動していると判断される。こうして、異常判断部92が回転駆動部材毎に異常の有無を判断し、その判定結果が管理装置100に送られる。管理装置100は、異常と判断された判定結果を受け取ると、乗務員支援モニタ等を利用して運転士に回転駆動部材の異常を報知する。
【0046】
第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の気動車1によれば、異常検知装置90が、回転駆動部材である第1推進軸40、第2推進軸60、補機軸37、変速機12の回転軸12a及び回転ギヤ12bに対して、それぞれ監視周波数領域を設定していて、回転駆動部材毎に異常が生じているか否かを判断する。これにより、ボルト締結の緩み、溶接部分の切断、ギヤの破損等によって回転駆動部材が異常振動を生じさせても、その異常を速やかに検知することができる。特に、第1推進軸40、第2推進軸60、補機軸37において、一端部が外れて落下する前に異常振動が生じていると、落下する前の段階で第1推進軸40、第2推進軸60、補機軸37の異常を検知することができる。従って、安全面で特に注目されている気動車において各回転駆動部材の異常を速やかに検知できることができて、信頼性を大幅に向上させることができる。
【0047】
そして、第1推進軸40の監視周波数領域は、車輪径Dと第1減速機34の減速比τ
A1とを用いて設定することができ、第2推進軸40の監視周波数領域は、車輪径Dと第2減速機35の減速比τ
Bとを用いて設定することができる。こうして、監視周波数領域の設定を比較的簡易にしつつ、第1推進軸40及び第2推進軸60の異常振動を的確に検知することができる。同様に、補機軸37、変速機12の内部に設けられている回転軸12a及び回転ギヤ12bに対しても、監視周波数領域を設定して、異常振動を的確に検知することができる。
【0048】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の部分の説明については省略する。第1実施形態では、第1推進軸40及び第2推進軸60が落下する前に異常振動を生じさせている場合に、その異常振動を検知することを目的としているが、第2実施形態では、万一第1推進軸40及び第2推進軸60の一端部が外れて落下した後に、できるだけ速やかに第1推進軸40及び第2推進軸60の落下を検知することを目的としている。
【0049】
図11は、第1推進軸40が落下して第1落下防止枠50の下辺部50aの上で回転している状態を示した図であり、
図12は、
図11のE−E線に沿った断面図である。高速走行中に、
図11及び
図12に示すように、第1推進軸40の一端部40aが落下すると、第1推進軸40は第1落下防止枠50の下辺部50aに衝突する。このとき、第1推進軸40の他端部40bは台車30A側に連結されているため、仮にディーゼルエンジン10から駆動力の伝達を遮断したとしても、台車30Aの大きな慣性により第1推進軸40がしばらくの間回転し続けることになる。この場合、
図12に示すように、第1推進軸40が第1落下防止枠50の下辺部50aの上で回転し続けると、加速度センサ80の測定値には、第1推進軸40の径に基づく周期的な振動成分が表れることになる。
【0050】
そこで、第2実施形態の異常検知装置90では、第1推進軸40が上述したように回転するときに生じる振動周波数を監視して、第1推進軸40が落下したか否かを判断するようなっている。第2実施形態の異常検知装置90は、第1推進軸40の落下及び第2推進軸60の落下の両方を判断できるように構成されているが、第1推進軸40の落下を判断する方法と第2推進軸60の落下を判断する方法は同様であるため、以下では第1推進軸40の落下を判断する方法を代表して説明する。
【0051】
図12に示すように、第1推進軸40が回転し続ける場合、第1推進軸40の振動周期は第1推進軸40の円周であるため、第1推進軸40の径をD1とすると、円周率π×径D1で表わされる。これにより、第1推進軸40の振動周波数(第1落下振動周波数)は、振動周期の逆数であるため、1÷(π×D1)で表わすことができ、この振動周波数に基づいて第1推進軸40の落下用監視周波数領域が設定される。
【0052】
こうして、第2実施形態のサンプリング部91は、加速度センサ80の測定値からこの落下用監視周波数領域に対応する周波数成分を抽出し、異常判定部92が抽出された周波数成分を用いて第1推進軸40が落下したか否かを判断する。第2実施形態の異常検知装置90のその他の処理は、上述した第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。従って、第2実施形態によれば、第1推進軸40の径D1及び第2推進軸60の径を利用して、落下用監視周波数領域を設定する。これにより、万一第1推進軸40又は第2推進軸60が落下して第1落下防止枠50又は第2落下防止枠70に衝突した後に、その落下を速やかに検知することができる。
【0053】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の部分の説明については省略する。第3実施形態においても、第2実施形態と同様、万一第1推進軸40及び第2推進軸60の一端部が外れて落下した後に、できるだけ速やかに第1推進軸40及び第2推進軸60の落下を検知することを目的としている。但し、第3実施形態では、第2実施形態と異なり、第1推進軸40が落下した後に第1落下防止枠50の内側で跳ね回ることを想定して、第1推進軸40及び第2推進軸60の落下を検知することを目的としている。
【0054】
図13は、第1推進軸40が落下して第1落下防止枠50の内側で跳ね回る状態を示した図である。
図13に示すように、第1推進軸40の一端部40aが落下して、第1推進軸40が第1落下防止枠50の下辺部50aに衝突した後、気動車1の走行速度及び第1落下防止枠50の大きさ等に応じて、第1推進軸40が第1落下防止枠50の内側で跳ね回る場合がある。この場合、
図13に示すように、第1推進軸40の重心位置G1は、一定の回転径D2で回転することになり、加速度センサ80の測定値には、この重心位置G1の回転径D2に基づく周期的な振動成分が表れることになる。
【0055】
そこで、第3実施形態の異常検知装置90では、第1推進軸40が上述したように回転するときに生じる振動周波数を監視して、第1推進軸40が落下したか否かを判断するようなっている。第3実施形態の異常検知装置90は、第1推進軸40の落下及び第2推進軸60の落下の両方を判断できるように構成されているが、第1推進軸40の落下を判断する方法と第2推進軸60の落下を判断する方法は同様であるため、以下では第1推進軸40の落下を判断する方法を代表して説明する。
【0056】
図13に示すように、第1推進軸40が跳ね回る場合、跳ね回る際の振動周期は重心位置G1の回転径D2の円周であるため、円周率π×D2で表わされる。これにより、跳ね回る際の振動周波数(第1跳ね回り振動周波数)は、振動周期の逆数であるため、1÷(π×D2)で表わすことができ、この振動周波数に基づいて第1推進軸40の跳ね回り用監視周波数領域が設定される。
【0057】
こうして、第3実施形態のサンプリング部91は、加速度センサ80の測定値からこの跳ね回り用監視周波数領域に対応する周波数成分を抽出し、異常判定部92が抽出された周波数成分を用いて第1推進軸40が落下したか否かを判断する。第3実施形態の異常検知装置90のその他の処理は、上述した第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。従って、第3実施形態によれば、第1推進軸40が跳ね回る際の重心位置G1の回転径D2、及び第2推進軸60が跳ね回る際の重心位置の回転径を利用して、跳ね回り用監視周波数領域を設定する。これにより、万一第1推進軸40又は第2推進軸60が落下して跳ね回った後に、その落下を速やかに検知することができる。
【0058】
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、第1実施形態と同様の部分の説明については省略する。第1実施形態では、異常判断部92が回転駆動部材毎にそれぞれ別個で振動成分を見て異常振動の有無を判断するが、第4実施形態では、異常判断部92が二つの回転駆動部材の振動成分の相対度数を見て異常振動の有無を判断するようになっている。従って、第4実施形態では、主に異常判断部92の処理が第1実施形態と異なっている。第4実施形態の異常判断部92の処理は、本出願人による上記特許文献4に記載されている演算部及び異常判定部の処理と同様であるため、以下では
図14を参照して簡単に説明する。
【0059】
図14は、第4実施形態の異常検知装置90のデータ処理の流れを説明するための図である。第4実施形態では、第1推進軸40と第2推進軸60の振動成分の相対度数を見て異常振動の有無を判断する場合を説明する。なお、二つの回転駆動部材は第1推進軸40と第2推進軸60に限られるものではなく、補機軸37、変速機12の回転軸12a、回転ギヤ12bであっても良く、適宜変更可能である。
図14に示すように、サンプリング部91は、ステップS21において、加速度センサ80の測定値を一定距離毎にサンプリングする。そして、サンプリング部91は、サンプリングした測定値に対して、ステップS22で第1推進軸40の監視周波数領域に対応する周波数成分をバンドパスフィルタで抽出すると共に、ステップS24で第2推進軸60の監視周波数領域に対応する周波数成分をバンドパスフィルタで抽出する。
【0060】
そして、異常判断部92は、ステップS23において、ステップS22で抽出された周波数成分の2乗平均を算出して、第1推進軸40に関する振動加速度パワーを求める。同様に、異常判断部92は、ステップS25において、ステップS24で抽出された周波数成分の2乗平均を算出して、第2推進軸60に関する振動加速度パワーを求める。なお、振動加速度パワーを求める際の平均距離を、適宜調整することで、例えば、レール上の小石を弾き飛ばした場合のように、振幅が大きく作用時間の短い瞬間的な異常振動を早期に検知できたり、車輪31aの一部が平らになってしまった場合のように、振幅が小さく作用時間の長い継続的な異常振動を早期に検知できるようになる。
【0061】
ステップS26では、第1推進軸40に関する振動加速度パワーと第2推進軸60に関する振動加速度パワーの比の値が算出される。これにより、ステップS27では、算出された振動加速度パワーの比の値から相対度数分布が作成される。次に、ステップS28では、予め作成された基準分布と、ステップS27で作成された相対度数分布との差が算出される。なお、基準分布は、車両が完成した直後の試験走行時を正常時とし、この正常時の複数回の試験走行によって予め求めた相対度数分布である。
【0062】
そして、ステップS29では、ステップS28で算出された差に対して振動加速度パワーの重み付けが行われる。続いて、ステップS30では、重み付けされた各振動加速度パワーの差の絶対値が求められ、ステップS31では、その各絶対値が加算された総和が求められる。その後、ステップS32では、ステップS31で求められた総和と、予め設定した異常検知しきい値とが判断される。こうして、異常判断部92は、第1推進軸40と第2推進軸60との関係において、ステップS23〜ステップS32の処理を行い、ステップS31で求められた総和が異常検知しきい値以上であるときに、第1推進軸40及び第2推進軸60の一方に異常振動が生じていると判断するようになっている。なお、異常検知しきい値は、予め繰り返し行われた走行試験において、正常時にステップS31で求めた総和の最大値より僅かに大きい値として設定されている。
【0063】
こうして、第4実施形態の異常検知装置90によれば、二つの回転駆動部材の異常を判断する際に、第1推進軸40の異常振動と第2推進軸60の異常振動とを別々で判断しないで、第1推進軸40の振動成分と第2推進軸60の振動成分との比を利用して異常の有無を判断する。これにより、レールの軌道狂いや加減速に依存する振動の影響を相殺することができ、第1実施形態による異常検知に加えて実施することで、異常の有無をより的確に検知することができる。
【0064】
以上、本発明に係る気動車1の各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、回転駆動部材は、第1推進軸40、第2推進軸60、補機軸37、変速機12の回転軸12a及び回転ギヤ12bに限られるものではなく、ディーゼルエンジン10から駆動力が伝達されて回転するものであれば、適宜変更可能である。
また、各実施形態の特徴をそれぞれ適宜組み合わせて実施することも可能である。