【解決手段】本発明は、加水分解タンパク及びアーティチョークエキスが配合される液状毛髪処理剤である。当該液状毛髪処理剤の粘度としては、例えば100mPa・s以下である。当該液状毛髪処理剤は、アニオン性化合物がさらに配合されるとよい。上記アニオン性化合物の配合量は、1質量%以下であると良い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液状毛髪処理剤は、加水分解タンパク及びアーティチョークエキスが配合されたものである。当該液状毛髪処理剤は、アニオン性化合物が配合されることが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分が配合されてもよい。以下、これらの成分について詳説する。
【0013】
[加水分解タンパク]
加水分解タンパクは、毛髪の保湿、保護、修復効果といった優れたコンディショニング作用を発揮するものである。
【0014】
加水分解タンパクとしては、例えば加水分解ケラチン、加水分解シルク、加水分解アーモンドタンパク、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解酵母タンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク等が挙げられる。加水分解ケラチンとしては、羊毛由来のものや、水鳥の羽毛由来のものが挙げられる。これらの加水分解タンパクは、単独で配合してもよく、複数を配合してもよい。
【0015】
当該液状毛髪処理剤における加水分解タンパクの配合量としては、0.05質量%以上10質量%以下が好ましい。このような範囲に加水分解タンパクの配合量を設定することで、当該毛髪処理剤は、効果的に毛髪の保湿、保護、修復効果といった優れたコンディショニング作用を発揮する。
【0016】
[アーティチョークエキス]
アーティチョークエキスは、特にシャンプー後等の濡れた毛髪の指通りや櫛通りの悪化を抑制するものである。このアーティチョークエキスは、例えばアーティチョークの全草から溶媒を用いて直接抽出することで得られるものの他、圧搾処理を施した後に得られる圧搾液又はこの圧搾液の残渣に溶媒を加えて抽出することで得られるものを含む。
【0017】
アーティチョークエキスを抽出するための溶媒としては、例えば水、エタノール、1,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。これらを2種以上混合して使用してもよい。
【0018】
アーティチョークエキスの抽出するときの溶媒の温度としては、使用する溶媒に応じて適宜設定すればよく、−4℃〜100℃の範囲で任意に設定できる。溶媒の温度としては、抽出時のアーティチョークの安定性の点から、特に10℃〜40℃付近が好ましい。アーティチョーク全草に対する溶媒の重量比率としては、例えば4:1〜1:50の範囲内で適宜設定する。
【0019】
当該液状毛髪処理剤において、アーティチョークエキスを少量配合することで、毛髪の引っ掛かりを抑制できる。当該液状毛髪処理剤におけるアーティチョークエキスの配合量の上限は、例えば0.1質量%である。
【0020】
[アニオン性化合物]
アニオン性化合物は、アーティチョークエキスと同様に、加水分解タンパクによる毛髪の指通りや櫛通りの悪化(毛髪の引っ掛かり)、特にシャンプー後等の濡れた毛髪の指通りや櫛通りの悪化を抑制するものである。
【0021】
アニオン性化合物としては、例えばアニオン界面活性剤、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩が挙げられる。これらのアニオン性化合物は、単独で配合してもよく、複数を配合してもよい。
【0022】
アニオン界面活性剤としては、例えば、
N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸、アシル乳酸塩等のカルボン酸系アニオン界面活性剤;
アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩等のスルホン酸系アニオン界面活性剤;
アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩等の硫酸系アニオン界面活性剤;
アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩等のリン酸系アニオン界面活性剤などが挙げられる。
【0023】
N−アシルアミノ酸塩としては、例えば、
N−ヤシ油脂肪酸グルタミン酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩、N−ミリストイルグルタミン酸塩、N−パルミトイルグルタミン酸塩、N−ステアロイルグルタミン酸塩、N−オレオイルグルタミン酸塩等のN−アシルグルタミン酸塩;
N−ヤシ油脂肪酸アラニン塩、N−ラウロイルアラニン塩、N−ミリストイルアラニン塩、N−パルミトイルアラニン塩、N−ステアロイルアラニン塩、N−オレオイルアラニン塩等のN−アシルアラニン塩;
N−ヤシ油脂肪酸メチルアラニン塩、N−ラウロイルメチルアラニン塩、N−ミリストイルメチルアラニン塩等のN−アシルメチルアラニン塩;
N−ヤシ油脂肪酸サルコシン塩、N−ラウロイルサルコシン塩、N−ミリストイルサルコシン塩、およびN−オレオイルサルコシン塩等のN−アシルサルコシン酸塩;
N−ヤシ油脂肪酸グリシン塩、N−ラウロイルグリシン塩、N−ミリストイルグリシン塩、N−パルミトイルグリシン塩、N−ステアロイルグリシン塩、N−オレオイルグリシン塩等のN−アシルグリシン塩;
N−ヤシ油脂肪酸アスパラギン酸塩、N−ラウロイルアスパラギン酸塩、N−ミリストイルアスパラギン酸塩、N−パルミトイルアスパラギン酸塩、N−ステアロイルアスパラギン酸塩、N−オレオイルアスパラギン酸塩等のN−アシルアスパラギン酸塩;
N−ラウロイルシルクアミノ酸塩等のN−アシルシルクアミノ酸塩などが挙げられる。ここで、N−アシルアミノ酸塩の塩の形態としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩である。
【0024】
当該液状毛髪処理剤におけるアニオン性化合物の配合量としては、1質量%以下が良く、0.5質量%以下が好ましい。アニオン性化合物の配合量を1質量%以下とすることで、アニオン性界面活性剤等のアニオン性化合物の配合量が増えることによる泡立ちを抑制できる。
【0025】
[任意成分]
毛髪処理剤として通常使用されている公知の成分を、当該毛髪処理剤の任意成分として配合できる。その任意成分としては、多価アルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン)、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、グリセリン、糖類、エステル油、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等である。
【0026】
[pH]
当該液状毛髪処理剤の25℃におけるpHとしては、4以上8以下が好ましく、4以上7以下がより好ましい。当該毛髪処理剤のpHが8を超えると、当該液状毛髪処理剤を毛髪に塗布したときに毛髪が膨潤しやすくなるために好ましくない。
【0027】
[粘度]
当該液状毛髪処理剤の粘度としては、例えば100mPa・s以下であり、50mPa・s以下であっても良い。なお、粘度は、B型粘度計を使用して25℃、12rpmで計測した60秒後の値である。
【0028】
[剤型]
当該液状毛髪処理剤の剤型としては、毛髪に塗布するときに霧状として使用されるものを含む。当該液状毛髪処理剤の剤型を液状(霧状を含む)とする観点から、水の配合量は、例えば85質量%以上とされる。
【0029】
[用途]
当該液状毛髪処理剤は、任意成分を適宜配合することにより、スタイリング剤、ヘアケア剤等の各種毛髪処理剤に用いられる。ここで、「スタイリング剤」とは、髪型を一時的に保持するために用いられる毛髪処理剤である。「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤であり、例えば、リンス、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)が挙げられる。
【0030】
当該液状毛髪処理剤は、シャンプーとは異なる態様で使用することが好ましく、トリートメント、特にシャンプー後の濡れた毛髪のトリートメントとして使用することが好ましい。ここで、シャンプー後の濡れた毛髪は、指通りや櫛通りが悪化しやすい状態であることから、引っ掛かりが抑制された当該液状毛髪処理剤は、濡れた髪に塗布するトリートメントとして好適に使用することができる。
【0031】
当該液状毛髪処理剤は、上記の通り、多剤式トリートメントの一構成剤として使用できる。例えば複数の剤を洗い流さずに重ね塗りする多剤式トリートメントの第1剤として当該毛髪処理剤を使用する場合には、第1剤塗布後の指通りや櫛通りが悪いと第2剤以降の毛髪処理剤を塗布するときの塗布性が悪化し十分なトリートメント効果を得られないおそれがあることから、引っ掛かりが抑制された当該液状毛髪処理剤は多剤式トリートメントの第1剤として好適に使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、当該液状毛髪処理剤を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>
アーティチョーク葉エキス含有市販品(一丸ファルコス社の「バイオベネフィティ」)0.1質量%。加水分解タンパクとしての羊毛由来の加水分解ケラチン0.9質量%、1,3-ブチレングリコール及び防腐剤を配合し、残部(99質量%)を水として実施例1の液状毛髪処理剤を調製した。
【0034】
<実施例2>
アーティチョーク葉エキス含有市販品の配合量を0.3質量%とした以外は実施例1と同様にして実施例2の液状毛髪処理剤を調製した。
【0035】
<実施例3>
アーティチョーク葉エキス含有市販品の配合量を0.5質量%とした以外は実施例1と同様にして実施例3の液状毛髪処理剤を調製した。
【0036】
<比較例1>
アーティチョーク葉エキスを配合しなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の液状毛髪処理剤を調製した。
【0037】
<評価>
実施例1〜3及び比較例1の液状毛髪処理剤について、引っ掛かりの抑制及び毛先の厚みと滑らかさの感触を以下に説明する方法で評価した。評価結果は表1に示す。
【0038】
[引っ掛かりの抑制の評価]
引っ掛かり抑制は、酸化染毛剤による処理履歴がある毛束に、シャンプー処理、液状毛髪処理剤の塗布及び水洗をこの順序で行い、液状毛髪処理剤の塗布後かつ水洗前に毛髪の指通り、櫛通りとして評価した。この引っ掛かり抑制は、比較例1の液状毛髪処理剤(基準)を使用した場合の引っ掛かりとの比較として下記の基準で評価した。
【0039】
◎:基準よりも引っ掛かりがない
〇:基準よりもやや引っ掛かりがない
−:基準と同等の引っ掛かり
×:基準よりも引っ掛かる
【0040】
[毛先の厚みと滑らかさの感触の評価]
毛先の厚みと滑らかさの感触は、引っ掛かりの抑制の評価の後に、水洗、乾燥した毛束を対象として評価した。この評価は、比較例1の液状毛髪処理剤を使用した場合との比較として下記の基準に従って評価した。
【0041】
◎:基準よりも厚みがあり、滑らかな感触
〇:基準よりもやや厚みがあり、やや滑らかな感触
−:基準と同等の感触
×:基準よりも厚みがなく、ざらつく感触
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、実施例1〜3の液状毛髪処理剤は、比較例1の液状毛髪処理剤に比べて引っ掛かりが抑制されると共に、毛先の厚み感があり滑らかな感触であった。従って、加水分解タンパクと共にアーティチョーク葉エキスと配合することで、引っ掛かりが抑制されると共に毛先の厚み感がある滑らかな感触が得られる。また、アーティチョーク葉エキスの配合量が増えることで、引っ掛かりが抑制よりされると共に、毛先の厚み感がより向上し、より滑らかな感触が得られた。
【0044】
[参考例]
以下、参考例として、液状毛髪処理剤に加水分解タンパク質と共にアニオン性化合物を配合した場合の上述の引っ掛かりの抑制を評価した結果を説明する。
【0045】
<参考例1>
加水分解タンパクとしての加水分解ケラチン(東洋羽毛工業社の「ケラタイド」)1質量%及びアニオン性化合物としてのアニオン界面活性剤であるラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム0.9質量%を配合し、残部を水として参考例1の液状毛髪処理剤を調製した。
【0046】
<参考例2>
アニオン性化合物として、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム1質量%を配合した以外は参考例1と同様にして参考例2の液状毛髪処理剤を調製した。なお、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムは、旭化成ケミカルズ社の「ペリセアLB−10」を使用することで配合した。この「ペリセアLB−10」は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムが10質量%配合されたものである。
【0047】
<参考例3>
アニオン性化合物としてのアニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.8質量%を配合した以外は参考例1と同様にして参考例3の液状毛髪処理剤を調製した。なお、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムは、花王社の「エマール 227HP」を使用することで配合した。この「エマール 227HP」は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが27質量%配合されたものである。
【0048】
<参考例4>
アニオン性化合物に代えて、ノ二オン界面活性剤としてポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O.)1質量%を配合した以外は参考例1と同様にして参考例4の液状毛髪処理剤を調製した。
【0049】
<参考例5>
アニオン性化合物を配合しなかった以外は参考例1と同様にして参考例5の液状毛髪処理剤を調製した。
【0050】
【表2】
【0051】
表2から明らかなように、アニオン性化合物を配合した参考例1〜3の液状毛髪処理剤は、参考例4,5の液状毛髪処理剤に比べて引っ掛かりが抑制されていた。