(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-86149(P2015-86149A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】口腔用微細エマルション組成物並びにこれを含有する液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61Q 11/00 20060101AFI20150410BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20150410BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20150410BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20150410BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20150410BHJP
【FI】
A61Q11/00
A61K8/92
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-224306(P2013-224306)
(22)【出願日】2013年10月29日
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228729
【氏名又は名称】日本サーファクタント工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 直紀
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 由紀
(72)【発明者】
【氏名】李 金華
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC782
4C083AC812
4C083AC862
4C083AD111
4C083AD532
4C083BB11
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD35
(57)【要約】
【課題】微細エマルションを安定かつ簡便に液体口腔用組成物へ配合できる水系の微細エマルション組成物を調製することを課題とした。
【解決手段】前記目的を達成するために、水相中に油性成分を微細エマルションとして分散させる際、油性成分、界面活性剤及びポリオールを特定の比率で配合することにより、優れた安定性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、次の成分(A)〜(D)を必須成分とし、成分(A)〜(C)の比率(質量比)が、(A)/(B)=70/30〜30/70かつ[(A)+(B)]/(C)=90/10〜60/40である平均粒子径100nm以下の微細エマルション組成物並びにこれを配合することを特徴とする液体口腔用組成物。
(A)油性成分
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(C)ポリオール
(D)水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)を必須成分として含有し、成分(A)〜(C)の比率(質量比)が、(A)/(B)=70/30〜30/70かつ[(A)+(B)]/(C)=90/10〜60/40であることを特徴とする、平均粒子径100nm以下の口腔用微細エマルション組成物。
(A)油性成分
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(C)ポリオール
(D)水
【請求項2】
成分(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の酸化エチレン付加モル数が、10〜40モルであることを特徴とする、請求項1に記載の口腔用微細エマルション組成物。
【請求項3】
成分(C)ポリオールが、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコールより選ばれる1種または2種以上からなる、請求項1又は2に記載の口腔用微細エマルション組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔用微細エマルション組成物を0.1〜20質量%含有する液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体口腔用組成物に安定に配合する事が可能な平均粒子径100nm以下の微細エマルション組成物および、この微細エマルション組成物を配合する液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗口剤、マウスウォッシュ等の液体口腔用組成物に関して、エマルションタイプの口腔用組成物の配合成分や製造プロセスについての種々の検討がなされている。たとえば特許文献1には、油性成分を油相に含む特定成分のエマルションを別に調製し、エタノールを含有する液体口腔用組成物に添加することにより、エタノール由来の刺激を抑制し、なおかつ安定性も良好な液体口腔用組成物を得る方法が提案されている。特許文献2には、油性成分、ノニオン界面活性剤、エタノールを混合した油性混合液と、アニオン界面活性剤をクラフト点以上の温度で水に溶解させて調製したアニオン界面活性剤水溶液をそれぞれ調製し、これらを混合することにより、外観の経時安定性に優れた液体口腔用組成物を得る方法が提案されている。さらに、特許文献3には、特定の比率の有効成分、多価アルコール、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに該当しないノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤とを混合してなる油相を水相中に投入してエマルションとすることを特徴とする口腔用組成物の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−179231号公報
【特許文献2】特開2007−197411号公報
【特許文献3】特開2011−168506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法の場合には、配合工程が多く、製造プロセスが煩雑であり、さらには高圧ホモジナイザーなどの高剪断タイプの乳化装置を使用する必要があるなどの問題点がある。また、これらの方法で得られた口腔用組成物は、経時的に濁りやオリ、クリーミングが生じる場合があり、安定性が十分ではなかった。
本発明は、上記実状に鑑み、安定性が良好でなおかつ簡便に液体口腔用組成物へ配合することができる水系の微細エマルション組成物を調製することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、水相中に油性成分を微細エマルションとして分散させる際、油性成分、界面活性剤およびポリオールを特定の比率で配合することにより、優れた安定性が得られることを見出した。なおかつこの微細エマルションの調製方法は非常に簡便であり、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、特定成分の組合せにより、安定な微細エマルション組成物としてあらかじめ調製することにより、従来では安定に配合が困難であった液体口腔用組成物にも容易に配合することが可能な、口腔用微細エマルション組成物である。本口腔用微細エマルション組成物の調製には、高圧ホモジナイザーのような高剪断タイプの乳化装置を使用する必要がなく、またこの口腔用微細エマルション組成物を用いて調製した液体口腔用組成物は、従来の調製方法で調製した液体口腔用組成物と比較して、その処方成分が同じであるにもかかわらず、経時的にクリーミングや層分離等を生じず、非常に安定であった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に使用される成分(A)の油性成分としては、任意に選択することができる。具体例としては、スクワラン、流動パラフィン、エステル油等が挙げられ、一種を単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、必要に応じてトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤、メントール、ペパーミント油等の香料成分、天然精油成分等の、液体口腔用組成物の構成成分として重要な成分を配合しても良い。
【0008】
本発明に使用される成分(B)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、平均ポリオキシエチレン付加モル数が10〜40モルであることを特徴とし、具体的にはNIKKOL HCO−10、HCO−20、HCO−30、HCO−40、HCO−40(医薬用)(日光ケミカルズ社製)などが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0009】
本発明に使用される成分(C)のポリオールとしては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどがあり、特に好ましくは1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコールである。
【0010】
本発明において、成分(A)〜(C)の比率(質量比)は、(A)/(B)=70/30〜30/70かつ[(A)+(B)]/(C)=90/10〜60/40の範囲にあるとき、さらに好ましくは(A)/(B)=60/40〜40/60かつ[(A)+(B)]/(C)=90/10〜70/30の範囲において、口腔用微細エマルション組成物がより安定に調製できる。
なお、(A)/(B)=70/30より上の比率では、油性成分に対して界面活性剤量の割合が少なすぎて、安定な口腔用微細エマルション組成物を得ることができず、逆に(A)/(B)=30/70より下の比率では、界面活性剤が水中で形成する高次分子集合体が強固なゲルとなり、調製時に強い機械力が必要となってしまう。
また、[(A)+(B)]/(C)=90/10より上の比率では、前述と同様に界面活性剤が水中で高次分子集合体を形成してしまい、強固なゲル構造を分散させるために強い機械力が必要となり、逆に[(A)+(B)]/(C)=60/40よりも下の比率では、ポリオールが界面活性剤の溶剤として機能してしまい、安定な口腔用微細エマルション組成物を形成することができない。
【0011】
本発明の微細エマルション組成物は、成分(A)〜(D)のみで構成されてもよく、あるいは本発明の効果を損なわない範囲において、一般に化粧料に使用される界面活性剤、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸、油性原料、活性成分、保湿成分、抗菌成分、粘度調整剤、安定化剤、色素、香料などを併用することもできる。
【0012】
本発明の口腔用微細エマルション組成物は、成分(A)〜(D)やその他の任意の原料をあらかじめ融解混合して均一な混合物とし、それを攪拌しながら室温まで冷却することで、半透明〜微白色乳化組成物として得ることができる。
【0013】
上記成分により構成される本発明の口腔用微細エマルション組成物は、平均粒子径が100nm以下であり、好ましくは80nm以下である。100nmを超える平均粒子径では、油性成分と水性成分との比重差により、クリーミングを生じてしまう場合があり、十分な経時安定性を確保することが難しい。
本発明の口腔用微細エマルション組成物は、シスメックス株式会社製の粒度分布測定装置(ZETASIZER Nano−S)を使用して平均粒子(質量平均)を測定できる。
【0014】
本発明の口腔用微細エマルション組成物は、0.1〜20質量%の範囲において、任意の液体口腔用組成物に簡便かつ安定に配合することが可能である。より好ましくは1〜10%である。20%を超えて配合すると、べたつきが増す、油臭さが増す等、嗜好性が悪くなる恐れがある。上記液体口腔用組成物は、液体歯磨剤、液状歯磨剤、洗口剤、マウスウォッシュ等であり、これらの製剤に簡便に、かつ安定に配合することができる。
【0015】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
口腔用微細エマルション組成物の調製と評価
(1)口腔用微細エマルション組成物の調製
攪拌機および真空ポンプを装備した2リッターガラス製乳化器に、あらかじめ均一溶解した表に示す各成分を、合計で1Kgになるように仕込んだ。乳化器内を20〜30mmHgに減圧し、1時間攪拌・混合を行ない、本発明品1〜7および比較品1〜4の口腔用微細エマルション組成物を得た。これらの組成を表1および2に示す。
【表1】
【表2】
【0017】
(2)安定性評価
本発明品を45℃、5℃、−5〜45℃のサイクル恒温槽に1ヶ月間放置し、外観を目視にて観察し、さらに粒子径を測定した(シスメックス株式会社製粒度分布測定装置:ZETASIZER Nano−S)。これらの結果を表3〜4に示す。
○:外観の変化が認められず
×:濁りまたは分離・クリーミングが認められた
【表3】
【表4】
【実施例2】
【0018】
実施例1で得た本発明品2を配合した液体歯磨剤
1.実施例1で得られた本発明品2 3.0質量%
2.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 1.0
3.エタノール 10.0
4.クエン酸 0.05
5.クエン酸三ナトリウム 0.2
6.グリセリン 3.0
7.キシリトール 5.0
8.防腐剤 適量
9.精製水で100.0質量%とする。
調製法 : 2〜9を攪拌、混合し、均一になったところで1を添加し、さらに撹拌し、均一になったところで調製を終了する。
安定性 : 調製品を45℃、5℃および−5℃〜45℃のサイクル恒温槽にて1ヶ月間保存した後、目視にて外観を観察したところ、変化は認められず、安定であった。
【実施例3】
【0019】
実施例1で得た本発明品4を配合した洗口剤
1.実施例1で得た本発明品4 5.0質量%
2.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
3.トリクロサン 0.05
4.エタノール 10.0
5.キシリトール 3.0
6.ラウリル硫酸ナトリウム 0.1
7.クエン酸 0.01
8.クエン酸三ナトリウム 0.1
9.香料 適量
10.防腐剤 適量
11.精製水で100.0質量%とする。
調製法 : 2〜11を攪拌、混合し、均一になったところで1を添加し、さらに撹拌し、均一になったところで調製を終了する。
安定性 : 調製品を45℃、5℃および−5℃〜45℃のサイクル恒温槽にて1ヶ月間保存した後、目視にて外観を観察したところ、変化は認められず、安定であった。
【実施例4】
【0020】
実施例1で得た本発明品6を配合したマウスウォッシュ
1.実施例1で得た本発明品6 20.0質量%
2.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 2.0
3.エタノール 20.0
4.サッカリンナトリウム 0.2
5.安息香酸ナトリウム 0.1
6.着色剤 適量
7.ペパーミント油 0.05
8.メントール 0.05
9.防腐剤 適量
10.精製水で100.0質量%とする。
調製法 : 2〜10を攪拌、混合し、均一になったところで1を添加し、さらに撹拌し、均一になったところで調製を終了する。
安定性 : 調製品を45℃、5℃および−5℃〜45℃のサイクル恒温槽にて1ヶ月間保存した後、目視にて外観を観察したところ、変化は認められず、安定であった。