【解決手段】本発明は、第1剤と、この第1剤の後に使用する第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤であって、上記第1剤にヒドロキシプロピルデンプンリン酸、油剤及びカチオン界面活性剤が配合され、上記第2剤にアミノ変性シリコーンが配合され、上記第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量が3質量%以上8質量%以下であり、上記第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する油剤の配合比が0.5以上2.0以下であることを特徴とする。
上記第1剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量が、1質量%以下かつ上記第2剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量よりも少ない請求項1に記載の多剤式毛髪処理剤。
上記第2剤におけるカチオン化セルロースの配合量が、上記第2剤のアミノ変性シリコーン100質量部に対して2質量部以上40質量部以下である請求項5に記載の多剤式毛髪処理剤。
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、油剤及びカチオン界面活性剤が配合され、上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量が3質量%以上8質量%以下、上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する上記油剤の配合比が0.5以上2.0以下の第1剤と、
この第1剤の後に使用する第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤の第2剤であって、
アミノ変性シリコーンが配合されたことを特徴とする多剤式毛髪処理剤の第2剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、毛髪内部が詰まっているような厚みある感触を毛髪に付与する多剤式毛髪処理剤及びその構成剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、第1剤と、この第1剤の後に使用する第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤であって、上記第1剤にヒドロキシプロピルデンプンリン酸、油剤及びカチオン界面活性剤が配合され、上記第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量が3質量%以上8質量%以下であり、上記第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する油剤の配合比が0.5以上2.0以下であることを特徴とする。
【0007】
当該多剤式毛髪処理剤によれば、第1剤にヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合することにより、処理後の毛髪の内部が詰まっているような厚みのある感触(厚み感)が得られる。この厚み感が得られる作用は明確ではないが、第1剤を塗布した後に第2剤を塗布すると、第2剤のアミノ変性シリコーンの内側に、第1剤のヒドロキシプロピルデンプンリン酸の被膜が存在し、アミノ変性シリコーンの内側が詰まっているような感触が得られるためであると考えられる。
【0008】
また、第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量及び油剤の配合比を上記範囲とすることで、毛髪の厚み感となめらかさの感触が向上する。
【0009】
上記第1剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量を、1質量%以下かつ上記第2剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量よりも少なくするとよい。このように第1剤のアミノ変性シリコーンの配合量を1質量%以下かつ第2剤のアミノ変性シリコーンの配合量よりも少なくすることで、第2剤のアミノ変性シリコーンの内側にヒドロキシプロピルデンプンリン酸の被膜を効果的に存在させることが可能となる。これにより、処理後の毛髪に触れたときに、厚み感に基づくコンディショニング効果が得られている感覚をより実感しやすくなる。
【0010】
上記第1剤にカオリンを配合するとよい。このように第1剤に固体であるカオリンを配合することで、処理後の毛髪の厚み感がより向上する。
【0011】
上記第2剤のアミノ変性シリコーンの配合量としては3質量%以上が好ましい。
【0012】
アミノ変性シリコーンの配合量が3質量%以上である場合の上記第2剤には、カチオン化セルロースが配合されるとよい。このように第2剤にカチオン化セルロースを配合することで、当該多剤式毛髪処理剤の塗布後の水洗時において、アミノ変性シリコーンによる油っぽい指通りの悪さが改善され、流し感が向上する。
【0013】
上記第2剤におけるカチオン化セルロースの配合量としては、上記第2剤のアミノ変性シリコーン100質量部に対して2質量部以上40質量部以下が好ましい。このようにカチオン化セルロースの配合量を第2剤のアミノ変性シリコーンの配合量に対して上記範囲とすることで、塗布後の水洗時における流し感がより向上する。
【0014】
上記第1剤及び上記第2剤の剤型がクリーム状であるとよい。このように第1剤及び第2剤の剤型がクリーム状であることで、第1剤及び第2剤を毛髪に塗布するときのハンドリング性に優れる。また、第1剤及び第2剤の剤型をクリーム状に共通化することで、第1剤と第2剤とが馴染みやすくなるだけでなく、第1剤及び第2剤を毛髪に馴染ませやすくなる。
【0015】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、第1剤と、この第1剤の後に使用され、アミノ変性シリコーンが配合された第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤の第1剤であって、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、油剤及びカチオン界面活性剤が配合され、上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量が3質量%以上8質量%以下であり、上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する上記油剤の配合比が、0.5以上2.0以下であることを特徴とする。
【0016】
当該第1剤によれば、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合することにより、アミノ変性シリコーンが配合された第2剤を当該第1剤の後に使用したときに、上述と同様の作用から、処理後の毛髪の内部が詰まっているような厚みのある感触(厚み感)が得られる。
【0017】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、油剤及びカチオン界面活性剤が配合され、上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量が3質量%以上8質量%以下、上記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する上記油剤の配合比が0.5以上2.0以下の第1剤と、この第1剤の後に使用する第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤の第2剤であって、アミノ変性シリコーンが配合されたことを特徴とする。
【0018】
当該第2剤によれば、第1剤の後にアミノ変性シリコーンが配合された当該第2剤を使用したときに、上述と同様の作用から、処理後の毛髪の内部が詰まっているような厚みのある感触(厚み感)が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アミノ変性シリコーンによるコンディショニング効果が得られるだけでなく、毛髪内部が詰まっているような厚みある感触が得られる多剤式毛髪処理剤及びその構成剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の多剤式毛髪処理剤は、第1剤及びこの第1剤の後に使用する第2剤を備える。
【0021】
[第1剤]
第1剤は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、油剤及びカチオン界面活性剤が配合されたものである。第1剤は、カオリン、アミノ変性シリコーンが配合されていてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含んでいてもよい。以下、これらの成分について詳説する。
【0022】
<ヒドロキシプロピルデンプンリン酸>
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸は、油剤を分散させるものである。なお、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸という場合には、塩の形態のものを含む。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。
【0023】
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸としては、市販品を使用することができる。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の市販品としては、例えば日澱化学社の「デリカE−7」、アクゾノーベル社の「ストラクチャーXL」が挙げられる。
【0024】
第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量は、3質量%以上8質量%以下であり、4質量%以上8質量%以下が好ましい。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量を増やすと厚み感を強く感じやすくなるが、毛髪のなめらかさを損なう場合があるので、毛髪の厚み感となめらかさのためには、上記配合量が良い。
【0025】
<油剤>
油剤とは、単独で水に配合したときに水と分離するものであって、炭化水素、油脂、ロウ、エステル油、及び高級アルコールが該当する。これらの油剤は、単独で配合してもよいし、複数を配合してもよい。第1剤における油剤の配合量としては、2質量%以上13質量%以下であると良く、3質量%以上11質量%以下が好ましく、4質量%以上8質量%以下がより好ましい。また、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合せずに油剤の配合量を増やしたとしても、厚み感の向上には適さない。
【0026】
また、第1剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する油剤の配合比は、0.5以上2.0以下であり、0.7以上1.5以下が好ましく、0.8以上1.2以下がより好ましい。このように油剤の配合比を上記範囲とすることによっても、毛髪のなめらかさの感触が向上する。
【0027】
(炭化水素)
炭化水素としては、例えばイソドデカン、流動パラフィン、スクワラン、ワセリンが挙げられる。
【0028】
(油脂)
油脂は、脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするものである。油脂としては、例えばアボガド油、アーモンド油、オリーブ油、ククイナッツ油、コメヌカ油、コーン油、サフラワー油、パーシック油、パーム核油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油等の25℃で液体の植物油が挙げられる。
【0029】
(ロウ)
ロウは、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルを主成分とするものである。ロウとしては、例えばラノリン、オレンジラフィー油、ホホバ油が挙げられる。
【0030】
(エステル油)
エステル油としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル等の直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル;カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル等の直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸2−オクチルドデシル等の直鎖脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピルなどの分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル;オクタン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル等の分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、カプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2−エチレンヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスチル等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル;ネオペンタン酸2−オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、ジメチルオクタン酸2−ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、イソパルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル等の分枝脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;メドウフォーム−δ−ラクトン等の環状エステル;ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル等のダイマー酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
(高級アルコール)
高級アルコールは、カチオン界面活性剤と共に配合されることで、第1剤の剤型をクリーム状、又はそれに近い剤型とすることができる。高級アルコールとしては、例えばミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコール等の直鎖状不飽和アルコール;オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール等の分岐状飽和アルコールなどが挙げられる。これらの高級アルコールは、単独で配合してもよいし、二種以上を配合してもよい。第1剤における高級アルコールの配合量としては、例えば0.5質量%以上5質量%以下である。
【0032】
<カチオン界面活性剤>
カチオン界面活性剤は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸と同様に、油剤を分散させるものである。また、カチオン界面活性剤は、油剤としての高級アルコールと共に配合されることで、第1剤の剤型をクリーム状、又はそれに近い剤型とするものである。このようなカチオン界面活性剤としては、下記式(I)で表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0034】
上記式(I)中、R
1は、炭素数12〜22のアルキル基である。R
2は、メチル基又は炭素数12〜22のアルキル基である。Xは、ハロゲン原子である。このハロゲン原子としては、例えば塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0035】
上記式(I)で表される第4級アンモニウム塩としては、例えばミリスチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ベへニルトリメチルアンモニウム等のトリメチル4級アンモニウムの塩;ジミリスチルジメチルアンモニウム、ジセチルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、ジベへニルジメチルアンモニウム等のジメチル第4級アンモニウムの塩などが挙げられる。これらの第4級アンモニウムの塩は、単独で配合してもよいし、二種以上を配合してもよい。第1剤における第4級アンモニウム塩の配合量としては、例えば0.5質量%以上5質量%以下であり、1質量%以上3質量%以下であると良い。
【0036】
<任意成分>
(カオリン)
カオリンは、紛体原料であり、処理後の毛髪の厚み感(内部に詰まっているような厚みがある感触)を向上させるものである。
【0037】
第1剤におけるカオリンの配合量としては、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。このようにカオリンの配合量が0.01質量%以上であることで、処理後の毛髪の厚み感がより向上する。なお、カオリンの配合量の上限は、適宜設定すればよいが、例えば0.5質量%である。
【0038】
(アミノ変性シリコーン)
アミノ変性シリコーンは、主に毛髪にコンディショニング効果を付与するために配合される。ここで、アミノ変性シリコーンとは、直接又は置換基を介してシリコーン骨格にアミノ基が結合したシリコーンである。
【0039】
第1剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量は、例えば1質量%以下である。すなわち、アミノ変性シリコーンは第1剤において任意成分であるから、アミノ変性シリコーンを配合しなくても良い。
【0040】
第1剤にアミノ変性シリコーンを配合する場合、第2剤に配合できるアミノ変性シリコーンと同じものを第1剤に配合できる。第1剤のアミノ変性シリコーンとしては、例えばアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体((アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノプロピルジメチコン(アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体)、高重合アミノプロピルジメチコン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アミノグリコール変性シリコーン、アクリル・アミノ変性シリコーン、アミノフェニル変性シリコーン等が挙げられる。これらのアミノ変性シリコーンは、単独で配合してもよく二種以上を配合してもよい。
【0041】
(他の任意成分)
任意成分としては、例えばノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、アミノ変性シリコーン以外のシリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0042】
<pH>
第1剤の25℃でのpHは、3以上7以下であると良い。第1剤のpHが7を超えると、第1剤を毛髪に塗布したときに毛髪が膨潤するために好ましくない。
【0043】
<剤型、粘度等>
第1剤の剤型としては、クリーム状が好ましく、外相が水相のクリーム状がより好ましい。このように第1剤の剤型をクリーム状とすることで、第1剤を毛髪に塗布するときのハンドリング性に優れると共に第1剤を毛髪に馴染ませやすくなる。なお、「外相が水相」とは、最外相が水相である形態を意味し、例えばW/O、W/O/W等のエマルジョンを意味する。また、クリーム状とする場合の第1剤における水の配合量は、例えば70質量%以上95質量%以下とされる。
【0044】
第1剤の粘度は、外相が水相のクリーム状の剤型である場合、例えば1,000mPa・s以上60,000mPa・s以下である。なお、粘度は、応力制御型レオメーター(HAAKE社の「Rheo Stress 6000」)を使用して測定するとよい。粘度の測定条件は、例えば測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径及び傾斜角がそれぞれ35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度36s
−1とすると良い。
【0045】
[第2剤]
第2剤は、アミノ変性シリコーンが配合されたものである。第2剤は、カチオン化セルロース、カチオン界面活性剤、高級アルコールが配合されていてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分が配合されていてもよい。以下、これらの成分について詳説する。
【0046】
<アミノ変性シリコーン>
アミノ変性シリコーンは、主に毛髪にコンディショニング効果を付与するために配合される。ここで、アミノ変性シリコーンとは、上述のように直接又は置換基を介してシリコーン骨格にアミノ基が結合したシリコーンである。このアミノ変性シリコーンとしては、例えば下記式(1)及び下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
上記式(1)中、x及びyは1〜5の整数であり、m及びnは分子量に依存する整数である。
【0050】
上記式(2)中、v及びwは1〜5の整数であり、p及びqは分子量に依存する整数である。
【0051】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、x=3及びy=2であるアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体((アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー)が挙げられる。また、上記式(2)で表される化合物としては、例えば、v=3及びw=2であるアミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)が挙げられる。
【0052】
上記の他、第2剤に配合できるアミノ変性シリコーン(化粧品の表示名称を含む)としては、上記化合物以外に、例えばアミノプロピルジメチコン(アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体)、高重合アミノプロピルジメチコン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アミノグリコール変性シリコーン、アクリル・アミノ変性シリコーン、アミノフェニル変性シリコーン等が挙げられる。これらのアミノ変性シリコーンは、単独で配合してもよく、二種以上を配合してもよい。
【0053】
第2剤におけるアミノ変性シリコーンは、任意成分である第1剤のアミノ変性シリコーンとは異なり必須成分である。アミノ変性シリコーンの配合量としては、例えば3質量%以上である。一方、アミノ変性シリコーンの配合量の上限としては、特に限定されないが、8質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、6質量%がさらに好ましい。このように、アミノ変性シリコーンの配合量を上記範囲とすることで、処理後の毛髪に十分なコンディショニング効果を付与することができると共に、毛髪の硬さやべたつきの発生を低減できる。
【0054】
アミノ変性シリコーンのアミノ含量(アミノ変性シリコーン中の窒素の含有量)は、0.5質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.7質量%以上2.2質量%以下がより好ましい。このようにアミノ変性シリコーンのアミノ含量を上記範囲とすることで、上述のコンディショニング効果を好適に奏することができる。
【0055】
<任意成分>
(カチオン化セルロース)
カチオン化セルロースは、当該多剤式毛髪処理剤の塗布後の水洗時において、アミノ変性シリコーンによる油っぽい指通りの悪さを改善し、流し感を向上させるものである。このようなカチオン化セルロースとしては、例えばヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる第4級アンモニウム塩の重合体である塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。このカチオン化セルロースの市販品としては、例えばダウ・ケミカル日本社の「UCARE Polymer JR−30M」、東邦化学工業社の「カチナールHC−200」、東邦化学工業社の「カチナールLC−200」、東邦化学工業社の「カチナールLC−100」、KCI社の「POLYQUTA 3000KC」、花王社の「ポイズC−80M」が挙げられる。
【0056】
カチオン化セルロースとしては、2質量%水溶液にしたときの粘度が10,000mPa・s以上40,000mPa・s以下のものが好ましく、20,000mPa・s以上40,000mPa・s以下のものがより好ましい。この粘度が高くなるほどに、第2剤の粘度も高くなる傾向にある。なお、カチオン化セルロースの2質量%水溶液の粘度については、B型粘度計を用いて、25℃、M4ロータ、12rpmの条件で測定開始から60秒後の値を採用する。
【0057】
カチオン化セルロースのカチオン化度(カチオン化セルロースにおける窒素含量の百分率)は、特に限定されないが、1.0%以上2.0%以下が好ましい。窒素含量は、カチオン化セルロースに含まれる窒素原子の含有量であり、医薬部外品原料規格において定められている窒素定量法に基づく値を採用する。ただし、医薬部外品原料規格に窒素定量法が定められていない場合には、ケルダール法に基づく値を採用する。
【0058】
第2剤におけるカチオン化セルロースの配合量としては、第2剤のアミノ変性シリコーン100質量部に対して2質量部以上40質量部以下が好ましい。このようにカチオン化セルロースの配合量を第2剤のアミノ変性シリコーンの配合量に対して上記範囲とすることで、塗布後の水洗時における流し感の向上に適する。
【0059】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤は、高級アルコールと配合することで、第2剤の剤型をクリーム状、又はクリーム状に近いものとするものである。第1剤に配合できるカチオン界面活性剤を、第2剤に配合するカチオン界面活性剤にできる。第2剤におけるカチオン界面活性剤の配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば1質量%以上7質量%以下である。
【0060】
(高級アルコール)
第1剤に配合できる高級アルコールを、第2剤に配合する高級アルコールにできる。第2剤における高級アルコールの配合量は、適宜設定されるものであるが、例えば5質量%以上15質量%以下である。
【0061】
(他の任意成分)
第2剤の任意成分としては、例えばノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、炭化水素、ロウ、アミノ変性シリコーン以外のシリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0062】
<pH>
第2剤の25℃でのpHは、3以上7以下であると良い。第2剤のpHが7を超えると、第2剤を毛髪に塗布したときに毛髪が膨潤するために好ましくない。
【0063】
<剤型、粘度等>
第2剤の剤型としては、クリーム状が好ましく、外相が水相のクリーム状がより好ましい。このように第2剤の剤型がクリーム状であることで、第2剤を毛髪に塗布するときのハンドリング性に優れると共に第2剤を毛髪に馴染ませやすくなる。また、第1剤と第2剤とを共にクリーム状の剤型とする場合、第1剤と第2剤とが馴染みやすくなる。なお、クリーム状とする場合の第2剤における水の配合量は、例えば50質量%以上90質量%以下とされる。
【0064】
第2剤の粘度としては、外相が水相のクリーム状の剤型である場合、例えば1,000mPa・s以上60,000mPa・s以下である。なお、粘度は、応力制御型レオメーター(HAAKE社の「Rheo Stress 6000」)を使用して測定するとよい。粘度の測定条件は、例えば測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径及び傾斜角がそれぞれ35mm及び傾斜角2°、定常フローカーブモード、待ち時間1分、せん断速度36s
−1とすると良い。
【0065】
[多剤式毛髪処理剤の用途]
当該多剤式毛髪処理剤は、ヘアケア剤などとして使用可能なものである。「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤である。ヘアケア剤としては、例えばコンディショナー、トリートメントが挙げられる。トリートメントとしては、例えばシャンプー後に使用するトリートメント、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメントが挙げられる。
【0066】
[多剤式毛髪処理剤の使用方法]
当該多剤式毛髪処理剤は、第1剤を塗布した後に、この第1剤を洗い流した後に、又は第1剤を洗い流さずに第2剤を塗布して使用する。第2剤は、塗布後に洗い流してもよいし、洗い流さなくてもよい。
【0067】
当該多剤式毛髪処理剤は、2剤の処理剤からなる場合、第1剤及び第2剤から構成される。当該多剤式毛髪処理剤は、3剤以上の処理剤からなる場合には、第1剤及び第2剤に加えて、1以上の他の処理剤を含む。この場合、第1剤、第2剤及び1以上の他の処理剤の使用順序は、第1剤の後に第2剤を使用する順序であればよく、第2剤を最後の処理剤として使用することが好ましい。例えば、3剤式の毛髪処理後の場合、他の処理剤を、第1剤の前に使用しても良く、第1剤及び第2剤の間に使用しても良く、第2剤の後に使用しても良い。
【実施例】
【0068】
以下、当該毛髪処理剤を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
本実施例では、第1剤及び第2剤をこの順序で塗布して使用する2剤式毛髪処理剤を用いて、厚み感及びなめらかさを評価した。
【0070】
[処方例1a〜1d]
処方例1a〜1dの多剤式毛髪処理剤は、第1剤及び第2剤からなる2剤式として調製した。
【0071】
<第1剤の調製>
処方例1a〜1dの第1剤は、下記表1に示す原料を水に配合し、クリーム状の剤型に調製した。
【0072】
<第2剤の調製>
処方例1a〜1dの第2剤は、水に対し、セタノール7質量%、ベヘニルアルコール1質量%、オクチルドデカノール3質量%、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム3質量%、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン1質量%、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.O.)4質量%、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット2質量%、1,3−ブチレングリコール4質量%、ラウロイルリシン0.2質量%、トレハロース0.9質量%、塩化O−(2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース0.7質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン2質量%、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノ変性シリコーン)5質量%、(加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー0.2質量%、高重合メチルポリシロキサン0.3質量%、メチルポリシロキサン0.3質量%、乳酸0.4質量%、フェノキシエタノール0.5質量%及び香料0.4質量%を配合し、クリーム状の剤型に調製した。
【0073】
[評価]
処方例1a〜1dの2剤式毛髪処理剤について、厚み感及びなめらかさの評価を以下に説明する方法で行った。
【0074】
<評価対象の毛髪>
評価対象の毛髪としては、酸化染毛剤による染毛処理履歴があり、かつ肩よりも下まで伸びた頭髪を採用した。
【0075】
<毛髪処理方法>
まず、濡れた頭髪に第1剤及び第2剤をこの順序で頭髪に塗布した後に水洗を行った。具体的には、頭髪の半分に処方例1aの2剤式毛髪処理剤の塗布を行い、残りの半分の頭髪に処方例1b〜1dのいずれかの2剤式毛髪処理剤の塗布を行った後に水洗を行った。次いで、頭髪全体をシャンプーした後に再度水洗を行い、さらに頭髪の全体にトリートメントを行った後に水洗を行ってから頭髪を乾燥させた。
【0076】
<評価方法>
厚み感及びなめらかさの評価は、上述の方法により処理した頭髪を触診するにより行った。各評価は、評価者の人数を5名とし、処方例1aの2剤式毛髪処理剤(基準)との比較として下記基準に従って行った。評価結果は、表1に示した。なお、厚み感は内部に詰まっているような厚みがある感触として、なめらかさは毛髪表面が平滑で整っている感触として評価した。
【0077】
×:基準よりも悪いとの評価が半数以上
―:基準よりも良いとの評価が半数未満、又は基準よりも悪いとの評価が半数未満
(どちらともいえないとの評価者が存在)
〇:基準よりも良いとの評価が半数以上
【0078】
[処方例2a,2b]
処方例2a,2bの多剤式毛髪処理剤は、第1剤及び第2剤からなる2剤式として調製し、上述と同様に厚み感及びなめらかさの評価を行った。ただし、比較の基準は、処方例2bの2剤式毛髪処理剤を採用した。評価結果は表1に示した。
【0079】
<第1剤の調製>
処方例2a,2bの第1剤は、下記表1に示す原料を水に配合し、クリーム状の剤型に調製した。
【0080】
<第2剤の調製>
処方例2a,2bの第2剤としては、処方例1a〜1dの第2剤と同様のものを使用した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1から明らかなように、処方例1a〜1dの2剤式毛髪処理剤は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量が多くなるほど(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する油剤の配合比が小さくなるほど)厚み感が向上した。この結果から、第1剤のヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量を増やしつつ、油剤の配合量を適切に減らせば、厚み感が向上すると考えられる。
【0083】
また、処方例1a〜1dの2剤式毛髪処理剤は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する油剤の配合比が一定値以下であると、なめらかさに優れる傾向が認められた。さらに、上記配合比が1.2である処方例2aの2剤式毛髪処理剤は、上記配合比が1.0である処方例2bの2剤式毛髪処理剤に比べて、なめらかさが優れていた。これらの結果から、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸に対する油剤の配合比を一定範囲とすることで、なめらかさが向上するものと考えられる。
【0084】
[処方例3a〜3b、4a〜4b、5a〜5d]
処方例3a〜3b、4a〜4b、5a〜5dの多剤式毛髪処理剤は、第1剤及び第2剤からなる2剤式として調製し、上述と同様に厚み感及びなめらかさの評価を行った。ただし、比較の基準は、処方例3a〜3bでは処方例3aの2剤式毛髪処理剤を採用し、処方例4a〜4bでは処方例4aの2剤式毛髪処理剤を採用し、処方例5a〜5dでは処方例5b〜5dを採用(処方例5b〜5dのそれぞれと処方例5aを比較)した。評価結果は表2に示した。
【0085】
<第1剤の調製>
処方例3a〜3b、4a〜4b、5a〜5dの第1剤は、下記表2に示す原料を水に配合し、クリーム状の剤型に調製した。
【0086】
<第2剤の調製>
処方例3a〜3b、4a〜4b、5a〜5dの第2剤としては、処方例1a〜1dの第2剤と同様のものを使用した。
【0087】
【表2】
【0088】
表2から明らかなように、第1剤に粉体としてカオリンを配合した処方例3bの2剤式毛髪処理剤は、第1剤に粉体(カオリン)を配合しなかった処方例3aの2剤式毛髪処理剤に比べて、厚み感が向上していた。また、第1剤にカオリンを配合した処方例4bの2剤式毛髪処理剤は、第1剤に粉体(カオリン)を配合しなかった処方例4aの2剤式毛髪処理剤に比べて、厚み感が向上していた。これらの結果から、第1剤に粉体としてカオリンを配合することで、厚み感が向上するものと考えられる。
【0089】
また、第1剤に粉体としてカオリンを配合した処方例5aの2剤式毛髪処理剤は、第1剤にカオリン以外の粉体を配合した処方例5b〜5dの2剤式毛髪処理剤に比べて、厚み感が向上した。この結果から、第1剤に粉体としてカオリンを配合することが、厚み感を向上させるのに有効であると考えられる。