(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-86222(P2015-86222A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】安定化された2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸含有水性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/196 20060101AFI20150410BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20150410BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20150410BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20150410BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20150410BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20150410BHJP
【FI】
A61K31/196
A61P27/02
A61P29/00
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-194608(P2014-194608)
(22)【出願日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-199442(P2013-199442)
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智之
(72)【発明者】
【氏名】山口 真生
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB17
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB26
4C076CC05
4C076CC10
4C076DD09Q
4C076DD19Q
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD49
4C076FF36
4C076FF65
4C076GG45
4C206AA10
4C206FA44
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA76
4C206MA78
4C206MA79
4C206MA86
4C206NA03
4C206ZA33
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の安定性を向上させる。
【解決手段】2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水性組成物であって、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量を一定の範囲に制限する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水性組成物であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対するベンザルコニウム臭化物の含有量A(質量部)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量B(質量部)が、
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
の範囲内である、水性組成物。
【請求項2】
ベンザルコニウム臭化物の含有量Aとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量Bが、
0<A<2.4のとき、0<B≦50
2.4≦A<5のとき、5<B≦50
の範囲内である、請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
ベンザルコニウム臭化物の含有量Aとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量Bが、
0.5≦A<2.4のとき、5≦B≦30
2.4≦A≦3のとき、5<B≦30
の範囲内である、請求項1記載の水性組成物。
【請求項4】
ベンザルコニウム臭化物の含有量Aとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量Bが、
0.8≦A≦2、及び5≦B≦20
の範囲内である、請求項1記載の水性組成物。
【請求項5】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水性組成物であって、ベンザルコニウム臭化物の濃度X(w/v%)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Y(w/v%)が、
0<X<0.0024のとき、0<Y≦0.1
0.0024≦X<0.005のとき、0.005<Y≦0.1
の範囲内である、水性組成物。
【請求項6】
ベンザルコニウム臭化物の濃度Xとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Yが、
0<X<0.0024のとき、0<Y≦0.05
0.0024≦X<0.005のとき、0.005<Y≦0.05
の範囲内である、請求項5記載の水性組成物。
【請求項7】
ベンザルコニウム臭化物の濃度Xとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Yが、
0.0005≦X<0.0024のとき、0.005≦Y≦0.03
0.0024≦X≦0.003のとき、0.005<Y≦0.03
の範囲内である、請求項5記載の水性組成物。
【請求項8】
ベンザルコニウム臭化物の濃度Xとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Yが、
0.0008≦X≦0.002、及び0.005≦Y≦0.02
の範囲内である、請求項5記載の水性組成物。
【請求項9】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリソルベート80である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項10】
水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の濃度が、0.01〜1.0%(w/v)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項11】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2水和物を1.0%(w/v)含有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項12】
0.5〜5%(w/v)のホウ酸及び/又はホウ砂を更に含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項13】
0.005〜0.2%(w/v)のエデト酸ナトリウム水和物を更に含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項14】
0.01〜3.0%(w/v)の塩化ナトリウムを更に含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項15】
水性組成物のpHが、7.0より大きく9.5以下である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項16】
水性組成物が、注射剤、輸液、点鼻剤、点耳剤又は点眼剤である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項17】
水性組成物が、眼科用注射剤である、請求項16記載の水性組成物。
【請求項18】
水性組成物が、点眼剤である、請求項16記載の水性組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項記載の水性組成物の製造方法であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸若しくはその塩又はそれらの水和物、並びにベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを水性溶媒に溶解させることを特徴とする製造方法。
【請求項20】
水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を安定化する方法であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対して、0〜5質量部のベンザルコニウム臭化物(含有量A(質量部))と、以下の範囲内の含有量B(質量部)で示されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを前記水性組成物中に配合する方法。
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を含有する水性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸は、下記式(1):
【化1】
で示される化合物である。2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の一般名はブロムフェナクであり、非ステロイド性抗炎症剤として知られ、眼科領域においては点眼液として外眼部及び前眼部の炎症治療に用いられている。
【0003】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸は、水溶液中での安定性を欠き、保存中に赤色の不溶性異物が発生することが知られている。このため、特許文献1では、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸を含む点眼剤において、水溶性高分子(ポリビニルピロリドン等)及び亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム等)を配合することにより、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の安定化が図られている。
【0004】
特許文献2には、酸性薬剤の眼科用組成物において抗菌性高分子4級アンモニウム化合物及びホウ酸を組み合わせて使用すると貯蔵安定な組成物が提供されることが報告され、酸性薬剤の例としてブロムフェナクが挙げられている。
【0005】
特許文献3には、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸含有水性液剤において、アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマー又はポリエチレングリコール脂肪酸エステルを添加することにより2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の安定化が図られることが報告されている。
【0006】
特許文献4には、低濃度の塩化ベンザルコニウムを含有する、保存効力を有し、かつ安定なブロムフェナク水性液剤組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献4では、保存効力、すなわち、水性液剤組成物に混入する細菌の増殖を抑制する効力という観点から有用性を示しているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4910225号明細書
【特許文献2】国際公開WO96/14829号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0239895号明細書
【特許文献4】国際公開WO2012/99142号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸を含有する水性組成物において、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを添加し、そしてこれらの含有量を一定の範囲に制限することによって2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の水溶液中における保存安定性を向上させることは、現在まで、何人もなし得なかった。
本発明の課題は、水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の安定性を向上させることにより、長期間の保存においても充分に安定な2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸を含有する水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を含有する水性組成物における2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩の安定性改善のため鋭意研究を行った結果、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対するベンザルコニウム臭化物の含有量A(質量部)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量B(質量部)が、
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
の範囲内である場合に、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩の安定性が改善し、長期保存下でも高い残存率を維持し、なおかつ、赤色の不溶性異物が発生しないことを見出し、本発明を完成させた。
本発明の水性組成物は、長時間、澄明、黄色、沈殿不含有の状態を維持し、防腐効力にも優れるものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水性組成物であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対するベンザルコニウム臭化物の含有量A(質量部)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量B(質量部)が、
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
の範囲内である、水性組成物。
(2)ベンザルコニウム臭化物の含有量Aとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量Bが、
0<A<2.4のとき、0<B≦50
2.4≦A<5のとき、5<B≦50
の範囲内である、上記(1)記載の水性組成物。
(3)ベンザルコニウム臭化物の含有量Aとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量Bが、
0.5≦A<2.4のとき、5≦B≦30
2.4≦A≦3のとき、5<B≦30
の範囲内である、上記(1)記載の水性組成物。
(4)ベンザルコニウム臭化物の含有量Aとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量Bが、
0.8≦A≦2、及び5≦B≦20
の範囲内である、上記(1)記載の水性組成物。
(5)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水性組成物であって、ベンザルコニウム臭化物の濃度X(w/v%)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Y(w/v%)が、
0<X<0.0024のとき、0<Y≦0.1
0.0024≦X<0.005のとき、0.005<Y≦0.1
の範囲内である、水性組成物。
(6)ベンザルコニウム臭化物の濃度Xとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Yが、
0<X<0.0024のとき、0<Y≦0.05
0.0024≦X<0.005のとき、0.005<Y≦0.05
の範囲内である、上記(5)記載の水性組成物。
(7)ベンザルコニウム臭化物の濃度Xとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Yが、
0.0005≦X<0.0024のとき、0.005≦Y≦0.03
0.0024≦X≦0.003のとき、0.005<Y≦0.03
の範囲内である、上記(5)記載の水性組成物。
(8)ベンザルコニウム臭化物の濃度Xとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Yが、
0.0008≦X≦0.002、及び0.005≦Y≦0.02
の範囲内である、上記(5)記載の水性組成物。
(9)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリソルベート80である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の水性組成物。
(10)水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の濃度が、0.01〜1.0%(w/v)である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の水性組成物。
(11)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2水和物を1.0%(w/v)含有する上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の水性組成物。
(12)0.5〜5%(w/v)のホウ酸及び/又はホウ砂を更に含有する、上記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の水性組成物。
(13)0.005〜0.2%(w/v)のエデト酸ナトリウム水和物を更に含有する、上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の水性組成物。
(14)0.01〜3.0%(w/v)の塩化ナトリウムを更に含有する、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の水性組成物。
(15)水性組成物のpHが、7.0より大きく9.5以下である、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の水性組成物。
(16)水性組成物が、注射剤、輸液、点鼻剤、点耳剤又は点眼剤である、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の水性組成物。
(17)水性組成物が、眼科用注射剤である、上記(16)記載の水性組成物。
(18)水性組成物が、点眼剤である、上記(16)記載の水性組成物。
(19)上記(1)〜(18)のいずれかに記載の水性組成物の製造方法であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸若しくはその塩又はそれらの水和物、並びにベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを水性溶媒に溶解させることを特徴とする製造方法。
本発明は、更に以下にも関する。
(20)水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を安定化する方法であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対して、0〜5質量部のベンザルコニウム臭化物(含有量A(質量部))と、以下の範囲内の含有量B(質量部)で示されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを前記水性組成物中に配合する方法にも関する。
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
なお、前記(1)から(20)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水性組成物中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩は長期間にわたり安定化されるので、例えば室温で2年以上安定に保存できる、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を含有する水性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本明細書において、「水性溶媒」とは、水又は水を含有する溶媒(例えば、アルコール等の水溶性溶媒と水の混合物等)を意味する。水性溶媒は、水又は水を含有する溶媒であれば特に制限されないが、好ましくは精製水である。
【0014】
好ましい実施形態において、本発明の水性組成物は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を含有する水性組成物であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対して、0質量部より大きく5質量部未満のベンザルコニウム臭化物(含有量A(質量部))と、以下の範囲内の含有量B(質量部)で示されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、を含む水性組成物である。
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
そして本水性組成物においては、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸若しくはその塩は、水性溶媒に均一に溶解した形態で存在する。
【0015】
本発明の水性組成物において、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸は、非解離の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸自体、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の塩、双性イオン体(カルボキシ基がカルボキシラートイオンを形成し、そしてアミノ基がアンモニウムイオンを形成する)、陽性イオン体(アミノ基のみがアンモニウムイオンを形成する)、陰性イオン体(カルボキシ基のみがカルボキシラートイオンを形成する)として、溶解した形態で存在することができる。
【0016】
本発明の水性組成物において、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の塩は、医薬として許容される塩であれば特に制限されず、塩としては無機酸との塩、有機酸との塩、四級アンモニウム塩、ハロゲンイオンとの塩、アルカリ金属との塩、アルカリ土類金属との塩、金属塩、有機アミンとの塩等が挙げられる。無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩としては、酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、アラニン、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、没食子酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等との塩が挙げられる。四級アンモニウム塩としては、臭化メチル、ヨウ化メチル等との塩が挙げられる。ハロゲンイオンとの塩としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等との塩が挙げられ、アルカリ金属との塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等との塩が挙げられ、アルカリ土類金属との塩としては、カルシウム、マグネシウム等との塩が挙げられ、金属塩としては、鉄、亜鉛等との塩が挙げられる。有機アミンとの塩としては、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミン等との塩が挙げられる。本発明の水性組成物においては、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の好ましい塩は、ナトリウム塩である。
【0017】
本発明の水性組成物において、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の濃度は、所望の薬効を奏するのに充分な量であれば特に制限されないが、0.01〜1.0%(w/v)が好ましく、0.03〜0.5%(w/v)がより好ましく、0.05〜0.2%(w/v)がさらに好ましく、0.08〜0.1%(w/v)が最も好ましい。なお、これらの濃度は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の塩又はそれらの水和物を用いる場合、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸に換算した質量を用いて計算する。
【0018】
本発明の水性組成物において、ベンザルコニウム臭化物(以下、BABrともいう)は、[C
6H
5CH
2N(CH
3)
2R]Brで表される化学構造を有し、そのRがC
8H
17〜C
18H
37であるもの又はそれらの混合物である。好ましくは、RがC
12H
25であるN−ベンジル−N,N−ジメチルラウリルアンモニウム臭化物(以下、BABr C12ともいう)、RがC
14H
29であるN−ベンジル−N,N−ジメチルミリスチルアンモニウム臭化物(以下、BABr C14ともいう)若しくはRがC
16H
33であるN−ベンジル−N−セチルジメチルアンモニウム臭化物(以下、BABr C16ともいう)又はこれらの混合物が挙げられる。本発明において、好ましいベンザルコニウム臭化物は、BABr C12である。
【0019】
本発明の水性組成物において、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、特に制限されず、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしてはポリソルベート80、ポリソルベート65、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられ、ポリソルベート80が好ましい。
【0020】
本発明の水性組成物において、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対するベンザルコニウム臭化物の含有量A(質量部)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量B(質量部)が、
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
の範囲内であり、
0<A<2.4のとき、0<B≦50
2.4≦A<5のとき、5<B≦50
の範囲内である場合が好ましく、
0.5≦A<2.4のとき、5≦B≦30
2.4≦A≦3のとき、5<B≦30
の範囲内である場合がより好ましく、
0.8≦A≦2、及び5≦B≦20
の範囲内である場合が最も好ましい。
【0021】
本発明の水性組成物中のベンザルコニウム臭化物の含有量の上限は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対して5質量部未満が好ましく、4質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましく、2.5質量部が特に好ましく、2質量部が最も好ましい。一方、含有量の下限は、0質量部より大きいが好ましく、0.2質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましく、0.8質量部が最も好ましい。ベンザルコニウム臭化物の含有量の範囲としては、0質量部より大きく5質量部未満が好ましく、0.2質量部以上5質量部未満がより好ましく、0.2質量部以上4質量部未満がもっと好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がさらに好ましく、0.8質量部以上2.5質量部以下が特に好ましく、0.8質量部2質量部以下が最も好ましい。
【0022】
本発明の水性組成物中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量の上限は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対して100質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、40質量部がさらに好ましく、30質量部がもっと好ましく、25質量部が特に好ましく、20が最も好ましい。一方、含有量の下限は、0質量部より大きいが好ましく、2質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましく、5質量部が最も好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量の範囲としては、0質量部より大きく100質量部以下が好ましく、0質量部より大きく50質量部以下がより好ましく、2質量部以上40質量部以下がさらに好ましく、5質量部以上30質量部以下がもっと好ましく、5質量部以上25質量部以下が特に好ましく、9以上20質量部以下が最も好ましい。
【0023】
本発明の水性組成物中のベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度は、ベンザルコニウム臭化物の濃度X(w/v%)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度Y(w/v%)が、
0<X<0.0024のとき、0<Y≦0.1
0.0024≦X<0.005のとき、0.005<Y≦0.1
の範囲内である場合が好ましく、
0<X<0.0024のとき、0<Y≦0.05
0.0024≦X<0.005のとき、0.005<Y≦0.05
の範囲内である場合がより好ましく、
0.0005≦X<0.0024のとき、0.005≦Y≦0.03
0.0024≦X≦0.003のとき、0.005<Y≦0.03
の範囲内である場合がさらに好ましく、
0.0008≦X≦0.002、及び0.005≦Y≦0.02
の範囲内である場合が最も好ましい。
【0024】
本発明の水性組成物中のベンザルコニウム臭化物の濃度の上限は、0.005%(w/v)未満が好ましく、0.004%(w/v)がより好ましく、0.003%(w/v)がさらに好ましく、0.025%(w/v)が特に好ましく、0.002%(w/v)が最も好ましい。一方、濃度の下限は、0%(w/v)より大きいが好ましく、0.0002%(w/v)がより好ましく、0.0005%(w/v)がさらに好ましく、0.0008%(w/v)が最も好ましい。濃度の範囲としては、0%(w/v)より大きく0.005%(w/v)未満が好ましく、0.0002%(w/v)以上0.005%(w/v)未満がより好ましく、0.0002%(w/v)以上0.004%(w/v)未満がもっと好ましく、0.0005%(w/v)以上0.003%(w/v)以下がさらに好ましく、0.0008%(w/v)以上0.0025%(w/v)以下が特に好ましく、0.0008%(w/v)以上0.002%(w/v)以下が最も好ましい。
【0025】
本発明の水性組成物中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの濃度の上限は、0.1%(w/v)が好ましく、0.05%(w/v)がより好ましく、0.04%(w/v)がさらに好ましく、0.03%(w/v)がもっと好ましく、0.025%(w/v)が特に好ましく、0.02%(w/v)が最も好ましい。一方、濃度の下限は、0%(w/v)より大きいが好ましく、0.002%(w/v)がより好ましく、0.003%(w/v)が特に好ましく、0.005%(w/v)が最も好ましい。濃度の範囲としては、0%(w/v)より大きく0.1%(w/v)以下が好ましく、0%(w/v)以上0.05%(w/v)以下がより好ましく、0.002%(w/v)以上0.04%(w/v)以下がさらに好ましく、0.005%(w/v)以上0.03%(w/v)以下がもっと好ましく、0.005%(w/v)以上0.025%(w/v)以下が特に好ましく、0.009%(w/v)以上0.02%(w/v)以下が最も好ましい。
【0026】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を含有する水性組成物であって、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのいずれも含まない水性組成物も本発明の範囲に含まれる。
【0027】
本発明の水性組成物には、このほか必要に応じて緩衝剤、等張化剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、可溶化剤、増粘剤等の添加剤を加えることができる。
【0028】
本発明の水性組成物には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を配合することができる。緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε−アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等を挙げることができる。本発明において、好ましい緩衝剤は、ホウ酸又はその塩であり、例えば、ホウ酸、ホウ砂である。
【0029】
本発明の水性組成物中の緩衝剤の濃度は、薬物、他の添加物及び/又は浸透圧比への影響を考慮して適宜調整することができるが、その総量としては0.01〜15%(w/v)が好ましく、0.05〜10%(w/v)がより好ましく、0.1〜6%(w/v)がさらに好ましく、0.5〜5%(w/v)が特に好ましく、2〜4%(w/v)が最も好ましい。より具体的には、ホウ酸0.85%(w/v)及びホウ砂1%(w/v)を配合する場合が好ましい。
【0030】
本発明の水性組成物には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。好ましい等張化剤は塩化ナトリウムであり、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩の安定性が保たれ、外観の変化のない組成物が得られる。
【0031】
本発明の水性組成物中の等張化剤の濃度は、薬物、他の添加物及び/又は浸透圧比への影響を考慮して適宜調整することができるが、その総量としては0.01〜3%(w/v)が好ましく、0.02〜2.5%(w/v)がより好ましく、0.03〜2%(w/v)がさらに好ましく、0.05〜1%(w/v)が特に好ましく、0.1〜0.5%(w/v)が最も好ましい。より具体的には、塩化ナトリウム0.23%(w/v)を配合する場合が好ましい。
【0032】
本発明の水性組成物には、医薬品の添加物として使用可能なpH調整剤を適量配合することができる。pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。本発明において、好ましいpH調整剤は、塩酸、水酸化ナトリウムである。
【0033】
本発明の水性組成物のpHは、7.0〜9.5が好ましく、7.5〜9.0がより好ましく、8.0〜8.6がさらに好ましく、8.2〜8.4が最も好ましい。
【0034】
本発明の水性組成物には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。安定化剤の例としては、エデト酸、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、クエン酸ナトリウム、亜硫酸塩、水溶性高分子等が挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム等が挙げられる。水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の水性組成物中の安定化剤の濃度は、薬物、他の添加物及び/又は浸透圧比への影響を考慮して適宜調整することができるが、その総量としては0.001〜5%(w/v)が好ましく、0.002〜1%(w/v)がより好ましく、0.003〜0.5%(w/v)がさらに好ましく、0.005〜0.2%(w/v)が特に好ましく、0.01〜0.1%(w/v)が最も好ましい。より具体的には、エデト酸ナトリウム水和物0.02%(w/v)を配合する場合が好ましい。
【0035】
本発明の水性組成物中の全安定化剤の濃度は、薬物、他の添加物及び/又は浸透圧比への影響を考慮して適宜調整することができる。
【0036】
本発明の水性組成物には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。
【0037】
本発明の水性組成物中の防腐剤の濃度は、薬物、他の添加物及び/又は浸透圧比への影響を考慮して適宜調整することができるが、その総量としては0.00005〜0.01%(w/v)が好ましく、0.0001〜0.005%(w/v)がより好ましく、0.0002〜0.004%(w/v)がさらに好ましく、0.0005〜0.003%(w/v)が特に好ましく、0.001〜0.002%(w/v)が最も好ましい。
【0038】
本発明の水性組成物の剤形は、医薬品として使用可能なものであれば特に制限されない。剤形としては、例えば、注射剤、輸液、点鼻剤、点耳剤、点眼剤等が挙げられる。好ましくは、眼科用注射剤、点眼剤が挙げられ、特に好ましくは点眼剤が挙げられる。
【0039】
本発明の水性組成物は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸若しくはその塩又はそれらの水和物及びベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを水性溶媒に溶解させることによって、製造することができる。
【0040】
本発明の水性組成物の調製に際しては、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸若しくはその塩のほかそれらの水和物を用いることができる。かかる水和物としては、具体的には2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・1/2水和物、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・1水和物、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2水和物等を挙げることができ、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2水和物を好ましく挙げることができる。
水性溶媒としては先に記載した溶媒を用いることができる。
よって、本発明は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩、ベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する水性組成物であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対するベンザルコニウム臭化物の含有量A(質量部)とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量B(質量部)が、
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
の範囲内である水性組成物の製造方法であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸若しくはその塩又はそれらの水和物並びにベンザルコニウム臭化物及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを水性溶媒に溶解させることを特徴とする製造方法にも関する。
【0041】
本発明は更にまた、水性組成物中の2−アミノ‐3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を安定化する方法であって、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸又はその塩を含有する水性組成物において、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸100質量部に対して、0質量部より大きく5質量部未満のベンザルコニウム臭化物(含有量A(質量部))と、以下の範囲内の含有量B(質量部)で示されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを前記水性組成物中に配合する方法にも関する。
0<A<2.4のとき、0<B≦100
2.4≦A<5のとき、5<B≦100
【0042】
以下に試験結果及び製剤例を示すが、これらは本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
1.安定性評価試験
本発明の水性組成物の安定性を検討した。
1−1.被験製剤の調製
実施例1
精製水90mLに、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2水和物(以下、本化合物ともいう)を0.1g、ホウ酸を0.85g、ホウ砂を1.0g、エデト酸ナトリウム水和物を0.02g、ポリソルベート80を0.005g、ベンザルコニウム臭化物を0.0012g、及び塩化ナトリウム0.23g加え、充分に攪拌した。1N水酸化ナトリウム水溶液及び希塩酸(10%)を加えて、pHを8.3付近とした後、精製水を適量加えて全量を100mLとした。
【0044】
実施例1の調製方法と同様の方法にて、表1及び表2に示す製剤を調製した。
【0045】
1−2.試験方法
被験製剤を60℃で1週間又は1ヵ月保存したときの、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量し、その残存率(%)を算出した。また、目視にて外観の変化を観察し、澄明、黄色、沈殿不含有のままであれば−と判定し、これらに変化が認められれば+と判定した。
【0046】
1−3.試験結果及び考察
試験結果を表1及び表2に示す。
【0049】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜20の製剤は、60℃で1週間又は1カ月間高い残存率を維持し、澄明、黄色、沈殿不含有のままであった。以上から、本発明の水性組成物である実施例1〜20の製剤が、優れた安定性を有することが確認された。
【0050】
2.製剤例
以下に本化合物を用いた代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は100mL中の含量である。
【0051】
製剤例1
本化合物 0.1g
ポリソルベート80 0.005g
ホウ酸 0.85g
ホウ砂 1.0g
エデト酸ナトリウム 0.02g
ベンザルコニウム臭化物 0.0012g
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 8.3
【0052】
製剤例2
本化合物 0.1g
ポリソルベート80 0.02g
ホウ酸 1.25g
ホウ砂 1.0g
エデト酸ナトリウム 0.02g
ベンザルコニウム臭化物 0.0016g
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 8.3
【0053】
製剤例3
本化合物 0.01g
ポリソルベート80 0.03g
エデト酸ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム臭化物 0.002g
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
pH 8.3
【0054】
なお、前記製剤例1〜3における各成分、すなわち、本化合物、ポリソルベート80、ベンザルコニウム臭化物及びその他の添加物の配合量や配合比は適宜調整することができる。