【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の室温硬化性接着剤は、架橋性シリル基を有し且つ数平均分子量が15000〜50000であり且つ分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.6以下であるポリオキシアルキレン系重合体100重量部と、pHが9.3以上の沈降性炭酸カルシウム20〜300重量部と、アミノシランカップリング剤1〜10重量部とを含有していることを特徴とする。
【0011】
[ポリオキシアルキレン系重合体]
架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、主鎖が、一般式:−(R−O)
n−(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0012】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0013】
架橋性シリル基としては、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基のように湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって縮合反応を生じる基をいう。
【0014】
架橋性シリル基としては、例えば、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメチルエトキシシリル基等のアルコキシシリル基、トリクロロシリル基等のハロゲンが結合したシリル基が挙げられ、ジメトキシシリル基が好ましい。
【0015】
ポリオキシアルキレン系重合体は、架橋性シリル基の他に、ウレタン結合をさらに有していてもよい。ウレタン結合は、ポリオキシアルキレン系重合体に極性を付与することができ、これにより室温硬化性接着剤を硬化させてなる接着剤層に適度な接着力を付与することができる。
【0016】
ポリオキシアルキレン系重合体は、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介して架橋性シリル基を有していてもよいし、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介することなく架橋性シリル基を有していてもよい。
【0017】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介して架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーと、架橋性シリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0018】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、及びポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレングリコールなどが挙げられる。
【0019】
架橋性シリル基及びイソシアネート基を有する化合物としては、1−イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、及び1−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0020】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介して架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を合成するには、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、架橋性シリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを混合して混合物を得、この混合物を撹拌して上記プレポリマーのヒドロキシ基と、上記化合物のイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を形成させることにより行うことができる。また、上記混合物を加熱しながら撹拌することにより、反応を促進させることができる。
【0021】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介することなく架橋性シリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0022】
ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量は、15000〜50000であり、20000〜40000が好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が大き過ぎると、得られる室温硬化性接着剤の粘度が高くなり、上記室温硬化性接着剤の塗工性などが低下する虞れがある。また、ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が小さ過ぎると、室温硬化性接着剤を硬化させてなる接着剤層が脆くなり、接着剤層の機械的強度、接着力やゴム弾性が低下する虞れがある。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.6以下であり、1.3以下が好ましい。分子量分布が1.6以下であるポリオキシアルキレン系重合体によれば、室温硬化性接着剤の塗工性及び接着強さを向上させることができると共に、床仕上げ材を床下地材から床下地材を損傷させることなく容易に剥離することができる。
【0024】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体6〜7mgを採取し、採取したポリオキシアルキレン系重合体を試験管に供給した上で、試験管に0.05重量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリオキシアルキレン系重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0025】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリオキシアルキレン系重合体をBHTを含むo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0027】
ポリオキシアルキレン系重合体の25℃における粘度は、5000〜200000mPa・sが好ましく、5000〜100000mPa・sがより好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の粘度が高過ぎると、得られる室温硬化性接着剤の粘度が高くなり、上記室温硬化性接着剤の塗工性などが低下する虞れがある。また、ポリオキシアルキレン系重合体の粘度が低過ぎると、室温硬化性接着剤を硬化させてなる接着剤層が脆くなり、接着剤層の機械的強度、接着力やゴム弾性が低下する虞れがある。
【0028】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体の25℃における粘度は、JIS K1557に準拠し、25℃にて24時間以上放置した後、BM型粘度計を用いてローターNO.4、回転数12rpmの条件にて測定することができる。
【0029】
架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、主鎖骨格の末端にジメトキシシリル基を有し且つウレタン結合を有していないポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、株式会社カネカ 商品名「サイリルSAX710」、「サイリルSAX720」、「サイリルSAX725」、「サイリルSAX770」、及び旭硝子社製 商品名「ESS4530」などが挙げられる。
【0030】
[沈降性炭酸カルシウム]
本発明の室温硬化性接着剤は、上述したポリオキシアルキレン系重合体と、pHが9.3以上の沈降性炭酸カルシウムとを組み合わせて用いることにより、適度な接着力を有する接着剤層を形成することができる。このような接着剤層によれば、床下地材と床仕上げ材とを接着一体化できる一方で、上記接着剤層を用いてなる床構造において床仕上げ材を改修する時には床下地材を損傷させることなく床仕上げ材を床下地材から容易に剥離することができる。さらに、本発明の室温硬化性接着剤では、上述したポリオキシアルキレン系重合体とpHが9.3以上の沈降性炭酸カルシウムとを組み合わせて用いることにより、上記接着剤層が柔軟になり過ぎないようにして、上記接着剤層に適度な機械的強度及び適度なゴム弾性を付与することも可能となる。沈降性炭酸カルシウムは、例えば、石灰石を原料として用い、化学的反応を経て製造することができる。
【0031】
沈降性炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒径は、接着剤を用いてなる床構造において床仕上げ材を改修する時に床下地材を損傷させることなく床仕上げ材を床下地材から容易に剥離することができるので、0.01〜3μmが好ましく、0.02〜0.1μmが好ましい。また、沈降性炭酸カルシウムは、立方体状を有することが好ましい。なお、沈降性炭酸カルシウムの一次粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡による画像解析により測定することができる。透過型電子顕微鏡による画像解析に用いられるソフトウエアとしては、例えば、Mountech社製から商品名「Mac−VIEW」にて市販されている画像解析式粒度分布測定ソフトを用いることができる。
【0032】
沈降性炭酸カルシウムの表面は、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩によって表面処理されていることが好ましい。表面処理された沈降性炭酸カルシウムは、室温硬化性組成物にチキソトロピー性を付与することができ、室温硬化性組成物の取扱性を向上させることができると共に、沈降性炭酸カルシウム同士が凝集することを防止することができる。
【0033】
上記脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグ ノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン 酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメ クエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸 が好ましい。
【0034】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリルなどが挙げられる。
【0035】
上記脂肪酸金属塩としては、例えば、上記脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられ、ラウリン酸のナトリウム塩、ミリスチン酸のナトリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩、ステアリン酸のナトリウム塩又はオレイン酸のナトリウム塩が好ましい。
【0036】
また、沈降性炭酸カルシウムは、室温硬化性組成物を硬化して得られる接着剤層のゴム弾性に優れているので、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水溶液中で処理してもよい。
【0037】
沈降性炭酸カルシウムのpHは9.3以上であり、9.5以上が好ましく、10.0以上がより好ましい。沈降性炭酸カルシウムのpHが9.3以上であることによって、室温硬化性組成物を硬化させて得られる接着剤層は、低モジュラスであるにもかかわらず優れたゴム弾性を有する。
【0038】
pHが9.3以上である沈降性炭酸カルシウムは、例えば、丸尾カルシウム株式会社から製品名「カルファイン200M」(pH=9.5)、白石工業社から製品名「Viscolite EL−20」(pH=10.7)にて市販されている。
【0039】
沈降性炭酸カルシウムのpHは以下の要領で測定される。沈降性炭酸カルシウム5gを三角フラスコに供給した後、三角フラスコに純水100mLを加えて三角フラスコの口を閉止した上で三角フラスコ内の沈降性炭酸カルシウム及び純水の混合液を10秒間に亘って均一となるように攪拌する。三角フラスコ内の混合液の攪拌を終了後、三角フラスコ内の混合液を30分間に亘って静置してスラリーを作製する。三角フラスコ内のスラリーを軽く攪拌した後、スラリーをビーカーに移しかえて、JIS Z 8802に準拠したガラス電極pH計を用いて23℃、相対湿度50%の雰囲気下にてスラリーのpHを測定し、このpHを沈降性炭酸カルシウムのpHとする。
【0040】
室温硬化性接着剤中における沈降性炭酸カルシウムの含有量は、少ないと、物性の補強が不十分となり、多いと、粘性が高くなり作業性が低下するので、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して20〜300重量部であり、30〜250重量部が好ましく、50〜150重量部がより好ましい。
【0041】
[アミノシランカップリング剤]
本発明の室温硬化性接着剤は、アミノシランカップリング剤を含有している。アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。
【0042】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0043】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0044】
室温硬化性接着剤中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、室温硬化性接着剤の硬化性が向上して接着剤層の脆性が向上し、又は、室温硬化性接着剤の接着性が向上することから、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して1〜10重量部に限定され、1〜5重量部が好ましい。
【0045】
[シラノール縮合触媒]
本発明の室温硬化性接着剤は、シラノール縮合触媒を含有していてもよい。シラノール縮合触媒とは、ポリオキシアルキレン系重合体が含有する架橋性シリル基が加水分解するなどして形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si−OH)を意味する。
【0046】
シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物;1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5−エンなどのシクロアミジン系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエートなどが挙げられる。また、他の酸性触媒や塩基性触媒もシラノール縮合触媒として用いることができる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0047】
なかでも、シラノール縮合触媒としては、有機錫系化合物及びシクロアミジン系化合物が好ましく挙げられ、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンがより好ましく挙げられる。
【0048】
室温硬化性接着剤中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、室温硬化性接着剤の硬化速度を調整し、室温硬化性接着剤の貯蔵安定性及び取扱性が向上することから、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0049】
[脱水剤]
本発明の室温硬化性接着剤は、脱水剤をさらに含んでいることが好ましい。脱水剤によれば、室温硬化性接着剤を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって室温硬化性接着剤が硬化することを抑制することができる。
【0050】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0051】
室温硬化性接着剤中における脱水剤の含有量は、室温硬化性接着剤の貯蔵安定性及び取扱性が向上することから、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましく、1〜15重量部がより好ましく、1〜5重量部が特に好ましい。
【0052】
[他の添加剤]
本発明の室温硬化性接着剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料及び沈降防止剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。本発明の室温硬化性接着剤において、溶剤は含有していないことが好ましい。
【0053】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。室温硬化性接着剤中における酸化防止剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましい。
【0054】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。室温硬化性接着剤中における紫外線吸収剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0055】
本発明の室温硬化性組成物の23℃における粘度は、低すぎると、室温硬化性組成物の垂れがひどくなり、作業性が低下する虞れがあり、高すぎると、室温硬化性組成物が塗布できなくなる虞れがあるので、2万〜50万mPa・sが好ましく、5万〜15万mPa・sがより好ましい。なお、室温硬化性組成物の23℃における粘度は、JIS K6833に準拠してB型粘度計を用いて回転数10rpmの条件にて測定された値をいう。
【0056】
室温硬化性組成物の最大伸びは、低すぎると、床下地材から床仕上げ材を容易に剥離することができない虞れがあり、高すぎると、室温硬化性組成物の接着強さが低下する虞れがあるので、500〜1200%が好ましい。
【0057】
室温硬化性組成物の最大強度は、低すぎると、室温硬化性組成物の接着強さが低下する虞れがあり、高すぎると、床下地材から床仕上げ材を容易に剥離することができない虞れがあるので、1.5〜2.5N/mm
2が好ましい。
【0058】
なお、室温硬化性組成物の最大伸び及び最大強度は下記の要領で測定された値をいう。室温硬化性組成物を23℃、相対湿度50%にて2週間に亘って放置することによって一辺が10cmの正方形状で且つ厚み3mmの皮膜を作製する。この皮膜からJIS K6251に準拠した3号ダンベル試験片を作製し、この3号ダンベル試験片を用いてJIS K6251に準拠して500mm/分の引張速度にて最大伸び及び最大強度を測定する。
【0059】
本発明の室温硬化性接着剤の製造は、ポリオキシアルキレン系重合体、無機充填剤及びアミノシランカップリング剤、及び必要に応じて他の添加剤をそれぞれ所定の重量比となるように混合する方法により行うことができる。混合は減圧下で行うことが好ましい。
【0060】
本発明の室温硬化性接着剤は、例えば、床構造の構築に用いられる。例えば、床構造は、床基盤上に敷設された床下地材上に、接着剤層を介して床仕上げ材が接着一体化されることによって構築される。床構造は、床基盤と、上記床基盤上に敷設されている床下地材と、上記床下地材上に形成されており且つ上記床下地材と接着一体化している接着剤層と、上記接着剤層上に敷設されており且つ上記接着剤層と接着一体化している床仕上げ材とを含んでいる。
【0061】
本発明の床構造は、架橋性シリル基を有し且つ数平均分子量が25000〜50000であるポリオキシアルキレン系重合体、無機充填剤及びアミノシランカップリング剤を含有する室温硬化性接着剤を硬化させてなる接着剤層を用いている。そして、床仕上げ材及び床下地材はそれぞれ接着剤層と接着一体化している。このように接着剤層を使用することにより、床仕上げ材を床下地材上に強固に接着一体化することができる一方、床仕上げ材の改修時には床仕上げ材を床下地材から容易に剥離することが可能な床構造を提供することができる。
【0062】
本発明の室温硬化性接着剤が用いられた床構造の模式断面図の一例を
図1に示す。
図1に示す床構造は、床基盤1上にスペーサー2を介して敷設された床下地材30と、床下地材30上に形成されており且つ床下地材30と接着一体化している接着剤層10と、接着剤層10上に敷設されており且つ接着剤層10と接着一体化している床仕上げ材20とを有する。
【0063】
図1の床構造では、床基盤1と床下地材30とを非接触状態に保つために、床基盤1上にスペーサー2を介して床下地材30が敷設されている。しかしながら、床基盤1上にスペーサー2を介さずに床下地材30が直接敷設されていてもよい。
【0064】
このような床構造の構築は、例えば、次の通りにして行われる。まず、床基盤1上に、必要に応じてスペーサー2を介して、床下地材30を敷設する。次に、床下地材30の上に室温硬化性接着剤を塗工した後、塗工した室温硬化性接着剤上に床仕上げ材20を敷設することにより、積層体を得る。その後、室温硬化性接着剤を硬化させることにより、接着剤層10が形成されると共に、この接着剤層10によって床下地材30と床仕上げ材20とを接着一体化させることにより、床構造の構築が行われる。室温硬化性接着剤の硬化は、特に制限されないが、例えば、積層体を放置することにより行われる。
【0065】
床基盤としては、特に制限されず、土間コンクリートやコンクリート製床スラブなどが挙げられる。
【0066】
床仕上げ材を構成する部材としては、例えば、合板、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF:Medium Density Fiberboard)、タイル、ポリ塩化ビニルシート、及び石材などが挙げられる。なお、床構造では、複数の床仕上げ材が相互に隙間なく並べられる。
【0067】
床下地材を構成する部材としては、例えば、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。なかでも、合板、パーチクルボードなどの木質部材からなる床下地材を使用することが好ましい。従来の接着剤によって木質部材からなる床下地材に床仕上げ材を接着一体化した場合、床仕上げ材を床下地材から剥離することが困難となり、床仕上げ材を床下地材から無理に剥離しようとすると床下地材の一部が床仕上げ材と共に剥離して床下地材を損傷させる問題が特に生じやすい。しかしながら、本発明の室温硬化性接着剤によれば、これを用いて床下地材と床仕上げ材とを接着一体化しても、床仕上げ材の改修時に床下地材を損傷させずに床仕上げ材を床下地材から容易に剥離することが可能なことから、本発明の室温硬化性接着剤は木質部材からなる床下地材と床仕上げ材とを接着させるために好ましく用いられる。
【0068】
また、床下地材としては、
図2に示すように、制振シート42と下地基材43とが接着剤層41により接着一体化されてなる制振性複合体40を用いることもできる。なお、
図2に示す、床構造は、
図1に示す床構造において床下地材30に代えて制振性複合体40を用いた以外は、同様の構成を有する。
【0069】
制振シート42としては、例えば、高比重物質が合成樹脂やアスファルトに混入されてなるシートなどが挙げられる。高比重物質としては、例えば、硫酸バリウム等の無機質粉末、並びに鉛、鉄等の金属粉末などが挙げられる。また、合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリウレタン及び塩化ビニルなどが挙げられる。下地基材を構成する部材としては、例えば、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。また、接着剤層41としては、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤など従来公知の接着剤を硬化させてなるものなどが用いられる。