【解決手段】洪水や津波の浸入を防ぐ防水防護柵に用いられる樹脂製パネルユニット連結体30であって、ウェブ31と、ウェブ31の上下端に形成されたフランジ32、33とを有する断面略コ字状のパネルユニット3の開口部を両側から互いに対向させるとともに、当該両側又は何れか一方側がフランジ32、33を介して2段以上に亘り連結され、パネルユニット3は、各両側における最上端のフランジ32d、32a同士及び最下端のフランジ33c、33e同士が互いに接合され、連結されたフランジ33、32は他のフランジ33、32と離間させてなることを特徴とする。
上記支柱は、支柱ウェブと、上記支柱ウェブの端部に形成された支柱フランジとを有するH形鋼又は溝形鋼であり、当該H形鋼又は溝形鋼の支柱フランジ間に上記樹脂製パネルユニット連結体の端部が挿入され、更に当該支柱フランジと上記樹脂製パネルユニット連結体との間に第2止水材が介装されていること
を特徴とする請求項10記載の防水パネル柵。
請求項5又は6記載の樹脂製パネルユニット連結体が取り付けられ、上記補強部材は、上記第2止水材が上記パネルユニット連結体の外側面と当接している位置に対応して設けられていること
を特徴とする請求項11記載の防水パネル柵。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
なお、防護柵自体に透光性を施すことにより、確かに視認性が向上し、津波や洪水の接近を早期に確認して避難することも可能となり、防護柵による日照が遮られる問題や、閉塞感、圧迫感の問題についても改善を図ることが可能となる。防護柵に透光性を施す場合には、一般にはその材質について透光性を有するアクリル樹脂やポリカーボネート等の樹脂で構成することが考えられる。しかしながら、このような樹脂は、金属と比較して強度が弱く、洪水や津波により板状体に伝わる外力が大きい場合には、パネルの撓み量が大きくなって脆性破壊に至ってしまう。
【0009】
このため、防護柵や堤防を樹脂で構成する場合には、特に洪水や津波により板状体に伝わる外力が大きくなる場合であっても、大きく撓んで破壊することなく、耐久性を永きに亘って発揮させる必要があった。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、透光性を確保しつつ、洪水や津波に対する耐久性を向上させることが可能な防水防護柵、及びこれに用いられる樹脂製パネルユニット連結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した課題を解決するために、ウェブと、その上下端に形成されたフランジとを有する断面略コ字状のパネルユニットの開口部を両側から互いに対向させ、当該両側又は何れか一方側をそのフランジを介して2段以上に亘り連結させ、パネルユニットにおける各両側における最上端のフランジ同士及び最下端のフランジ同士を互いに接合させ、連結されたフランジは他のフランジと離間させた樹脂製パネルユニット連結体を発明した。
【0012】
請求項1記載の樹脂製パネルユニット連結体は、洪水や津波の浸入を防ぐ防水防護柵に用いられる樹脂製パネルユニット連結体であって、ウェブと、上記ウェブの上下端に形成されたフランジとを有する断面略コ字状のパネルユニットの開口部を両側から互いに対向させるとともに、当該両側又は何れか一方側が上記フランジを介して2段以上に亘り連結される連結フランジ部と備え、上記パネルユニットは、上記各両側における最上端のフランジ同士及び最下端のフランジ同士が互いに接合され、上記連結フランジ部は他のフランジと離間させてなることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項1記載の発明において、上記連結されたフランジは、対向するパネルユニットの開口部のウェブに接触していることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項1又は2記載の発明において、上記最上端のフランジ同士、上記最下端のフランジ同士、上記連結されたフランジの何れか1以上は、パネル延長方向に向けて補剛板が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、上記パネルユニットは、互いに対向させた開口部の内側に補強部材を内装させていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項4記載の発明において、上記補強部材は、互いに対向させた開口部の内側に内接させた板状体であることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項4記載の発明において、上記補強部材は、上記連結されたフランジに対応した位置において板幅が縮径された縮幅部を有する一枚の板状体であり、上記連結されたフランジは、上記補強部材の配設位置に対応した位置に上記縮幅部の幅以上の深さからなる切欠が設けられ、上記切欠には、上記補強部材が上記縮幅部を介して嵌合されることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項1〜5のうち何れか1項記載の発明において、上記連結させるフランジ間には、第1止水材が介装されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項1〜6のうち何れか1項記載の発明において、上記連結させるフランジは、ボルト接合され、又は接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の樹脂製パネルユニット連結体は、請求項1〜8のうち何れか1項記載の発明において、上記パネルユニットは、透光性樹脂からなることを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の防水パネル柵は、複数の支柱間に請求項1〜9のうち何れか1項記載の樹脂製パネルユニット連結体が取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の防水パネル柵は、請求項10記載の発明において、上記支柱は、支柱ウェブと、上記支柱ウェブの端部に形成された支柱フランジとを有するH形鋼又は溝形鋼であり、当該H形鋼又は溝形鋼の支柱フランジ間に上記樹脂製パネルユニット連結体の端部が挿入され、更に当該支柱フランジと上記樹脂製パネルユニット連結体との間に第2止水材が介装されていることを特徴とする。
【0023】
請求項12記載の防水パネル柵は、請求項11記載の発明において、請求項5又は6記載の樹脂製パネルユニット連結体が取り付けられ、上記補強部材は、上記第2止水材が上記パネルユニット連結体の外側面と当接している位置に対応して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成からなる本発明よれば、樹脂製パネルユニット連結体を透光性の樹脂で構成している。このため、構築した防水パネル柵により建築物や道路が日陰になってしまうのを防止することができ、防水パネル柵の存在により、その周囲が暗くなってしまうのを防止することができる。また、この樹脂製パネルユニット連結体が透光性を確保することができることから、海側の眺望を望めることが可能となるから景観の向上を図ることができ、しかも防水パネル柵の存在により閉塞感や圧迫感を与えてしまうことを防止できる。また、この樹脂製パネルユニット連結体が透光性を確保することができることから、視界が遮られることもなく、津波等が接近しつつあるのを視認することができ、早期に避難を開始することが可能となる。
【0025】
また、上述した構成からなる本発明によれば、津波による外力が横方向から加わった場合においても、パネルユニットにおけるフランジには、補剛板が取り付けられている。このため、補剛板によりフランジの剛性を補強することが可能となり、津波に対する耐力を向上させることが可能となる。
【0026】
また、パネルユニットにおける両側のウェブに内接させつつ補強部材を設けている。これにより、津波等により当該ウェブに対して水圧や波圧が負荷した場合においても、この補強部材によりウェブを強固に支持することが可能となり、パネルユニット3としての断面形状が平行四辺形状に変形してしまうのを防止して、断面矩形状を保持することが可能となる。
【0027】
また、本発明によれば、個々のパネルユニットのウェブと、フランジとの間で囲まれた断面視で閉空間を構成するようにしており、特にフランジが海側から陸側にかけて二重に亘って設けられている。このため、一枚の樹脂板により壁体を構成する場合と比較して、断面二次モーメントを大きくすることができ、津波による水圧が横方向から負荷されても曲げ変形量を小さくすることでこれに対抗することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態として、洪水や津波等を始めとした水の浸入を防ぐ防水パネル柵について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1は、防水パネル柵1の構成を示す斜視図であり、
図2(a)は防水パネル柵1の平面図であり、
図2(b)はその正面図である。防水パネル柵1は、基礎111に対して所定間隔で立設された支柱2と、この支柱2間に嵌合された樹脂製パネルユニット連結体30と、支柱2の上端に取り付けられる押さえ材5とを備えている。
【0031】
基礎111は、例えばコンクリート製で構成されている。基礎111は、
図1に示すように海(又は河川)等の沿岸に沿って設けられている。基礎111は、立設すべき支柱2を嵌め込むための図示しない嵌合孔が設けられていてもよく、当該図示しない嵌合孔の近傍は周囲よりも高く盛り上げられていてもよい。
【0032】
支柱2は、支柱ウェブ部121の両端に一対の支柱フランジ部122、123が連設されたH形鋼からなる。即ち、この支柱2は、支柱ウェブ部121、支柱フランジ部122、123により囲まれてなる溝部が形成されている。この支柱フランジ部122は、陸側に向けて配置され、支柱フランジ部123は、海側(河川側)に向けて配置される。支柱2は、製造コストの観点からH形鋼を用いるのが望ましいが、これに限定されるものではなく、同様に支柱ウェブ部121の両端に一対の支柱フランジ部122、123が連設された断面略コ字状の溝形鋼で構成されていてもよいし、十分な剛性を確保できるものであれば他の如何なる断面形状の鋼材で構成されていてもよい。
【0033】
樹脂製パネルユニット連結体30は、樹脂性のパネルユニット3を複数に亘り連結させて構成されている。
図3は、樹脂製パネルユニット連結体30の斜視図であり、
図4はその組立斜視図、
図5はその断面図、
図6はその組立断面図である。
【0034】
この樹脂製パネルユニット連結体30は、アクリル樹脂やポリカーボネート等の透光性樹脂からなる複数のパネルユニット3と、パネルユニット3に取り付けられる補剛板11〜13と、パネルユニット3の内側に内装された補強部材21とを有している。なお、パネルユニット3は、透光性樹脂に限定されることなく、光を透過しない他の金属、セラミックス、樹脂等、いかなる材料で構成されていてもよい。
【0035】
パネルユニット3は、ウェブ31と、ウェブ31の上端に形成されたフランジ32と、ウェブ31の下端に形成されたフランジ33とを備えている、いわゆる断面略コ字状で成形されている。即ち、このパネルユニット3は、ウェブ31と、フランジ32と、フランジ33とにより略コ字状に開口した形状とされている。パネルユニット3は、
図4に示すように断面略コ字状の樹脂成形体が長手方向Cに向けて延長された構成とされている。この長手方向Cへの延長長さは、隣接する支柱2の間隔に対応したものとなっている。
【0036】
樹脂製パネルユニット連結体30は、開口部を図中A側に向けた3段に亘るパネルユニット3a〜3cと、開口部を図中B側に向けた2段に亘るパネルユニット3d、3eとを有している。これらパネルユニット3a〜3cと、パネルユニット3d、3eとを開口部を介して互いに対向させる。そして、これら互いに対向させたパネルユニット3a〜3cをA側から、またパネルユニット3d、3eをB側から合わせ、互いに接合されている。
【0037】
即ち、A側からは奇数のパネルユニット3a〜3c、B側からは偶数のパネルユニット3d、3eを接合し、A側からのパネルユニット3a〜3cの上下端に配するパネルユニット3a,3cは、その間のパネルユニット3bの略半分の高さに形成している。そして、B側からのパネルユニット3d、3eは、パネルユニット3bと略同じ高さに形成されている。このようにパネルユニット3を構成することにより、より剛直且つ一体的に樹脂製パネルユニット連結体30を形成することができる。
【0038】
接合後の状態は、
図5に示すように、パネルユニット3a〜3cのうち最上端にあるフランジ32aと、パネルユニット3d、3eのうち最上端にあるフランジ32dとを互いに接合して構成してなる。同様にパネルユニット3a〜3cのうち最下端にあるフランジ33cと、パネルユニット3d、3eのうち最下端にあるフランジ33eとを互いに接合して構成してなる。ちなみに、本実施の形態においては、フランジ32aの上面にフランジ32dの下面を当接させた状態で、これらを互いに接合している状態を例に挙げて説明をするが、これに限定されるものではなく、フランジ32dの上面にフランジ32aの下面を当接させた状態で、これらを互いに接合するようにしてもよい。同様に本実施の形態においては、フランジ33cの下面にフランジ33eの上面を当接させた状態で、これらを互いに接合している状態を例に挙げて説明をするが、これに限定されるものではなく、フランジ33eの下面にフランジ33cの上面を当接させた状態で、これらを互いに接合するようにしてもよい。
【0039】
またパネルユニット3a〜3c間の連結、及びパネルユニット3d、3e間の連結は、互いにフランジ32、33を介して連結される。即ち、パネルユニット3aにおけるフランジ33aとパネルユニット3bにおけるフランジ32bとが互いに連結され、パネルユニット3bにおけるフランジ33bとパネルユニット3cにおけるフランジ32cとが互いに連結されることとなる。また、パネルユニット3dにおけるフランジ33dと、パネルユニット3eにおけるフランジ32eとが互いに連結される。
【0040】
このようにして互いに連結されたフランジ33aとフランジ32b、フランジ33bとフランジ32c、フランジ33dとフランジ32eは、樹脂製パネルユニット連結体30の中段を構成する、いわゆる連結フランジであるが、それぞれ一体化されていることからあたかも一つのフランジとして作用することとなる。また、フランジ33aとフランジ32b、フランジ33bとフランジ32c、フランジ33dとフランジ32eは、互いに干渉しないように、離間させて設けられている。このフランジ33aとフランジ32b、フランジ33bとフランジ32c、フランジ33dとフランジ32eは、最上端を構成するフランジ32aとフランジ32d、並びに最下端を構成するフランジ33cとフランジ33eとに対しても離間されているので、これらと干渉しないように構成されていることは勿論である。即ち、樹脂製パネルユニット連結体30の中段を構成するフランジ33aとフランジ32b、フランジ33bとフランジ32c、フランジ33dとフランジ32eは、互いに他のいかなるフランジ32と接触しない位置に設けられていることが前提となる。
【0041】
またフランジ33aとフランジ32bの先端は、対向するパネルユニット3dの開口部のウェブ31dに接触されている。フランジ33bとフランジ32cの先端は、対向するパネルユニット3eのウェブ31eに接触されている。フランジ33dとフランジ32eの先端は、対向するパネルユニット3bのウェブ31eに接触されている。このとき、フランジ33とフランジ32の各先端が単にウェブ31に接触されている場合のみならず、これらが互いに溶着固定されていてもよい。
【0042】
なお、全てのフランジ32、33には、ボルト挿通孔38が穿設されている。
【0043】
パネルユニット3におけるフランジ33eの下面には、補剛板13bが取り付けられている。この補剛板13bは、
図4に示すようにパネルユニット3の長手方向Cに向けて延長されている。
図7(a)は、
図5のP部詳細図を示しているが、この補剛板13bの上面がフランジ33eの下面に対して隙間無く面接触させた状態で取り付けられる。補剛板13bには、孔18が設けられている。この孔18は、補剛板13bの下面から上面に向けて縮径化された形状となっている。
【0044】
パネルユニット3におけるフランジ33cの上面には、補剛板13aが取り付けられている。この補剛板13aは、
図4に示すようにパネルユニット3の長手方向Cに向けて延長されている。補剛板13aの下面がフランジ33cの上面に対して隙間無く面接触させた状態で取り付けられる。補剛板13aには、ネジ孔19が設けられている。
【0045】
補剛板13bの孔18には、皿ボルト16が下側から挿入される。皿ボルト16の頭部は扁平形状とされているため、この皿ボルト16を補剛板13bの孔18に挿入することで、補剛板13bの下面と皿ボルト16の頭部との間で略同一平面が形成されることとなる。この皿ボルト16の足は、フランジ33e、33cにおける各ボルト挿通孔38を挿通させる。また皿ボルト16の足はネジ状とされており、上述した補剛板13aのネジ孔19に挿入され、螺着固定される。
【0046】
このようにして皿ボルト16により、補剛板13b、フランジ33e、フランジ33c、補剛板13aを重ね合わせた状態で互いに接合することが可能となる。
【0047】
パネルユニット3におけるフランジ32cの下面には、補剛板12cが取り付けられている。この補剛板12cは、
図4に示すようにパネルユニット3の長手方向Cに向けて延長されている。
図7(b)は、
図5のQ部詳細図を示しているが、この補剛板12cの上面がフランジ32cの下面に対して隙間無く面接触させた状態で取り付けられる。補剛板12cには、ネジ孔19が設けられている。
【0048】
このような補剛板11〜13は、何れも金属性の板状体とすることで、フランジ32、33の剛性を補強することが可能となる。但し、補強板11〜13は、これに限定されるものではなく、フランジ32、33の剛性を補うことができるものであれば、樹脂性、木製、セラミック製等、いかなる材料で構成されていてもよい。
【0049】
このような補剛板12cの取り付けは、ボルト17を使用して行う。ボルト17は、フランジ33b、フランジ32cの各ボルト挿通孔38に上から下にむけて挿通されて、補剛板12cにおけるネジ孔19に螺着固定される。このようにしてボルト17により、補剛板12c、フランジ33b、フランジ32cを重ね合わせた状態で互いに接合することが可能となる。
【0050】
なお補剛板12cは、フランジ32cの下面に取り付けられる代替として、例えばフランジ33bの上面に取り付けるようにしてもよい。かかる場合にはボルト17はフランジ32cの下側から挿入されて螺着固定されることとなる。
【0051】
フランジ33dとフランジ32eに対しても補剛板12bがボルト17を介して同様に取り付けられ、フランジ33aとフランジ32bに対しても補剛板12aがボルト17を介して同様に取り付けられる。取り付け方法の詳細については、上述した
図7(b)の説明を引用することで以下での説明は省略する。
【0052】
パネルユニット3におけるフランジ32aの上面には、補剛板11aが取り付けられている。この補剛板11aは、
図5に示すようにパネルユニット3の長手方向Cに向けて延長されている。
図7(c)は、
図5のR部詳細図を示しているが、この補剛板11aの下面がフランジ32dの上面に対して隙間無く面接触させた状態で取り付けられる。補剛板11aには、孔18が設けられている。この孔18は、補剛板11aの上面から下面に向けて縮径化された形状となっている。
【0053】
パネルユニット3におけるフランジ32aの下面には、補剛板11bが取り付けられている。この補剛板11bは、
図4に示すようにパネルユニット3の長手方向Cに向けて延長されている。補剛板11bの上面がフランジ32aの下面に対して隙間無く面接触させた状態で取り付けられる。補剛板11bには、ネジ孔19が設けられている。
【0054】
補剛板11aの孔18には、皿ボルト16が上側から挿入される。皿ボルト16の頭部は扁平形状とされているため、この皿ボルト16を補剛板11aの孔18に挿入することで、補剛板11aの上面と皿ボルト16の頭部との間で略同一平面が形成されることとなる。この皿ボルト16の足は、フランジ32d、32aにおける各ボルト挿通孔38を挿通させる。皿ボルト16の足にはネジ状とされており、上述した補剛板13aのネジ孔19に挿入され、螺着固定される。
【0055】
このようにして皿ボルト16により、補剛板11a、フランジ32d、フランジ32a、補剛板11bを重ね合わせた状態で互いに接合することが可能となる。
【0056】
補剛板11は、互いに接合された各段におけるフランジ32、33に取り付けられている場合に限定されること無く、何れか1以上の段に取り付けられて入れてもよい。補剛板11自体の構成を省略するようにしても良い。
【0057】
ちなみに、パネルユニット3間の連結は、上述した皿ボルト16、ボルト17を使用する場合に限定されるものではなく、熱溶着や接着剤による接着等、他のいかなる方法により連結するようにしてもよい。熱溶着や接着剤による接着等によりパネルユニット3間を連結する場合には、それ自体に止水機能を持たせることも可能となることから、止水材15を別途設ける必要も無くなり、施工労力の低減、材料コストの低減を図ることも可能となる。
【0058】
なお、互いに接合する各フランジ32、33の間には止水材15を設けるようにしてもよい。この止水材15は、例えばゴム等の弾性体で構成されている。この止水材15を挿入することにより、フランジ32、33の間隙からパネル内部へと水が浸入するのを防止することが可能となる。同様に補剛板12、13と各フランジ32、33の間にも止水材15を設けるようにしてもよい。
【0059】
パネルユニット3の内側に内装された補強部材21は、
図6に示すように一枚の樹脂板を所定形状に加工又は成形することで得られる。この補強部材21は、溝51a〜51cと、溝51a〜51cに対応した高さにおいて板幅が縮径された縮幅部52a〜52cと、縮幅部52a〜52cを介して隔てられ、板幅が拡径された拡径部53a〜53dとを有している。また補強部材21には、更に上端が補剛板11bの板厚に応じた深さで下側に向けて段差が設けられた段差部54aと、下端が補剛板13aの板厚に応じた深さで上側に向けて段差が設けられた段差部54bとを有している。段差部54aには更に小溝55aが形成され、段差部54bには更に小溝55bが設けられている。またこのような段差部54a、54bが設けられることにより、隅部56aは段差部54aよりも上側に突出している形状を形成しており、また隅部56bは、段差部54bよりも下側に突出している形状を形成している。
【0060】
溝51aは、フランジ33a、32d、補剛板12aが挿入される。また溝51bには、フランジ33d、32e、補剛板12bが挿入される。また溝51cには、フランジ33b、32c、補剛板12cが挿入される。このため、これら溝51は何れもフランジ33、32、補剛板12の板厚に応じた高さとされている。
【0061】
またこのフランジ33、32における補強部材21の取り付け箇所には、
図4に示すように切欠61が設けられている。切欠61は、縮幅部52a〜52cの幅以上の深さからなる。切欠61には、補強部材21が縮幅部52a〜52cを介して嵌合される。その結果、補強部材21における縮幅部52は切欠61内部に収容されることとなる。
【0062】
段差部54aの上端には補剛板11bが当接状態となる。このとき段差部54aの深さは、補剛板11bの厚みと略同一となることから、補剛板11bの上面と隅部56aの上端は略同一高さとなる。これにより、上述したように補剛板11bの上面に取り付けられるフランジ32aにおいて隅部56aとの間で段差が生じることなく隙間無く取り付けを行うことができる。
【0063】
段差部54bの下端には補剛板13aが当接状態となる。このとき段差部54bの深さは、補剛板13aの厚みと略同一となることから、補剛板13aの下面と隅部56bの下端は略同一高さとなる。これにより、上述したように補剛板13bの下面に取り付けられるフランジ33cにおいて隅部56bとの間で段差が生じることなく隙間無く取り付けを行うことができる。
【0064】
拡径部53a〜53dは、断面視で互いに対向するフランジ32、33、ウェブ31により囲まれる空間をあたかも埋めるような形状とされている。即ち、この拡径部53a〜53dの両側面は、その両側にあるウェブ31a、31b、31cと、ウェブ31d、31eと内接させた状態で配設されることとなる。
【0065】
小溝55a、55bは、皿ボルト16の足の形状との関係において加工される。小溝55a、55bに皿ボルト16の足が干渉することを避けるために設けられる。
【0066】
ちなみに、この補強部材21の長手方向Cに向けた取り付け位置は、
図4に示す例において、長手方向Cの両端近傍にそれぞれ2箇所と、長手方向Cの中央に1箇所の合計3箇所であるがこれに限定されるものではない。例えば長手方向Cの長さがより短いものであれば長手方向Cの中央に配設される補強部材21を省略するようにしてもよい。長手方向Cの長さがより長いものであれば、補強部材21の配設枚数を4枚以上としてもよい。なお補強部材21自体の構成は必須ではなく、必要に応じて省略してもよいことは勿論である。
【0067】
また、この補強部材21は、一枚の樹脂板で構成される場合以外に、断面視で互いに対向するフランジ32、33、ウェブ31により囲まれる空間毎に別々樹脂板を配設するようにしてもよい。また、この補強部材21は、樹脂で構成される場合以外に、補剛板等を用いるようにしてもよい。
【0068】
なお、上述した構成からなる樹脂製パネルユニット連結体30は、支柱2間において一段のみで構成するようにしてもよいが、複数段積層させて構成するようにしてもよい。かかる場合には、
図8(a)に示すように、下段における樹脂製パネルユニット連結体30の最上端に位置する補剛板11aの最上面と、上段における樹脂製パネルユニット連結体30の最下端に位置する補剛板13bの最下面とを互いに当接させた状態で積み上げる。このとき、接触させる補剛板11aと補剛板13bとの間には止水材69を介装させるようにしてもよい。また
図8(b)に示すように、補剛板11aと補剛板13bの幅が短いため、上段への安定した載置を実現するために、補剛板11aと補剛板13bの周囲にゴム板91を更に介装するようにしてもよい。
【0069】
また樹脂製パネルユニット連結体30を実際に支柱2間において配設する場合には、ウェブ31d、31eが河川や海に面する方向に向けるのが望ましい。その理由として、ウェブ31d、31eを構成するB側は2つのパネルユニット3d、3eで構成しているが、対するA側は3つのパネルユニット3a〜3cで構成している。このため、パネルユニット3の数が少ないB側の方がパネルユニット3間の境目がA側よりも少なくなる。上述したようにパネルユニット3間は、止水材15を介装することで水の浸入防止を図っているが、更にその水の浸入をより効果的に防止するため、パネルユニット3の境目数が少ないB側の方を河川や海に面する方向に向ける。
【0070】
このようにして支柱2間に嵌め込まれた樹脂製パネルユニット連結体30は、支柱2における支柱フランジ部122、123、支柱ウェブ部121により囲まれる溝部分に落とし込むことで配設される。樹脂製パネルユニット連結体30は、
図9、10に示すようにパネル固定金具5により上から押さえ込んで固定される。パネル固定金具5は、U字状に加工された支持金具76と、押さえ材81と、ボルト82とを有する。
【0071】
支持金具76における互いに平行となるように折り曲げられた両側板は、それぞれ支柱フランジ部122、123に対してボルト83、ナット84により取り付けられる。また補剛板11aに対して略平行とされている支持金具76の中央部分の孔には、押さえ材81が挿入される。押さえ材81は、少なくとも底面が扁平状とされ、これが補剛板11aに当接可能とされている。また、この押さえ材81にはボルト82が取り付けられる。このボルト82は、支持金具76の中央部分の孔に設けられたネジと螺着され、当該ボルト82を回転させることにより、押さえ材81を下方へ押圧可能とされている。これにより、押さえ材81を補剛板11aに押し付けることが可能となる。その結果、樹脂製パネルユニット連結体30が、津波等の外力を受けて上に上がろうとするのをパネル固定金具5を介して抑えることが可能となる。
【0072】
ちなみに、この押さえ材5の形状は、上述の構成に限定されるものではなく、少なくとも支柱2における支柱ウェブ部121に当接可能な当接板57と、樹脂製パネルユニット連結体30を上から押さえつけることが可能な押さえ板76を有するものであればいかなる形状とされていてもよい。
【0073】
樹脂製パネルユニット連結体30は、この支柱2における支柱フランジ部122、123間にほぼ隙間無く嵌合させるようにしてもよいし、支柱フランジ部122、123との間で間隙を設けるようにして配置するようにしてもよい。かかる場合には、支柱フランジ部122、123と樹脂製パネルユニット連結体30との間隙に鉛直止水材71を設けるようにしてもよい。この鉛直止水材71は、例えばゴム等の弾性体で構成されている。この鉛直止水材71を挿入することにより、支柱フランジ部122、123と樹脂製パネルユニット連結体30との間隙から内部へと水が浸入するのを防止することが可能となる。
【0074】
鉛直止水材71は、支柱フランジ部122、123の内側に鉛直方向に延びて設けられた1対の止水材である。鉛直止水材71は、CR(Chloroprene)ゴム等の弾性樹脂から形成される中空のチューブ状のゴムガスケットである。鉛直止水材71は、平面視において支柱フランジ部122から樹脂製パネルユニット連結体30に向けて突出している。こうして突出した鉛直止水材71が、その弾性変形力により支柱2に嵌め込まれたパネルユニット3を押圧することで、パネルユニット3と支柱2との間の水密性が確保され、パネルユニット3と支柱2との接合部からの漏水が効果的に防止される。
【0075】
この鉛直止水材71の配設位置は、補強部材21との関係において予め決定される。即ち、支柱フランジ部122、123と樹脂製パネルユニット連結体30との隙間に介装される鉛直止水材71が、樹脂製パネルユニット連結体30に当接している位置に対応させて補強部材21が設けられている。
【0076】
ちなみに上下に隣り合うパネルユニット3の間には、連結部止水ゴム27が充填されていてもよい。連結部止水ゴム27は、互いに隣り合うパネルユニット3において、上側のパネルユニット3の外周の隅部と下側のパネルユニット3の外周の隅部との間に設けられた隙間を埋める形で取り付けられている。この隙間は、パネルユニット3において断面視で略矩形の角部が曲率を帯びていることにより生まれる。なお、連結部止水ゴム27は、シリコーン系または変性シリコーン系あるいはポリウレタン系などのコーキング材を用いるようにしてもよい。
【0077】
連結部止水ゴム27は、
図10に示すように少なくとも鉛直止水材71の当接位置に充填されていればよい。これにより外部から浸入しようとする水は、この鉛直止水材71と連結部止水ゴム27とにより、止水されることとなる。
【0078】
なお、樹脂製パネルユニット連結体30を支柱2に取り付けえる形態は、上述したように支柱2における支柱フランジ部122、123、支柱ウェブ部121により囲まれる溝部分に落とし込むことで配設する場合に限定されるものではなく、支柱2に安定して取り付けられるものであれば他のいかなる周知の方法に基づいて取り付けられていてもよい。
【0079】
上述した構成からなる防水パネル柵1は、樹脂製パネルユニット連結体30を透光性の樹脂で構成している。このため、構築した防水パネル柵1により建築物や道路が日陰になってしまうのを防止することができ、防水パネル柵1の存在により、その周囲が暗くなってしまうのを防止することができる。また、この樹脂製パネルユニット連結体30が透光性を確保することができることから、海側の眺望を望めることが可能となるから景観の向上を図ることができ、しかも防水パネル柵1の存在により閉塞感や圧迫感を与えてしまうことを防止できる。また、この樹脂製パネルユニット連結体30が透光性を確保することができることから、視界が遮られることもなく、津波等が接近しつつあるのを視認することができ、早期に避難を開始することが可能となる。
【0080】
また、上述した構成からなる防水パネル柵1では、津波による外力が横方向から加わった場合においても、パネルユニット3におけるフランジ32、33には、補剛板11が取り付けられている。このため、補剛板11によりフランジ32、33の剛性を補強することが可能となる。フランジ32、33は、それぞれ対向するウェブ31に当接されており、このフランジ32、33及びウェブ31を介して特に津波による横方向からの外力を伝達させる重要な役割を担うが、これを補剛板11を介して補強することで津波に対する耐力を向上させることが可能となる。
【0081】
補強部材21は、パネルユニット3における両側のウェブ31に内接している。このため、津波等により、ウェブ31に対して水圧や波圧が負荷した場合においても、この補強部材21によりウェブ31を強固に支持することが可能となり、パネルユニット3としての断面形状が平行四辺形状に変形してしまうのを防止して、断面矩形状を保持することが可能となる。
【0082】
また、本発明によれば、補強部材21を内装する際において、フランジ32、33に設けられた切欠61に補強部材21における縮幅部52a〜52cを嵌合させる。これにより、補強部材21における縮幅部52は切欠61内部に収容されることとなり、縮幅部52自体が障壁となることなく、フランジ32、33の先端が対向するウェブ31への接触状態を維持することが可能となる。これにより、海又は河川側にあるウェブ31d、31eに対して水圧や波圧が負荷した場合においても、これを補強部材21を介して対向する反対側のウェブ31a〜31cへと応力を伝達させて分散させることができる。その結果、樹脂製パネルユニット連結体30自体の撓みを低減させることが可能となる。
【0083】
特にこの補強部材21の配設位置は、上述したように鉛直止水材71が支柱フランジ部122、123への当接位置に対応させている。津波等によりウェブ31に応力が負荷した場合に、この鉛直止水材71が支点となってより多くのせん断力が負荷される。このせん断力は、鉛直止水材71から補強部材21を介して伝達されることとなり、樹脂製パネルユニット連結体30自体がせん断は介してしまうのを防止することができる。
【0084】
また、本発明によれば、個々のパネルユニット3のウェブ31と、フランジ32、33との間で囲まれた断面視で閉空間を構成するようにしており、特にフランジ32、33が海側から陸側にかけて二重に亘って設けられている。このため、一枚の樹脂板により壁体を構成する場合と比較して、断面二次モーメントを大きくすることができ、津波による水圧が横方向から負荷されても曲げ変形量を小さくすることでこれに対抗することが可能となる。
【0085】
更に、本発明によれば、パネルユニット3間は、止水材15や熱溶着又は接着剤を通じて強固に固着されていることから、津波や洪水等により水がパネルユニット3内部に浸入してしまうのを強固に防ぐことが可能となる。
【0086】
また、このパネルユニット3間を、ウェブ31、フランジ32、33を介して中空状に構成していることから、これを中実状に構成する場合と比較して材料コストの低減を図りつつ、津波等による外力に対する高い耐久性を維持することが可能となる。
【0087】
なお本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば
図11(a)は、樹脂製パネルユニット連結体30について、A側においてはパネルユニット3a、3bの2段で構成し、B側においては、パネルユニット3d、3eの2段で構成した場合の例であるが、かかる場合においても同様の作用効果を奏することは勿論である。同様に
図11(b)は、A側においてはパネルユニット3a、3bの2段で構成し、B側においては、パネルユニット3d、の1段で構成した場合の例であるが、かかる場合においても同様の作用効果を奏することは勿論である。即ち、本発明では、当該A、B両側又はA、B何れか一方側が2段以上に亘りパネルユニット3が連結されるものであればよい。