【解決手段】軒樋吊り具1は、取付杆10は前端部に係合部Aを備えている一方、樋支持具本体20は係合部Aが係合する係合受部Bを備えており、係合部Aが長孔23aに上方より嵌挿された状態で、取付杆10と樋支持具本体20とが長孔23aに沿って相互にスライド自在となる一方、係合部Aが係合受部Bに係合することでスライドがロック状態となる構成となっている。
軒樋前耳保持部と軒樋後耳保持部の間に長孔を形成してなる樋支持具本体と、軒先に固定される取付杆とを、前記樋支持具本体の前記取付杆に対する出具合を前記長孔に沿ってスライドして調整できるように連結した軒樋吊り具において、
前記取付杆は前端部に係合部を備えている一方、前記樋支持具本体は前記係合部が係合する係合受部を備えており、
前記係合部が前記長孔に上方より嵌挿された状態で、前記取付杆と前記樋支持具本体とが前記長孔に沿って相互にスライド自在となる一方、前記係合部が前記係合受部に係合することでスライドがロック状態となることを特徴とする軒樋吊り具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の軒樋吊り具は、樋支持具本体および取付杆のほかに、リベット等よりなる結合軸と、つまみ操作ができる操作体とを必要とするため、製造コストが嵩んでいた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、部品点数を少なくして低コスト化でき、軒先等への施工も簡単に行える軒樋吊り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の軒樋吊り具は、軒樋前耳保持部と軒樋後耳保持部の間に長孔を形成してなる樋支持具本体と、軒先に固定される取付杆とを、樋支持具本体の取付杆に対する出具合を長孔に沿ってスライドして調整できるように連結した軒樋吊り具において、取付杆は前端部に係合部を備えている一方、樋支持具本体は係合部が係合する係合受部を備えており、係合部が長孔に上方より嵌挿された状態で、取付杆と樋支持具本体とが長孔に沿って相互にスライド自在となる一方、係合部が係合受部に係合することでスライドがロック状態となることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の軒樋吊り具は、取付杆の前端部に、幅方向に突出した抜け止め部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の軒樋吊り具は、係合部、係合受部のうちの一方が圧入部を備え、他方が該圧入部が圧入される凹部を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の軒樋吊り具は、係合部および係合受部のそれぞれが、相互に噛合する噛合部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の軒樋吊り具によれば、上述の構成となっているため、樋支持具本体と取付杆とを結合するための結合軸や、両部材を相互にスライド自在とするための操作体を用いなくてもよい。そのため、部品点数を減らせることができ、低コスト化を実現できる。また、リベット止めなどによる連結作業を必要としないので、両部材の結合および軒先等への施工を迅速に行える。
【0011】
請求項2に記載の軒樋吊り具によれば、取付杆が幅方向に突出した抜け止め部を備えているため、樋支持具本体の長孔から取付杆が抜け出ることを防止できる。
【0012】
請求項3に記載の軒樋吊り具によれば、圧入部を凹部に圧入して係合する構成であるため、取付杆と樋支持具本体とは相互に係止、固定され、施工後の軒樋のがたつきや外れを防止できる。
【0013】
請求項4に記載の軒樋吊り具によれば、係合部と係合受部は噛合により係合する構造であるため、有段階による細かでずれのない調整が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係る軒樋吊り具の説明図である。
【0017】
この軒樋吊り具1は、軒樋前耳保持部21と軒樋後耳保持部22の間に長手方向に沿った長孔23aを有してなる樋支持具本体20と、軒先に固定される取付杆10とを備えている。
【0018】
樋支持具本体20は、取付杆10に対し長孔23aに沿って進退自在にスライド移動できるようになっており、それにより樋支持具本体20の出具合、つまり軒樋2の出具合を調節できるようになっている。
【0019】
ついで、取付杆10と樋支持具本体20の両部材のスライドおよびそのスライドのロックについて、各部材の形状、構造とともに詳細に説明する。
【0020】
取付杆10は、ステンレス等の金属で製されており、軒先等に取付板3により固定される取付部11と、その上端中央から前方に向けて延びた足杆12とを備えている。この足杆12の前方に位置する取付杆の前端部には、段落ちした連結片部13が形成されている。
【0021】
連結片部13の先端には、樋支持具本体20の裏面側に形成された凹部24(
図1の拡大断面図参照)に圧入嵌合する圧入部14が、ネック部17を介して形成されている。このネック部17の幅寸法は、樋支持具本体20の長孔23aの幅寸法よりも小さい。
【0022】
圧入部14は、底部14aと幅方向の両端から起立した起立片14b、14bとを備えて断面コ字状に形成されている。圧入部14の幅寸法は、足杆12の幅寸法とほぼ同一とされ、樋支持具本体20の幅寸法よりもやや小とされる。ようするに、圧入部14は、その幅寸法が樋支持具本体20の長孔23aの幅寸法よりも十分に大きくなっており、
図2(a)に示すように両部材が連結され施工された状態では、圧入部14は長孔23aから抜け出ないようになっている。つまり、両部材が結合した状態では、圧入部14の幅方向の両端が抜け止め部16として作用する。
【0023】
また、それぞれの起立片14b、14bの外側の面には、取付杆10の長手方向に連続する凹凸(高さ方向に走る凹条、凸条)が形成されている。この連続凹凸は噛合部15を構成する。
【0024】
このように形成された噛合部15を含む圧入部14は、樋支持具本体20に係合して連結するための係合部Aを構成する。
【0025】
樋支持具本体20は、ステンレス等の金属で製された長板状のスライド板本体23を備えており、その前端には軒樋2の前耳2aを吊り下げ保持するための軒樋前耳保持部21が折り曲げ形成され、後端には軒樋2の後耳2bを吊り下げ保持するための軒樋後耳保持部22が形成されている。なお本例では、軒樋後耳保持部22は別体の後耳保持片22aをリベット22bで固着して構成されている。
【0026】
軒樋前耳保持部21と軒樋後耳保持部22の間のスライド板本体23の幅方向中央には、長手方向に沿って長孔23aが形成され、その幅方向の両端には上方に膨出してなるリブ23b、23bが設けてある。そのリブ23bから外側下方に延びてなる外壁部23cの表裏面には、長孔23aの後部位置から長孔23aのやや前方位置にいたるまで連続した凹凸(高さ方向に走る凹条、凸条)が設けてある。なお、連続凹凸は外壁部23cの少なくとも内面に設けてあればよい。
【0027】
この連続凹凸は、取付杆10の噛合部15と噛合する噛合部25を構成する。つまり、取付杆10の噛合部15と樋支持具本体20の噛合部25のそれぞれの凹凸は、同一ピッチで連続形成されている。この噛合部15、25は、所望の出具合位置でスライドをロックして両部材を連結するためのものであり、樋支持具本体20側の噛合部25は、位置調節可能に、長孔23aの長手方向のほぼ全長にわたり凹凸が連続形成してある。
【0028】
スライド板本体23の裏側は凹溝状となっており、その凹部24内の幅方向の底部の両端にはリブ23b、23bによる溝状の小凹部24a、24aが形成されている(
図1の拡大断面図参照)。このスライド板本体23の裏側に形成された小凹部24a、24aを含む凹部24および噛合部25が、取付杆10の係合部Aに係合する係合受部Bを構成する。
【0029】
取付杆10と樋支持具本体20とは、
図2(a)に示すように、取付杆10の連結片部13の圧入部14が、長孔23aに上方より嵌挿された状態で結合される。
図2(a)に示した結合状態は、取付杆10の係合部Aが樋支持具本体20の係合受部Bに係合して、両部材の相互のスライドがロックされた状態(結合固定状態)となっている。なお、両部材の相互のスライドについては、
図6の説明とともに後述する。
【0030】
具体的には、
図2(a)のX−X線に対応した
図2(b)の拡大断面図に示すように、取付杆10の連結片部13に形成された圧入部14が樋支持具本体20の凹部24に嵌合(内嵌)し、さらに圧入部14の起立片14bが小凹部24aに嵌合する。そして、それとともに噛合部15、25同士が噛合することで、両部材はスライドがロックされた状態となる(
図2(b)のY−Y線に対応した
図2(c)のさらなる拡大断面図を参照)。
【0031】
このように、軒樋吊り具1は、取付杆10の係合部A(圧入部14と噛合部15)と樋支持具本体20の係合受部B(凹部24と噛合部25)との係合により両部材のスライドがロックされる構成であるため、取付杆10と樋支持具本体20とを結合するための結合軸や、両部材を相互にスライド自在とし、スライドロックするための操作体を用いなくても軒樋吊り具1を構成することができる。また、軒樋吊り具1の部品点数を少なくでき、製造コストを低減化でき、それによって安価な軒樋吊り具を提供することができる。
【0032】
また、本実施形態では圧入部14と凹部24との圧入嵌合によりスライドをロックする構成であるため、取付杆10と樋支持具本体20とを相互に簡易に固定でき、施工後の軒樋のがたつきや外れを防止できる。さらに、本実施形態では、両部材が噛合部15、25を有した構造となっているため、所定ピッチによる有段階による細かでずれのない出具合調整を行える。
【0033】
また、施工後に、軒樋2が樋支持具本体20に支持され、軒樋2の荷重が軒樋吊り具1にかかれば、両部材は相互に密接して固定された状態になり、軒樋2が複数の軒樋吊り具1に分散支持される構成でもあるため、両部材がずれたり分離したりするおそれはない。かりに両部材がずれたとしても、取付杆10には抜け止め部16が形成されているため、両部材が分離するおそれはない。
【0034】
なお、係合部Aと係合受部Bとの係合については、本実施形態の例のように、圧入部14の凹部24への圧入と、噛合部15、25同士の噛合との協働によってなされるものでもよいが、いずれか一方で係合する構成であってもよい。少なくとも両部材のスライドがロックできる構成であればよい。また、圧入ではなくたんなる嵌合であってもよいが、その嵌合によりスライド方向への移動が禁止される構成とすることが望ましい。
【0035】
以下に、第2、第3およびその他の実施形態に係る軒樋吊り具1について説明する。なお、以下に示す種々の例は、取付杆10の連結片部13が樋支持具本体20の長孔23aに上方より嵌挿された状態で、取付杆10と樋支持具本体20とが長孔23aに沿って相互にスライド自在となる点については、
図1に示した軒樋吊り具1と同様である。
【0036】
図3に示した軒樋吊り具1は、取付杆10の連結片部13におけるネック部17の前方に、樋支持具本体20の長孔23aに下方より嵌合するブロック状の嵌合部18が形成されている。
図3(a)に示すように、嵌合部18の幅方向の両側面には、取付杆10の長手方向に連続する凹凸(高さ方向に走る凹条、凸条)が形成されて噛合部15が形成されている。また嵌合部18の下部には、両幅方向に板状に突出した抜け止め部16が形成されている。
【0037】
一方、樋支持具本体20の長孔23aの長手方向の向かい合う両内側面には、
図3(a)に示すように、長孔23aのほぼ全長にわたり、連続凹凸で構成された噛合部25が形成されている。
【0038】
このように本実施形態の軒樋吊り具1は、取付杆10が噛合部15を備えた嵌合部18を係合部Aとして有し、一方、樋支持具本体20が噛合部25を備えた長孔23aを係合受部Bとして有した構成となっている。このような係合部Aと係合受部Bの構成により、スライドがロックできるようになっている。
【0039】
このような噛合部15を有した嵌合部18と、噛合部25を有した長孔23aとの係合構造によれば、有段階による細かでずれのない出具合調整が可能となる。なお、両部材を結合、固定するためには、嵌合部18が長孔23aに圧入等により係止される構造とすることが望ましい。
【0040】
このような相互に係止しない係合構造によれば、取付杆10と樋支持具本体20とは上下方向には離反しやすいが、噛合部15、25同士が係合している以上、少なくとも長手方向への移動は禁止され得る。また、軒樋2(
図1参照)が樋支持具本体20に支持され、軒樋2の荷重が軒樋吊り具1にかかった場合には、両部材は相互に密接して固定された状態になり、軒樋2が複数の軒樋吊り具1に分散支持されるものでもあるため、本実施形態において示したような噛合部15、25同士の噛合構造だけであっても、軒樋2(
図1参照)の施工後に両部材が分離するような問題が発生するおそれはない。また、取付杆10には抜け止め部16が設けてあるため、さらに確実に分離を回避することができる。
【0041】
なお、取付杆10および樋支持具本体20における他の構成については、
図1のものと同様であり、
図3(a)に全体図を示すとともに、各部に符号を付して、その説明は省略する。
【0042】
図4に示した軒樋吊り具1は、係合部Aおよび係合受部Bのそれぞれが噛合部15、25よりなる。つまり、
図4(a)に示すように、取付杆10の連結片部13には、長手方向に連続する凹凸(幅方向に走る凹条、凸条)が上面に形成された噛合板(噛合部15)が形成され、一方、樋支持具本体20のスライド板本体23における長孔23aの両側の板面には、長孔23aのほぼ全長にわたり、連続凹凸で構成された噛合部25が形成されている。そして、
図4(b)に示すように、取付杆10と樋支持具本体20とは、上下に配された噛合部15、25同士の噛合により、両部材の相互のスライドがロックされるようになっている。
【0043】
このような噛合部15、25同士の重ね合わせによる係合構造によれば、有段階による細かでずれのない調整が可能となる。
【0044】
このような重ね合わせの噛合構造による係合構造によれば、取付杆10と樋支持具本体20とは上下方向には容易に離反するが、噛合部15、25同士が係合している以上、少なくとも長手方向への移動は禁止され得る。また、軒樋2(
図1参照)が樋支持具本体20に支持され、軒樋2の荷重が軒樋吊り具1にかかった場合には、両部材は相互に密接して固定された状態になり、軒樋2が複数の軒樋吊り具1に分散支持される構成でもあるため、このような噛合部15、25同士の噛合構造だけであっても施工後に両部材が分離するような問題は発生するおそれはない。また、取付杆10には抜け止め部16が設けてあるため、さらに確実に分離を回避することができる。
【0045】
なお、取付杆10および樋支持具本体20における他の構成については、
図1のものと同様であり、
図4(a)に全体図を示すとともに、各部に符号を付して、その説明は省略する。
【0046】
以上に示した複数の実施形態のものは、噛合部15、25(連続凹凸)同士の噛合によりスライドのロックに寄与する構成となっているが、係合部A、係合受部Bの一方に1または複数の突起を設け、他方に突起が嵌合する複数の連続する丸孔などの穴部を設けた構成としてもよい。この構成によれば、突起と穴部との嵌合であるため高さ方向のずれも防止できる。
【0047】
ついで、他の種々の実施形態について、
図5(a)〜(c)を参照して説明する。これらのものはいずれも、スライドをロックする作用を担う係合部Aと係合受部Bの係合構造が種々異なる。
【0048】
図5(a)の軒樋吊り具1は、取付杆10の連結片部13に設けたコ字状の係合部Aが樋支持具本体20のリブ23b、23b(外壁部23c、23c)(係合受部B)を外嵌することにより両部材のスライドがロックされるようになっている。
図5(b)のものは、
図1に示したものと類似した内嵌構造であり、取付杆10の連結片部13に設けたコ字状の係合部Aが、樋支持具本体のリブ23b、23b(外壁部23c、23c)間の係合受部B(凹部24)に内嵌することにより両部材のスライドがロックされるようになっている。
図5(a)、(b)の軒樋吊り具1、1については、さらに
図1に示したような噛合部15、25を設けたものとしてもよい。
【0049】
図5(c)の軒樋吊り具1は、取付杆10の係合部Aと抜け止め部16とが前後方向に分離形成された例である。係合部Aは、
図1に示した圧入部14と同様にコ字状をなし、幅方向の両端に噛合部15を有した形状であり、樋支持具本体20の長孔23aに係合するようになっている。なお、長孔23aは
図3に示したものと同様に噛合部25を内側面に有した形状となっているが、それについては図示を省略する。
【0050】
つぎに、以上に示した種々の軒樋吊り具1の連結手順について、
図6(a)〜(c)を参照して簡単に説明する。なお、
図6には、
図1に示した形状の軒樋吊り具1を簡略的に示した。
【0051】
まず、取付杆10の連結片部13(前端部)を下方に向け、その表裏面を横方向に向け、その表裏面が樋支持具本体20の幅方向の両内側面を向くように、樋支持具本体20の長孔23aに上方より挿入する(
図6(a)参照)。そして、係合部Aが長孔23aの下方に抜け、ネック部17が長孔23aの位置に配するようにする(
図6(b)参照)。
【0052】
その状態か、さらに取付杆10を横方向に回転させた状態か、さらに取付杆10を前方向に回転させて連結片部13を前方に配するように傾斜させた状態にして、両部材を長孔23aに沿ってスライド相対移動させながら樋支持具本体20の出具合を調節する(
図6(c)参照、図中の丸付き1)。位置が定まれば、ネック部17を支点として取付杆10の連結片部13を樋支持具本体20の裏面に近づけるように回転させ、両部材の係合部A、係合受部Bを係合させる(
図6(c)参照、図中の丸付き2)。
【0053】
このように樋支持具本体20の取付杆10に対する出具合を調節し両部材を係合連結することで、軒樋2を軒先から所望の出具合位置に取り付けることができる。なお、
図6に示した連結手順は、取付杆10を軒先に取り付けた状態で行うこともできるし、取付杆10を軒先に取り付ける前にしておくこともできる。
【0054】
以上のように、
図1〜
図5に示した実施形態の軒樋吊り具1によれば、取付杆10と樋支持具本体20とを簡単にスライド調節可能に連結することができる。特に、リベット止めなどによる連結作業を必要としないので、取付杆10を軒先に取り付けてから樋支持具本体20のスライド調節をした後に、スライドをロックして、両部材を簡単に連結することができる。