(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-8727(P2015-8727A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20141216BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20141216BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20141216BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/42
C12Q1/04
G01N33/48 M
G01N33/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-215748(P2013-215748)
(22)【出願日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】102122922
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】509075457
【氏名又は名称】中國醫藥大學
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】段 正仁
(72)【発明者】
【氏名】邱 俊誠
(72)【発明者】
【氏名】林 永峻
(72)【発明者】
【氏名】蔡 銘修
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB01
2G045FA19
2G045JA01
2G045JA04
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB20
4B029CC02
4B029CC08
4B029FA03
4B029FA12
4B029FA15
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QR74
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム及び方法の提供。
【解決手段】ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム及び方法は、組織検体に対する成分分析に用いられ、該システムは、画像キャプチャモジュール、及びハイパースペクトル画像分析モジュールを包含し、該画像キャプチャモジュールは励起光を発生し並びに該組織検体が該励起光により発生するスペクトル画像を受け取り、並びに該スペクトル画像を連続スペクトルを具えたハイパースペクトル画像データに変換する。該ハイパースペクトル画像分析モジュールは該ハイパースペクトル画像データに線形変換を行って複数の線形独立の連続スペクトル曲線を獲得し、並びにデータベース内の既知成分の連続スペクトルデータと対比し、該組織検体中に含有される成分、類別、占有率及び空間分布を確認し、医師が正確な病巣判断をするために使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムにおいて、このシステムは組織検体(30)に対して成分分析と分布マーキングを行うのに用いられ、該システムの特徴は、
画像キャプチャモジュール(10)であって、光学検出ユニット(11)及びスペクトル変換ユニット(12)を包含し、該光学検出ユニット(11)は励起光を発生して該組織検体(30)に照射する光源(111)及び該組織検体(30)の発生するスペクトル画像を受け取るスペクトル画像検出器(112)を包含し、該スペクトル変換ユニット(12)は該スペクトル画像検出器(112)の出力を受け取り並びに連続スペクトル波形信号を有するハイパースペクトル画像データ(121)に変換する、上記画像キャプチャモジュール(10)と、
ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)であって、線形変換ユニット(21)、データベース(23)、及び該線形変換ユニット(21)と該データベース(23)に接続された対比ユニット(22)を包含し、該データベース(23)は複数の既知成分の連続スペクトルデータを保存し、該線形変換ユニット(21)は該ハイパースペクトル画像データ(121)中の該連続スペクトル波形信号に対してそれぞれ計算を行ない、並びに複数の線形独立の連続スペクトル曲線及びその占有率を取得し、該対比ユニット(22)がこれら連続スペクトル曲線と該データベース(23)中の既知成分の連続スペクトルデータを対比することで、該組織検体(30)中の組成成分、類別及び占有率を確認する、上記ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)と、
を包含することにある、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム。
【請求項2】
請求項1記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムにおいて、該画像キャプチャモジュール(10)は移動コントロールユニット(13)を具え、それは該組織検体(30)に対して二次元アレイ式走査を行ない、該組織検体(30)の位置に基づいて縦軸位置信号、横軸位置信号及び該連続スペクトル波形信号を取得して、三次元の該ハイパースペクトル画像データ(121)を構成し、これにより、該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)を利用して該組織検体(30)中に含有される成分の空間分布を獲得することを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム。
【請求項3】
請求項2記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムにおいて、該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)は、さらに、該線形変換ユニット(21)及び該対比ユニット(22)に接続されたマンマシンコントロールインタフェース(24)を包含し、該マンマシンコントロールインタフェース(24)は、該対比ユニット(22)に基づき、図形化画像を出力することを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム。
【請求項4】
請求項3記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムにおいて、該画像キャプチャモジュール(10)は該光学検出ユニット(11)に接続された可視光画像キャプチャユニット(14)を包含し、これにより可視光画像データ(141)を取得し、該可視光画像キャプチャユニット(14)は該マンマシンコントロールインタフェース(24)に接続され、該マンマシンコントロールインタフェース(24)は該可視光画像データ(141)及び該図形化画像を重畳し、図形化データを得ることを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム。
【請求項5】
請求項1記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムにおいて、該線形変換ユニット(21)は独立成分分析、主成分分析及び因子分析からなる群より選択する方式で線形変換を行うことを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム。
【請求項6】
請求項1記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムにおいて、該スペクトル画像は、自己蛍光画像及び吸収スペクトル画像からなる群より選択されることを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム。
【請求項7】
ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、
S1:組織検体(30)を取得するステップ
S2:光学検出ユニット(11)を利用し、第1励起光を該組織検体(30)に照射し、該組織検体(30)にスペクトル画像を発射させるステップ
S3:スペクトル変換ユニット(12)により該スペクトル画像を連続スペクトル波形信号を有するハイパースペクトル画像データ(121)に変換するステップ
S4:該ハイパースペクトル画像データ(121)を線形変換して複数の線形独立の連続スペクトル曲線及びその占有率を計算するステップ
S5:対比ユニット(22)により、これら連続スペクトル曲線とデータベース(23)内の既知成分の連続スペクトルデータを対比し、該組織検体(30)中に含有される成分、類別及び占有率を確認するステップ
以上のステップを包含することを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【請求項8】
請求項7記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、S3のステップ中、移動コントロールユニット(13)で該組織検体(30)に対して二次元アレイ式走査を行うことで、該ハイパースペクトル画像データ(121)に縦軸位置信号と横軸位置信号、及び該連続スペクトル波形信号を包含させて、三次元の該ハイパースペクトル画像データ(121)を構成し、これにより該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)を利用して該組織検体(30)中に含有される成分の空間分布を取得することを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【請求項9】
請求項8記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、S5のステップ後に、さらに、
S6:マンマシンコントロールインタフェース(24)が、該対比ユニット(22)が対応する組織成分に基づき、図形化画像を出力するステップ、
を包含することを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【請求項10】
請求項9記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、S6のステップ中、該マンマシンコントロールインタフェース(24)はさらに可視光画像キャプチャユニット(14)により可視光画像データ(141)を取得し、並びに該可視光画像データ(141)及び該図形化画像を重畳して図形化画像を得ることを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【請求項11】
請求項7記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、S4のステップ中、線形変換の方式は、独立成分分析、主成分分析及び因子分析からなる群より選択されることを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【請求項12】
請求項7記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、S3のステップ後、さらに、
X1:該光学検出ユニット(11)に第2励起光を該組織検体(30)に照射させ、対応するスペクトル画像を発生し、続いてステップS3に戻り、光信号変換を行うステップ、
を包含することを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【請求項13】
請求項12記載のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法において、該スペクトル画像は、自己蛍光画像及び吸収スペクトル画像からなる群より選択されることを特徴とする、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種の組織細胞分析のシステム及び方法に係り、特にハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌を早期発見して、人々の癌に罹患した後の回復率を高めるために、いかに有効に、速やかに正確に早期の癌の検査を行うかが、医療領域の研究開発者が共同で努力する目標となっている。現行の癌のスクリーニングメカニズムは、いずれも切片検査方式により癌の診断と分期を行っており、切片検査は顕微鏡下で組織検体が不正常に分化した異常細胞を有しているか否かを観察し、そのうち厳重に癌化した細胞は簡単に判別できるが、早期の病変は組織細胞の外観多様性のため、経験豊富な医師であっても、正確な判断を下すことは難しい場合がある。
【0003】
これにより、従来技術は、組織検体内に異常細胞の成分が含有されるか否かを判別するのに用いられるように、一種の蛍光検査システムを構築し、たとえば、特許文献1は、励起光を特定表皮組織に照射し、表皮組織に自己蛍光信号を発生させ、さらに自己蛍光の連続スペクトル信号をキャプチャ及び分析し、特定スペクトル領域にあって特定傾斜率、波のピーク及び強度等の比較を行ない、並びに重み表を構築し、これにより判断の正確性を高めている。事実上、同一の検査点上には多くの異なる成分のスペクトル信号が含まれ、すなわち、測定されるスペクトル信号は多種成分の自己蛍光信号の組み合わせであり、これらの成分は分子レベルの化学成分、タンパク質、DNA、RNA或いは非常に多くの物質特性を総合した細胞核であり得る。分析時には、異なる成分の間の干渉により、検査の正確性に影響が生じ得る。このほか、該案の記載する方式は、僅かに切片検査する組織が発炎組織或いは癌組織を有しているか否かを判断できるだけであり、発炎組織或いは癌組織の位置を正確に判断することはできず、改善の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第20050272027号「Real−time clinical diagnostic expert systems for fluorescent spectrum analysis of tissue cells and methods thereof」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主要な目的は、ハイパースペクトル画像検査システムの組織成分検査の正確度を高めることにある。
【0006】
本発明の別の目的は、周知の技術が正確に異常細胞位置と分布をマーキングできなかった問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は一種の、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムを提供し、それは、組織検体に対して成分分析と分布マーキングを行うのに用いられ、該システムは、画像キャプチャモジュール及びハイパースペクトル画像分析モジュールを包含する。
【0008】
該画像キャプチャモジュールは、光学検出ユニット及びスペクトル変換ユニットを包含し、該光学検出ユニットは励起光を発生して該組織検体に照射する光源及び該組織検体が発生するスペクトル画像を受信するスペクトル画像検出器を包含し、該スペクトル変換ユニットは該スペクトル画像検出器が出力し並びに変換された連続スペクトル波形信号を具えたハイパースペクトル画像データを受け取る。該ハイパースペクトル画像分析モジュールは、線形変換ユニット、データベース及び該線形変換ユニットと該データベースに接続された対比ユニットを包含し、該データベースには複数の、既知成分の連続スペクトルデータが保存され、該線形変換ユニットは該ハイパースペクトル画像データ中の該連続スペクトル波形信号に対して個別に計算し、並びに複数の独立した連続スペクトル曲線及びその占有率を取得し、該対比ユニットはこれら連続スペクトル曲線とデータベース中の既知成分の連続スペクトルデータを対比し、これに基づき、該組織検体中の組成成分類別と占有率を確認する。
【0009】
このほか、本発明はまた、一種の、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法を提供し、それは以下のステップを包含する。
S1:組織検体を取得するステップ。
S2:光学検出ユニットを利用し、第1励起光を該組織検体に照射し、該組織検体にスペクトル画像を発射させるステップ。
S3:スペクトル変換ユニットにより該スペクトル画像を連続スペクトル波形信号を有するハイパースペクトル画像データに変換するステップ。
S4:該ハイパースペクトル画像データを線形変換して複数の線形独立の連続する連続スペクトル曲線及びその占有率を計算するステップ。
S5:対比ユニットにより、これら連続スペクトル曲線とデータベース内の既知成分の連続スペクトルデータを対比し、該組織検体中に含有される成分、類別及び占有率を確認するステップ。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から分かるように、本発明は以下の特徴を有する。
1.組織検体が発射したスペクトル画像に対して、連続波段キャプチャを行ないハイパースペクトル画像データを取得し、全体のスペクトル画像の連続スペクトル曲線の波形特性を保留する。
2.線形変換を利用し、該ハイパースペクトル画像データを分析し、これらハイパースペクトル画像データ中の線形独立の連続スペクトル曲線を分離して、データベース内の既知成分のスペクトル曲線データとの対比に用いる。
3.全体の線形独立の連続スペクトル曲線波形特性により、該組織検体中に含有される成分、類別及び占有率を確認し、特定波長帯域のピーク値を利用して成分を判断するわけではないため、誤判断の可能性を減らせる。
4.線形独立の連続スペクトル曲線波形対比の方式を利用して量子化された曲線波形と成分比指標を得て、ハイパースペクトルバイオマーカー(Hyperspectral
Biomarker)となすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3A】本発明の第1実施例の連続スペクトル曲線データ線形変換表示図である。
【
図3B】本発明の第2実施例の連続スペクトル曲線データ線形変換表示図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の技術内容、構造特徴、達成する目的及び作用効果について、以下に例を挙げ並びに図面を組み合わせて詳細に説明する。
【0013】
図1を参照されたい。それは本発明のハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析のシステムを示し、それは組織検体(30)に対して成分分析を行うのに用いられ、該システムは画像キャプチャモジュール(10)及びハイパースペクトル画像分析モジュール(20)を包含する。
【0014】
該画像キャプチャモジュール(10)は、光学検出ユニット(11)及びスペクトル変換ユニット(12)を包含し、該光学検出ユニット(11)は励起光を発生して該組織検体(30)に照射する光源(111)及び該組織検体(30)の発生するスペクトル画像を受け取るスペクトル画像検出器(112)を包含する。
【0015】
そのうち、該スペクトル画像は、自己蛍光画像或いは吸収スペクトル画像とされ得て、自己蛍光画像は、該組織検体(30)が該光源(111)の発する光を吸収した後に対応する励起光を吸収して発生する蛍光画像とされ、吸収スペクトル画像は、すなわち、該組織検体(30)が該光源(111)の発する光を吸収した後に、励起光を発生しないことで発生する光吸収画像である。
【0016】
該スペクトル変換ユニット(12)は、該スペクトル画像検出器(112)の出力を受け取り並びに変換して連続スペクトル波形信号を具えたハイパースペクトル画像データ(121)となす。
【0017】
該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)は、線形変換ユニット(21)、データベース(23)、及び該線形変換ユニット(21)と該データベース(23)に接続された対比ユニット(22)を包含する。
【0018】
該データベース(23)は、複数の既知の成分の連続スペクトル波形データを保存し、該線形変換ユニット(21)は該ハイパースペクトル画像データ(121)中の該連続スペクトル波形信号に対してそれぞれ計算を行ない、並びに複数の線形独立の連続スペクトル曲線及びその占有率を取得する。
【0019】
該対比ユニット(22)は、これら連続スペクトル曲線とデータベース(23)中の既知成分の連続スペクトルデータに基づき対比を行ない、該組織検体(30)中に含有される組成成分、類別及び占有率を確認する。
【0020】
本実施例によると、組織検体(30)の成分分析により、組織検体(30)中の正常細胞及び癌化細胞の位置を知ることができ、並びに成分比の分析により、癌化の程度を知ることができる。さらに詳細に説明すると、これら各自の独立した連続スペクトル曲線は、組織検体(30)中の未知成分の特徴表現であることを除き、検出過程で混入した雑音でもあり得る。これにより、いかに有効にこれら雑音の形成する影響を取り除くかについて、後述する。
【0021】
該画像キャプチャモジュール(10)はさらに、移動コントロールユニット(13)を包含し、それは該組織検体(30)に対して二次元アレイ式走査を行ない、該ハイパースペクトル画像データ(121)に、縦軸位置信号、横軸位置信号及び該連続スペクトル波形信号を包含させて、三次元のハイパースペクトル画像データ(121)を構成する。すなわち、該ハイパースペクトル画像データ(121)は、複数の、異なる位置の検出点上で検出されるデータで構成され、各一つの検出点上で検出される連続スペクトル波形信号は並びに単一数値ではなく、連続し且つ異なる波長に対応し異なる光強度を示すスペクトル曲線である。
【0022】
該線形変換ユニット(21)は、これに限定されるわけではないが、たとえば、独立成分分析(Independent component analysis,ICA)、主成分分析(Principal component analysis,PCA)、及び因子分析(factor analysis)等の方式で、線形変換及び分析を行う。該線形変換ユニット(21)はまた該ハイパースペクトル画像データ(121)中の複数の検出点の連続スペクトル曲線を線形変換し、各一つの検出点上の各自の複数の線形独立の連続スペクトル曲線を得る。
【0023】
該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)はさらに、該線形変換ユニット(21)及び該対比ユニット(22)に接続されたマンマシンコントロールインタフェース(24)を包含する。該マンマシンコントロールインタフェース(24)は該対比ユニット(22)の組織成分対比結果に基づき、図形化画像を出力し、該組織検体(30)上の各位置の成分が分かるようにし、並びに異なる色及び色の濃さの違いの方式で、各成分の該組織検体(30)上の位置及び比率を表現し、これにより該図形化画像を形成する。
【0024】
該マンマシンコントロールインタフェース(24)はまた、該システムの起動或いは制御に用いられ、並びに特定領域に対して拡大チェック或いは回転を行え、これにより、使用者にさらに直接的に組織検体(30)の成分検視を行わせる。
【0025】
このほか、該画像キャプチャモジュール(10)はさらに、該光学検出ユニット(11)に接続された可視光画像キャプチャユニット(14)を包含し得て、これにより、可視光画像データ(141)を取得し、該可視光画像データ(141)は直接に該組織検体(30)の人の目において表示される外観画像を現出し、該組織検体(30)の真皮組織、表皮組織或いはその他の組織構造を表示可能である。該可視光画像キャプチャユニット(14)は該マンマシンコントロールインタフェース(24)に接続され、該マンマシンコントロールインタフェース(24)は該可視光画像データ(141)と該図形化画像を重畳させることにより、図形化データを得る。すなわち、該図形化データは、該図形化画像が表示する成分データを、該可視光画像データ(141)上に直接重畳させたものとされ、これにより、使用者は、直覚的に該図形化データにより、該組織検体(30)の対応位置上の成分比を対比できる。
【0026】
図2も併せて参照されたい。本発明はまた、一種の、ハイパースペクトル利用の組織細胞画像分析の方法を提供し、それは、以下のステップを包含する。
【0027】
S1:組織検体(30)を取得するステップ
このステップにおいて、組織切片を利用する方式で、該組織検体(30)を取得するか、或いは光学検出ユニット(11)を利用して直接に患者の病巣位置に対して画像キャプチャを行ない、該組織検体(30)を獲得する。
【0028】
S2:組織検体(30)のスペクトル画像を励起するステップ
このステップにおいて、光学検出ユニット(11)を利用し、第1励起光を該組織検体(30)に照射し、該組織検体(30)にスペクトル画像を発射させる。本実施例中、330〜385nmの光源(111)からの光で励起を行ない、該組織検体(30)に対応するスペクトル画像を発生させる。そのうち、該スペクトル画像は、自己蛍光画像或いは吸収スペクトル画像とされ得て、自己蛍光画像は該組織検体(30)が該光源(111)の発する光を吸収した後に対応する蛍光を発生することで形成される蛍光画像であり、吸収スペクトル画像は、該組織検体(30)が該光源(111)からの光を吸収した後に、励起光を発生しないか、或いは光線を反射しないことで形成される光吸収画像である。
【0029】
S3:光信号変換ステップ
スペクトル変換ユニット(12)により該スペクトル画像を連続スペクトル波形信号を有するハイパースペクトル画像データ(121)に変換する。並びに本実施例では、移動コントロールユニット(13)を利用し、該組織検体(30)のキャプチャ位置に対して走査を行ない、該ハイパースペクトル画像データ(121)に、横軸位置信号X、縦軸位置信号Y及び該連続スペクトル波形信号λの三次元データを包含させる。さらに説明すると、本発明は、組織検体(30)上の興味のあるキャプチャ位置を中心点となし、キャプチャ範囲を設定し、並びに縦座標及び横座標をそれぞれ500個の空間座標点の解析度で切り割り、これにより、一つのキャプチャ範囲で250,000個の空間座標点を取得でき、各一つの空間座標点はすなわち、一つの検出点であり、且ついずれもそれに対応する連続スペクトル波形信号を有する。本実施例では、該連続スペクトル波形信号は、波長400nmから1000nmの間で各3nmが一つの単位解析度とされ、200個の周波数座標点を有し、これにより、該キャプチャ範囲のハイパースペクトル画像データは、すなわち、「X,Y,λ」解析度が、それぞれ「500,500,200」の三次元データとされ、該キャプチャ位置、キャプチャ範囲と解析度の大きさは、使用の必要に応じて変更され得る。
【0030】
このほか、特に説明を必要とするのは、以下のことである。詳細な成分対比、或いは第2次励起を行うため、本発明はS3のステップの後に、さらに、以下のX1のステップを有し得る。すなわち、
X1:再度測定するステップ
このステップにおいて、該光学検出ユニット(11)に第2励起光を該組織検体(30)に照射させて、対応するスペクトル画像を発生させ、続いて、S3のステップに戻り、光信号変換を行う。これにより、その他の種類の蛍光スペクトルデータを獲得でき、より完全な対比結果を達成でき、本実施例では、470〜490nm波長の第2励起光を利用して照射を行ない、第2スペクトル画像のハイパースペクトル画像データを取得する。
【0031】
S4:線形変換分析を行う
このステップにおいて、該ハイパースペクトル画像データ(121)を線形変換して同時にこれら検出点の連続スペクトル波形信号より線形独立の連続スペクトル曲線及びその占有率を算出する。線形変換の方式は、独立成分分析、主成分分析、或いは因子分析等の方式とされ得て、そのうち、本実施例は独立成分分析(ICA)の方式で完成し、独立成分分析の後、各一つの検出点の連続スペクトル曲線に対して組成成分の分離を行ない、これにより各検出点上にある異なる成分を区分する。このほか、ICAの分析を利用して、さらに、検出システム中の固定雑音を抽出し、雑音のデータに対する干渉を排除する。本発明は並びにICA分析の方法に重点を置くわけではなく、これにより、ICAに対して詳細な説明は行わない。
【0032】
S5:対比確認
このステップにおいて、対比ユニット(22)により各一つの線形独立の連続スペクトル曲線とデータベース(23)中の既知成分の連続スペクトル曲線を対比し、これにより組織検体(30)の組成成分の類別と占有率を確認する。このほか、本発明は平面走査を行えるため、併せて各種成分の該組織検体(30)における空間分布を確認できる。
【0033】
S6:図形化画像出力
マンマシンコントロールインタフェース(24)が該対比ユニット(22)の成分対比結果に基づき、図形化画像を出力し、マンマシンコントロールインタフェース(24)の走査により、特定の位置を選定して表示でき、各成分の該組織検体(30)上の位置と成分比を知ることができ、並びに病理学の知識により、異常細胞の癌化程度を判断する。
たとえば、口腔癌は分化過程発生時に、上皮組織の基底層に角化たんぱく質の不正常な増生の現象が出現し得るが、本発明の分析方法を利用することで、角化たんぱく質の増生の位置を確定し並びにその占有率を計算でき、これにより、正確に量子化された上皮組織細胞とその角化たんぱく質分布比率数値を提供し、癌化程度の量子化根拠となすことができる。
【0034】
さらに詳細に説明するため、
図3A及び
図3Bを参照されたい。それはそれぞれ組織検体(30)上の二つの異なる検出点のスペクトル画像を変換して得られた第1連続スペクトル曲線データ(41)及び第2連続スペクトル曲線データ(42)であり、該第1連続スペクトル曲線データ(41)及び該第2連続スペクトル曲線データ(42)は、発生するスペクトル画像が同じでないため、その表現するスペクトル曲線態様も同じでない。
図3Aに示されるように、該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)の線形変換ユニット(21)により線形変換された後、該第1連続スペクトル曲線データ(41)は第1線形独立連続曲線(411)、第2線形独立連続曲線(412)及び第3線形独立連続曲線(413)等に分けられ、各一つの線形独立連続曲線はいずれも一種の成分を代表する。第1線形独立連続曲線(411)、該第2線形独立連続曲線(412)及び該第3線形独立連続曲線(413)の曲線形状により全体的な判断を行うため、誤判断の可能性を減らすことができる。
【0035】
図3Bを併せて参照されたい。該ハイパースペクトル画像分析モジュール(20)の線形変換ユニット(21)により線形変換した後、該第2線形独立連続曲線(412)は、第4線形独立連続曲線(421)、第5線形独立連続曲線(422)及び第6線形独立連続曲線(423)等に分けられる。各一つの線形独立連続曲線はいずれも一種の成分を代表する。
【0036】
該データベース(23)中には、各異なる成分についてその対応する連続スペクトル曲線が保存され、該対比ユニット(22)により該第1線形独立連続曲線(411)、該第2線形独立連続曲線(412)、該第3線形独立連続曲線(413)、該第4線形独立連続曲線(421)、該第5線形独立連続曲線(422)、該第6線形独立連続曲線(423)がそれぞれ代表する成分を知ることができる。
【0037】
そのうち、該第1連続スペクトル曲線データ(41)中の第2線形独立連続曲線(412)及び該第2連続スペクトル曲線データ(42)中の該第6線形独立連続曲線(423)の曲線形状がほぼ完全に一致することが分かり、それは、該第1連続スペクトル曲線データ(41)及び該第2連続スペクトル曲線データ(42)の対応する検出点が、ある種の同じ成分を有することを代表し、該第2線形独立連続曲線(412)と該第6線形独立連続曲線(423)は、それぞれ該第1連続スペクトル曲線データ(41)及び該第2連続スペクトル曲線データ(42)が占める比率により、該成分の占める比率を知ることができる。
【0038】
図4を参照されたい。第1組織検体(31)、第2組織検体(32)、及び第3組織検体(33)を検査し、全ての、たとえば該第2線形独立連続曲線(412)成分を含有する検出点を表示し、たとえば、白色領域(34)を形成する。仮に、該第2線形独立連続曲線(412)が、データベース(23)中のある種の既知の腫瘍特有成分の連続スペクトル曲線と同じであれば、該第1組織検体(31)、第2組織検体(32)及び第3組織検体(33)中の白色領域(34)は対応する腫瘍細胞位置であると認定され得る。
【0039】
このほか、該マンマシンコントロールインタフェース(24)の提供する図形化データを組み合わせて重畳対比し、実際の画像及び白色領域(34)を対比し、医師に比較的容易に判別させる。特に説明が必要であるのは、本発明は白色領域(34)を以て例として説明しているが、実際には、異なる成分に基づき、異なる色で対応する表示を行え、画像をより明晰となすことができる。
【0040】
総合すると、本発明は以下の特徴を有している。
1.組織検体の各検出点位置が発生するスペクトル画像に対して、連続波段キャプチャを行ないハイパースペクトル画像データを取得し、全体のスペクトル画像の連続スペクトル曲線の波形特性を保留する。
2.線形変換を利用し、該ハイパースペクトル画像データを分析し、これらハイパースペクトル画像データ中の線形独立の連続スペクトル曲線を分離して、データベース内の既知成分のスペクトル曲線データとの対比に用いる。
3.全体の線形独立連続スペクトル曲線波形特性により、該組織検体中に含有される成分類別、各種成分の占有率と各種成分の該組織検体における空間分布を確認し、組織検体中の癌化細胞の位置と癌化程度を確定する。特定波長帯域の波長のピーク値を利用して成分を判断するわけではないため、誤判断の可能性を減らせる。
4.線形独立の連続スペクトル曲線波形対比の方式を利用して量子化された曲線波形と成分比指標を得て、ハイパースペクトルバイオマーカー(Hyperspectral
Biomarker)となすことができる。
5.主成分分析(ICA)方式により、線形独立の連続スペクトル曲線波形を得ることができ、有効な分類が行え並びに組成成分比を取得でき、これにより量子化された成分比を獲得できる。
6.該マンマシンコントロールインタフェースを利用して図形化画像表示を行ない、これにより、使用者は直覚的に該組織検体上の各位置の組成成分の検査を行え、並びに該可視光画像データの組み合わせにより、使用者により明らかに、組織検体の位置に対応した組成成分の検査と判断を行わせることができる。
【符号の説明】
【0041】
(30)組織検体
(10)画像キャプチャモジュール
(20)ハイパースペクトル画像分析モジュール
(11)光学検出ユニット
(111)光源
(112)スペクトル画像検出器
(12)スペクトル変換ユニット
(121)ハイパースペクトル画像データ
(13)移動コントロールユニット
(14)可視光画像キャプチャユニット
(141)可視光画像データ
(21)線形変換ユニット
(22)対比ユニット
(23)データベース
(24)マンマシンコントロールインタフェース
(41)第1連続スペクトル曲線データ
(411)第1線形独立連続曲線
(412)第2線形独立連続曲線
(413)第3線形独立連続曲線
(42)第2連続スペクトル曲線データ
(421)第4線形独立連続曲線
(422)第5線形独立連続曲線
(423)第6線形独立連続曲線
(31)第1組織検体
(32)第2組織検体
(33)第3組織検体
(34)白色領域