(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-87270(P2015-87270A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】THz帯検査装置およびTHz帯を用いた検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20150410BHJP
【FI】
G01N21/35 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-226280(P2013-226280)
(22)【出願日】2013年10月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079337
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 誠志
(72)【発明者】
【氏名】大谷 昭仁
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG01
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ15
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
2G059MM10
2G059PP06
(57)【要約】
【課題】THz帯検査装置を小型で且つ低コストに構成する。
【解決手段】THz波発生器21によりTHz帯の電磁波を発生し、これを収束してビームとしてビーム走査ミラー部30へ出力する。ビーム走査ミラー部30は、THz波発生器21から出力されたビームを反射体としての回転多面鏡31で受けて所定の検査対象領域E内を走査するビームを出力する。検査対象領域Eを走査されたTHz帯のビームの透過波または反射波を複数のセンサ素子40aのセンサ面で受けて走査位置毎の強さを検出する。信号処理部50は、複数のセンサ素子40aの出力に基づいて検査対象領域E内の被測定物Wに対する解析を行ない、その解析結果を表示部60に出力して表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
THz帯の電磁波を発生し、これを収束してビームとして出力するTHz波発生器(21)と、
前記THz波発生器から出力されたビームを受けて所定の検査対象領域内を走査するように出力するビーム走査ミラー部(30)と、
前記検査対象領域を走査するTHz帯のビームの透過波または反射波をそれぞれのセンサ面で受けて走査位置毎の強さを検出する複数のセンサ素子(40a)とを備えたことを特徴とするTHz帯検査装置。
【請求項2】
前記ビーム走査ミラー部は、前記ビームの出力方向が同一平面内となるように走査することを特徴とする請求項1記載のTHz帯検査装置。
【請求項3】
前記複数のセンサ素子は、前記同一平面内で走査されるビームの透過波または反射波が入射するそれぞれの位置に並んで配置されていることを特徴とする請求項2記載のTHz帯検査装置。
【請求項4】
前記THz波発生器は、
第1の光周波数の第1の連続光を出力する第1の光源(22)と、
前記第1の光周波数に対する周波数差がTHz帯に入る第2の光周波数の第2の連続光を出力する第2の光源(23)と、
前記第1の連続光と第2の連続光を合波する合波器(24)と、
前記光合波器の出力を受けて、前記第1の光周波数と第2の光周波数の差の周波数のTHz波を出力する受光器(25)と、
前記受光器から出力されたTHz波を電波として放射するアンテナ(26)と、
前記アンテナから放射されたTHz波を収束してビームとして出力する電波レンズ(27)とを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のTHz帯検査装置。
【請求項5】
前記ビーム走査ミラー部は、前記THz波発生器から受けた前記ビームを表面に形成された反射膜で反射して前記検査対象領域内を走査させる反射体(31)を含み、該反射膜の厚さが、
√[2/(ωμσ)] (m)
(ωは前記ビームの角周波数、μは膜材の透磁率、σは膜材の導電率)
で定まる値以上に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のTHz帯検査装置。
【請求項6】
THz帯の電磁波を発生し、これを収束してビームとして出力する段階と、
前記ビームを所定の検査対象領域内で走査させる段階と、
前記検査対象領域内で走査されたTHz帯のビームの透過波または反射波の走査位置毎の強さを検出する段階とを含むことを特徴とするTHz波を用いた検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、THz(テラヘルツ)帯の電磁波の物質に対する吸収率や反射率の違いを利用して各種の検査を行なう技術に関し、特に小型で且つ低コストに構成できるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
THz帯は、光と電波の境界の周波数帯(およそ0.1〜10THz)であり、物質に対して特定の透過率と反射率を示すことが知られている。
【0003】
例えば、紙、繊維、油、木材、脂肪、粉体、氷、半導体、塗料、錠剤、プラスチック、セラミックス等の物質に対しては比較的高い透過性(ただし材料の厚みに応じて減衰)を示し、水、金属、カーボン、アクリル、ジルコニア等に対して強い反射性(非透過性)を示す。
【0004】
このような特性をもつため、例えば透過性物質内の金属、カーボン、アクリル等の混入検査、内部のクラックや錆等の有無の検査等含む各種検査への適用が期待されている。
【0005】
このような検査システムを構成するためには、THz波を検査対象領域に照射するTHz波発生器と、その検査対象領域を透過あるいは反射したTHz波を受けてその検査対象物の画像データを検出するカメラとが必要である。
【0006】
なお、THz波を検査対象に出力し、その画像を所定画素数のセンサを用いたTHzカメラで撮像するシステムが例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−164310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現状のTHz帯のセンサの感度は可視光用の画像センサ(CMOS、CCD等)に比べてかなり低いため、ある広さをもつ検査領域の画像データをカメラで検出するためには、THz波発生器が検査対象領域に照射するTHz波のパワーをその検査対象領域の広さに応じてかなり大きく(例えば10mW程度)しなければならない。
【0009】
このため、上記特許文献1では、320×240画素の画像センサに対して、大出力が得られる量子カスケードレーザ(QCL)を用いているが、この量子カスケードレーザは非常に高価で、しかも発熱が大きいため大掛かりな冷却装置を必要とし、システム全体として非常にコスト高で、大型化するという問題があり、食品製造会社等で食品に対する異物混入検査を行なうためのシステムとしては採算的に採用することは極めて困難であった。
【0010】
本発明は、この問題を解決し、量子カスケードレーザのような大出力のTHz波発生器を用いる必要がなく、低コスト且つ小型に構成できるTHz帯検査装置およびTHz帯を用いた検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1のTHz帯検査装置は、
THz帯の電磁波を発生し、これを収束してビームとして出力するTHz波発生器(21)と、
前記THz波発生器から出力されたビームを受けて所定の検査対象領域内を走査するように出力するビーム走査ミラー部(30)と、
前記検査対象領域を走査するTHz帯のビームの透過波または反射波をそれぞれのセンサ面で受けて走査位置毎の強さを検出する複数のセンサ素子(40a)とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項2のTHz帯検査装置は、請求項1記載のTHz帯検査装置において、
前記ビーム走査ミラー部は、前記ビームの出力方向が同一平面内となるように走査することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項3のTHz帯検査装置は、請求項2記載のTHz帯検査装置において、
前記複数のセンサ素子は、前記同一平面内で走査されるビームの透過波または反射波が入射するそれぞれの位置に並んで配置されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項4のTHz帯検査装置は、請求項1〜3のいずれかに記載のTHz帯検査装置において、
前記THz波発生器は、
第1の光周波数の第1の連続光を出力する第1の光源(22)と、
前記第1の光周波数に対する周波数差がTHz帯に入る第2の光周波数の第2の連続光を出力する第2の光源(23)と、
前記第1の連続光と第2の連続光を合波する合波器(24)と、
前記光合波器の出力を受けて、前記第1の光周波数と第2の光周波数の差の周波数のTHz波を出力する受光器(25)と、
前記受光器から出力されたTHz波を電波として放射するアンテナ(26)と、
前記アンテナから放射されたTHz波を収束してビームとして出力する電波レンズ(27)とを備えていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5のTHz帯検査装置は、請求項1〜4のいずれかに記載のTHz帯検査装置において、
前記ビーム走査ミラー部は、前記THz波発生器から受けた前記ビームを表面に形成された反射膜で反射して前記検査対象領域内を走査させる反射体(31)を含み、該反射膜の厚さが、
√[2/(ωμσ)] (m)
(ωは前記ビームの角周波数、μは反射膜材の透磁率、σは反射膜材の導電率)
で定まる値以上に形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項6のTHz波を用いた検査方法は、
THz帯の電磁波を発生し、これを収束してビームとして出力する段階と、
前記ビームを所定の検査対象領域内で走査させる段階と、
前記検査対象領域内で走査されたTHz帯のビームの透過波または反射波の走査位置毎の強さを検出する段階とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
上記のように本発明では、THz帯の収束されたビームで検査対象領域を走査し、その透過波や反射波の走査位置毎の強度を検出するようにしている。
【0018】
このため、THz波のビームの出力は検査対象領域全体でなく、走査位置毎に必要な量で済むので、低出力のものが使用でき、低コストに且つ小型にシステムを構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したTHz帯検査装置20の構成を示している。
【0021】
このTHz帯検査装置20は、THz波発生器21、ビーム走査ミラー部30、THz帯センサ40、信号処理部50および表示部60によって構成されている。
【0022】
THz波発生器21は、THz帯の収束されたビームを生成出力するものであり、ここでは、二つの光源から出力された周波数差のある光を合波して受光器に入射することでその周波数差に等しい電磁波を生成する技術を用いている。
【0023】
即ち、第1の光周波数faの第1の連続光Paを出力する第1の光源22と、第1の光周波数faに対する周波数差がTHz帯に入る第2の光周波数fbの第2の連続光Pbを出力する第2の光源23と、第1の連続光Paと第2の連続光Pbを合波する合波器24と、合波器24の出力を受けて、第1の光周波数faと第2の光周波数fbの差の周波数|fa−fb|のTHz波(ビート成分)を電気の信号として出力する受光器25と、受光器25から出力されたTHz波を電波として所定方向に放射するアンテナ26と、アンテナ26から放射されたTHz波を収束して所定径のほぼ平行なビームとして出力するシリコン製の電波レンズ27とを有している。
【0024】
なお、第1の光源22、第2の光源23は通信用半導体レーザにより構成され、その少なくとも一方は出射光の波長が可変できる構成となっており、この波長可変により、出力するビームの周波数をTHz帯の中で任意に設定できるようになっている。
【0025】
このような構成のTHz波発生器21の出力は一般的に数10μW〜数100μWで、前記した量子カスケードレーザの出力の1/100程度であるが、格段に小型且つ安価であり、大掛かりな冷却装置も必要としない。
【0026】
ビーム走査ミラー部30は、THz帯のビームBinを受けて所定の検査対象領域E内を走査するように出力する。このビーム走査ミラー部30は、THz帯のビームBinの光の性質を利用したものであり、入力ビームを表面で受けて反射させる反射体の角度を可変させてビーム出力方向を走査する構造、例えば回転多面鏡(ポリゴンミラー)、ガルバノミラー、MEMSミラー、音叉振動ミラー等を用いることができる。
【0027】
図1は、その反射体として回転多面鏡を用いた例を示している。回転多面鏡31は、例えば外形が正8角形でその8つの側面31aが、THz帯のビームに対して高い反射率を示すように例えば金メッキされた反射膜を表面に形成している。この回転多面鏡31の中心部はモータ32の回転軸に連結されており、モータ32に対する通電で回転多面鏡31が一定速度で回転する。
【0028】
ここで、THz帯のビームは高い透過特性を持っている。したがって、ビームが反射膜の下地層にまで達してしまわないように、反射膜を十分な厚みをもって形成しておく必要がある。この反射膜として、次式で求まる表皮厚さδ以上に形成するのが望ましい。
【0029】
δ=√[2/(ωμσ)] (m)
ただし、ωはTHz帯のビームの角周波数(=2πf)、μは反射膜材(この場合、金)の透磁率、σは反射膜材の導電率
【0030】
THz帯のビームが回転多面鏡31の回転軸と直交する平面に沿って入力され、所定方向を向いた側面31aに入力され、その側面31aで反射されるビームの反射方向が、
図1のように入射軸を含む平面内で、有効走査範囲θを連続的に走査されることになる。なお、この有効走査範囲θは、回転多面鏡31の側面長L、側面の中心角αやビームの太さ等によって決まる。
【0031】
このビーム走査ミラー部30には、ビーム出力方向が現在どの位置にあるかを特定するために必要な同期信号を出力する同期信号発生手段33が設けられている。上記回転多面鏡31を用いた構造では、同期信号発生手段33として、例えばモータ32や回転多面鏡31の回転軸に同軸に固定されたロータリーエンコーダから、回転多面鏡31の角度を表す信号を同期信号として出力させる。この同期信号から回転多面鏡31の角度がわかり、予めその角度とビーム出力方向(即ち、後述するTHz帯センサ40のセンサ素子40aの順位)との関係をテーブル化して記憶しておけば、後述の走査位置毎の透過率のデータを正確に取得することができる。
【0032】
THz帯センサ40は、検査対象領域Eを走査するTHz帯のビームBoutの透過波または反射波を受けてその走査位置毎の強さを検出する。
図1では、走査有効範囲θを直線的に走査されるビームBoutの透過波を受けるTHz帯センサ40の例を示している。
【0033】
このTHz帯センサ40は、走査有効範囲θ内で直線的に走査されるビームBoutの透過波を受けるように一列に並んで配置された複数のセンサ素子40aが一体的に結合したアレイ構造を有しており、各センサ素子40aの出力を信号処理部50に出力する。
【0034】
このセンサ素子40aとしては、THz帯に対して有効な感度をもつ素子(例えば特許文献1に記載されているようなマイクロボロメータ)で構成されるが、それらが1列に並んだアレイ構造であるので、従来のようなセンサ素子が縦横に多数並んだ画像素子に比べて格段に低コストに構成でき、しかも、透過波が各センサ素子40aに順番に入射させるように走査されるので、THz波発生器21の出力ビームの強度は、1つのセンサ素子40aのセンサ面でビームスポットをカバーすると仮定すれば、その1つのセンサ面分あれば十分となる。
【0035】
前記特許文献1の数値例を引用すると、画像センサの画素数320×240に対して必要な量子カスケードレーザの出力を10mWと仮定した場合、1画素当りに必要な出力は、10/(320×240)mW≒0.13μWとなる。この実施形態におけるビームのスポット径をカバーするために必要な画像センサの画素数を10×10とし、各センサ素子40aのセンサ面がその10×10の画素分に等しい面積をもつとすれば、必要なビーム出力は、0.13μW×100=13μWとなる。したがって、前記したように、数10μW〜数100μW程度の出力が可能なTHz波発生器21で十分対応できることになる。
【0036】
なお、ここでは、THz帯センサ40を、センサ素子40aが一列に並んだ構造としているが、より小さなセンサ面のセンサ素子40aを縦方向(高さ方向)にはビームスポットの径をカバーする数(例えば10)だけ並べ、横方向(走査方向)には検査領域の幅に応じた数(例えば320)を並べた構造であってもよい。
【0037】
THz帯センサ40の各センサ素子40aの出力は信号処理部50に出力される。信号処理部50では、THz帯センサ40の出力をA/D変換器51によりデジタル値に変換して、これをデータ取得制御手段52によってメモリ53に記憶する。
【0038】
データ取得制御手段52は、同期信号に基づいて走査有効範囲θにおけるビームの走査方向に同期して有効な透過率データをメモリ53に記憶させる。ここで、検査対象物Wが検査対象領域内で静止している静止モードの場合、データ取得制御手段52は検査対象物Wに対する1次元の透過率データを複数回取得してその平均化処理を行なう。
【0039】
また、検査対象物Wが例えば検査用コンベア等により一定速度でビームの走査面と直交する方向に移動(ただしその移動速度はビームの走査速度より十分遅いとする)する搬送モードの場合には、走査毎に得られる透過率データ(またはその平均値のデータ)を順次異なるアドレス領域に記憶することで2次元の透過率データを得る。
【0040】
解析部54は、メモリ53に記憶された透過率データに対して、例えば予め設定した所定のしきい値との比較により、検査対象物Wの異物の有無、傷の有無、錆の有無等の検査を行ない、その検査結果や透過率の画像データ等を表示部60に出力する。
【0041】
例えば、データ取得制御手段52によって
図2に示すような1次元の透過率データが得られた場合、所定のしきい値R以下となる走査位置(センサ素子の位置)P1、P2を検出し、異物、傷等に関する異常を通知する。
【0042】
また、2次元の透過率データに対しても上記同様のしきい値判定を行なったり、透過率の大小に応じてグラフの色の濃さや色合いを変化させて、被検査物の2次元の透過画像を表示させることが可能である。
【0043】
このように、実施形態のTHz帯検査装置20は、細いビームに収束したTHz波で検査対象領域を走査し、その透過波を、走査方向に並んだ複数のセンサ素子40aで受けることで、THz波に対する検査対象物の透過率データを得るようにしているので、THz波発生器として、高価で大掛かりな量子カスケードレーザのような大出力のものが必要なくなり、低コストで小型な検査システムを実現でき、汎用性が極めて高くなる。
【0044】
上記実施形態は、検査対象領域を透過したTHz帯のビームの強さをセンサ素子40aで検出する構造であったが、
図3に示すように、検査対象領域の被検査物Wから反射したTHz帯のビームの強さをセンサ素子40aで検出する構造でもよい。なお、
図3において、入射ビームの走査方向とセンサ素子40aの並び方向を紙面直交方向とする。
【0045】
なお、上記実施形態のビーム走査ミラー部30は、ビームの出力方向が同一平面内で、検査領域を直線的に走査する1次元走査方式であったが、ビームの出力方向を直交2平面上で走査する2次元走査方式を採用してもよい。
【0046】
その場合には、入力するビームを所定平面上で所定角度範囲θx 走査する第1走査部と、その第1走査部の出力を所定平面に直交する平面上で所定角度範囲θy 走査する第2走査部で構成することが考えられるが、これらの第1走査部と第2走査部の反射体として、前記した回転多面鏡、ガルバノミラー、MEMSミラー、音叉振動ミラー等のいずれもが使用できる。また、このようにビーム走査のための反射体が複数ある場合、それぞれの反射体の表面に前記した所定厚さδ以上の反射膜を形成する。
【0047】
図4はその一例を示すもので、第1走査部として前記の回転多面鏡31を用い、第2走査部としてガルバノミラー35を用いている。
【0048】
このビーム走査ミラー部30では、前記同様に回転多面鏡31の前記反射膜が形成された側面からその回転軸に直交する平面(X−Z平面)内で所定角度範囲θx を走査するように出力されたビームを、X軸を中心に平面ミラー35aをモータ35bで往復回転させるガルバノミラー35の平面ミラー35aで受け、その反射ビームがY−Z平面内で所定角度範囲θy
走査されるようにしている。この平面ミラー35aの表面も前記反射膜が形成されている。この場合、同期信号発生手段33は、2次元のビームの出力方向を特定できるように、回転多面鏡31の角度情報と、平面ミラー35aの角度情報とを同期信号として出力することになる。
【0049】
なお、このような2次元のビーム走査を行なう場合には、それを受けるTHzセンサ40としても、センサ素子40aが縦横に複数並んだ2次元配列構造とする必要があるが、前記したように、ビームスポット径が各センサ素子40aのセンサ面に対応するように細く収束させているので、前記同様に低コストで小型な低出力のTHz波発生器21が使用でき、低コストで且つ小型な検査システムを実現できる。
【0050】
また、前記したように、THz波のビームの走査は、前記した回転多面鏡やガルバノミラーのような反射体だけでなく、MEMSミラー、音叉振動ミラー等の反射体およびこれらの任意の組合せによって行なうことができる。
【符号の説明】
【0051】
20……THz帯検査装置、21……THz波発生器、22……第1の光源、23……第2の光源、24……合波器、25……受光器、26……アンテナ、27……電波レンズ、30……ビーム走査ミラー部、31……回転多面鏡、32……モータ、33……同期信号発生手段、35……ガルバノミラー、35a……平面ミラー、35b……モータ、40……THzセンサ、40a……センサ素子、50……信号処理部、51……A/D変換器、52……データ取得制御手段、53……メモリ、54……解析部、60……表示部