特開2015-88301(P2015-88301A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SMK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000003
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000004
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000005
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000006
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000007
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000008
  • 特開2015088301-カードコネクタ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-88301(P2015-88301A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】カードコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6581 20110101AFI20150410BHJP
   H01R 12/73 20110101ALI20150410BHJP
【FI】
   H01R13/6581
   H01R12/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-225128(P2013-225128)
(22)【出願日】2013年10月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良
(72)【発明者】
【氏名】江尻 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
【テーマコード(参考)】
5E021
5E123
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA11
5E021FB02
5E021FB18
5E021FC21
5E021LA03
5E021LA09
5E021LA10
5E021LA15
5E123AA01
5E123AB59
5E123AC23
5E123BA07
5E123BA09
5E123BB12
5E123CA17
5E123CB22
5E123CB31
5E123CB38
5E123CD01
5E123DB25
5E123EA02
5E123EB04
5E123EB12
5E123EB13
5E123EB23
5E123EB26
5E123EB32
5E123GB16
5E123GB42
5E123GB47
5E123GB52
5E123GC01
(57)【要約】
【課題】カードを引き出すための摘み代を確保しつつ、カード全体をシールド可能なカードコネクタの提供。
【解決手段】ハウジング3には、カード挿入部2の外側を覆う固定シールド部6と、カード挿入部2の前方に配置された移動可能な可動シールド部7とを備え、可動シールド部6は、カードAのカード挿入部2の前面開口より突出した部分の上面を覆う可動天板部50と、カードの突出した部分の側面を覆う可動側板部51,52と、可動天板部の前端縁に一体に支持された可動前端板部53とを備えるとともに、固定シールド部6の前方にあって挿入されたカードAの突出部分上面、両側面及び後端面を覆うシールド位置と、固定シールド部6の前方部より離脱してカード挿入部2に対してカードAの挿抜が可能となるオープン位置との間で移動できるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口よりカードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、前記カード挿入部の内底面より突出して前記カード挿入部に挿入されたカードの片面に配置された信号伝達パッドと接触する導電性金属材製の複数のコンタクトとを備え、前記カードがその一部を前記カード挿入部前面開口より水平方向に突出させた状態に前記カード挿入部に挿入されるようにしたカードコネクタであって、
前記ハウジングには、前記カード挿入部の外側を覆う導電性金属材製の固定シールド部と、前記カード挿入部の前方に配置された移動可能な導電性金属材製の可動シールド部とを備え、
前記固定シールド部は、前記カード挿入部の上面を覆う固定天板部と、該固定底板部の側縁に一体に支持され、前記カード挿入部の側面を覆う固定側板部とを備え、
前記可動シールド部は、前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の上面を覆う可動天板部と、該可動天板部の側縁に一体に支持されて前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の側面を覆う可動側板部と、前記可動天板部の前端縁に一体に支持されて前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の前端面を覆う可動前端板部とを備えるとともに、前記固定シールド部の前方にあって前記挿入されたカードの突出部分上面、両側面及び後端面を覆うシールド位置と、前記固定シールドの前方部より離脱して前記カード挿入部に対して前記カードの挿抜が可能となるオープン位置との間で移動できるようにしたことを特徴としてなるカードコネクタ。
【請求項2】
前記可動シールド部は、前記可動側板部の後端より後方に向けて延出した形状の回動アームを備え、該回動アームの後端が前記固定シールド部の固定側板部に枢支され、前記シールド位置と前記オープン位置との間で回動できるようにした請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記可動天板部は、その前後幅が前記コンタクトの位置及び長さに整合し、且つ、誤って前記カード挿入部に挿入されることが想定される非正規カードの全長よりも狭くなるように形成してなる請求項1又は2に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記各固定側板部の前端より前方に延出した配置に一対の固定延出部を備えるとともに、該固定延出部と一体にばね状の弾性接続片を備え、前記可動シールド部の可動側板部が前記シールド位置において前記弾性接続片と弾性的に接触するようにした請求項1〜3の何れか1項に記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記カード挿入部の前方に前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の下面を覆う下面シールド部を前記固定シールドと一体に備えた請求項1〜4の何れか1項に記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記下面シールド部は、前記各固定延出部の下縁より水平方向内側に折り曲げた形状に形成され、互いに端縁が突き合わされる一対の下面シールド板を備え、該両下面シールド板で前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の下面を覆うようにした請求項5に記載のカードコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードやフラッシュメモリーカード等のカードを携帯電話機やスマートフォン等の電子機器に搭載されたプリント配線基板に接続するためのカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機やスマートフォン等の電子機器の外部記憶媒体としてICカードやフラッシュメモリーカード等のカードが使用されており、このカードと電子機器に搭載されたプリント配線基板とをカードコネクタを介して電気的に接続させている。
【0003】
この種のカードコネクタは、ICカード等のカードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、カード挿入部の底部より突出させた弾性接触片を有する導電性金属板材からなる複数のコンタクトとを備え、カードをカード挿入部に挿入することで、カードの片面側に形成された信号伝達端子(パッド)が対応するコンタクトの弾性接触片と接触し、プリント配線基板とカードとを電気的に接続させるようになっている。
【0004】
また、この種のカードコネクタにおいては、ハウジングを絶縁合成樹脂製のモールド部材と、モールド部材の外側を覆う導電性金属材製のシールドカバーとを組み合せて構成し、シールドカバーによって電磁ノイズを遮蔽し、カード使用時にカードより生ずる電磁波がプリント配線基板に実装された他の電子部品に及ぼす影響を軽減するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
一方、この種のカードコネクタにおいては、シールドカバーの一部又は全部のカード挿抜方向の全長をカードの全長より短く形成し、カードをハウジングに挿入した状態においてカードの後端をカード挿入部の開口より突出させた状態に露出させ、その露出した部分を摘まむなりしてカードをハウジングより引き出せるようにした、所謂Push−Pull(プッシュ−プル)方式のものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
このPush−Pull方式のカードコネクタでは、カードをカード挿入部の開口より突出させた状態に露出させ、その露出した部分を摘み代とし、その摘み代を摘まむなりしてハウジングよりカードを引き出せるようにしたことにより、特殊なカード取出し機構を備える必要が無く、その分、カードコネクタの小型化及び低廉化を図ることができるという利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−135667号公報
【特許文献2】特開2013−54885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如き従来のカードコネクタでは、カードを挿抜するために常にカード挿入部の後端部を開口させた状態にしておかなくてはならず、その為、カードの後端面をシールドすることができなかった。
【0009】
また、従来のカードコネクタでは、カードの前端部分がカード挿入部前面開口より水平に突出した状態に露出している場合、カードの露出した部分より発せられる電磁波をシールドカバーによって完全に遮蔽することができず、その電磁波がプリント配線基板に実装された他の電子部品に影響を及ぼす虞があった。
【0010】
特に、上述した従来のPush-Pull方式のカードコネクタにおいては、カードを引き出すための摘み代を確保するため、ある程度カード後端部をカード挿入部の開口部より突出させた状態に露出させなければならず、その露出した部分(摘み代)から漏れる電磁波が問題となる虞があった。
【0011】
一方、従来のカードコネクタでは、適応する正規カードよりもサイズの小さな非正規カードが誤ってカード挿入部に挿入されてしまった場合、その非正規カード全体がシールドカバーに覆われてしまうため、カードを引き出すための摘み代が失われ、取り出すのが困難であるという問題もあった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、カードを引き出すための摘み代を確保しつつ、カード全体をシールド可能なカードコネクタの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、前面開口よりカードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、前記カード挿入部の内底面より突出して前記カード挿入部に挿入されたカードの片面に配置された信号伝達パッドと接触する導電性金属材製の複数のコンタクトとを備え、前記カードがその一部を前記カード挿入部前面開口より水平方向に突出させた状態に前記カード挿入部に挿入されるようにしたカードコネクタであって、前記ハウジングには、前記カード挿入部の外側を覆う導電性金属材製の固定シールド部と、前記カード挿入部の前方に配置された移動可能な導電性金属材製の可動シールド部とを備え、前記固定シールド部は、前記カード挿入部の上面を覆う固定天板部と、該固定底板部の側縁に一体に支持され、前記カード挿入部の側面を覆う固定側板部とを備え、前記可動シールド部は、前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の上面を覆う可動天板部と、該可動天板部の側縁に一体に支持されて前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の側面を覆う可動側板部と、前記可動天板部の前端縁に一体に支持されて前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の前端面を覆う可動前端板部とを備えるとともに、前記固定シールド部の前方にあって前記挿入されたカードの突出部分上面、両側面及び後端面を覆うシールド位置と、前記固定シールドの前方部より離脱して前記カード挿入部に対して前記カードの挿抜が可能となるオープン位置との間で移動できるようにしたカードコネクタにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記可動シールド部は、前記可動側板部の後端より後方に向けて延出した形状の回動アームを備え、該回動アームの後端が前記固定シールド部の固定側板部に枢支され、前記シールド位置と前記オープン位置との間で回動できるようにしたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記可動天板部は、その前後幅が前記コンタクトの位置及び長さに整合し、且つ、誤って前記カード挿入部に挿入されることが想定される非正規カードの全長よりも狭くなるように形成してなることにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1項の構成に加え、前記ハウジングは、前記各固定側板部の前端より前方に延出した配置に一対の固定延出部を備えるとともに、該固定延出部と一体にばね状の弾性接続片を備え、前記可動シールド部の可動側板部が前記シールド位置において前記弾性接続片と弾性的に接触するようにしたことにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜4の何れか1項の構成に加え、 前記ハウジングは、前記カード挿入部の前方に前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の下面を覆う下面シールド部を前記固定シールドと一体に備えたことにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項5の構成に加え、前記下面シールド部は、前記各固定延出部の下縁より水平方向内側に折り曲げた形状に形成され、互いに端縁が突き合わされる一対の下面シールド板を備え、該両下面シールド板で前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の下面を覆うようにしたことにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るカードコネクタは、上述したように、前面開口よりカードが挿入されるカード挿入部を有するハウジングと、前記カード挿入部の内底面より突出して前記カード挿入部に挿入されたカードの片面に配置された信号伝達パッドと接触する導電性金属材製の複数のコンタクトとを備え、前記カードがその一部を前記カード挿入部前面開口より水平方向に突出させた状態に前記カード挿入部に挿入されるようにしたカードコネクタであって、前記ハウジングには、前記カード挿入部の外側を覆う導電性金属材製の固定シールド部と、前記カード挿入部の前方に配置された移動可能な導電性金属材製の可動シールド部とを備え、前記固定シールド部は、前記カード挿入部の上面を覆う固定天板部と、該固定底板部の側縁に一体に支持され、前記カード挿入部の側面を覆う固定側板部とを備え、前記可動シールド部は、前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の上面を覆う可動天板部と、該可動天板部の側縁に一体に支持されて前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の側面を覆う可動側板部と、前記可動天板部の前端縁に一体に支持されて前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の前端面を覆う可動前端板部とを備えるとともに、前記固定シールド部の前方にあって前記挿入されたカードの突出部分上面、両側面及び後端面を覆うシールド位置と、前記固定シールドの前方部より離脱して前記カード挿入部に対して前記カードの挿抜が可能となるオープン位置との間で移動できるようにしたことにより、カード挿抜時においてはカードの摘み代を十分確保し容易にカードの挿抜作業を行え、カード使用時においてはカード全体をシールドすることができる。
【0020】
また、本発明において、前記可動シールド部は、前記可動側板部の後端より後方に向けて延出した形状の回動アームを備え、該回動アームの後端が前記固定シールド部の固定側板部に枢支され、前記シールド位置と前記オープン位置との間で回動できるようにしたことにより、可動シールド部をシールド位置とオープン位置とを好適に切り替えることができる。
【0021】
更に、本発明において、前記可動天板部は、その前後幅が前記コンタクトの位置及び長さに整合し、且つ、誤って前記カード挿入部に挿入されることが想定される非正規カードの全長よりも狭くなるように形成してなることにより、カード挿入部に正規のカードよりサイズの小さな非正規カードが挿入された場合であっても、非正規カードを引き抜くための十分な摘み代を確保することができ、容易に非正規カードを取り出すことができる。
【0022】
更に、本発明において、前記ハウジングは、前記各固定側板部の前端より前方に延出した配置に一対の固定延出部を備えるとともに、該固定延出部と一体にばね状の弾性接続片を備え、前記可動シールド部の可動側板部が前記シールド位置において前記弾性接続片と弾性的に接触するようにしたことにより、固定シールド部と可動シールド部とを確実に電気的に接続させ、高いシールド効果を発揮することができる。
【0023】
更にまた、本発明において、前記ハウジングは、前記カード挿入部の前方に前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の下面を覆う下面シールド部を前記固定シールドと一体に備えたことにより、カード下面からの電磁波(ノイズ)の漏出を防止し、他の電子機器への影響を抑止することができる。
【0024】
また、本発明において、前記下面シールド部は、前記各固定延出部の下縁より水平方向内側に折り曲げた形状に形成され、互いに端縁が突き合わされる一対の下面シールド板を備え、該両下面シールド板で前記カードのカード挿入部前面開口より突出した部分の下面を覆うようにしたことにより、固定シールド部、固定延出部及び下面シールド部をプレス加工により一体成形することができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るカードコネクタの一例を示す斜視図である。
図2】同上のカードコネクタの下側見た斜視図である。
図3】同上のカードコネクタであって、可動シールド部をオープン位置に移動させた状態を示す斜視図である。
図4図1中のモールド部材を示す斜視図である。
図5】本発明に係るカードコネクタに正規のカードを挿入した状態を示す平面図であって、可動シールド部をオープン位置とした図である。
図6】同上のカードコネクタに非正規のカードを挿入した状態を示す平面図であって、可動シールド部をオープン位置とした図である。
図7】本発明に係るカードコネクタに正規のカードを挿入した状態を示す縦断面図であって、可動シールド部をシールド位置とした図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係るカードコネクタの実施態様を図1図7に示す実施例に基づいて説明する。図中符号1はカードコネクタ、符号Aはカードコネクタ1に適応したカードである。尚、本実施例においては、カード挿入方向手前側を前とし、奥側を後として説明する。
【0027】
カードコネクタ1は、前面開口よりカードAが挿入されるカード挿入部2を有するハウジング3と、カード挿入部2の内底面より突出した導電性金属材製の複数のコンタクト4,4...とを備え、カード挿入部2にカードAを挿入することにより、各コンタクト4,4...がカードAの片面に配置された対応する信号伝達パッドa1,a1...と接触することによりカードAとカードコネクタ1が実装された接続基板とを電気的に接続するようになっている。
【0028】
また、このカードコネクタ1は、カード挿入部2に対し、カードAがその一部をカード挿入部2の前面開口より水平方向に突出させた状態に挿入され、その突出部分を摘み代としてカードAを挿抜するようにした所謂Push−Pull(プッシュ‐プル)方式となっている。
【0029】
尚、ここで摘み代Aaとは、カードAのカード挿入部2前面開口より突出した部分であって、カードAの挿抜作業時において、作業者の指先が直接カードAに触れてカードAに対し力を作用させることができる部分をいうものとする。
【0030】
ハウジング3は、絶縁性合成樹脂材製のモールド部材5と、導電性金属板材製の固定シールド部6と、固定シールド部6の前方に配置された移動可能な導電性金属板材製の可動シールド部7とを備え、固定シールド部6内にモールド部材5を組み込むことにより前面に開口したカード挿入部2が形成され、カードAがその一部、即ち前半部をカード挿入部2の前面開口より水平方向に突出させた状態にカード挿入部2に挿入されるようになっている。
【0031】
また、このハウジング3では、可動シールド部7が、固定シールド部6の前方にあって挿入されたカードAのカード挿入部2前面開口より突出した部分の上面、両側面及び後端面を覆うシールド位置と、固定シールド部6の前方部より離脱してカード挿入部2に対してカードAの挿抜が可能となるオープン位置との間で移動できるようになっている。
【0032】
モールド部材5は、図4に示すように、絶縁性合成樹脂材により横長直方体状に形成され、平板状の底板部10と、底板部10の左右側部に配置された側壁部11,12と、底板部10の後縁より立ち上げた形状の後壁部13とを備え、底板部10上に両側壁部11,12及び後壁部13に囲まれて前面及び上面が開口した凹み状のカード挿入部2が形成されている。
【0033】
また、このモールド部材5には、底板部10にインサート成形によって前後方向に向けた複数のコンタクト4,4...がコネクタ幅方向に並べて組み込まれ、各コンタクト4,4...がカード挿入部2の内底面より突出し、挿入されたカードAの片面奥側に配列された対応する各信号伝達パッドa1,a1...と接触するようになっている。
【0034】
各コンタクト4,4...は、弾性を有する導電性金属板材を打ち抜き・折り曲げ加工することにより形成され、底板部10に形成された矩形状の開口部14の前後内縁部にそれぞれ端部が埋設され、開口部14の前後内縁に架け渡した配置に底板部10に組み込まれた固定片20と、一端が固定片20の前端部に一体に支持されて片持ちへの字状の弾性接触片21と、固定片20の他方の端部より延出した形状に形成された基板接続片22とを備え、弾性接触片21のへの字状頂部が接点21aを成し、挿入されたカードAの表面に押圧されて弾性接触片21が弾性変形し、接点21aが対応する信号伝達パッドa1,a1...と接触するようになっている。
【0035】
尚、図中符号23は、カード検出用スイッチであって、カードAがカード挿入部2に挿入された際、カードAの外周面に押圧されてスイッチ端子が弾性変形し、それに伴いスイッチのオン・オフ状態が切り替わるようになっている。
【0036】
固定シールド部6は、導電性金属板材をプレス加工することにより形成され、カード挿入部2の上面を覆う固定天板部30と、固定天板部30の両側縁に一体に支持された鉛直下向きに折り曲げた形状の両固定側板部31,32と、固定天板部30の後縁に一体に支持された鉛直下向きに折り曲げた形状の固定後端板部33とを備え、カード挿入部2を含むモールド部材5の上面、両側面及び後端面を覆い、固定天板部30がカード挿入部2の上面を閉鎖するようになっている。
【0037】
固定天板部30は、矩形平板状に形成され、且つ、その前後幅wがカードAの全長に比して十分に短くなるように形成され、図5に示すように、カード挿入部2に対しカードAは、その一部、即ち、前半部をカード挿入部2の前面開口より前方に向けて水平に突出させた状態に挿入され、カード挿抜時における十分な摘み代Aaが確保されるようになっている。
【0038】
一方、この固定天板部30は、図3に示すように、その前後幅wがコンタクト4,4...の位置及び長さに整合し、且つ、カード挿入部2に誤って挿入されることが想定される非正規カードBの全長よりも短くなるように形成されることが好ましく、その場合、図6に示すように、非正規カードBが誤ってカード挿入部2に挿入されても、非正規カードBを引き出すために必要な摘み代Baが確保できる。
【0039】
ここで、固定天板部30の前後幅wがコンタクト4,4...の位置及び長さに整合するとは、コンタクト4,4...の位置及び長さによって定まるコンタクト4,4...群が底板部10上に占める一定の範囲に固定天板部3の前後幅wを合わせることを言う。
【0040】
より詳しくは、固定天板部30の前後幅wを、カード挿入部2に挿入されたカードAの片面が固定天板部30に当接して反力を取り、カードAに対してコンタクト4,4...が一定の接触圧で安定して接触するに足る幅とすることをいい、例えば、信号伝達パッドa1,a1...が後端部に配列されているカードAにおいては、固定天板部30の前後幅wがカードA後半部上面のみを覆うことができる幅であればよい。
【0041】
尚、非正規カードBは、例えば、ICカードであって、カード全幅に比してカード全長が長い矩形状に形成され、その全長が正規のカードAの全長より短く形成されている。
【0042】
各固定側板部31,32は、細長矩形状に形成され、その外側面に絞り加工により外向きに突出した枢支軸34が一体に突設され、この枢支軸34に後述する可動シールド部7の回動アーム54,54が枢支されるようになっている。
【0043】
また、各固定側板部31,32には、固定用係合孔35が形成され、モールド部材5の両側面に突設された固定用係合突起36が固定用係合孔35と互いに係合することにより、固定シールド部6内にモールド部材5が固定されるようになっている。
【0044】
また、固定シールド部6には、固定天板部30の後端両側部に固定シールド基板接続部37が一体に備えられ、この固定シールド基板接続部37を実装基板に形成されたグランド用パターンに半田付けすることにより、カードコネクタ1が実装基板に固定されるとともに、固定シールド部6を接地できるようになっている。
【0045】
各固定シールド基板接続部37は、固定天板部30の後端縁より鉛直下向きに折り曲げた形状の支持片37aと、支持片37aの下縁より水平外向きに折り曲げた形状の実装片37bとを備え、実装片37bを実装基板に形成されたグランド用パターンに半田付けするようになっている。
【0046】
また、ハウジング3は、固定側板部31,32の前端より前方に延出した配置に一対の固定延出部40,40を固定シールド部6と一体に備えるとともに、カード挿入部2の前方に配置される下面シールド部41を固定シールド部6と一体に備え、下面シールド部41によりカード挿入部2に挿入されたカードAのカード挿入部2前面開口より突出した部分の下面を覆うようになっている。
【0047】
この両固定延出部40,40及び下面シールド部41は、固定シールド部6と共に同一の導電性金属板材をプレス加工することにより一体に形成される。
【0048】
固定延出部40,40は、固定側板部31,32の前端に一体に支持された内側延出板42と、内側延出板42の上縁より外側に折り返した形状の外側延出板43とをもって構成されている。
【0049】
また、ハウジング部3には、固定延出部40と一体にばね状の弾性接続片44,44...を備え、この弾性接続片44,44...は、内側延出板42に一体に支持されて外向きに突出したばね状を成すことにより固定延出部40と一体に形成され、可動シールド部7の内側面がシールド位置において弾性接触するようになっている。
【0050】
この弾性接続片44,44...は、内側延出板42及び外側延出板43に亘って縦向きスリット状の切れ込みを入れることにより形成され、一端が内側延出板42に一体に支持された逆U字ばね状を成し、他端に円弧状の接点部44aが一体に形成されている。
【0051】
下面シールド部41は、各固定延出部40,40の下縁より水平方向内側に折り曲げた形状に形成され、互いに端縁が突き合わされる一対の下面シールド板45,45を備え、両固定延出部40,40と両下面シールド板45,45とによって、カード挿入部2の前方にカードAの突出部分が嵌り込む凹状に形成されている。
【0052】
各下面シールド板45,45は、互いに突き合わされる接合端部にそれぞれ嵌合凸部46及び嵌合凹部47が形成され、互いの嵌合凸部46と嵌合凹部47とを嵌め合わせることにより両下面シールド板45,45が強固に接合されるようになっている。
【0053】
また、各下面シールド板45,45には、側縁部に下面シールド基板接続部48,48...を備え、この下面シールド基板接続部48,48...を実装基板に形成されたグランド用パターンに半田付けすることにより、カードコネクタ1が実装基板に固定されるとともに、下面シールド部41を接地できるようになっている。
【0054】
尚、下面シールド基板接続部48,48...は、例えば、下面シールド板45,45の側縁部にコ字状の切れ目を入れることにより形成される。
【0055】
可動シールド部7は、導電性金属板材をプレス加工することにより形成され、平板状の可動天板部50と、可動天板部50の両側縁に一体に支持された鉛直下向きに折り曲げた形状の可動側板部51,52と、可動天板部50の前縁に一体に支持された鉛直下向きに折り曲げた形状の可動前端板部53とを備え、後面及び下面が開口した中空箱状を成している。
【0056】
また、可動シールド部7には、可動側板部51,52の後端より後方に向けて延出した形状の回動アーム54,54を備え、回動アーム54,54の後端が固定シールド部6の固定側板部31,32に枢支され、シールド位置と前記オープン位置との間で回動できるようにしている。
【0057】
回動アーム54,54は、可動側板部51,52と一体に形成された基部55と、基部55の下縁より外側に折り返した形状の補強部56とからなる二重構造を成し、高い強度を確保している。
【0058】
また、基部55の端部には、枢支孔57が形成され、この枢支孔57に固定側板部31,32に突設された枢支軸34が挿入され、固定側板部31,32に回動アーム54,54を介して可動シールド部7が回動可能に軸支されるようになっている。
【0059】
一方、両可動側板部51,52には、前端部に仮固定用孔58が形成され、シールド位置においてこの仮固定用孔58に手前側の弾性接続片44の接点部44aが嵌り込むことにより、可動シールド部7を固定延出部40,40に仮固定した状態、所謂ハーフロック状態とすることができる。
【0060】
尚、このハーフロック状態は、一定以上の力で可動シールド部7を回動させることにより解除できるようになっている。
【0061】
このように構成されたカードコネクタ1では、図3に示すように、可動シールド部7を回動させてオープン位置に移動させることにより、カード挿入部2の前面開口が露出し、カード挿入部2に対してカードAを挿抜することができる。
【0062】
その際、カード挿入部2に挿入されたカードAは、その一部、即ち、前半部がカード挿入部2の前面開口より水平に突出した状態にあるので、その突出部分を摘み代AaとしてカードAを容易に挿抜することができる。
【0063】
また、固定天板部30の前後幅wは、非正規カードBよりも短く形成されているので、カード挿入部2に対して非正規カードBが誤って挿入された場合であっても、非正規カードBの前端部がカード挿入部2の前面開口より水平方向に突出した状態となり、その突出部分を摘み代Baとして容易に非正規カードBをカードコネクタ1より取出すことができる。
【0064】
一方、図7に示すように、可動シールド部7を回動させてシールド位置に移動させることにより、固定シールド部6、可動シールド部7及び下面シールド部41によって、カードA全面が覆われる。
【0065】
そして、可動シールド部7の可動側板部51,52の内面が固定延出部40,40の外側に嵌り込み、弾性接続片44,44...が可動側体部の内側面に弾性接触して固定シールド部6と、可動シールド部7とが電気的に接続され、カードAより発せられる電磁波(ノイズ)を漏れなく遮蔽できるようになる。
【0066】
また、弾性接続片44の接点部44aが仮固定用孔58に嵌り込み、可動シールド部7がハーフロックされた状態となる。
【0067】
また、カード挿入部2にカードAが挿入された状態においては、可動シールド部7をシールド位置とすることにより、可動後端板部によってカードAの抜け出し方向の移動が規制され、可動天板部50によってカードA後端側の浮き上がりが規制されるので、カードAに対するコンタクト4,4...の安定した接触状態が維持されるようになっている。
【0068】
尚、上述の実施例においては、可動シールド部7に回動アーム54,54を備え、回動アーム54,54を固定シールド部6に軸支させることにより前後方向に回動し、シールド位置とオープン位置との間で移動できるようにした例について説明したが、可動シールド部7の態様は、上記実施例に限定されず、例えば、固定天板部30と可動天板部50とに跨った蝶番を備え、当該蝶番を介して可動シールド部7が前後方向に回動できるようにしたものであってもよく、可動シールド部7を固定延出部40,40に枢支させ、横方向に回動するようにしたものであってもよい。
【0069】
更には、可動シールド部7を固定シールド部6に対し着脱可能とし、可動シールド部7の着脱によりシールド位置とオープン位置との切替えをするようにしてもよい。
【0070】
また、本発明に係るカードコネクタ1は、カードAの態様が小型フラッシュメモリーカードに限定されず、その他の各規格のカードに適用することができる。
【0071】
更にまた、上述の実施例では、カードコネクタ1を所謂プッシュ‐プル方式とした例について説明したが、カードコネクタは、これに限定されず、その他の取出し機構を採用した方式にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
A カード(正規)
B 非正規カード
1 カードコネクタ
2 カード挿入部
3 ハウジング
4 コンタクト
5 モールド部材
6 固定シールド部
7 可動シールド部
10 底板部
11,12 側壁部
13 後壁部
14 開口部
20 固定片
21 弾性接触片
22 基板接続片
23 カード検出用スイッチ
30 固定天板部
31,32 固定側板部
33 固定後端板部
34 枢支軸
35 固定用係合孔
36 固定用係合突起
37 固定シールド基板接続部
40 固定延出部
41 下面シールド部
42 内側延出板
43 外側延出板
44 弾性接続片
45 下面シールド板
46 嵌合凸部
47 嵌合凹部
48 下面シールド基板接続部
50 可動天板部
51,52 可動側板部
53 可動前端板部
54 回動アーム
55 基部
56 補強部
57 枢支孔
58 仮固定用孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7