特開2015-8883(P2015-8883A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-8883(P2015-8883A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20141216BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20141216BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   A61F13/18 331
   A61F13/18 307Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-136209(P2013-136209)
(22)【出願日】2013年6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】平野 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 浩二
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA06
3B200BB17
3B200CA11
3B200CA14
3B200DA13
3B200DB02
3B200DB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フィット感、装着感および吸収性能に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート2と、不液透過性のバックシートと、トップシート2とバックシートの間に配置された吸収層3からなる吸収性物品1であって、吸収層は上下2層構造を有し、下層吸収層32の面積は上層吸収層31の面積の40〜70%、下層吸収層の基材の坪量は上層吸収層の坪量の80〜160%、下層吸収層のSAP坪量は上層吸収層のSAP坪量の100〜300%であり、上層吸収層と下層吸収層が重なる領域に、下層吸収層に至るまでチャネルエンボス8を設けている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、
不液透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収層を備えた吸収性物品であって、
前記吸収層は上層と下層とが少なくとも一部重なった上下2層構造を有し、
前記下層の面積は前記上層の面積の40〜70%であり、
前記下層の基材の坪量は、前記上層の基材の坪量の80〜160%であり、
前記下層の高吸収性ポリマーの坪量は、前記上層の高吸水性ポリマーの坪量の100〜300%であり、
前記上層と前記下層が重なる領域に前記上層から前記下層に至るまでチャネルエンボスが形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記チャネルエンボスは、複数のチャネルエンボスを有し、
長手方向前方部に設けられた幅方向内側に湾曲する一対の第1チャネルエンボスと、
長手方向後方部に設けられた幅方向外側に湾曲する一対の第2チャネルエンボスと、
前記第2チャネルエンボスの内側に設けられた長手方向後方部に突出する略U字形状の第3チャネルエンボスと、
長手方向両端部に設けられた長手方向外側に湾曲する一対の第4チャネルエンボスとが、
それぞれ離間して形成されていることを特徴とする請求項1の吸収性物品。
吸収性
【請求項3】
前記下層の厚さが前記上層の厚さの、50〜200%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記下層における前記チャネルエンボスの深さは、前記下層の厚さの10〜90%であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性能、フィット感に優れた使い捨ての吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿吸収パッド、パンティライナー、生理用ナプキン、紙オムツ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、不液透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に設けた吸収層とを有する構造が一般的であり、その際、吸収層は、パルプ等の基材中に、高吸収性ポリマー(SAP:Superabsorbent Polymer)を混合させていることが多い。使用者は、下着への吸収性物品の装着、あるいは、パンツ型の吸収性物品の着用により、血液、尿等の液体(以下、体液と称する。)を吸収性物品に吸収させている。
【0003】
吸収性物品は、例えば、長時間の着用により、大量の体液を吸収する場面が多く存在しており、体液の横漏れ防止や、着用する際のフィット感の向上を図るため、各構成に対する組成、構造等の開発が行われている。
【0004】
特許文献1には、肌当接面を構成する表面シート、非肌当接面を構成する裏面シート及び両シート間に介在する吸収体を備えた縦長の吸収性物品であって、前記吸収体は、吸収性物品の排泄領域のみに、周辺部よりも厚みが厚い中高部を有し、吸収性物品の肌当接面における少なくとも前記中高部の幅方向外方には、それぞれ、前記表面シートと前記吸収体とを一体化する外溝が形成されており、吸収性物品の肌当接面における前記中高部の後方近傍には、吸収性物品の幅方向に延びる中溝が形成されており、該中溝の両端部は、それぞれ、該中高部よりも幅方向外方に位置し且つ前記外溝から離間している吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、前記吸収体の非肌当接面側に、排血口部より後方の幅方向中央部の交点から斜め前方の両側に向けて形成された左右一対の前方溝と、前記交点から前記吸収性物品の長手方向に沿う後方に向けて形成された後方溝とから成るY字状溝が形成されていることを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−056269号公報
【特許文献2】特開2012−071102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では吸収性物品の中央部分に、下層よりも面積を縮小させた上層を配置すると、液体吸収前はフィット性が向上し、装着時の違和感は軽減するものの、吸収層上下2層の厚みの差により、生産時に吸収性物品の表面へ皺が入り、肌への負担が増える恐れや、吸収後には中高部分のみが極端に膨れ上がり、装着感とフィット性が悪くなることがある。さらに、特許文献2では複数の溝を形成した吸収層の場合、装着感とフィット性は向上するものの、吸収性物品の作業工程数が増加し、生産性に劣るものとなった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は簡単な構成で、装着感、フィット性及び吸収性能に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、不液透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収層を備えた吸収性物品であって、前記吸収層は上層と下層とが少なくとも一部重なった上下2層構造を有し、前記下層の面積は前記上層の面積の40〜70%であり、前記下層の基材の坪量は、前記上層の基材の坪量の80〜160%であり、前記下層のSAPの坪量は、前記上層の高吸収性ポリマーの坪量の100%〜300%であり、前記上層と前記下層が重なる領域に前記上層から前記下層に至るまでチャネルエンボスが形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、所定の面積・坪量を有する吸収層2層と、所定の位置に配置されたチャネルエンボスにより、装着感に優れ、フィット性及び吸収性能が向上した吸収性物品となる。
【0011】
(2)本発明の吸収性物品は、(1)の構成において、前記チャネルエンボスは、複数のチャネルエンボスを有し、長手方向前方部に設けられた幅方向内側に湾曲する一対の第1チャネルエンボスと、長手方向後方部に設けられた幅方向外側に湾曲する一対の第2チャネルエンボスと、前記第2チャネルエンボスの内側に設けられた長手方向後方部に突出する略U字形状の第3チャネルエンボスと、長手方向両端部に設けられた長手方向外側に湾曲する一対の第4チャネルエンボスとが、それぞれ離間して形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、所定の位置に複数の独立したエンボスを設けることにより、吸収速度と液戻りの防止力を向上することができる。
【0013】
(3)本発明の吸収性物品は、(1)または(2)のいずれかの構成において、前記下層の厚さが前記上層の厚さの、50〜200%であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、所定の割合の厚さである吸収層上下2層により、吸収後のフィット感を向上させることができる。
【0015】
(4)本発明の吸収性物品は、(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記下層における前記エンボスの深さは、前記下層の厚さの10〜90%であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、トップシートと吸収層上下2層が一体化することにより、フィット感と吸収速度をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単な構成で、装着感、フィット性及び吸収性能に優れた吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明にかかる吸収性物品の概略図である。
図2図1の吸収性物品におけるX1−X1’、X2−X2’、Y−Y’断面図である。
図3】従来における吸収性物品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
上記課題を解決するため、本発明の吸収性物品の好ましい実施の形態(以下、実施形態という)を、以下に詳細に説明する。実施形態の説明は全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0020】
本明細書において、吸収性物品等の「長手方向」とは、吸収性物品が着用された際に、使用者の前後に渡る方向を示し、吸収性物品等の「幅方向」とは、「長手方向」に対して、横又は直交する方向を示す。
【0021】
本発明における吸収性物品1の一実施形態について、図1ないし図2にて説明する。吸収性物品1は、肌と接触する側から順に、液透過性のトップシート2、トップシート2とバックシート4の間に配置されて、吸収層3は上下2層構造で、上層に位置する液保持性の吸収層31(以後、上層吸収層31と称する。)及び下層に位置する液保持性の吸収層32(以後、下層吸収層32と称する。)、トップシート2から下層吸収層32にかけて、バックシート4側にチャネルエンボス8(凹状のエンボス)を規定の形状に形成し、さらに、液不透過性のバックシート4が厚さ方向に重ねて配置され、立体ギャザー5を含めて、吸収性物品本体10を構成している。また、本実施形態の吸収性物品1の着用時には、長手方向前方部Aが使用者の前(腹)側に配され、後方部Bが使用者の後(背中)側に配される。
【0022】
本発明の吸収性物品1としては、特に制限はないが、例えば、尿吸収パッド、パンティライナー、生理用ナプキン、紙オムツ等をあげることができる。
【0023】
本実施形態のトップシート2の基材は、血液、体液等の液体が吸収層3へと移動するような液透過性を備えていればよく、例えば、エアースルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。なかでも、尿等の逆戻り防止の観点から、前記エアースルー不織布や漏斗状断面を有する開口性フィルムが好ましい。また、液透過性を向上させるために、トップシート2にエンボス加工や穿孔加工を施すことが好ましい。その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。また、肌への刺激を低減させるために、トップシート2に、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。さらに、強度および加工性の点から、トップシート2の坪量は、10〜50、さらに好ましくは15〜30g/m程度であることが好ましい。
【0024】
トップシート2の肌当接面側に、立体ギャザー5を長手方向両側縁部に、長手方向前方部Aから長手方向後方部Bにかけて設けることが好ましい。立体ギャザーの幅方向外側の部分は、トップシート2に固定され、幅方向内側の部分は、バックシート4に固定されず、長手方向に沿って糸ゴム等の立体ギャザー用弾性部材51を備えることで、起立性を有し、使用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能となる。
【0025】
また、トップシート2の肌当接面側には、吸収性物品1の横漏れをより確実に防ぐために、吸収性物品1の幅方向両側縁部から幅方向内側にかけて、バリヤシート(図示せず)を設けることも好ましい。サイドシートの基材は、液不透過性であることが好ましく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。さらに、吸収性物品1の幅方向両側縁から幅方向外側に突出するウイング状フラップ(図示せず)を設けることも好ましい。ウイング状フラップは、例えば、バックシート4と、不織布との積層により形成することができる。
【0026】
本実施形態の吸収層3は、下層吸収層32の面積を、上層吸収層31の40〜70%とする上下2層構造をとることで、下層吸収層32の面積が上層吸収層31の面積より広いものと比較して、生産時に吸収性物品1の肌当接面側に皺が入りにくくなる。また、下層吸収層32の基材の坪量を、上層吸収層31の基材の坪量の80〜160%、下層吸収層32の高吸収性ポリマーの坪量を、上層吸収層31の高吸水性ポリマーの坪量の100〜300%とすることで、体液に対する吸収性能が向上する。
【0027】
上層吸収層31及び下層吸収層32の面積は、室温にて静置された吸収性物品1から、吸収層3を取出し、トップシート2、バックシート4といった吸収層3以外のものをなるべく排除したものを測定に使用した。吸収層の面積は、吸収体を上部より撮影し、三谷商事株式会社製画像処理ソフトWin ROOFを使用し、画像処理により測定することができる。
【0028】
さらに、下層吸収層32の厚さW2が上層吸収層31の厚さW1の、50〜200%であることにより、フィット性が向上し、モレ防止効果が生じる。
【0029】
上層吸収層31及び下層吸収層32の厚さは、面積の測定と同様に、吸収性物品1から吸収層3を取出したものを測定に使用した。吸収層の厚さは、無荷重下、および荷重下35gf/cmにて、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)等の測定機器の使用により、測定することができる。
【0030】
吸収層3の基材は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。この中で、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。かかるフラッフパルプとしては、木材パルプ及び合成繊維、ポリマー繊維等の非木材パルプを綿状に解繊したものをあげることができる。また、吸収性能および肌触りを損なわないよう、下層吸収層32の基材の坪量を300〜600g/mとすることが好ましい。
【0031】
吸収層3の高吸収性ポリマー(SAP)は、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、 (イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、といった材料から形成される。この中で、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。また、吸収性能および肌触りを損なわないよう、上層吸収層31の高吸収ポリマーの坪量は、100〜500g/mとすることが好ましい。
【0032】
吸収層3の基材と高吸収性ポリマーは、基材中に高吸収性ポリマー粒子を混合して形成したもの、あるいは、基材間に高吸収性ポリマー粒子を固着したSAPシートとすることが好ましい。また、高吸収性ポリマー粒子の漏洩防止や吸収層3の形状を安定させるために、吸収層3をキャリアシート6に包むことが好ましい。キャリアシート6は、吸収層3のトップシート2側(上部)あるいはバックシート4側(下部)又はその両方に備える形態の他、上層吸収層31または下層吸収層32をそれぞれ包みこむ形態あるいは、上層吸収層31または下層吸収層32をまとめて包み込む形態をとることもできる。キャリアシート6の基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布をあげることができる。キャリアシート6を複数備える場合は、キャリアシート6の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0033】
吸収層3の形状としては、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状等をあげることができる。また、吸収層3の上下2層の厚みによる着用時の違和感を減少させるため、吸収性物品1の長手方向前後の領域は、上層吸収層31の1層のみであることが好ましい。さらに、吸収層3の表面にエンボス加工を施すと、体液の拡散をコントロールすると共に、使用者の体型に応じて吸収層3が容易に変形するので好ましい。
【0034】
上層吸収層31の上面への尿等の液体の拡散を促進するために、トップシート2と吸収層3の間に、液拡散性シート7を設けることができる。かかる液拡散性シート7としては、例えば、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布があげられる。液拡散性シート7の厚さは、0.1mm以上が好ましく、その坪量は15g/m以上が好ましい。厚さが0.1mm未満、あるいは、坪量が15g/m未満であると、上層吸収層31の上面全体への液体の拡散が十分に行われないので好ましくない。また、液拡散性シート7の形状は、特に制限はないが、体液が、くまなく上層吸収層31に拡散するように、上層吸収層31の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0035】
本実施形態のバックシート4の基材は、吸収層3が保持している体液が下着に漏れないような液不透過性を備えたものであればよく、不織布、樹脂フィルム、あるいはこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。かかる不織布は、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料があげられる。また、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等があげられる。バックシート4には、下着等に粘着させる粘着部(図示せず)を設けることが好ましい。
【0036】
強度および加工性の点から、バックシート4の坪量は、15〜40g/m程度であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート4は透湿性を持たせることが好ましい。透湿性を備えさせるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合することや、バックシート4にエンボス加工を施すことがあげられる。フィラーとしては、炭酸カルシウムをあげることができ、その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0037】
本実施形態のチャネルエンボスは、図3に示すような、従来の下層吸収層32の面積が、上層吸収層31の面積よりも広い吸収性物品1におけるチャネルエンボス8とは異なり、図1(a)に示すように、上層吸収層31と下層吸収層32が重なる領域に形成され、その深さは下層吸収層32に至る。これにより、下層吸収層32へと体液が効率よく拡散誘導され、吸収性能が向上した吸収性物品となる。
【0038】
また、下層吸収層32におけるチャネルエンボスの深さW3は、下層吸収層の厚さW2の10〜90%であることにより、トップシートと吸収層上下2層がチャネルエンボスにより一体化して、吸収性物品1の内部で各構成要素がズレにくくなり、フィット性と吸収速度を向上することができる。チャネルエンボスの深さW3は、例えば、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いて無荷重下の吸収性物品1の厚さを測定し、その後、針を用いてチャネルエンボス8の底部からバックシート4までの厚さを測定し、吸収性物品1の厚さから差し引いて測定することができる。
【0039】
また、図1(b)に示すように、チャネルエンボスを、長手方向前方部Aに設けられた幅方向内側に湾曲する一対の第1チャネルエンボス81と、長手方向後方部Bに設けられた幅方向外側に湾曲する一対の第2チャネルエンボス82と、第2チャネルエンボス82の内側に設けられた長手方向後方部Bに突出する略U字形状の第3チャネルエンボス83と、長手方向両端部(A及びB)に設けられた長手方向外側に湾曲する一対の第4チャネルエンボス84を、それぞれ離間して形成することにより、体液が吸収層3全体に拡散誘導されて、高吸収性ポリマーが体液を保持するので、多量の体液であっても、吸収速度の低下及び液戻り量を抑制することができる。
【0040】
チャネルエンボスは、例えば、熱エンボス法、超音波エンボス法、高周波エンボス法により形成することができる。熱エンボス法の場合、チャネルエンボス8に対応する凸部形状を有するエンボスロールと、エンボスロールの周面に配置された受けロールあるいはベルトの間に、トップシート2と吸収層3を挟み込む形で積層したものを通過させて、これらを一体的に加熱及び加圧処理を行うことで、チャネルエンボス8(第1チャネルエンボス81、第2チャネルエンボス82、第3チャネルエンボス83及び第4チャネルエンボス84)が形成される。
【0041】
本実施形態の吸収性物品1は、上記に示すチャネルエンボス8を形成したトップシート2及び吸収層3に、バックシート4を積層したものを、その周囲を一部あるいは全周に渡ってホットメルト系接着剤を用いて固定することにより製造する。ホットメルト系接着剤の種類及び塗布方法は特に限定されないが、ノズルから溶融状態の接着剤を非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、また、接触式では、スロット法等の公知の方法が適用できる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
本実施例は、吸収層3は、基材であるフラッフパルプ中に、高吸収性ポリマーを混合して形成したものを使用し、液透過性トップシート2として、エアースルー不織布(坪量20g/m)を用い、不透過性バックシート4として、非通気性ポリエチレンシート(坪量22g/m)を用い、液拡散シート7として、エアースルー不織布(坪量25g/m)を用いた。
実施例1のフラッフパルプは、上層吸収層31の重量を6.5g、下層吸収層32の重量を4.1g、合計10.6g、上層吸収層31の面積を181.7cm、下層吸収層32の面積を106.2cm、上下2層の面積比を(下層/上層*100)58%、上層吸収層31の坪量を357.7g/m、下層吸収層32の坪量を386.1g/m、上下2層の坪量比を(下層/上層*100)108%、上層吸収層31の厚さを3.0mm、下層吸収層32の厚さを3.0mm、上層吸収層31の密度を0.12g/cm、下層吸収層32の密度を0.13g/cmとした。
SAPは、上層吸収層31の重量を2.7g、下層吸収層32の重量を2.4g、合計5.1g、上層吸収層31の面積を181.7cm、下層吸収層32の面積を106.2cm、上層吸収層31の坪量を148.6g/m、下層吸収層32の坪量を226g/m、上下2層の坪量比を(下層/上層*100)152%、上層吸収層31の厚さを3.0mm、下層吸収層32の厚さを3.0mm、上層吸収層31の密度を0.05g/cm、下層吸収層32の密度を0.08g/cmとした。
また、トップシート2、上層吸収層31及び下層吸収層32を図1(b)のようにチャネルエンボスを施し、バックシート4を積層したものの周囲をホットメルト系接着剤を用いて固定し、吸収性物品1を作成した。
【0044】
その他実施例及び比較例においては、表1に示す組成で、吸収層の基材であるフラッフパルプ量とSAP量を調整し、吸収性物品1を作成した。
【0045】
(吸収層の面積)
吸収層の面積は、吸収層を上部より撮影し、画像解析ソフトであるWin ROOF(三谷商事株式会社製)を用いて画像処理を行い、測定した。
【0046】
(吸収層の厚さ)
吸収層の厚さは、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いて行った。無荷重下及び35gf/cmの荷重条件下で、厚みを測定した。35gf/cmの荷重条件下では、円形の錘(50mmφ)を吸収層の中央部に載せ、ハイトゲージで錘の上面までの厚みを測定した後、錘の厚みを差引いて求めた。フラッフパルプ単独での厚さ(表1におけるフラッフパルプ厚さ)と、フラッフパルプ中に、高吸収性ポリマーを混合して形成したものの厚さを(表1におけるSAP厚さ)測定した。
【0047】
(高吸収性ポリマーの坪量)
高吸収性ポリマーの坪量は、高吸収性ポリマーの配合量(表1におけるSAP重量)を、上記で測定した吸収層の面積(表1におけるフラッフパルプ面積)に基づいて、算出した。
【0048】
(吸収層の密度)
吸収層の密度は、上記で測定した吸収層の坪量及び厚みに基づいて、算出した。
【0049】
(官能評価)
本実施例において、官能評価を行った。20名のパネラーに対して、吸収性物品である実施例1〜3及び比較例1〜6の柔らかさの評価を実施した。「(a)凹凸感がない」、「(b)どちらでもない」、「(c)凹凸感あり」のいずれかの評価を選択させた。(a)の評価が14〜20人のときを「○」、(a)の評価が8〜13人のときを「△」、(a)の評価が0〜7人のときを「×」で表示した。
その結果を表1の官能評価による表面の凹凸感に示す。
【0050】
(吸収性物品の吸収性能)
吸収性物品の吸収速度は、測定器具を吸収体の中央に設置し、9%生理食塩水40mLを注入した瞬間から完全に吸収されるまでの時間を測定した。吸収された後、3分間放置し、同様の条件で2回目を測定した。さらに、同条件で繰り返し、3回目を測定した。
吸収性物品の液戻り量は、9%生理食塩水200mLを吸収体の中央に一度に注入した後10分間放置し、ろ紙を乗せ、35gf/cmの荷重をかけ1分間放置した。1分経過後、ろ紙の重量を測定し、元のろ紙の重量を差し引いて、液戻り量を求めた。
【0051】
(総合評価)
本実施例において、吸収性物品の吸収性能及び官能評価の結果を基に、総合評価を行った。吸収性物品として、非常に優れているものを「◎」、優れているものを「○」、普通のものを「△」、劣っているものを「×」で表示した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この結果、表1に示すように、本実施例に係る吸収性物品1は、上層吸収層に対する下層吸収層が、面積比で40〜70%、下層吸収層の基材(フラッフパルプ)の坪量が、上層吸収層の基材(フラッフパルプ)の坪量の80〜160%、下層吸収層の高吸収性ポリマー(SAP)の坪量が、上層吸収層の高吸水性ポリマー(SAP)の坪量の100〜300%であり、上層吸収層と下層吸収層が重なる領域に、上層吸収層から下層吸収層に至るまでチャネルエンボスが形成されることが好適であることが分かった。
【0054】
また、総合評価として、上層吸収層に対する下層吸収層が、面積比で40〜70%、下層吸収層の基材(フラッフパルプ)の坪量が、上層吸収層の基材(フラッフパルプ)の坪量の80〜160%、下層吸収層の高吸収性ポリマー(SAP)の坪量が、上層吸収層の高吸水性ポリマー(SAP)の坪量の100〜300%、チャネルエンボスを、図1(b)に示すように形成することにより、装着感、フィット性及び吸収性能に優れた吸収性物品を提供することができることが判明した。
【0055】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが、当業者には明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
1 吸収性物品
10 吸収性物品本体
2 トップシート
3 吸収層
31 上層吸収層
32 下層吸収層
4 バックシート
5 立体ギャザー
51 立体ギャザー用弾性部材
6 キャリアシート
7 液拡散性シート
8 チャネルエンボス
81 第1チャネルエンボス
82 第2チャネルエンボス
83 第3チャネルエンボス
84 第4チャネルエンボス
A 長手方向前方部
B 長手方向後方部
W1 上層吸収層の厚さ
W2 下層吸収層の厚さ
W3 下層吸収層のエンボスの深さ
図1
図2
図3