【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、信号受信器、特に、無線周波数信号の受信器に関する。この信号受信器は、電磁的信号を受信するアンテナを有する。さらに、信号受信器は、アンテナが受信した信号を増幅する少なくとも1つの低雑音増幅器(LNA)を有する。したがって、アンテナは、低雑音増幅器に直接相互接続されていてもよい。また、信号受信器は、所定のデューティーサイクルを有する発振信号を生成するために、基準共振器を有する信号生成器を有する少なくとも1つの結晶又はMEMS発振器を有する。
【0010】
通常、MEMS又は水晶発振器は、幾分正確な周波数で電気信号を作るために、振動するMEMS又は圧電材料の振動する結晶の機械的共振を使用する電子的発振回路である。基準共振器は、MEMS共振器であってもよく、あるいは電子的な用途で一般に使用されている水晶結晶を有することもできる。MEMS又は水晶発振器、すなわち、電子的発振回路は、所定のデューティーサイクルを有する発振信号を生成するように構成する。デューティーサイクルは、発振信号のオン時間及びオフ時間の比を定める。通常、発振信号は、矩形パルスのシーケンスの特徴を有するが、ミキサーによって処理することができる他の適切な波形の特徴を有していてもよい。
【0011】
また、信号受信器は、さらに、LNAから得られた増幅された受信信号を、MEMS又は水晶発振器から得られた発振信号と混合するミキサーを有する。これによって、中間的な信号、すなわち、ダウン変換信号を生成する。さらに、結晶又はMEMS発振器は、ミキサーに発振信号を供給するために、出力でPLLユニットを有することができる。また、ミキサーは様々な異なる方法で実装されていてもよい。例えば、ミキサーは、いくつか挙げると、サブサンプリングミキサー、ギルバートセル又は受動ミキサーを有していたり、これらとして実装されたりしていてもよい。ミキサーは、局所的発振器又はMEMS又は水晶発振器から発振信号を、また、LNAから増幅された信号を受信信号として受信する。その後、ミキサーは、ミキサーによって提供される中間信号をフィルタリングするように構成するバンドパスフィルターによってさらに処理される出力において中間信号を提供し生成する。
【0012】
信号受信器は、さらに、MEMS又は水晶発振器に連結しバンドパスフィルターの出力にさらに連結するデューティーサイクルコントローラーを有する。バンドパスフィルターの出力にデューティーサイクルコントローラーを接続することによって、デューティーサイクルコントローラーは、バンドパスフィルターの出力で得られるフィルタリングされた中間信号のスペクトルを解析することができる。このスペクトル解析に応答して、デューティーサイクルコントローラーは、発振信号のデューティーサイクルを変更するように動作可能である。この変更は、MEMS又は水晶発振器へのデューティーサイクルコントローラーの連結によって行うことができる。
【0013】
発振信号のデューティーサイクルの変更によって、フィルタリングされた中間信号における基準共振器を有する信号生成器を有する発振器からの高調波周波数を減衰させたり変更させたりすることができる。したがって、発振信号の波形を選択的に変更することによって、そのフーリエスペクトル及びミキサーの出力を変更することができる。この方法によって、バンドパスフィルターの関心事の帯域と一致する特定の高調波は、発振信号の周波数を変更せずに、フィルタリングされた中間信号において減衰させることができる。したがって、発振信号のデューティーサイクルの変更は、信号受信器の信号混合にも、一般的なふるまいや動作に対しても、まったく影響を与えない。発振信号のデューティーサイクルの変更は、主として発振信号の変わるフーリエスペクトルにおいて反映され、中間信号における基準共振器を有する発振器からの周波数の高調波の大きさの可変な分布をもたらす。
【0014】
別の一実施形態によると、デューティーサイクルコントローラーは、フィルタリングされた中間信号に基準共振器を有する発振器の少なくとも1つの高調波成分の振幅を最小にするように構成する。例えば、信号受信器の関心事の帯域が2.4GHz帯である場合、デューティーサイクルコントローラーは、MEMS又は水晶発振器の発振信号のデューティーサイクルが構成され変更されるように動作可能である。これは、例えば、MEMS又は水晶発振器からの26MHzの基準周波数の高調波は、フィルタリングされた中間信号において少なくとも減衰させられたり抑制される。例えば、26MHzの基準周波数の第93、第94及び第95次の高調波は、2.418GHz、2.444GHz及び2.470GHzであり、これは、フィルタリングされた中間信号において有効に減衰されたり減じられることがある。この方法によって、ミキサーの基準共振器のダウンストリームがある発振器からの高調波の影響を、補償ないし完全に抑制することができる。
【0015】
別の一実施形態によると、デューティーサイクルコントローラーは、フィルタリングされた中間信号の選択された高調波成分の大きさを測定するために測定ユニットを有する。測定ユニットは、バンドパスフィルターの出力に、通常接続され連結される。デューティーサイクルコントローラー、MEMS又は水晶発振器、及びミキサー及び/又はバンドパスフィルターによって提供される規制ループは、基準共振器を有する発振器からの基準周波数の選択された高調波を抑制するように動作可能であり、測定ユニットは、基準共振器を有する発振器からの高調波と一致するフィルタリングされた中間信号の所定の高調波成分の大きさ、よって、その振幅を測定するように構成していてもよい。
【0016】
例えば、測定ユニットは、もっぱら基準周波数の第93、第94又は第95次高調波の大きさないし振幅を排他的に検出し検出するように構成していてもよい。フィルタリングされた中間信号の他の周波数成分は、デューティーサイクルコントローラーにとってはもはや関心事ではない。上述の周波数及び特定の高調波は、例示的にのみ示したものであって、本出願の範囲を特定の無線周波数帯に制限するように解釈するべきではない。一般的には、デューティーサイクルコントローラーを有する信号受信器は、MEMS又は水晶発振器の種々様々な異なる高調波及び基準周波数で動作可能である。
【0017】
別の一実施形態によれば、デューティーサイクルコントローラーは、測定ユニットに連結し、選択された高調波成分の測定された大きさに応じてデューティーサイクル変更信号を生成するように動作可能な制御ユニットを有する。通常、制御ユニットは、選択された高調波成分の実際に測定された大きさないし振幅を、所定の値と、又は信号受信器の動作時に動的に決定されていてもよい可変値とのいずれかと比較するように動作することができる。デューティーサイクル変更信号は、制御ユニットによって生成されたものであり、デューティーサイクル、したがって、MEMS又は水晶発振器の発振信号のオン時間及びオフ時間の間の関係を、増加又は減少させるように機能する。
【0018】
付加的に又は代替的に、制御ユニットは、デューティーサイクルのみを変更するのではなく、デューティーサイクルの変更と組み合わさり、発振信号の波形を変更するように動作することができる。この方法によって、フィルタリングされた中間信号における高調波の構成を、様々な異なる方法で変更することができる。
【0019】
更なる別の一実施形態において、信号受信器は、さらに、デューティーサイクルコントローラーに連結ないし内蔵されるデューティーサイクル変更器を有する。デューティーサイクル変更器は、制御ユニットから得られたデューティーサイクル変更信号に応じて発振信号のデューティーサイクルを増加又は減少させるように特に動作可能である。すなわち、デューティーサイクル変更器は、デューティーサイクルコントローラーの制御ユニットによって生成されるデューティーサイクル変更信号を処理するように動作可能である。デューティーサイクル変更信号がデューティーサイクルを増加させることを指示する場合、デューティーサイクル変更器は、例えば、所定の別々のステップによって、デューティーサイクルを増加させるように動作可能である。
【0020】
デューティーサイクル変更信号がデューティーサイクルを減少させることを指示する場合、デューティーサイクル変更器は、これに応じて、発振信号のデューティーサイクルを減少させる。また、デューティーサイクル変更器もMEMS又は水晶発振器内に実装されていてもよく、あるいはこれに属していてもよい。したがって、デューティーサイクル変更器は、基準共振器を有する発振器からの基準周波数に基づく発振信号を生成するように動作可能であるMEMS又は水晶発振器の電子的発振回路の内蔵部品又はこれとは別個の部品であることができる。
【0021】
更なる別の一実施形態においてデューティーサイクルコントローラーは、さらに、フィルタリングされた中間信号の選択された高調波成分の測定された大きさを少なくとも一時的に記憶するために、メモリー又は何らかの記憶空間を有する。このメモリーによって、バンドパスフィルターの出力の選択された高調波成分の以前に測定された大きさを記憶することができる。これによって、同じ高調波成分の実際に測定された大きさと比較することができる。この方法によって、変更されたデューティーサイクルの影響を直接モニタリングし評価することができる。メモリーが様々なメモリーセルを有し、これによって、高調波成分の連続的に測定された大きさの時間的なシーケンスを記憶することが可能になるということを想起することができる。一連の多数の高調波成分の全体をメモリーに記憶することも想起することができる。
【0022】
付加的又は代替的に、メモリーは、さらに、一種の参照テーブルを記憶するように機能する。この参照テーブルにおいて、選択された高調波成分のどの様々な大きさが所定のデューティーサイクルに直接割り当てられる。この方法によって、制御ユニットは、選択された高調波成分の特定の大きさの測定に応じて所定のデューティーサイクルを選択するように構成することができる。
【0023】
更なる別の一実施形態において、制御ユニットは、実際に測定された高調波成分の大きさを、フィルタリングされた中間信号の以前に記憶した高調波成分の大きさと比較するように動作可能である。これによって、デューティーサイクル変更信号を生成する。制御ユニットは、実際に測定された高調波成分を、単一又は一連の以前に記憶した高調波成分と比較する。
【0024】
制御ユニットは、この比較を連続的に実行してもよい。制御ユニットは、小さいが別々のステップでデューティーサイクルを変更し、かつこの変更の結果をモニタリングするように動作可能である。初期の変更が、フィルタリングされた中間信号における高調波成分の所望の抑制をもたらす場合、後のステップにおいて、デューティーサイクルが同じ方法で繰り返し変更される。フィルタリングされた中間信号の高調波成分の振幅が増加することを制御ユニットが検出するまで、この規制ループが継続し得る。その後、デューティーサイクルコントローラーは、以前に選択されたデューティーサイクルに戻る。制御ユニットは、このような信号比較制御ループにおいて永久に動作している。
【0025】
別の一実施形態によれば、特にアンテナがさらに信号受信器によってさらに処理される電磁的信号を受信する場合、デューティーサイクルコントローラーは少なくとも一時的に非活性化することができる。この実施例において、発振信号のデューティーサイクルの変更は、信号受信器がアイドル状態である場合、又は信号受信器がいずれの電磁的信号も実際に受信しない場合においてのみ行われる。デューティーサイクルコントローラーを選択的に非活性化又は活性化することによって、信号受信器のエネルギー使用量を縮小とすることができる。また、受信した電磁的信号を処理するための信号受信器の性能は、デューティーサイクル規制ループによって影響を受けず又は摂動しない。デューティーサイクル規制ループは、デューティーサイクルコントローラーによって通常実装され、MEMS又は水晶発振器、ミキサー及びバンドパスフィルターによって典型的に実装される。
【0026】
本発明の別の態様は、さらに、上記のような信号受信器のフィルタリングされた中間信号における基準共振器を有する発振器からの少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法に関する。アンテナによって電磁的信号を受信するステップと、少なくとも1つの低雑音増幅器によって受信した前記信号を増幅するステップと、基準共振器を有する少なくとも1つのMEMS又は水晶発振器によって発振信号を生成するステップと、中間信号を生成するために、増幅された前記受信信号を前記発振信号と混合するステップと、バンドパスフィルターによって、前記中間信号をフィルタリングするステップと、フィルタリングされた前記中間信号のスペクトル解析を行うステップと、前記MEMS又は水晶発振器に連結し前記バンドパスフィルターの出力に連結するデューティーサイクルコントローラーによって、フィルタリングされた前記中間信号のスペクトル解析に応答して、前記発振信号の前記デューティーサイクルを変更するステップとを有し、前記デューティーサイクルは、前記発振信号のオン時間及びオフ時間の比によって定められ、これによって、フィルタリングされた前記中間信号における前記基準共振器を有する前記MEMS又は水晶発振器からの少なくとも1つの高調波成分の振幅が最小にされる。
【0027】
MEMS又は水晶発振器によって生成される発振信号のデューティーサイクルの変更によって、中間信号における高調波成分の分布を、バンドパスフィルターの関心事の帯域における選択された高調波成分の寄与を有効に抑制するために、遠くに変更することができる。
【0028】
一般的には、少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法は、上記のような信号受信器によって実行される。この点では、信号受信器に関連して上記したいずれの特徴及び利点も、基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法に同様に適用することができ、逆も適用することができる。
【0029】
更なる一実施形態によると、フィルタリングされた中間信号における基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の少なくとも1つの高調波成分の振幅を最小限にするために、発振信号のデューティーサイクルがデューティーサイクルコントローラーによって変更される。ここにおいて、デューティーサイクルコントローラーは、通常、最適なデューティーサイクルを見つけて特定するように動作可能な制御ループの一部である。これによって、フィルタリングされた中間信号の又はその中の選択された高調波成分を最小化する。デューティーサイクルコントローラーは、様々な方法で、実装され動作することができる。
【0030】
更なる一実施形態において、基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の選択された高調波成分の振幅が、フィルタリングされた中間信号における最小に達するまで、発振信号のデューティーサイクルは所定の別々のステップで減少又は増加される。関心事の高調波成分は、予め決められていてもよく、又は信号受信器の様々なセッティングによって選択することができる。抑制される高調波成分の選択は、バンドパスフィルターの選択された帯域及び帯域幅に基づくことができる。
【0031】
通常、バンドパスフィルターの帯域に入る基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の高調波成分の1つだけでなくすべてが、上記の方法によって抑制されることになる。少なくとも1つの選択された高調波成分、又はいくつかの選択された高調波成分の最小の振幅を見つけるために、デューティーサイクルコントローラーは、デフォルトで、少なくとも小さいが別々のステップで所与のデューティーサイクルを変更してもよい。その後、この初期のデューティーサイクル変更の影響は、フィルタリングされた中間信号においてモニタリングされる。選択された高調波成分の振幅が増加する場合、デューティーサイクル変更は実行中のステップにおいて逆にされる。
【0032】
例えば、基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の選択された高調波成分の振幅が、最小に達するまで、デューティーサイクルを低くしたり増加させたりしてもよい。最適なデューティーサイクルは、標準化されたデジタル信号処理装置を利用する規制ループの実装により得ることができる。
【0033】
更なる一実施形態によると、フィルタリングされた中間信号における高調波成分の振幅が測定され、メモリーに少なくとも一時的に記憶される。メモリーは、通常、デューティーサイクルコントローラーにおいて位置する。デューティーサイクルコントローラーがクロックされるので、メモリーは、後のクロックタイムで得られる少なくとも1つ又は少数の連続的に測定される振幅を記憶するように構成するシフトレジスターを有することができる。メモリーの利用によって、選択された高調波成分の実際に測定される振幅は、以前に記憶した振幅と比較することができる。
【0034】
この比較は、デューティーサイクルが、選択された高調波成分の振幅を減少させるように以前に変更されたかどうかを示す。高調波成分の振幅が減少することが比較によって明らかになった場合、デューティーサイクルは最小に到達するまで同じ方向に変更される。比較によって高調波成分の振幅が増加することが明らかになった場合、デューティーサイクル変更の方向が変更、すなわち、逆転される。
【0035】
この方法において、そして、更なる一実施形態によると、発振信号のデューティーサイクルは、フィルタリングされた中間信号における高調波成分の実際に測定される振幅と以前に記憶した振幅との比較に依存して、減少又は増加される。
【0036】
別の一実施形態によると、アンテナが信号受信器によってさらに処理される電磁的信号を実際に受信すると、発振信号のデューティーサイクルは一定に保たれる。この方法によって、デューティーサイクルコントローラーを少なくとも一時的に非活性化される。これによって、発振信号のデューティーサイクル変更に起因する信号受信器の信号処理のエネルギーを節約しいかなる摂動をも回避される。
【0037】
下記では、図面を参照しながら本発明の様々な実施形態を説明する。