【解決手段】電力変換装置100は、電圧変換部1と、制御部2とを備える。電圧変換部1は、各々がm(mは2以上の整数)個の絶縁型のDC−DCコンバータを直列に接続した構成からなるn(nは2以上の整数)個の直列回路1−1〜1−nを含む。n個の直列回路1−1〜1−nは、並列に接続される。制御部2は、電圧変換部1の出力電圧Voの検出値30が出力電圧Voの目標値10となるように、n個の直列回路1−1〜1−nの各々において最も高電位側に接続されるn個のDC−DCコンバータの電流制御を実行し、n個の直列回路1−1〜1−nにおいてn個のDC−DCコンバータを除くn×(m−1)個のDC−DCコンバータの電圧制御を実行する。
各々がm(mは2以上の整数)個の絶縁型のDC−DCコンバータを直列に接続した構成からなるn(nは2以上の整数)個の直列回路を含み、前記n個の直列回路が並列に接続された電圧変換部と、
前記電圧変換部の出力電圧の検出値が前記出力電圧の目標値となるように、前記n個の直列回路の各々において最も高電位側に接続されるn個のDC−DCコンバータの電流制御を実行し、前記n個の直列回路において前記n個のDC−DCコンバータを除くn×(m−1)個のDC−DCコンバータの電圧制御を実行する制御部とを備える、電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[1.電力変換装置100の構成]
[1.1.全体構成]
図1は、本実施の形態に係る電力変換装置100の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、電力変換装置100は、複数の絶縁型のDC−DCコンバータを用いて、目標値10に応じた出力電圧Voを負荷(図示省略)に供給する。目標値10は、出力電圧Voとして出力すべき電圧レベルを示す。以下、特に断りのない限り、絶縁型のDC−DCコンバータを単に「コンバータ」と記載する。
【0023】
電力変換装置100は、電圧変換部1と、制御部2と、電圧検出器3とを備える。電圧変換部1は、m×n個のコンバータを直並列に備えた構成からなる。m及びnは、ともに2以上の整数である。制御部2は、これらm×n個のコンバータの各々を制御する。電圧検出器3は、電力変換装置100の出力電圧Voを検出し、出力電圧Voの検出値30を制御部2に供給する。
【0024】
[1.2.電圧変換部1の構成]
電圧変換部1は、n個の直列回路1−1,1−2,・・・,1−nを備える。直列回路1−1〜1−nの各々は、後述するように、m個のコンバータが直列に接続された構成からなる。直列回路1−1〜1−nは、並列に接続される。
【0025】
なお、直列回路1−2,・・・,1−nの構成は、直列回路1−1と同じであるため、
図1において、これらの直列回路の詳細な構成の表示を省略している。以下、直列回路1−1〜1−nに関しては、直列回路1−1を中心に説明し、直列回路1−2〜1−nに関する説明は、個別に説明が必要な場合を除いて省略する。
【0026】
[1.3.直列回路1−1の構成]
直列回路1−1は、コンバータ11−1,11−2,・・・,11−mと、コンデンサ12−1,12−2,・・・,12−mと、電圧検出器13−1,13−2,・・・,13−mと、電流検出器14−1,14−2,・・・,14−mとを備える。
【0027】
コンバータ11−1〜11−mは、直列に接続される。コンバータ11−1が、直列回路1−1において最も高電位側に接続される。直列回路1−1において、コンバータに付与される符号は、低電位側に位置するにつれて増加する。つまり、コンバータ11−mが、直列回路1−1において最も低電位側に接続される。
【0028】
以下、コンバータ11−1〜11−mの直列回路1-1における位置を、段数で表す。具体的には、最も高電位側に接続されるコンバータ11−1は、直列回路1−1における1段目に位置し、コンバータ11−2は、直列回路1−1における2段目に位置する。以下同様に、コンバータ11−mは、m段目に位置する。
【0029】
コンデンサ12−1は、コンバータ11−1の高電位側の出力と低電位側の出力との間に接続される。コンデンサ12−1は、コンバータ11−1から出力される直流電圧に含まれる変動成分を除去して、その直流電圧を安定させる。
【0030】
電圧検出器13−1は、コンバータ11−1の高電位側の出力と低電位側の出力との間に接続され、コンバータ11−1から出力される直流電圧を検出する。電圧検出器13−1により検出された電圧検出値31−1は、制御部2に供給される。
【0031】
電流検出器14−1は、コンバータ11−1の高電位側の出力に接続され、コンバータ11−1から出力される直流電流を検出する。電流検出器14-1により検出された電流検出値41−1は、制御部2に供給される。
【0032】
2〜m段目のコンバータ11−2〜11−mについても、コンバータ11−1と同じように、コンデンサ12−2〜12−m、電圧検出器13−2〜13−m、及び電流検出器14−2〜14−mが接続される。従って、電圧検出器13−2〜13−mによって検出された電圧検出値31−2〜31−mは、制御部2に供給される。また、電流検出器14−2〜14−mによって検出された電流検出値41−2〜41−mは、制御部2に供給される。
【0033】
[1.4.コンバータの構成]
図2は、コンバータ11−1の構成を示す機能ブロック図である。なお、電圧変換部1に含まれるn×m個のコンバータの構成は、
図2に示す構成と同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0034】
コンバータ11−1は、インバータ15と、トランス16と、整流器17とを備える。
【0035】
インバータ15は、電力変換装置100の外部に設置された直流電源200から直流電力D1の供給を受け、その供給された直流電力D1から交流電力A1を生成する。具体的には、インバータ15は、図示していないが、複数のスイッチング素子を備えるフルブリッジ回路又はハーフブリッジ回路である。インバータ15は、制御部2から供給されるPWM信号21−1に応じて各スイッチング素子のオン/オフを切り替えることにより、直流電力D1から交流電力A1を生成する。PWM信号21−1の生成等の詳細については、後述する。
【0036】
トランス16は、インバータ15により生成された交流電力A1を変換して交流電力A2を生成する。整流器17は、交流電力A2を整流して直流電力D2を生成する。この結果、直流電流I1−1及び直流電圧V−1が、コンバータ11−1から出力される。
【0037】
[1.5.制御部2の構成]
再び、
図1を参照する。制御部2は、電圧検出器3から供給される出力電圧Voの検出値30が出力電圧Voの目標値10に近づくように、電圧変換部1が備えるn×m個のコンバータを制御する。すなわち、制御部2は、検出値30が目標値10に近づくように、直列回路1−1〜1−nにおいて最も高電位側に接続される1段目のn個のコンバータの電流制御を実行し、直列回路1−1〜1−nにおいて2段目以降のn×(m−1)個のコンバータの電圧制御を実行する。
【0038】
図3は、制御部2の構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、制御部2は、電流制御部4と、電圧制御部5とを備える。
【0039】
電流制御部4は、直列回路1−1〜1−nにおける1段目のn個のコンバータの電流制御を実行する。電流制御部4は、出力電圧Voの目標値10を用いて、n個のコンバータの各々に対応するPWM信号21−1〜21−nを生成する。PWM信号21−1〜21−nは、n個の1段目のコンバータに含まれるインバータ内のスイッチング素子のオン/オフを制御するために用いられる。
【0040】
電圧制御部5は、直列回路1−1〜1−nにおける2段目以降のn×(m−1)個のコンバータの電圧制御を実行する。電圧制御部5は、出力電圧Voの目標値10を用いて、n×(m−1)個のコンバータの各々に対応するn×(m−1)個のPWM信号22を生成する。
【0041】
図3において、n×(m−1)個のPWM信号22は、直列回路1−1〜1−nに含まれる2段目以降のn×(m−1)個のコンバータを制御するために用いられる。PWM信号7n−2〜7n−mは、直列回路1−nに含まれる2段目以降の(m−1)個のコンバータを制御するために用いられる。
図3では、PWM信号22のうち、上述したPWM信号71−2,71−m,72−2,72−m,7n−2,7n−mを除くPWM信号の表示を省略している。
【0042】
[1.6.電流制御部4の構成]
図4は、電流制御部4の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、電流制御部4は、電流決定部41と、n個の初段制御部42−1〜42−nとを備える。初段制御部42−1〜42−nは、直列回路1−1〜1−nの1段目のコンバータの各々に対応して設けられる。
【0043】
電流決定部41は、出力電圧Voの目標値10及び検出値30を用いて、1段目のn個のコンバータから出力される直流電流の電流目標値41aを決定する。電流目標値41aは、1段目のn個のコンバータで共通に用いられる。
【0044】
電流決定部41は、演算器411と、電圧制御器412とを備える。演算器411は、目標値10から検出値30を減算して、目標値10に対する出力電圧Voの誤差(出力偏差411a)を算出する。電圧制御器412は、出力偏差411aを増幅することにより、電流目標値41aを生成する。
【0045】
初段制御部42−1は、電流決定部41から供給される電流目標値41aと、電流検出器14−1から供給される電流検出値41−1とを用いて、コンバータ11−1に対応するPWM信号21−1を生成する。初段制御部42−1は、演算器421と、電流制御器422と、PWM制御部423とを備える。
【0046】
演算器421は、電流目標値41aから電流検出値41−1を減算して、コンバータ11−1から出力される直流電流の誤差(出力偏差421a)を計算する。電流制御器422は、出力偏差421aを増幅して、補正電流目標値42aを生成する。PWM制御部423は、補正電流目標値42aを用いて、PWM信号21−1を生成する。PWM信号21−1は、コンバータ11−1に供給され、コンバータ11−1に含まれるインバータ15内のスイッチング素子のオン/オフの制御に用いられる。
【0047】
初段制御部42−2〜42−nは、初段制御部42−1と同じ構成を有する。初段制御部42−2〜42−nは、電流目標値41aと、対応するコンバータから出力される直流電流の検出値とを用いて、初段制御部42−1と同様の処理を実行する。これにより、PWM信号21−2〜21−nが、初段制御部42−2〜42−nから、直列回路1−1〜1−nにおける1段目のn個のコンバータに供給される。
【0048】
[1.7.電圧制御部5の構成]
図5は、電圧制御部5の構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、電圧制御部5は、個別決定部51と、n×(m−1)個の個別制御部とを備える。
図5において、n×(m−1)個の個別制御部のうち、一部の個別制御部のみを表示し、その他の個別制御部の表示を省略している。
【0049】
具体的には、
図5において、直列回路1−1に含まれるコンバータ11−2,11−mに対応する個別制御部61−2,61−mが表示されている。直列回路1−2に含まれる2段目及びm段目のコンバータに対応する個別制御部62−2,62−mが表示されている。また、直列回路1−nに含まれる2段目及びm段目のコンバータに対応する個別制御部6n−2〜6n−mが表示されている。
【0050】
個別決定部51は、出力電圧Voの目標値10を直列回路1−1〜1−nの直列数(m)で除算することにより、個別目標値51aを計算する。個別目標値51aは、直列回路1−1〜1−nに含まれる2段目以降のn×(m−1)個のコンバータから出力される直流電圧の目標値である。例えば直列回路1−1では、個別目標値51aは、コンバータ11−2〜11−mから出力される直流電圧の目標値に相当する。計算された個別目標値51aは、n×(m−1)個の個別制御部に供給される。
【0051】
n×(m−1)個の個別制御部は、直列回路1−1〜1−nに含まれる2段目以降のn×(m−1)個のコンバータに対応して設けられ、対応するコンバータの電圧制御を実行する。
【0052】
すなわち、個別制御部61−2〜61−mは、個別目標値51aに基づくPWM信号71−2〜71−mを生成して、直列回路1−1に含まれる(m−1)個のコンバータ11−2〜11−mに供給する。個別制御部62−2〜62−mは、個別目標値51aに基づくPWM信号72−2〜72−mを生成して、直列回路1−2に含まれる(m−1)個のコンバータに供給する。個別制御部6n−2〜6n−mは、個別目標値51aに基づくPWM信号7n−2〜7n−mを生成して、直列回路1−nに含まれる(m−1)個のコンバータに供給する。
【0053】
図6は、個別制御部61−2の構成を示す機能ブロック図である。以下、
図6を参照して、個別制御部61−2の構成を説明する。電圧制御部5が備えるn×(m−1)個の個別制御部の構成は、個別制御部61−2の構成と同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0054】
個別制御部61−2は、直列回路1−1における2段目以降のコンバータ11−2〜11−mのうち、コンバータ11−2に対応して設けられる。個別制御部61−2は、コンバータ11−2から出力される直流電圧の電圧検出値31−2が個別目標値51aに近づくように、コンバータ11−2を制御する。
【0055】
個別制御部61−2は、演算器53,55と、電圧制御器54と、電流制御器56と、PWM制御部57とを備える。
【0056】
演算器53は、個別決定部51から供給される個別目標値51aから、電圧検出器13−2から供給される電圧検出値31−2を減算して、誤差(出力偏差53a)を生成する。電圧検出値31−2は、コンバータ11−2から出力される直流電圧を検出する電圧検出器13−2から供給される。電圧制御器54は、出力偏差53aを増幅して、電圧検出値31−2を個別目標値51aに近づけるための補正電圧目標値54aを生成する。
【0057】
電流検出値41−2は、コンバータ11−2から出力される直流電流を検出する電流検出器14−2から個別制御部61−2に供給される。供給された電流検出値41−2は、電圧に対応する値(対応値)に変換された上で、演算器55に入力される。演算器55は、電圧制御器54から供給される補正電圧目標値54aから対応値を減算して、誤差(出力偏差55a)を生成する。電流制御器56は、出力偏差55aを増幅して、電圧検出値31−2を個別目標値51aに近づけるための補正電圧目標値56aを生成する。
【0058】
PWM制御部57は、補正電圧目標値56aに基づくPWM信号71−2を生成してコンバータ11−2に供給する。コンバータ11−2において、インバータ15は、スイッチング素子のオン/オフをPWM信号71−2に応じて切り替える。
【0059】
[2.直列回路1−1の制御の概略]
図7は、直列回路1−1に含まれるm個のコンバータと、これらm個のコンバータの制御に用いられる目標値との対応関係を示す図である。
【0060】
制御部2は、上述のように、直列回路1−1から出力される直流電圧(出力電圧Vo)が目標値10に近づくように、1段目のコンバータ11−1に対して電流制御を実行し、2段目以降の(m−1)個のコンバータ11−2〜11−mに対して電圧制御を実行する。
【0061】
まず、コンバータ11−2〜11−mに対する電圧制御について説明する。コンバータ11−2〜11−mに対する電圧制御は、個別決定部51により決定された個別目標値51aに基づいて、個別制御部61−2〜61−mにより実行される。個別目標値51aは、出力電圧Voの目標値10と、直列回路1−1に含まれるコンバータの数(直列数)とにより決定される。具体的には、個別目標値51aは、下記式(1)により決定される。
【0063】
式(1)において、VTは目標値10、VEは個別目標値51a、mは直列数を示す。つまり、個別決定部51は、m個のコンバータ11−1〜11−mの電圧制御を実行したと仮定した場合に、各コンバータから出力される直流電圧が等しくなるように、個別目標値51aを決定する。例えば、出力電圧Voの目標値10が300Vであり、直列数(m)が6である場合、個別目標値51aは、式(1)により、50Vに決定される。
【0064】
個別制御部61−2〜61−mは、コンバータ11−2〜11−mから出力される直流電圧が個別目標値51aに近づくように、コンバータ11−2〜11−mの電圧制御を実行する。
【0065】
しかし実際には、コンバータ11−2〜11−mから出力される直流電圧V1−2〜V
1−mの各々は、誤差を含むため、個別目標値51aと一致しない。つまり、直流電圧V1−2〜V1−mの合計Vsは、個別目標値51aを(m−1)倍した値とはならない。従って、コンバータ11−2〜11−mと同様に、コンバータ11−1に対する電圧制御を実行した場合、コンバータ11−1〜11−mから出力される直流電圧V1−1〜V1−mの合計(直列回路1−1から出力される直流電圧Vt)が目標値10から大きくずれるおそれがある。そこで、電流制御部4は、直流電圧Vtが目標値10に近づくように、コンバータ11−1に対して電流制御を実行する。
【0066】
電流制御部4において、電流決定部41は、出力電圧Voの目標値10と検出値30とを用いて、電流目標値41aを決定する。初段制御部42−1は、最も高電位側に接続されたコンバータ11−1から出力される直流電流が電流目標値41aに近づくように、コンバータ11−1を制御する。これにより、直流電圧V1−2〜V1−mの合計Vsが誤差を含んでいても、直列回路1−1から出力される直流電圧Vtは、目標値10に近づくように調整される。
【0067】
また、直列回路1−1において、2段目以降のコンバータのいずれかで電流制御を実行したと仮定した場合、電流制御が行われたコンバータよりも高電位側に位置するコンバータにおいて、電流が変化するおそれがある。この場合、直列回路1−1から出力される直流電圧Vtを目標値10に近づけることができない。一方、電力変換装置100のように、直列回路1−1における1段目のコンバータ11−1の電流制御を実行した場合、コンバータ11−1から出力される直流電流は他のコンバータの影響を受けることがない。従って、電力変換装置100は、直流電圧Vtを目標値10に近づけることが可能となる。
【0068】
直列回路1−2〜1−nに含まれるコンバータも、直列回路1−1に含まれるコンバータと同様に制御されるため、直列回路1−2〜1−nから出力される直流電圧は、目標値10に近づくように調整される。直列回路1−1〜1−nは、並列接続されているため、電圧変換部1の出力電圧Voは、目標値10とほぼ等しくなる。
【0069】
このように、直列回路1−1〜1−nの各々において、2段目以降の(m−1)個のコンバータに対して個別目標値51aに基づく電圧制御を実行し、1段目のコンバータに対して電流目標値41aに基づく電流制御を実行する。これにより、直列回路1−1〜1−nの各々からの出力電圧を、目標値10に一致するように揃えることができ、電圧変換部1の出力電圧Voを目標値10に近づけることができる。
【0070】
[3.電力変換装置100の動作]
電力変換装置100において、制御部2は、出力電圧Voの目標値10の供給を受けて、電圧変換部1に含まれるm×n個のインバータの制御を開始する。
【0071】
制御部2内の電圧制御部5(
図4参照)において、個別決定部51は、供給される目標値10に基づいて、直列回路1−1〜1−nにおける2段目以降のn×(m−1)個のコンバータが出力すべき直流電圧の目標値(個別目標値51a)を計算する。個別目標値51aは、上記式(1)に基づく計算により得られる。個別決定部51は、2段目以降のn×(m−1)個のコンバータに対応するn×(m−1)個の個別制御部に、算出した個別目標値51aを供給する。
【0072】
例えば、n×(m−1)個の個別制御部に含まれる個別制御部61−2は、対応するコンバータ11−2から出力される直流電圧V1−1が個別目標値51aに近づくように、コンバータ11−2の電圧制御を実行する。
【0073】
個別制御部61−2は、直流電圧V1−1の検出値31−1を個別目標値51aに近づけるために、個別目標値51aを補正する。具体的には、個別制御部61−2において、演算器53が、個別目標値51aから検出値31−2を減算して、個別目標値51aに対する検出値31−2の誤差(出力偏差53a)を得る。電圧制御器54が出力偏差53aを増幅することにより、補正電圧目標値54aが生成される。
【0074】
続いて、個別制御部61−2は、コンバータ11−2から出力される直流電流の電流検出値41−2を用いて、補正電圧目標値54aをさらに補正する。これにより、コンバータ11−2の応答性を向上させることが可能となる。
【0075】
具体的には、電流検出値41−2は、電圧に対応する対応値に変換された上で、演算器55に供給される。演算器55は、補正電圧目標値54aから対応値を減算することにより、誤差(出力偏差55a)を得る。電流制御器56が、誤差55aを増幅することにより、補正電圧目標値56aを生成する。
【0076】
PWM制御部57は、補正電圧目標値56aに基づくPWM信号71−2を生成し、その生成したPWM信号71−2をコンバータ11−2に供給する。コンバータ11−2において、インバータ15内のスイッチング素子が、PWM信号71−2に応じてオン/オフされることにより、直流電圧V1−2が生成される。
【0077】
なお、個別制御部61−2において、演算器55及び電流制御器56の構成を省略してもよい。この場合、PWM制御部67は、補正電圧目標値54aを用いて、PWM信号71−2を生成すればよい。ただし、
図5に示すように、補正電圧目標値54aを電流検出値41−2により補正した補正電圧目標値56aを用いることにより、コンバータ11−2の応答性を向上させることが可能となる。
【0078】
直列回路1−1における3段目以降のコンバータ、直列回路1−2〜1−nにおける2段目以降のコンバータも、コンバータ11−2と同様に制御される。この結果、直列回路1−1〜1−nにおける2段目以降のn×(m−1)個のコンバータから出力される直流電圧は、個別目標値51aに近づくように電圧制御される。
【0079】
次に、直列回路1−1〜1−nにおける1段目のn個のコンバータの電流制御について説明する。
図4に示すように、電流制御部4において、電流決定部41は、出力電圧Voの目標値10と検出値30とに基づいて、n個のコンバータから出力される直流電流の電流目標値41aを決定する。
【0080】
演算器411は、目標値10から検出値30を減算して、出力偏差411aを算出する。電圧制御器412は、出力偏差411aを増幅することにより、電流目標値41aを生成する。
【0081】
このように、初段制御部42−1は、直列回路1−1から出力される直流電流が電流目標値41aに近づくように、コンバータ11−1の電流制御を実行する。初段制御部42−2〜42−nは、初段制御部42−1と同様に、直列回路1−2〜1−nにおける1段目の(n−1)個のコンバータの電流制御を実行する。これにより、直列回路1−1〜1−nの各々における出力電圧を揃えることが可能となる。
【0082】
以上説明したように、電力変換装置100は、直列回路1−1〜1−nにおける2段目以降のn×(m−1)個のコンバータから出力される直流電圧が個別目標値51aに近づくように、これらのコンバータの電圧制御を個別に実行する。直列回路1−1〜1−nにおける1段目のn個のコンバータは、直列回路1−1〜1−nの各々におけるm個のコンバータから出力される直流電圧の合計値が、目標値10に近づくように、個別に電流制御される。これにより、n×m個のコンバータが直並列に接続された電圧変換部1を備える電力変換装置100において、出力電圧Voを所望の電圧に制御することができる。
【0083】
上記実施の形態において、直列回路1−1〜1−nにおける2段目以降のn×(m−1)個のコンバータの個別目標値を、式(1)を用いて計算する例を説明したが、これに限られない。例えば、n×(m−1)個のコンバータの個別目標値を、個別に設定してもよい。この場合、各コンバータの個別目標値は、出力電圧Voに基づいて得られるものであればよい。これにより、電圧変換部1に用いるコンバータの性能を揃えなくてもよいため、様々な構成の電力変換装置100を提供することができる。
【0084】
上記実施の形態において、直列回路1−1〜1−nにおける2段目以降のn×(m−1)個のコンバータを制御するn×(m−1)個の個別制御部を備える例を説明したが、これに限られない。例えば、1つのコントローラで、n×(m−1)個のコンバータを集中的に制御してもよい。すなわち、電圧制御部5は、2段目以降のn×(m−1)個のコンバータの電圧制御を実行すればよい。
【0085】
上記実施の形態において、初段制御部42−1〜42−nが、直列回路1−1〜1−nにおける1段目のn個のコンバータをそれぞれ制御する例を説明したが、これに限られない。例えば、1つのコントローラで、n個のコンバータを集中的に制御してもよい。すなわち、電流制御部4は、n個の直列回路の各々において、1段目のn個のコンバータの電流制御を実行すればよい。
【0086】
上記実施の形態において、コンバータ11−1がインバータ15と、トランス16と、整流器17とを備える例(
図2参照)を説明したが、これに限られない。
図2に示すコンバータ11−1は、直流電力D1の供給を受ける1次側回路と、直流電力D2を生成する2次側回路とが絶縁されたDC−DCコンバータであればよい。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。