(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-89338(P2015-89338A)
(43)【公開日】2015年5月11日
(54)【発明の名称】害虫這い上がり防止材。
(51)【国際特許分類】
A01M 29/34 20110101AFI20150414BHJP
【FI】
A01M29/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-228906(P2013-228906)
(22)【出願日】2013年11月5日
(71)【出願人】
【識別番号】399049855
【氏名又は名称】湯田 秋夫
(72)【発明者】
【氏名】湯田 秋夫
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121BB27
2B121BB28
2B121BB30
2B121CC21
2B121FA12
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】
近年、安心、安全な野菜くだもの等が求められているが、野菜、初め果樹等の生産等では、害虫から作物を守る為には、農薬を使用しなければ収穫できない現実が有る。
【解決手段】
本発明は、滑剤、忌避剤等を用いて害虫が野菜、果樹に這い上がる事が出来ない部材で、作物周囲を囲み寄せつけない作物の栽培方法で、従来の害虫を薬剤による殺虫、粘着剤による捕獲駆除といった方法と異なり、人にも自然にも優しい安価な害虫を寄せつけない栽培方法の部材である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション性の有する紐状表面に滑剤を塗布した事を特徴とする請求項1の害虫這い上がり防止材。
【請求項2】
クッション性の有する紐状表面に忌避剤を塗布した事を特徴とする請求項1の害虫這い上がり防止材。
【請求項3】
鋏込むためのスプリング機能を有する部材内にクッション性の部材を用いこれらに滑剤を塗布した事を特徴とする請求項2の害虫這い上がり防止材。
【請求項4】
鋏込むためのスプリング機能を有する部材内にクッション性の部材を用い忌避剤を浸み込ませた事を特徴とする請求項2の害虫這い上がり防止材。
【請求項5】
野菜育苗ポット容器の上部外周表面に滑剤を塗布した事を特徴とする請求項3の害虫這い上がり防止材。
【請求項6】
野菜育苗ポット容器の上部外周表面に忌避剤を塗布した事を特徴とする請求項3の害虫這い上がり防止材。
【請求項7】
野菜育苗ポット容器底、下部側面一端に切り取る為のミシン目を設け、容器上部面に滑剤、忌避剤を塗布した事を特徴とする請求項3の害虫這い上がり防止材。
【請求項8】
円筒形一端に切れ目を設け滑剤、忌避剤を塗布した事を特徴とする請求項4の害虫這い上がり防止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果実等を食する害虫に関するもので、果樹の新芽、葉、果実、野菜等に地面より這い上がり食害する害虫の這い上がりを阻止する物である。
【背景技術】
【0002】
野菜果物、果樹等に食害する害虫には、飛来して害を及ぼすものもいるが、地中の卵より孵化し地上に這い出て野菜果物、果樹に這い上がり食害する害虫の方が数多く又、害虫の種類も多い。
【0003】
食の安全安心の為、農薬の使用を抑えた有機栽培、無農薬等の栽培方法等があるが、葉物野菜などに付く青虫等は、日中人の目に付きしだい箸等で捕獲駆除できるが害虫の中には日中は活動せず地面等に隠れ夜野菜、果樹等に這い上がり食害する害虫が非常に多い。
【0004】
この為、どうしても薬剤を使用しなければ害虫の食害被害を防ぐ事が出来なかった。
【0005】
果樹、畑の野菜等の害虫駆除には、収穫時期までの期間様々な害虫が発生しそのつど害虫に効果が有る薬剤を用い、大量の薬剤散布が必要としている。
【0006】
殺虫剤等の農薬を大量に使用する為、安心、安全求める農薬を使用しない無農薬農法等が試みられているが、天敵が少なく害虫による虫食い被害が多く収穫量が半減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013‐128416
【特許文献2】特願2008‐005816
【特許文献3】特開平08‐019363
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
果樹、野菜果物等に取り付く害虫を、薬剤を使用せず防御する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
地面より這いでて、野菜果物、果樹等に這い上がり食害するのを防ぐ為、這い上がろうとする、野菜の茎、幹、果樹の根元、枝に滑剤、忌避剤等を塗布した部材を巻き付け、害虫の這い上がりを阻止する。
【0010】
害虫のほとんどは、滑剤の剥離効果で、滑剤を塗布した部材には這い上る事が出来ない、滑剤特有の効果が有る。
【0011】
害虫の中には自ら触手に粘液を分泌し、這い上がりが容易にする害虫もいるが害虫の分泌する粘液を滑剤の剥離効果が粘液を阻害する為、這い上がる事が出来なくなる。
【0012】
この為、ほとんどの害虫は、滑剤を塗布した部材に這い上る事が出来ない。
【0013】
薬剤散布のできない収穫前の野菜、くだものに使用でき、野地栽培のシイタケ、茸類等を食するナメクジ等の這い上がり防止にも活用出来る。
【0014】
又、害虫が嫌う忌避剤を塗布した部材を用いても同様の這い上がる事が出来ない効果が得られるので忌避剤等を用いても良い。
【発明の効果】
【0015】
滑剤、忌避剤の塗布した部材を害虫の食害を受ける野菜、果物、果樹の根元周辺に巻き付け又は設けるだけで、害虫の乗り越える障害、障壁となり野菜に這い上がる行動を阻止できるため、農薬を使用せずに済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
地面の卵から孵化し幼虫、成虫となり地面を這いまわり野菜果物果樹等に這い上がる害虫を阻止する為に、これらの周りに滑剤、忌避剤を塗布した部材で囲み害虫を寄せつけない障壁部材とするものである。
【0017】
滑剤を塗布したクッション性紐部材を、使用する長さに切り果樹の根元、野菜苗等の幹、茎等に巻き付けて害虫の這い上がり防止の障壁とし用いる。
【0018】
滑剤を塗布したクッション性挟み込み部材を苗等の茎に挟み害虫の這い上がりを防止する。
【0019】
野菜苗育苗ポット容器事植え、地表面に出ている容器上部に滑剤を塗布して苗を囲み害虫を地植えした苗に寄せつけない障壁とする。
【0020】
上記記述したように、滑剤の替わりに忌避剤を用いても同様の効果が得られるので忌避剤を塗布して使用しても良い。
【0021】
地植えした野菜周囲を囲む円筒形部材に滑材、忌避剤を併用し塗布した部材を用いても同様の害虫の這い上がり防止材となる参照
図9。
【実施例1】
【0022】
クッション性を有する紐状部材内中心に、容易に手で曲げが出来、曲げた形状を保持出来る線部材を設ける参照
図1,2,3。
【0023】
クッション性紐状部材表面に滑剤を塗布する。
【0024】
クッション性部材材質は適度の伸縮クッション効果が有る材質のもので、滑剤の塗布が容易で表面が滑らかなものであればどの様な材質のものを用いても良い。
【0025】
本発明のクッション性紐状部材材質は、発泡ポリエチレンを用い形状断面は丸い形状で有るが、板状の形状として複数の芯材を設けた物でも良い。
【0026】
紐状部材内中心に設けてある線部材材質は、人の手で簡単に曲げが出来、曲げた形状が維持できる材質で有ればどの様な材質のものを用いても良い。
【0027】
本発明では、芯材として1,5mmの丸いアルミ線を用いているが、必ずしもアルミ線でなくとも良い参照
図1。
【0028】
紐状部材に害虫が滑り這い上がれない様に用いる塗布する滑材は、本発明ではシリコンオイルを用いているが、害虫が這い上がる事の出来ない、各種オイル、又はフッ素系の滑剤等を用い忌避剤の成分は、害虫が嫌う除虫菊成分、ハーブ系のオイル等保持したものを使用ても良い。
【0029】
滑剤を塗布した紐状部材を果樹の幹の太さ、使用する長さに切、幹の根元に巻
き付けて害虫の這い上がりを阻止する。
【0030】
従来、果樹の一部の枝に食害が発生した場合は果樹全体に大型噴霧器で大量の薬剤を散布するしか方法がなく薬剤散布費が高価なものとなっていた。
【0031】
一部の枝に食害が発生し、本発明の這い上がり防止材を用いる場合は、他の枝に被害が広がらないように、被害が発生した枝の根元に這い上がり防止材を巻きつけする事で他の枝に害虫が移動できなくなり食害の拡大を阻止できる利点が有る。
【0032】
又、本発明の這い上がり防止材を野菜等で使用の場合は、害虫の這い上がり食害の予防策としてポット苗定植の際、這い上がり防止材を事前に苗の茎に巻き付け定植する事も出来、食害被害の予防が出来る。
【実施例2】
【0033】
クッション性を有する部材を用いたスプリング機能の付いた挟み部材を野菜の茎に挟み込んで使用する参照
図5,6。
【0034】
鋏込むためのスプリング圧着機能を有する挟み込み部材内に発泡ポリエチレンの部材を設けこれらに滑剤を塗布し這い上がり防止材とする。
【0035】
平面板状のプラスチックを用い円形状に丸め、内側にクッション性の有する部材、発泡ポリエチレン等を設けた這い上がり防止材として野菜の茎に挟み込みして使用出来るようにしても良い。
【0036】
野菜の茎に挟み込み茎に圧迫感が生じないスプリング機能、クッション性を有する部材で有れば薄いアルミ板、ステン板、曲げ加工の出来る薄い木材板等を用い内側にクッション性の部材を設けた物でも良い。
【0037】
又果樹枝先に害虫の被害が発生し他の枝に害虫が移転、移動できない様に枝の根元に挟み込み使用しても良い。
【0038】
定植し地植えした野菜の見回りの際、食害が発生の可能性が出てきた場合は、そのつど挟み込み害虫這い上がり防止材を野菜の茎に挟み込んで予防策として用いても良い。
【0039】
ブドウ、キュウリ等つる野菜等で、アリ、アブラ虫等が発見した場合は他に移動できない様に本発明の挟み込み這い上がり防止材をつるに挟むだけで害虫の移動が出来ず、被害が広がるのを防ぐ事が出来る。
【実施例3】
【0040】
本発明の育苗ポット容器は現在市販されているポリエチレン容器とし、容器外側外周に滑剤を塗布する参照
図7,8。
【0041】
ポリエチレン容器底、及び下部一部側面を切断切り取りが出来るようにミシン目を設けた育苗栽培用容器とする。
【0042】
本発明の育苗ポット容器で育てた苗を畑に定植する際は、ミシン目に沿って容器の底、側面部を切り取り後、容器事畑に定植する。
【0043】
育苗ポット容器上部3センチ前後地面より浮いた状態にして苗を定植する。
【0044】
育苗ポット容器地表部外周に滑剤が塗布された壁となり、苗を囲む滑剤付障壁部材となり、地表を這いまわり野菜を食する害虫から苗を守る事が出来る参照
図8。
【0045】
本発明の育苗ポット容器は、既存のポリエチレン容器を活用しているが、環境に優しい土に帰る材質の容器等を使用しても良い。
【0046】
上記実施例3に記述したように既存の野菜苗育苗栽培ポット容器は、ポットに植えた種が発芽し苗が適度の大きさに育つのを確認後、地植えするまで用いられるもので、地植え定植の際は、苗から取り除かれポット容器は破棄されている。
【0047】
本発明は、この破棄されるポットに滑剤又は、忌避剤を塗布し地植えした際、苗周囲を囲み害虫侵入を妨げる障壁とするものである。
【0048】
既存の野菜苗栽培ポットに滑材塗布、ミシン目を設け地植えする際、ポット底、下部側面を切り、上部のみが地表面に浮き出て苗を囲む形に定植され、従来の苗定植作業手順を大きく変える事無く設置出来る利点が有る参照
図8。
【実施例4】
【0049】
円筒形のプラスチック部材一端を切断し滑材、又は忌避剤を塗布し地植え定植苗周りに差込み害虫這い上がり防止の障壁材とする。
【0050】
円筒形のプラスチック這い上がり防止部材は円筒形内切れ目を設けている為、苗を挟み込み設置する際、手で簡単に広げられる硬さ、柔らかさの厚さのプラスチック材とする。
【0051】
本発明の円筒形のプラスチック這い上がり防止部材は中型苗栽培ポット容器に合わせ厚さ1、5mm高さ5cm直径12cmの塩ビパイプ一端を切断し害虫、忌避剤を全面に塗布している。
【0052】
円筒形パイプ下端に地面に差込固定する為の突起部を設ける参照
図9。
【0053】
パイプを広げ地植えした苗を中心に本発明の害虫這い上がり防止材を地面に差込固定する。
【0054】
害虫這い上がり防止材の径の大きさは、苗栽培したポットの大きさが適しているが苗が成長してから用いる場合は径の大きな円筒形パイプ部材のものを用いる。
【0055】
苗定植する際、大型ポット苗、中型ポット苗、又野菜苗の種類により使用されているポット容器に合わせた大きさの物を使用する。
【0056】
本発明での這い上がり防止部材の円筒形部材大きさの高さは5cm程度で、ナス苗の場合は、円形幅は直径12cmの大きさのものを使用し一端に切れ目を設けている。
【0057】
設置の際、苗を中心に1〜2cm程、地面に差し込んで使用する。
【0058】
円筒形這い上がり防止部材上部を外側に折り返した形状の部材を用い、滑材、忌避剤を全面に塗布したものを用いても良い。
【0059】
雨天等での地面の地が跳ね上がり、這い上がり防止材に付着し、害虫が付着した面から侵入するのを防ぐ為に、上部折り返しの付いた円筒形の部材を用いても良い。
【実施例5】
【0060】
表面にスポンジ、又はくション性を有する部材で、裏面に粘着剤を塗布したテープとし、スポンジ又は、クッション性部材としたこれらに忌避剤を浸透させ保持し適度の長さに切り、用いる事の出来る巻き込み収納されたテープ状の部材として用いても良い
図10。
【0061】
裏面に粘着剤を設け、表面に滑剤を塗したシール状部材として、必要とする長さ幅、大きさに切り取り這い上がり防止部材として果樹枝、野菜茎等に用いても良い。
【0062】
らせん状に成形した部材で、内面にクッション材を裏面に滑剤を用いた這い上がり防止材としても良い
図11。
【0063】
市販されている類似品との比較で、現在這い上がり防止材としてバラの柔らかい新芽を食害、産卵する体長2〜3mmのバラゾウ虫の這い上がり防止材としてチューブに入った粘着剤をバラの幹に塗っておくものが発売されているが、本発明の這い上がり防止材とは大きく異なる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の害虫這い上がり防止材は、従来の薬剤による殺虫、粘着による捕獲駆除等と異なり、害虫を野菜果物、果樹等に寄せつけない防御の方法で従来の駆除方法とは異なります。
【0065】
果樹、野菜に害虫を寄せ付けないという方法の為、安全で極めて安価な食害防止材、予防材として色々な用途に活用できる。
【0066】
この為、本発明の這い上がり防止材を用いると農薬を使用しない環境にも人にも優しい栽培方法が可能で、無農薬栽培の害虫被害を軽減できる利点が有る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明の滑剤忌避剤を塗布した紐状の這い上がり防止材である。
【
図2】本発明の紐状の這い上がり防止材を必要に応じて切断した斜視図である。
【
図3】定植したトウモロコシに紐状の這い上がり防止材を取付した状況斜視図である。
【
図4】定植したナスに紐状の這い上がり防止材を取付した状況斜視図である。
【
図5】本発明の、滑剤を塗布した挟み込み部材の這い上がり防止材斜視図である。
【
図6】定植したナスに挟み込み部材の這い上がり防止材を取り付した状況斜視図である。
【
図7】本発明の苗植え付けポット容器の斜視図である。
【
図8】本発明の苗植え付けポットのナスを容器事畑に定植した状況斜視図である。
【
図9】定植した苗を囲む本発明の這い上がり防止材全体斜視図である。
【
図10】忌避剤、滑剤を塗布しテープ状に加工した這い上がり防止材。
【
図11】忌避剤、滑剤を塗布したらせん状に加工した這い上がり防止材。
【符号の説明】
【0068】
1 紐状の這い上がり防止部材
2 発泡ポリエチレン
3 芯材
4 滑材、忌避剤を塗布した面
5 挟み込み部材の這い上がり防止材
6 スプリング
7 忌避剤、滑剤を浸み込ませたクッション材
8 苗植え付けポット容器の這い上がり防止材
9 切り取る為のミシン目
10 畑に定植したナス苗
11 畑に定植したトウモロコシ
12 切れ目入れた円筒形の這い上がり防止材
13 切れ目
14 地面に差込固定する為の突起部
15 粘着剤