【解決手段】一実施形態に係るアプリケータは、皮膚にマイクロニードルを適用させるためのアプリケータであって、ストッパを有する伝達部材と、ストッパが載る台部と、伝達部材の移動方向に沿ってストッパに力を伝えることで、該ストッパまたは台部を変形させて該ストッパを該台部から外す解除機構とを備え、解除機構により作動した伝達部材が、ストッパまたは台部の変形による付勢力をマイクロニードルに伝える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るアプリケータ10の構造を示す六面図である。ただし、
図1では正面図、平面図、および底面図のみを示し、背面図、左側面図、および右側面図は正面図と同じなので省略する。内部構造を示す破線は正面図および平面図でのみ示す。
【0013】
アプリケータ10は、皮膚にマイクロニードルを適用させるために用いる補助器具である。アプリケータ10の筐体11は略円筒形であり、その筐体11内には、ピストン20およびトリガー30が収容される。筐体11の底面には、ピストン20およびマイクロニードル・アレイの形状に対応する孔12が形成されている。筐体11の上面には円柱状のトリガー30を挿入するための孔13が形成されている。本実施形態では、トリガー30の側をアプリケータ10の上方と定義し、底面側をアプリケータ10の下方と定義する。
【0014】
ピストン20は、アプリケータ10の作動時に生ずる付勢力をマイクロニードルに伝える伝達部材である。ピストン20は、マイクロニードルと衝突する円形のピストン板21と、ピストン板21の上面からその上面と直交する方向に伸びる複数のピストンロッド22とを有する。なお、ピストン板21の形状はこの例に限定されず、例えばマイクロニードル・アレイの形状に合わせてピストン板を作製してもよい。各ピストンロッド22の先端には、ピストン板21の径方向外側に突き出た鉤状の爪22aが形成されている。この爪22aは、ピストンロッド22の先端に向けて細くなるテーパ状に形成されたストッパである。爪22aは、筐体11の内壁の略中央に形成された爪受部14に係合可能である。爪受部14は、その内壁の一周にわたって突出した台部である。
【0015】
付勢力を受けるマイクロニードルは、複数のマイクロニードルの集合であるマイクロニードル・アレイとして提供される。マイクロニードル・アレイは、アプリケータ10とは別個独立に用意された基板(例えば、ピストン20の主面とほぼ同じ形状および寸法を有する基板)上に配置された態様で提供されてもよい。この場合には、付勢力により働くピストン20はその基板に衝突することで当該付勢力をマイクロニードルに伝える。あるいは、マイクロニードル・アレイはピストン20の主面上に最初から形成されていてもよい。この場合には、付勢力により働くピストン20は皮膚に衝突した際に当該付勢力をマイクロニードルに伝える。ここで、ピストン20の主面とは、作動時にマイクロニードル・アレイの基板または皮膚と衝突する面である。なお、マイクロニードル・アレイの範囲、マイクロニードル・アレイにおけるマイクロニードルの密度、個々のマイクロニードルの寸法、基板およびマイクロニードルの材質は、従来技術などを考慮して任意に設定してよい。
【0016】
トリガー30は、解除機構として機能する円柱状の蓋であり、その外径は、トリガー30が爪受部14の設置箇所を通過可能なように設定されている。トリガー30の下面には穴31が形成されている。この穴31の径は、自然の状態においてすべてのピストンロッド22の爪22aの先端部がその穴31に入るように設定され、穴31の深さは、各ピストンロッド22を撓ませてピストン20を作動させることができるように定められる。
【0017】
アプリケータ10自体の寸法やアプリケータ10を構成する各部材の寸法は、マイクロニードルの寸法や使用の容易さ等を考慮して決めてよい。また、アプリケータ10の持ちやすさや、皮膚へのマイクロニードルの適用の容易性を考慮して、筐体の形状を変えたり筐体表面を加工したりしてもよい。例えば、筐体の外壁に窪みまたは段差を設けてもよい。また、滑りにくくするために、筐体の表面に細かな溝を形成したりコーティングを施したりしてもよい。
【0018】
アプリケータ10の材料は限定されないが、作動時に生じる付勢力を維持できる強度を持つ材料が望ましい。筐体11、ピストン20、およびトリガー30の材料として、ABS樹脂やポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール(POM)などの合成又は天然の樹脂素材を用いてもよいし、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス、チタン、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト等)を用いてもよい。あるいは、アプリケータ10の強度をさらに高めるために、上記の樹脂材料にガラス繊維や炭素繊維などを添加してもよい。
【0019】
次に、
図2を用いてアプリケータ10の使用方法を説明する。
図2は、
図1のII−II線に沿ったアプリケータ10の断面を示す図である。
【0020】
まず、使用者はピストン20を指または任意の補助具によりアプリケータ10の内側に向かって押し、ピストンロッド22の爪22aを爪受部14に引っ掛ける。この操作により爪22aが爪受部14に載ることで、ピストン20が筐体11内で固定され、トリガー30はピストン20により押し上げられる。本実施形態ではこの時のアプリケータ10の状態を準備状態という。
【0021】
続いて、使用者はマイクロニードル・アレイNの穿刺箇所にアプリケータ10を置き、トリガー30を筐体11内に押し込む。すると、各ピストンロッド22の爪22aがトリガー30の穴31に案内されて爪22aが内側に撓む。これは、トリガー30がピストン20の移動方向に沿って爪22aに力を伝えることでその爪22aを変形させることを意味する。この変形により、各ピストンロッド22に付勢力が蓄積される。使用者がトリガー30をさらに押し込むと、爪22aが爪受部14から外れてピストン20の固定状態が解除され、ピストン20が付勢力によりアプリケータ10の下方に向かって移動する。この結果、その付勢力がマイクロニードル・アレイNに伝わり、そのマイクロニードル・アレイNが皮膚Sを穿孔する。
【0022】
マイクロニードル・アレイNに活性成分が予め塗布されているのであれば、穿刺により活性成分が体内に投与される。あるいは、穿刺後にアプリケータ10およびマイクロニードル・アレイNを退かして穿刺箇所に活性成分を塗布することによって投与を行うことも可能である。あるいは、まず皮膚Sに活性成分を塗り、そこにマイクロニードル・アレイNおよび準備状態のアプリケータ10を置いてアプリケータ10を作動させることによって投与を行うことも可能である。このように投与の態様は様々である。
【0023】
使用者は、上述した通り爪22aを爪受部14に引っ掛けてピストン20を固定することで、アプリケータ10を再び準備状態に戻すことができる。したがって、使用者はアプリケータ10を何度でも使用することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、トリガー30による爪22aの変形により生じた付勢力がピストン20を介してマイクロニードルに伝わる。より具体的には、トリガー30を押すという一つの操作により、爪22aの変形(付勢力の蓄積)と爪22aが爪受部14から外れる作用(ピストン20の作動)とが連続的に発生する。爪22aを爪受部14から外すことは使用者により直接的に行われるのではなくアプリケータの機構により実現されるので、ピストン20の作動は誰が使用しても一定であり、よって、マイクロニードルに伝わる付勢力も一定となる。したがって、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、穴31が形成されたトリガー30が爪22aを変形させることでピストン20が作動するので、解除機構の仕組みが簡単である。本実施形態では、付勢力を生じさせる独立の部品(例えば金属ばね)が不要であり、したがって、ばねの弾性力に対する強度を増すためにアプリケータ本体の寸法を大きくする必要がなく、特殊な材料でばねを作製する必要もない。例えば、樹脂でコイルばねを作製しようとすれば材料がPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)に限られたり製造法が押出成型に限られたりするなどの制約がある。また、板ばねを採用した場合にはそれを作動させるためにある程度の領域を確保する必要がある。しかし、本実施形態によればこれらの制約を排除して小型のアプリケータを低コストで作製することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、付勢力が生じるピストンロッド22(特に爪22a)が、伝達部材であるピストン20の一部である。このように、付勢力が生じる部分とその付勢力をマイクロニードルに伝える部分とを一体化することで、部品数を抑えてその分アプリケータを小型化できる。
【0027】
また、本実施形態によれば、ピストンロッド22(特に爪22a)に付勢力が蓄積されるのはトリガー30を押し込んだ時のみである。したがって、ピストンロッド22を作製する際に、長時間にわたる付勢力に耐えるための特別な構造または材料を採用する必要がなく、その分簡単にかつ低コストでアプリケータを作製することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係るアプリケータ40の構造を示す六面図である。ただし、
図3では正面図、左右側面図、平面図、および底面図のみを示し、背面図は正面図を左右反転したものであるので省略する。内部構造を示す破線は正面図でのみ示す。
図4はアプリケータ40の分解平面図である。
【0029】
アプリケータ40は略直方体であり、その外観は、ピストン60をセットするための支持台50と、その支持台50を覆う一対のトリガー70(大トリガー71および小トリガー72)とにより形成される。本実施形態では、一対のトリガー70の天板71b,72bの側をアプリケータ40の上方と定義し、支持台50の底面51の側をアプリケータ40の下方と定義する。
【0030】
支持台50の底面51にはピストン60の形状に対応する孔52が形成されており、この孔52の周囲には、そのピストン60を載せるためのブリッジ53が二つ設けられている。二つのブリッジ53は支持台50の幅方向(水平面においてアプリケータ40の長手方向と直交する方向)に沿って並ぶ台部である。各ブリッジ53の桁の中央には、ピストン60の支持および作動の双方が可能なように、所定の幅の隙間が形成されている。各ブリッジ53の桁は外力により変形可能である。
【0031】
ピストン60は、アプリケータ40の作動により生ずる付勢力をマイクロニードルに伝える伝達部材である。ピストン60は、マイクロニードルと衝突する円形のピストン板61と、ピストン板61の上面からその上面と直交する方向に伸びる十字状のピストンロッド62とを有する。本実施形態では、ピストンロッド62のうち、ピストン板61に沿って延びた棒状の部分をストッパ62aという。ストッパ62aの径はブリッジ53の隙間の幅よりも大きいので、ストッパ62aはブリッジ53の自然状態においてその隙間の上に配置可能である。また、ストッパ62aはブリッジ53が変形した際にその隙間を通過することが可能である。第1実施形態と同様にピストン板61の形状はこの例に限定されず、例えばマイクロニードル・アレイの形状に合わせてピストン板を作製してもよい。
【0032】
一対のトリガー70は、解除機構として機能する部材である。一対を成す二つのトリガーの大きさは異なり、本実施形態では、大きい方のトリガーを大トリガー71ともいい、他方のトリガーを小トリガー72ともいう。各トリガー70の外縁は、天板と三つの側板とで形成される。各トリガー70の内部には、櫛歯のように配置された板材が二つ設けられており、本明細書ではこれらの板材の集合を櫛歯部という。アプリケータ40を組み立てた際には、大トリガー71の櫛歯部71aは支持台50上の二つのブリッジ53の間に位置し、小トリガー72の櫛歯部72aは大トリガー71の櫛歯部71aの内側に位置する。このとき、一対の櫛歯部71a,72aはストッパ62aを挟むように配置される。一対の櫛歯部71a,72aを構成する各板材の縁部は、当該一対の櫛歯部の間隔が皮膚から遠ざかるほど(すなわち、下から上に行くほど)短くなるように斜めに形成されている。
【0033】
アプリケータ40自体の寸法、アプリケータ40を構成する各部材の寸法、そして筐体の形状および加工方法は、上記第1実施形態と同様に任意に決めてよい。また、アプリケータ40の材料も第1実施形態と同様に選択可能である。
【0034】
次に、
図5を用いてアプリケータ40の使用方法を説明する。
図5は、
図3のV−V線に沿ったアプリケータ40の断面を示す図である。
【0035】
まず、使用者は一対のトリガー70を引き離し、ピストン60を指または任意の補助具によりアプリケータ40の内側に向かって押すことでストッパ62aをブリッジ53の隙間から通してそのブリッジ53に載せる。本実施形態ではこの時のアプリケータ40の状態を準備状態という。
【0036】
続いて、使用者はマイクロニードル・アレイNの穿刺箇所にアプリケータ40を置き、大トリガー71および小トリガー72をアプリケータ40の中央に向かって押す(矢印Aa参照)。この操作により、アプリケータ40の長手方向において一対の櫛歯部71a,72aが互いに接近する。このとき、側方から見た際の櫛歯部71a,72a同士の交わる点が下がるので、ストッパ62aが皮膚Sに向かって押し下げられ、ブリッジ53が下方に撓む。これは、一対のトリガー70がピストン60の移動方向に沿ってストッパ62aに力を伝えることでブリッジ53を変形させることを意味する。この変形により、二つのブリッジ53およびストッパ62aには付勢力が蓄積される。
【0037】
使用者が一対のトリガー70をさらに押すと、ストッパ62aが隙間を通り抜け、ピストン60が付勢力によりアプリケータ40の下方に向かって移動する。この結果、ピストン60はその付勢力の働きにより所定の速度で底面51まで移動してマイクロニードル・アレイNに衝突し、その付勢力がマイクロニードル・アレイNに伝わり、そのマイクロニードル・アレイNが皮膚Sを穿孔する。なお、活性成分の投与方法については、第1実施形態と同様に様々な態様があり得る。
【0038】
使用者は、上述した通り一対のトリガー70を離間させてストッパ62aを二つのブリッジ53に載せることで、アプリケータ40を再び準備状態に戻すことができる。したがって、使用者はアプリケータ40を何度でも使用することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、一対のトリガー70によるブリッジ53の変形により生じた付勢力がピストン60を介してマイクロニードルに伝わる。より具体的には、一対のトリガー70を押すという一つの操作により、ブリッジ53の変形(付勢力の蓄積)とストッパ62aがブリッジ53から外れる作用(ピストン60の作動)とが連続的に発生する。ストッパ62aをブリッジ53から外すことは使用者により直接的に行われるのではなくアプリケータの機構により実現されるので、ピストン60の作動は誰が使用しても一定であり、よって、マイクロニードルに伝わる付勢力も一定となる。したがって、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0040】
また、本実施形態では、解除機構である一対の櫛歯部71a,72aを皮膚に沿って接近させることでピストン60を作動させることができる。したがって、ピストン60の移動方向に沿ったアプリケータ40の寸法(すなわち、アプリケータ40の高さ)を小さくすることができ、その分、アプリケータ40を小型化することができる。加えて、本実施形態でも第1実施形態と同様に、付勢力を生じさせる独立の部品(金属ばね等)が不要なので、アプリケータの寸法および製造コストを抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、付勢力の少なくとも一部が生じるストッパ62aが、伝達部材であるピストン60の一部である。このように、付勢力が生じる部分とその付勢力をマイクロニードルに伝える部分とを一体化することで、部品数を抑えてその分アプリケータを小型化できる。
【0042】
また、本実施形態によれば、ブリッジ53およびストッパ62aに付勢力が蓄積されるのは一対のトリガー70を押した時のみである。したがって、ブリッジ53およびストッパ62aを作製する際に、長時間にわたる付勢力に耐えるための特別な構造または材料を採用する必要がなく、その分簡単にかつ低コストでアプリケータを作製することができる。
【0043】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係るアプリケータ40Aの構造を示す六面図である。ただし、
図6では正面図、左右側面図、平面図、および底面図のみを示し、背面図は正面図を左右反転したものであるので省略する。内部構造を示す破線は正面図でのみ示す。
図7はアプリケータ40Aの分解平面図である。
【0044】
アプリケータ40Aは第2実施形態の変形例であるといえ、アプリケータ40との相違点は、ピストンのストッパの構造と、そのストッパが載る台部の構造である。以下では第2実施形態と異なる点について特に説明し、第2実施形態と同一または同様の点については説明を省略する。
【0045】
支持台50Aの中央には、アプリケータ40Aの長手方向かつ孔52の半径方向に沿って延びる一つのブリッジ54が設けられている。ブリッジ54は、後述するピストン60Aの爪67を載せる役割を担う。ブリッジ54の中央には、ピストン60Aの支持および作動の双方が可能なように、所定の幅の隙間が形成されている。アプリケータ40Aを組み立てた際には、小トリガー72の櫛歯部72aの内側にブリッジ54が位置する。
【0046】
ピストン60Aは、マイクロニードルと衝突するピストン板61と、ピストン板61の上面からその上面と直交する方向に伸びる十字状のピストンロッド65とを有する。ピストンロッド65は、第2実施形態におけるストッパ62aと同様の棒状部材66を有するが、本実施形態ではその棒状部材66はストッパとしての機能を持たない。軸方向におけるピストンロッド65の端部付近は二手に分かれており、その先端には、ブリッジ54の隙間と係合可能な爪67が形成されている。本実施形態ではこの爪67がストッパの役割を担う。
【0047】
次に、
図8を用いてアプリケータ40Aの使用方法を説明する。
図8は、
図6のVIII−VIII線に沿ったアプリケータ40Aの断面を示す図である。
【0048】
まず、使用者は一対のトリガー70を引き離し、ピストン60Aを指または任意の補助具によりアプリケータ40Aの内側に向かって押すことで爪67をブリッジ54の隙間から通してそのブリッジ54に載せる(引っ掛ける)。本実施形態ではこの時のアプリケータ40Aの状態を準備状態という。
【0049】
続いて、使用者はマイクロニードル・アレイNの穿刺箇所にアプリケータ40Aを置き、大トリガー71および小トリガー72をアプリケータ40Aの中央に向かって押す(矢印Aa参照)。この操作により、アプリケータ40Aの長手方向において一対のトリガー70の櫛歯部71a,72aが互いに接近する。このとき、側方から見た際の櫛歯部71a,72a同士の交わる点が下がるので、棒状部材66が皮膚Sに向かって押し下げられ、爪67が中央側に撓む。これは、一対のトリガー70がピストン60Aの移動方向に沿って爪67に間接的に力を伝えることでその爪67を変形させることを意味する。この変形により、ピストンロッド65には付勢力が蓄積される。
【0050】
使用者が一対のトリガー70をさらに押すと、爪67がブリッジ54の隙間を通り抜け、ピストン60Aが付勢力によりアプリケータ40Aの下方に向かって移動する。この結果、ピストン60Aはその付勢力の働きにより所定の速度で底面51まで移動してマイクロニードル・アレイNに衝突し、その付勢力がマイクロニードル・アレイNに伝わり、そのマイクロニードル・アレイNが皮膚Sを穿孔する。
【0051】
使用者は、上述した通り一対のトリガー70を離間させて爪67をブリッジ54に載せることで、アプリケータ40Aを再び準備状態に戻すことができる。したがって、使用者はアプリケータ40Aを何度でも使用することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、一対のトリガー70による爪67の変形により生じた付勢力がピストン60Aを介してマイクロニードルに伝わる。より具体的には、一対のトリガー70を押すという一つの操作により、爪67の変形(付勢力の蓄積)と爪67がブリッジ54から外れる作用(ピストン60Aの作動)とが連続的に発生する。爪67をブリッジ54から外すことは使用者により直接的に行われるのではなくアプリケータの機構により実現されるので、ピストン60Aの作動は誰が使用しても一定であり、よって、マイクロニードルに伝わる付勢力も一定となる。したがって、誰が使用してもマイクロニードルの穿刺の程度を一定のレベルに保つことができる。
【0053】
また、本実施形態では、解除機構である一対の櫛歯部71a,72aを皮膚に沿って接近させることでピストン60Aを作動させることができる。したがって、ピストン60Aの移動方向に沿ったアプリケータ40Aの寸法(すなわち、アプリケータ40Aの高さ)を小さくすることができ、その分、アプリケータ40Aを小型化することができる。加えて、本実施形態でも第1実施形態と同様に、付勢力を生じさせる独立の部品(金属ばね等)が不要なので、アプリケータの寸法および製造コストを抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、付勢力が生じるピストンロッド65(特に爪67)が、伝達部材であるピストン60Aの一部である。このように、付勢力が生じる部分とその付勢力をマイクロニードルに伝える部分とを一体化することで、部品数を抑えてその分アプリケータを小型化できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、ピストンロッド65(特に爪67)に付勢力が蓄積されるのは一対のトリガー70を押した時のみである。したがって、ピストンロッド65を作製する際に、長時間にわたる付勢力に耐えるための特別な構造または材料を採用する必要がなく、その分簡単にかつ低コストでアプリケータを作製することができる。
【0056】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。