【解決手段】電動弁1は、コイル部材50が、ガイドレール25に回転可能に螺合されたコイル部51及び当該コイル部51の一端に半径方向外向きに突出する爪部52を一体に有している。マグネットロータ62に固定して設けられた突条67が、マグネットロータ62の回転に伴いコイル部材50を回転させるように爪部52を押し回す。ガイドレール25の下端部近傍に設けられた下限ストッパ面26aに、コイル部材50の回転を規制するように爪部52が突き当たる。そして、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、突条67における爪部52の当接される爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されている。
弁室及び当該弁室に開口する弁ポートが設けられた弁本体と、前記弁ポートの軸線と軸心が重なるように配置されかつ当該軸心を中心に回転されることにより前記軸線方向に移動するように支持されたロータ軸と、前記ロータ軸に固定されたマグネットロータと、前記ロータ軸の軸心を中心として前記マグネットロータを回転させる回転駆動部と、前記ロータ軸の前記軸線方向の移動に伴い前記弁ポートに対して進退する弁体部と、を備えた電動弁において、
前記弁ポートの軸線と軸心が重なるように配置された螺旋状のガイドレールを有するガイド部材と、
前記ガイドレールに回転可能に螺合されたコイル部及び当該コイル部の一端に半径方向外向きに突出する爪部を一体に有するコイル部材と、
前記マグネットロータに固定して設けられ、当該マグネットロータの回転に伴い前記コイル部材を回転させるように前記爪部を押し回す爪受部と、
前記ガイドレールの一方の端部近傍に設けられ、前記コイル部材の回転を規制するように前記爪部が突き当たる回転規制部と、を備え、
前記回転規制部に前記爪部が突き当たる際に前記ガイドレールの半径方向から見たとき、前記爪受部における前記爪部の当接される爪当面が前記回転規制部に対して傾斜して形成されていることを特徴とする電動弁。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態の電動弁を、
図1〜
図7を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態の電動弁の正面方向から見た縦断面図である。
図2は、
図1の電動弁が備える支持部材及びコイル部材の斜視図である。
図3は、
図2の支持部材の平面図である。
図4は、
図2のコイル部材の斜視図である。
図5は、
図1の電動弁が備えるマグネットロータの縦断面図である。
図6は、
図5のマグネットロータの断面斜視図である。
図7は、支持部材の弁閉ストッパ突起にコイル部材の爪部が突き当たった状態を示す図であって、(a)は、背面方向から見た図であり、(b)は側面方向から見た図である。なお、以下の説明における「上下」等の方向を示す概念は、
図1における方向に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0024】
この電動弁(図中、符号1で示す)は、
図1に示すように、弁本体10と、支持部材20と、ロータ軸30と、弁体部40と、コイル部材50と、ステッピングモータ60と、を備えている。
【0025】
弁本体10は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として円筒形状に形成されている。弁本体10には、図中下方の端部を塞ぐように弁本体10に一体に形成された弁座部11が設けられている。弁座部11の中央には、弁ポート11aが開口されている。弁本体10は、内側に弁室12を形成している。
【0026】
弁本体10には、外周片側に冷媒などの流体の流路としての第1継手管13が接続され、この第1継手管13は弁室12に導通されている。また、弁座部11には、第2継手管14が接続され、この第2継手管14は弁ポート11aを介して弁室12に導通される。第1継手管13及び第2継手管14は、例えば、銅や真鍮などを材料として構成されており、弁本体10にろう付け等により固着されている。
【0027】
支持部材20は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などの合成樹脂製の略円柱状のホルダ部21と、このホルダ部21の弁本体10寄りの端部にインサート成形により一体に設けられたステンレス製のフランジ部22と、を有している。支持部材20は、フランジ部22が弁本体10と後述するステッピングモータ60のステンレス製のケース61とに挟まれて互いに溶接等されることにより弁本体10に固着されている。支持部材20はガイド部材に相当し、ホルダ部21はガイド本体に相当する。
【0028】
ホルダ部21は、その軸心が弁ポート11aの軸を通る軸線Lに重なるように配置されている。ホルダ部21の中心には、当該ホルダ部21を貫通するように軸線L方向に並ぶネジ孔23とスライド孔24とが形成されている。ネジ孔23の内周面には、駆動雌ネジ23aが形成されており、後述するロータ軸30が螺合される。スライド孔24は、弁ポート11a寄りに配置され、ネジ孔23より大径に形成されている。スライド孔24には、後述する弁体部40が摺動移動可能に嵌合される。
【0029】
ホルダ部21には、
図2に示すように、その外周面21aに螺旋状の突条からなるガイドレール25が形成されている。ガイドレール25は、互いに隣接する巻回部分が間隔をあけて配置されており、後述するコイル部材50が回転可能に螺合される。ガイドレール25は、その軸心が軸線Lと重なるように配置されている。本実施形態では、ホルダ部21の外周面21aの一部箇所が軸線L方向に面取りされている。これにより、ガイドレール25は、現実に連続した螺旋形状でなく、面取りされた箇所において仮想的に連続する螺旋形状に形成されている。このようにすることにより、ホルダ部21の樹脂成形における型抜きが容易になる。勿論、これに限定されるものではなく、ホルダ部21は、上述したような面取りのない円筒形状に形成され、ガイドレールが現実に連続した螺旋形状に形成されていてもよい。
【0030】
図3に示すように、ホルダ部21の外周面21aにおけるガイドレール25の弁ポート11a寄りの端部(下端部25a)近傍には、当該ガイドレール25の半径方向に突き出た弁閉下限ストッパ突起26が設けられ、ホルダ部21の外周面21aにおけるガイドレール25の下端部25aと反対側の端部(上端部25b)近傍には、当該ガイドレール25の半径方向に突き出た弁開上限ストッパ突起27が設けられている。
【0031】
弁閉下限ストッパ突起26には、後述するコイル部材50がガイドレール25に案内されてその下端部25aに到達したときに、コイル部材50の爪部52が突き当たるように、ガイドレール25の下端部25aにおいて当該ガイドレール25と交わるように軸線Lと平行でかつガイドレール25の半径方向と平行に形成された下限ストッパ面26aが設けられている。弁閉下限ストッパ突起26は突当突起に相当し、下限ストッパ面26aが回転規制部及び突当面に相当する。
【0032】
弁開上限ストッパ突起27には、後述するコイル部材50がガイドレール25に案内されてその上端部25bに到達したときに、コイル部材50のコイル部51の他端51bが突き当たるように、ガイドレール25の上端部25bにおいて当該ガイドレール25と交わるように軸線Lと平行でかつガイドレール25の半径方向と平行に形成された上限ストッパ面27aが設けられている。
【0033】
ロータ軸30は、
図1に示すように、例えば、ステンレスなどの金属を材料として円柱棒状に形成されている。ロータ軸30の外周面の一部には駆動雄ネジ30aが形成されており、この駆動雄ネジ30aが、上述したホルダ部21の駆動雌ネジ23aに螺合されている。これにより、ロータ軸30は、その軸心が軸線Lに重なるように配置され、また、軸心を中心に回転されることによりネジ送り作用によって軸線L方向に移動される。即ち、ロータ軸30は、軸線Lと軸心が重なるように配置されかつ当該軸心を中心に回転されることにより軸線L方向に移動するように支持されている。本実施形態において、駆動雌ネジ23aと駆動雄ネジ30aは右ネジである。ロータ軸30の弁ポート11a寄りの端部には、後述する弁体部40を軸線Lを中心として回転可能に掛止するフランジ部31が設けられている。
【0034】
弁体部40は、弁ホルダ41と、弁体42と、ワッシャ43と、バネ受け44と、圧縮コイルバネ45と、を有している。
【0035】
弁ホルダ41は、上述したホルダ部21のスライド孔24の内径と略同一の外径となる円筒形状に形成されている。弁ホルダ41は、スライド孔24に摺動移動可能に嵌合され、これにより、弁ホルダ41は支持部材20により軸線L方向に移動可能に支持されている。
【0036】
弁体42は、ニードル形状にされており、このニードル形状の先端が弁ポート11aと対向するように弁ホルダ41における弁ポート11a側の端部(下端部41a)に固着されている。弁体42は、弁座部11との間隔を弁の最大開度から弁の最小開度(あるいは全閉状態)の間で加減されることによって流量の調節を行う。
【0037】
弁ホルダ41における弁ポート11a側と反対側の端部(上端部41b)には、ロータ軸30のフランジ部31が回転可能に掛止されている。具体的には、ロータ軸30のフランジ部31が、弁ホルダ41の上端部41bとの間にワッシャ43を挟み込み、このフランジ部31によりロータ軸30が弁ホルダ41の上端部41bで回転可能に引っ掛かっている。この掛かり合いにより、ロータ軸30によって弁ホルダ41が軸線L方向に移動可能でかつ軸線Lを中心として回転可能に支持されている。また、弁ホルダ41内には、バネ受け44が軸線L方向に移動可能に設けられている。バネ受け44と弁体42との間には圧縮コイルバネ45が所定の荷重を与えられた圧縮状態で取り付けられている。これにより、バネ受け44は、ロータ軸30側に押しつけられ、ロータ軸30のフランジ部31に当接している。
【0038】
コイル部材50は、ばね性を有する鋼材などの針金を屈曲させて形成されている。コイル部材50は、
図4に示すように、コイルばね状のコイル部51と、コイル部51の一端51aから半径方向外向きに突出する爪部52と、を一体に有している。コイル部51は、ホルダ部21のガイドレール25における各巻回部分の間隔と略同一径(太さ)でかつ同一ピッチに巻回されており、ある程度拡径しても元の径に復元可能な弾性を有している。コイル部材50(具体的にはコイル部51)は、ホルダ部21のガイドレール25に周方向に回転可能に螺合されている。コイル部51は、ガイドレール25に螺合されたとき、その全体がガイドレール25の巻回部分間に収容され、ガイドレール25における軸線L方向の一部区間に螺合している。換言すると、コイル部51の軸線L方向の長さは、ガイドレール25の軸線L方向の長さより短い。そのため、コイル部51は、ガイドレール25に螺合した状態で回転されたときガイドレール25に案内されて軸線L方向に移動する。
【0039】
本実施形態において、コイル部材50及びガイドレール25は右ネジであり、このガイドレール25及びコイル部材50のピッチは駆動雌ネジ23a及び駆動雄ネジ30aのピッチよりも大きく設定されている。また、コイル部51は、5/4回巻き(450度)であり、巻き数が1以上であることが好ましい。勿論、このような構成に限定されるものではなく、例えば、このガイドレール25及びコイル部材50のピッチと駆動雌ネジ23a及び駆動雄ネジ30aのピッチとを同じに設定したり、コイル部51を2回巻き以上にしたりするなど、本発明の目的に反しない限り、これらの構成は任意である。
【0040】
コイル部材50は、コイル部51を拡径するように弾性変形させてその内側にホルダ部21を挿通したのち形状を復元させることにより、ホルダ部21のガイドレール25に螺合される。
【0041】
ステッピングモータ60は、
図1に示すように、ケース61と、マグネットロータ62と、ステータコイル63と、を有している。
【0042】
ケース61は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として、図中上方の一方の端部が塞がれた略円筒形状に形成されている。ケース61の図中下方の開口側の端部は、弁本体10との間に支持部材20のフランジ部22を挟んだ状態で当該弁本体10に溶接等によって気密に固定されている。
【0043】
マグネットロータ62は、外周部を多極に着磁された円筒状のマグネット部64と、その一端を塞ぐ円盤部65と、を一体に有している。マグネットロータ62は、円盤部65の中央に一体成形された金具66を介してロータ軸30に固着されている。これにより、マグネットロータ62は、ケース61内にロータ軸30の軸心を中心に回転可能に設けられている。
【0044】
ステータコイル63は、ケース61の外周面に配設されており、ステータコイル63にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ62が回転される。ステータコイル63は、回転駆動部に相当する。
【0045】
マグネットロータ62が回転されると、このマグネットロータ62とともにロータ軸30が回転され、駆動雄ネジ30aと駆動雌ネジ23aとのネジ送り作用により、ロータ軸30が軸線L方向(
図1上下方向)に移動して弁体部40が弁ポート11aに対して進退する。これにより、弁ポート11aの開度を変化させ、第1継手管13から第2継手管14へ(または第2継手管14から第1継手管13へ)流れる流体の流量が制御される。
【0046】
また、
図5、
図6に示すように、マグネットロータ62のマグネット部64の内周面の一部には軸線L方向に延在する爪受部としての突条67が形成されている。そして、この突条67はマグネットロータ62の回転時に、コイル部材50の爪部52に当接し、このマグネットロータ62の回転に伴ってコイル部材50を同方向に連れ回す(押し回す)ように回転する。これにより、ガイドレール25とコイル部材50のコイル部51のネジ送り作用によって、コイル部材50が軸線Lに沿ってロータ軸30と同方向に移動する。本実施形態においては、マグネット部64の内周面に突条67が設けられているが、この突条67に代えて、軸線L方向に延在する爪受部としての凹溝が設けられていてもよい。
【0047】
コイル部材50は、
図1上方から見たときに時計回りに回転されることにより、弁ポート11aに近づくように軸線L方向に移動する。このときに突条67における爪部52の当接される爪当面67aは、ガイドレール25の半径方向と平行でかつ軸線L方向に対して傾斜して形成されている。具体的には、
図7(b)に示すように、弁閉下限ストッパ突起26の下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、ガイドレール25から軸線L方向に離れるにしたがって下限ストッパ面26aとの間隔が拡がるように、爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されている。
【0048】
本実施形態において、爪当面67aが軸線L方向に対して傾斜して形成され、下限ストッパ面26aが軸線L方向に平行に形成されているが、これとは逆に、爪当面67aが軸線L方向に平行に形成され、下限ストッパ面26aが軸線L方向に対して傾斜して設けられていてもよい。つまり、爪当面67aが相対的に下限ストッパ面26aに対して傾斜していればよい。爪当面67aと下限ストッパ面26aとがなす角度αは、0度<α<45度であればよく、5度≦α≦30度の範囲が好ましい。
【0049】
次に、本実施形態の電動弁1の動作を、
図7(a)、(b)を参照して説明する。
【0050】
電動弁1において、マグネットロータ62及びロータ軸30を弁ポート11aに近づく方向(
図1下方)に移動させるように回転させる。すると、マグネットロータ62の突条67の爪当面67aがコイル部材50の爪部52に当接し、爪当面67aによって爪部52が押されて、コイル部材50が周方向に押し回される。そして、ロータ軸30の回転による軸線L方向への移動に伴って弁体部40が最小開度(あるいは弁閉状態)となる位置まで移動されたとき、
図7(a)、(b)に示すように、コイル部材50の爪部52が弁閉下限ストッパ突起26の下限ストッパ面26aに突き当たり、コイル部材50の回転が規制される。すると、爪部52を押し回していたマグネットロータ62についてもそれ以上の回転を規制されて、弁体部40が最小開度(あるいは弁閉状態)となる位置を超えて移動されることが規制される。
【0051】
このとき、例えば、従来の構成のように、爪当面67aが下限ストッパ面26aと平行にされた構成であると、爪部52が下限ストッパ面26aに突き当たったときに当該爪部52に加わる力の向きが不定となって反動により跳ね返される量が一定にならない。しかしながら、本実施形態では、
図7(b)に示すように、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、ガイドレール25から離れるにしたがって下限ストッパ面26aとの間隔が拡がるように、爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜している。そのため、爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜していることで、爪部52が下限ストッパ面26aに突き当たったときに当該爪部52に加わる力の向きが爪当面67aの向く方向(図中、矢印で示す)に概ね一定となって反動により跳ね返される量が一定になる。また、爪部52に加わる力の向きが、ガイドレール25から離れる方向寄りとなるので、万が一、コイル部材50に異常な回転力が作用した場合でも、爪部52が、弁閉下限ストッパ突起26をガイドレール25側から乗り越えてしまうことを抑制できる。
【0052】
または、電動弁1において、マグネットロータ62及びロータ軸30を弁ポート11aから離れる方向(
図1上方)に移動させるように回転させる。すると、マグネットロータ62の突条67の爪当面67aと反対側に位置する面67b(
図5、
図6に示す)がコイル部材50の爪部52に当接し、当該面67bによって爪部52が押されて、コイル部材50が周方向に押し回される。そして、ロータ軸30の回転による軸線L方向への移動に伴って弁体部40が最大開度となる位置まで移動されたとき、コイル部材50のコイル部51の他端51bが弁開上限ストッパ突起27の上限ストッパ面27aに突き当たり、コイル部材50の回転が規制される。すると、爪部52を押し回していたマグネットロータ62についてもそれ以上の回転を規制されて、弁体部40が最大開度となる位置を超えて移動されることが規制される。
【0053】
本実施形態の電動弁1は、弁室12及び当該弁室12に開口する弁ポート11aが設けられた弁本体10と、弁ポート11aの軸線Lと軸心が重なるように配置されかつ当該軸心を中心に回転されることにより軸線L方向に移動するように支持されたロータ軸30と、ロータ軸30に固定されたマグネットロータ62と、ロータ軸30の軸心を中心としてマグネットロータ62を回転させるステータコイル63と、ロータ軸30の軸線L方向の移動に伴い弁ポート11aに対して進退する弁体部40と、を備えている。また、弁ポート11aの軸線Lと軸心が重なるように配置された螺旋状のガイドレール25を有する支持部材20と、ガイドレール25に回転可能に螺合されたコイル部51及び当該コイル部51の一端51aに半径方向外向きに突出する爪部52を一体に有するコイル部材50と、マグネットロータ62に固定して設けられ、当該マグネットロータ62の回転に伴いコイル部材50を回転させるように爪部52を押し回す突条67と、ガイドレール25の下端部25a近傍に設けられ、コイル部材50の回転を規制するように爪部52が突き当たる弁閉下限ストッパ突起26の下限ストッパ面26aと、を備えている。そして、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、突条67における爪部52の当接される爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されている。
【0054】
また、電動弁1は、支持部材20が、ガイドレール25が外周面21aに一体に形成された円筒形状のホルダ部21を有し、下限ストッパ面26aの設けられた弁閉下限ストッパ突起26が、ホルダ部21の外周面21aにおけるガイドレール25の下端部25a近傍に突出して設けられ、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、ガイドレール25から離れるにしたがって下限ストッパ面26aとの間隔が拡がるように、爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されている。
【0055】
以上より、本実施形態によれば、支持部材20が、弁本体10に設けられた弁ポート11aの軸線Lと軸心が重なるように配置された螺旋状のガイドレール25を有している。コイル部材50が、ガイドレール25に回転可能に螺合されたコイル部51及び当該コイル部51の一端51aに半径方向外向きに突出する爪部52を一体に有している。マグネットロータ62に固定して設けられた突条67が、マグネットロータ62の回転に伴いコイル部材50を回転させるように爪部52を押し回す。ガイドレール25の下端部25a近傍に設けられた弁閉下限ストッパ突起26の下限ストッパ面26aに、コイル部材50の回転を規制するように爪部52が突き当たる。そして、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、突条67における爪部52の当接される爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されている。
【0056】
このようにしたことから、マグネットロータ62が回転されると、コイル部材50の爪部52に突条67の爪当面67aが当接されて、コイル部材50が螺旋状のガイドレール25に沿って周方向に押し回されるとともに弁ポート11aの軸線L方向に移動する。コイル部材50の回転が進むと爪部52が下限ストッパ面26aに突き当たってコイル部材50の回転が規制されるとともに、爪部52を押し回す突条67が固定して設けられたマグネットロータ62の回転も規制される。そして、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、突条67における爪部52の当接される爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されているので、爪部52が下限ストッパ面26aに突き当たったときに当該爪部52に加わる力の向きが爪当面67aの向く方向に一定となって反動により跳ね返される量が一定になる。そのため、跳ね返されることにより生じる音の大きさのばらつきを抑制することができる。これにより、耳障りな音を抑制することができる。
【0057】
また、支持部材20が、ガイドレール25が外周面21aに一体に形成された円筒形状のホルダ部21を有している。下限ストッパ面26aの設けられた弁閉下限ストッパ突起26が、ホルダ部21の外周面21aにおけるガイドレール25の下端部25a近傍に突出して設けられている。そして、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、ガイドレール25から離れるにしたがって下限ストッパ面26aとの間隔が拡がるように、爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されている。
【0058】
コイル部材50の爪部52が突き当たる下限ストッパ面26aの設けられた弁閉下限ストッパ突起26は、コイル部材50がガイドレール25の下端部25aまで移動するまではその回転の妨げとならないようする必要があるため、ガイドレール25の下端部25a近傍においてガイドレール25に重ならないように設けられている。つまり、弁閉下限ストッパ突起26は、ガイドレール25の上端部25b側に延ばして設けることができないので、例えば電動弁が使用されるシステムの故障など、何らかの異常事象によってコイル部材50に通常動作時にはあり得ない異常な回転力が作用した場合、コイル部材50の爪部52が下限ストッパ面26aに突き当たったときに、当該爪部52に加わる力の向きによっては爪部52が弁閉下限ストッパ突起26をガイドレール25側から乗り越えてしまうおそれがある。そして、本実施形態では、下限ストッパ面26aに爪部52が突き当たる際にガイドレール25の半径方向から見たとき、ガイドレール25から離れるにしたがって下限ストッパ面26aとの間隔が拡がるように、爪当面67aが下限ストッパ面26aに対して傾斜して形成されているので、爪部52が下限ストッパ面26aに突き当たったときに当該爪部52に加わる力の向きがガイドレール25から離れる方向寄りとなる。そのため、万が一、コイル部材50に異常な回転力が作用した場合でも、爪部52が弁閉下限ストッパ突起26をガイドレール25側から乗り越えてしまうことを抑制することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態の電動弁を、
図8〜
図10を参照して説明する。
【0060】
図8は、本発明の第2の実施形態の電動弁の正面方向から見た縦断面図である。
図9は、
図8の電動弁が備えるコイル部材の斜視図である。
図10は、
図8の電動弁が備えるガイド部のストッパ線体にコイル部材の爪部が突き当たった状態を示す図であって、(a)は、正面方向から見た図であり、(b)は側面方向から見た図である。なお、以下の説明における「上下」等の方向を示す概念は、
図8における方向に対応しており、各部材の相対的な位置関係を示すものであって、絶対的な位置関係を示すものではない。
【0061】
この電動弁(図中、符号2で示す)は、
図8に示すように、弁本体110と、支持部材120と、ロータ軸130と、弁体部140と、コイル部材150と、ステッピングモータ160と、ガイド部170と、を備えている。
【0062】
弁本体110は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として円筒形状に形成されている。弁本体110には、図中下方の端部を塞ぐように弁本体110に溶接等により固着されたステンレス製の弁座部111が設けられている。弁座部111の中央には、弁ポート111aが開口されている。弁本体110は、内側に弁室112を形成している。
【0063】
弁本体110には、外周片側に冷媒などの流体の流路としての第1継手管113が接続され、この第1継手管113は弁室112に導通されている。また、弁座部111には、第2継手管114が接続され、この第2継手管114は弁ポート111aを介して弁室112に導通される。第1継手管113及び第2継手管114は、例えば、銅や真鍮などを材料として構成されており、弁本体110にろう付け等により固着されている。
【0064】
支持部材120は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などの合成樹脂製の略円柱状のホルダ部121と、このホルダ部121の弁本体110寄りの端部にインサート成形により一体に設けられたステンレス製のフランジ部122と、を有している。支持部材120は、フランジ部122が弁本体110の図中上端に溶接等により弁本体110に固着されている。
【0065】
ホルダ部121は、その軸心が弁ポート111aの軸を通る軸線Lに重なるように配置されている。ホルダ部121の中心には、当該ホルダ部121を貫通するように軸線L方向に並ぶネジ孔123とスライド孔124とが形成されている。ネジ孔123の内周面には、駆動雌ネジ123aが形成されており、後述するロータ軸130が螺合される。スライド孔124は、弁ポート111a寄りに配置され、ネジ孔123より大径に形成されている。スライド孔124には、後述する弁体部140が摺動移動可能に嵌合される。
【0066】
ロータ軸130は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として円柱棒状に形成されている。ロータ軸130の外周面の一部には駆動雄ネジ130aが形成されており、この駆動雄ネジ130aが、上述したホルダ部121の駆動雌ネジ123aに螺合されている。これにより、ロータ軸130は、その軸心が軸線Lに重なるように配置され、また、軸心を中心に回転されることによりネジ送り作用によって軸線L方向に移動される。即ち、ロータ軸130は、軸線Lと軸心が重なるように配置されかつ当該軸心を中心に回転されることにより軸線L方向に移動するように支持されている。本実施形態において、駆動雌ネジ123aと駆動雄ネジ130aは右ネジである。ロータ軸130の弁ポート111a寄りの端部には、後述する弁体部140を軸線Lを中心として回転可能に掛止するフランジ部131が設けられている。
【0067】
弁体部140は、弁ホルダ141と、弁体142と、ワッシャ143と、バネ受け144と、圧縮コイルバネ145と、を有している。
【0068】
弁ホルダ141は、上述したホルダ部121のスライド孔124の内径と略同一の外径となる円筒形状に形成されている。弁ホルダ141は、スライド孔124に摺動移動可能に嵌合され、これにより、弁ホルダ141は支持部材120により軸線L方向に移動可能に支持されている。
【0069】
弁体142は、ニードル形状にされており、このニードル形状の先端が弁ポート111aと対向するように弁ホルダ141における弁ポート111a側の端部(下端部141a)に固着されている。弁体142は、弁座部111との間隔を弁の最大開度から弁の最小開度(あるいは全閉状態)の間で加減されることによって流量の調節を行う。
【0070】
弁ホルダ141における弁ポート111a側と反対側の端部(上端部141b)には、ロータ軸130のフランジ部131が回転可能に掛止されている。具体的には、ロータ軸130のフランジ部131が、弁ホルダ141の上端部141bとの間にワッシャ143を挟み込み、このフランジ部131によりロータ軸130が弁ホルダ141の上端部141bで回転可能に引っ掛かっている。この掛かり合いにより、ロータ軸130によって弁ホルダ141が軸線L方向に移動可能でかつ軸線Lを中心として回転可能に支持されている。また、弁ホルダ141内には、バネ受け144が軸線L方向に移動可能に設けられている。バネ受け144と弁体142との間には圧縮コイルバネ145が所定の荷重を与えられた圧縮状態で取り付けられている。これにより、バネ受け144は、ロータ軸130側に押しつけられ、ロータ軸130のフランジ部131に当接している。
【0071】
コイル部材150は、ばね性を有する鋼材などの針金を屈曲させて形成されている。コイル部材150は、
図9に示すように、コイルばね状のコイル部151と、コイル部151の一端151aから半径方向外向きに突出する爪部152と、を一体に有している。コイル部151は、後述するガイド部170の螺旋ガイド線体177における各巻回部分の間隔と略同一径(太さ)でかつ同一ピッチに巻回されており、ある程度拡径しても元の径に復元可能な弾性を有している。コイル部材150(具体的にはコイル部151)は、螺旋ガイド線体177に周方向に回転可能に螺合されている。コイル部151は、螺旋ガイド線体177に螺合されたとき、その全体が螺旋ガイド線体177の巻回部分間に収容され、螺旋ガイド線体177における軸線L方向の一部区間に螺合している。換言すると、コイル部151の軸線L方向の長さは、螺旋ガイド線体177の軸線L方向の長さより短い。そのため、コイル部151は、螺旋ガイド線体177に螺合した状態で回転されたとき螺旋ガイド線体177に案内されて軸線L方向に移動する。
【0072】
本実施形態において、コイル部材150及び螺旋ガイド線体177は右ネジであり、この螺旋ガイド線体177及びコイル部材150のピッチは駆動雌ネジ123a及び駆動雄ネジ130aのピッチよりも大きく設定されている。また、コイル部151は、5/4回巻き(450度)であり、巻き数が1以上であることが好ましい。勿論、このような構成に限定されるものではなく、例えば、この螺旋ガイド線体177及びコイル部材150のピッチと駆動雌ネジ123a及び駆動雄ネジ130aのピッチとを同じに設定したり、コイル部151を2回巻き以上にしたりするなど、本発明の目的に反しない限り、これらの構成は任意である。
【0073】
コイル部材150は、ガイド部170の螺旋ガイド線体177にその両端のうちの一方から螺合されたのち、当該螺旋ガイド線体177とともにガイド支持体171の円筒部172に組付けられる。
【0074】
ステッピングモータ160は、
図8に示すように、ケース161と、マグネットロータ162と、ステータコイル163と、を有している。
【0075】
ケース161は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として、図中上方の一方の端部が塞がれた略円筒形状に形成されている。ケース161の図中下方の開口側の端部は、弁本体110に溶接等によって気密に固定されている。
【0076】
マグネットロータ162は、外周部を多極に着磁された円筒状のマグネット部164と、その軸線L方向中央部分に設けられた円盤部165と、を一体に有している。マグネットロータ162は、円盤部165の中央に一体成形された金具166を介してロータ軸130に固着されている。これにより、マグネットロータ162は、ケース161内にロータ軸130の軸心を中心に回転可能に設けられている。
【0077】
ステータコイル163は、ケース161の外周面に配設されており、ステータコイル163にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ162が回転される。ステータコイル163は、回転駆動部に相当する。
【0078】
マグネットロータ162が回転されると、このマグネットロータ162とともにロータ軸130が回転され、駆動雄ネジ130aと駆動雌ネジ123aとのネジ送り作用により、ロータ軸130が軸線L方向(
図8上下方向)に移動して弁体部140が弁ポート111aに対して進退する。これにより、弁ポート111aの開度を変化させ、第1継手管113から第2継手管114へ(または第2継手管114から第1継手管113へ)流れる流体の流量が制御される。
【0079】
また、マグネットロータ162のマグネット部164の内周面の一部には軸線L方向に延在する爪受部としてのピン状突起部167が形成されている。そして、このピン状突起部167はマグネットロータ162の回転時に、コイル部材150の爪部152に当接し、このマグネットロータ162の回転に伴ってコイル部材150を同方向に連れ回す(押し回す)ように回転する。これにより、螺旋ガイド線体177とコイル部材150のコイル部151のネジ送り作用によって、コイル部材150が軸線Lに沿ってロータ軸130と同方向に移動する。
【0080】
コイル部材150は、
図8上方から見たときに時計回りに回転されることにより、弁ポート111aに近づくように軸線L方向に移動する。このときにピン状突起部167における爪部152の当接される爪当面167aは、螺旋ガイド線体177の半径方向と平行でかつ軸線L方向に対して傾斜して形成されている。具体的には、
図10(b)に示すように、後述するストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、螺旋ガイド線体177から離れるにしたがってストッパ線体178との間隔が拡がるように、爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されている。
【0081】
本実施形態において、爪当面167aが軸線L方向に対して傾斜して形成され、ストッパ線体178が軸線L方向に平行に形成されているが、これとは逆に、爪当面167aが軸線L方向に平行に形成され、ストッパ線体178が軸線L方向に対して傾斜して設けられていてもよい。つまり、爪当面167aが相対的にストッパ線体178に対して傾斜していればよい。爪当面167aとストッパ線体178とがなす角度αは、0度<α<45度であればよく、5度≦α≦30度の範囲が好ましい。
【0082】
ガイド部170は、
図8に示すように、ガイド支持体171と、螺旋ガイド線体177と、を有している。
【0083】
ガイド支持体171は、円筒部172と、円筒部172の図中上端側に形成された傘状部173とを有している。傘状部173はケース161の図中上端(頂部)内側と同形状に成形され、当該ケース161の頂部内側に重ねて固定されている。円筒部172は、軸線Lに軸心が重なるようにケース161の頂部中央より垂下延在している。円筒部172の根元部(傘状部173との接続部)の所定の周方向位置にはキー状の弁開ストッパ突起部174が軸線L方向に所定長さに亘って形成されている。また、円筒部172の先端部(弁ポート111a寄りの端部)には、所定の周方向位置に係止孔としての位置決め孔175がルーバ成形により設けられている。位置決め孔175の奥部にはルーバ成形による切起こし片176が設けられている。
【0084】
螺旋ガイド線体177は、円筒部172の外周面を取り巻くように、ばね性を有する線材によりコイルばね状に形成されている。螺旋ガイド線体177における弁ポート111a寄りの端部(下端部177a)には、線材が軸線L方向に延長されてなるストッパ線体178が一体に設けられている。ストッパ線体178の先端部178aは、螺旋ガイド線体177の半径方向内向きに(即ち、円筒部172に向けて)屈曲されている。
【0085】
螺旋ガイド線体177は、軸線L方向に圧縮された状態で円筒部172の外周面に巻き付けられて、図中上端側にて傘状部173に当接している。そして、ストッパ線体178の先端部178aが位置決め孔175に挿入嵌合されて、当該先端部178aが螺旋ガイド線体177の軸線L方向の弾性力によって位置決め孔175の周縁に軸線L方向に押しつけられている。これにより、螺旋ガイド線体177及びストッパ線体178は、軸線L方向の弾性力によって傘状部173と位置決め孔175との間に挟まれ、がたつきを有することなくガイド支持体171に取り付けられている。
【0086】
円筒部172は、ロータ軸130の軸受ガイドを兼ねており、円筒部172内には軸受部材179が設けられている。軸受部材179は、金属あるいは合成樹脂による潤滑材入り素材あるいは表面処理を施された部品により構成され、ロータ軸130の図中上方の端部を受け入れている。ガイド部170はガイド部材に相当し、円筒部172はガイド本体に相当し、位置決め孔175は係止孔に相当し、螺旋ガイド線体177はガイドレールに相当し、ストッパ線体178は回転規制部及び突当線体に相当する。
【0087】
次に、本実施形態の電動弁2の動作を、
図10(a)、(b)を参照して説明する。
【0088】
電動弁2において、マグネットロータ162及びロータ軸130を弁ポート111aに近づく方向(
図8下方)に移動させるように回転させる。すると、マグネットロータ162のピン状突起部167の爪当面167aがコイル部材150の爪部152に当接し、爪当面167aによって爪部152が押されて、コイル部材150が周方向に押し回される。そして、ロータ軸130の回転による軸線L方向への移動に伴って弁体部140が最小開度(あるいは弁閉状態)となる位置まで移動されたとき、
図10(a)、(b)に示すように、コイル部材150の爪部152がストッパ線体178に突き当たり、コイル部材150の回転が規制される。すると、爪部152を押し回していたマグネットロータ162についてもそれ以上の回転を規制されて、弁体部140が最小開度(あるいは弁閉状態)となる位置を超えて移動されることが規制される。
【0089】
このとき、例えば、従来の構成のように、爪当面167aがストッパ線体178と平行にされた構成であると、爪部152がストッパ線体178に突き当たったときに当該爪部152に加わる力の向きが不定となって反動により跳ね返される量が一定にならない。しかしながら、本実施形態では、
図10(b)に示すように、ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、螺旋ガイド線体177から離れるにしたがってストッパ線体178との間隔が拡がるように、爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜している。そのため、爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜していることで、爪部152がストッパ線体178に突き当たったときに当該爪部152に加わる力の向きが爪当面167aの向く方向(図中、矢印で示す)に概ね一定となって反動により跳ね返される量が一定になる。また、爪部152に加わる力の向きが、螺旋ガイド線体177から離れる方向寄りとなるので、ストッパ線体178に対して、当該ストッパ線体178が位置決め孔175に押しつけられている方向寄りの力が加えられ、そのため、万が一、コイル部材150に異常な回転力が作用した場合でも、ストッパ線体178の先端部178aが位置決め孔175からはずれてしまうことを抑制することができる。
【0090】
または、電動弁2において、マグネットロータ162及びロータ軸130を弁ポート111aから離れる方向(
図8上方)に移動させるように回転させる。すると、マグネットロータ162のピン状突起部167の爪当面167aと反対側に位置する面がコイル部材150の爪部152に当接し、当該面によって爪部152が押されて、コイル部材150が周方向に押し回される。そして、ロータ軸130の回転による軸線L方向への移動に伴って弁体部140が最大開度となる位置まで移動されたとき、コイル部材150のコイル部151の他端151bが弁開ストッパ突起部174に突き当たり、コイル部材150の回転が規制される。すると、爪部152を押し回していたマグネットロータ162についてもそれ以上の回転を規制されて、弁体部140が最大開度となる位置を超えて移動されることが規制される。
【0091】
本実施形態の電動弁2は、弁室112及び当該弁室112に開口する弁ポート111aが設けられた弁本体110と、弁ポート111aの軸線Lと軸心が重なるように配置されかつ当該軸心を中心に回転されることにより軸線L方向に移動するように支持されたロータ軸130と、ロータ軸130に固定されたマグネットロータ162と、ロータ軸130の軸心を中心としてマグネットロータ162を回転させるステータコイル163と、ロータ軸130の軸線L方向の移動に伴い弁ポート111aに対して進退する弁体部140と、を備えている。また、弁ポート111aの軸線Lと軸心が重なるように配置された螺旋ガイド線体177を有するガイド部170と、螺旋ガイド線体177に回転可能に螺合されたコイル部151及び当該コイル部151の一端151aに半径方向外向きに突出する爪部152を一体に有するコイル部材150と、マグネットロータ162に固定して設けられ、当該マグネットロータ162の回転に伴いコイル部材150を回転させるように爪部152を押し回すピン状突起部167と、螺旋ガイド線体177の下端部177a近傍に設けられ、コイル部材150の回転を規制するように爪部152が突き当たるストッパ線体178と、を備えている。そして、ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、ピン状突起部167における爪部152の当接される爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されている。
【0092】
また、電動弁2は、螺旋ガイド線体177が、ばね性を有する線材で構成されている。ガイド部170が、螺旋ガイド線体177が軸線L方向に圧縮された状態で外周面に巻き付けられた円筒部172を有している。ストッパ線体178が、螺旋ガイド線体177の下端部177aから線材が軸線L方向に延長されることにより形成されている。ストッパ線体178の先端部178aが、円筒部172に向けて折り曲げられるとともに当該円筒部172の外周面に形成された位置決め孔175に挿入されて螺旋ガイド線体177により軸線L方向に押しつけられた状態で係止されている。ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、螺旋ガイド線体177から離れるにしたがってストッパ線体178との間隔が拡がるように、爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されている。
【0093】
以上より、本実施形態によれば、ガイド部170が、弁本体110に設けられた弁ポート111aの軸線Lと軸心が重なるように配置された螺旋ガイド線体177を有している。コイル部材150が、螺旋ガイド線体177に回転可能に螺合されたコイル部151及び当該コイル部151の一端151aに半径方向外向きに突出する爪部152を一体に有している。マグネットロータ162に固定して設けられたピン状突起部167が、マグネットロータ162の回転に伴いコイル部材150を回転させるように爪部152を押し回す。螺旋ガイド線体177の下端部177a近傍に設けられたストッパ線体178に、コイル部材150の回転を規制するように爪部152が突き当たる。そして、ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、ピン状突起部167における爪部152の当接される爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されている。
【0094】
このようにしたことから、マグネットロータ162が回転されると、コイル部材150の爪部152にピン状突起部167の爪当面167aが当接されて、コイル部材150が螺旋ガイド線体177に沿って周方向に押し回されるとともに弁ポート111aの軸線L方向に移動する。コイル部材150の回転が進むと爪部152がストッパ線体178に突き当たってコイル部材150の回転が規制されるとともに、爪部152を押し回すピン状突起部167が固定して設けられたマグネットロータ162の回転も規制される。そして、ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、ピン状突起部167における爪部152の当接される爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されているので、爪部152がストッパ線体178に突き当たったときに当該爪部152に加わる力の向きが爪当面167aの向く方向に一定となって反動により跳ね返される量が一定になる。そのため、跳ね返されることにより生じる音の大きさのばらつきを抑制することができる。これにより、耳障りな音を抑制することができる。
【0095】
また、螺旋ガイド線体177が、ばね性を有する線材で構成されている。ガイド部170が、螺旋ガイド線体177が弁ポート111aの軸線L方向に圧縮された状態で外周面に巻き付けられた円筒部172を有している。ストッパ線体178が、螺旋ガイド線体177の下端部177aから上記線材が弁ポート111aの軸線L方向に延長されて設けられている。ストッパ線体178の先端部178aが、円筒部172に向けて折り曲げられるとともに当該円筒部172の外周面に形成された位置決め孔175に挿入されて螺旋ガイド線体177により弁ポート111aの軸線L方向に押しつけられた状態で係止されている。そして、ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、螺旋ガイド線体177から離れるにしたがってストッパ線体178との間隔が拡がるように、爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されている。
【0096】
ストッパ線体178は、螺旋ガイド線体177から離れる方向に押しつけられた状態で係止されているので、例えば電動弁が使用されるシステムの故障など、何らかの異常事象によってコイル部材150に通常動作時にはあり得ない異常な回転力が作用した場合、コイル部材150の爪部152がストッパ線体178に突き当たったときに、当該爪部152に加わる力の向きによってはストッパ線体178の係止がはずれてしまうおそれがある。そして、本実施形態では、ストッパ線体178に爪部152が突き当たる際に螺旋ガイド線体177の半径方向から見たとき、螺旋ガイド線体177から離れるにしたがってストッパ線体178との間隔が拡がるように、爪当面167aがストッパ線体178に対して傾斜して形成されているので、爪部152がストッパ線体178に突き当たったときに当該爪部152に加わる力の向きが螺旋ガイド線体177から離れる方向寄りとなる。そのため、万が一、コイル部材150に異常な回転力が作用した場合でも、ストッパ線体178の係止がはずれてしまうことを抑制することができる。
【0097】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の電動弁の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。