【課題】検眼装置の通信仕様が不一致の場合でも、検眼装置間で情報を移動できる検眼情報記憶装置、検眼システムを提供する。また、様々な検査態様に柔軟に対応できる検眼システムを提供する。
【解決手段】記憶装置30の制御部39は、他覚式検眼装置10の検眼情報を、赤外線送受信部34又は入出力端子33を制御して、他覚式検眼装置10から受信し、検眼情報記憶部38bに記憶し、検眼情報記憶部38bに記憶した記憶情報を、赤外線送受信部34又は入出力端子33を制御して、自覚式検眼装置50に送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、検眼装置の通信仕様が不一致の場合でも、検眼装置間で情報を移動できる検眼情報記憶装置、検眼システムを提供することである。
また、本発明の課題は、様々な検査態様に柔軟に対応できる検眼システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0007】
・第1の発明は、
第1検眼装置(10)と第2検眼装置(50)とを備える検眼システム(1)に用いられ、前記第1検眼装置から前記第2検眼装置に検眼情報を移動するための検眼情報記憶装置(30)であって、
検眼情報を記憶する記憶部(38)と、
前記第1検眼装置及び前記第2検眼装置との間で、無線で通信する無線通信部(34)と、
前記第1検眼装置及び前記第2検眼装置との間で、有線で通信する有線通信部(33)と、
制御部(39)とを備え、
前記制御部は、
前記第1検眼装置の前記検眼情報を、前記無線通信部又は前記有線通信部を制御して、前記第1検眼装置から受信し、前記記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶した記憶情報を、前記無線通信部又は前記有線通信部を制御して、前記第2検眼装置に送信すること、
を特徴とする検眼情報記憶装置である。
・第2の発明は、
第1の発明の検眼情報記憶装置において、
操作者が操作可能であり、前記無線通信部及び前記有線通信部のなかから通信方法を選択する通信選択操作部(35)を備え、
前記制御部(39)は、
前記第1検眼装置(10)との間で通信する場合に前記通信選択操作部の操作を受け付け、
前記第2検眼装置(50)との間で通信する場合に前記通信選択操作部の操作を受け付けること、
を特徴とする検眼情報記憶装置である。
・第3の発明は、
第1又は第2の発明の検眼情報記憶装置において、
前記記憶部(38a)は、前記無線通信部の送信項目に関する設定情報を記憶し、
前記制御部(39)は、
前記第2検眼装置との間で前記無線通信部(34)よって通信する場合には、前記記憶部の前記設定情報に基づいて、前記第1検眼装置から受信し前記記憶部(38b)に記憶した前記検眼情報のなかから送信項目を抽出して、前記第2検眼装置(50)に赤外線通信で送信すること、
を特徴とする検眼情報記憶装置である。
・第4の発明は、
第1から第3のいずれかの発明の検眼情報記憶装置において、
前記第1検眼装置は、他覚式検眼装置(10)又はレンズメータであり、
前記第2検眼装置は、自覚式検眼装置(50)であること、
を特徴とする検眼情報記憶装置である。
・第5の発明は、
第1から第4のいずれかの発明の検眼情報記憶装置において、
前記検眼システム(1)は、
複数の前記第2検眼装置(50−1〜50−10)を備え、
複数の前記第2検眼装置(50)の通信部(54)、それぞれ異なる無線チャネルが割り当てられ、
前記無線通信部(34)は、
複数の前記第2検眼装置のうち1つと通信する1つの無線チャネルが割り当てられていること、
を特徴とする検眼情報記憶装置である。
・第6の発明は、
第1から第5のいずれかの発明の前記第1検眼装置(10)と、
第1から第5のいずれかの発明の複数の前記第2検眼装置(50)と、
第1から第5のいずれかの発明の複数の検眼情報記憶装置(30)を備える検眼システムであって、
複数の前記第2検眼装置の通信部(54)は、それぞれ異なる無線チャネルが割り当てられ、
前記各検眼情報記憶装置の前記各無線通信部(34)は、
複数の前記第2検眼装置のうち1つと通信する1つの無線チャネルとが割り当てられていること、
を特徴とする検眼システムである。
【0008】
・第7の発明は、
制御部(59)を備える検眼装置(50)と、
操作者が手に持ちながら操作して、前記検眼装置を操作する手持操作装置(60)と、
卓上に配置しながら操作者が操作して、前記検眼装置を操作する卓上操作装置(70)とを備え、
前記手持操作装置は、
操作ボタン(61a〜61b)を備え、
前記卓上操作装置は、
操作ボタン(71a)と、
表示部(72)とを備えること、
を特徴とする検眼システムである。
・第8の発明は、
第7の発明の検眼システムにおいて、
前記制御部(59)は、前記手持操作装置(60)からの操作を受け付けて、前記卓上操作装置(70)の前記表示部(72)を制御すること、
を特徴とする検眼システムである。
・第9の発明は、
第7又は第8の発明の検眼システムにおいて、
前記検眼装置(50)及び前記手持操作装置(60)は、無線で通信し、
前記検眼装置(50)及び前記卓上操作装置(70)は、有線で通信すること、
を特徴とする検眼システムである。
・第10の発明は、
第7から第9のいずれかの発明の検眼システムにおいて、
操作ボタンの数は、前記手持操作装置(60)が前記卓上操作装置(70)よりも多く、
前記卓上操作装置の前記表示部(72)は、
タッチパネルであり、
前記手持操作装置が備えており前記卓上操作装置が備えていない操作ボタン(61b,61c)を、前記手持操作装置のボタン配置に対応して表示すること、
を特徴とする検眼システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
・第1の発明は、第1検眼装置と第2検眼装置の通信仕様が異なる場合でも、第1検眼装置と第2検眼装置の通信仕様に合わせて、検眼情報を送受信できる。また、第1検眼装置と第2検眼装置とが離れて配置されていても、第2検眼装置に無線通信可能な範囲に検者等が記憶装置を持って移動すれば、第2検眼装置に検眼情報を送信できる。
・第2の発明は、通信選択操作部を備えるので、第1検眼装置と第2検眼装置の通信仕様に合わせて、通信方法を選択できる。
・第3の発明は、第1検眼装置から受信した検眼データを抽出して第2検眼装置に無線で送信できる。そのため、無線通信の容量を小さくできるので、赤外線通信のように通信容量が小さい通信手法を用いても、検眼データを送信できる。また、医療装置への影響を軽減できる。
・第4の発明は、第1検眼装置が他覚式検眼装置又はレンズメータであり、第2検眼装置が自覚式検眼装置であるので、他覚式検眼装置で検査した被検者の検眼情報や、レンズメータで測定して眼鏡等の検眼情報を、記憶装置を使って、自覚式検眼装置に移動できる。
・第5、第6の発明は、複数台の第2検眼装置を備えるシステムに対応できる。このため、例えば、第1検眼装置の検査が自覚式検査であり短時間である場合、かつ、第2検眼装置の検査が自覚式検査であり長時間である場合に、適切に対応できる。
【0010】
また、本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
・第7の発明は、手持操作装置、卓上操作装置を備えるので、検査状況(検者の位置等)に柔軟に対応できる。
・第8の発明は、手持操作装置からの操作を受け付けて、卓上操作装置の表示部を制御するので、検者が被検者及び検眼装置から離れた位置にいる場合にも、被検者に卓上操作装置の表示部を見せて検眼情報等を説明しながら、手持操作装置を操作できる。
・第9の発明は、検眼装置及び手持操作装置間が無線で通信するので、検眼装置から離れた位置から検眼装置を操作できる。一方、検眼装置及び卓上操作装置が有線で通信するので、大容量の画面情報等を有線で通信できる。
・第10の発明は、卓上操作装置が備えていない操作ボタンが、手持操作装置のボタン配置でタッチパネルに表示されるので、操作性を向上できる。つまり、卓上操作装置、手持操作装置を交互に操作するような場面でも、ボタン位置が確認しやすく、混乱せずに操作できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態の検眼システム1の全体構成を説明する図である。
検眼システム1は、他覚式検眼装置10(第1検眼装置)の検眼情報を、記憶装置30(検眼情報記憶装置)を用いて自覚式検眼装置50(第2検眼装置)に移動できるものである。自覚式検眼装置50では、移動した検眼情報を利用して、手持操作装置60、卓上操作装置70を操作して自覚式検査を行う。
なお、検眼情報の移動とは、コピー(複製)を含む概念である。
【0013】
検眼システム1は、他覚式検眼装置10、記憶装置30、自覚式検眼装置50、チャート投影機90(視標表示部)を備える。
他覚式検眼装置10は、1台設けられている。記憶装置30、自覚式検眼装置50は、それぞれ10台(記憶装置30−1〜30−10、自覚式検眼装置50−1〜50−10)設けられている。台数は、これに限定されることなく、例えば1台から数十台程度に適宜変更できる。
各記憶装置30と各自覚式検眼装置50とは、赤外線通信のチャネルが対応付けられており、各組み合わせを構成する。例えば、記憶装置30−1と自覚式検眼装置50−1とは、赤外線通信のチャネルが対応付けられており、1組になっている。
【0014】
(検眼システム1の構成)
検眼システム1の構成について説明する。
図2は、実施形態の他覚式検眼装置10、記憶装置30、自覚式検眼装置50の各構成を説明する図である。
図3は、実施形態の他覚式検眼装置10、記憶装置30の斜視図である。
図4は、実施形態の記憶装置30の斜視図である。
図5は、実施形態の自覚式検眼装置50、記憶装置30の斜視図である。
【0015】
(他覚式検眼装置10)
図2、
図3に示すように、他覚式検眼装置10は、操作部11、他覚式測定部12、入出力端子13(有線通信部)、赤外線送信部14(無線通信部)、記憶部18、制御部19を備える。
【0016】
操作部11は、検者が他覚式検眼装置10を操作するための部材である。操作部11は、操作ボタン等を備える。
他覚式測定部12は、被検者を検眼するための部分である。他覚式測定部12は、他覚式検眼光学系、指標等を備える。
入出力端子13は、他の装置との間で情報を通信するための端子である。入出力端子13は、RS232C規格のものである。RS232C規格を利用する理由は、この規格が検眼装置の分野では、汎用性が高いからである。
赤外線送信部14は、他の装置との間で情報を、赤外線送信するための部分である。赤外線送信部14は、赤外線で情報を送信する送信素子等を備える。
記憶部18は、他覚式検眼装置10の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。
記憶部18は、検眼情報記憶部18bを備える。
検眼情報記憶部18bは、他覚式検眼装置10で測定した検眼情報を記憶する記憶領域である。なお、実施形態では、検眼情報は、以下の6項目であるが、これに限定されるものではなく、項目を削除してもよく、又は他の項目を追加してもよい。
・球面度数
・乱視度数
・乱視軸
・瞳孔間距離
・加入度
・プリズム度数
【0017】
制御部19は、他覚式検眼装置10を統括的に制御するための制御装置であり、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。
制御部19は、記憶部18に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
制御部19は、検者の操作部11の操作に基づいて、他覚式検眼装置10で測定した被検者の検眼情報を、検眼情報記憶部18bに記憶する。
【0018】
(記憶装置30)
図2、
図4に示すように、記憶装置30は、設定スイッチ31、入出力端子33(有線通信部)、赤外線送受信部34(無線通信部)、通信切り替えスイッチ35(通信選択操作部)、受信ボタン36、送信ボタン37、記憶部38、制御部39を備える。記憶装置30は、電池(電源)を備え、これから電力が供給されて駆動する。
【0019】
設定スイッチ31は、検者等が記憶装置30の初期設定等をするための操作装置である。設定スイッチ31は、例えばDIPスイッチ等であり、ケース内部に収容されている。このため、設定スイッチ31は、初期設定等のために操作される。設定スイッチ31は、通信方法の設定等をすることができる。設定スイッチ31による設定情報は、記憶部38の設定情報記憶部38a(後述する)に記憶される。
入出力端子33は、他の装置との間で情報を通信するRS232C規格の端子である。
赤外線送受信部34は、他の装置との間で情報を、赤外線で送受信するための部分である。赤外線送信部14は、赤外線で情報を送信する送信素子、赤外線で情報を受信する受信素子等を備える。
【0020】
通信切り替えスイッチ35、受信ボタン36、送信ボタン37は、検者が記憶装置30を操作するための操作部である。
通信切り替えスイッチ35は、他の装置との間の通信を、有線で行うか、赤外線(無線)で行うかを選択する操作部である。
なお、有線は、通信ケーブル等を用いるだけでなく、入出力端子同士を直接接続する形態も含む概念である。
受信ボタン36は、他覚式検眼装置10から検眼情報を受信する場合に操作する操作部である。
送信ボタン37は、自覚式検眼装置50に検眼情報を送信する場合に操作する操作部である。
【0021】
記憶部38は、記憶装置30の動作に必要なプログラム、情報等を記憶する半導体メモリ素子等の記憶装置である。
記憶部38は、設定情報記憶部38a、検眼情報記憶部38bを備える。
検眼情報記憶部38bは、他覚式検眼装置10で測定した検眼情報を記憶する記憶領域である。
設定情報記憶部38aは、設定スイッチ31から受け付けた設定情報を記憶する記憶領域である。
【0022】
設定情報記憶部38aが記憶する設定情報の項目は、例えば、以下の通りである。
・赤外線チャネル情報:記憶装置30がその組みの自覚式検眼装置50との間で、赤外線で通信するために割り当てられたチャネルである。これにより、記憶装置30−1であれば、自覚式検眼装置50−1のみに検眼情報を送信できる。
・送信項目設定情報:検眼情報を、他覚式検眼装置10に赤外線送信する場合の設定情報である。実施形態では、加入度、プリズム度数の検眼情報、つまり処方値が「0」である場合には、加入度、プリズム度数を送信しないように設定されている。
・通信方法設定情報:検眼情報を受信する場合、検眼情報を送信する場合のそれぞれについて、赤外線、有線で通信するかの設定情報である。つまり、検者等は、受信方法として有線受信及び赤外線受信から1つを設定でき、また、送信方法として有線送信及び赤外線送信から1つを設定できる。この設定は、任意であり、つまり、設定されていても、設定されていなくてもよい。後述するように、設定されている場合には、通信切り替えスイッチ35の操作よりも、通信方法設定情報の設定が優先される。
【0023】
検眼情報記憶部38bは、他覚式検眼装置10から受信した被検者の検眼情報を、記憶する領域である。検眼情報は、他覚式検眼装置10と同様な上記6項目である。
制御部39は、記憶装置30を統括的に制御するための制御装置であり、例えば、CPU等から構成される。
制御部39は、記憶部38に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0024】
(自覚式検眼装置50)
図2、
図5に示すように、自覚式検眼装置50は、操作部51、自覚式測定部52、入出力端子53、赤外線受信部54、記憶部58、制御部59、手持操作装置60、卓上操作装置70を備える。
【0025】
操作部51は、検者が自覚式検眼装置50を操作するための部材である。操作部51は、操作ボタン等を備える。
自覚式測定部52は、被検者の検眼するための部分である。自覚式測定部52は、自覚式検眼光学系等を備える。
入出力端子53は、他の装置との間で情報を通信するRS232C規格の端子である。
赤外線受信部54は、他の装置や手持操作装置60等との間で情報を、赤外線で受信するための部分である。赤外線受信部54は、赤外線で情報を受信する受信素子等を備える。
記憶部58は、自覚式検眼装置50の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。また、記憶部58は、この自覚式検眼装置50に組み合わされる記憶装置30の赤外線チャネルの情報を記憶する。これにより、例えば自覚式検眼装置50−1であれば、複数の記憶装置30のうち記憶装置30−1のみから検眼情報を受信できる。
記憶部58は、検眼情報記憶部58bを備える。
検眼情報記憶部58bは、記憶装置30から受信した検眼情報を記憶する記憶領域である。検眼情報は、他覚式検眼装置10と同様な上記6項目である。
【0026】
制御部59は、自覚式検眼装置50を統括的に制御するための制御装置であり、例えば、CPU等から構成される。
制御部59は、記憶部58に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0027】
手持操作装置60、卓上操作装置70は、検者が自覚式検眼装置50の本体の操作部51を用いずに、自覚式検眼装置50を操作するための操作装置である。
【0028】
(チャート投影機90)
チャート投影機90は、視力値の異なる視標を有するチャートをスクリーン95(
図7参照)に表示する投影機である。チャート投影機90は、自覚式検眼装置50の本体に電気ケーブルを介して接続されている。チャート投影機90は、操作部51、手持操作装置60、卓上操作装置70の操作に応じて、制御部59によって制御される。
【0029】
(検眼情報の移動方法)
図6は、実施形態の検眼情報を、装置間で移動する処理を説明するフローチャートである。
図6(A)は、他覚式検眼装置10から記憶装置30に検眼情報を移動する処理を示す。
図6(B)は、記憶装置30から自覚式検眼装置50に検眼情報を移動する処理を示す。
【0030】
検眼情報を移動するには、以下の状態を前提とする。
他覚式検眼装置10では、検者が被検者の測定を終えて、他覚式検眼装置10の検眼情報記憶部18bに検眼情報が記憶されている。
記憶装置30では、以下の設定情報が設定情報記憶部38aに記憶されている。
・他覚式検眼装置50との間で赤外線通信するためのチャネル。
・送信項目設定情報としては、加入度、プリズム度数の処方値が「0」である場合には、これを送信しないように設定されている。つまり、記憶装置30は、加入度の処方値が「0」である場合には、加入度の処方値を送信しない。プリズム度数についても同様である。
・通信方法設定情報は、任意の項目であるので、検者等が必要に応じて設定する。つまり、通信方法設定情報は、設定されていない場合もある。
【0031】
(他覚式検眼装置10→記憶装置30)
他覚式検眼装置10の検眼情報を記憶装置30に送信する場合には、検者は、他覚式検眼装置10の操作部11で送信操作する。これにより、他覚式検眼装置10は、検眼情報記憶部18bの検眼情報の送信処理を開始する。
図6(A)に示すように、ステップS(以下、Sという)1において、検者は、記憶装置30の受信ボタン36を操作する。
図5に示すように、この場合、検者は、有線受信したい場合には、他覚式検眼装置10の入出力端子13に記憶装置30の入出力端子33を接続し、一方、赤外線受信したい場合には、他覚式検眼装置10の赤外線送信部14の方向に、記憶装置30の赤外線送受信部34を向ける。また、検者は、設定スイッチ31を用いた通信方法設定情報を設定していない場合には、通信切り替えスイッチ35を操作して所望の通信方法を選択する。
記憶装置30の制御部39は、受信ボタン36の操作を受け付けると、S11に進む。
【0032】
制御部39は、設定情報記憶部38aを参照して、通信方法設定情報が設定されているか否かを判定する。制御部39は、設定されていると判定した場合には(S11:YES)、S11aに進み、一方、設定されていないと判定した場合には(S11:NO)、S12に進む。
【0033】
S11aにおいて、制御部39は、通信方法として、設定情報記憶部38aの設定を選択する。つまり、制御部39は、設定情報記憶部38aに有線受信と設定されていればこれを選択し、一方、赤外線受信と設定されていればこれを選択する。
これに対して、S12において、制御部39は、通信方法として、通信切り替えスイッチ35の設定を選択する。つまり、制御部39は、通信切り替えスイッチ35で有線受信が選択されていればこれを選択し、一方、赤外線受信が選択されていればこれを選択する。
【0034】
S13において、制御部39は、S11a又はS12で選択した通信方法で、検眼情報から送信された検眼情報を受信する。
このように、制御部39は、S11:YES→S11aの処理によって、通信切り替えスイッチ35の操作に関わらず、設定情報記憶部38aの設定を優先する。このため、検者等は、初期設定等によって予め通信方法を設定しておけば、検眼情報の受信の度に、通信切り替えスイッチ35を操作しなくてもよいので、便利である。
これに対して、制御部39は、S11:NO→S12の処理では、通信切り替えスイッチ35の選択に従って、検眼情報を受信するので、その都度、受信方法を選択できる。例えば、検者は、通信が安定する有線を用いていたものの、一時的に他覚式検眼装置10の入出力端子13に他の機器が接続されている場合等には、赤外線受信を選択できる。
【0035】
S14において、制御部39は、受信した検眼情報を、検眼情報記憶部38bに記憶する。制御部39は、検眼情報記憶部38bに上記6項目(球面度数〜プリズム度数)の処方値を全て記憶する。
この場合、制御部39は、以前の被検者の検眼情報が検眼情報記憶部38bに記憶されていたときには、この情報を、新たに受信した検眼情報に情報を書き換えて更新する。これにより、記憶装置30には、最新の被検者1人の検眼情報のみが記憶される。
S15において、記憶装置30の制御部39は、検眼情報の受信に関する処理を終了する。
その後、検者又は被検者は、記憶装置30を持って、自覚式検眼装置50の検眼エリアに移動する。
【0036】
(記憶装置30→自覚式検眼装置50)
図6(B)に示すように、検眼情報を記憶装置30から自覚式検眼装置50に送信する場合には、S20において、検者は、所望の通信方法を選択して、送信ボタン37を操作し、また、自覚式検眼装置50の操作部51を操作して、検眼情報の受信操作をする。
図5に示すように、この場合、検者は、有線送信したい場合には、自覚式検眼装置50の入出力端子53に記憶装置30の入出力端子33を接続し、一方、赤外線送信したい場合には、自覚式検眼装置50の赤外線受信部54に向けて、記憶装置30の赤外線送受信部34を向ける。また、検者は、予め通信方法設定を設定していない場合には、通信切り替えスイッチ35を操作して所望の通信方法を選択する。
記憶装置30の制御部39は、送信ボタン37の操作を受け付けると、S21に進む。
【0037】
S21〜S22は、S11〜S12の受信に関する処理を、送信に関する処理に適用したものである。また、S21〜S22の処理の作用、効果も、S11〜S12の処理の作用、効果と同様である。このため、S21〜S22の処理の詳細な説明は、省略する。
【0038】
S23において、制御部39は、S21a又はS22の処理で、赤外線送信が選択されたか否かを判定する。制御部39は、赤外線送信が選択されたと判定した場合には(S23:YES)、S23aに進み、一方、赤外線送信が選択されていないと判定した場合には(S23:NO)、つまり、有線送信が選択された場合には、S24に進む。
【0039】
S23aにおいて、制御部39は、設定情報記憶部38aの送信項目設定情報を参照して、検眼情報記憶部38bの検眼情報の項目のなかから、赤外線送信する項目を選択する。つまり、制御部39は、検眼情報のうち加入度「0」である場合には、これを送信しない。同様に、制御部39は、検眼情報のうちプリズム度数「0」である場合には、これを送信しない。
ここで、加入度、プリズム度数は、健常な被検者であれば、通常は「0」であり、他覚式検査での検査開始時には不要な項目である。このため、加入度、プリズム度数が「0」である場合には、これを間引いて送信しても、自覚式検眼装置50側で「0」として扱えば、他覚検査に支障はない。
このように、制御部39は、検眼情報から検査項目を抽出して、自覚式検眼装置50に赤外線通信で送信する。これにより、通信容量の小さい赤外線通信であっても、短時間で送信できるし、また、省電力で検眼情報を送信でき、電池の消耗を軽減できる。
【0040】
これに対して、S24において、制御部39は、検眼情報の全6項目の情報を、有線で自覚式検眼装置50に送信する。検眼情報の全6項目の情報を送信する理由は、有線送信する場合には、赤外線送信のような通信容量の制約がほとんどないので、検眼情報の抽出が不要だからである。
S25において、記憶装置30の制御部39は、検眼情報の送信に関する処理を終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の記憶装置30は、検眼情報の通信に関して、以下の効果を奏する。
(1)他覚式検眼装置10と自覚式検眼装置50のそれぞれの通信仕様に合わせて、検眼情報を送受信できる。例えば、他覚式検眼装置10が有線通信、赤外線通信のうちいずれかのみを備える場合にも、その通信仕様に合わせて、検眼情報を受信できる。同様に、自覚式検眼装置50のその通信仕様に合わせて、検眼情報を受信できる。
(2)他覚式検眼装置10と自覚式検眼装置50とが離れて配置されていても、他覚式検眼装置10に赤外線通信可能な範囲に移動すれば、自覚式検眼装置50に検眼情報を送信できる。
(3)通信容量を小さくして、自覚式検眼装置50に赤外線送信できるし、また、無線通信に赤外線送信を利用するので、医療装置への影響を軽減できる。
(4)記憶装置30及び自覚式検眼装置50間の赤外線通信は、多チャンネル備えるので、複数台の自覚式検眼装置50を備えるシステムに対応できる。また、通常の検査は、他覚式検査が短時間であり、かつ、自覚式検査が長時間である。このため、医療現場では、複数の自覚式検眼装置50を備えるシステムが要求される場合が多いが、検眼システム1は、この要求に適切に対応できる。
【0042】
(手持操作装置60、卓上操作装置70)
図7は、実施形態の検眼システム1の自覚式検査時の態様を説明する斜視図である。
図8は、実施形態の手持操作装置60、卓上操作装置70を示す図である。
図7に示すように、手持操作装置60は、検者P1(操作者)が手に持ちながら操作して、自覚式検眼装置50を操作する操作装置である。
図8(A)に示すように、手持操作装置60は、操作ボタン群61a〜61c、赤外線送信部64、記憶部58、制御部59を備える。
操作ボタン群61a〜61cは、自覚式検眼装置50を操作するためのボタン群である。なお、操作ボタン群61aは、ダイヤル等を備えていてもよい。操作ボタン群61cは、チャート投影機90を操作するためのボタン群である。
赤外線送信部64は、手持操作装置60の操作情報を、自覚式検眼装置50の本体に対して、赤外線(無線)で送信するための部分である。赤外線送信部64は、赤外線で情報を送信する送信素子等を備える。
【0043】
記憶部58は、手持操作装置60の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶装置である。
制御部59は、手持操作装置60を統括的に制御するための制御装置であり、例えば、CPU等から構成される。
制御部59は、記憶部58に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0044】
図7に示すように、卓上操作装置70は、検者P1が卓上に配置しながら操作して、検眼装置を操作する操作装置である。卓上操作装置70は、電気ケーブルによって、自覚式検眼装置50に有線で接続されている。
図8(B)、
図8(C)に示すように、卓上操作装置70は、操作ボタン群71a、表示部72、入出力端子73、記憶部78、制御部79を備える。
【0045】
操作ボタン群71aは、手持操作装置60の操作ボタン群61aに対応した配置になっている。
表示部72は、表示装置、操作装置の機能を有するタッチパネルである。
表示部72は、検眼情報を表示したり、操作ボタンを表示したりできる。なお、自覚式検眼装置50及び卓上操作装置70間は、電気ケーブルで接続されているので、通信容量の大きい画面情報や検眼情報等であっても、通信速度等に関して、実使上問題なく通信できる。
【0046】
表示部72は、操作ボタン群71b,71c、切り替えボタン71dを表示する。
図8(B)は、操作ボタン群71bを表示した場面である。
図8(C)は、操作ボタン群71cを表示した場面である。表示部72は、切り替えボタン71dの操作に応じて、操作ボタン群71b,71cの表示を、相互に切り替える。
ここで、機械的な押しボタンの数は、手持操作装置60が卓上操作装置70よりも多い。つまり、卓上操作装置70は、手持操作装置60の操作ボタン群61b,61cに対応する機械的な押しボタンを備えていない。
卓上操作装置70は、この操作ボタン群61b,61cに対応する操作ボタン群71b,71cを、表示部72に表示することにより、手持操作装置60と同様な操作を受け付けることができる。
表示部72は、操作ボタン群71b,71cを、それぞれ、手持操作装置60の操作ボタン群61b,61cの配置と同様な配置で表示する。
入出力端子73は、他の装置との間で情報を通信するRS232C規格の端子である。
【0047】
記憶部78は、卓上操作装置70の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。
制御部79は、卓上操作装置70を統括的に制御するための制御装置であり、例えば、CPU等から構成される。
制御部79は、記憶部78に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0048】
(手持操作装置60、卓上操作装置70を用いた自覚式検査)
図7に示すように、検者P1は、被検者P2を検眼する場合には、被検者P2から遠くの位置A1(例えば5mm程度)を選択するときや、被検者P2の近くの位置A2(例えば1mm程度)を選択するときがある。
このように、検者P1が異なる位置を選択する理由は、例えば、以下のような理由がある。
・遠くの位置A1を選択する場合
検者P1の診断技量が高い等の理由により、検者P1が被検者P2の表情を見ながら検眼することを所望する場合には、チャートが投影されるスクリーンの近くの位置A1を選択し、被検者P2の正面を確認できた方が検眼しやすい。
この場合には、検者P1は、手持操作装置60で操作すればよい。
・近くの位置A2を選択する場合
検者P1は、被検者P2に検査内容や検眼情報を説明する場合には、表示部72を被検者P2に見せながら検眼する場合がある。また、被検者P2が聴覚障害者等である場合には、筆談等によって検眼する場合がある。
この場合には、検者P1は、卓上操作装置70で操作すればよい。
【0049】
手持操作装置60を用いた検査について説明する。
検者P1は、手持操作装置60を持ちながら、被検者P2から遠くの位置A1で、手持操作装置60の操作ボタン群61a〜61cを操作して、自覚式検眼装置50を操作できる。
手持操作装置60の制御部69は、操作ボタン群61a〜61cの操作情報を、赤外線送信する。
自覚式検眼装置50の制御部59は、操作情報を受信すると、自覚式検眼光学系、チャート投影機90を制御する。これに加えて、制御部59は、卓上操作装置70の表示部72を、手持操作装置60の操作ボタン群61a〜61cの操作に基づいて制御する。
つまり、検眼システム1は、手持操作装置60から、卓上操作装置70の表示部72を制御できるようになっている。このため、検者P1は、被検者P2から遠くの位置A1にいても、検眼情報等を、表示部72に表示して被検者P2に知らせることができる。
【0050】
卓上操作装置70を用いた検査について説明する。
検者P1は、椅子に座りながら、被検者P2から近くの位置A1で、卓上操作装置70の操作ボタン群71a、表示部72に表示した操作ボタン群71b,71cにより、手持操作装置60と同様に、自覚式検眼装置50を操作できる。
前述したように、制御部79は、手持操作装置60の操作ボタン群61b,61cと同様な配置で、操作ボタン群71b,71cを表示部72に表示する。このため、検者P1は、手持操作装置60の操作方法に慣れている場合や、卓上操作装置70及び手持操作装置60を交互に操作するような場面でも、混乱せずに操作できる。
また、検者P1は、表示部72に検眼情報等を表示して、検眼情報等を被検者P2に説明しながら検眼できる。
【0051】
なお、前述した記憶装置30の入出力端子33は、卓上操作装置70の入出力端子73にも接続できる。このため、検者P1は、自覚式検眼の開始時には、記憶装置30の検眼情報を、卓上操作装置70を介して、自覚式検眼装置50の検眼情報記憶部58b(
図2参照)に有線で移動できる。これにより、検者P1は、卓上操作装置70を用いる場合には、記憶装置30の入出力端子33を自覚式検眼装置50の入出力端子53に接続しなくても、検眼情報を自覚式検眼装置50に移動できるので、利便性がよい。
【0052】
以上説明したように、検眼システム1は、手持操作装置60、卓上操作装置70を備えるので、検査状況(検者P1の位置等)に柔軟に対応できる。
また、手持操作装置60及び自覚式検眼装置50間は、無線通信に赤外線を利用するので、医療装置への影響を軽減できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態等のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0054】
(変形形態)
(1)本実施形態において、記憶装置に検眼情報を送信する装置は、他覚式検眼装置である例を示したが、これに限定されない。例えば、記憶装置に検眼情報を送信する装置(第1検眼装置)はレンズメータでもよい。この場合には、被検者が所有している眼鏡等の情報(検眼情報)を、レンズメータを計測して、記憶装置を用いて自覚式検眼装置に移動できる。
【0055】
(2)本実施形態において、記憶装置の送信方法は、記憶部の設定又は通信切り替えスイッチの操作に基づいて選択される例を示したが、これに限定されない。例えば、記憶装置の送信方法は、記憶装置の入出力端子が、他覚式検眼装置の入出力端子又は自覚式検眼装置の入出力端子に接続されているかに基づいて、選択されてもよい。この場合には、記憶装置の制御部が、受信ボタン又は送信ボタンの操作に応じて、入出力端子の接続状況を判定し、接続されている場合には有線を選択し、かつ、接続されていない場合には無線を選択するようにすればよい。この場合には、通信設定やスイッチ操作等をすることなく、通信方法を選択できるので、利便性を向上できる。