【解決手段】自覚式検眼装置は、レンズを備え、球面度数を生成する球面度数生成部と、光学系上に配置され2つの円柱レンズを有する乱視要素生成部と、制御部とを備え、制御部は、球面度数、乱視度数、乱視軸の矯正値に基づいた矯正位置にレンズを配置している状態で、矯正値に対して、乱視検査のためのクロスシリンダ度数及びクロスシリンダの軸角度45°、90°、135°、180°に応じて合成した合成矯正値を算出しS20、合成矯正値に基づいた合成矯正位置に、レンズを、球面度数生成部及び乱視要素生成部を制御して配置しS30、検眼結果を受け付けてS40、矯正値を補正した新矯正値を算出するS50。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態の検眼装置システムの構成を説明する図である。
実施形態の検眼装置システムは、自覚式検眼装置1、他覚式検眼装置80を備える。
自覚式検眼装置1は、検者が被検者に対して、自覚式検眼を行う検眼装置である。
自覚式検眼装置1は、ケース2、操作部10(11〜13)、手持操作装置12、卓上操作装置13、表示装置14、自覚式測定部20L,20R、記憶部70、制御部71を備える。
【0010】
ケース2は、自覚式検眼装置1の筐体である。
操作部10(11〜13)は、検者が自覚式検眼装置1を操作するための装置である。自覚式検眼装置1は、操作部10として、操作ボタン11、手持操作装置12、卓上操作装置13を備える。
操作ボタン11は、ケース2に設けられている。
手持操作装置12は、操作ボタンを備える。手持操作装置12は、操作情報を赤外線で自覚式検眼装置1の本体に赤外線受信部12aに向けて送信する。
卓上操作装置13及び自覚式検眼装置1の本体間は、通信ケーブル13aで接続されている。卓上操作装置13は、複数の操作ボタン、表示装置13bを備える。卓上操作装置13は、通信ケーブル13aを介して操作情報を自覚式検眼装置1の本体に送信し、また、表示装置13bの表示情報を自覚式検眼装置1の本体から受信する。
【0011】
表示装置14は、液晶表示装置等の表示部である。後述するように、表示装置14は、自覚式検眼における矯正値等の情報を表示する。
なお、以下の説明では、矯正値等の情報は、表示装置14に表示する形態を説明するが、前述した卓上操作装置13の表示装置13bも、これらの情報を表示できる。
【0012】
自覚式測定部20L,20Rは、被検者の検眼するための部分である。自覚式測定部20Lは、左眼の測定を行うための部分であり、また、自覚式測定部20Rは、右眼の測定を行うための部分である。自覚式測定部20L,20Rの構成は、後述する。
記憶部70は、自覚式検眼装置1の動作に必要なプログラム、情報等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶装置である。記憶部70は、後述する処理に必要な演算式、テーブル等を記憶する。記憶部70は、テーブルとして、
図5に示す表等を記憶する。
【0013】
制御部71は、自覚式検眼装置1を統括的に制御するための演算装置、制御装置であり、例えば、CPU等から構成される。
制御部71は、記憶部70に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、前述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0014】
図2は、実施形態の自覚式測定部20LのレンズL1〜L5の構成を説明する斜視図である。
図3は、実施形態の自覚式測定部20Lの構成を説明する光軸Oを通る面で切断した断面図である。
自覚式測定部20Lは、矯正値、つまり、球面度数、乱視度数、乱視軸の軸角度に応じて検眼光学系のレンズL1〜L5(レンズ群)を駆動して、自覚式検眼検査に必要な位置に配置する部分である。
以下、左眼P用の自覚式測定部20Lについて説明するが、右眼用の自覚式測定部20Rも同様な構成である。
【0015】
自覚式測定部20Lは、球面度数生成部30、乱視要素生成部50を備える。球面度数生成部30、乱視要素生成部50は、制御部71によって制御される。
球面度数生成部30は、レンズL1〜L3(球面度数生成レンズ群)の組み合わせによって、検査に必要な球面度数を生成し、また変更する部分である。
球面度数生成部30は、レンズL1〜L3、円盤31〜33、駆動部41〜43備える。
円盤31は、中心軸CLが同軸になるように、ケース2内に支持されている。
円盤31は、球面度数を生成するための複数のレンズL1を、同一円周上に配置した円盤である。レンズL1は、それぞれ屈折力が異なっている。
円盤31は、中心軸CLを中心に回転可能に支持されている(矢印θ1参照)。
円盤32,33は、円盤31と同様な部材であり、それぞれ複数のレンズL2,L3を配置し、中心軸CLを中心に回転可能に支持されている(矢印θ2,θ3参照)。
駆動部41〜43は、円盤31〜33をそれぞれ独立して回転するための駆動装置である。駆動部41〜43は、パルスモータ等を備える。
【0016】
乱視要素生成部50は、検査に必要な乱視度数、乱視軸の軸角度を生成し、また変更する部分である。
乱視要素生成部50は、2枚の円柱レンズL4,L5(乱視生成レンズ群)、円柱レンズ保持枠51,52、外筒53、駆動部61,62を備える。
円柱レンズL4,L5は、検眼光学系の光軸O上に配置されている。円柱レンズL5は、凸レンズであり、一方、円柱レンズL4は、凹レンズである。円柱レンズL4,L5は、軸が互いに直交し、かつ、屈折力の絶対値が等しい。円柱レンズL4,L5は、相対位置が変更されることにより、乱視度数、乱視軸の軸角度を生成し、また変更する。
さらに、乱視要素生成部50は、特許文献1の検眼装置のように、クロスシリンダを生成することが可能である。
【0017】
円柱レンズ保持枠51は、円柱レンズL4を保持する枠体である。
円柱レンズ保持枠52は、円柱レンズL5を保持する枠体である。
外筒53は、円柱レンズ保持枠51,52を、独立して光軸O回りに回転可能に支持する筒体である(矢印θ4,θ5参照)。これにより、円柱レンズL4,L5は、相対位置が変更される。
【0018】
このように、円柱レンズ保持枠51,52が、外筒53に独立して支持されるので、円柱レンズL4,L5は、互いに独立して回転することができる。また、円柱レンズ保持枠51,52は、同期して回転することにより、必要に応じて光軸O回りに一体で回転することができる。
【0019】
駆動部61は、円柱レンズ保持枠51を、光軸O回りに回転駆動する駆動装置である。駆動部61は、パルスモータ等を備える。
駆動部62は、円柱レンズ保持枠52を、光軸O回りに回転駆動する駆動装置である。駆動部62は、駆動部61と同様な装置である。
【0020】
上記構成により、自覚式測定部20Lは、各駆動部を制御して、以下のように検眼光学系を制御できる。
・円盤31を中心軸CL回りに回転駆動して、複数のレンズL1のうち1つを光軸O上に配置する。円盤32,33についても同様に、複数のレンズL2,L3のうちそれぞれ1つを光軸O上に配置する。これにより、検眼光学系の所望の球面度数を生成する。
・円柱レンズ保持枠51,52を光軸O回りに独立して回転駆動して、円柱レンズL4,L5を光軸O回りの所望の回転位置に配置する。これにより、検眼光学系の所望の乱視度数を生成し、かつ、所望の乱視軸の軸角度を生成する。
・円柱レンズ保持枠51,52を光軸O回りに同期して回転駆動して、円柱レンズL4,L5を一体で光軸O回りに回転できる。これにより、球面度数、乱視度数を維持しながら、乱視軸の軸角度のみを変更できる。
・円柱レンズL4,L5を光軸O回りに回転駆動するので、レンズを交換する方式に比較して、静かに駆動できる。
【0021】
なお、球面度数生成部30、乱視要素生成部50を用いて所望の球面度数、乱視度数、乱視軸の軸角度を生成するための演算式等は、特許公報(登録第2911811号)に記載されているものを用いることができる。
【0022】
他覚式検眼装置80は、他覚式検眼の機能を有する。他覚式検眼装置80としては、特許公報(第4173296号)に記載されたものを利用できる。
他覚式検眼装置80は、他覚式測定部81を備える。
他覚式測定部81は、被検眼を他覚式検眼するための部分である。他覚式測定部81は、他覚式検眼するための検眼光学系、視標、チョッパ等を備える。
他覚式検眼装置80は、左右の被検眼の測定として、眼調節機能の他に、球面度数、乱視度数、乱視軸、瞳孔間距離、加入度(ADD)等の測定を行うことができる。他覚式検眼装置80の検眼結果には、これらの測定情報が含まれる。
他覚式検眼装置80の検眼結果は、半導体記憶装置等を備えるUSBメモリや、通信ケーブル等を用いて、自覚式検眼装置1の記憶部70に移動したりコピーできる。
【0023】
(精密乱視検査の手順)
実施形態の検査手順、自覚式検眼装置1の動作について説明する。
図4は、実施形態の自覚式検眼装置1の精密乱視検査の処理を示すフローチャートである。
図5は、実施形態の自覚式検眼装置1の合成矯正位置配置処理を示すフローチャートである。
図6は、実施形態のクロスシリンダの軸角度A
X.C.の各角度におけるイメージ図である。
図7は、実施形態の乱視検眼結果に基づいて、新矯正値R’を算出する態様を説明する表である。
以下の説明は、自覚式測定部20Lを用いて左眼Pを検査する例をするが、同様な処理によって、自覚式測定部20Rを用いて右眼の検査を行うことができる。
精密乱視検査を行う前提として、他覚式検眼装置80の検眼結果を、記憶部70に記憶しているものとする。また、その記憶部70に記憶した検眼結果に基づいて、自覚式検眼装置1で検眼光学系を生成し、自覚式検眼装置1において、RG(レッド グリーン)検査を行うことにより、球面度数の矯正を終了していることとする。
RG検査終了時点(つまり精密乱視検査開始時点)での矯正値Rの各処方値の内容を、その時点での乱視軸の軸角度(精密乱視検査で追加されるクロスシリンダの軸角度A
X.C=0°)を基準として、以下の通りとする。
【0024】
・矯正値R
球面度数S(0°)=S
乱視度数C(0°)=C
乱視軸の軸角度A(0°)=α
矯正値Rの情報は、表示装置14に表示される。
【0025】
S10において、制御部71は、精密乱視検査をするための操作を、操作部10から受け付ける。
制御部71は、操作部10の操作を受け付けて、精密乱視検査を行うモードに移行する。
S20において、制御部71は、合成矯正値算出処理を行う。
合成矯正値算出処理は、矯正値Rに基づいた矯正位置にレンズL1〜L5を配置している状態で、矯正値Rに対して、精密乱視検査のためのクロスシリンダ度数及びクロスシリンダの軸角度を合成した合成矯正値を算出する処理である。
円柱レンズL4,L5で生成するクロスシリンダ度数は、通常、C
X.C.=0.25D(ディオプタ)、0.5Dのいずれかを用いる。実施形態では、C
X.C.=0.5Dを用いる。
追加するクロスシリンダの軸角度は、A
X.C.=45°、90°、135°、180°である。
以下の説明おいて、クロスシリンダの各軸角度における合成矯正値を、(S
45°、C
45°、α
45°)、(S
90°、C
90°、α
90°)、(S
135°、C
135°、α
135°)、(S
180°、C
180°、α
180°)という。各合成矯正値は、以下のように算出する。
【0026】
[合成矯正値(S
45°、C
45°、α
45°):A
X.C.=45°]
A
X.C.=0°(つまり、A=α)の状態から、円柱レンズL4,L5によって新たに生成され追加される球面度数、乱視度数及び乱視軸の軸角度は、以下で表すことができる。
球面度数:S=C
X.C.
乱視度数:C=−2C
X.C.
【0027】
合成矯正値(S
45°、C
45°、α
45°)は、精密乱視検査開始時点での矯正値Rに対して、A
X.C.=45°における円柱レンズL4,L5によって生成されるS=C
X.C.、C=−2C
X.C.を合成すればよい。制御部71は、合成矯正値S
45°、C
45°、α
45°を、以下の算出式を用いて算出する。
【0029】
[合成矯正値(S
90°、C
90°、α
90°)、(S
135°、C
135°、α
135°)、(S
180°、C
180°、α
180°)の算出]
制御部71は、合成矯正値(S
90°、C
90°、α
90°)、(S
135°、C
135°、α
135°)、(S
180°、C
180°、α
180°)についても、以下の算出式を適用して、算出する。
【0033】
S30(S31〜34)において、制御部71は、合成矯正位置配置処理を行う。
合成矯正位置配置処理は、合成矯正位置を算出し、乱視要素生成部50を制御して、円柱レンズL4,L5を、算出した合成矯正位置に配置する処理である。
合成矯正位置とは、球面度数S(0°)に対して、合成矯正値を反映したレンズL4,L5の位置である。例えば、A
X.C.=45であれば、S(0°)に対して、合成矯正値S
45°を反映したレンズL4,L5の配置である。
制御部71は、以下のように、クロスシリンダの軸角度A
X.C.=45°→0°→90°→0°→135°→0°→180°に順次変更するように、レンズL4,L5を駆動する。
【0034】
図6(A)に示すように、A
X.C.=0°の状態は、被検眼に対して、矯正値Rに対応した眼鏡85が装着された状態と同様である。
図6(B)に示すように、A
X.C.=45°の状態は、被検眼に対して、矯正値Rに対応した眼鏡85が装着された状態で、さらに、クロスシリンダレンズ86をA
X.C.=45°になるように、眼鏡85の手前側に配置された状態と同様である。
図6(B)の状態と同様に、
図6(C)から
図6(E)に示すように、A
X.C.=90°,135°,180°の状態は、クロスシリンダレンズ86をA
X.C.=90°,135°,180°になるように、眼鏡85の手前側に配置された状態と同様である。なお、検者は、クロスシリンダレンズ86を、表裏反対にしたり、光軸回りに回転させながら、かつ、目印の位置を確認しながら、眼鏡85の手前側に配置すればよい。
【0035】
検者は、精密乱視検査開始時のS(0°)の状態から、操作部10を操作することにより、乱視軸の軸角度をA
X.C.=45°に変更できる。
図5に示すように、S31aにおいて、制御部71は、操作部10の操作に応じて、乱視要素生成部50を制御して、合成矯正値S
45°に基づいた合成矯正位置に、レンズL4,L5を配置する。つまり、制御部71は、合成矯正値S
45°、C
45°、α
45°になるように円柱レンズL4,L5の配置角度及び相対角度を変更する。
この状態は、
図6(B)の状態と同様である。但し、
図6(B)の乱視要素は、眼鏡85のレンズ及びクロスシリンダレンズ86によって生成されるのに対して、自覚式検眼装置1の乱視要素は、レンズL4,L5のみによって生成される。
【0036】
検者は、被検者に対して、指標の見え方が下記3つから選択するように、問診する。
・A
X.C.=0°がよく見える
・A
X.C.=45°がよく見える
・A
X.C.=0°、45°が同じく見える
また、制御部71は、軸角度A
X.C.=45°の状態において、検者に対して、問診の結果、つまり検査結果を下記3つから選択するように、促す画面(図示せず)を、表示装置14に表示する。検眼結果は、例えば、項目の内容を表示部に表示して、操作部10で選択できるようにすればよい。
・項目1に該当する
・項目5に該当する
・項目1、項目5のいずれも該当しない
各項目は、上記問診の内容、
図7に示す表に対応したものである。
図7に示す表については、後述する。
検者は、操作部10を操作して、上記3つのなかから検査結果を選択して、入力する。
【0037】
S31b,S31cにおいて、制御部71は、検査結果の入力を受け付ける(検査結果受け付け処理)。
制御部71は、検査結果の入力が「項目1に該当する」であった場合(S31b:YES)、又は「項目5に該当する」であった場合(S31c:YES)には、メイン処理のS40に進む。一方、制御部71は、検査結果の入力が「項目1、項目5のいずれも該当しない」であった場合(S31b:NO、かつ、S31c:NO)には、S31dに進む。
S31dにおいて、制御部71は、乱視要素生成部50を制御して、円柱レンズL4,L5を、矯正値Rに対応した位置、つまり、A
X.C.=0°に対応した位置に戻す処理である乱視生成レンズ群戻し処理を行う。制御部71は、この処理の後、S32aに進む。
【0038】
上記処理により、検査結果が「項目1、項目5のいずれも該当しない」場合には(S31b:NO、かつ、S31c:NO)には、制御部71は、S32a以降に進んで、軸角度A
X.C.=45°とは異なる他の軸角度A
X.C.=90°以降の処理を行う。
一方、検査結果が「項目1に該当する」場合(S31b:YES)、又は「項目5に該当する」場合(S31c:YES)には、制御部71は、他の軸角度90°の処理を行わない。つまり、この場合には、制御部71は、合成矯正位置配置処理を中止して、他の軸角度A
X.C.=90°以降の合成矯正位置配置処理を行わずに、S40に進む。
【0039】
S32aにおいて、制御部71は、S31aと同様に、乱視要素生成部50を制御して、A
X.C.=90°である合成矯正値S
90°、C
90°、α
90°に基づいた合成矯正位置に、円柱レンズL4,L5を配置する。
検者は、A
X.C.=90°の場合にもA
X.C.=45°の場合と同様に、
図7に示す表のうちA
X.C.=90°に対応した項目2、項目6に関する問診を、被検者に対して行い、操作部10を操作して、検査結果を入力する。
【0040】
制御部71は、A
X.C.=45°の場合と同様に、検査結果の入力が「項目2に該当する」であった場合(S32b:YES)、又は「項目6に該当する」であった場合(S32c:YES)には、メイン処理のS40に進む。
一方、制御部71は、検査結果の入力が「項目2、項目6のいずれも該当しない」であった場合(S32b:NO、かつ、S32c:NO)には、S32dに進んで、乱視生成レンズ群戻し処理を行う。つまり、制御部71は、他の軸角度A
X.C.=135°以降の合成矯正位置配置処理を行わずに、S40に進む。
【0041】
S33a〜S33d、S34a〜S34dの処理も、S31a〜S31dと同様である。
つまり、S33a〜S33dにおいて、制御部71は、軸角度A
X.C.=135°の合成正値(S
135°、C
135°、α
135°)に基づいて、円柱レンズL4,L5を駆動する。また、
図7に示す表の項目3、項目7に基づいて、検査結果の入力を受け付ける。
S34a〜S34dにおいて、制御部71は、軸角度A
X.C.=180°の合成矯正値(S
180°、C
180°、α
180°)に基づいて、円柱レンズL4,L5を駆動する。また、
図7に示す表の項目3、項目7に基づいて、検査結果の入力を受け付ける。
なお、検査結果が「項目2、項目6のいずれも該当しない」場合(S32b:NO→S32c:NO)には、被検眼は、A
X.C.=0°である矯正値Rの状態が、最もよく見えることになる。そこで、制御部71は、この場合には、表9のうち項目0を選択して、S40に進む。
【0042】
なお、S30の処理では、制御部71は、合成矯正値S
45°、C
45°、α
45°に対応する処方値を、表示装置14に表示し、現在の角度が分かるようにするのが望ましい。
【0043】
S40において、制御部71は、S30の検査結果に基づいて、新矯正値算出処理を行う。新矯正値算出処理は、精密乱視検査前の矯正値Rに対して、精密乱視検査の検眼結果の選択を反映して補正して、新たな矯正値である新矯正値R’を算出する処理である。
【0044】
制御部71は、各検査結果に基づいて、
図7の表を参照する。
図7の表の列91の各項目の内容は、以下の通りである。
・項目0:A
X.C.=0°がよく見える
・項目1〜4:A
X.C.=45°,90°,135°,180°のうちいずれかがよく見える
・項目5〜8:A
X.C.=0°と、A
X.C.=45°,90°,135°,180°のうちいずれかとが同じように見える
【0045】
また、列92に示すように、各項目では、被検眼及び矯正値Rにおける検眼光学系の関係は、以下の状態になっている。
・項目0:適正である
・項目1〜4:A
X.C.=45°,90°,135°,180°の乱視軸がそれぞれ未矯正である
・項目5〜8:A
X.C.=45°,90°,135°,180°の乱視軸がそれぞれ未矯正である
【0046】
列92に示すように、制御部71は、各項目において、新矯正値R’を以下のように算出する。
項目0:新矯正値R’=矯正値R
項目1〜4:矯正値Rに対して、それぞれA
X.C.=45°,90°,135°,180°の各成分を加える
項目5〜8:A
X.C.=0°と、矯正値Rに対して、それぞれA
X.C.=45°,90°,135°,180°の各成分の半分を加える
なお、この成分とは、クロスシリンダで新たに追加した乱視成分(乱視度数、乱視軸の軸角度)をいう。
【0047】
詳細な算出式は、省略するが、例えば、精密乱視検査前において、
矯正値R「S=−2.25D、C=−1.00D、A=160°」
である場合に、項目4「A
X.C.=180°の乱視軸がよく見える」が適用された場合には、制御部71は、
新矯正値R’「S=−1.75D、C=−2.00D、A=169°」
と算出する。
同様に、項目8「A
X.C.=0°、180°が同じように見える」が適用された場合には、制御部71は、
新矯正値R’「S=−2.00D、C=−1.50D、A=166°」
と算出する。
制御部71は、新矯正値R’の内容を、表示装置14に表示する。
【0048】
ここで、検者は、操作部10を操作することにより、レンズL1〜L5を新矯正値R’に対応した位置に配置するか、又は検眼を終了するかを選択できる。
S50において、制御部71は、レンズL1〜L5を新矯正値R’に対応した位置に配置する操作を受け付けた場合には(S50:YES)、S60に進み、一方、これを行わずに検眼を終了する操作を受け付けた場合には(S50:NO)、S70に進む。
【0049】
S60において、制御部71は、新矯正値R’に基づいた新矯正位置に、レンズL1〜L5を、球面度数生成部30及び乱視要素生成部50を制御して配置する。
これにより、自覚式検眼装置1は、処方される眼鏡の矯正状態を再現できる。
S70において、制御部71は、一連の処理を終了する。
【0050】
次に、上記処理の特徴を説明する。
上記処理では、円柱レンズL4,L5で新たに乱視度数を生成すると、円柱レンズL4,L5によって球面度数も新たに生成されてしまう。実施形態では、この新たに生成される球面度数の補正が不要である。
この理由を、軸角度A
X.C.=0°である矯正値R(S、C、α)の状態から、軸角度A
X.C.=45°を生成する場合を説明する。
【0051】
A
X.C.=45°の場合に、円柱レンズL4,L5のみによって生成される球面度数は、
C
X.C./2−C
45°/2
で表せることが技術的に分かっている。つまり、円柱レンズL4,L5のみによって生成される球面度数は、新たに追加する乱視度数の半分(C
X.C./2)から、A
X.C.=45°における合成矯正値の乱視度数成分の半分(C
45°/2)を減算して求めることができる。
従って、A
X.C.=45°の場合に、レンズL1〜L3と、円柱レンズL4,L5とによって生成される球面度数S
45°は、以下で表すことができる。
【0053】
この球面度数S
45°は、合成矯正値算出処理(S20)で算出した合成矯正値の球面度数S
45°と一致する。
このため、自覚式検眼装置1は、円柱レンズL4,L5によって新たに生成された球面度数を、レンズL1〜L3によって補正することなく、乱視検査を行うことができる。また、自覚式検眼装置1は、精密乱視検査における球面度数を、被検眼に適合したものにできるので、正確な検査をすることができる。
【0054】
ところで、従来装置は、検者のコントローラ操作により、クロスシリンダレンズを反転させ、つまり、クロスシリンダレンズの軸を90度回転させ、その反転前後での視標のぼやけ具合を比較してもらう。検者は、視標のぼやけ具合に応じて、検査窓に配置される乱視レンズを調整する。そして、検者は、クロスシリンダレンズの反転前後で、被検者の視標の見え方が同程度に見えるように、乱視度数及び乱視軸の決定をする。
【0055】
しかし、従来装置では、クロスシリンダレンズの反転前後で視標のぼやけ具合を比較するため、被検者の比較が曖昧になる場合があった。
また、クロスシリンダレンズの反転の切換えのタイミングは、検者本意であった。そのため、被検者は、クロスシリンダレンズの反転に追いつけない場合があった。
さらに、クロスシリンダレンズを反転することにより、球面度数も不適切になってしまう。
このため、従来装置では、乱視検査が不正確になる場合があった。
また、反転前後での被検者の比較判断が曖昧である場合には、検者は、反転操作を繰り返し行い、被検者は、比較判断を繰り返す必要がある。このため、従来装置は、検者と被検者双方にとって手間であり、検査時間が長くなってしまう。
【0056】
これに対して、自覚式検眼装置1では、被検者は、軸角度A
X.C.=0°と軸角度A
X.C.=45°等とにおいて、視標のぼやけ具合を比較するのではなく、どちら軸角度の方が視標がよく見えるかを比較すればよい。
また、自覚式検眼装置1では、クロスシリンダレンズの反転に相当する動作は、装置が自動で行うので、切換え時間のばらつきを少なくできる。
さらに、前述した通り、軸角度A
X.C.=45°等の場合でも、球面度数を被検眼に適したものにできる。
このため、被検者は、比較判断が正確にできるので、比較判断を繰り返すような場面を少なくできる。自覚式検眼装置1は、正確かつ迅速に乱視検査を行うことができる。
【0057】
なお、他覚式検眼装置80で通常の乱視検査を行った後に、さらに上記処理を適用した精密乱視検査を行ってもよい。
また、実施形態では、検眼情報として、他覚式検眼装置80の検査結果を用いる例を示したが、他の装置から取得してもよい。例えば、検者が既に使用している眼鏡のレンズデータを測定するレンズメータの測定情報を、検眼情報として用いてもよい。
【0058】
ここで、他覚式検眼装置80やレンズメータからの処方値、又は自覚式検眼装置1による処方値で乱視度数がゼロであっても、実際には、乱視が存在することがある。これは、例えば、以下の理由による。
・他覚式検眼装置80からの検眼情報は、測定誤差等を含んでしまう場合がある、
・検者等は、他覚式検眼装置80の測定誤差等を含んだ検眼情報を用いて眼鏡を作成してしまう場合がある。この場合には、この眼鏡を測定したレンズメータの処方値は、他覚検装置の測定誤差等を含んでしまう。
・検者が、自覚式検眼装置1の検眼に不慣れであったりすると、乱視の存在に気が付かない場合がある。この場合には、自覚式検眼装置1の処方値は、測定誤差等を含んでしまう。
【0059】
これらの処方値によって作製された眼鏡は、はっきり見えなかったり、疲れやすいものになってしまう。
この場合には、他覚式検眼装置80、レンズメータ等からの処方値、自覚式検眼装置1による処方値を、矯正値R(0)として利用する。そして、上記処理と同様に、自覚検眼装置にレンズを装填し、クロスシリンダの軸角度として45°、90°、135°、180°を用いて、検眼することにより乱視を発見し、新処方値を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、実施形態の自覚式検眼装置1は、正確な精密乱視検査を行うことができる。また、矯正値Rから新矯正値R’の算出までを一連の工程で行い、新矯正値R’を眼鏡等の処方に反映できる。
また、自覚式検眼装置1は、他覚式検眼装置80からの検眼情報を利用するので、正確で迅速な乱視検査をすることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。