【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、メモリー素子のメモリーセルが提供される。メモリーセルは、n型ゲート及びn型ウェルを有するMOSキャパシターを有する。また、メモリーセルは、MOSキャパシターのn型ゲートとn型ウェルの間に恒久的な導電性の破過(ブレイクスルー)構造を生成するために、n型ゲート及びn型ウェルをまたがるように破過電圧(V
M)を一時的にかけるための第1のスイッチを有する。
【0006】
破過電圧は、通常、6Vよりも大きい範囲であり、8V程度又はさらに高い。破過電圧をかけられる場合には、n型ゲート及びn型ウェルベースのMOSキャパシターは、恒久的な導電性の破過構造を確立するために特に適している。所定の大きさの破過電圧がMOSキャパシターにかけられる場合に、MOSキャパシターのn型ゲート及びn型ウェルの内部構造は、具体的かつ十分に明確な破過のふるまいを示す。MOSキャパシターに破過電圧をかけることによって、n型ゲートとn型ウェルの間の金属酸化物において有限のエネルギーの蓄積をもたらす。
【0007】
このエネルギーの蓄積によって、MOSキャパシターの金属酸化物層又は金属酸化物構造において導電性の破過構造の形成をもたらす。すなわち、MOSキャパシターの金属酸化物構造は、n型ゲートとn型ウェルの間の電気抵抗が減少するように、十分に明確な方法で損傷され又はさらに破壊される。n型ゲート及びn型ウェルは、導電性の破過構造を介して電気的に接続され、MOSキャパシターはもはや実質的にロスがない電荷の記憶を提供することがもはやできない。
【0008】
第1のスイッチによって、MOSキャパシターのn型ゲートは、破過電圧供給源に電気的に接続可能であり、その一方で、MOSキャパシターのn型ウェルはアースに接続されている。したがって、第1のスイッチの閉じることによって、n型ゲート及びn型ウェルをまたがるように破過電圧をかけることをもたらす。これによって、MOSキャパシターをまたがるように、恒久的な導電性の破過構造が生成され、形成される。
【0009】
その後、第1のスイッチが開かれると、すなわち、切断されると、MOSキャパシターの導電性の破過構造が残る。その後、MOSキャパシターの元々の機能のこのような特定の十分に明確な破壊を、読み出しユニットによってサンプリングすることができる。メモリーセルの記憶又は書き込み手続き時の第1のスイッチの構成に依存して、対応するMOSキャパシターが、破壊されるか又は完全性を維持するかのどちらかになる。その後、読み込みプロセスでは、MOSキャパシターの可動性を検出又はサンプリングすることができる。これによって、情報ビットが表される。
【0010】
更なる一実施形態によれば、メモリーセルは、MOSキャパシターに読み出し電圧(VDD)をかけるために第2のスイッチを有する。この読み出し電圧は、通常、破過電圧と比較して低い振幅を有する。読み出し電圧は、MOSキャパシターを帯電又は探査(プローブ)するようにはたらく。通常、第2のスイッチは、MOSキャパシターのVDD電圧供給源とn型ゲートの間に位置する。第2のスイッチを閉じると、対応する読み出し電圧を、MOSキャパシターに、特に、そのn型ゲートに供給する。
【0011】
更なる一実施形態によれば、メモリーセルは、さらに、MOSキャパシターのn型ゲートに接続可能な読み出しユニットを有する。通常、読み出しユニット及び第2のスイッチは、MOSキャパシターのn型ゲートに並列に接続される。この手法によって、読み出しユニットは、第2のスイッチの構成に関係なく、MOSキャパシターのn型ゲートに恒久的に接続されることができる。
【0012】
読み出しユニットによって、MOSキャパシターの電気的なふるまい、したがって、その可動性又は機能を、検出又は決定することができる。読み出しユニットは、通常、読み出しフリップフロップなどのような標準的な電子部品を有することができる。
【0013】
更なる一実施形態によれば、第2のスイッチを閉じて、読み出し電圧によってMOSキャパシターを帯電させることできる。読み出し手続きを初期化するために、第2のスイッチが、通常、所定の時間の間閉じられる。その後、与えられた電荷がMOSキャパシターに蓄え続けられるように、第2のスイッチは開くことがあり、開くことができる。
【0014】
更なる一実施形態によれば、読み出しユニットは、第2のスイッチが開いてから所定の時間Δtの後にMOSキャパシターをサンプリングするように動作可能である。通常、MOSキャパシターのサンプリングは、様々なステップによって行われる。第1のステップにおいて、第2のスイッチが閉じて、MOSキャパシターを帯電させる。その後、第2のスイッチが再び開かれる。その後、第2のスイッチが開かれた後、読み出しユニットが実際にMOSキャパシターをサンプリング又は探査する前に、所定の時間が経過する。MOSキャパシターの読み出し電圧から切断することと、MOSキャパシターのサンプリングとの間に所定の時間を待つことによって、書き込み手続き時にMOSキャパシターが破過電圧によって損傷される際に、帯電が放電することが可能になる。
【0015】
書き込み手続き時に特定のMOSキャパシターに実際に破過電圧がかかると、MOSキャパシターは、所定の時間Δtにわたって電荷を記憶することができなくなる。結果として、MOSキャパシターをサンプリングする場合、読み出しユニットは、書き込み手続き時に破過電圧をかけられていないMOSキャパシターのサンプリングと比較して、対応する大きさの電荷を取り出すことができない。
【0016】
このようにして、幾分単純でコスト効率が良い読み出しユニットを実装することができる。これは、所定の時間Δtにわたって読み出し電圧から切断された時に、MOSキャパシターが所定の大きさの電荷を有するかどうかを検出するためにまさに動作可能である。
【0017】
別の一実施形態によれば、第1のスイッチが開いている場合にのみ第2のスイッチを閉じることできる。この手法によって、読み込み手続きは、以前の書き込み手続きから正確に分離することができる。
【0018】
更なる一実施形態によれば、第1のスイッチはカスコード型のスイッチを有する。この手法によって、第1のスイッチは、比較的高いブレークスルー電圧をかけられても、動作可能に維持される。カスコード型のスイッチは2段又は複数段のスイッチであり、通常、一連のMOSFETトランジスターによって実装される。第1のスイッチとしてカスコード型のスイッチを利用することによって、比較的高いブレークスルー電圧がかけられても、第1のスイッチは完全性を維持する。
【0019】
更なる一実施形態では、メモリーセルは、第3のスイッチと直列に抵抗を有する。この抵抗及び第3のスイッチの直列接続は、通常、MOSキャパシターと並列に接続する。抵抗によって、及び第3のスイッチによって、書き込み手続き時にかけられた比較的大きな破過電圧から読み出しユニットを保護することができる。通常、第3のスイッチは、一端がアースに接続され、他端が抵抗に接続される。
【0020】
第3のスイッチから遠い方の抵抗の反対の端は、通常、MOSキャパシターのn型ゲートにつながっている。このようにして、比較的高いブレークスルー電圧をかけることによって発生する電流が、抵抗を通り抜け、読み出しユニットを損傷せず、破壊しない。
【0021】
更なる一実施形態によれば、第3のスイッチは第1のスイッチにつながれる。このようにして、第3のスイッチ及び第1のスイッチは同一電位で動作可能とすることができる。また、第3のスイッチは、一般に、メモリーセルの書き込み動作時に、第1のスイッチが閉じているか否かとは独立に、閉じることできる。この手法によって、破過電圧がMOSキャパシターにかけられるか否かにかかわらず、比較的高い破過電圧から読み出しユニットを保護することができる。
【0022】
まだ別の一実施形態では、MOSキャパシターは、薄層酸化物キャパシターである。通常、MOSキャパシターは、180nm技術で設計される。MOSキャパシターは、幾分薄く、小型で、コスト効率が高い構造を有する。また、メモリーセルは、一度のみプログラム可能(ワンタイムプログラマブル)なメモリーセルである。MOSキャパシターをまたがるように破過電圧をかけると、MOSキャパシターの内部構造が、不可逆的に、かつ、恒久的に変わる。最初の書き込み手続きの後、メモリーセルは、一又は連続する一連の読み出し手続きのみを行うように動作可能である。
【0023】
更なる一態様において、本発明は、さらに、上記のような複数のメモリーセルを有するメモリー素子に関する。メモリーセルはそれぞれ、前記少なくとも第1のスイッチを有し、これによって、メモリーセルはそれぞれ、個々が1ビット又は0ビットを記憶するように構成することができる。1ビットは、書き込み手続き時にMOSキャパシターをまたがるように破過電圧を加えないことによって得られることができる。他方、0ビットは、第1のスイッチを閉じることによってMOSキャパシターをまたがるように破過電圧を実際にかけることによって得ることができる。しかし、このような0ビットと1ビットの、損傷していないMOSキャパシターと損傷していないMOSキャパシターへの割り当ては、読み出しユニットの設定及び構成によって逆にすることができる。
【0024】
nメモリーセルの行の実装によって、nビットの情報を、一度のみプログラム可能なメモリーデバイスに記憶することができる。
【0025】
更なる態様によれば、本発明は、さらに、上記のようなメモリーセルに少なくとも1ビットを記憶し読み出す方法に関する。ビットの記憶は、対応するメモリーセルのMOSキャパシターのn型ゲート及びn型ウェルをまたがるように破過電圧をかけるように第1のスイッチを閉じるステップを少なくとも有する。メモリーセルから以前に記憶されたビットを読み込むことは、本方法の別の一実施形態によって得ることができる。
読み込みについては、本方法は、
前記MOSキャパシターを帯電させるために、前記MOSキャパシターに読み出し電圧をかけるステップと、
前記読み出し電圧から前記MOSキャパシターを切断するステップと、及び
前記MOSキャパシターが前記読み出し電圧から切断されてから所定の時間後に、読み出しユニットによって前記MOSキャパシターをサンプリングするステップとを有する。
【0026】
このように、読み出し手続きは、MOSキャパシターの可動性を検出するようにはたらく。MOSキャパシターが変化してから所定の時間Δtの経過後のMOSキャパシターのサンプリングによって、このMOSキャパシターが以前の書き込み手続き時に損傷されたか否かが明らかになる。
【0027】
なお、一般に、メモリーセルにおける少なくとも1ビットを記憶し読み出す方法は、メモリーセルに、そして、上記のようなメモリー素子に直接関係している。したがって、メモリーセル及びメモリー素子に関連して上で記したすべての特徴及び問題は、少なくとも1ビットをメモリーセルに又はメモリーセルから記憶し読み込む方法にも等しく適用することができ、逆も適用することができる。
【0028】
n型ゲート及びn型ウェルベースのMOSキャパシターを使用することによって、導電性の破過構造がその金属酸化物層に設けられた場合に、MOSキャパシターが十分に明確な導電性のふるまいを示すという特定の長所を有する。他の種類のMOSキャパシターでは、寄生トランジスター又は寄生ダイオードの効果によって、MOSキャパシターにおいて、読み出し手続き時に正確で単純なMOSキャパシターの読み出し及びサンプリングを妨害し減殺するような効果を発揮させることができる。
【0029】
また、n型ゲート及びn型ウェルのMOSキャパシターに基づくメモリーセルは、幾分堅牢であり安定している。第1のテストでは、8.8Vの破過電圧が2ミリ秒にわたってかけられ、これによって、MOSキャパシターをまたがる十分に明確な導電性の破過構造が確立された。1週間250℃の高温でメモリーセル又はMOSキャパシターを保持することによっても、MOSキャパシターの導電性の破過構造及び電気的なふるまいにおいて、検出できる劣化をもたらさなかった。このようにして、幾分温度耐性があり、堅牢なメモリーセル及びこれに対応するメモリー素子を実装することができる。
【0030】
以下では、本発明の様々な実施形態を、図面を参照して説明する。