【解決手段】受信した光信号を増幅する光増幅器23と、光増幅器23により増幅された光信号を受光する受光素子25と、光増幅器23に光信号が入力されない光断状態から光増幅器23に光信号が入力されると、入力光信号パワーに応じて光増幅器23の利得を減少してから、受光素子25への入力光パワーが目標値に近づくように前記利得を増加する制御部27,28と、を備える。
前記第1のレベルは、前記受光素子の受信レンジの下限値よりも大きく、かつ、光信号の喪失を示すアラーム信号の発出が解除されるアラーム解除レベルよりも小さいレベルに設定され、
前記第2のレベルは、前記アラーム解除レベルに設定される、請求項2又は3に記載の光通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。なお、以下の実施形態で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光受信器の構成例を示すブロック図である。
図1に示す光受信器20は、例示的に、光伝送路10を伝送された光信号を受信する。光伝送路10を伝送される光信号は、1波長の光信号でもよいし、複数波長の光信号が波長多重されたWDM光信号でもよい。光受信器20は、例えば100Gbps用の光トランシーバの受信系に適用することができる。
【0016】
光受信器20は、例示的に、可変光減衰器(VOA)21、光分岐部22、光増幅器23、モニタ用受光素子24、受光素子25、CDR(LOS機能内蔵)部26、利得制御回路27、及び、演算器の一例であるMPU28を備える。
【0017】
VOA21は、演算器28からの制御に応じてその減衰量(ロス)が制御されることにより、光伝送路10から受信した光信号の光分岐部22への出力光パワーを調整する。
【0018】
光分岐部22は、VOA21の出力光の一部をモニタ光として分岐してモニタ用受光素子24へ出力するとともに、出力光を光増幅器23へ出力する。光分岐部22には、例えば光カプラを用いることができる。
【0019】
光増幅器23は、光分岐部22から入力される光を増幅して受光素子25へ出力する。光増幅器23は、例えば半導体増幅器(SOA)であり、その増幅利得が利得制御回路27によって制御される。なお、光断状態のとき、SOA23の利得は初期設定値に設定される。当該初期設定値は、例示的に、受光素子25での最小受信レベルを満足するような値である。利得制御回路27による利得制御の詳細な一例については後述する。
【0020】
モニタ用受光素子24は、光分岐部22で分岐されたモニタ光の受光パワーに応じた電気信号を利得制御回路27に出力する。モニタ用受光素子24には、例示的に、フォトダイオード(PD)を用いることができる。なお、
図1において、「mPD」は、モニタPDの略である。モニタPD24は、入力光信号パワーを検出する検出部の一例である。
【0021】
受光素子25は、光増幅器23の出力光を受光し、受光パワーに応じた電気信号(例えば電圧)をCDR(LOS機能内蔵)部26に出力する。受光素子25には、例示的に、PDとトランスインピーダンスアンプ(TIA)とを有するレシーバオプティカルサブアセンブリ(ROSA)を用いることができる。以下、受光素子25をROSA25と表記することがある。
【0022】
CDR(LOS機能内蔵)部26は、ROSA25の出力電気信号からクロック信号とデータ信号とを復元する。CDRは、クロック&データリカバリの略である。また、CDR(LOS機能内蔵)部26は、ROSA25の出力電圧振幅値が所定の受信レンジの下限値を下回ると、ROSA25の最小受信感度を満足しなくなるため、光信号の喪失を示すアラーム信号を出力する。アラーム信号の一例は、LOS(Loss of Signal)アラームである。そのため、上記下限値をLOS発出レベルと称することがある。
【0023】
LOSアラームは、ROSA25の出力電圧振幅値がLOS発出レベル以上になった時に解除してもよいが、ROSA25の出力電圧振幅値がノイズの影響を受けやすいレベルではLOSアラームの発出と解除とが頻繁に繰り返されるおそれがある。そのため、LOS解除レベルは、LOS発出レベルよりも大きいレベル(ただし、ROSA25の最大出力レベルよりも小さいレベル)に設定しておくとよい。LOSアラームは、LOS解除レベル以上になると解除(出力停止)される。
【0024】
なお、LOSアラームは、CDR LOS信号と称してもよい。CDR LOS信号は、例示的に、HレベルのときにLOSアラーム発出を示し、LレベルのときにLOSアラーム解除を示す。CDR LOS信号は、利得制御回路27の後述する利得加算回路272に与えられる。
【0025】
MPU28は、VOA21の減衰量(以下「VOAロス」と称することがある。)の制御や、CDR(LOS機能内蔵)部26に対するLOS発出レベル及びLOS解除レベル等の設定、利得制御回路27に対する設定等を行なう。利得制御回路27に対する設定には、例示的に、SOA23の利得の目標値や上限値の設定等が含まれる。
【0026】
MPU28は、例えばLOS解除レベル以下の小信号入力時には、最小受信レベルを満足するために、VOAロスが最小になるようVOA21を制御(設定)する。これに対し、例えばLOS解除レベル以上の大信号入力時には、ROSA25に最大受信レベルを超えるレベルの光信号が入力されてROSA25が破壊されることを防止するために、MPU28は、VOAロスが増加するようVOA21を制御する。なお、MPU28は、小信号入力時にCDR(LOS機能内蔵)部26でのクロック及びデータの復元にエラーが生じないように、SOA23の利得を制御してよい。
【0027】
これらの制御により、光受信器20は、最小受信レベルから最大受信レベルの幅広いダイナミックレンジにおいて所定の受信特性を満足できる。しかし、無信号状態(光断状態)では、最小受信レベルを満足するために、光受信器20は、VOAロスを最小にして待機している。この光受信器20へ光が入力されない無信号状態(光断状態)から入力光パワーが急激に増加する光急変時にVOA21やSOA23をMPU28で制御するには、応答が遅い。そのため、光オーバーシュートや光サージ等が発生してROSA25に最大受信レベルを超えるパワーの信号が入力されることがある。この場合、ROSA25に定格電流値を超える電流が流れてしまい、ROSA25が破壊されてしまうおそれがある。
【0028】
既述の特許文献3に記載された利得制御によれば、光急変時において最大受信レベルを超えるパワーの信号(光サージ等)が受光素子に入力されることを防止できるが、増幅器利得を低下させるだけなので、光応答(例えば、立ち上げ時間)に遅延が発生する。そのため、光急変時に光受信器20が動作可能となるまでの時間に遅延が生じ、結果的に、信号疎通時間やLOSアラーム解除時間、受信パワーモニタの応答時間等に遅延が生じる。なお、「LOSアラーム解除時間」とは、LOSアラームが発出されてからLOSアラームが解除されるまでの時間を意味する。
【0029】
そこで、本実施形態では、利得制御回路27を用いて、光急変時にROSA25に最大受信レベルを超えるパワーの信号(光サージ等)が入力されることを防止しつつ、光応答(立ち上げ時間)の高速化を図る。なお、光急変の要因の一例としては、(1)光送信器の光シャットダウン解除(消光から発光)や、(2)光回線異常、(3)ウィグル等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の利得制御回路27は、モニタPD24の出力(例えば電流値)と、SOA23に与える利得制御信号のモニタ値(例えば、電流値)と、CDR(LOS機能内蔵)部26のCDR LOS信号とに基づいて、SOA23の利得を制御する。当該利得制御により、ROSA25への入力光パワーが制御される。そのため、利得制御回路27は、「受光素子(ROSA)入力パワー制御回路27」と称してもよい。なお、利得制御回路27とMPU28とを合わせて「制御部」あるいは「制御ブロック」と称してもよい。
【0031】
ここで、SOA23の利得制御の一例は、光急変時においてROSA25への入力光パワーが最大受信レベル以下の目標レベルに到達するまでの間に、SOA23の利得を減少制御する過程と、SOA23の利得を増加制御する過程とを含む。
【0032】
例えば、光急変時において、利得制御回路27は、モニタPD24での受光パワーに応じた電流値が第1のレベルPL1に到達すると、SOA23の利得を減少制御する(
図2の処理P11〜P14)。第1のレベルPL1は、非限定的な一例として、LOS発出レベルよりも大きく、かつ、LOS解除レベルよりも小さいレベルに設定される。なお、ROSA25の出力電圧振幅値がLOS解除レベルに到達するまでの間、CDR(LOS機能内蔵)部26からはLOSアラームが発出された状態である。
【0033】
その後、モニタPD24での受光パワーが第1のレベルPL1よりも大きい第2のレベルPL2(例えば、LOS解除レベル)に到達すると、利得制御回路27は、SOA23の利得を増加制御する(
図2の処理P15及びP16)。例えば、利得制御回路27は、SOA23に与える利得制御信号の一例である電流値のモニタ値が目標値に近づくようSOA23の利得をフィードバック制御する。なお、目標値は、例示的に、ROSA25の定格電流値以下の値に設定される。このようなフィードバック制御により、光応答の立ち上げ時間が高速化される。なお、ROSA25の出力電圧振幅値がLOS解除レベルに到達すると、CDR(LOS機能内蔵)部26は、LOSアラームの発出を停止(解除)する。
【0034】
次いで、ROSA25の出力電圧振幅値が第2のレベルよりも大きい第3のレベルPL3に到達すると、利得制御回路27は、SOA23の利得を例えば所定の上限値に設定して利得増加制御を制限あるいは停止する(
図2の処理P18)。なお、このときSOA23の利得を減少制御してもよい。第3のレベルPL3は、例示的に、LOS解除レベルよりも大きく、かつ、ROSA25への定格入力パワーを超えない範囲の値(目標値)に設定される。これにより、SOA23の利得が安定し、その後、光入力パワーが安定し光急変が収まる(
図2の処理P19及びP20)。
【0035】
以上のようなSOA23の利得制御を実現するため、利得制御回路27は、
図1に例示するように、利得減算回路271と、利得加算回路272と、を備える。
【0036】
利得減算回路271は、モニタPD24からの電流情報を基に、光受信器20への入力光パワーが第1のレベルPL1に到達すると、入力光パワーに応じてSOA23の利得を減算して減少させる。したがって、第1のレベルPL1は、「利得減算開始レベル」と称してもよい。「利得減算開始レベル」は、例えばMPU28によって設定される。
【0037】
利得加算回路272は、光急変時に入力光パワーが第2のレベルPL2(例えば、LOS解除レベル)に到達すると、上述したフィードバック制御によりSOA23の利得を加算して増加させる。したがって、第2のレベルPL2は、「利得加算開始レベル」と称してもよい。また、利得加算回路272は、入力光パワーが例えば目標値付近の第3のレベルPL3に到達し、SOA23に与える利得制御信号の一例である電流値のモニタ値が目標値に到達すると、SOA23の利得増加を制限、停止する(あるいは利得を減少させる)。なお、利得加算回路272の利得加算開始レベルや、利得加算量、目標値は、例えばMPU28によって設定される。
【0038】
これらの利得減算回路271及び利得加算回路272を用いることで、光急変時の光過渡応答によりROSA25に最大受信レベルの光パワーが入力されてROSA25が破壊されることを防止できる。併せて、SOA23の利得を安定化して光受信器20が動作可能となるまでの時間を速めることができる。したがって、信号疎通時間や、LOSアラームが解除されるまでの時間、受信パワーモニタの応答時間の遅延を抑制することができる。
【0039】
次に、
図3を参照して、利得制御回路27(利得減算回路271及び利得加算回路272)による上述の利得制御について説明する。
図3は、光急変時における時間に対するROSA25への入力光パワーの変化(応答特性)の一例を示すグラフである。
【0040】
図3において、実線200で示す特性が、本実施形態の利得制御回路27による利得制御を実施した場合のROSA25への入力光パワーの変化の一例を示す。点線300で示す特性は、既述の特許文献3による利得制御を実施した場合(利得加算なしの場合)のROSA25への入力光パワーの変化の一例を示す。
【0041】
図3(実線200)に例示するように、時刻T1において光急変が生じてROSA25への入力光パワーが増加し、時刻T2において入力光パワーが第1のレベルPL1に到達する。この時刻T1−T2の期間において利得加算回路271及び利得減算回路272はともにOFF状態(非動作状態)にある。
【0042】
時刻T2において入力光パワーが第1のレベルPL1に到達すると、利得減算回路271がON状態となり、モニタPD24の出力電流値に応じてSOA23の利得を減算する動作が開始される。このとき、利得加算回路272はOFF状態のままである。これにより、SOA23の利得が減少し、光急変による光のオーバーシュートを抑えることが可能になる。したがって、光サージによりROSA25が破壊されてしまうことを防止できる。
【0043】
その後、光受信器20への入力光パワーの増加に応じてROSA25への入力光パワーが増加する。ROSA25への入力光パワーが、時刻T3において第2のレベルPL2の一例であるLOS解除レベルに到達すると、利得加算回路272がON状態となり、ROSA25の出力電圧振幅値に応じてSOA23の利得を加算する動作が開始される。このとき、利得減算回路271はON状態のままである。利得加算回路272が動作を開始すると、光の立ち上がり時間が加速され、光の応答が加速される。その結果、光急変時に光受信器20が動作可能となるまでの時間が加速され、信号疎通時間等が短縮される。
【0044】
次いで、ROSA25への入力光パワーが、時刻T4において目標値付近の第3のレベルPL3に到達すると、利得加算回路272がOFF状態となり、利得加算回路272による利得増加が上限値に到達する。このとき、利得減算回路271はON状態のままである。利得加算回路272がOFF状態になることで、光の立ち上がり時間が遅くなる。したがって、光サージによりROSA25が破壊されることを防止できる。その後、時刻T5までにSOA23の利得が安定し、時刻T5以降、ROSA25への光入力パワーが安定し光急変が収束する。
【0045】
なお、時刻T1−T2の期間#1、時刻T2−T3の期間#2、時刻T3−T4の期間#3、及び、時刻T4−T5の期間#4のそれぞれにおける、利得減算回路271及び利得加算回路272のON/OFF状態を次表1に例示する。
【0047】
ここで、
図3に例示する特性200及び300を比較してみると分かるように、特許文献3による利得制御では、ROSA25への入力光パワーが安定するのは時刻T6であるため、時刻T5及びT6の時間差#5だけ入力光パワーが安定するまでに遅延が生じる。逆にいえば、本実施形態の利得制御によれば、ROSA25への入力光パワーが安定するまでの時間を時間差#5だけ短縮することができる。
【0048】
以上のように、第1実施形態によれば、利得制御回路27(利得減算回路271及び利得加算回路272)を用いることで、光急変時における光過渡応答(光サージ)を抑えつつ、光受信器20の光応答速度を速めることが可能になる。したがって、信号疎通時間やLOSアラーム解除時間、受信パワーモニタの応答時間の遅延を抑制することができ、ひいては光受信器20が動作可能になるまでの時間を短縮することができる。よって、例えば、100Gbpsの光送信器(CFP)において消光から発光までの時間の高速化(例えば2msec以下)が実現された場合でも、当該高速化に十分に対応可能な100Gbpsの光受信器20を実現できる。
【0049】
(利得減算回路271及び利得加算回路272の詳細構成例)
次に、
図4に、上述した利得減算回路271及び利得加算回路272に着目した構成例を示す。
【0050】
(利得減算回路271)
図4に例示するように、利得減算回路271は、例示的に、トランジスタTR1、TR2、デジタル可変抵抗R1、抵抗R2及びR3を備える。トランジスタTR1及びTR2は、非限定的な一例として、バイポーラトランジスタである。ただし、これに限られない。電界効果トランジスタ(FET)等の他の種類のトランジスタを用いてもよい。
【0051】
トランジスタTR1のベースは、モニタPD24の出力に接続される。また、トランジスタTR1のベースに並列にデジタル可変抵抗(DPOT)R1が接続される。デジタル可変抵抗R1の抵抗値は、例示的に、MPU28によって制御される。
【0052】
デジタル可変抵抗R1の抵抗値が制御されることによって、トランジスタTR1がONとなる電圧レベルが調整される。トランジスタTR1のコレクタは、トランジスタTR2のコレクタに接続され、トランジスタTR1のエミッタは抵抗R2を介して接地されている。
【0053】
なお、
図4において、点線矢印2711で示す信号ラインは、第2実施形態で後述するLOS解除遅延防止回路291(
図6参照)が光受信器20に備えられる場合に、トランジスタTR1のベースがLOS解除遅延防止回路291に接続されることを表している。これは別言すると、モニタPD24でモニタされた光信号レベル情報が、LOS解除遅延防止回路291に入力されることを意味する。
【0054】
トランジスタTR2のベースには、基準電圧(VREF)が与えられる。トランジスタTR2のエミッタは、抵抗R3を介してMPU28(例えば、デジタル−アナログコンバータ(DAC#1))に接続される。また、トランジスタTR2のコレクタは、抵抗R4を介してSOA23に接続される。
【0055】
MPU28(DAC#1)によってトランジスタTR2のエミッタ電圧が制御されることによって、トランジスタTR2のコレクタに流れる電流Iaが調整される。トランジスタT1がONになると、電流Iaの一部が電流IbとしてトランジスタTR1のコレクタへ流れる。したがって、トランジスタTR2のコレクタからSOA23へ出力される電流Icは、Ic=Ia−Ibと表される。
【0056】
以下、上述のごとく構成された利得減算回路271の動作について説明する。
まず、MPU28のDAC#1にてSOA23の利得を決定する。当該決定は、無信号状態において行なう。無信号状態では、トランジスタTR1がOFF状態となり、トランジスタTR2によってSOA23の利得が決定する。次に、MPU28とデジタル可変抵抗R1とを用いて減衰開始レベルを決定する。これは、ROSA25の受信感度を考慮して決定する。
【0057】
光信号が光受信器20に入力されると、モニタPD24の出力に応じてトランジスタTR1のベース電圧が増加し、あるレベルでトランジスタTR1がONになる。トランジスタTR1のONレベルを決定するのがデジタル可変抵抗R1である。トランジスタTR1がONになると、トランジスタTR2のコレクタからトランジスタTR1のコレクタへ電流Ibが流れる。
【0058】
電流Ibは、光受信器20への入力光信号レベル(別言すると、モニタPD24の出力レベル)が増加すると増加する。したがって、Ic=Ia−Ibと表される電流Icは、入力光信号レベルが増加すると減少する。このように、電流Icを制御することで、利得減算回路271は、光急変時にSOA23の利得を下げるよう動作する。
【0059】
(利得加算回路272)
一方、利得加算回路272は、
図4に例示するように、電流モニタIC2721、コンパレータ2722、論理和(OR)回路2723、トランジスタTR3、抵抗R5及びR6を備える。なお、トランジスタTR3は、非限定的な一例として、バイポーラトランジスタであるが、FET等の他の種類のトランジスタを用いてもよい。
【0060】
電流モニタIC2721は、電流検出回路の一例であり、抵抗R4の両端電圧を基にSOA23へ流れる電流Isoaを検出(モニタ)する。電流モニタIC2721の出力は、コンパレータ2722の一方の入力端子(非反転入力(+))に接続されている。電流モニタIC2721からコンパレータ2722への出力ラインには、接地抵抗R5が並列に接続されている。コンパレータ2722の他方の入力端子(反転入力(−))は、MPU28(例えばDAC#3)に接続されている。
【0061】
コンパレータ2722の出力は、OR回路2723の一方の入力端子に接続されている。OR回路2723の他方の入力端子には、CDR(LOS機能内蔵)部26の出力(LOS信号)が入力される。
【0062】
OR回路2723の出力は、トランジスタTR3のベースに接続されている。トランジスタTR3のエミッタは、抵抗R6を介してMPU28(例えばDAC#2)に接続されている。トランジスタTR3のコレクタは、利得減算回路271のトランジスタTR2のコレクタから抵抗R4を介してSOA23に入力される信号ラインに接続されている。
【0063】
以下、上述のごとく構成された利得加算回路272の動作について説明する。
まず、MPU28のDAC#2によりSOA23の利得加算量を決定する。トランジスタTR3がON状態となれば、トランジスタTR3のコレクタから電流Idが出力される。電流Idは、利得減算回路271のトランジスタTR2のコレクタから出力される電流Icに加算される。したがって、SOA23に与えられる電流Isoaが増加するので、SOA23の利得が増加し、SOA23の光過渡応答が加速される。
【0064】
トランジスタTR3のON/OFFタイミングは、CDR LOS信号と電流Isoaの上限値とを基に決定する。例えば、ROSA25の出力電圧振幅値がLOS解除レベルを超えた後は、OR回路2723の一方の入力端子に入力されるCDR LOS信号がLレベルとなる。これに対し、OR回路2723の他方の入力端子に入力されるコンパレータ2722の出力は、電流モニタIC2721で検出される電流Isoaの電流値がMPU28(DAC#3)から設定される目標値に到達するまでLレベルとなる。
【0065】
したがって、OR回路2723の出力がLレベルとなり、トランジスタTR3がON状態となる。これにより、トランジスタT3のコレクタから電流Idが出力され電流Isoaが増加する。
【0066】
その後、電流モニタIC2721で検出される電流Isoaの電流値がMPU28(DAC#3)から設定される目標値を超えると、コンパレータ2722の出力がHレベルとなる。したがって、OR回路2723の出力がHレベルとなり、トランジスタTR3がOFF状態となる。なお、電流Isoaの目標値は、ROSA25の入力定格レベルを超えないようMPU28(DAC#3)によって調整される。これにより、光の立ち上げ時間が遅くなり、SOA23の利得加算によって光サージがROSA25に入力されることを防止できる。
【0067】
以上のようにしてトランジスタT3のON/OFFが制御されることで、利得加算回路272は、光急変時にSOA23の利得を増加するよう動作する。
【0068】
(第2実施形態)
図5は、無信号状態(光断状態)から光受信器20への入力光パワーが急激に増加する光急変時のLOS解除時間応答の一例を示す図である。
図5の上段は、
図3と同様に、時間に対するROSA25への入力光パワーの変化(特性)を示している。
【0069】
図5の上段において、点線100は光急変時にSOA23の利得制御を行なわない場合の特性を示している。実線200は、上述した利得制御回路27によるSOA23の利得制御を実施した場合の特性を示している。点線300は、光急変時に既述の特許文献3による利得制御を実施した場合の特性を示している。また、
図5の下段は、各特性100,200及び300のそれぞれに対応した、時間に対するLOS発出/解除(レベル変化)の様子を示している。
【0070】
図5の上段から、ROSA25への入力光パワーが最も早くLOS解除レベルに到達するのは、光急変時にSOA23の利得制御を行なわない場合であることが分かる。したがって、
図5の下段に点線400で示すように、光急変時にSOA23の利得制御を行なわない場合に、LOSアラームが解除される(HレベルからLレベルに遷移する)タイミングが他に比べて最も早い。
【0071】
一方、
図5の上段から、ROSA25への入力光パワーが最も遅くLOS解除レベルに到達するのは、光急変時に既述の特許文献3による利得制御を実施した場合であることが分かる。したがって、
図5の下段に点線600で示すように、光急変時に特許文献3による利得制御を実施した場合に、LOSアラームが解除される(HレベルからLレベルに遷移する)タイミングが他に比べて最も遅い。
【0072】
以上に対し、上述した利得制御回路27によるSOA23の利得制御を実施した場合、
図5の上段(実線200)に示すように、ROSA25への入力光パワーがLOS解除レベルに到達するのは、特許文献3による利得制御を実施した場合よりは早い。しかし、SOA23の利得制御を行なわない場合よりも遅い。そのため、
図5の下段に実線500で示すように、利得制御を行なわない場合(点線400参照)に比べて、LOS解除タイミングが遅延する。その遅延時間が
図5の下段に示すΔtである。第2実施形態では、この遅延時間Δtを抑制あるいは無くす。
【0073】
図6は、第2実施形態に係る光受信器の構成例を示すブロック図である。
図6に例示する光受信器20は、
図1に例示した構成に比して、LOS解除遅延防止回路291を含むLOSアラーム(ALM)制御回路29が追加的に備えられている点が異なる。LOSアラーム制御回路29は、利得制御回路27及びMPU28と共に制御部又は制御ブロックの一例として機能してよい。
【0074】
LOSアラーム制御回路29は、アラーム信号制御回路の一例であり、LOS解除遅延防止回路291によってLOSアラームを発出又は解除するタイミングを制御して上述した遅延時間Δtを最小化するように動作する。
【0075】
例示的に、LOS解除遅延防止回路291は、CDR(LOS機能内蔵)部26の出力信号(CDR LOS信号)と、利得制御回路27(例えば、利得減算回路271)からの光信号レベル情報と、に基づき、光受信器20のLOS信号出力を行なう。「光信号レベル情報」は、モニタPD24による検出結果の一例である。
【0076】
例えば、LOS解除遅延防止回路291は、CDR LOS信号と光信号レベル情報とのうちLOS発出タイミング又はLOS解除タイミングが早い方を用いて光受信器20から出力するLOS信号を生成する。光急変時において、LOS解除タイミングは、利得減算回路271からの光信号レベル情報から生成したLOS信号出力の方がCDR LOS信号よりも早い。そのため、LOS解除遅延防止回路291は、前者を光受信器20のLOS信号として出力する。なお、LOS発出レベルやLOS解除レベルは、事前にMPU28に設定しておく。これにより、LOS解除タイミングの遅延を防ぐことができる。
【0077】
図7に、LOS解除遅延防止回路291の構成例を示す。
図7に示すLOS解除遅延防止回路291は、例示的に、コンパレータ2911、オペアンプ2912、AND回路2913、OR回路2914、アナログスイッチ(A−SW)2915、及び、RCフィルタ2916を備える。AND回路2913及びOR回路2914は、例示的に、ロジックICによって実現されてよい。
【0078】
コンパレータ2911は、例示的に、ヒステリシス特性を有するコンパレータであり、正(+)の入力端子には、抵抗R7が接続されるとともに帰還抵抗R8が接続されている。抵抗R7及び帰還抵抗R8の抵抗値の比によってヒステリシスの度合いが決まる。コンパレータ2911の正の入力端子には、MPU28(例えば、DAC#4)から閾値が与えられる。また、コンパレータ2911の負(−)の入力端子には、利得減算回路271からの光信号レベル情報が入力される。
【0079】
閾値をCDR LOS信号と同じレベルになるように設定すると、光受信器20のLOS信号出力を、CDR LOS信号と同じLOS発出/解除レベルに設定することが可能である。例えば、コンパレータ2911は、利得減算回路271からの光信号レベル情報が閾値以下であると、LOS発出状態を示す信号(例えばHレベル)を出力する。これに対し、利得減算回路271からの光信号レベル情報が閾値を超えると、LOS解除状態を示す信号(例えばLレベル)を出力する。コンパレータ2911の出力は、AND回路2913及びOR回路2914のそれぞれに入力される。
【0080】
オペアンプ2912は、CDR(LOS機能内蔵)部26から入力されるCDR LOS信号をバッファしてAND回路2913、OR回路2914及びRCフィルタ2916のそれぞれに出力する。
【0081】
AND回路2913は、コンパレータ2911の出力とオペアンプ2912の出力とについて論理積をとった信号をアナログスイッチ2915に出力する。
【0082】
OR回路2914は、コンパレータ2911の出力とオペアンプ2912の出力とについて論理和をとった信号をアナログスイッチ2915に出力する。
【0083】
RCフィルタ2916は、抵抗(R)とコンデンサ(C)とを用いたフィルタであり、オペアンプ2912の出力をフィルタリングしてアナログスイッチ2915を切り替える制御信号(以下「A−SW切替信号」と称することがある。)を生成する。
【0084】
アナログスイッチ2915は、A−SW切替信号に応じて、AND回路2913及びOR回路2914の各出力の一方を、光受信器20のLOS出力信号として選択出力する。例えば、A−SW切替信号がHレベルのとき、アナログスイッチ2915は、AND回路2913の出力をLOS出力信号として選択する。逆に、A−SW切替信号がLレベルのとき、アナログスイッチ2915は、OR回路2914の出力をLOS出力信号として選択する。
【0085】
以下、上述のごとく構成されたLOS解除遅延防止回路291の動作について、
図8に例示するタイミングチャートを参照して説明する。なお、
図8中に(1)〜(5)で示す信号あるいは動作は、
図7中に(1)〜(5)で示す信号あるいは動作にそれぞれ対応している。
【0086】
まず、無信号状態から光受信器20への光入力パワーが急激に増加する光急変時に、LOSアラーム発出状態からLOSアラーム解除状態に遷移する場合について説明する。無信号状態においては、CDR LOS信号がLOS発出状態(Hレベル)となっているので、A−SW切替信号がHレベルとなる。したがって、アナログスイッチ2915は、AND回路2913の出力を選択する。
【0087】
ここで、
図8の(1)に例示するように、CDR LOS信号がLOS発出状態(Hレベル)からLOS解除状態(Lレベル)に遷移するタイミングは、T2である。これに対し、
図8の(2)に例示するように、利得減算回路271からの光信号レベル情報に基づくコンパレータ2911の出力がLOS発出状態(Hレベル)からLOS解除状態(Lレベル)に遷移するタイミングは、タイミングT2よりも早いT1である。
【0088】
そのため、AND回路2913の出力は、CDR LOS信号がLレベルに遷移するタイミングT2よりも早いタイミングT1でLレベルになる。アナログスイッチ2915は、
図8の(3)及び(4)に例示するように、AND回路2913の出力を選択するから、光受信器20のLOS出力信号(5)は、CDR LOS信号がLレベルに遷移するタイミングT2よりも早いタイミングT1でLレベルとなる。つまり、LOS解除状態となる。これにより、
図5により説明したLOS解除の遅延時間Δtを最小化することができる。
【0089】
なお、
図8の(3)に例示するように、A−SW切替信号は、CDR LOS信号がLレベルに遷移しても、RCフィルタ2916により、RCで決まる時定数に応じた時間をかけてLレベルに落ちてゆく。そのため、
図8の(4)に例示するように、アナログスイッチ2915は、CDR LOS信号がLレベルに遷移しても、しばらくの間(例えばタイミングT3まで)はAND回路2913の出力を選択する。
【0090】
そして、
図8の(3)及び(4)のタイミングT3において、A−SW切替信号が一定レベル以下になりLレベルになったと認識されると、アナログスイッチ2915は、OR回路2914の出力(Lレベル)を選択する。したがって、光受信器20のLOS出力信号(5)は、Lレベルである。
【0091】
次に、LOSアラームが解除状態(別言すると、光受信器20のLOS出力信号がLレベル)にあるときからLOSアラームが発出される場合の動作について説明する。
【0092】
LOSアラームの解除状態において、光受信器20へ入力される光信号レベルが低下し、LOS発出レベルに到達すると、
図8の(1)及び(2)に例示するように、CDR LOS信号及び光入力レベル信号が共にLレベルからHレベルに切り替わる。このとき、A−SW切替信号はLレベルであるので、アナログスイッチ2915は、OR回路2914の出力を選択している。
【0093】
図8の(1)及び(2)に例示するCDR LOS信号及び光入力レベル信号のうち、LレベルからHレベルに切り替わるタイミングが速い方のタイミングでOR回路2914の出力がHレベルとなる。
図8の例では、CDR LOS信号(1)よりも光入力レベル信号(2)の方が早いタイミングT4でLレベルからHレベルに切り替わる。
【0094】
したがって、OR回路2914の出力がタイミングT4でHレベルとなる。これにより、アナログスイッチ2915から出力される、光受信器20のLOS出力信号(5)が、タイミングT4でLレベル(LOS解除状態)からHレベル(LOS発出状態)に切り替わる。
【0095】
その後、CDR LOS信号(1)がHレベルになったことによりA−SW切替信号(3)がHレベルになったと例えばタイミングT5で認識されると、アナログスイッチ2915は、AND回路2913の出力を選択する。このとき、CDR LOS信号(1)及び光入力レベル信号(2)が共にHレベルであるから、AND回路2913の出力もHレベルとなっている。したがって、アナログスイッチ2915から出力される、光受信器20のLOS出力信号(5)は、Hレベル(LOS発出状態)が維持される。
【0096】
(第3実施形態)
第1実施形態で説明した利得制御回路27による利得制御(利得減算及び利得加算)は、例えば光中継器に適用してもよい。その一例を
図9に示す。
図9は、第3実施形態に係る光中継器の構成例を示すブロック図である。
【0097】
図9に示す光中継器40は、例えば、光伝送路30から受信される光信号を増幅して他の光中継器又は光受信器へ増幅した光信号を送信する。光伝送路30を伝送される光信号は、1波長の光信号でもよいし、複数波長の光信号が波長多重されたWDM光信号でもよい。
【0098】
図9に示す光中継器40は、例示的に、可変光減衰器(VOA)41、光分岐部42、光増幅器43、モニタ用受光素子44,45b、光分岐部45a、信号レベル検出部46、利得制御回路47、及び、演算器48を備える。
【0099】
VOA41は、演算器48からの制御に応じてその減衰量(ロス)が制御されることにより、光伝送路30から受信した光信号の光分岐部42への出力光パワーを調整する。
【0100】
光分岐部42は、VOA41の出力光の一部をモニタ光として分岐してモニタ用受光素子44へ出力するとともに、出力光を光増幅器43へ出力する。光分岐部42には、例えば光カプラを用いることができる。
【0101】
光増幅器43は、光分岐部42から入力される光を増幅して光分岐部45aへ出力する。光増幅器43は、例えば希土類の一例としてエルビウムを添加した光ファイバ増幅器(EDFA)であり、その増幅利得が利得制御回路47によって制御される。なお、光断状態のとき、EDFA43の利得は初期設定値に設定される。当該初期設定値は、例示的に、モニタ用受光素子45bでの最小受信レベルを満足するような値である。
【0102】
モニタ用受光素子44は、光分岐部42で分岐されたモニタ光の受光パワーに応じた電気信号を利得制御回路47に出力する。モニタ用受光素子44には、例示的に、フォトダイオード(PD)を用いることができる。なお、
図9において、「mPD」は、モニタPDの略である。
【0103】
光分岐部45aは、EDFA43で増幅された光信号の一部をモニタ光としてモニタ用受光素子45bへ出力するとともに、光信号を他の光中継器又は光受信器へ出力する。
【0104】
モニタ用受光素子(mPD)45bは、光分岐部45aで分岐されたモニタ光の受光パワーに応じた電気信号(例えば電流値)を信号レベル検出部46に出力する。
【0105】
信号レベル検出部46は、モニタPD45bの出力信号レベルを検出し、検出結果を利得制御回路47の利得加算回路472に与える。なお、信号レベル検出部46での検出レベルは、例示的に、MPU48によって設定される。
【0106】
MPU48は、VOA21の減衰量(VOAロス)の制御や、信号レベル検出部46に対する検出レベル等の設定、利得制御回路47に対する設定等を行なう。利得制御回路47に対する設定には、例示的に、EDFA43の利得の目標値や上限値の設定等が含まれる。
【0107】
利得制御回路47は、第1実施形態の利得制御回路27と同様の利得制御をEDFA43に対して実施する。例えば、利得制御回路47は、
図2により前述した処理P11〜P20を実施する。これにより、EDFA43の光応答が高速化され、光急変時の信号疎通時間を短縮することができる。
【0108】
そのため、利得制御回路47は、第1実施形態の利得減算回路271及び利得加算回路272にそれぞれ相当する利得減算回路471及び利得加算回路472を備える。
【0109】
利得減算回路471は、第1実施形態と同様に、モニタPD44からの電流情報を基に、入力光パワーが第1のレベルPL1に到達すると、入力光パワーに応じてEDFA43の利得を減算して減少させる。したがって、第1のレベルPL1は、「利得減算開始レベル」と称してもよい。「利得減算開始レベル」は、例えばMPU48によって設定される。
【0110】
利得加算回路472は、光急変時に入力光パワーが第2のレベルPL2に到達すると、EDFA43の利得を加算して増加させる。したがって、第2のレベルPL2は、「利得加算開始レベル」と称してもよい。また、利得加算回路472は、入力光パワーが例えば目標値付近の第3のレベルPL3に到達し、EDFA43に与える利得制御信号の一例である電流値のモニタ値が目標値に到達すると、EDFA43の利得増加を制限、停止する(あるいは利得を減少させる)。なお、利得加算回路472の利得加算開始レベルや、利得加算量、目標値は、例えばMPU48によって設定される。
【0111】
これらの利得減算回路471及び利得加算回路472を用いることで、光急変時の光過渡応答によりモニタPD45bに最大受信レベルの光パワーが入力されてモニタPD45bが破壊されることを防止できる。併せて、EDFA43の利得を安定化して光中継器40が動作可能となるまでの時間を速めることができる。したがって、信号疎通時間や受信パワーモニタの応答時間の遅延を抑制することができる。
【0112】
図10に、利得減算回路471及び利得加算回路472に着目した光中継器40の構成例を示す。
図10と第1実施系形態の
図4とを比較すれば分かるように、利得減算回路471は、
図4に例示した利得減算回路271と同等の構成を有する。
【0113】
一方、利得加算回路472は、OR回路2723に対してCDR LOS信号に代えて信号レベル検出部46の出力が入力される点を除いて、
図4に例示した利得加算回路272と同等の構成を有する。
【0114】
以下、利得減算回路471及び利得加算回路472の動作について説明する。
【0115】
(利得減算回路471の動作例)
まず、MPU28のDAC#1にてEDFA43の利得を決定する。当該決定は、無信号状態において行なう。無信号状態では、トランジスタTR1がOFF状態となり、トランジスタTR2によってEDFA43の利得が決定する。次に、MPU28とデジタル可変抵抗R1とを用いて減衰開始レベルを決定する。これは、光中継器40の出力(送信)レベルを考慮して決定する。
【0116】
光信号が光中継器40に入力されると、モニタPD44の出力に応じてトランジスタTR1のベース電圧が増加し、あるレベルでトランジスタTR1がONになる。トランジスタTR1のONレベルを決定するのがデジタル可変抵抗R1である。トランジスタTR1がONになると、トランジスタTR2のコレクタからトランジスタTR1のコレクタへ電流Ibが流れる。
【0117】
電流Ibは、光中継器40への入力光信号レベル(別言すると、モニタPD44の出力レベル)が増加すると増加する。したがって、Ic=Ia−Ibと表される電流Icは、入力光信号レベルが増加すると減少する。このように、電流Icを制御することで、利得減算回路471は、光急変時にEDFA43の利得を下げるよう動作する。
【0118】
(利得加算回路472の動作例)
一方、利得加算回路472は、次のように動作する。
まず、MPU48のDAC#2によりEDFA43の利得加算量を決定する。トランジスタTR3がON状態となれば、トランジスタTR3のコレクタから電流Idが出力される。電流Idは、利得減算回路471のトランジスタTR2のコレクタから出力される電流Icに加算される。したがって、EDFA43に与えられる電流Iedfaが増加するので、EDFA43の利得が増加し、EDFA43の光過渡応答が加速される。
【0119】
トランジスタTR3のON/OFFタイミングは、信号レベル検出部46からの検出レベル情報と電流Iedfaの上限値情報とを基に決定する。例えば、信号レベル検出部46での検出タイミング(HレベルからLレベルへの遷移)によってOR回路2723の一方の入力端子に入力される信号がLレベルとなる。これに対し、OR回路2723の他方の入力端子に入力されるコンパレータ2722の出力は、電流モニタIC2721で検出される電流Iedfaの電流値がMPU48(DAC#3)から設定される目標値に到達するまでLレベルとなる。
【0120】
したがって、OR回路2723の出力がLレベルとなり、トランジスタTR3がON状態となる。これにより、トランジスタT3のコレクタから電流Idが出力され電流Iedfaが増加する。したがって、EDFA43の利得が増加し、EDFA43の光過渡応答が加速される。
【0121】
その後、電流モニタIC2721で検出される電流Iedfaの電流値がMPU48(DAC#3)から設定される目標値を超えると、コンパレータ2722の出力がHレベルとなる。したがって、OR回路2723の出力がHレベルとなり、トランジスタTR3がOFF状態となる。なお、電流Iedfaの目標値は、MPU48(DAC#3)によって調整される。これにより、光の立ち上げ時間が遅くなり、EDFA43の利得加算によって光サージがモニタPD45bに入力されることを防止できる。
【0122】
以上のようにしてトランジスタT3のON/OFFが制御されることで、利得加算回路472は、光急変時にEDFA43の利得を増加するよう動作する。
【0123】
なお、上述のように利得加算回路472の動作開始タイミングを規定する、信号レベル検出部46での信号レベル(PD電流情報)の検出方法の一例としては、以下の3つの方法が挙げられる。
【0124】
(1)モニタPD45bの出力電流値のピークレベルを検出する方法
(2)モニタPD45bの出力電流値のボトムレベルを検出する方法
(3)モニタPD45bの出力電流値の平均値レベルを検出する方法
【0125】
(1)の場合、
図11に例示するように、光中継器40は、信号レベル検出部46の一例としてピークレベル検出部46aを備える。(2)の場合、
図12に例示するように、光中継器40は、信号レベル検出部46の一例としてボトムレベル検出部46bを備える。(3)の場合、
図13に例示するように、光中継器40は、信号レベル検出部46の一例として平均値レベル検出部46cを備える。
【0126】
(第1実施形態の変形例)
図14は、第1実施形態(例えば
図4)の変形例に係る光受信器の構成例を示すブロック図である。
図14に例示する光受信器20は、
図4に例示した構成に比して、利得加算回路272において、トランジスタTR3のコレクタからSOA23に至る信号ラインに応答可変回路2724が設けられている点が異なる。
【0127】
応答可変回路2724は、例示的に、MPU28からの制御によって、SOA23に与えられる電流Isoaを増加させる電流Idの増加速度(以下「加速速度」ともいう。)を調整する。これにより、SOA23の利得を増加させる加速速度を調整することができる。
【0128】
そのため、応答可変回路2724は、例示的に、アナログスイッチ(A−SW)2725、抵抗R9、抵抗R10、コイルL1、及び、コイルL2を備える。
【0129】
アナログスイッチ2725は、例示的に、1つの入力端子と3つの出力端子A,B及びCを有し、MPU28からの制御信号に応じて、入力端子が3つの出力端子A,B及びCのいずれかに切り替え接続される。
【0130】
アナログスイッチ2725の入力端子は、トランジスタTR3のコレクタに接続されている。アナログスイッチ2725の出力端子Aは、抵抗R9、抵抗R10、コイルL1、及び、コイルL2を経由しないルート(以下「ルートA」と称する。)で抵抗R4に至る信号ラインに接続される。出力端子Bは、コイルL1を経由するルート(以下「ルートB」と称する。)で抵抗R4に至る信号ラインに接続される。出力端子Cは、コイルL2を経由するルート(以下「ルートC」と称する。)で抵抗R4に至る信号ラインに接続される。
【0131】
したがって、アナログスイッチ2725を出力端子A,B及びCのいずれかに切り替えることで、トランジスタTR3のコレクタから抵抗R4を介してSOA23に流れる電流Idのルートを上記3つのルートA〜Cのいずれかに切り替えることができる。
【0132】
ルートAが選択された場合、利得加算回路272は、第1実施形態(
図4)と同じ回路構成に相当するから、電流Idの加速速度は第1実施形態と変わらない。これに対し、ルートB又はCが選択された場合、電流Idは、コイルL1又はL2を経由するから、ルートAの場合よりも、加速速度が遅くなる。
【0133】
加速速度は、コイルの容量(インダクタンス)が大きいほど遅くなる。コイルL1及びL2のインダクタンスをそれぞれ便宜的にL1及びL2で表した場合、L1<L2であれば、加速速度はL1>L2となる。このように、コイルL1及びL2のインダクタンスによって加速速度が変化する。コイルL1及びL2のインダクタンスは、例示的に、必要な加速速度に応じて予め決めておく。なお、コイルL1に並列に抵抗R9が接続され、コイルL2に並列に抵抗R10が接続されている。これらの並列抵抗R9及びR10によって、コイルL1及びL2の共振(Q値)を抑制することができる。
【0134】
アナログスイッチ2725は、MPU28からの制御信号に応じて加速速度の異なる3つルートA〜Cのいずれかを選択することで、SOA23の利得増加速度を変えることができる。したがって、例えば
図15に示すように、ROSA25への入力光パワーの加速速度を矢印A〜Cで示すように可変することができる。なお、矢印A〜Cは、それぞれ、ルートA〜Cが選択されたときの応答特性を示している。
【0135】
以上のように、第1実施形態の変形例によれば、応答可変回路2724によって光急変時における光受信器20の光応答特性を可変にできるので、要求される特性に柔軟に対応することができる。なお、応答可変回路2724は、既述の第2実施形態に適用してもよいし、既述の第3実施形態に適用してもよい。