(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-91057(P2015-91057A)
(43)【公開日】2015年5月11日
(54)【発明の名称】誤差耐性化処理方法並びにその方法を採用した予測符号化/復号化装置及び色座標変換装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/65 20140101AFI20150414BHJP
H04N 19/50 20140101ALI20150414BHJP
H04N 11/04 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
H04N19/65
H04N19/50
H04N11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-230632(P2013-230632)
(22)【出願日】2013年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】398034168
【氏名又は名称】株式会社アクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100106426
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】客野 一樹
【テーマコード(参考)】
5C057
5C159
【Fターム(参考)】
5C057EA01
5C057EM01
5C057EM13
5C057EM16
5C159MA01
5C159MA21
5C159MC11
5C159ME01
5C159PP15
5C159PP16
5C159UA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2つのデータの差分をとり、その結果に剰余縮約を施した後に、所定のデータ変換処理を行う一連の処理において、その2つのデータの少なくとも一方に誤差が含まれている場合でも、適切に処理する。
【解決手段】入力データに対して値域削減処理を行うS1。削減の程度は入力信号に含まれ得る誤差の程度に依存する。次に、差分処理S2後の値域を求める。従来通りの剰余縮約の処理を行うS3。これによれば、差分前の各データと同じ情報量で表現できるようになる。次に、量子化を含む圧縮符号化等の所定の処理を行う。そして、得られたデータを格納及び、送信するS5。以降の処理については、これまでの処理の逆の処理を逆順で進める。この結果、元のデータが復元できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置における誤差耐性化処理方法であって、
入力される2つのデータに含まれ得る誤差に応じて、各データに対して値域削減処理を行い、
前記2つのデータの差分をとり、
その差分データに対して剰余縮約に基づく変換処理を行い、
得られた結果に所定のデータ変換処理を行うことを特徴とする誤差耐性化処理方法。
【請求項2】
前記値域削減処理は、値域の両端の、前記誤差に応じた所定幅の値に係るデータを削除することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の誤差耐性化処理方法。
【請求項3】
前記値域削減処理は、前記誤差に応じた、値域の所定幅を所定個に分割して、それらを前記値域から均等に間引くことにより行うことを特徴とする請求項1に記載の誤差耐性化処理方法。
【請求項4】
前記値域削減処理は、値域を、前記誤差に応じた所定幅だけ線形的に縮めることを特徴とする請求項1に記載の誤差耐性化処理方法。
【請求項5】
前記所定のデータ変換処理は、圧縮符号化処理であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の誤差耐性化処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の処理により得られた前記所定のデータ変換処理後のデータに対して、前記所定のデータ変換処理の逆変換処理を行い、
得られたデータに対して、前記剰余縮約に基づく前記変換処理の逆変換処理を行い、
得られたデータに対して前記差分処理の逆処理を行うことにより前記2つのデータを回復することを特徴とする誤差耐性化処理方法。
【請求項7】
入力した処理対象画素値に対して値域削減処理を行う値域削減部と、
その値域削減部の値域削減処理により値を変更された画素値から予測値を減算して差分値を出力する減算部と、
前記差分値に対して剰余縮約に基づく変換処理を行って出力する剰余縮約部と、
前記剰余縮約部による削減後のデータに対して量子化処理を行う量子化部と、
前記量子化部により量子化されたデータに対して可変長符号化を行う可変長符号化部と、
前記量子化部により量子化されたデータに対して、その量子化の逆の処理を行って出力する逆量子化部と、
前記逆量子化部から出力されたデータに対して、前記剰余縮約部とは逆の値域シフト処理を行い前記差分値を回復する逆剰余縮約部と、
前記逆剰余縮約部からの前記差分値と、自身が格納する過去の処理対象画素値とに基づいて前記予測値を出力する予測部と、
を備えることを特徴とする予測符号化装置。
【請求項8】
請求項7に記載の予測符号化装置における前記可変長符号化部から出力されたデータを入力して前記可変長符号化部における処理の逆処理である復号化を行い出力する可変長復号化部と、
前記可変長復号化部から出力されたデータに対して、前記量子化部における量子化と逆の処理を行って出力する逆量子化部と、
前記逆量子化部から出力されたデータに対して、前記剰余縮約部とは逆の値域シフト処理を行い前記差分値を回復する逆剰余縮約部と、
前記逆剰余縮約部からの前記差分値と、自身が格納する過去の処理対象画素値とに基づいて前記予測値を出力する予測部と、
前記差分値と前記予測値を加算する加算部と、
前記加算部から出力されたデータに対して、前記値域削減部における処理とは逆の拡張処理を行って元の画素値を回復する値域拡張部と、
を備えることを特徴とする予測復号化装置。
【請求項9】
入力した処理対象の複数の色画素値に対して、色座標変換後の処理で想定される誤差に応じて、値域削減処理を行う値域削減部と、
前記値域削減部から出力された複数の色画素値に対して、差分処理を含む色座標変換を行い、他の複数の色画素値を出力する座標変換部と、
前記座標変換部において、前記差分処理により得られた色画素値に対して剰余縮約に基づく変換処理を行って出力する剰余縮約部と、
を備えることを特徴とする色座標変換装置。
【請求項10】
前記請求項9記載の色座標変換装置における前記剰余縮約部から出力されたデータに対して、前記剰余縮約部とは逆の値域シフト処理を行い前記他の複数の色画素値を回復する逆剰余縮約部と、
前記逆剰余縮約部から出力されたデータに対して、前記座標変換部における座標変換とは逆の座標変換を行って、前記座標変換部による処理の前の複数の色画素値を回復する座標逆変換部と、
前記座標逆変換部から出力された前記複数の色画素値に対して、前記値域削減部における処理とは逆の拡張処理を行って元の複数の色画素値を回復する値域拡張部と、
を備えることを特徴とする色座標変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤差耐性化処理方法並びにその方法を採用した予測符号化/復号化装置及び色座標変換装置に関し、特に、2つのデータの差分をとり、その結果に剰余縮約を施した後に、所定のデータ変換処理を行う一連の処理を行う際の誤差耐性化処理方法並びにその方法を採用した予測符号化/復号化装置及び色座標変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像情報に対して行われる予測符号化においては、差分符号が広く利用されている。具体的には、例えば予測画素値をP、処理対象画素値をXとした場合、その差分であるY=X−Pを符号化することで圧縮率の向上を図ることができる。また、色座標変換処理においても同様に差分符号が利用されている。具体的には、各画素がRGBの情報で表現されている場合に、Y=G、U=R−G、V=B−Gのように変換することで圧縮率の向上を図っている。しかしながら、上記P,X,R,G,Bが例えば8ビットの情報である場合、差分Y,U,Vは9ビットの情報となり、情報量が増加してしまう。
【0003】
上記課題の対策として、可逆圧縮を圧縮手法として採用する場合には、modulo reduction(以下、「剰余縮約」ともいう)処理が広く用いられている。これは、差分値はそのまま表現するには9ビットが必要であるものの、例えば、個々の予測画素値Pに対しては、その差分の値域は必ず256までの値域幅に収まっており、従って、差分の値を適切にシフトしてやれば、必ず8ビットとして表現可能であることを利用したものである。一般的な処理としては、
図6に示すように、−255〜−129の値を1〜127に対応付け、128〜255の値を−128〜−1に対応付けることにより行う。これにより−128〜127の値、すなわち8ビットで表現できる値に縮約できる。
【0004】
具体例としては、
図7に示すように、例えばX−Pの値域は、−P〜255−Pとなり、表現するのに9ビットが必要となるが、この場合、128〜255−Pの値を−128〜−1−Pに、−P〜−129の値を256−P〜127に、対応付けることにより、値域が−128〜127となり8ビットで表現できるようになる。
【0005】
上述した技術は例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−261835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、剰余縮約の処理は、差分符号に誤差が含まれない処理、例えば上述のように後段で可逆圧縮を伴う予測符号化処理に採用可能なものである。つまり、非可逆圧縮のように誤差が加わる可能性がある処理にあっては採用できない。例えば、予測画素値Pが255であり、対象画素値が0の場合、差分値は−255となり、縮約の結果、+1を符号化することになるが、ここで差分値に誤差が加わり+0になると、復号後の画素値は255になってしまい、画質が大きく低下してしまう。従って、そのような誤差が加わる可能性がある処理には剰余縮約の処理は利用されていない。しかしながら、非可逆圧縮を採用した予測符号化のように差分符号に誤差が含まれる可能性がある処理においても剰余縮約の処理が採用できれば圧縮効率や伝送効率の向上が期待できる。
【0008】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、本発明の目的は、2つのデータの差分をとり、その結果に剰余縮約を施した後に、所定のデータ変換処理を行う一連の処理において、その2つのデータの少なくとも一方に誤差が含まれる場合でも、その一連の処理の逆の処理を行ったときに、前記2つのデータが有効に復元できるような誤差耐性化処理方法並びにその方法を採用した予測符号化/復号化装置及び色座標変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の誤差耐性化処理方法は、データ処理装置における誤差耐性化処理方法であって、入力される2つのデータに含まれ得る誤差に応じて、各データに対して値域削減処理を行い、前記2つのデータの差分をとり、その差分データに対して剰余縮約に基づく変換処理を行い、得られた結果に所定のデータ変換処理を行うことを要旨とする。ここで、前記所定のデータ変換処理は、圧縮符号化処理であることが典型的である。
【0010】
一方、前記値域削減処理は、値域の両端の、前記誤差に応じた所定幅の値に係るデータを削除することにより行うことができる。
【0011】
また、前記値域削減処理は、前記誤差に応じた、値域の所定幅を所定個に分割して、それらを前記値域から均等に間引くことにより行うことが好適である。
【0012】
また、前記値域削減処理は、値域を、前記誤差に応じた所定幅だけ線形的に縮めることが更に好適である。
【0013】
また、更に、上述の処理により得られた前記所定のデータ変換処理後のデータに対して、前記所定のデータ変換処理の逆変換処理を行い、得られたデータに対して、前記剰余縮約に基づく前記変換処理の逆変換処理を行い、得られたデータに対して前記差分処理の逆処理を行うことにより前記2つのデータを回復することを要旨とする。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明の予測符号化装置は、入力した処理対象画素値に対して値域削減処理を行う値域削減部と、その値域削減部の値域削減処理により値を変更された画素値から予測値を減算して差分値を出力する減算部と、前記差分値に対して剰余縮約に基づく変換処理を行って出力する剰余縮約部と、前記剰余縮約部による削減後のデータに対して量子化処理を行う量子化部と、前記量子化部により量子化されたデータに対して可変長符号化を行う可変長符号化部と、前記量子化部により量子化されたデータに対して、その量子化の逆の処理を行って出力する逆量子化部と、前記逆量子化部から出力されたデータに対して、前記剰余縮約部とは逆の値域シフト処理を行い前記差分値を回復する逆剰余縮約部と、前記逆剰余縮約部からの前記差分値と、自身が格納する過去の処理対象画素値とに基づいて前記予測値を出力する予測部と、を備えることを要旨とする。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の予測復号化装置は、上述の予測符号化装置における前記可変長符号化部から出力されたデータを入力して前記可変長符号化部における処理の逆処理である復号化を行い出力する可変長復号化部と、前記可変長復号化部から出力されたデータに対して、前記量子化部における量子化と逆の処理を行って出力する逆量子化部と、前記逆量子化部から出力されたデータに対して、前記剰余縮約部とは逆の値域シフト処理を行い前記差分値を回復する逆剰余縮約部と、前記逆剰余縮約部からの前記差分値と、自身が格納する過去の処理対象画素値とに基づいて前記予測値を出力する予測部と、前記差分値と前記予測値を加算する加算部と、前記加算部から出力されたデータに対して、前記値域削減部における処理とは逆の拡張処理を行って元の画素値を回復する値域拡張部と、を備えることを要旨とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の色座標変換装置は、入力した処理対象の複数の色画素値に対して、色座標変換後の処理で想定される誤差に応じて、値域削減処理を行う値域削減部と、前記値域削減部から出力された複数の色画素値に対して、差分処理を含む色座標変換を行い、他の複数の色画素値を出力する座標変換部と、前記座標変換部において、前記差分処理により得られた色画素値に対して剰余縮約に基づく変換処理を行って出力する剰余縮約部と、を備えることを要旨とする。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明の色座標変換装置は、上述の色座標変換装置における前記剰余縮約部から出力されたデータに対して、前記剰余縮約部とは逆の値域シフト処理を行い前記他の複数の色画素値を回復する逆剰余縮約部と、前記逆剰余縮約部から出力されたデータに対して、前記座標変換部における座標変換とは逆の座標変換を行って、前記座標変換部による処理の前の複数の色画素値を回復する座標逆変換部と、前記座標逆変換部から出力された前記複数の色画素値に対して、前記値域削減部における処理とは逆の拡張処理を行って元の複数の色画素値を回復する値域拡張部と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、2つのデータの差分をとり、その結果に剰余縮約を施した後に、所定のデータ変換処理を行う一連の処理において、その2つのデータの少なくとも一方に誤差が含まれる場合でも、その一連の処理の逆の処理を行ったときに、前記2つのデータが有効に復元できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の誤差耐性化処理方法の一実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態において、値域削減を行った後の剰余縮約の処理を説明するための図である。
【
図3】値域削減のしかたの具体例を説明するためのである。
【
図4】本発明の誤差耐性化処理方法を採用した予測符号化/復号化装置を示す図であり、同図(a)が予測符号化装置、同図(b)が予測復号化装置のブロック図である。
【
図5】本発明の誤差耐性化処理方法を採用した色座標変換装置を示す図であり、同図(a)が正変換装置、同図(b)が逆変換装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の誤差耐性化処理方法の一実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
図2は、本発明の一実施形態において、値域削減を行った後の剰余縮約の処理を説明するための図である。
図3は、値域削減のしかたの具体例を説明するためのである。なお、
図1に示した処理は、プロセッサで走るソフトウェアとしても、また、ハードウェア回路としても実現可能である。
【0021】
図2及び
図3を適宜参照しつつ、
図1に沿って、本発明の誤差耐性化処理方法の一実施形態の処理手順を説明する。まず、次段の差分処理に係る入力データに対して値域削減処理を行う(ステップS1)。例えば、差分処理に係る信号を予測符号化における処理対象画素値xと予測画素値pとし、それぞれ8ビットのデータとし、
図2に示すように、処理対象画素値xの値域を0〜255とする。そして、ステップS1における値域削減処理においては、その値域をm〜255−mとなるようにする。すなわち、2mだけ削減する。この削減の具体的方法としては、
図3(a)に示すように、単純に0〜m−1及び255−m+1〜255の値を有するものを削除してもよいし、同図(b)に示すように、所定間隔で均等に間引いてもよい。更に好適には、元の値域x=0〜255に対してx×((255−2m)/255)+mという処理を施して均等にm〜255−mに圧縮するようにしてもよい。また、所定の変換テーブルを用意しておき、それに基づいて対応する新たな値を決めることにより地域を変換削減するようにしてもよい。
【0022】
次に、差分処理後の値域を求める(ステップS2)。前述のように、予測画素値pが既知の場合には差分処理後の値域は、
図2に示すように、m−p〜255−m−pとなる。しかし、このままではやはり8ビットでは表現できず、9ビットの情報となってしまう。そこで、次に従来通りの剰余縮約の処理を行う(ステップS3)。これによれば、
図2に示すように、従来と同様、値域は−128〜127の範囲となり、8ビットで表現できることとなる。但し、本発明においては、上述のように値域削減処理を行っているので、
図2に示すように、結果として、−pの値を中央に挟んで2m(=M、以降、このMを「誤差余裕」と称す)の範囲の値は表れないことになる。このように−pの値を中央に挟んで2mの範囲の値をとらないようにすることにより、差分値に誤差が加わった場合でも適切に符号化が行え(量子化により不適切に飛んでしまう値が発生しない)、またその後の復号化により適切な値が復元できる。従って、mは具体的な装置等で発生し得る誤差を考慮しての値を設定する。
【0023】
なお、上述においては予測符号化処理について説明したが、色座標変換処理においても同様である。すなわち、色座標変換においては、例えばR,G,BのデータをY,U,Vに変換するものであるが、U=R−GやV=B−Gというように差分処理を含み、剰余縮約の処理を行うことが可能である。
【0024】
図1に戻り、次にステップS4において、所定の処理を行う。所定の処理としては、量子化を含む圧縮符号化等である。つまり非可逆圧縮符号化処理も許容する。そして、得られたデータをメモリ等の格納手段に格納したり、通信回線を介して送信したりする(ステップS5)。例えば復号化装置又は受信装置側の以降の処理については、ステップS1〜S4までの処理の逆の処理を逆順で進める(ステップS6〜S9)。この結果、元のデータが復元できる。
【0025】
次に、上述の本発明の誤差耐性化処理方法を適用した装置について説明する。
図4は、本発明の誤差耐性化処理方法を採用した予測符号化/復号化装置を示す図であり、同図(a)が予測符号化装置、同図(b)が予測復号化装置のブロック図である。
【0026】
まず、
図4(a)を参照し、同図に示した予測符号化装置は、値域削減部11、減算部12、剰余縮約部13、量子化部14、可変長符号化部15、逆量子化部16、逆剰余縮約部17、加算部18、及び予測部19を備えている。
【0027】
そこで、値域削減部11は、入力した処理対象画素値xに対して上述のような値域削減処理を行う。このとき削減する量としての誤差余裕M(=2m)は、この予測符号化装置にあっては、量子化部14における量子化係数をδとすると、予測画素値pに含まれる誤差は最大δと見積もれるので、M=2δと設定するのが好適である。
【0028】
減算器12は、値域削減部11により変更された値から予測部19が出力する予測画素値pを減算して、差分値dとして出力する。剰余縮約部13は、差分値dに対して前述のような剰余縮約に基づく変換処理を行って出力する。量子化部14は、剰余縮約部13から出力されたデータに対して量子化処理を行い、得られた結果は、可変長符号化部15により可変長符号化され、符号化データyとして図示しないメモリに格納されたり、通信回線を介して送信されたりする。なお、このメモリに格納されたり、通信回線を介して送信されたりする情報のなかには、値域削減部11での処理における誤差余裕の程度の情報が含まれている。但し、誤差余裕の程度を量子化係数に合わせて決めているのであれば、この情報は送る必要はない。
【0029】
一方、逆量子化部16は、量子化部14から出力された量子化データに対して、その量子化の逆の処理を行って出力する。逆剰余縮約部17は、逆量子化部16から出力されたデータに対して、剰余縮約部13とは逆の値域シフト処理を行い差分値dを回復する。加算部18は、回復した差分値dと予測値pを加算して過去の画素値として予測部19に供給する。予測部19は、過去の一連の画素値xを記憶しており、それらのデータと回復した差分値dとから予測値pを生成する。
【0030】
次に、
図4(b)を参照し、同図に示した復号化装置は、可変長復号化部20、逆量子化部16、逆剰余縮約部17、加算部18、予測部19、及び値域拡張部21を備えている。
【0031】
そこで、可変長復号化部20は、符号化されたデータを入力して可変長符号化部15における処理の逆処理である復号化を行い出力する。次段の逆量子化部16、逆剰余縮約部17、加算部18、及び予測部19における処理は、
図4(a)に示した符号化装置におけるそれらと同一である。そして、値域拡張部21は、加算部18から出力されたデータに対して、値域削減部11における処理とは逆の拡張処理を行って元の画素値xを回復する。
【0032】
以上のように
図4に示された予測符号化/復号化装置においては、予測値pに量子化に基づく誤差が含まれていても、剰余縮約を経て誤った値に大きく飛んでしまうようなことがない。従って、かかる装置により符号化と復号化を経ても、元のデータの復元に剰余縮約が悪影響を及ぼさない。
【0033】
次に、
図5は、本発明の誤差耐性化処理方法を採用した色座標変換装置を示す図であり、同図(a)が正変換装置、同図(b)が逆変換装置のブロック図である。ここでは、色画素値R,G,Bを、Y,U,Vに変換する装置として示している。
【0034】
まず、
図4(a)を参照し、同図に示した色座標変換を伴う正変換装置は、値域削減部31、座標変換部32、及び剰余縮約部33を備えている。
【0035】
そこで、値域削減部31は、入力した色画素値に対して前述のような値域削減処理を行う。このとき削減する量としての誤差余裕M(=2m)は、この色座標変換を含む正変換装置にあっては、色座標変換後に想定される処理の各成分の最大誤差をδとすると、発生し得る誤差は最大2δと見積もれる(差分対象の双方の値に誤差が含まれる可能性がある)ので、M=4δと設定するのが好適である。発生し得る誤差としては、圧縮歪によるものや、伝送経路のノイズによるものが想定される。
【0036】
座標変換部32は、入力する色画素値R,G,Bに基づく、Y=G、U=R−G、V=B−Gを算出することにより、変換後の画素値Y,U,Vを求める。剰余縮約部33は、差分処理により求められた色画素値U、Vについては、前述のような剰余縮約に基づく変換処理を行って出力する。その後は、圧縮符号化され、メモリに格納されたり、通信回線を介して送信されたりする。なお、このメモリに格納されたり、通信回線を介して送信されたりする情報のなかには、値域削減部31での処理における誤差余裕の程度の情報が含まれている。
【0037】
次に、
図5(b)を参照し、同図に示した色座標逆変換を伴う逆変換装置は、逆剰余縮約部41、座標逆変換部42、及び値域拡張部43を備えている。
【0038】
そこで、逆剰余縮約部41は、剰余縮約部33とは逆の値域シフト処理を行い色画素値Y,U,Vを回復する。座標逆変換部42は、座標変換部32における変換処理と逆の変換処理を行うことにより、色画素値R,G,Bを回復する。そして、値域拡張部43は、座標逆変換部42から出力された色画素値R,G,Bに対して、値域削減部31における処理とは逆の拡張処理を行って元の色画素値を回復する。
【0039】
以上のように
図5に示された色座標変換装置においては、色画素値に圧縮もしくはノイズに起因する誤差が含まれていても、剰余縮約を経て誤った値に大きく飛んでしまうようなことがない。従って、かかる装置により、元のデータの復元に剰余縮約が悪影響を及ぼさない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の誤差耐性化処理方法並びにその方法を採用した予測符号化/復号化装置及び色座標変換装置は、差分処理後に剰余縮約(modulo reduction)の処理を採用している処理方法及び装置に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
11,31 値域削減部
12 減算部
32 座標変換部
13,33 剰余縮約部
14 量子化部
15 可変長符号化部
20 可変長復号化部
16 逆量子化部
17,41 逆剰余縮約部
18 加算部
42 座標逆変換部
19 予測部
21,43 値域拡張部