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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-91214(P2015-91214A)
(43)【公開日】2015年5月11日
(54)【発明の名称】温調装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20150414BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20150414BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20150414BHJP
   H01L 35/28 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
   F25B21/02 G
   H05K7/20 S
   H01L35/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-231469(P2013-231469)
(22)【出願日】2013年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 忠夫
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA10
5E322AA11
5E322DA01
5E322DC01
5E322FA01
(57)【要約】
【課題】ペルチェ素子の性能劣化及び故障を発生させることなく、温度調節能力を向上させる。
【解決手段】温調装置10の駆動回路66は、ペルチェ素子12を所定の出力量で駆動させる。状態検出部70は、ペルチェ素子12の電気的な状態を検出する。制御回路58は、少なくともペルチェ素子12の電気的な状態に基づいて所望の出力量を算出し、当該所望の出力量でペルチェ素子12を駆動させるための制御量を決定して、当該制御量で駆動回路66を制御する。このような構成を採用することにより、温調装置10をパワーセーブさせて当該温調装置10の省エネ化を実現することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を用いて制御対象物の温度を調節する温調装置において、
前記ペルチェ素子を所定の出力量で駆動させる駆動回路と、
前記ペルチェ素子の電気的な状態を検出する状態検出部と、
少なくとも前記ペルチェ素子の電気的な状態に基づいて所望の出力量を算出し、当該所望の出力量で前記ペルチェ素子を駆動させるための制御量を決定して、当該制御量で前記駆動回路を制御する制御回路と、
を有することを特徴とする温調装置。
【請求項2】
請求項1記載の温調装置において、
前記駆動回路は、前記出力量としての直流電圧を前記ペルチェ素子に印加することにより該ペルチェ素子に直流電流を流す直流電源を備え、
前記ペルチェ素子の電気的な状態とは、前記直流電圧、前記直流電流及び前記ペルチェ素子の起電力であり、
前記状態検出部は、前記直流電圧を検出する電圧検出回路、前記直流電流を検出する電流検出回路、及び、前記起電力を検出する起電力検出回路であることを特徴とする温調装置。
【請求項3】
請求項2記載の温調装置において、
前記直流電源は、前記直流電圧の値を変更することにより前記直流電流の値を変化させることが可能な可変電源であり、
前記制御回路は、前記直流電源を制御することにより、前記直流電圧の値及び前記直流電流の値を、前記制御量に応じた所望の値に変更する可変制御を行うことを特徴とする温調装置。
【請求項4】
請求項3記載の温調装置において、
前記ペルチェ素子の動作に関わるパラメータを設定するパラメータ設定部をさらに有し、
前記制御回路は、前記パラメータ、前記電圧検出回路が検出した直流電圧、前記電流検出回路が検出した直流電流、及び、前記起電力検出回路が検出した起電力に基づいて、前記駆動回路を制御することを特徴とする温調装置。
【請求項5】
請求項4記載の温調装置において、
前記パラメータは、前記ペルチェ素子に印加できる直流電圧の最大値である最大電圧値、前記ペルチェ素子に流すことのできる直流電流の最大値である電流制限値、及び、前記起電力に応じた前記ペルチェ素子の吸熱側と放熱側との温度差の許容値である温度差制限値であり、
前記制御回路は、
前記起電力検出回路が検出した起電力を前記温度差に変換する温度差変換部を備え、
前記電圧検出回路が検出した直流電圧と前記最大電圧値との比較、前記電流検出回路が検出した直流電流と前記電流制限値との比較、及び、前記温度差変換部で変換された温度差と前記温度差制限値との比較に基づいて、前記駆動回路を制御することを特徴とする温調装置。
【請求項6】
請求項5記載の温調装置において、
前記制御回路は、
前記直流電源から前記ペルチェ素子に直流電圧を印加している場合に、前記電流検出回路で検出された直流電流が前記電流制限値を超えると、前記直流電源に対する制御を、前記直流電圧の値を変更可能な可変電圧制御から、前記直流電流を前記電流制限値に維持しつつ前記直流電圧の値を所定値に保持する定電流動作に切り替え、
一方で、前記電流検出回路で検出された直流電流が前記電流制限値以下になれば、前記定電流動作から前記可変電圧制御に戻すことを特徴とする温調装置。
【請求項7】
請求項5記載の温調装置において、
前記制御回路は、前記温度差変換部で変換された温度差が前記温度差制限値を超えた場合には、前記温度差が前記温度差制限値以下となるように前記直流電源を制御し、前記直流電圧の値を低下させることを特徴とする温調装置。
【請求項8】
請求項7記載の温調装置において、
前記温度差が前記温度差制限値以下となるように前記直流電源を制御しているにも関わらず、前記温度差が上昇し続けている場合、前記制御回路は、前記直流電源から前記ペルチェ素子への前記直流電圧の印加を停止させることを特徴とする温調装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記駆動回路は、前記直流電源から出力された前記直流電圧の極性を切り替え、極性が切り替わった前記直流電圧を前記ペルチェ素子に印加させる極性反転回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記極性反転回路によって前記ペルチェ素子に印加される前記直流電圧の極性が切り替わった際に、前記直流電流を一定値に維持する定電流制御を行うと共に、前記直流電流の時定数が長くなるように前記直流電源を制御することを特徴とする温調装置。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記制御対象物の温度を検出する温度センサと、前記制御対象物の温度を所望の温度に調節するための操作量を前記制御回路に出力する温度調節器とをさらに有し、
前記パラメータ設定部は、前記制御対象物に対する前記ペルチェ素子の温度調節能力を制限するための温度調節能力制限値を設定し、
前記制御回路は、前記操作量、前記パラメータ、前記直流電圧、前記直流電流及び前記起電力に基づいて前記駆動回路を制御し、さらに、前記温度調節能力制限値に基づき前記直流電源を制御することで、前記直流電圧及び前記直流電流を制限することを特徴とする温調装置。
【請求項11】
請求項10記載の温調装置において、
前記制御回路は、前記温度調節能力制限値に基づいて、前記操作量に対する前記直流電圧の出力範囲を制限することを特徴とする温調装置。
【請求項12】
請求項10記載の温調装置において、
前記制御回路は、前記制御対象物の温度が前記温度調節能力制限値に応じた所定温度に到達するまでは、前記直流電圧及び前記直流電流を制限し、一方で、前記制御対象物の温度が前記所定温度に到達すると、前記直流電圧及び前記直流電流に対する制限を解除することを特徴とする温調装置。
【請求項13】
請求項4〜12のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記制御回路は、前記電流検出回路が検出した直流電流の値が、前記起電力に応じた前記ペルチェ素子の吸熱側と放熱側との温度差に基づく直流電圧と直流電流との特性から外れている場合には、前記ペルチェ素子が故障していると判定する故障検出部をさらに備えることを特徴とする温調装置。
【請求項14】
請求項2〜13のいずれか1項に記載の温調装置において、
前記制御回路は、前記直流電源から前記ペルチェ素子への前記直流電圧の印加を一時停止させた時間帯に前記起電力検出回路に前記起電力の検出を行わせ、前記起電力の検出が完了すれば前記直流電源から前記ペルチェ素子への前記直流電圧の印加を再開し、
前記直流電圧の印加と前記起電力の検出とが交互に行われる場合に、前記起電力の検出時間は、前記直流電圧の印加時間よりも短いことを特徴とする温調装置。
【請求項15】
請求項14記載の温調装置において、
前記起電力検出回路は、ダイオードブリッジ回路であることを特徴とする温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子を用いて制御対象物の温度を調節する温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ペルチェ素子を用いて制御対象物の温度を調節する温調装置が開示されている。この温調装置では、温度センサが制御対象物の温度を検出し、温度調節器が当該温度を所望の温度に調節するための操作量を出力し、駆動回路が操作量に比例(依存)した出力量でペルチェ素子を駆動させる。
【0003】
この場合、操作量の絶対値が低い領域では、同じ電圧値のパルス電圧をペルチェ素子に繰り返し印加する時間比例制御(PWM制御)が行われ、一方で、操作量の絶対値が高い領域では、大きさを調整可能な直流電圧を連続的にペルチェ素子に印加する可変電圧制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3660963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1の技術では、制御対象物の温度を温度調節器にフィードバックさせることにより、該制御対象物の温度が所望の温度となるように制御している。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ペルチェ素子の電気的な状態(ペルチェ素子に印加される直流電圧及び直流電流、ペルチェ素子の加熱側と吸熱側との間の起電力)を考慮した温度制御が行われていない。この結果、ペルチェ素子の最大定格値(直流電圧、直流電流及び起電力の許容値)を超えて温度制御を行えば、当該ペルチェ素子の性能が劣化し、又は、故障するおそれがある。
【0007】
そこで、従来は、ペルチェ素子のメーカが推奨する最大定格値よりも低く設定された定格値に基づき温調装置を設計していた。このように、最大定格値まで使用されることがないため、制御対象物に対する温調装置の温度調節能力(制御対象物に対する加熱能力及び冷却能力)を最大限に引き出すことが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解消するためになされたものであり、ペルチェ素子の性能劣化及び故障を発生させることなく、温度調節能力を向上させることが可能となる温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ペルチェ素子を用いて制御対象物の温度を調節する温調装置であって、駆動回路、状態検出部及び制御回路を有する。前記駆動回路は、前記ペルチェ素子を所定の出力量で駆動させる。前記状態検出部は、前記ペルチェ素子の電気的な状態を検出する。前記制御回路は、少なくとも前記ペルチェ素子の電気的な状態に基づいて所望の出力量を算出し、当該所望の出力量で前記ペルチェ素子を駆動させるための制御量を決定して、当該制御量で前記駆動回路を制御する。
【0010】
このように、前記制御回路は、前記ペルチェ素子の電気的な状態を取り込んで前記所望の出力量を算出し、算出した前記所望の出力量に基づく前記制御量で前記駆動回路を制御するフィードバック制御を採用している。そのため、前記ペルチェ素子の電気的な状態を取り込まない開ループ制御を採用している特許文献1の技術と比較して、本発明では、前記ペルチェ素子の性能劣化及び故障の発生を回避することができる。この結果、本発明では、前記ペルチェ素子の最大定格値まで前記温調装置を動作させることが可能となるため、当該温調装置の温度調節能力(前記制御対象物に対する加熱能力及び冷却能力)を向上させることができる。
【0011】
ここで、前記駆動回路は、前記出力量としての直流電圧を前記ペルチェ素子に印加することにより該ペルチェ素子に直流電流を流す直流電源を備える。この場合、前記ペルチェ素子の電気的な状態とは、前記直流電圧、前記直流電流及び前記ペルチェ素子の起電力をいう。また、前記状態検出部は、前記直流電圧を検出する電圧検出回路、前記直流電流を検出する電流検出回路、及び、前記起電力を検出する起電力検出回路である。
【0012】
これにより、前記制御回路は、検出された前記直流電圧、前記直流電流及び前記起電力を用いて前記駆動回路に対する制御量を決定し、当該制御量で前記駆動回路を制御するので、前記直流電源から前記ペルチェ素子に適切な直流電圧及び直流電流を供給することが可能となる。
【0013】
この場合、前記直流電源が、前記直流電圧の値を変更することにより前記直流電流の値を変化させることが可能な可変電源であれば、前記制御回路は、前記直流電源を制御することにより、前記直流電圧の値及び前記直流電流の値を、前記制御量に応じた所望の値に変更する可変制御を行うことができる。これにより、前記制御量に応じて前記直流電圧及び前記直流電流を連続的に変化させることが可能になる。また、PWM制御のようなオンオフの繰り返しに起因したピーク電流の発生を阻止することができる。
【0014】
また、前記温調装置は、前記ペルチェ素子の動作に関わるパラメータを設定するパラメータ設定部をさらに有する。この場合、前記制御回路は、前記パラメータ、前記電圧検出回路が検出した直流電圧、前記電流検出回路が検出した直流電流、及び、前記起電力検出回路が検出した起電力に基づいて、前記駆動回路を制御する。これにより、前記ペルチェ素子の駆動を最適化することが可能となる。
【0015】
ここで、前記パラメータは、前記ペルチェ素子に印加できる直流電圧の最大値である最大電圧値、前記ペルチェ素子に流すことのできる直流電流の最大値である電流制限値、及び、前記起電力に応じた前記ペルチェ素子の吸熱側と放熱側との温度差の許容値である温度差制限値である。
【0016】
また、前記制御回路は、前記起電力検出回路が検出した起電力を前記温度差に変換する温度差変換部を備える。この場合、前記制御回路は、前記電圧検出回路が検出した直流電圧と前記最大電圧値との比較、前記電流検出回路が検出した直流電流と前記電流制限値との比較、及び、前記温度差変換部で変換された温度差と前記温度差制限値との比較に基づいて、前記駆動回路を制御する。
【0017】
前記直流電圧が前記最大電圧値を超え、前記直流電流が前記電流制限値を超え、又は、前記温度差が前記温度差制限値を超えれば、前記ペルチェ素子の性能が劣化し、又は、該ペルチェ素子が故障するおそれがある。そこで、前記最大電圧値、前記電流制限値及び前記温度差制限値との比較に基づいて、前記駆動回路を制御することにより、前記ペルチェ素子の性能劣化や故障を惹起させることなく、該ペルチェ素子の最大定格値(前記最大電圧値、前記電流制限値、前記温度差制限値)まで使用することが可能となる。この結果、前記温調装置の加熱能力及び冷却能力を最大限に引き出すことができると共に、前記制御対象物の温度管理(監視)を適切に行うことが可能となる。
【0018】
具体的に、前記制御回路は、前記直流電源から前記ペルチェ素子に直流電圧を印加している場合に、前記電流検出回路で検出された直流電流が前記電流制限値を超えると、前記直流電源に対する制御を、前記直流電圧の値を変更可能な可変電圧制御から、前記直流電流を前記電流制限値に維持しつつ前記直流電圧の値を所定値に保持する定電流動作に切り替える。一方で、前記制御回路は、前記電流検出回路で検出された直流電流が前記電流制限値以下になれば、前記定電流動作から前記可変電圧制御に戻す。
【0019】
前記ペルチェ素子は、吸熱側と放熱側との温度差に伴って、該ペルチェ素子の抵抗値や吸熱量(起電力)が変化する特性を有する。そのため、同じ電圧を前記ペルチェ素子に印加しても、該ペルチェ素子の温度状態により、前記直流電流が最大定格値(前記電流制限値)を超える場合がある。従って、上記のように、前記電流制限値を超える直流電流が流れた場合に、前記定電流動作に切り替わることにより、前記ペルチェ素子の性能劣化や故障を効果的に回避することができる。また、前記直流電流が前記電流制限値以下にまで低下したときに、前記定電流動作から前記可変電圧制御に戻ることで、本来の制御に速やかに復帰することができる。
【0020】
また、前記制御回路は、前記温度差変換部で変換された温度差が前記温度差制限値を超えた場合には、前記温度差が前記温度差制限値以下となるように前記直流電源を制御し、前記直流電圧の値を低下させればよい。これにより、前記温度差制限値を超える温度上昇に起因した前記ペルチェ素子の性能劣化又は故障の発生を効果的に回避することが可能となる。
【0021】
但し、前記温度差が前記温度差制限値以下となるように前記直流電源を制御しているにも関わらず、前記温度差が上昇し続けている場合には、前記制御回路は、前記直流電源から前記ペルチェ素子への前記直流電圧の印加を停止させればよい。従来、前記ペルチェ素子が高温状態となった場合、サーモスタット等による検出で前記直流電圧の印加を停止させていたが、本発明では、前記温度差を監視しているので、前記ペルチェ素子が異常な状態になる前に前記直流電圧の印加を停止させることができる。
【0022】
また、前記駆動回路は、前記直流電源から出力された前記直流電圧の極性を切り替え、極性を切り替えた前記直流電圧を前記ペルチェ素子に印加させる極性反転回路をさらに備えてもよい。この場合、前記制御回路は、前記極性反転回路によって前記ペルチェ素子に印加される前記直流電圧の極性が切り替わった際に、前記直流電流を一定値に維持する定電流制御を行うと共に、前記直流電流の時定数が長くなるように前記直流電源を制御すればよい。これにより、極性を切り替える度に過電流が発生して前記ペルチェ素子の性能劣化や故障が発生することを抑えることができる。
【0023】
また、前記温調装置は、前記制御対象物の温度を検出する温度センサと、前記制御対象物の温度を所望の温度に調節するための操作量を前記制御回路に出力する温度調節器とをさらに有してもよい。この場合、前記パラメータ設定部は、前記制御対象物に対する前記ペルチェ素子の温度調節能力を制限するための温度調節能力制限値を設定する。前記制御回路は、前記操作量、前記パラメータ、前記直流電圧、前記直流電流及び前記起電力に基づいて前記駆動回路を制御し、さらに、前記温度調節能力制限値に基づき前記直流電源を制御することで、前記直流電圧及び前記直流電流を制限する。
【0024】
前述のように、前記直流電源は、前記ペルチェ素子に印加する直流電圧の大きさを任意に設定して、該ペルチェ素子に流れる電流を変化させることができる可変電源である。そのため、前記直流電圧及び前記直流電流を調整することにより、前記ペルチェ素子の加熱能力及び冷却能力を自由に変化させることが可能となる。
【0025】
そこで、上述のように、前記温度調節能力制限値を設定し、設定した前記温度調節能力制限値に基づいて前記直流電圧及び前記直流電流を制限するパワーセーブを行うことにより、前記温調装置の省電力化(省エネ化)を実現することができる。
【0026】
この場合、前記制御回路は、前記温度調節能力制限値に基づいて、前記操作量に対する前記直流電圧の出力範囲を制限すれば、前記温調装置の最大消費電力を下げることができる。
【0027】
また、前記制御回路は、前記制御対象物の温度が前記温度調節能力制限値に応じた所定温度に到達するまでは、前記直流電圧及び前記直流電流を制限し、一方で、前記制御対象物の温度が前記所定温度に到達すると、前記直流電圧及び前記直流電流に対する制限を解除してもよい。
【0028】
これにより、前記パラメータ設定部による設定温度の変更時や前記温調装置の始動時等、前記ペルチェ素子の現在温度と設定温度とが離れている場合には、温度調節能力を制限しつつ、前記ペルチェ素子の温度を前記設定温度まで時間をかけて変化させ、該ペルチェ素子の温度が前記設定温度に到達して安定したら、前記温度調節能力に対する制限を解除することで、温度昇降時の省電力化を実現することができる。
【0029】
また、前記制御回路は、前記電流検出回路が検出した直流電流の値が、前記起電力に応じた前記ペルチェ素子の吸熱側と放熱側との温度差に基づく直流電圧と直流電流との特性から外れている場合には、前記ペルチェ素子が故障していると判定する故障検出部をさらに備えてもよい。これにより、前記ペルチェ素子の故障を速やか且つ確実に検出することができる。このように、前記制御回路に前記故障検出部が備わることにより、前記電圧検出回路が検出した直流電圧から、前記直流電源の出力(直流電圧)が異常であるか否か(前記直流電源が故障しているか否か)を前記故障検出部で判定させることも可能となる。さらに、前記故障検出部は、前記電圧検出回路が検出した直流電圧と、前記起電力検出回路が検出した起電力とを比較して、前記極性反転回路が故障しているか否かを判定することも可能となる。
【0030】
さらに、前記起電力は、下記のように検出すればよい。すなわち、前記制御回路は、前記直流電源から前記ペルチェ素子への前記直流電圧の印加を一時停止させた時間帯に前記起電力検出回路に前記起電力の検出を行わせ、前記起電力の検出が完了すれば前記直流電源から前記ペルチェ素子への前記直流電圧の印加を再開する。そして、前記直流電圧の印加と前記起電力の検出とが交互に行われる場合に、前記起電力の検出時間を前記直流電圧の印加時間よりも短く設定する。
【0031】
これにより、前記ペルチェ素子の吸熱側及び放熱側の熱の影響と、前記制御対象物の温度変化の影響とを抑えつつ、正確な起電力を測定することが可能となる。
【0032】
また、前記起電力検出回路がダイオードブリッジ回路であれば、前記ペルチェ素子の起電力の向き(極性)が変化した場合でも、どちらの極性の起電力を測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、制御回路は、ペルチェ素子の電気的な状態を取り込んで所望の出力量を算出し、算出した前記所望の出力量に基づく制御量で駆動回路を制御するフィードバック制御を採用している。そのため、前記ペルチェ素子の電気的な状態を取り込まない開ループ制御を採用している特許文献1の技術と比較して、本発明では、前記ペルチェ素子の性能劣化及び故障の発生を回避することができる。この結果、本発明では、前記ペルチェ素子の最大定格値まで温調装置を動作させることが可能となるため、当該温調装置の温度調節能力(制御対象物に対する加熱能力及び冷却能力)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係る温調装置のブロック図である。
図2図1の温調装置による循環液の加熱又は冷却を示す構成図である。
図3図1の起電力検出回路による起電力の測定を図示した回路図である。
図4】印加電圧の印加時間と起電力の測定時間との関係を示すタイミングチャートである。
図5図1のペルチェ素子による吸熱及び放熱の原理を示す回路図である。
図6】複数のペルチェ素子の接続状態を示す回路図である。
図7】特許文献1でのペルチェ素子に対する制御を図示したブロック図である。
図8図1の温調装置でのペルチェ素子に対する制御を図示したブロック図である。
図9】操作量と出力量との関係を示すグラフである。
図10】PWM制御により生成された印加電圧を示すタイミングチャートである。
図11】印加電圧に対する制限を示すグラフである。
図12】印加電圧に対する制限を示すタイミングチャートである。
図13】従来の極性切り替え時の操作量、印加電圧及び印加電流の時間変化を示すタイミングチャートである。
図14】電流制御方式による極性切り替え時の操作量、印加電圧及び印加電流の時間変化を示すタイミングチャートである。
図15】本実施形態での極性切り替え時の操作量、印加電圧及び印加電流の時間変化を示すタイミングチャートである。
図16図1の温調装置の加熱能力及び冷却能力と消費電力との関係を示すグラフである。
図17】PWM制御方式と本実施形態との違いを示すタイミングチャートである。
図18】パワーセーブの一例を示すグラフである。
図19】パワーセーブの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る温調装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0036】
[本実施形態の構成]
本実施形態に係る温調装置10は、図1及び図2に示すように、ペルチェ素子12及び熱交換器14a、14bを含む温調ユニット16により、制御対象物である循環液18を加熱又は冷却することで、該循環液18を所望の温度に調節するための装置である。
【0037】
図2では、一例として、半導体ウェーハに対するプロセス処理を行う半導体製造装置等の負荷20に発生する熱を、循環液18で冷却する場合を図示している。すなわち、温調装置10と負荷20との間には、負荷20の熱を吸熱した循環液18を温調装置10に入力する入力路22と、温調装置10内で冷却された循環液18を負荷20に再度供給する出力路24とが接続されている。なお、負荷20内部の温度は、温度センサ26で検出される。
【0038】
温調装置10の内部には、負荷20から入力路22を介して温調装置10に供給された循環液18を一時的に貯留するタンク28と、タンク28に貯留された循環液18を温調ユニット16に送出するポンプ30とが設けられている。温調ユニット16は、プレート式等の2つの熱交換器14a、14bでペルチェ素子12を挟み込むことにより構成され、一方の熱交換器14aに循環液18が供給される。供給される循環液18の温度は、温度センサ32で検出される。
【0039】
温調ユニット16では、ペルチェ素子12が駆動することで、例えば、一方の熱交換器14aが吸熱側(又は加熱側)、他方の熱交換器14bが放熱側(又は冷却側)として機能し、熱交換器14aに供給された循環液18の熱は、熱交換器14aからペルチェ素子12を介して他方の熱交換器14bに伝達される。熱交換器14bには、空冷式又は水冷式の放熱機構34が接続されており、熱交換器14bに伝達された熱は、放熱機構34によって放熱される。
【0040】
このようにして熱交換器14aで冷却された循環液18は、出力路24を介して負荷20に供給され、該負荷20内部の冷却に再度使用される。なお、冷却された循環液18の温度は、出力路24に設けられた温度センサ36で検出される。
【0041】
従って、図1及び図2の構成では、温調装置10と負荷20との間で循環液18を循環させ、負荷20内部に発生した熱を吸熱した循環液18を温調装置10で冷却し、負荷20に再度供給することにより、負荷20内部を所定温度に維持させる(恒温状態にする)。
【0042】
次に、ペルチェ素子12を制御するための温調装置10の内部構成について説明する。
【0043】
温調装置10は、上述した構成要素に加え、交流電源40、遮断回路42、AC−DC電源44(以下、コンバータ44ともいう。)、印加電流検出回路46、印加電圧検出回路48、極性反転回路50、起電力検出回路52、温度調節器54、パラメータ設定部56、制御回路58、及び、サーモスタット60をさらに有する。
【0044】
交流電源40は、所定の振幅を有する交流電圧を、遮断回路42を介してコンバータ44に供給する。遮断回路42は、温調装置10内部に異常が発生したときに、交流電源40とコンバータ44との間を遮断する。コンバータ44は、温調装置10のCPUとしての制御回路58からの制御信号に基づいて、交流電源40から供給される交流電圧を直流電圧V(以下、印加電圧Vともいう。)に変換して出力する。
【0045】
この場合、コンバータ44が制御信号に基づいて印加電圧Vの値を変化させることができる可変電源62であれば、当該制御信号に応じた電圧値の印加電圧Vがコンバータ44から出力される。
【0046】
一方、コンバータ44が所定電圧値の直流電圧を出力する固定電源であれば、温調装置10は、コンバータ44の出力側に接続される電圧可変回路64をさらに有してもよい。電圧可変回路64は、コンバータ44から出力された直流電圧を、制御回路58からの制御信号に応じた電圧値の直流電圧に変換し、変換後の直流電圧を印加電圧Vとして出力する。従って、コンバータ44が固定電源である場合には、コンバータ44及び電圧可変回路64によって可変電源62が構成される。
【0047】
印加電流検出回路46は、可変電源62から出力された印加電圧Vが、印加電圧検出回路48及び極性反転回路50を介してペルチェ素子12に印加されたときに、該ペルチェ素子12に流れる直流電流I(以下、印加電流Iともいう。)を検出し、検出結果を制御回路58に出力する。また、印加電圧検出回路48は、可変電源62から極性反転回路50を介してペルチェ素子12に印加される印加電圧Vを検出し、検出結果を制御回路58に出力する。
【0048】
極性反転回路50は、図3に示すように、直列接続された2つのスイッチ50a、50bと、直列接続された2つのスイッチ50c、50dとを並列接続し、2つのスイッチ50a、50b間を接続する配線と、2つのスイッチ50c、50d間を接続する配線との間にペルチェ素子12が接続されたブリッジ回路である。この場合、極性反転回路50は、制御回路58からの制御信号に基づき各スイッチ50a〜50dがオンオフすることにより、可変電源62から供給される印加電圧Vの極性を切り替えてペルチェ素子12に出力する。
【0049】
従って、前述した交流電源40と、遮断回路42と、可変電源62(コンバータ44又はコンバータ44及び電圧可変回路64)と、極性反転回路50とによって、ペルチェ素子12に印加電圧Vを印加することにより印加電流Iを流すための駆動回路66が構成される。
【0050】
また、極性反転回路50は、制御回路58からの制御信号に基づいて、全てのスイッチ50a〜50dをオフにすることで、可変電源62からペルチェ素子12への印加電圧Vの供給を停止させることができる。さらに、極性反転回路50は、制御回路58からの制御信号に基づいて、2つのスイッチ50a、50d又は2つのスイッチ50b、50cを繰り返しオンオフすることで、可変電源62から供給される、時間経過に対して連続的な直流電圧に対するPWM制御を行うことも可能である。この場合、極性反転回路50は、PWM制御によって生成されたパルス電圧を印加電圧Vとしてペルチェ素子12に印加する。
【0051】
なお、図3では、2つのスイッチ50a、50dをオンにする一方で、他の2つのスイッチ50b、50cをオフにすることにより、ペルチェ素子12の一方の端子12aが可変電源62のプラス側に接続され、他方の端子12bが可変電源62のマイナス側に接続された場合を図示している。また、図3において、可変電源62のプラス側と極性反転回路50との間に接続された抵抗器68は、印加電流検出回路46及び印加電圧検出回路48の抵抗分を示している。
【0052】
起電力検出回路52は、極性反転回路50とペルチェ素子12の各端子12a、12bとの間を接続する2つの配線に接続された4つのダイオード52a〜52dから構成されるダイオードブリッジ回路である。この場合、直列接続された2つのダイオード52a、52bと、直列接続された2つのダイオード52c、52dとが、極性反転回路50とペルチェ素子12の各端子12a、12bとの間を接続する2つの配線に対して並列に接続されている。また、制御回路58は、2つのダイオード52a、52b間を接続する配線と、2つのダイオード52c、52d間を接続する配線とに接続されている。
【0053】
そして、起電力検出回路52は、極性反転回路50を構成する全てのスイッチ50a〜50dがオフとなって、可変電源62とペルチェ素子12との間が遮断されているときに、ペルチェ素子12の各端子12a、12b間に発生する電圧、すなわち、ペルチェ素子12の起電力Ve(熱起電力)を検出し、検出結果を制御回路58に出力する。
【0054】
具体的には、図4に示すように、制御回路58から極性反転回路50への制御信号の供給によって、周期T1の間隔で全てのスイッチ50a〜50dがオフとなる時間t1(ペルチェ素子12への印加電圧Vの供給が停止する時間帯)が設けられている場合に、起電力検出回路52は、当該時間t1内に起電力Veを検出する。この場合、周期T1内において、ペルチェ素子12に印加電圧Vを印加する時間(T1−t1)と、起電力Veを検出する時間t1との間では、(T1−t1)≫t1の関係にあることが好ましい。これにより、全てのスイッチ50a〜50dをオフにしてペルチェ素子12の駆動を一時停止し、起電力検出回路52による起電力Veの検出が完了した後には、ペルチェ素子12の駆動を直ちに再開させることができる。
【0055】
そして、印加電流検出回路46、印加電圧検出回路48及び起電力検出回路52によって、ペルチェ素子12の電気的な状態である印加電流I、印加電圧V、起電力Veを検出する状態検出部70が構成される。
【0056】
ペルチェ素子12は、図5に示すように、P型半導体72とN型半導体74とを金属板76を介して交互且つ直列に接続したものである。この場合、例えば、可変電源62のプラス側を右側のN型半導体74に接続すると共に、マイナス側を左側のP型半導体72に接続すれば、ペルチェ素子12の熱交換器14a側が吸熱側となって、循環液18からの熱を吸熱すると共に、熱交換器14b側が放熱側となって、吸熱した熱を熱交換器14bに放熱することができる。なお、ペルチェ素子12自体の構成及び動作は公知であるため、その詳細な説明については省略する。
【0057】
なお、実際の温調ユニット16では、複数のペルチェ素子12が接続されて用いられる。例えば、図6に示すように、A列に4つのペルチェ素子12を直列に接続すると共に、B列に4つのペルチェ素子12を直列に接続し、A列の各ペルチェ素子12と、B列の各ペルチェ素子12とを並列に接続して使用される。
【0058】
温度調節器54は、温度センサ36が検出した(冷却後の)循環液18の温度に基づいて、制御対象物である循環液18の温度を所望の温度に制御するための操作量を生成し、生成した操作量を制御回路58に出力する。
【0059】
パラメータ設定部56は、温調装置10の表面に設けられた操作ボタン等の入力手段であり、ユーザが操作することによって、各種の情報(パラメータ)を入力し、制御回路58のメモリ78に記憶させることができる。
【0060】
この場合、パラメータ設定部56で設定されるパラメータは、ペルチェ素子12の動作に関わるパラメータであり、例えば、下記のようなものがある。
【0061】
(1)ペルチェ素子12に印加できる印加電圧Vの最大値である最大電圧値Vtmax、Vcmax。なお、Vtmaxは、ペルチェ素子12の熱交換器14a側が加熱側又は吸熱側であるときの最大電圧値、Vcmaxは、ペルチェ素子12の熱交換器14a側が冷却側又は放熱側であるときの最大電圧値である。
【0062】
(2)ペルチェ素子12に流すことのできる印加電流Iの最大値である電流制限値Itlim、Iclim。なお、Itlimは、ペルチェ素子12の熱交換器14a側が加熱側又は吸熱側であるときの電流制限値、Iclimは、ペルチェ素子12の熱交換器14a側が冷却側又は放熱側であるときの電流制限値。
【0063】
(3)起電力Veに応じたペルチェ素子12の吸熱側の温度(吸熱側温度Th)と放熱側の温度(放熱側温度Tc)との温度差ΔT(ΔT=Th−Tc)の許容値である温度差制限値ΔTlim。
【0064】
(4)循環液18に対するペルチェ素子12の温度調節能力(加熱能力、冷却能力)を制限するためのパワーセーブ値(温度調節能力制限値)。
【0065】
なお、これらのパラメータは一例であり、ユーザは、パラメータ設定部56を操作して、上記のパラメータ以外のパラメータを適宜設定できることは勿論である。
【0066】
制御回路58は、メモリ78に加え、温度差変換部80及び故障判定部(故障検出部)82をさらに備えている。そして、制御回路58は、温度調節器54から入力された操作量、メモリ78に記憶された各種のパラメータ、印加電流検出回路46が検出した印加電流I、印加電圧検出回路48が検出した印加電圧V、及び、起電力検出回路52が検出した起電力Veに基づいて、遮断回路42、可変電源62及び極性反転回路50を制御する。
【0067】
具体的に、温度差変換部80は、起電力検出回路52が検出した起電力Veを温度差ΔTに変換する。そして、制御回路58は、可変電源62からペルチェ素子12に印加電圧Vを印加している場合に、印加電流検出回路46で検出された印加電流Iの絶対値が電流制限値Itlim、Iclimの絶対値を超えると(|I|>|Itlim|又は|I|>|Iclim|)、可変電源62に供給する制御信号を切り替える。すなわち、印加電圧Vの値を可変する可変電圧制御の信号から、印加電流Iを電流制限値Itlim又はIclimに維持しつつ印加電圧Vを所定電圧値(電圧制限値Vtlim、Vclim)に保持する定電流動作の信号に切り替える。また、制御回路58は、印加電流Iの絶対値が電流制限値Itlim、Iclimの絶対値以下になれば(|I|≦|Itlim|又は|I|≦|Iclim|)、定電流動作から可変電圧制御に戻し、本来の可変電圧制御の制御信号を可変電源62に供給する。
【0068】
また、制御回路58は、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlimを超えた場合には(ΔT>ΔTlim)、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlim以下となるように可変電源62を制御することで、印加電圧Vを低下させる。
【0069】
さらに、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlim以下となるように可変電源62を制御しているにも関わらず、温度差ΔTが上昇し続けている場合、制御回路58は、可変電源62からペルチェ素子12への印加電圧Vの印加を停止させる。この場合、制御回路58は、遮断回路42を制御して交流電源40とコンバータ44との間を遮断させるか、又は、極性反転回路50の全てのスイッチ50a〜50dをオフに切り替えればよい。
【0070】
また、制御回路58は、極性反転回路50を制御してペルチェ素子12に印加される印加電圧Vの極性を切り替える場合、印加電流Iを一定値に維持する定電流制御を行うと共に、印加電流Iの時定数が長くなるように可変電源62を制御する。
【0071】
さらに、温調装置10をパワーセーブすることで消費電力を下げる場合、制御回路58は、メモリ78に記憶されたパワーセーブ値に基づいて可変電源62を制御することにより、該可変電源62から出力される印加電圧Vの値と、ペルチェ素子12に流れる印加電流Iの値とを制限すればよい。
【0072】
この場合、制御回路58は、パワーセーブ値に基づいて、操作量に対する印加電圧Vの出力範囲を制限することで、消費電力を低減させる。
【0073】
また、制御回路58は、循環液18の温度をパワーセーブ値に応じた所定温度に到達するまでは、印加電圧V及び印加電流Iを制限して、時間をかけて循環液18の温度を所定温度まで変化させ、当該温度が所定温度に到達すれば、印加電圧V及び印加電流Iに対する制限を解除する。
【0074】
また、印加電圧Vと印加電流Iとの特性は、温度差ΔTに応じて変化する。そこで、パラメータ設定部56によって、温度差ΔT毎の印加電圧Vと印加電流Iとの特性をメモリ78に予め格納しておき、印加電流検出回路46で検出された印加電流Iの値が前記特性から大きく外れる場合に、故障判定部82は、ペルチェ素子12が故障していると判定すればよい。
【0075】
なお、温調装置10では、ペルチェ素子12の熱交換器14b側(放熱側)の温度が所定温度以上の高温状態である場合には、サーモスタット60がペルチェ素子12のオーバヒート状態を検出し、制御回路58は、サーモスタット60の検出結果に基づいて、遮断回路42を動作させ、交流電源40とコンバータ44との間を遮断状態にすればよい。
【0076】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態に係る温調装置10は、以上のように構成されるものであり、次に、当該温調装置10の作用及び効果について、図7図19を参照しながら説明する。なお、この説明では、必要に応じて、図1図6も参照しながら説明する。
【0077】
[本実施形態と特許文献1との違い]
図7は、特許文献1の技術でのペルチェ素子12に対する制御を図示したブロック図である。図8は、本実施形態でのペルチェ素子12に対する制御を図示したブロック図である。なお、図7において、本実施形態と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて説明する。
【0078】
特許文献1の技術において、駆動回路66は、温度調節器54の操作量に比例(依存)した出力量(PWM制御による印加電圧(パルス電圧)、連続的な印加電圧又は印加電流)でペルチェ素子12を駆動させている。すなわち、特許文献1の技術において、前記出力量は、温度センサ36が検出した循環液18の温度に基づくものであり、ペルチェ素子12の電気的な状態(印加電圧V、印加電流I、起電力Ve)を反映したものではない。そのため、特許文献1の技術は、ペルチェ素子12の電気的な状態をペルチェ素子12に対する制御に取り入れておらず、当該ペルチェ素子12の電気的な状態に関しては、開ループの制御である。
【0079】
これに対して、本実施形態では、温度調節器54の操作量、パラメータ設定部56が設定したパラメータ、及び、状態検出部70が検出したペルチェ素子12の電気的な状態が制御回路58に取り込まれる。従って、制御回路58は、取り込んだ操作量、パラメータ及び電気的な状態を用いて所望の出力量を算出し、算出した出力量に応じた制御量を決定し、決定した制御量に基づいて駆動回路66を制御する。つまり、本実施形態では、ペルチェ素子12の電気的な状態を取り込んで当該ペルチェ素子12を制御するフィードバック制御を採用している。
【0080】
[本実施形態におけるペルチェ素子12の基本的な制御方法]
本実施形態に係る温調装置10において、温度調節器54は、温度センサ36が検出した循環液18の温度に基づいて、当該循環液18の温度が一定となるような操作量を決定し、決定した操作量を制御回路58に出力する。制御回路58は、温度調節器54からの操作量等に基づいて制御量を決定する。駆動回路66は、制御回路58からの制御信号に基づいて、操作量に応じてペルチェ素子12を駆動させるための出力量(印加電圧V、印加電流I)を生成する。
【0081】
ここで、駆動回路66がペルチェ素子12を駆動させるための制御方式としては、大きく分けて、(1)時間経過に対して連続的に変化する直流電圧を可変できる電圧制御方式、(2)時間経過に対して連続的に変化する直流電流を可変できる電流制御方式、(3)時間経過に対して一定値の固定電圧に対するPWM制御方式、の3通りの制御方式がある。但し、コスト及び回路規模を比較すると、PWM制御方式<電圧制御方式<電流制御方式、の順で、コスト及び回路規模が大きくなる。
【0082】
また、図9には、操作量と出力量との関係を示すグラフの一例が図示されている。このグラフでは、操作量に比例(依存)して出力量が変化する。また、操作量が−100%〜+100%で変化しているのは、ペルチェ素子12が加熱動作(0%〜+100%)又は冷却動作(−100%〜0%)を行うことに対応して規定したものである。一方、出力量は、ペルチェ素子12に対する制御方式によって、印加電圧V又は印加電流Iの大きさとして表わされる。この場合、出力量の「+」及び「−」は、ペルチェ素子12に印加する印加電圧V又は印加電流Iの極性の向きを示している。このように、操作量に対して出力量を連続的に可変させるためには、上記の電圧制御方式又は電流制御方式を採用すると共に、連続的に印加電圧Vや印加電流Iを可変できる回路が必要となる。
【0083】
これに対して、PWM制御方式では、固定電圧に対してPWM制御を行うことによりパルス電圧(印加電圧V)として出力し、平均電圧がオン時間及びオフ時間から決定される制御方式である。この場合、PWM制御方式では、シンプルな回路構成となる。例えば、図10に示すように、振幅が10Vの電圧をデューティ比50%でオンオフさせると平均電圧は5Vとなる。
【0084】
[本実施形態の第1の効果の説明]
ここで、本実施形態の第1の効果について、図11図15を参照しながら説明する。
【0085】
第1の効果とは、ペルチェ素子12の故障や性能劣化を生じさせないための制御、具体的には、ペルチェ素子12の電気的な状態を取り込んだフィードバック制御を行うことにより、温調装置10の加熱効率及び冷却効率の向上を図るという効果である。
【0086】
ここで、ペルチェ素子12の駆動電圧(印加電圧V)又は駆動電流(印加電流I)の推奨定格値は、一般的に、最大定格値に対して60%〜70%程度とされている。これは、ペルチェ素子12のメーカより、当該ペルチェ素子12の駆動電圧又は駆動電流は、最大定格値の60%〜70%程度で使用する旨の注意事項があるためである。
【0087】
すなわち、最大定格値でペルチェ素子12を使用すると、使用条件によっては、最大定格値を超える場合があるからである。例えば、駆動電圧を最大定格値で動作させると、ペルチェ素子12の吸熱側と放熱側との温度差ΔTによっては、駆動電流が最大定格値を超えてしまう場合がある。このように、最大定格値を超えることで、ペルチェ素子12の性能劣化や故障が起きやすくなる。
【0088】
そのため、ペルチェ素子12を用いた従来の温調装置では、メーカの推奨する定格値でペルチェ素子12及び熱交換器14a、14bを含む温調ユニット16の加熱能力及び冷却能力の設計を行い、この定格値で得られた能力を温調装置の製品性能としていた。
【0089】
しかしながら、実際には、ペルチェ素子12の使用状態(ペルチェ素子12の吸熱側と放熱側との温度差ΔT、ペルチェ素子12に対する制御方法等)によっては、ペルチェ素子12の最大定格値に対して余裕がある場合もある。従って、ペルチェ素子12の能力を最大限に引き出すことが可能となれば、温調装置10の加熱能力及び冷却能力が向上し、製品の性能向上やペルチェ素子12の枚数(図6中、ペルチェ素子12の接続個数)の削減が可能となる。
【0090】
そこで、本実施形態では、印加電圧V、印加電流I及び温度差ΔT(に応じた起電力Ve)を検知し、ペルチェ素子12が性能劣化を引き起こさないように管理及び監視するフィードバック制御を行い、ペルチェ素子12の最大定格値(印加電圧V、印加電流I、温度差ΔTの許容値)のギリギリまで使用することにより、温調装置10の加熱能力及び冷却能力を最大限に引き出すようにしている。
【0091】
ここで、ペルチェ素子12の性能を劣化させる要因について説明する。
【0092】
ペルチェ素子12は、吸熱側と放熱側とに温度差ΔTを生じさせて使用する素子であるが、一方で、温度差ΔTに起因して熱応力も発生する。この場合、放熱側に発生した熱量(熱量=(吸熱側での吸熱量)+(ペルチェ素子12の消費電力量))を十分に放熱しないと、熱応力が大きくなって、素子構造に亀裂等が生じ、ペルチェ素子12の破壊に至る。また、印加電圧V又は印加電流Iが最大定格値を超えると、同様に、ペルチェ素子12の素子構造が破壊される。
【0093】
つまり、下記(1)及び(2)の内容に注意しつつ、最大定格値(最大規格値としての検証済みのテストデータ)を超えないようにペルチェ素子12を使用すれば、加熱能力及び冷却能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0094】
(1)放熱側の放熱を十分に行い、且つ、吸熱側と放熱側との温度差の最大値(最大温度差ΔTmax)以下でペルチェ素子12を使用する。
【0095】
(2)急激な極性反転等の熱サイクル疲労をペルチェ素子12に与えないようにする。
【0096】
そこで、温調装置10では、上記(1)及び(2)の留意点に基づき、下記(A)〜(D)の管理及び監視を行うための制御を行っている。
【0097】
(A)ΔTの管理(設定値である最大温度差ΔTmax以下でペルチェ素子12を動作させる)。
【0098】
(B)極性切り替え時の制御(印加電圧V及び印加電流Iの抑制)。
【0099】
(C)最大定格値のリミット制限(印加電圧V及び印加電流Iの抑制)。
【0100】
(D)ペルチェ素子12の放熱側が異常であるときの制限。
【0101】
次に、上記内容を実現するための具体的な制御方法について、下記(i)〜(vi)に説明する。
【0102】
(i)初期動作として、パラメータ設定部56から制御回路58に各種のパラメータを設定する。この場合、設定されるパラメータとしては、下記のものがある。
【0103】
(a)ペルチェ素子12の加熱側の最大印加電圧Vtmax(循環液18を加熱する際にペルチェ素子12に供給する印加電圧Vの最大値)と、ペルチェ素子12の冷却側の最大印加電圧Vcmax(循環液18を冷却する際にペルチェ素子12に供給する印加電圧Vの最大値)。
【0104】
(b)ペルチェ素子12の加熱側の電流制限値Itmax(循環液18を加熱する際にペルチェ素子12に流すことのできる印加電流Iの最大値)と、ペルチェ素子12の冷却側の電流制限値Icmax(循環液18を冷却する際にペルチェ素子12に流すことのできる印加電流Iの最大値)。
【0105】
(c)温度差ΔTの温度差制限値ΔTlim(に応じた制限起電力値Velim)(ペルチェ素子12の温度差ΔTの許容値、当該許容値に応じた起電力Veの値)。
【0106】
これらのパラメータは、ペルチェ素子12を用いた温調装置10の設計値及び実測データを基に予め決められたものであり、本実施形態では、これらのパラメータに基づいて制御を行う。
【0107】
なお、本実施形態では、循環液18を加熱するように印加電圧V及び印加電流Iをペルチェ素子12に供給する場合と、循環液18を冷却するように印加電圧V及び印加電流Iをペルチェ素子12に供給する場合とがある。そのため、加熱する場合(図11中「+」側)と比べて、冷却する場合(図11中「−」側)には、印加電圧V及び印加電流Iの極性は反転する。
【0108】
(ii)温度調節器54からの操作量に比例した印加電圧V(時間経過に対して連続的な印加電圧V)を、極性反転回路50からペルチェ素子12に印加する。この場合、ペルチェ素子12の駆動方式は図9に基づく可変電圧制御であり、パラメータ(設定値)である最大印加電圧+Vtmax、Vcmaxまで印加電圧Vをペルチェ素子12に印加可能とする。
【0109】
(iii)ペルチェ素子12に流れる印加電流Iを監視し、設定値である電流制限値Itlim、Iclimの絶対値を超えたら、図11に示すように、可変電圧制御から、印加電流Iを電流制限値Itlim、Iclimに維持しつつ操作量に対して印加電圧Vも電圧制限値Vtlim、Vclimに維持する定電流動作に切り替える。一方、印加電流Iが電流制限値Itlim、Iclim以下に戻れば、可変電圧制御に復帰する。
【0110】
なお、図11では、加熱側で印加電流Iが電流制限値Itlimを超えれば、可変電圧制御から定電流動作に切り替わり、一方で、冷却側においては、電流制限値Iclimの絶対値以下で可変電圧制御を行う場合を図示している。すなわち、図11の例では、温度差ΔTによっては、印加電圧Vの絶対値が同じ値であっても、加熱側と冷却側とでペルチェ素子12に流れる印加電流Iの値が異なる場合があることを図示している。
【0111】
ペルチェ素子12は、吸熱側と放熱側との温度差ΔTに伴って、ペルチェ素子12の抵抗値や吸熱量(起電力Ve)が変化する特性を有する。そのため、同じ印加電圧Vをペルチェ素子12に印加しても、温度状態によっては、ペルチェ素子12を流れる印加電流Iが最大定格値をオーバーすることがある。これを防止するため、本実施形態では、上述のように、電流制限値Itmax、Icmaxの絶対値以上の印加電流Iが流れたら、定電流動作に切り替わり、当該絶対値以上の印加電流Iを流さないように温調装置10を構成している。
【0112】
(iv)ペルチェ素子12の起電力Veを監視し、制御回路58の温度差変換部80では、起電力検出回路52が検出した起電力Veを温度差ΔTに変換する。そして、制御回路58は、図12に示すように、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlimを超えないように、印加電圧Vの制限制御を行う。
【0113】
すなわち、図12において、時点t3で温度差ΔTが温度差制限値ΔTlimを超えると、制御回路58は、可変電源62を制御して、印加電圧Vの値を低下させる電圧制限制御を実行する。これにより、時点t4以降、温度差ΔTは、温度差制限値ΔTlim以下に低下する。
【0114】
なお、起電力Veは、図3及び図4に示す検出方法により検出される。また、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlim以下に低下すれば、温度差ΔTの制限動作を解除する。
【0115】
(v)上記(iv)で説明した温度差ΔTの制限動作を時点t5から実施しているにも関わらず、時間経過に伴って温度差ΔTが上昇し続けた場合、故障判定部82は、ペルチェ素子12の放熱側又は吸熱側に異常が発生したと判断する。そして、制御回路58は、故障判定部82の判定結果に基づいて、時点t6で、ペルチェ素子12に対する印加電圧Vの供給を停止する。
【0116】
従来は、放熱側の高温異常をサーモスタット60等により検出し、印加電圧Vの供給を停止していた。これに対して、本実施形態では、温度差ΔTを監視し、印加電圧Vの供給を事前に停止する。従って、本実施形態では、従来のサーモスタット60による方法と同様の機能を実現することが可能である。なお、印加電圧Vの停止は、極性反転回路50の各スイッチ50a〜50dを全てオフにするか、又は、遮断回路42によって交流電源40とコンバータ44との接続を遮断することにより実現される。
【0117】
(vi)設定温度の変更等に起因して加熱動作及び冷却動作が切り替わる場合、ペルチェ素子12に過電流が流れないように、切り替え動作をソフト(スロー)に行わせる。
【0118】
すなわち、従来、操作量に比例(依存)した出力量の制御方式では、印加電圧Vの極性を切り替える度、例えば、図13の時点t7で操作量を+100%から−100%に切り替えて、印加電圧Vを+Vmaxから−Vmaxに切り替えた場合に、マイナス側の最大定格値−Iprmaxの絶対値よりも大きな過電流が発生していた。このような急激な印加電流Iの変化や、最大定格値−Iprmaxの絶対値を超える印加電流Iが発生すると、ペルチェ素子12に対して熱応力を不用意に与えることになり、ペルチェ素子12の性能劣化や故障が発生するおそれがある。
【0119】
そこで、図14に示すように、時点t7で印加電圧Vの極性を切り替える際、印加電流Iを最大定格値−Iprmaxに制限する定電流方式を適用することが考えられる。
【0120】
しかしながら、定電流方式でも、時点t7直後に印加電流Iが最大定格値−Iprmaxまで一気に流れるので、図13の場合と同様に、ペルチェ素子12の性能劣化や故障が発生するおそれがある。
【0121】
これに対して、本実施形態では、図15に示すように、時点t7直後のペルチェ素子12に対する急激な電流変化や熱応力の発生を軽減するため、定電流方式と印加電流Iの時定数を長くする方法とを組み合わせ、時点t7で印加電圧Vの極性を切り替えた後は、ペルチェ素子12に流れる印加電流Iを、時間経過に伴い、徐々に増加させるソフト切り替え方式(スロー切り替え方式)を採用している。
【0122】
すなわち、印加電流Iの時定数のみを制限する場合、設定時間が短いと、ペルチェ素子12の状態によって過電流が発生し、一方で、時定数を長く設定すると、ペルチェ素子12の温度変化が遅延する。そこで、本実施形態では、時定数による方法の短所と、定電流方式の短所とを補うため、時定数の方法と定電流方式とを併用するソフト切り替え方式を採用した。
【0123】
以上説明したように、第1の効果としては、ペルチェ素子12を用いた温調装置10において、新たな制御方法を採用することにより、加熱効率及び冷却効率の向上を図っている。ここで、新たな制御方法とは、ペルチェ素子12の故障や性能劣化を生じさせないような制御方法であり、具体的には、ペルチェ素子12の電気的状態を制御内容に取り入れたフィードバック制御である。
【0124】
[本実施形態の第2の効果の説明]
前述のように、本実施形態では、ペルチェ素子12に供給する印加電圧V及び印加電流Iの大きさを任意に設定することが可能である。換言すれば、温調装置10の加熱能力及び冷却能力を自由に可変することが可能である。そこで、本実施形態では、この特徴を用いた付加価値の機能として、パワーセーブによる省エネ機能を第2の効果としている。
【0125】
従来、ペルチェ素子12を用いた温調装置では、加熱能力及び冷却能力を調整する機能が無いため、下記(1)及び(2)のような問題があった。
【0126】
(1)製品(温調装置)の最大消費電力(電流)以下の電源設備しか有していない施設(工場)では、当該製品を使用することができない。しかしながら、実際には、当該製品の加熱能力及び冷却能力を、例えば、最大消費電力の50%位まで抑えれば、当該施設で製品を使用することができる場合がある。
【0127】
(2)設定温度が安定するまでの間、製品(温調装置)の消費電力を下げたい。
【0128】
そこで、本実施形態では、上記(1)及び(2)の問題を下記(A)及び(B)のように解決している。
【0129】
(A)製品としての温調装置10に加熱能力及び冷却能力を制限するパワーセーブ機能を設け、温調装置10の最大消費電力(電流)を下げるようにしている。すなわち、加熱能力及び冷却能力が所定の能力に抑制されることにより、当該能力以上の電力は必要とされない。
【0130】
(B)循環液18の温度が安定(設定温度に到達)するまで、加熱能力及び冷却能力を制限する機能を設ける。
【0131】
上記(A)及び(B)の機能を実現するため、温調装置10のパラメータ設定部56で加熱能力及び冷却能力の制限値(パワーセーブ値等)をユーザが入力する。具体的に、パワーセーブ機能としては、(i)一律で加熱能力及び冷却能力を制限するモード、(ii)温度変更後、循環液18の温度が安定するまで、該温度の昇降時に加熱能力及び冷却能力を制限するモード、とがある。
【0132】
すなわち、加熱能力及び冷却能力を制限する(下げる)ことにより、ペルチェ素子12に対する印加電圧Vが低下し、ペルチェ素子12の消費電力が下がる。これにより、コンバータ44の消費電力も下がるので、温調装置10全体の消費電力(電流)を下げることができる。
【0133】
温調ユニット16等の熱交換器製品は、温度変更時等、循環液18の設定温度と現在温度とが大きく離れている場合や、大きな熱負荷が入力されている場合には、最大の加熱能力及び冷却能力で動作する傾向にある。この結果、温調装置10全体の消費電力が最大値に到達してしまう。
【0134】
これに対して、実際に循環液18の温度が安定している状態で、温調ユニット16に大きな熱負荷等の入力がなければ、消費電力は少なくて済む。
【0135】
図16は、加熱能力及び冷却能力と温調装置10の消費電力との関係の一例を図示したものであり、加熱能力及び冷却能力を下げれば、消費電力も低下する。
【0136】
ここで、上記(1)及び(2)の問題を解決する実例(実施例1、実施例2)について、以下に説明する。
【0137】
[実施例1]
実施例1は、上記(1)の問題を解決するための実例である。
【0138】
例えば、実験室等において、2台の温調装置10を使用する場合であって、当該実験室での最大電源容量が16Aの場合について説明する。
【0139】
図16を参照すると、1台の温調装置10の最大消費電流が10Aであれば、2台の温調装置10を使用した場合、当該実験室では、単純計算で20Aの電源容量が必要となる。しかしながら、2台の温調装置10の加熱能力及び冷却能力を70%に設定して使用すれば、1台当たり7.5Aで合計15Aの消費電流で済む。これにより、上記条件の電源容量(16A)であっても、ブレーカ等を落とすことなく、安定的に2台の温調装置10を実験室で使用することが可能となる。
【0140】
[実施例2]
多数の温調装置10が使用されている工場等で、就業開始時に一斉に温調装置10が動作すると、各温調装置10は、循環液18を目標温度に到達すべく、最大の加熱能力及び冷却能力で動作する。この結果、各温調装置10の消費電力が最大値となり、使用台数が多ければ、工場全体のピーク電力も跳ね上がる。そこで、昇降時に加熱能力及び冷却能力を制限するモードとすれば、ピーク電力を抑制しつつ、循環液18を目標温度に到達させることが可能となる。但し、このモードを用いると、最大の加熱能力及び冷却能力で動作することがないため、目標温度への到達時間は遅くなる。
【0141】
上述したパワーセーブ機能のうち、(B)及び(ii)のモードは、循環液18の温度の昇降時にのみ、加熱能力及び冷却能力に対して制限がかかるものであり、温度安定時には、このような制限は解除される。従って、(B)及び(ii)のモードは、大きな熱負荷に対する温度の昇降に対応可能である。
【0142】
ところで、(A)及び(B)((i)及び(ii))のいずれのパワーセーブ機能でも、可変電圧制御(時間経過に対して印加電圧Vを連続的に印加する電圧制御方式)によってペルチェ素子12に印加電圧Vを印加するため、図17に示すように、可変電源62側での印加電流Iのピーク(ピーク電流)を完全に制限することが可能である。
【0143】
一方、PWM制御方式の場合には、ペルチェ素子12に印加電圧Vを印加する度に、電源側にピーク電流が流れるため、平均電流は、可変電圧制御方式の場合と同じであっても、ピーク電流を完全に制限することができない。
【0144】
なお、図17において、PWM制御方式の場合には、周期T8で且つデューティ比50%のパルス電圧を時点t9から繰り返しペルチェ素子12に印加する。また、本実施形態での可変電圧制御方式では、時点t9から、PWM制御方式での平均電圧に応じた直流電圧を印加電圧Vとしてペルチェ素子12に印加する。
【0145】
ここで、前述した(A)及び(B)のモードでの制御方法の詳細について、図18及び図19も参照しながら、さらに詳しく説明する。
【0146】
(A)のモードは、ペルチェ素子12に印加する印加電圧Vの最大値Vmaxを下げてしまう方法である。
【0147】
具体的には、図18で実線に示すように、加熱能力又は冷却能力が100%の場合には、操作量−100%〜+100%に対して、印加電圧Vは−40V〜+40Vの範囲で変化する。一方、(A)のモードが機能して、加熱能力及び冷却能力を20%下げた場合には、図18において、一点鎖線で示すように、操作量−100%〜+100%に対して、印加電圧Vが−32V〜+32Vにスケーリング変更される。
【0148】
これは、±32Vを超える印加電圧V(出力量)を単純に制限することで、操作量+80%〜+100%及び−80%〜−100%の各区間で、出力量が変化しない不感帯が発生し、温度制御性が低下することを防ぐためである。
【0149】
なお、本実施形態では、(A)のモードを機能させる場合、図18の実線の特性は維持しつつ、操作量の上下限値を±80%に制限し、−80%〜+80%の区間内で印加電圧Vを可変制御させることも可能である。
【0150】
一方、(B)のモードでは、図19に示すように、循環液18の設定温度が変更されたときや、温調装置10の始動時等、循環液18の設定温度と現在温度とが離れている場合に、温調装置10の加熱能力及び冷却能力を制限するものである。この場合、設定温度が変更された時点t10から加熱能力及び冷却能力が制限され、時点t11で現在温度が設定温度(図19では40℃)に到達すると、加熱能力及び冷却能力に対する制限が解除される。(B)のモードを行うためには、パラメータ設定部56によって設定温度をメモリ78に設定すると共に、温度センサ36で循環液18の現在温度を検出し、制御回路58において、設定温度と現在温度との比較に基づき、加熱能力及び冷却能力に対する制限及びその解除を判断すればよい。
【0151】
[本実施形態の第3の効果の説明]
ペルチェ素子12を用いた温調ユニット16では、ペルチェ素子12を単体で使用することはなく、図6に示すように、複数枚のペルチェ素子12を組み合わせて使用している。
【0152】
ここで、例えば、A列の1枚のペルチェ素子12が故障した場合、B列にしか印加電流Iが流れない。この結果、温調ユニット16を含む温調装置10の加熱能力及び冷却能力が半減する。これにより、循環液18の温度を一定温度に維持することができなくなれば、温度制御に異常があるとして、事前の故障対応が可能である。
【0153】
しかしながら、負荷20が半導体製造装置である場合、プロセス停止中は熱負荷が小さいので循環液18の温度を一定温度に維持することはできるが、一方で、プロセスが開始されると、熱負荷が大きくなって、当該温度を一定温度に維持することができなくなる。これにより、負荷20側で二次的な問題が発生する場合がある。
【0154】
また、単純な電流制御方式でペルチェ素子12を駆動する場合、B列だけに印加電流Iが流れると、B列側のペルチェ素子12の性能劣化や故障が発生するおそれがある。
【0155】
従って、ペルチェ素子12が故障した時点で当該故障を検出できれば、上記の問題を解決することができる。
【0156】
そこで、本実施形態では、パラメータ設定部56からメモリ78に、ペルチェ素子12の故障検出条件を設定し、故障判定部82において、ペルチェ素子12の印加電圧V及び印加電流Iからペルチェ素子12の故障の有無を判断するようにしている。
【0157】
具体的には、印加電圧Vと印加電流Iとの特性は、ペルチェ素子12の組み合わせ方と温度差ΔTとによって決まるので、印加電圧Vに対する印加電流Iの値が当該特性から大きく異なれば、ペルチェ素子12に何らかの異常が発生していると容易に判断することができる。
【0158】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る温調装置10では、制御回路58が、ペルチェ素子12の電気的な状態を取り込んで所望の出力量を算出し、算出した所望の出力量に基づく制御量で駆動回路66を制御するフィードバック制御を採用している。そのため、ペルチェ素子12の電気的な状態を取り込まない開ループ制御を採用している特許文献1の技術と比較して、本実施形態では、ペルチェ素子12の性能劣化及び故障の発生を回避することができる。この結果、本実施形態では、ペルチェ素子12の最大定格値まで温調装置10を動作させることが可能となるため、当該温調装置10の温度調節能力(循環液18に対する加熱能力及び冷却能力)を向上させることができる。
【0159】
また、制御回路58は、検出された印加電圧V、印加電流I及び起電力Veを用いて駆動回路66に対する制御量を決定し、当該制御量で駆動回路66を制御するので、可変電源62からペルチェ素子12に適切な印加電圧V及び印加電流Iを供給することが可能となる。
【0160】
さらに、可変電源62は、制御量に応じて印加電圧V及び印加電流Iを時間経過に対して連続的に変化させる可変制御を行っているので、PWM制御のようなオンオフの繰り返しに起因したピーク電流の発生を阻止することができる。
【0161】
また、ペルチェ素子12の動作に関わるパラメータがパラメータ設定部56から制御回路58のメモリ78に設定されるので、制御回路58は、パラメータ、検出された印加電圧V、印加電流I及び起電力Veに基づいて、駆動回路66を制御する。これにより、ペルチェ素子12の駆動を最適化することが可能となる。
【0162】
また、印加電圧Vが最大電圧値Vtmax、Vcmaxを超え、印加電流Iが電流制限値Itlim、Iclimを超え、又は、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlimを超えれば、ペルチェ素子12が性能劣化又は故障するおそれがある。そこで、パラメータである最大電圧値Vtmax、Vcmax、電流制限値Itlim、Iclim及び温度差制限値ΔTlimとの比較に基づいて、制御回路58が駆動回路66を制御することにより、温調装置10では、ペルチェ素子12の性能劣化や故障を惹起させることなく、該ペルチェ素子12の最大定格値(最大電圧値Vtmax、Vcmax、電流制限値Itlim、Iclim、温度差制限値ΔTlim)まで使用することが可能となる。この結果、温調装置10の加熱能力及び冷却能力を最大限に引き出すことができると共に、循環液18の温度管理(監視)を適切に行うことが可能となる。
【0163】
具体的に、ペルチェ素子12は、吸熱側と放熱側との温度差ΔTに伴って、該ペルチェ素子12の抵抗値や吸熱量(起電力Ve)が変化する特性を有する。そのため、同じ印加電圧Vをペルチェ素子12に印加しても、該ペルチェ素子12の温度状態により、印加電流Iが最大定格値(電流制限値Itlim、Iclim)を超える場合がある。従って、電流制限値Itlim、Iclimを超える印加電流Iが流れた場合には、定電流動作に切り替わることにより、ペルチェ素子12の性能劣化や故障を効果的に回避することができる。また、印加電流Iが電流制限値Itlim、Iclim以下にまで低下すれば、定電流動作から可変電圧制御に戻ることで、本来の制御に速やかに復帰することができる。
【0164】
また、温度差変換部80で変換された温度差ΔTが温度差制限値ΔTlimを超えた場合に、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlim以下となるように可変電源62を制御し、印加電圧Vの値を低下させることにより、温度差制限値ΔTlimを超える温度上昇に起因したペルチェ素子12の性能劣化又は故障の発生を効果的に回避することが可能となる。
【0165】
但し、温度差ΔTが温度差制限値ΔTlim以下となるように可変電源62を制御しているにも関わらず、温度差ΔTが上昇し続けている場合、制御回路58は、可変電源62からペルチェ素子12への印加電圧Vの印加を停止させる必要がある。従来、ペルチェ素子12が高温状態となった場合、サーモスタット60等による検出で印加電圧Vの印加を停止させていたが、本実施形態では、温度差ΔTを監視しているので、ペルチェ素子12が異常な状態になる前に印加電圧Vの印加を停止させることが可能である。
【0166】
また、制御回路58は、極性反転回路50によってペルチェ素子12に印加される印加電圧Vの極性が切り替わった際に、印加電流Iを一定値に維持する定電流制御を行うと共に、印加電流Iの時定数が長くなるように可変電源62を制御することで、極性を切り替える度に過電流が発生してペルチェ素子12の性能劣化や故障が発生することを抑えることができる。
【0167】
また、制御回路58が可変電源62を制御して印加電圧V及び印加電流Iを調整することにより、ペルチェ素子12の加熱能力及び冷却能力を自由に変化させることが可能となる。そのため、パワーセーブ値を設定し、設定したパワーセーブ値に基づいて印加電圧V及び印加電流Iを制限するパワーセーブを行うことにより、温調装置10の省電力化(省エネ化)を実現することができる。
【0168】
この場合、制御回路58は、パワーセーブ値に基づいて、操作量に対する印加電圧Vの出力範囲を制限すれば、温調装置10の最大消費電力を下げることができる。
【0169】
また、循環液18の温度がパワーセーブ値に応じた設定温度に到達するまでは、印加電圧V及び印加電流Iを制限し、一方で、当該温度が設定温度に到達すれば、印加電圧V及び印加電流Iに対する制限を解除してもよい。
【0170】
これにより、パラメータ設定部56による設定温度の変更時や温調装置10の始動時等、ペルチェ素子12の現在温度と設定温度とが離れている場合には、温度調節能力を制限しつつ、ペルチェ素子12の温度を設定温度まで時間をかけて変化させ、該ペルチェ素子12の温度が設定温度に到達して安定したら、温度調節能力に対する制限を解除することで、温度昇降時の省電力化を実現することができる。
【0171】
また、制御回路58が故障判定部82を備えることで、ペルチェ素子12の故障を速やか且つ確実に検出することができる。このように、制御回路58に故障判定部82が備わることにより、印加電圧検出回路48が検出した印加電圧Vから、コンバータ44の出力(印加電圧V)が異常であるか否か(コンバータ44が故障しているか否か)を故障判定部82で判定(診断)させることも可能となる。さらに、故障判定部82は、印加電圧検出回路48が検出した印加電圧Vと、起電力検出回路52が検出した起電力Veとを比較して、極性反転回路50が故障しているか否かを判定(診断)することも可能となる。
【0172】
さらに、本実施形態では、ペルチェ素子12に対する印加電圧Vの印加を一時停止させた時間帯に起電力Veを検出し、起電力Veの検出が完了すれば印加電圧Vの印加を再開する。そして、印加電圧Vの印加と起電力Veの検出とが交互に行われる場合、起電力Veの検出時間を印加電圧Vの印加時間よりも短く設定している。これにより、ペルチェ素子12の吸熱側及び放熱側の熱の影響と、循環液18の温度変化の影響とを抑えつつ、正確な起電力Veを測定することが可能となる。
【0173】
また、起電力検出回路52がダイオードブリッジ回路で構成されていれば、ペルチェ素子12の起電力の向き(極性)が変化した場合でも、どちらの極性の起電力Veを測定することが可能となる。ダイオードブリッジ回路の場合、起電力Veは、各ダイオード52a〜52dの順方向電圧VF以上の電圧値である必要がある。但し、本実施形態では、比較的大きな温度差ΔTを測定するため、起電力Veが順方向電圧VF未満であるため、温度差ΔTを測定することができないという問題が発生することを回避可能である。
【0174】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0175】
10…温調装置 12…ペルチェ素子
14a、14b…熱交換器 16…温調ユニット
18…循環液 26、32、36…温度センサ
34…放熱機構 40…交流電源
42…遮断回路 44…AC−DC電源(コンバータ)
46…印加電流検出回路 48…印加電圧検出回路
50…極性反転回路 50a〜50d…スイッチ
52…起電力検出回路 52a〜52d…ダイオード
54…温度調節器 56…パラメータ設定部
58…制御回路 60…サーモスタット
62…可変電源 64…電圧可変回路
66…駆動回路 70…状態検出部
78…メモリ 80…温度差変換部
82…故障判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19