特開2015-91909(P2015-91909A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015091909-低糖化澱粉糖液の精製方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-91909(P2015-91909A)
(43)【公開日】2015年5月14日
(54)【発明の名称】低糖化澱粉糖液の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 30/18 20060101AFI20150417BHJP
【FI】
   C08B30/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2013-231721(P2013-231721)
(22)【出願日】2013年11月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000232863
【氏名又は名称】日本錬水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】梶山 仁
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA03
4C090BA07
4C090BB32
4C090BB52
4C090CA13
(57)【要約】
【課題】先行技術が指摘するイオン交換樹脂の脱イオン機能の喪失という問題を解決し、低糖化澱粉糖液の製造条件に依存することなく、イオン交換樹脂の利用効率を改良した低糖化澱粉糖液の精製方法を提供する。
【解決手段】アクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用する低糖化澱粉糖液の精製方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用することを特徴とする低糖化澱粉糖液の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低糖化澱粉糖液の精製方法に関し、詳しくは、イオン交換樹脂を使用し、その利用効率を改良した低糖化澱粉糖液の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低糖化澱粉糖液の1つであるデキストリンは、澱粉を加水分解して得られ、脱イオンや脱色を目的としたイオン交換樹脂による精製工程を経て製造される。ところで、デキストリンの精製に関する提案は、余りなされておらず、むしろ、脱イオンの際にイオン交換樹脂の表面に皮膜を形成する現象が発生し、極めて短時間のうちにイオン交換樹脂が脱イオン機能を失うという課題を解決するため、低糖化澱粉糖液の製造条件を検討し、低粘度でありデキストリン以外の成分が極めて分離しやすい形態で液中に残るように改良されたデキストリンの製造方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−215893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記の先行技術が指摘するイオン交換樹脂の脱イオン機能の喪失という課題を解決し、低糖化澱粉糖液の製造条件に依存することなく、イオン交換樹脂の利用効率を改良した低糖化澱粉糖液の精製方法を提供することにある。
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、低糖化澱粉糖液の精製においては、使用するイオン交換樹脂の母体構造によってその利用効率が著しく異なり、ある特定のイオン交換樹脂を使用することにより、その利用効率を高めて低糖化澱粉糖液の精製方法を行うことが出来るとの知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、アクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用することを特徴とする低糖化澱粉糖液の精製方法に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば前記の課題が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1及び比較例1における電気伝導度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の精製対象の低糖化澱粉糖液としては、前述のデキストリンが代表的である。デキストリンは、数個のα-グルコースがグリコシド結合によって重合した物質であり、多糖に分類され、デンプンとマルトースの中間にあたる。商取引の段階では、デキストリンは「粉飴」とも称されている。本発明における低糖化澱粉糖液には、デキストリンの他、「水飴」等も包含される。水飴は、澱粉を酸や糖化酵素で糖化して得られ、ブドウ糖、麦芽糖、デキストリン等の混合物であり、主成分は麦芽糖である。本発明における低糖化澱粉糖液は、一般的には、糖化率(DE)が通常30%以下、好ましくは20%以下の澱粉糖液を意味する。
【0010】
上記の糖化率(DE)は、可溶性の固形(ブリックス)に対するグルコースの割合を意味する。グルコースの濃度は、例えば、市販のキット(例えばグルコースCIIテストワコー(和光純薬(株)製))を使用し、紫外可視分光光度計(例えば日本分光製の(V−650DS))を使用し、505nmでの吸光度を測定することにより測定することが出来る(特開2010−35515号公報参照)。
【0011】
本発明の精製方法は、如何なる条件で製造された低糖化澱粉糖液にも適用でき、その製造方法は制限されない。従って、低糖化澱粉糖液の粘度についてもイオン交換樹脂充填カラムに円滑に通液し得る限り制限されない。低糖化澱粉糖液には、澱粉原料の種類(ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、小麦、米など)や製造工程に由来し、各種の不純物や着色成分が含まれている。そこで、脱イオンや脱色を目的としたイオン交換樹脂による精製が行われ、この際、強酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂、中塩基性陰イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂などの各種のイオン交換樹脂が適宜組み合わせて使用される。
【0012】
本発明の精製方法は、アクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用することを特徴とする。斯かるイオン交換樹脂の市販品としては、三菱化学(株)製の「ダイヤイオンWA10」が代表的であるが、その他には、R&H社製の「AMBERITE IRA67」、「AMBERITE IRA67 RF」、「AMBERITE FPA53」、「AMBERITE FPA55」、「PURORITE A830W」、LANXESS社製の「LEWATIT VPOC1073」等が挙げられる。
【0013】
低糖化澱粉糖液の精製にアクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用するならば、その利用効率が高められる理由は次のように推定される。
【0014】
澱粉は老化によって水に不溶になることが知られているが、低糖化澱粉糖液は、澱粉の性質を多く残しているため老化が起きやすい。このため、低糖化澱粉糖液のイオン交換精製では老化した澱粉が樹脂を汚染し、処理能力が低下すると考えられる。ところで、スチレン系母体構造のイオン交換樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体によって形成された三次元的な網目構造を母体構造としているため、容易に澱粉の不溶成分が吸着して汚染され易い。これに対し、三次元的な網目構造を有していないアクリル系母体構造のイオン交換樹脂は、澱粉の不溶成分が吸着しても脱離され易いために汚染が起こり難く、処理能力が高められる。
【0015】
本発明の精製方法においては、アクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂を前述の他のイオン交換樹脂と組み合わせて使用することが出来る。一般的には、弱塩基性陰イオン交換樹脂による処理に先立って強酸性陽イオン交換樹脂や強塩基性陰イオン交換樹脂による処理が行われる。強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学社製のダイヤイオンSK1B、SK102、PK208、PK212、PK218等が挙げられる。強塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標:以下同様)SA10A、SA11A、PA306、PA308(以上「I型」)、SA20A、PA408、PA412、PA418(以上「II型」)等が挙げられる。
【0016】
精製条件は特に制限されないが、通常、液温度は30〜60℃、液流速度は通液塔1塔当たりの弱塩基性アニオン交換樹脂層に対して0.1〜10m/hrである。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の諸例においては、低糖化澱粉糖液として、温度45℃で測定した粘度(B型回転粘度計による測定値)10mPa・s、ブリックス値30°、糖化率11%のデキストリン原液を、予め強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学社製の「PK21」)で脱イオン処理して使用した。
【0018】
実施例1:
内径13mm、高さ50cmのジャケット付きガラスカラムにアクリル系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製の「ダイヤイオンWA10」)50mlを充填し、ジャケット温度を40℃に設定し、ガラスカラム上部から前記のデキストリン原液を0.4m/hrの流速で通液し、処理液の電気伝導度を測定した。測定結果を通液量に対する変化として図1に示した。
【0019】
比較例1:
実施例1において、弱塩基性陰イオン交換樹脂として、スチレン系母体構造の弱塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製の「ダイヤイオンWA30」)を使用したこと以外は、実施例1と同様に操作して処理液の電気伝導度を測定し、図1に示した。
【0020】
図1に示す結果から明らかなように、実施例1の場合、通液量30(L/L−R)における処理液の電気伝導度が比較例1の約1/2であり、イオン交換樹脂の利用効率が著しく高い。
図1