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特開2015-92642多接合及び多電極を有する光起電性電池の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-92642(P2015-92642A)
(43)【公開日】2015年5月14日
(54)【発明の名称】多接合及び多電極を有する光起電性電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/043 20140101AFI20150417BHJP
   H01L 31/056 20140101ALI20150417BHJP
   H02S 40/34 20140101ALI20150417BHJP
【FI】
   H01L31/04 510
   H01L31/04 624
   H02S40/34
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-31524(P2015-31524)
(22)【出願日】2015年2月20日
(62)【分割の表示】特願2012-519108(P2012-519108)の分割
【原出願日】2010年7月7日
(31)【優先権主張番号】09/03376
(32)【優先日】2009年7月8日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】503438322
【氏名又は名称】トタル マルケタン セルヴィス
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】マルク ヴェルメールス
(72)【発明者】
【氏名】ロイク フランケ
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA11
5F151CB12
5F151CB15
5F151DA04
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA13
5F151FA14
5F151FA15
5F151FA23
5F151GA02
5F151GA03
5F151HA20
5F151JA27
(57)【要約】
【課題】各電池の集電ストリップ間の短絡の危険を可能な限り小さくし、かつ単一の接合ボックスで制御でき、電流出力端子を接合ボックスに容易に接続できる多接合光起電性装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2個の光起電性電池160、260のアセンブリ、各光起電性電池間に位置するラミネーション中間層300を備え、前記各光起電性電池は、2個の電流出力端子185、185´、少なくとも1個の光起電性接合150、250、集電ブス180、180´及び前記集電ブスから前記電流出力端子へ延びる接続ストリップ190、190´を備え、電流出力用の全ての出力端子は、前記光起電性装置の同じ面に位置している光起電性装置。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
−n個の光起電性電池(160、260)のアセンブリと、
−各光起電性電池間に位置する有孔のラミネーション中間層(300)と、
−記光起電性装置の上面に相当する第1の面を有する前部光起電性電池(i=1)と、
−前記前部光起電性電池(i=1)の電流出力端子に面する開口された孔を有し、前記ラミネーション中間層が析出した有孔のラミネーション中間層と、
−少なくとも1個の中間光起電性電池(nが2より大きいとき、1<i<n)と、
−前記ラミネーション中間層が析出した前記中間光起電性電池(i)の前記電流出力端子に面する開口された孔を有する、前記各中間光起電性電池(i)の下方にある有孔のラミネーション中間層と、
−1から(n−1)の光起電性電池からの延長片を通過させるための2(n−1)個の開口された孔(371〜376)を有し、かつ光起電性電池(n)からの電流出力端子を通過させる2個の開口された孔(370、377)を有している前記後部光起電性電池(ni)とを備える光起電性装置であり、
−nは2又はそれ以上であり、
前記各光起電性電池は、
−2個の電流出力端子(185、185´)、
−少なくとも1個の光起電性接合(150、250)、
−集電ブス(180、180´)及び
−前記集電ブスから前記電流出力端子へ延びる接続ストリップ(190、190´)を備え、
各中間光起電性電池(i)は、1から(i−1)の光起電性電池からの延長片(195、195´)を通過させるための2(i−1)個の開口された孔(351、352)を有し、かつ光起電性電池(i)からの前記電流出力端子を通過させる2個の開口された孔(350、353)を有し、
電流出力用の全ての出力端子は、前記光起電性装置の同じ面に位置し、
前記装置は平行六面体であり、前記電流出力端子は前記平行六面体の上面又は底面に位置している光起電性装置。
【請求項2】
前記光起電性装置は、多接合光起電性装置であり、少なくとも2つの光起電性電池のアセンブリは、少なくとも2つの光起電性電池の積層である請求項1記載の装置。
【請求項3】
電流出力端子は、前記装置の側面近傍に整列している請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
電流出力端子がワイヤである請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
電流出力端子が、前記接続ストリップ(190、190´)の端部の接点(500、500´)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
後部光起電性電池は、光反射性物質のフィルム(230)を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
屋根部材、建物の屋根又は建物の不透明な壁被覆材として使用される請求項6記載の装置。
【請求項8】
後部光起電性電池は、光反射性物質のフィルムを有しない請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
建物の窓部材として使用される請求項8記載の装置。
【請求項10】
光起電性接合物質が、微結晶シリコン;多形シリコン;無定形シリコン;硫化カドミウムCdS製の緩衝層を有するテルル化カドミウムCdTe;硫化カドミウムCdS又は硫化インジウムIn製の緩衝層を有し、かつxが0と1の間にある黄銅鉱CuInGa1−x(Se,S);シリコンとゲルマニウムの水素化無定形合金SiGe1−x、及びポリ(3−ヘキシルチオフェン)及び[6,6]フェニルーC61酪酸メチル系の有機物質及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
透明な導電性酸化物(TCO)から成る2個の電極が、接合の各面に存在する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
正の電流出力端子から成る第1群と、負の電流出力端子から成る第2群を形成する電流出力端子が、接合ボックス内に集められている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
電流出力端子が、正の電極と負の電極から成る対を構成し、各対が接合ボックス中に位置するか、全ての対が単一の接合ボックス内に位置する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
−請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置、及び
−少なくとも1個の接合ボックスを備える光起電性アレイ。
【請求項15】
単一の接合ボックスを備える、請求項14記載の光起電性アレイ。
【請求項16】
−請求項13記載の装置、及び
−n個の接合ボックスを備える光起電性アレイ。
【請求項17】
−前記中間起電性電池および前記後部光起電性電池(260)、前記ラミネーション中間層(300)に孔を開口するステップと、
−光起電性電池(160、260)及びラミネーション中間層(300)を積層するステップとを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置の製造方法。
【請求項18】
−前部光起電性電池、
−開口された孔が、ラミネーション中間層が析出した前記前部光起電性電池の電流出力端子に面する有孔の前記ラミネーション中間層、
−それぞれが、1から(i−1)の光起電性電池からの延長片(195、195´)を通過させるための2(i−1)個の開口された孔(351、352)を有し、かつ光起電性電池(i)からの電流出力端子を通過させる2個の開口された孔(350、353)を有していても良い、少なくとも1個の中間光起電性電池(i)、
−開口された孔が、ラミネーション中間層が析出した光起電性電池(i)の電流出力端子に面する有孔の前記ラミネーション中間層、及び
−1から(n−1)の光起電性電池からの延長片を通過させるための2(n−1)個の開口された孔(371〜376)を有し、かつ光起電性電池(n)からの電流出力端子を通過させる2個の開口された孔(370、377)を有している後部光起電性電池(ni)を積層するステップを備え、かつ
−前記開口された孔に、延長片及び電流出力端子を通過させ、かつ
−可能であれば、各電池又は各中間層が析出された後の連続的な操作により、又は可能であれば、各電池又は各中間層が組み立てられた後の単一ステップにより、
積層を形成する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電性装置、より詳細には多層電池と称される電池を備える多接合装置の分野に関する。本発明は、独立した基板に設置された、複数の光起電性電池が、多電極光起電性モジュールを構成する多電極電池を備える光起電性装置の製造に関し、この装置では、全ての電極に直接アクセスができ、かつこれらの電極間の短絡の危険が回避される。
【背景技術】
【0002】
公知の光起電性発電機(PVG)は、直列及び/又は並列接続された複数の光起電性電池(PV)を備えている。光起電性電池は、光エネルギを吸収しそれを電気エネルギに変換するように設計された半導体ダイオード(p−n又はp−i―n接合)である。光子が半導体に吸収されると、半導体はエネルギをp−n接合の原子に伝達し、これらの原子の電子は自由になり、自由電子(n型電荷)及び空孔(p型電荷)を生成する。これにより、接合の2層(p型及びn型)にポテンシャル差が現れる。このポテンシャル差は、電池の正及び負の端子間で測定できる。電池の最大電圧はゼロ電流の場合(開回路)は約0.6Vで、電池により伝達される最大電流は、電池が受ける太陽光のレベルに大きく依存する。
【0003】
「多層接合光起電性電池」という表現は、一方が他方の上に積層された2個の単純な接合から成り、電池が吸収する太陽のスペクトルの帯域幅を増加させる多接合電池を意味する。技術に応じて、前記2個の接合は、互いに直接接触していても、透明な導電性酸化物の中間フィルムを介して間接的に接触していても良い。後者の場合、2個の接合間の透明な導電性酸化物の中間フィルは、複数反射により、光の経路長を増加させるための中間的反射体として機能する。図1は、無定形シリコン(a−Si:H)製の第1接合と、この接合に、入射光の経路に沿って、断面で直接接触する多結晶シリコン(μc−Si:H)製の第2接合から成る多層電池の概略を示す。図1には、種々のフィルム間の相対的な厚さは特定していない。種々の物質が、PVD(物理蒸着)やPECVD(プラズマ化学蒸着)により、ガラス製基板10に薄膜として析出している。次のものが順に析出する。第1透明導電性電極11、前部光起電性電池を形成する第1p−i−n単接合15、後部光起電性電池を形成する第1p−i−n単接合16、第2透明導電性電極12及びバックリフレクタ20。製造上の実際的な理由から、電池が、無機、有機又はハイブリッド(無機/有機)であるにかかわらず、多層電池構造は、現在では、主として、いわゆる薄膜技術により製造される。薄膜技術では、光起電性電池の物理的な重なりは、生成する電流を集めるための電極11、12及び活性フィルム15、16を、好適な順序で連続して析出させることにより達成できる。
【0004】
主として電気変換効率のため、多層電池は、光起電性装置の分野における主要な先端技術である。特に、この多層構造は、エネルギがシフトするそれぞれの光吸収帯を有する2個の光起電性電池を物理的に重ねることにより生成される。前記電池を光学的に接続すると、個々の電池のものより高い全吸収帯域を有するアレイ(つまり多層)が得られる。これにより、電気変換効率は増大し、この光吸収は電気エネルギに変換されて取り出される。
【0005】
図2は、シリコン薄膜で形成された多層電池の%で表した変換効率を例示するグラフである。重なった電池(前部電池を「上部電池」、後部電池を「下部電池」とする)のそれぞれの吸収帯及び電池の全吸収帯(重なり)を示す。多層技術は、光起電性発電機のエネルギ性能を増加させるための一法である。直近の数年間で、種々の多層電池技術が発展した。例えば、特許文献1から特許文献3を参照されたい。これらの文献は、前記アレイに吸収されるエネルギを増加させることを目的とする種々のアセンブリを提供する。
【0006】
前記多層電池は、二重接続、太陽のスペクトルの種々の帯域で、活性な光起電性電池を積層することに起因する光学的な接続、及び2個の接合の直接又は間接的な接触による電気的接続、及び多層の端部の2個の電極の存在により特徴付けられる。
【0007】
多層電池の電気的接続の主要な欠点は、太陽の条件がどうであれ、前記多層電池を形成する光起電性電池により発生する電流が一致しなければならないことである。実際にはこの理想的な状況は不可能であり、各電池で生成する電流は、活性なスペクトルの領域に依存し、太陽の条件によって変化する。これは、多層電池は、本質的にその部材の最弱のものに制限されることを意味する。このような電流の制限は、多層電池の理論的効率を大きく減少させる。
【0008】
従って、多層電池の接合を電気的に分断することが提案されている。前記多層電池の光起電性電池は、依然として光学的には接続されているが、電気的には分断されている。各接合は、2個の電極を有し、従って、2個の多層接合のそれぞれについて2個の電極、全部で4個の電極を有する多層電池が得られる。透光性で電気絶縁性の物質のフィルムが、隣接する接合の電極間に挿入される。
【0009】
一般に、多層電池の電極は、電流出力端子から、接合ボックスを経て、本線グリッドと適合する、DC電圧をAC電圧に変換するための、電子装置に電気的に接続される。この装置は、光起電性電池のアレイの制御、そして各電池を個々に制御することも可能にする。一般に、光起電性電池の2個の電流出力端子は、2個の接合バックスの光起電性電池の反対面のいずれか、又は単一の接合ボックスの電池の中央に位置している。特許文献4の図1は、モジュールの反対面に位置する電流出力端子を有する前記モジュールを形成する2個の積層された多層電池を示している。従って、前記モジュールの制御には、2個の接合ボックスが、前記モジュールの反対面に位置していることが要求される。接合ボックスをモジュールの反対面に配置させることは、モジュールと接合ボックスから成るアセンブリを嵩高くするという欠点を有する。
【0010】
更に、2個の同一の光起電性電池を直接積層する場合には、複数の電流出力端子が、非常に短い距離のみで、例えば透光性で、2個の隣接光起電性電池間に位置する絶縁フィルムの厚さに等しい距離のみで分離される。この厚さは、1mm又はそれ未満である。従ってこれらの光起電性電池の積層は、2個の電池のそれぞれに属する電気接点ストリップの積層を意味し、そして形成される4線式光起電性電池内の短絡の危険を意味する。更に、2個の隣接する光起電性電池内に位置する所定極性の電極を分離する距離が短いため、電極へのアクセスが困難になる。従って、前記電極を接合ボックスへ接続することが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許公開第A−1906457号
【特許文献2】米国特許公開第A−2008/0023059号
【特許文献3】国際特許公開第2004/112161号
【特許文献4】米国特許明細書第4461922号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、それぞれの電池の集電ストリップ間の短絡の危険を可能な限り小さくし、かつ単一の接合ボックスで制御できる多接合及び多端子光起電性装置が必要とされる。特に、それぞれの光起電性電池の電流出力端子を接合ボックスに容易に接続できる多接合光起電性装置の製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明は、
−少なくとも2個の光起電性電池(160、260)のアセンブリ、
−各光起電性電池間に位置するラミネーション中間層(300)を備える光起電性装置であり、
前記各光起電性電池は、
−2個の電流出力端子(185、185´)、
−少なくとも1個の光起電性接合(150、250)、
−集電ブス(180、180´)及び
−前記集電ブスから前記電流出力端子へ延びる接続ストリップ(190、190´)を備え、
電流出力用の全ての出力端子は、前記光起電性装置の同じ面に位置している光起電性装置を提供するものである。
【0014】
一態様では、前記装置は平行六面体であり、前記電流出力端子は前記平行六面体の側面のいずれかに位置し、電流出力端子は互いにシフトしている。
【0015】
他の態様では、前記装置は平行六面体であり、前記電流出力端子は前記平行六面体の上面又は底面に位置している。電流出力端子は、好ましくは前記装置の側面近傍に整列している。
【0016】
更に他の態様では、電流出力端子はワイヤである。
【0017】
更に他の態様では、電流出力端子は、前記接続ストリップ(190、190´)の端部の接点(500、500´)である。
【0018】
他の態様では、前記装置は、
n個(nは2又はそれ以上である)の光起電性電池を備え、かつ
−前部光起電性電池、
−少なくとも1個の中間光起電性電池(nが2より大きいときに、1<i<nである)、
−後部光起電性電池(n)を備え、かつ
各中間光起電性電池(i)は、光起電性電池〔1から(i−1)まで〕からの延長片(195、195´)を通過させるための2(i−1)個の孔(351、352)を有し、かつ光起電性電池(i)からの電流出力端子を通過させるための2個の孔(350、353)を有していても良く、かつ後部光起電性電池(n)は、光起電性電池〔1から(n−1)まで〕からの延長片を通過させるための2(i−1)個の孔(371〜376)を有し、かつ光起電性電池(n)からの電流出力端子を通過させるための2個の孔(370、377)を有していても良い。
【0019】
他の態様では、前記装置は、
n個(nは2又はそれ以上である)の光起電性電池を備え、かつ
−前部光起電性電池、
−少なくとも1個の中間光起電性電池(nが2より大きいときに、1<i<nである)、
−後部光起電性電池(n)を備え、かつ
各中間光起電性電池(i)は、接合ボックスのプラグに、光起電性電池〔1から(i−1)まで〕の接点をフィットさせるための2(i−1)個の孔(351、352)を有し、かつ接合ボックスのプラグに、光起電性電池(i)の接点をフィットさせるための2個の孔(350、353)を有していても良く、
かつ後部光起電性電池(n)は、接合ボックスのプラグに、光起電性電池〔1から(n−1)まで〕の接点をフィットさせるための2(n−1)個の孔(371〜376)を有し、かつ接合ボックスのプラグに、光起電性電池(n)の接点をフィットさせるための2個の孔(370,377)を有していても良い。
【0020】
他の態様では、後部光起電性電池は、光反射性物質のフィルム(230)を備え、建物の屋根や建物の不透明な壁被覆材として使用される。
【0021】
他の態様では、後部光起電性電池は、光反射性物質のフィルムを有さず、建物の窓部材として使用される。
【0022】
他の態様では、光起電性接合物質が、微結晶シリコン、多形シリコン、無定形シリコン、硫化カドミウムCdS製の緩衝層を有するテルル化カドミウムCdTe、硫化カドミウムCdS又は硫化インジウムIn製の緩衝層を有し、かつxが0と1の間にある黄銅鉱CuInGa1−x(Se,S)、シリコンとゲルマニウムの水素化無定形合金SiGe1−x、及びポリ(3−ヘキシルチオフェン)及び[6,6]フェニルーC61酪酸メチル系の有機物質、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0023】
他の態様では、透明な導電性酸化物(TCO)から成る2個の電極が、接合の各面に存在する。
【0024】
他の態様では、正の電流出力端子から成る第1群と、負の電流出力端子から成る第2群を形成する電流出力端子が、接合ボックス内に集められている。
【0025】
他の態様では、電流出力端子が、正の電極と負の電極から成る対を構成し、各対が接合ボックス中に位置するか、全ての対が単一の接合ボックス内に位置する。他の態様では、光起電性アレイは、n個の接合ボックスを備えている。
【0026】
本発明の他の対象は、前述の装置と少なくとも1個の接合ボックスを備える光起電性アレイである。他の態様では、光起電性アレイは、単一の接合ボックスを備えている。
【0027】
本発明の別の対象は、前述したような光起電性装置の製造方法である。この方法では、光起電性電池(160、260)及びラミネーション中間層(300)を積層する。
【0028】
本発明方法の他の態様では、
−前部光起電性電池、
−孔が、ラミネーション中間層が析出した前記前部光起電性電池の電流出力端子に面する有孔の前記ラミネーション中間層、
−それぞれが、1から(i−1)の光起電性電池からの延長片(195、195´)を通過させるための2(i−1)個の孔(351、352)を有し、かつ光起電性電池(i)からの電流出力端子を通過させる2個の孔(350、353)を有していても良い、少なくとも1個の中間光起電性電池(i)、
−孔が、ラミネーション中間層が析出した光起電性電池(i)の電流出力端子に面する有孔の前記ラミネーション中間層、及び
−1から(n−1)の光起電性電池からの延長片を通過させるための2(n−1)個の孔(371〜376)を有し、かつ光起電性電池(n)からの電流出力端子を通過させる2個の孔(370、377)を有していても良い後部光起電性電池(n)を積層するステップ備え、かつ
−前記孔に、延長片及び電流出力端子を通過させ、かつ
−可能であれば、各電池又は各中間層が析出された後の連続的な操作により、又は可能であれば、各電池又は各中間層が組み立てられた後の単一ステップにより、
積層を形成する。
【0029】
本発明方法の他の態様では、
−前部光起電性電池、
−孔が、ラミネーション中間層が析出した前記前部光起電性電池の電流出力端子に面する有孔の前記ラミネーション中間層、
−接合ボックスのプラグに、光起電性電池〔1から(i−1)まで〕の接点をフィットさせるための2(i−1)個の孔(351、352)を有し、かつ接合ボックスのプラグに、光起電性電池(i)の接点をフィットさせるための2個の孔(350、353)を有していても良い、少なくとも1個の中間光起電性電池(i)、
−孔が、ラミネーション中間層が析出した光起電性電池(i)の電流出力端子に面する有孔の前記ラミネーション中間層、及び
接合ボックスのプラグに、光起電性電池〔1から(i−1)まで〕の接点をフィットさせるための2(n−1)個の孔(371〜376)を有し、かつ接合ボックスのプラグに、光起電性電池(n)の接点をフィットさせるための2個の孔(370、377)を有していても良い、後部光起電性電池(n)を積層するステップを備え、かつ
−可能であれば、各電池又は各中間層が析出された後の連続的な操作により、又は可能であれば、各電池又は各中間層が組み立てられた後の単一ステップにより、
積層を形成する。
【0030】
他の態様では、接続ストリップ(190、190´)は、それらの端部に接点(500、500´)を有する。
【0031】
他の態様では、電流出力端子は、ワイヤであり、光起電性電池の外側の装置のいずれかの側面に保持されている。
【0032】
他の態様では、光起電性電池は、光起電性電池の側面に位置するか、光起電性電池の側面に開放されたハウジング(600)内に位置する接点端子(500)を有する。
【0033】
本発明方法の他の態様では、
−2個の延長片を有する前部光起電性電池、
−無孔のラミネーション中間層、
−1から(i−1)の光起電性電池の2(n−1)個の延長片に対してシフトした2個の延長片を備える、後部光起電性電池(n)を積層するステップを備え、かつ
−可能であれば、各電池又は各中間層が析出された後の連続的な操作により、又は可能であれば、各電池又は各中間層が組み立てられた後の単一ステップにより、
積層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】前述した、公知の多重接合光起電性電池を示す図。
図2】前述した、公知の多重接合光起電性電池のエネルギ効率を示す図。
図3】本発明の多重接合光起電性電池の概略図。
図4】本発明方法による多層電池のアセンブリの概略図。
図5】基板の面A及びBの説明図。
図6】光起電性電池の面の説明図で、面Eは光の入射面、面Sは光の出射面である。
図7】本発明の光起電性電池の電気配線の概略図。
図8】本発明の「背面電極」構成の概略図。
図9】本発明の配線のダイアグラム。
図10a】本発明のアセンブリ組み立て前の、「端面電極」(又は「側面電極」)構成の4個の二電極電池の積層を例示する図。
図10b】本発明のアセンブリ組み立て後の、「端面電極」(又は「側面電極」)構成の4個の二電極電池の積層を例示する図。
図10c】本発明のアセンブリ組み立て前の、「端面電極」(又は「側面電極」)構成の4個の二電極電池の積層を例示する概略図。
図10d】本発明のアセンブリ組み立て前の、「端面電極」(又は「側面電極」)構成の4個の二電極電池の積層を例示する概略図。
図10e】本発明のアセンブリ組み立て後の、「端面電極」(又は「側面電極」)構成の4個の二電極電池の積層を例示する概略図。
図11a】本発明のアセンブリ組み立て前の、「背面電極」構成の4個の二電極電池の積層を例示する図。
図11b】本発明のアセンブリ組み立て後の、「背面電極」構成の4個の二電極電池の積層を例示する図。
図11c】本発明のアセンブリ組み立て前で、光起電性電池の軸に対して電流出力端子の中心がずれている、「背面電極」構成の4個の二電極電池の積層を例示する図。
図12a】接続ストリップの延長片が、積層内に配置された中間の二電極電池(i)(1<i<n)を通過し、「背面電極」構成の多接合多電極電極中に位置する面Eが面Aに対応し、面Sが面Bに対応することを示す図。
図12b】接続ストリップの延長片が、積層内に配置された中間の二電極電池(1<I<n)を通過し、「背面電極」構成の多接合多電極電極中に位置する面Eが面Bに対応し、面Sが面Aに対応することを示す図。
図13a】電流出力端子が接続ストリップの端部の接点であることを示す図で、該接点は、光起電性電池の端面(又は側面)に位置している。
図13b】接点は、光起電性電池の端面(又は側面)に位置するハウジング内に位置し、プラグ(400、400´)は、接点(500、500´)と協働するようになっている。
図14a】電流出力端子が接続ストリップの端部の接点であることを示す図で、該接点は、光起電性電池の背面に位置している。
図14b】光起電性電池の背面で、プラグ(400、400´、400’’、400’’’)は、接点(500、500´、500’’、500’’’)と協働するようになっている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の特徴及び利点は、本発明の態様を例示する下記説明により明らかになると思う。
【0036】
本発明は、n個の光起電性電池のそれぞれの2個の電極に直接アクセスできる多接合多電極光起電性電池の製造方法を提供するものである。
【0037】
まず、2個の電気的に分離された多層接合(4個の電極)を有する光起電性電池の構造について説明するが、本発明方法は、n個(n≧2)の多層接合光起電性電池のアセンブリを備えるモジュールの製造に適用することができるものである。
【0038】
図3は、接合ボックスに電流を出力させるための、4個の電極を有する多層接合光起電性電池の概略断面図である。
【0039】
図3は、第1光起電性接合150を有する第1電極110及び第2電極120を備える第1光起電性電池を支持する第1基板100を(上部から下部へ)順に示す。透明かつ電気絶縁性材料のフィルム300は、前記第1の光起電性電池を、第2光起電性接合250を有する第1電極210及び第2電極220を備える第2電池から分離している。反射背面フィルム230を、前記第2光起電性電池の下方に設置しても良い。図3は、第2基板200を示している。前記電極110、120、210及び220は、接合ボックス50に接続されている。
【0040】
図4は、別個に製造された2個の光起電性電池を組み立てるステップの概略図である。電池160、260は、透光性の樹脂フィルム300の両側に装着されている。この装着は、例えばラミネーションにより行われる。
【0041】
図3は、2個の光起電性電池に限定されたアセンブリを示しているが、前記モジュールは、n個の光起電性電池を備えることができ、nは、2よりも大きい。この場合、モジュール内で、次の3タイプの光起電性電池が区別される。
−前部電池(i=1)、つまり光線が通過する第1の電池。
−中間の光起電性電池(1<i<n)。
−後部電池(i=n)、つまり最後に光線を受ける電池。
【0042】
各基板は、次の2面を有する(図5参照)。
−光エネルギの吸収体が形成されている面A(接合)。
−太陽放射の光起電性変換に特異的な析出を有しない面B。
【0043】
各光起電性電池は、次の2面を有する(図6参照)。
−太陽放射を受ける入口面E。
−基板と種々の薄層のアレイを通過した後に、太陽放射がそこから去るか、又は基板と種々の薄層のアレイを通過した後に、太陽放射がそこから反射する出口面S。
【0044】
個々の電池の積層に関しては、次のようになっている。
−前部の二電極光起電性電池(i=1)に関し、面Eは面Bに対応し、面Sは面Aに対応している。
−中間の二電極光起電性電池(1<i<n)のそれぞれに関し、面Eは面Bに対応し、面Sは面Aに対応している。
−後部の二電極光起電性電池(i=n)に関し、面Eは面Aに対応し、面Sは面Bに対応している。
【0045】
しかし、中間の二電極光起電性電池(1<i<n)の場合、それらの幾つか、あるいは全部を、面Eが面Aに対応し、面Sが面Bに対応するように配置することは、十分に可能である。
【0046】
各光起電性電池は、単独の基板上に形成される。
【0047】
前部(i=1)及び中間の(1<i<n)の電池の基板は、太陽放射に対して透明で、この太陽放射を、積層された光起電性電池のそれぞれの吸収性物質に到達するようにしている。
【0048】
この基板は、例えば、全てがガラス製でも、ポリウレタン又はポリカーボネート、又はポリメチルメタアクリレートのような熱可塑性樹脂製であっても良い。この基板は、本光起電性システムを適用するために有利なスペクトルの部分に関して、最良の透明性を有する可能性が生じるように選択される。
【0049】
後部光起電性電池の基板は、透明である必要はない。この基板は、例えばステンレス鋼、ガラス、ポリマー、セラミック、又は多数のこれらの成分の組成物からなっている。
【0050】
[基板の作製]
光起電性電池(i)の製造に使用する基板は、熱的、化学的及び機械的に安定で、二電極光起電性電池(i)の全ての製造方法に関して適合し、更に最終的な多電極光起電性電池の製造方法にも適合する。全ての基板は、同じ寸法を有する。
【0051】
[基板上への光起電性電池の作製]
前部、中間及び後部の二電極光起電性電池の製造について簡単に説明するが、この説明は、前記電池を組み立てる前の本発明の多電極光起電性装置の各電池の製造にも適用することができる。最終的な多電極光起電性電池を形成する各二電極光起電性電池の製造は、装置の面から見ても、あるいは立地面から見ても、完全に独立した生産ラインで行われる。各電池は、任意の公知方法、特に基板上への薄膜の析出により製造される。
【0052】
第1の透明な導電性酸化物系電極を、基板上に析出させる。一般に、透明な導電性酸化物フィルムは、約0.05μmから10μmの厚さを有し、例えば、フッ素をドープした酸化スズ系(SnO:F)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛系(ZnO:Al)、ホウ素をドープした酸化亜鉛系(ZnO:B)、又はインジウムスズ酸化物系(ITO)である。この酸化物フィルムは、可能な限り透明で、光起電性電池(i)及びそれに続く光起電性電池のアレイ(i+1からn)の吸収性物質を形成する物質の吸収スペクトルに対応する波長領域において、太陽放射を可能な限り伝達して、最終的な多電極光起電性モジュールの全変換効率を減少させないようにする。この透明で導電性であるフィルムは、例えば、カソードスパッタリング、LPCVD(低圧化学蒸着)又はMOCVD(金属有機化学蒸着)で析出させることができる。
【0053】
後部二電極光起電性電池(i=n)の場合、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)又は窒化チタンから成る後部反射体を使用することが可能である。この後部反射体は、前記基板と第1の透明な導電性電極間に析出させる。後部反射体は、例えば、カソードスパッタリング又は反応性カソードスパッタリングで析出させることができる。この態様は、光を外側に向けて反射させることができるため、光起電性電池モジュールを住居や工場の屋根に設置する用途に特に適している。
【0054】
次いで、この透明で導電性の酸化物フィルムを、例えばプラズマエッチング技術や塩酸HCl溶液に浸漬する化学的処理により表面を改質しても良く、これにより太陽放射の光学的封じ込めが改良され、最終的な多電極光起電性モジュールの全変換効率が改良される。
【0055】
次に、太陽放射を光起電的に変換できる吸収性物質を、第1の透明な導電性電極の表面に析出させる。例えば、この物質は、水素化無定形シリコン製のp−i―n接合又はn−i−p接合吸収体、水素化多形シリコン製のp−i―n接合又はn−i−p接合吸収体、水素化微結晶シリコン製のp−i―n接合又はn−i−p接合吸収体、又はその第1のp−i―n接合が無定形シリコン系であり、その第2のp−i―n接合が微結晶シリコン系である多層接合のような多接合タイプの薄膜吸収体、又は硫化カドミウムCdS製の緩衝層を有するテルル化カドミウムCdTe系の吸収体、又は硫化カドミウムCdS又は硫化インジウムIn製の緩衝層を有し、かつxが0と1の間にあるCu(InGa1−x)(Se,S)合金のような黄銅鉱系の吸収体、又はシリコンとゲルマニウムの水素化無定形合金SiGe1−x系の吸収体、又は、例えばポリ(3−ヘキシルチオフェン)及び[6,6]フェニルーC61酪酸メチル(P3HT/PCBM)タイプの有機吸収体とすることができる。
【0056】
前記接合を形成するために使用される物質は、異なった太陽放射吸収能を有することが好ましい。光起電性電池(i)に使用する吸収性物質は、引き続く光起電性電池(i+1からn)の吸収性物質を形成する物質の吸収スペクトルに対応する波長領域において高伝達性で、最終的な多電極光起電性モジュールの全変換効率を減少させないようにする。例えば4電極電池(n=2)の場合、すなわちそれぞれが2個の別個の電極を有する2個の電池から形成されている場合、前部電池(i=1)には、水素化された無定形シリコン製のp−i―n又はn−i―p接合の吸収体を、そして後部電池(i=2)には、水素化された微結晶シリコン製のp−i―n又はn−i―p接合の吸収体を、それぞれ選択する。
【0057】
最後に、第2の透明な導電性電極を、吸収体の表面に析出させる。SnO2:F、ZnO:Al、ZnO:B、又はITO系の透明な導電性酸化物フィルムは、可能な限り透明で、かつ光起電性電池(i)に使用する吸収性物質、及び引き続く全ての光起電性電池(i+1からn)の吸収性物質を形成する物質の吸収スペクトルに対応する波長領域において太陽放射を高度に伝達し、最終的な多電極光起電性モジュールの全変換効率を減少させないようにする。
【0058】
それ自身公知であるが、例えばレーザエッチング、機械的エッチング又はリフトオフプロセスにより、種々の薄膜を電池に区画するステップ、及び種々の表面を洗浄するステップは、複数の析出ステップ間に行い、単一の同じ基板に、直列接続された光起電性電池のネットワークを形成する。種々の薄膜を区画する連続ステップは、モノリチックな一体化により、それらの区画ステップ間に、基板表面に直列的に種々の電池を形成させる。種々の表面の洗浄ステップは、析出ステップと区画ステップ間に行っても良い。
【0059】
フィルムの周縁を電気的に分離する追加ステップを、基板の表面Aに行うこともできる。この分離は、例えばレーザを使用する方法により実施できる。
【0060】
最後に、基板表面Aに析出した全てのフィルムのストリップを、基板の周縁から除去し、析出物のないゾーンを画定する。基板周縁から全てのフィルムを除去すると、一方で外部環境から吸収性物質を分離することを可能にし、他方で基板の周縁で、ラミネーション中間層と直接接触させて、湿気や酸素と良好に隔離できる。周縁から除去されるストリップは、一般に10mmから15mmの幅を有する。
【0061】
周縁の前記フィルムの磨耗は、例えばレーザ磨耗により、又は例えばコランダム粉末又は磨耗ホイールを使用するサンドブラスト法による機械的磨耗により行うことができる。
【0062】
[光起電性電池の配線]
光起電性電池の電気配線は、本発明を特徴付けている。図7図12を参照する。図7において、集電ブス(180、180´、181、181´)は、直列的なモノリチックな一体化により、電池(i)のいずれかの端部に横向きに位置し、この光起電性電池で発生する電子を集めるようになっている。集電ブスは、基板の側縁に沿って延びている。これらの側部の集電ブスを位置させるために、自動はんだ機を使用したり、あるいは接続を手動で行ったりすることが可能である。
【0063】
次いで、2個の接続ストリップ(190、190´、191、191´)を、各集電ブスに接続する。各接続ストリップは、2本の集電ブスと、モジュール外の接触領域間のリンクとして機能する。前記接続ストリップは、前記集電ブスの方向に対して直角に配置され、それぞれは基板の中央に向かっている。集電ブスの方向と直角に位置する接続ストリップの部分の長さは、図7に示すように、光起電性電池中で変化する。特に、図7に示すように、光起電性電池(i)に固定された接続ストリップ(191、191´)の部分は、光起電性電池(i−1)に固定された接続ストリップ(190、190´)の部分より短いことに注目すべきである。この長さの変化のため、電流出力端子(185、185´、186、186´)の位置をシフトさせて、重なり合わないようになっている。このシフトにより、光起電性電池の電流出力端子が、互いに整列しないようにされる。整列すると、引き続く電流出力端子の接合ボックスへの接続を困難にし、これらの端子間に短絡を生じさせることになる。電池(i−1)の接続ストリップ(190、190´)を延ばして、前記ストリップが、電池(i)から電池(n)の全電池及びカプセルを通り、光起電性電池の背面から突出させることも可能である。接続ストリップ延長片は、図7で、符号195及び195´で示されている。図8は、一旦組み立てられた多電極光起電性装置を示す。
【0064】
図9は、4個の光起電性電池が積層され、集電ブスの方向に直角な接続ストリップの長さが、前部光起電性電池から後部光起電性電池に向けて小さくなることを示している。集電ブスの方向に直角に配置される接続ストリップの長さは、所定の光起電性電池の2個の電池に関しては同一である。
【0065】
基板の面Aに位置する電極の2個の接続ストリップを電気的に分離することが必要である。そのためには、面Aと2個の接続ストリップ間に、絶縁物質のストリップを位置させる。
【0066】
好ましい態様によると、電流出力端子は基板から突出し、基板と平行な面に位置する。これは、「端面電極」構成(図10a及び10b)として知られる。電池(i)の電流出力端子は延びていて、基板及びカプセルの端面(又は側面)から突出している。積層された光起電性電池から成る装置は、上面、下面、及び4つの側面から成る平行六面体の形状を有している。上面は受光面である。「端面電極」構成は、光起電性装置の一側面から電流出力端子が出ていることに対応する。光起電性電池の種々の部材を組み立てると、電流出力端子(185、186、187、188、185´、186´、187´及び188´)は互いにシフトすることに注目すべきである。「シフトした電流出力端子」とは、いずれの2個の電流出力端子も、光起電性装置の上面により形成される面に直角である所定面に位置しないことを意味していると理解するべきである。
【0067】
接続が依然として光起電性装置の端面(又は側面)に対して行われている他の態様では、接続ストリップの端部に位置する接点(500、500´)と協働するプラグ(400、400´)を装着することが可能である。前記接点は、光起電性電池の端面(又は側面)上に、又は光起電性電池の端面(又は側面)に位置するハウジング(600、600´)上のいずれかに位置できる。
【0068】
集電ブスの方向に直角に位置する接続ストリップの長さが、所定の光起電性電池の2つの電池に関して異なっている、図11c、図11d及び図11eに示す態様を含めることも可能である。
【0069】
他の好ましい態様では、電流出力端子は基板から突出し、基板と直角な面に位置している。これは、「背面電極」構成(図11a、図11b及び図11c)として知られている。従ってこの「背面電極」構成は、光起電性装置の底面から電流出力端子が出ていることに対応している。
【0070】
電極が電池の端面(又は側面)に位置する多接合多電極光起電性電池の場合、基板に前もって孔をあけておく必要はない。
【0071】
電極が電池の背面に位置する多接合多電極光起電性電池の場合、基板を前もって作製する必要がある。これは、各光起電性電池の電極を、2個の別個の電極としてモジュールの下面に到達させるために、基板(i=2からn)は、孔をあけて電流出力端子を通過させる必要があるからである(図11a)。電池2は、4個の孔(350、351、352、353)を有する。電池3は、6個の孔(360、361、362、363)を有する。後部電池は、8個の孔(370、371、372、373、374、375、376、377)を有する。所定の電池について、一連の孔の端部のそれぞれに2個の孔が存在するように選択することは任意である。これは、接続ストリップが光起電性電池の下面に位置すれば、前記2個の孔は存在しなくても良いからである。しかし、接続ストリップが光起電性電池の上面に位置する場合は、前記の孔は必要である。前部電池(i=1)の基板は孔を有しない。これは、前部電池が最終的な多電極光起電性電池のカバーとして機能するからである。更に、電池(i)の接続ストリップの内端は、カプセル(i)に存在する孔と一致する(図11a)。図7に示すように、電池(i)の接続ストリップを延ばし、該接続ストリップが全ての基板及びカプセルを通過させて、多電極光起電性電池の背面から突出させることも可能である。
【0072】
接続ストリップ(195、195´)を延ばすための延長片を使用する際には、これらの延長片が、基板の面Sから出射することを確実にすることが必要である。中間の二電極光起電性電池(1<i<n)が積層され、面Eが面Aに、面Sが面Bに対応する前記場合には、光起電性電池(i)の接続ストリップの延長片が、基板(i)に開口され、かつこの目的のために形成された孔を確実に通るようにすることが必要である(図12a)。
【0073】
中間の二電極光起電性電池(1<i<n)が積層され、面Eが面Bに、面Sが面Aに対応する場合には、光起電性電池(i)の接続ストリップの延長片は、基板(i)に開口された孔を通らない(図12b)。
【0074】
中間の二電極光起電性電池(1<i<n)が積層され、面Eが面Bに、面Sが面Aに対応する場合には、光起電性電池(i)を保持する基板(i)は、基板の1つの端部に平行なラインに前もって開口された2i個の孔を有する。この基板の2(i−1)個の中央孔は、中間層(i―1)に開口された孔と一致する。この基板は、これらの孔のいずれかのサイドの2個の追加的な孔を含んでいても良い。
【0075】
中間の二電極光起電性電池(1<i<n)が積層され、面Eが面Aに、面Sが面Bに対応する場合には、光起電性電池(i)を保持する基板(i)は、基板の1つの端部に平行なラインに開口された2(i−1)個の孔を有する。この基板の2(i−1)個の中央孔は、中間層(i)に設けられた孔と一致する。
【0076】
後部電池(i=n)の基板は、該基板の1つの端部に平行なラインに開口された2n個の孔を有する。この基板の2(n−1)個の中央孔は、中間層(n−1)に開口された孔と一致する。この基板は、これらの孔のいずれかのサイドの2個の追加的な孔を含んでいても良い。
【0077】
最終的な多電極光起電性モジュールの全変換効率を減少させないために、各電池の集電ブスと電流出力端子を同一面に位置させることが好ましい。
【0078】
接続ストリップの延長片は使用しなくても良い。各光起電性電池及び接合ボックス間の電気的接続は、光起電性電池の背面に位置する接点(500、500´)と協働する、異なった長さのプラグ(400、400´)により可能になる(図14a及び図14b)。
【0079】
種々の集電ブス及び接続ストリップの配置及びはんだ付けは、手作業で行うことができる。しかし、一般的には、この操作は自動的なシステムを使用して実行する。集電ブスと電流出力端子は、ニッケル被覆した銀リボン、銀被覆したニッケルリボン、スズビーズ、スズ被覆した銅リボン、銅被覆したスズリボン、又は光起電性電池で発生した電流を伝達でき、かつ光起電性電池の電極へはんだ付けできる他の任意の物質などの金属ストリップとすることができる。
【0080】
[ラミネーション中間層の選択]
一旦、前部、中間及び後部電極が別個に製造されると、それらは、(カプセル)ラミネーション中間層により互いに結合される。
【0081】
二電極電池を結合して多接合多電極電池とするために選択されるラミネーション中間層は、次の機能を有しなければならない。
−機械的保護を提供する、
−水蒸気及び酸素に対する障壁として作用する、
−電気的分離を提供する、
−衝撃吸収体として作用する、
−電池材料の腐食源として作用しない、
−接着性を有する。
【0082】
前記選択は、例えばエチレン/酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリアクリレート樹脂のようなエラストマ、又はシリコーン、及びポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン熱可塑性樹脂及びある種の改質ポリオレフィン(EPDM、DMP)のような熱可塑性樹脂から行われる。他のラミネーション中間層もEVAとともに、あるいはEVAの替わりに使用でき、その例は、テドラ(Tedlar、登録商標)又はテフゼル(Tefzel、登録商標)タイプのプラスチック、又はUV硬化性被覆及びこれらの組み合わせである。
【0083】
ラミネーション中間層は、可能な限り透明で、光起電性電池(i)及びそれに続く全光起電性電池(i+1からn)の吸収性物質を形成する物質の吸収スペクトルに対応する波長領域において、太陽放射を可能な限り高度に伝達して、光起電性モジュールの効率を減少させないようにする。
【0084】
[カプセルの作製]
全てのカプセルは、基板と同じサイズである。
【0085】
その電極が電池の端面(又は側面)に位置する多接合多電極光起電性電池の製造の場合、カプセルを前もって作製する必要はない(図10a及び図10b)。
【0086】
その電極が電池の背面に位置する多接合多電極光起電性電池の製造の場合、カプセルを前もって作製する必要がある。これは、各光起電性電池の電極を、2個の別個の電極としてモジュールの下面に到達させるために、カプセル(i=1からn―1)に、孔を形成するからである(図11a、図11b、図11c)。
【0087】
一般に、電池(i)の基板と電池(i+1)の基板間に位置するカプセルは、基板の1つの端部に、平行なラインに前もって開口された2i個の孔を有する。この基板の2(i−1)個の中央孔は、基板(i)に開口された孔と一致している。
【0088】
シール又はシール用樹脂を、基板(i)の面Sの周縁又は基板(i+1)の面Eの周縁のいずれかの、各基板間に位置させることもでき、これにより基板(i)と基板(i+1)間に追加的なシールを提供して、特に湿気に対するシールを向上させる。このシール又はシール用樹脂は、例えば、エチレン/酢酸ビニル又はポリイソブチレン、又はポリウレタン、ポリスルフィド、又はシリコーン系マスチック樹脂などの熱溶融性樹脂である。
【0089】
後部基板の孔のはんだ接合は、環境に関する更なる保護の観点から、エポキシドで被覆しても良い。
【0090】
[個々の二電極光起電性電池及びラミネーション中間層からの多接合多電極光起電性電池の組み立て]
種々の二電極光起電性電池を互いに結合させる。そのためには、ラミネーション中間層1を、光起電性電池1の面Sの表面に位置させる。次いで、電池2の面Eを前記ラミネーション中間層1上に位置させる。一般に、光起電性電池を結合させるためには、光起電性電池(i)の面Sの表面にラミネーション中間層(i)を析出させる。最後に、光起電性電池(n)の面Eを、ラミネーション中間層(n−1)上に位置させる。
【0091】
種々の二電極光起電性電池の結合のためのこのステップの間、その電極が電池の背面に位置する多接合多電極光起電性電池の製造の場合、ラミネーション中間層を配置する際に、ラミネーション中間層(i)の孔が、(i)個の先行電池の接続ストリップの内端と確実に一致させる必要がある。同様に、電池(i)を配置する際には、中間層(i−1)の孔が、基板(i)の孔と確実に一致することが重要である。
【0092】
電池の背面に位置する電極を有する多電極電池で接続ストリップ延長片を使用する場合、(i―1)個の先行する電池の接続ストリップの延長片が、ラミネーション中間層(i)の一致する孔を確実に通過し、かつラミネーション中間層(i)の2個の自由孔を通して、光起電性電池(i)の接続ストリップの2個の延長片を通過させることが必要である。同様に、電池(i)を配置する際には、中間層(i−1)の孔が、基板(i)の孔と確実に一致することが重要である(図11a)。
【0093】
接点が、電池の端面(又は側面)を介して多電極電池に形成されている場合は、基板(i)の端面(又は側面)に位置する光起電性電池(i)の2個の電極の接続ストリップは、先行する(i−1)光起電性電池の電極の接続ストリップの真上に位置しないようにすることが重要である(図10b)。
【0094】
この多接合多電極光起電性電池の種々の部材の結合ステップでは、基板とラミネーション中間層が、互いに良好に整列することが重要である。この整列は、作業員により手動で、又は画像制御の使用や、例えば整列を行えるロボットの使用により自動的に行える。
【0095】
次いで、n個の二電極光起電性電池及び(n−1)個の中間層の積層を備えるアレイを、多接合多電極光起電性電池の結合を行うラミネートシステムに位置させて、前記結合を完了させる。この最後のラミネーションは、例えば真空ラミネータ又はローララミネータ中で、次いでオートクレーブ中で加工して実施できる。
【0096】
このようにして得られた光起電性モジュールは、全てがモジュールの同じ側面か端面に位置する電流出力端子を介して、1又は2以上の接合ボックスに接続される。該接合ボックスは、前記モジュールを、一般に、本線グリッドと適合し、かつDC電圧をAC電圧に変換するための、電子装置から成る使用者のインタフェースに電気的に確実に接続する。前記モジュールは、単一の接合ボックスに接続されることが好ましい。単一の接合ボックスは、光起電性電池モジュールを支持するパネルのフレームに設置することが好ましく、このモジュールは側面電極を有し、背面電極を後部電池の面Sに有する。
【符号の説明】
【0097】
100、200 第1基板
110、210 第1電極
120、220 第2電極
160、260 光起電性電池
300 ラミネーション中間層
185、185´、186、186´、187、187´、188、188´ 電流出力端子
150、250 光起電性接合
180、180´、181、181´ 集電ブス
190、190´、191、191´ 接続ストリップ
195、195´ 延長片
230 反射背面フィルム
250 接合ボックス
300 フィルム
350〜357 孔
370〜377 孔
400、400´、400’’、400’’’ プラグ
500、500´、500’’、500’’’ 端部接点
600、600´ ハウジング
A、B、E、S 面
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10a
図10b
図10c
図10d
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