特開2015-9275(P2015-9275A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-9275(P2015-9275A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/22 20060101AFI20141216BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20141216BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20141216BHJP
【FI】
   B23K26/22
   B23K15/00 505
   B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-132081(P2014-132081)
(22)【出願日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】13174330.4
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504117534
【氏名又は名称】テーイー・アウトモティーフェ(ハイデルベルク)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター・ヘルゼル
【テーマコード(参考)】
4E066
4E168
【Fターム(参考)】
4E066AB02
4E066CA08
4E168BA16
4E168BA21
4E168BA54
4E168DA43
(57)【要約】
【課題】
2つの部材を継続的かつ機械的に高い許容荷重をもって互いに接合することができ、簡単かつ迅速な実行可能性によって際立った溶接方法を提供すること。
【解決手段】
好ましくは燃料システムの2つの部材である、2つの部材1,2の結着のための、特にタック溶接方法である溶接方法であって、前記両部材1,2の互いに結着されるべき範囲が、少なくとも1つの第1のエネルギーパルスによってそれぞれ加熱されるとともに、それぞれ部分的に溶融され、前記両部材1,2の部分的に溶融された範囲が、溶接継ぎ目5を形成しつつ互いに結着され、別のエネルギーパルスが、好ましくは前記溶接継ぎ目5の凝固後に、前記溶接継ぎ目5の中央部分のみが新たに溶融されるように前記溶接継ぎ目5へ向けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは燃料システムの2つの部材である、2つの部材(1,2)の結着のための、特にタック溶接方法である溶接方法であって、
前記両部材(1,2)の互いに結着されるべき範囲が、少なくとも1つの第1のエネルギーパルスによってそれぞれ加熱されるとともに、それぞれ部分的に溶融され、
前記両部材(1,2)の部分的に溶融された範囲(8)が、溶接継ぎ目(5)を形成しつつ互いに結着され、
別のエネルギーパルスが、好ましくは前記溶接継ぎ目(5)の凝固後に、前記溶接継ぎ目(5)の中央部分(9)のみが新たに溶融されるように前記溶接継ぎ目(5)へ向けられることを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
前記別のエネルギーパルスによって、前記溶接継ぎ目の表面(7)に隣接する体積セグメント(10)が溶融されることを特徴とする請求項1記載の溶接方法。
【請求項3】
前記別のエネルギーパルスが、前記両部材(1,2)の接合後、並びに前記第1のエネルギーパルスによって加熱及び/又は溶融された前記範囲(8)の好ましくは部分的な凝固後、前記溶接継ぎ目(5)へ向けられることを特徴とする請求項1又は2記載の溶接方法。
【請求項4】
前記エネルギーパルスがレーザーパルスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記第1のエネルギーパルス及び/又は前記別のエネルギーパルスが、同一のエネルギー源、好ましくはレーザー源によって生成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項6】
前記エネルギー源の位置、好ましくはレーザー源の位置が、前記第1のエネルギーパルス及び/又は前記別のエネルギーパルスの前記両部材(1,2)への配向時に不変であるかあるいは変化しないことを特徴とする請求項5記載の溶接方法。
【請求項7】
前記別のエネルギーパルスが、前記第1のエネルギーパルスの20〜200ms後に前記部材(1,2)へ向けられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項8】
前記別のエネルギーパルスのエネルギーが前記第1のエネルギーパルスのエネルギーよりも小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記別のエネルギーパルスの直径が前記第1のエネルギーパルスの直径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項10】
前記溶接継ぎ目(5)が追加的な溶接フラックスの付加なしに生じることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記溶接継ぎ目(5)が溶接フラックスの供給の下で形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を結着するための、特にタック溶接方法である方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の種類の溶接方法は、現場において基本的に知られたものである。ここで、互いに結着されるべき部材の互いに接合すべき範囲が溶融されること、及びその後両部材が溶融された範囲において溶接継ぎ目を形成しつつ互いに接合されることが実証されている。特に、両部材の互いに接合されるべき表面範囲をレーザーの照射によって溶融することが実証されている。しかしながら、現場において知られた溶接方法によって生成可能な溶接継ぎ目の機械的な許容荷重及び耐久性は、改善の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明は、2つの部材を継続的かつ機械的に高い許容荷重をもって互いに接合することができ、簡単かつ迅速な実行可能性によって際立った溶接方法を提供するという技術的な問題を基礎とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的な問題の解決のために、本発明は、好ましくは燃料システムの2つの部材である、2つの部材の結着のための、特にタック溶接方法である溶接方法であって、前記両部材の互いに結着されるべき範囲が、少なくとも1つの第1のエネルギーパルスによってそれぞれ加熱されるとともに、それぞれ部分的に溶融され、前記両部材の部分的に溶融された範囲が、溶接継ぎ目を形成しつつ互いに結着され、別のエネルギーパルスが、好ましくは前記溶接継ぎ目の凝固後に、前記溶接継ぎ目の中央部分のみが新たに溶融されるように前記溶接継ぎ目へ向けられるようになっている。溶接継ぎ目の中央部分は、第1のエネルギーパルスによる負荷の後に両部材が互いに接合あるいは結着されている場合に、特に両部材の間の部分である溶接継ぎ目の部分を意味している。溶接継ぎ目の中央部分は、機械的に最も強く負荷を受ける溶接継ぎ目の範囲であることが分かる。
【0005】
前記部材は、例えば、好ましくはガソリン直噴システム(GDIシステム)の燃料配管である。これら部材は、好ましくは同一の材料、例えば1つの実施形態に基づきステンレス鋼から成っている。これら部材をそれぞれ合成樹脂で形成することも可能である。基本的に、両部材を異なる材料、例えば異なる鋼で形成することが可能である。合目的には、互いに結合された部材が、溶接継ぎ目の形成前に互いに対して調整される。両部材が溶接継ぎ目を形成しつつ互いに接合されるか、あるいは互いに結着されることは、本発明の範囲においては、特に両部材が溶着式に互いに結合されることを意味している。
【0006】
特に好ましくは、第1のエネルギーパルスのみで互いに結着された両部材の範囲がそれぞれ加熱(再加熱)され、部分的に溶融される。両部材の互いに結着される範囲がそれぞれ複数の第1のエネルギーパルスによって再加熱及び溶融されることが可能である。両部材の互いに結着される範囲は、合目的には、推奨されるべきは各部材の互いに溶着された各部材の壁部の範囲である。1つの実施形態によれば、第1の及び/又は別のエネルギーパルスは、エネルギーパルスの継続時間にわたって可変である。
【0007】
1つの実施形態によれば、別のエネルギーパルスによって溶接継ぎ目の表面に隣接する体積セグメントが溶融される。合目的には、溶融された体積セグメントは、リングとして形成されているとともに、第1のエネルギーパルスによって、加熱され、及び/又は溶融された両部材の範囲で形成された溶接継ぎ目の表面の一部を形成している。本発明の範囲では、溶接継ぎ目の体積セグメントの表面から、各部材の加熱された範囲によって表面とは離反した部材の背側の方向へ温度勾配が形成されることが重要であり、部材の温度は、溶融された、表面側の体積セグメントから前記部材の背側へ減少する。
【0008】
好ましくは、別のエネルギーパルスが、両部材の接合後、並びに第1のエネルギーパルスによって加熱及び/又は溶融された範囲の好ましくは部分的な凝固後、溶接継ぎ目へ向けられる。特に体積セグメントによって好ましくは径方向に包囲された溶接継ぎ目の一部が第1のエネルギーパルスの負荷の後にまだ凝固していない場合には、体積セグメントが別のエネルギーパルスによって溶融されるのが望ましい。これにより、例えば溶接継ぎ目の冷却により溶接継ぎ目に開けられ得るとともに溶接継ぎ目の耐久性を損ねる亀裂が閉じられる。基本的に、両部材の結着後、及び第1のエネルギーパルスによって溶融された両部材の範囲の凝固後に、複数の別のエネルギーパルスが溶接継ぎ目へ向けられることも可能である。特に好ましくは、単に別のエネルギーパルスのみが溶接継ぎ目へ向けられる。
【0009】
本発明の範囲においては、第1のエネルギーパルス及び/又は別のエネルギーパルスが重要である。特に好ましくは、第1及び別のエネルギーパルスがそれぞれレーザーパルスである。基本的には、第1のエネルギーパルス及び/又は別のエネルギーパルスが「アークパルス、電流パルス、プラズマビームパルス、音波パルス、電子パルス」の群から選択されたエネルギーパルスであることが可能である。
【0010】
好ましくは、第1のエネルギーパルス及び/又は別のエネルギーパルスが、同一のエネルギー源によって生成される。基本的には、第1及び/又は別のエネルギーパルスの生成のために、異なるパルス源、特に異なるレーザー源を用いることが可能である。
【0011】
推奨されるべきは、好ましくはレーザー源であるエネルギー源の位置が、第1のエネルギーパルス及び/又は別のエネルギーパルスの両部材への配向時に不変あるいは変化しない。エネルギー源、好ましくはレーザー源が操作ユニットあるいは制御ユニットに接続されることが可能であり、エネルギー源、好ましくはレーザー源の位置及び/又は整向は、第1のエネルギーパルス及び/又は別のエネルギーパルスの両部材への照射時に変化しないか、あるいは不変である。
【0012】
1つの実施形態によれば、別のエネルギーパルスは、第1のエネルギーパルスの20〜200ms後に部材へ向けられる。1つの好ましい実施形態によれば、別のエネルギーパルスは、第1のエネルギーパルスの40〜120ms後に部材へ向けられる。別のエネルギーパルスが第1のエネルギーパルスの50〜100ms後に部材へ向けられることが可能である。本発明の範囲においては、特に完全な冷却及び/又は凝固の後に別のエネルギーパルスが溶接継ぎ目の金属部分へ向けられることが重要である。
【0013】
1つの好ましい実施形態によれば、別のエネルギーパルスのエネルギーが第1のエネルギーパルスのエネルギーよりも小さい。これにより、両部材の壁範囲あるいは壁部が新たに溶融されることなく、溶接継ぎ目の中央部分のみが別のエネルギーパルスによって新たに溶融されることが保証される。別のエネルギーパルスによる溶接継ぎ目の中央部分の照射によって、溶接継ぎ目の弱化のおそれなく、溶接継ぎ目における亀裂を信頼性をもって閉じることが可能である。
【0014】
合目的には、別のエネルギーパルスの直径が第1のエネルギーパルスの直径よりも小さい。特に好ましくは、特に部材の溶接継ぎ目側の壁部範囲を排除するか、あるいは最小化するために、別のエネルギーバルスによる溶接継ぎ目の中央部分の照射が溶接継ぎ目の中央部分にフォーカスされる。
【0015】
溶接継ぎ目を追加的な溶接フラックスの付加なしに生じさせることが可能である。基本的に、溶接継ぎ目を溶接フラックスの供給の下で形成することが可能である。溶接フラックスは、好ましくは部材の壁部と同一の材料から成っている。
【0016】
本発明は、本発明による方法により、2つの部材が継続的かつ機械的に安定して互いに結着され得るという認識に基づいている。本発明による方法により、好ましくは、溶接継ぎ目における、現場において知られた方法において溶接継ぎ目の冷却時にこの溶接継ぎ目の生成直後に生じる亀裂の発生が防止される。ここで、本発明による方法は、容易な実行性及び高い機能信頼性によって卓越している。これにより、溶接過程に続く溶接継ぎ目のチェックが非常に簡易であり、場合によってはこれを省略することが可能である。この点では、本発明による方法は、高い動作信頼性及び経済性によって卓越している。好ましくは、本発明による方法が迅速に実行可能であり、そのため、本発明による方法により、多数の溶接過程を驚くほど短時間に機能信頼性をもって実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来技術による溶接継ぎ目の平面図である。
図2】本発明による方法で生成された溶接継ぎ目の平面図である。
図3】本発明による方法で生成された溶接継ぎ目の、第1のエネルギーパルスの照射後の断面図である。
図4】本発明による方法で生成された溶接継ぎ目の、別のエネルギーパルスの照射後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、1つの実施例を示す添付図面に基づき本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1には2つの部材1,2が示されており、これら部材は、従来技術において知られた溶接方法に基づく溶接継ぎ目3によって互いに接合されている。溶接継ぎ目3が亀裂4を有しているのが認識でき、この亀裂4によって、部材1,2が信頼性をもって互いに結着されていないように弱化されている。
【0020】
本発明による方法により、亀裂なく形成され、両部材1,2が図2に基づき信頼性をもって互いに接合される溶接継ぎ目5を生じさせることができる。第1のレーザーパルスによって、部材1の表面7に隣接する範囲8が、本実施の形態に基づき、かつ、図3に示されているように、加熱され、溶融される。さらに、部材1は、図3及び図4に示された、同様に加熱され、溶接継ぎ目5を形成しつつ溶融された範囲8を有する部材2に結着されるものである。溶接継ぎ目5は、本実施の形態に基づき、壁材料あるいは部材1,2の材料によって、溶融された範囲8に形成されている。
【0021】
溶接継ぎ目5の中央部分9が当該溶接継ぎ目5の凝固によって形成される材料に起因して特別な応力下にあるとともに、中央部分9の材料の凝固によって、図3に示されているように亀裂6が形成されかねないということが分かる。中央部分9の他のレーザーパルスでの照射により、中央部分9の体積セグメント10が新たに溶融されることで、中央部分9の凝固後に形成された亀裂6が閉じられる。これにより、図4に基づく溶接継ぎ目5が亀裂のない溶接継ぎ目5として形成される。本実施の形態によれば、他のレーザーパルスは、第1のレーザーパルスよりも小さなエネルギーを有している。
【符号の説明】
【0022】
1,2 部材
3 溶接継ぎ目
4 亀裂
5 溶接継ぎ目
6 亀裂
7 部材の表面
8 溶融された範囲
9 中央部分
10 体積セグメント
図1
図2
図3
図4