特開2015-92916(P2015-92916A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015092916-吸収性物品 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-92916(P2015-92916A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20150421BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20150421BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20150421BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20150421BHJP
【FI】
   A41B13/02 E
   A41B13/02 F
   A41B13/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-232428(P2013-232428)
(22)【出願日】2013年11月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA08
3B200BB03
3B200CA11
3B200DA23
3B200DC01
3B200DD01
(57)【要約】
【課題】肌に触れる表面側は滑らかで柔らかく、肌触りの良い触感であり、紙おむつと接する裏面側は紙おむつからずれにくい吸収性物品、を提供する。
【解決手段】吸収性物品であって、液透過性の第1のトップシートと、液透過性の第2のトップシートと、第1のトップシートと第2のトップシートとの間に設けられた吸収層とを備え、第1のトップシートが第2のトップシートとは異なる静摩擦係数を有することを特徴とする吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品であって、
液透過性の第1のトップシートと、
液透過性の第2のトップシートと、
前記第1のトップシートと前記第2のトップシートとの間に設けられた吸収層とを備え、
前記第1のトップシートが前記第2のトップシートとは異なる静摩擦係数を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1のトップシートが前記第2のトップシートよりも小さい静摩擦係数を有することを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1のトップシートが不織布により形成され、0.2以上0.8以下の静摩擦係数を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第2のトップシートが不織布により形成され、0.8以上1.5以下の静摩擦係数を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1のトップシートが前記第2のトップシートよりも0.2以上小さい静摩擦係数を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。より詳細に、本発明は、表面側、裏面側の両面どちらからでも尿を吸収可能な、使い捨て紙おむつなどに用いられる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児や成人の尿などの排せつ物を吸収するため、パンツ型やテープ止めタイプ、パッドタイプ、衛生用ナプキン等様々な吸収性物品が使用されている。特に、表面側、裏面側の両面どちらからでも尿を吸収可能な吸収性物品においては、テープ止めやパンツ等他の使い捨て紙おむつ等と組み合わせて使用されている(特許文献1〜3)。この様な吸収性物品は、肌に触れる表面側は滑らかで柔らかく、肌触りの良い触感であり、紙おむつと接する裏面側は紙おむつからずれにくいことが好ましい。しかしながら、従来の表面側、裏面側の両面どちらからでも尿を吸収可能な吸収性物品は、表裏面が同一の素材であるため両方の要求を同時に満たすことが難しい、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−132537号公報
【特許文献2】特開2013−043042号公報
【特許文献3】特開2013−043041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肌に触れる表面側は滑らかで柔らかく、肌触りの良い触感であり、紙おむつと接する裏面側は紙おむつからずれにくい吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、表面側の液透過性トップシートと、裏面側の液透過性トップシートと、その間に設けられた吸収層とを備えた吸収性物品において、表面側液透過性トップシートの静摩擦係数と裏面側液透過性トップシートの静摩擦係数に特定範囲の差異がある場合に限って、肌に触れる表面側は滑らかで柔らかく、肌触りの良い触感であり、紙おむつと接する裏面側は紙おむつからずれにくい吸収性物品が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねた結果、完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
〔1〕吸収性物品であって、液透過性の第1のトップシートと、液透過性の第2のトップシートと、第1のトップシートと第2のトップシートとの間に設けられた吸収層とを備え、第1のトップシートが第2のトップシートとは異なる静摩擦係数を有することを特徴とする吸収性物品。
〔2〕第1のトップシートが第2のトップシートよりも小さい静摩擦係数を有することを特徴とする〔1〕に記載の吸収性物品。
〔3〕第1のトップシートが不織布により形成され、0.2以上0.8以下の静摩擦係数を有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の吸収性物品。
〔4〕第2のトップシートが不織布により形成され、0.8以上1.5以下の静摩擦係数を有することを特徴とする〔1〕ないし〔3〕のいずれか1項に記載の吸収性物品。
〔5〕第1のトップシートが第2のトップシートよりも0.2以上小さい静摩擦係数を有することを特徴とする〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、テープ止めやパンツ等他の紙おむつと組み合わせて使用された場合において、肌に触れる表面側は滑らかで柔らかく、肌触りの良い触感であり、紙おむつと接する裏面側は紙おむつからずれにくい、といった優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の吸収性物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸収性物品は、液透過性の第1のトップシートと、液透過性の第2のトップシートと、第1のトップシートと第2のトップシートとの間に設けられた吸収層とを備え、第1のトップシートが第2のトップシートとは異なる静摩擦係数を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の吸収性物品の具体例を図1に示す。
図1において、本発明の吸収性物品1は肌に触れる表面側に用いられる液透過性の第1のトップシート3と、紙おむつと接する裏面側に用いられる液透過性の第2のトップシート4と、第1のトップシート3と第2のトップシート4との間に設けられた尿などの排せつ物を吸収する吸収層2を備える。
【0011】
第1のトップシート3は、吸収性物品1の肌に触れる表面側に用いられ、液透過性である。使用者の肌に触れるため、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない静摩擦係数の低い不織布により形成されていることが好ましく、エアスルータイプ、スパンボンドタイプ、あるいはポイントボンドタイプの不織布が好ましい。不織布の摩擦性は、一般に構成繊維の繊度(太さ/細さ)の低いものが、表面が滑らかであり摩擦係数は低いので、構成繊維の繊度によって、第1のトップシート3に適した静摩擦係数の低い不織布を選ぶことが出来る。静摩擦係数はJIS K7125に準拠して測定した値である。
第1のトップシート3に用いられる不織布は、0.2以上0.8以下の低い静摩擦係数を有することが好ましく、0.2以上0.6以下の静摩擦係数を有することがさらに好ましい。静摩擦係数が0.2未満であると繊度が小さすぎる(細かすぎる)ため吸収速度が悪くなり、逆に静摩擦係数が0.8よりも高い場合には、肌に触れた時に感触が硬く皮膚に刺激を与える恐れがある。
【0012】
第2のトップシート4は、吸収性物品1の紙おむつと接する裏面側に用いられ、液透過性である。紙おむつに触れるため、紙おむつからずれにくいように抵抗の大きい静摩擦係数の高い不織布により形成されていることが好ましく、エアスルータイプ、スパンボンドタイプ、あるいはポイントボンドタイプの不織布が好ましい。不織布の摩擦性は、繊度の高いものが、表面が荒く繊維の引っかかりが大きいため摩擦係数は高いので、構成繊維の繊度によって、第2のトップシート4に適した静摩擦係数の高い不織布を選ぶことが出来る。静摩擦係数はJIS K7125に準拠して測定した値である
第2のトップシート4に用いられる不織布は、0.8以上1.5以下の高い静摩擦係数を有することが好ましく、1.0以上1.5以下の静摩擦係数を有することがさらに好ましい。静摩擦係数が0.8未満であると吸収性物品と紙おむつとの抵抗が小さいため吸収性物品と紙おむつがずれる恐れがあり、逆に静摩擦係数が1.5よりも高い場合には滑りが悪くなるために、吸収性物品の製造時やポリ袋への包装時にトラブルが発生しやすくなる。
【0013】
本発明において、第1のトップシート3は第2のトップシート4よりも小さい静摩擦係数を有する。第1のトップシート3は第2のトップシート4よりも0.2以上小さい静摩擦係数であることが好ましく、0.5以上小さい静摩擦係数であることが更に好ましい。第1のトップシート3が第2のトップシート4よりも静摩擦係数が0.2よりも小さくなると、第1のトップシート3と肌との接触抵抗と、第2のトップシート4と紙おむつとの接触抵抗とが近くなるため、吸収性物品が肌や紙おむつとずれる可能性がある。
【0014】
吸収層2は、第1のトップシート3と第2のトップシート4との間に設けられ、第1のトップシート3及び第2のトップシート4を通過した尿などの排せつ物を吸収する。
吸収層2は、尿などの排せつ物を吸収できるものであればいずれの物質であっても良いが、例えばフラッフパルプのような、フラッフのウェブの親水性繊維マトリックスを、公知の高吸水性樹脂(以下、SAPと呼称することがある。)の粒子と混合して形成することができる。ここでフラッフパルプとしては、サウザンパインやダグラスファーなどのN−BKPが好適に使用される。機械的な解繊が容易なように薬剤処理したものを用いてもよい。フラッフには、フラッフパルプの代わりに合成繊維、ポリマー繊維、連続気泡を有する発泡体などを使用してもよい。
【0015】
第1のトップシート3と第2のトップシート4は、おむつからのずれを防止する観点から、吸収層2を挟み込み、第1のトップシート3と第2のトップシート4の縁部をホットメルト接着剤あるいはヒートシールにより貼りあわせ、吸収層2を固定することが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0017】
実施例において、静摩擦係数、第1のトップシートの表面肌触り官能評価、及び第2のトップシートとおむつとのずれ官能評価は次の方法によって評価した。
【0018】
<静摩擦係数>
JIS K7125に準拠して測定した。
【0019】
<表面肌触り官能評価>
表面肌触り官能評価は、第1のトップシート表面について、装着前に手で触った感触及びおむつに装着して肌に触れる感触のそれぞれについて相対比較評価により行った。この評価は、調査員20名によるモニター装着テストによる評価点方式によって行った。評価点は、表1に示した参考例を標準として、参考例よりも良い3点、同等1点、悪い0点の3段階とし、調査員による評価点の平均値とした。
【0020】
<おむつとのずれ官能評価>
おむつとのずれ官能評価は、第2のトップシート表面と併用するおむつに当てて装着している間に発生するおむつとのずれについて、装着中のずれの感触と装着後のおむつとの目視によるずれのそれぞれについて相対比較評価により行った。この評価は、調査員20名によるモニター装着テストによる評価点方式によって行った。評価点は、表1に示した参考例を標準として、参考例よりも良い(ずれが小さい)3点、同等1点、悪い(ずれが大きい)0点の3段階とし、調査員による評価点の平均値とした。
【0021】
実施例1
静摩擦係数0.4、坪量20g/m、のエアスルー不織布により形成された第1のトップシート、静摩擦係数1.0、坪量20g/m、のエアスルー不織布により形成された第2のトップシート、及びフラッフパルプ16gとSAP4gの混合物により形成された長手方向長さ420mmで短方向長さ150mmの吸着層から成る吸収性物品(長手方向長さ480mm、短方向長さ190mm)を製造し、表面肌触り官能評価及びおむつとのずれ官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0022】
実施例2
静摩擦係数0.4、坪量18g/m2、のスパンボンド不織布により形成された第1のトップシート、静摩擦係数1.0、坪量18g/m2、のポイントボンド不織布により形成された第2のトップシート、及び実施例1と同様の吸着層から成る吸収性物品(長手方向長さ480mm、短方向長さ190mm)を製造し、表面肌触り官能評価及びおむつとのずれ官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0023】
参考例
静摩擦係数0.8、坪量20g/m2、のエアスルー不織布により形成された第1のトップシート及び第2のトップシート、及び実施例1と同様の吸着層から成る吸収性物品(長手方向長さ480mm、短方向長さ190mm)を製造し、表面肌触り官能評価及びおむつとのずれ官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
静摩擦係数1.0、坪量20g/m2、のエアスルー不織布により形成された第1のトップシート、静摩擦係数0.4、坪量20g/m2、のエアスルー不織布により形成された第2のトップシート、及び実施例1と同様の吸着層から成る吸収性物品(長手方向長さ480mm、短方向長さ190mm)を製造し、表面肌触り官能評価及びおむつとのずれ官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0025】
比較例2
静摩擦係数1.0、坪量18g/m、のポイントボンド不織布により形成された第1のトップシート、静摩擦係数0.4、坪量18g/m、のスパンボンド不織布により形成された第2のトップシート、及び実施例1と同様の吸着層から成る吸収性物品(長手方向長さ480mm、短方向長さ190mm)を製造し、表面肌触り官能評価及びおむつとのずれ官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0026】
表1から、実施例1と参考例を比較すると、実施例1の静摩擦係数の低い第1のトップシートは肌触りの評価が参考例よりも高く、静摩擦係数の高い第2のトップシートはおむつとのずれの評価が参考例よりも高かった。実施例2も同様の評価であった。比較例1は、実施例1の第1のトップシートと第2のトップシートを逆転させた場合で、肌触り、おむつとのずれ共に参考例よりも評価が低かった。比較例2は、実施例2の第1のトップシートと第2のトップシートを逆転させた場合で、肌触り、おむつずれ共に参考例よりも評価が低かった。
【0027】
【表1】
【符号の説明】
【0028】
1 吸収性物品
2 吸収層
3 第1のトップシート
4 第2のトップシート
図1