(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-9292(P2015-9292A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】細穴放電加工装置及び同装置を使用した細穴放電加工方法
(51)【国際特許分類】
B23H 9/14 20060101AFI20141216BHJP
【FI】
B23H9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-134654(P2013-134654)
(22)【出願日】2013年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000128429
【氏名又は名称】株式会社エレニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】横道 茂治
(72)【発明者】
【氏名】石綿 朋茂
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB03
3C059AB07
3C059CH01
3C059CH16
3C059DA03
3C059DD01
3C059HA14
3C059HA16
(57)【要約】
【課題】筒体の肉厚や幅に規制されることなく、筒体内空間へ開放する止まり穴の加工を短時間で行える細穴放電加工装置及び同装置を使用した細穴放電加工方法の提供。
【解決手段】スライドベース15に上下方向に位置決め自在のZ軸スライド19を設け、Z軸スライドに棒状またはパイプ状電極31の上部を保持する電極ホルダを回転駆動自在に設けると共に、スライドベースに電極の下部をガイドする電極ガイド手段を設けた細穴放電加工装置において、前記電極ガイド手段は前記スライドベース下端部からZ軸下方へ伸長するガイドアーム37を設け、ガイドアームの下端部近傍に前記電極を直進させる第1のストレートガイド39を備え、該第1のストレートガイドの下方に前記電極の進行方向をZ軸方向から側方へ偏向させる電極偏向手段41を設けたことを特徴とする細穴放電加工装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドベースに上下方向に位置決め自在のZ軸スライドを設け、該Z軸スライドに棒状またはパイプ状電極の上部を保持する電極ホルダを回転駆動自在に設けると共に、前記スライドベースに前記電極の下部をガイドする電極ガイド手段を設けた細穴放電加工装置において、前記電極ガイド手段は前記スライドベース下端部からZ軸下方へ伸長するガイドアームを設け、該ガイドアームの下端部近傍に前記電極を直進させる第1のストレートガイドを備え、該第1のストレートガイドの下方に前記電極の進行方向をZ軸方向から側方へ偏向させる電極偏向手段を設けたことを特徴とする細穴放電加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細穴放電加工装置において、前記電極偏向手段が、前記電極を曲線状に曲げるRガイド部材と、該Rガイド部材に接続する第2のストレートガイドとからなり、前記Rガイド部材で曲げられた電極を前記第2のストレートガイドでZ軸方向から側方へ偏向させることを特徴とする細穴放電加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の細穴放電加工装置を使用し、前記ガイドアームを被加工材である筒体の内部空間に挿入位置決めし、前記電極偏向手段により偏向された電極により、前記被加工材である筒体に筒体内空間へ開放する止まり穴を加工することを特徴とする細穴放電加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細穴放電加工装置及び同装置を使用した細穴放電加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば円筒状の圧延ロールの長手方向中央部に温度センサを装着するためのセンサ装着穴の加工は、
図9に示す如く圧延ロール101の側面からボール盤を用いてドリル加工で行われている。
【0003】
然しながら、圧延ロール101の側面からのドリル加工では、圧延ロール101の幅Lが大きくなるほど、センサ装着穴103の圧延ロールの中央部までの距離L/2が長くなるため加工時間が長くなるという問題がある。
【0004】
また、深穴のドリル加工は困難であるため、センサ装着穴を有する圧延ロールの幅はドリル加工が可能な長穴の長さにより規制される。
【0005】
さらに、圧延ロールの側面からドリル加工を行うので、圧延ロール101の肉厚tを薄くすることができない。その結果、圧延ロール101の直径が大きくなり重量が重くなるという問題もある。
【0006】
また特許文献1には、圧延ロールにおけるセンサ装着穴の加工ではないが、ディーゼルエンジン用インジェクタ(燃料噴射装置)の燃料リターン穴(12)に対して、既設の収納穴(11)を利用して、この収納穴(11)から燃料リターン穴(12)に連通する直線的な横穴(13)を加工する放電加工方法および装置が記載されている。
【0007】
上述の放電加工装置における電極(2)は、複数の構成要素からからなっている。すなわち、この電極(2)は導電材からなる半球形のカップ状に形成されており、この半球形のカップ状電極(2)に密着巻きのコイルばね(3)の先端をジョイント(6)を介して結合し、このコイルばね(3)の後端に導電材からなる円筒状の支持体(4)に結合された構成となっている。
【0008】
前記電極(2)の構成から理解できるように、コイルばねの外径は、そのばねに用いる線材の直径より必ず大きくなるのは必然である。また、前記電極(2)の直径はこの密着巻きのコイルばね(3)の外径とほぼ等しくなっている。したがって、特許文献1に記載の発明における方法においては、本願発明の細穴放電加工装置の如く、細径のパイプ又は棒状電極を使用する細穴加工を行うことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−302461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の如き問題を解決するために成されたものであり、本発明の課題は、被加工材である筒体の肉厚や幅に規制されることなく、筒体内空間へ開放する止まり穴の加工を短時間で行うことができる細穴放電加工装置及び同装置を使用した細穴放電加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の細穴放電加工装置は、スライドベースに上下方向に位置決め自在のZ軸スライドを設け、該Z軸スライドに棒状またはパイプ状電極の上部を保持する電極ホルダを回転駆動自在に設けると共に、前記スライドベースに前記電極の下部をガイドする電極ガイド手段を設けた細穴放電加工装置において、前記電極ガイド手段は前記スライドベース下端部からZ軸下方へ伸長するガイドアームを設け、該ガイドアームの下端部近傍に前記電極を直進させる第1のストレートガイドを備え、該第1のストレートガイドの下方に前記電極の進行方向をZ軸方向から側方へ偏向させる電極偏向手段を設けたことを特徴とするするものである。
【0012】
請求項2に記載の細穴放電加工装置は、請求項1に記載の細穴放電加工装置において、前記電極偏向手段が、前記電極を曲線状に曲げるRガイド部材と、該Rガイド部材に接続する第2のストレートガイドとからなり、前記Rガイド部材で曲げられた電極を前記第2のストレートガイドでZ軸方向から側方へ偏向させることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の細穴放電加工方法は、請求項1又は2に記載の細穴放電加工装置を使用し、前記ガイドアームを被加工材である筒体の内部空間に挿入位置決めし、前記電極偏向手段により偏向された電極により、前記被加工材である筒体に筒体内空間へ開放する止まり穴を加工することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被加工材である筒体の肉厚や幅に規制されることなく、筒体内空間へ開放する止まり穴の加工を短時間で行うことができる細穴放電加工装置及び同装置を使用した細穴放電加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本願発明に係る細穴放電加工装置の第1の実施例の全体説明図。
【
図2】
図1のP部拡大図で、筒体内からの止まり穴加工の説明図。
【
図3】電極ガイドにおける電極偏向手段部分の正面図。
【
図6】本願発明に係る細穴放電加工装置の第2の実施例(正面図)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0017】
図1を参照するに、細穴放電加工装置1の基台3上には、Y軸モータ4によりY方向(
図1において左右方向)へ移動位置決め自在のY軸キャリッジ5が設けてある。
【0018】
前記Y軸キャリッジ5上には筒状のワークWを収容する加工槽7が設けてあり、この加工槽7内に前記ワークWを垂直に固定する固定治具8がワークテーブル9上に設置してある。このY軸キャリッジ5の後方(
図2において右方)の前記基台3上には、X方向(Y方向に直交する方向)に離隔した一対のコラム11が立設してある。
【0019】
前記コラム11の上部には、図示しないX軸モータによりX方向へ移動位置決め自在のX軸キャリッジ13が設けてある。そして、このX軸キャリッジ13の前方にはスライドベース15が上下動可能に係合してある。
【0020】
また、前記スライドベース15には、Z軸モータ17により上下方向(Z軸方向)に移動位置決め自在のZ軸スライド19が設けてある。
【0021】
したがって、図示省略の制御装置の制御の下に、Z軸モータ17を適宜に回転駆動することにより、Z軸スライド19をZ方向の所望の位置に移動することができる。
【0022】
前記Z軸スライド19の下部には電極ホルダ27が回転自在に設けてある。この電極ホルダ27の構成は、本願出願人の出願である特開2001−287119の明細書に記載の構成と同様であり、以下にその概要を説明する。
【0023】
上述の電極ホルダ27は、前記Z軸スライド19の下部に周知のワンタッチカプラを介して着脱自在に設けてあり、電極モータ29によって回転駆動することができように設けてある。
【0024】
また、電極ホルダ27は、棒状またはパイプ状電極31の上部を保持するコレットチャックと、図示されない給水装置から供給される水を前記棒状電極またはパイプ状電極31を包囲するように噴射させるジェットノズル等を備えてなるものである。
【0025】
上記構成において、図示省略の制御装置の制御の下に、前記X軸キャリッジ13、Y軸キャリッジ5及びZ軸スライド19とを適宜に移動位置決めすることにより、前記棒状電極またはパイプ状電極31の先端を筒状のワークWの加工位置へ移動位置決めすることができる。
【0026】
図1、
図2を参照するに、前記スライドベース15の下端部に一体的に設けた支持板33に、前記電極31の下部をガイドする電極ガイド手段35が設けてある。
【0027】
この電極ガイド手段35は、前記スライドベース15の下端部からZ軸下方へ伸長し、筒状のワークWの筒内部へ侵入可能なガイドアーム37を備えている。
【0028】
図3、
図4に示す如く、前記ガイドアーム37の中心には、前記電極31の直径より若干大きい穴が設けてあり、ガイドアーム37の下端部近傍には、前記電極31を直進ガイドする第1のストレートガイド39が設けてある。
【0029】
この第1のストレートガイド39の下方に前記電極31の進行方向をZ軸方向から側方へ偏向させる電極偏向手段41が設けてある。
【0030】
上述の電極偏向手段41は、前記電極31を曲線状に曲げるRガイド部材43と、該Rガイド部材43に接続する第2のストレートガイド45とからなっている。
【0031】
図3〜
図5に示すごとく、前記Rガイド部材43は、前記ガイドアーム37の下端部近傍に固定した第1のストレートガイド39と、前記ガイドアーム37の下端部に固定した第2のストレートガイド45との中間に配置してあり、第1のストレートガイド39の出口と第2のストレートガイド45の入口を円弧状の電極ガイド溝47で接続するものである。
【0032】
図5に示すごとく、前記ガイドアーム37の第1のストレートガイド39と第2のストレートガイド45の間に設けた切欠き部49に、前記Rガイド部材43がボルト51により着脱可能に装着してある。なお、ノックピン53によりRガイド部材43の取付位置を正確に保持している。
【0033】
前記Rガイド部材43の断面形状は、円の中心より上側の部分を弓形に切断除去した形状をなしており、このRガイド部材43を前記切欠き部49に取り付けた際にその外周が前記ガイドアーム37の下端部の外径と同一の円形になるように製作されている。
【0034】
上記構成の細穴放電加工装置及び同装置を使用した細穴放電加工方法によれば、被加工材である筒体の肉厚や幅に規制されることなく、筒体内空間へ開放する止まり穴の加工を短時間で行うことができる。
【0035】
図6〜
図8は本願発明に係る細穴放電加工装置の第2の実施例であり、
図6は正面図、
図7は
図6におけるQ部拡大図、
図8は平面図である。なお、第1の実施例と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付与してある。
【0036】
細穴放電加工装置60の機台61には、図示しないX軸モータにより駆動されるX軸キャリッジ63が設けてある。また、長尺の筒状のワークWを水平支持するワークテーブル65が前記機台61に隣接して設けてある。
【0037】
そして、前記X軸キャリッジ63には、水平支持された筒状のワークWの筒内部へ侵入可能なガイドアーム67がX軸方向へ移動位置決め自在に設けてある。
【0038】
また、前記ガイドアーム67には、棒状またはパイプ状電極31の左端部を保持する電極ホルダ27が設けてある。
【0039】
また、前記ガイドアーム67には、前記電極ホルダ27から右方へ延伸する電極31を水平にかつ直線的にガイドするガイドパイプが69が設けてある。
【0040】
そして、ガイドパイプが69の右端部には、前記電極の先端部の進行方向をX軸方向から側方へ偏向させる電極偏向手段71が設けてある。
【0041】
上述の電極偏向手段71は、前記電極31を曲線状に曲げるRガイド部材73と、このRガイド部に接続するストレートガイド75とからなっている。
【0042】
上記構成の細穴放電加工装置60は、筒状のワークWを水平に載置した状態で加工できるので、長尺の筒状のワークWを筒体の肉厚や幅に規制されることなく、筒体内空間へ開放する止まり穴の加工を短時間で行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 細穴放電加工装置
3 基台
4 Y軸モータ
5 Y軸キャリッジ
7 加工槽
8 固定治具
9 ワークテーブル
11 コラム
13 X軸キャリッジ
15 スライドベース
17 Z軸モータ
19 Z軸スライド
27 電極ホルダ
29 電極モータ
31 棒状またはパイプ状電極
33 支持板
35 電極ガイド手段
37 ガイドアーム
39 第1のストレートガイド
41 電極偏向手段
43 Rガイド部材
45 第2のストレートガイド
47 電極ガイド溝
49 切欠き部
51 ボルト
53 ノックピン
60 細穴放電加工装置
61 機台
63 X軸キャリッジ
65 ワークテーブル
67 ガイドアーム
69 ガイドパイプ
71 電極偏向手段
73 Rガイド部材
75 ストレートガイド
101 圧延ロール
103 センサ装着穴
W ワーク