【解決手段】工作機械は、工具交換装置と、工具収納領域と加工領域とを区画する隔壁51と、隔壁51に形成された開口部52を塞ぐ開口部カバー53とを備える。工具交換装置は、交換アーム61と、交換アーム61に固定された第1グリッパ62および第2グリッパ63とを含む。開口部カバー53は、スプリング66を介して交換アーム61に連結されている。交換アーム61が加工領域に向かって回動すると、開口部カバー53が移動する。交換アーム61が工具収納領域に向かって回動すると、開口部カバー53が開口部52を密閉し、更に交換アーム61が回動するとスプリング66が伸縮して開口部カバー53が開口部52を密閉する状態が維持される。
前記交換アームは、回動動作によって進退可能に形成され、前記開口部カバーと前記隔壁との当接部にはシール部材が設けられてなる請求項2または3に記載の工作機械。
前記開口部カバーが先端に配置されているフレームを備え、前記フレームは、前記付勢部を介して前記交換アームに連結されている請求項2から4のいずれか一項に記載の工作機械。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から
図12を参照して、本発明の実施の形態における工作機械について説明する。本実施の形態においては、数値制御式の工作機械を例示して説明する。工作機械は、主軸ヘッドに装着された工具を交換可能な工具交換装置を備える。本実施の形態における工具交換装置は、工作機械の制御装置により制御され、自動的に工具の交換を行うことができる。
【0018】
図1に、本実施の形態の第1の工作機械の工具交換装置と主軸ヘッドの部分を平面視したときの概略図を示す。
図1(a)から
図1(d)は、工具交換装置により工具を交換する工程を説明する概略図である。
【0019】
図1(a)を参照して、本実施の形態における工作機械は、ワークを加工する加工領域と、工具が保管される工具マガジンが配置される工具収納領域とを有する。工具収納領域と加工領域とは隔壁51により区画されている。工具交換装置は、ワークを加工している期間中には工具収納領域に配置される。
【0020】
工作機械は、ワークを加工する工具が取り付けられる立形の主軸ヘッド21を備える。本実施の形態においては、工具ホルダ41bを介して主軸ヘッド21に工具が取り付けられている。主軸ヘッド21は、加工領域において移動可能に形成されている。主軸ヘッド21は、
図1(a)に示すX軸に沿った方向に移動可能に形成されている。また、図示されていないが、ワークを載置したテーブルがY軸に沿った方向に移動可能に形成されている。ここで、X軸およびY軸は水平方向に延び、互いに直交する軸である。更に、主軸ヘッド21は、X軸およびY軸に垂直なZ軸の方向(紙面に垂直方向)にも移動可能に形成されている。
【0021】
工具交換装置は、交換アーム61を含む。交換アーム61は、屈曲した平面形状を有する。または、交換アーム61は、平面形状がほぼL字形に形成されている。本実施の形態の工具交換装置は、交換アーム61に固定され、工具を保持する工具保持部としてグリッパを複数含む。本実施の形態においては、交換アーム61に第1グリッパ62と第2グリッパ63との2つのグリッパが固定されている。第1グリッパ62および第2グリッパ63は、回転軸91を中心とした円の円周方向にずれて交換アーム61に取付けられている。第1グリッパ62および第2グリッパ63は、それぞれが工具ホルダを着脱可能に保持する。
【0022】
本実施の形態における交換アーム61は、図示しない駆動装置により、回転軸91を中心に回動するように形成されている。回転軸91は、交換アーム61の一方の端部に配置されている。交換アーム61の他方の端部は、ストッパ部65を介して、開口部カバー53が連結されている。ストッパ部65は、交換アーム61に固定されている。
【0023】
開口部カバー53は、回転軸91が配置されている側と反対側に配置されている。ストッパ部65は、開口部カバー53に固定されておらず、開口部カバー53から離れることができるように形成されている。なお、ストッパ部65は、開口部カバー53に取り付けられていても良い。開口部カバー53は、伸縮可能な付勢部としてのスプリング66を介して交換アーム61に連結されている。スプリング66は、開口部カバー53を交換アーム61に近づける向きに付勢している。このように、本実施の形態の工作機械は、開口部カバー53を交換アーム61に向けて付勢すると共に、開口部カバー53と交換アーム61とを連結する連結手段を備える。
図1(a)に示す状態では、開口部カバー53を隔壁51に押し当ててシール性を高めるため、ストッパ部65と開口部カバー53とは若干離れている。
【0024】
隔壁51には、工具交換装置の交換アーム61の一部が加工領域に進入(前進)するための開口部52が形成されている。開閉シャッタとしての開口部カバー53は、開口部52よりも大きな外形寸法を有する。開口部カバー53は、開口部52の全体を塞ぐように形成されている。開口部カバー53は、加工領域の側から開口部52を閉塞している。
【0025】
開口部カバー53と隔壁51との当接部には、シール部材54が配置されている。シール部材54は、開口部カバー53と隔壁51とに挟まれて圧縮されることにより、開口部52を密閉する。シール部材54は、パッキンやOリング等により構成することができる。本実施の形態におけるシール部材54は、開口部カバー53の隔壁51に接触する面に形成された凹部に配置されている。シール部材54は、この形態に限られず、隔壁51の開口部カバー53に接触する面に凹部が形成され、この凹部の内部に配置されていても構わない。または、凹部が形成されずにシール部材54が直接に隔壁51または開口部カバー53に接着されていても良い。また、シール部材がなく、隔壁と開口部カバーとの当接面が凹凸に入り組んだラビリンスシールになっていても良い。
【0026】
図1(a)の状態においては、加工領域において主軸ヘッド21が工具を回転させ、ワークの加工を行なうことができる状態を示している。ワークを加工する場合には、交換アーム61全体は、工具収納領域の内部に配置されている。ワークの加工期間中では、開口部カバー53が開口部52を完全に閉塞している。スプリング66は、縮む方向に開口部カバー53を付勢しているために、シール部材54は圧縮され、開口部カバー53と隔壁51との間の密閉が達成されている。
【0027】
主軸ヘッド21の工具を取り換える場合には、工具収納領域では、新たな工具を保持した工具ホルダ42bをY軸方向に移動することにより、第2グリッパ63に保持することができる位置まで交換アーム61を回動する。搬送装置により工具ホルダ42bを工具マガジンから搬送する。この後に、工具ホルダ42bを、矢印103に示すように移動して、第2グリッパ63に保持させる。第2グリッパ63に、工具ホルダ42bが保持されている状態になる。この工程は、ワークを加工している期間中にも行うことができる。
【0028】
図1(b)を参照して、ワークの加工を停止した後に、矢印101に示すように、交換アーム61を加工領域に向けて回動する。開口部カバー53は、交換アーム61と一体的に回動する。この場合には、開口部カバー53は、ストッパ部65に接触し、交換アーム61と連動して移動する。開口部カバー53が隔壁51の開口部52から離れるために、開口部52が開いた状態になる。開口部カバー53は、加工領域の内部に移動する。
【0029】
交換アーム61の一部は、開口部52を通って加工領域に進入する。また、第1グリッパ62が開口部52を通って加工領域の内部に進入する。本実施の形態においては、主軸ヘッド21に保持されている工具ホルダ41bを第1グリッパ62に移動できる位置まで回動する。次に、矢印111に示すように、主軸ヘッド21をX軸方向に移動させることにより、工具ホルダ41bを第1グリッパ62に保持させる。
【0030】
第1グリッパ62が工具ホルダ41bを保持した後に、主軸ヘッド21の内部機構により主軸ヘッド21の工具ホルダ41bの保持を解除する。次に、主軸ヘッド21をZ軸方向に上昇することにより、主軸ヘッド21から工具ホルダ41bを切り離すことができる。
【0031】
次に、交換アーム61を矢印101に示す向きに更に回動する。第2グリッパ63が開口部52を通って加工領域の内部に移動する。第2グリッパ63に保持された工具ホルダ42bを主軸ヘッド21に装着することができる位置まで回動する。主軸ヘッド21の直下に工具ホルダ42bを移動する。次に、主軸ヘッド21をZ軸方向に下降し、主軸ヘッド21に工具ホルダ42bを係合する。主軸ヘッド21の内部機構により工具ホルダ42bを保持する。
【0032】
図1(c)を参照して、工具ホルダ42bを保持した主軸ヘッド21を、矢印112に示すようにX軸方向に移動することにより、第2グリッパ63の工具ホルダ42bの保持が解除される。このように、主軸ヘッド21に装着される工具を、工具ホルダ41bに保持された工具から、工具ホルダ42bに保持された工具に交換することができる。
【0033】
次に、工具交換装置を工具収納領域の内部に戻す。主軸ヘッド21の工具の交換が完了した後には、矢印102に示すように、交換アーム61を工具収納領域に向けて回動(後退)する。第1グリッパ62には、これまで使用していた工具ホルダ41bが保持されている。
【0034】
図1(d)を参照して、交換アーム61を元の位置に向かって回動することにより、開口部カバー53が隔壁51に当接し、開口部52が密閉される。本実施の形態においては、工具ホルダ41bを工具マガジンに戻すために、更に交換アーム61を回転軸91の周りに回動する。すなわち、
図1(a)に示す状態よりも更に交換アーム61を回動する。本実施の形態においては、工具ホルダ41bをY軸方向に移動することにより、第1グリッパ62から取り外すことができる位置(
図1(a)に記載の第2グリッパ63に工具ホルダ42bを差し込んだ時と同じ位置)まで回動する。
【0035】
ストッパ部65は、開口部カバー53から離れる。スプリング66が伸びることにより、開口部カバー53が隔壁51に圧接された状態が維持される。シール部材54が圧縮されることにより、開口部52が密閉された状態が維持される。工具収納領域では、矢印104に示すように、搬送装置により工具ホルダ41bを第1グリッパ62から取り外す。工具ホルダ41bは、工具マガジンに収容することができる。なお、加工領域では、開口部カバー53が閉止した後には、新たな工具にてワークを加工することができる。
【0036】
本実施の形態の工具交換装置は、交換アーム61が平面視したときに折れ曲がった形状を有する。工具を保持するグリッパは交換アーム61に固定され、交換アーム61にはスプリング66を介して開口部カバー53が連結されている。このために、開口部カバー53の開放とグリッパの加工領域への進入とを、交換アーム61の回動操作にて行うことができて、開口部カバー53の開閉機構を簡易にすることができる。また、折れ曲がった形状の交換アーム61を一方の端部を回動中心として回動させることにより、開口部52の面積を小さくでき、工具交換装置を配置するための領域を小さくすることができる。
【0037】
また、スプリング66の付勢力により、開口部カバー53を閉じた後にも、開口部カバー53を隔壁51に押し当てた状態を維持しながら交換アーム61を回動することができる。開口部カバー53にて開口部52を密閉した状態を維持しながら、複数のグリッパに対して、工具を取り付けたり取り外したりすることができる。
【0038】
本実施の形態におけるシール部材54は、開口部カバー53と隔壁51とに挟まれる。開口部カバー53が開閉する時に、シール部材54が他の部材と摺動することを回避できる。このために、シール部材54の摩耗等の劣化を抑制することができる。また、密閉性の低下を抑制し、高い密閉機能を発揮することができる。
【0039】
また、本実施の形態の第1の工作機械において、開口部カバー53は、交換アーム61の先端にストッパ部65を介して連結され、スプリング66は、交換アーム61と開口部カバー53との間に配置されている。この構成を採用することにより、開口部カバー53を開閉するための駆動手段を別途設ける必要がなく、工具交換装置の構成を簡易にすることができる。
【0040】
次に、本実施の形態における工作機械の詳細な実施例について説明する。
図2は、本実施の形態における第2の工作機械の概略正面図である。
図3は、第2の工作機械の主軸ヘッド、回転テーブル、および開口部カバーの部分の概略斜視図である。
図2および
図3を参照して、本実施の形態における第2の工作機械は、基台となるベッド13と、ベッド13の上面に立設されたコラム15とを備える。ベッド13の上面においてコラム15の前方には、キャリッジ27が配置されている。キャリッジ27の上面には、ワーク1を回転させる回転テーブル35が配置されている。回転テーブル35の上面には、ワーク1を回転テーブル35に保持する保持部材37が配置されている。ワーク1は、保持部材37を介して回転テーブル35に固定される。
【0041】
コラム15の前面には、サドル17が配置されている。さらに、サドル17の前面には、主軸ヘッド21が配置されている。主軸ヘッド21には、ワーク1を加工する工具41aが取り付けられる。工具41aは、工具ホルダ41bを介して、主軸ヘッド21に取り付けられている。本実施の形態における工具は、棒状に延びる回転工具である。
【0042】
工作機械11は、主軸ヘッド21に取り付けられた工具とワーク1との相対位置を変更する移動装置を備える。本実施の形態においては、主軸ヘッド21は、鉛直方向(
図2において上下方向)の延びるZ軸に沿って移動する。また、キャリッジ27は、水平方向に移動し、キャリッジ27の移動方向(
図2において紙面に垂直方向)に延びる軸をY軸と称する。また、Z軸およびY軸に垂直な方向(
図2において左右方向)に延びる軸をX軸と称する。サドル17は、X軸方向に移動する。移動装置は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に工具とワーク1とを相対的に移動させることができる。さらに、本実施の形態における移動装置は、回転テーブル35をZ軸の周りのC軸方向に回転移動させることができる。
【0043】
本実施の形態における移動装置は、Y軸移動装置を含む。Y軸移動装置は、ベッド13の上面に配置されている一対のY軸レール29a,29bを含む。キャリッジ27は、Y軸レール29a,29bに沿って往復移動が可能に形成されている。コラム15には、キャリッジ27がY軸方向に移動可能なように空洞部15aが形成されている。Y軸移動装置は、Y軸送りモータを駆動することにより、キャリッジ27を移動させる。回転テーブル35およびワーク1は、キャリッジ27と共にY軸方向に移動する。
【0044】
本実施の形態における移動装置は、X軸移動装置を含む。X軸移動装置は、コラム15の前面に形成されている一対のX軸レール19a,19bを含む。サドル17は、X軸レール19a,19bに沿って往復移動が可能に形成されている。X軸移動装置は、X軸送りモータを駆動することにより、サドル17を移動させる。主軸ヘッド21および工具は、サドル17と共にX軸方向に移動する。
【0045】
更に、本実施の形態における移動装置は、Z軸移動装置を含む。Z軸移動装置は、サドル17の前面に形成されている一対のZ軸レール23a,23bを含む。主軸ヘッド21は、Z軸レール23a,23bに沿って往復移動が可能に形成されている。Z軸移動装置は、Z軸送りモータを駆動することにより、主軸ヘッド21を移動させる。工具41aは、主軸ヘッド21と共にZ軸方向に移動する。更に、主軸ヘッド21の内部には、主軸を軸周りに回転する駆動モータが配置されている。
【0046】
本実施の形態における移動装置は、C軸回転移動装置を含む。C軸回転移動装置は、回転テーブル35を含む。回転テーブル35の内部には駆動モータが配置されている。回転テーブル35は、駆動モータを駆動することによりC軸方向にワーク1を回転するように形成されている。
【0047】
本実施の形態における工作機械は、制御装置31を含む。制御装置31は、移動装置の送りモータや主軸ヘッド21の回転駆動モータに接続されている。制御装置31が移動装置を制御することによりワーク1に対して工具を相対的に移動させ、工具を所望の回転速度で回転させることができる。また、制御装置31は、工具交換装置や工具を搬送する搬送装置を制御している。
【0048】
図4に、本実施の形態における第2の工作機械の一部を破断し、平面的に見た時の概略図を示す。第2の工作機械において、隔壁51により加工領域98と工具収納領域99とが隔離されている。開口部カバー53が閉止した状態では、工具交換装置は、工具収納領域99の内部に配置されている。
【0049】
第2の工作機械は、複数個の工具43aを保管する工具マガジン72と、工具43aを搬送する搬送装置としてのキャリア71を備える。キャリア71は、図示しない駆動装置により、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能に形成されている。工具43aを保持する工具ホルダ43bは、工具ポット73に保持されている。工具43aは、工具ポット73に保持された状態で工具マガジン72に保管されている。
【0050】
本実施の形態におけるキャリア71は、ハンド部75を含む。ハンド部75は、工具ポット73を保持したり離したりすることができるように形成されている。さらに、ハンド部75は、矢印131に示すように、水平方向に延びる回転軸74を中心に回動可能に形成されている。
【0051】
本実施の形態における工具マガジン72は、格子状に工具43aを保管している。工具マガジン72は、工具43aの延びる方向が、水平方向に平行になるように工具ポット73を保持している。工具マガジン72としては、この形態に限られず、任意の形態にて工具を保管することができる。たとえば、工具マガジンは、チェーンマガジンや円盤マガジン等であっても構わない。
【0052】
キャリア71は、ハンド部75にて工具ポット73を保持した後に、ハンド部75を回転軸74の周りに90°回動することにより、工具43aの延びる方向が鉛直方向に平行な状態にする。この後に、キャリア71は、Y軸方向に移動し、更にZ軸方向の高さを調整することにより、工具交換装置まで工具を搬送することができる。
図4に示す例では、矢印103に示すように、第2グリッパ63に工具ホルダ42bを搬送している。
【0053】
図3および
図4を参照して、第2の工作機械の工具交換装置は、交換アーム61、第1グリッパ62、および第2グリッパ63を含む。第1グリッパ62および第2グリッパ63のそれぞれは、工具ホルダを保持する互いに対向する2つの爪部を含む。第1グリッパ62は、スプリング62aを含み、2つの爪部を閉じる方向に付勢している。また、第2グリッパ63は、スプリング63aを含み、2つの爪部を閉じる方向に付勢している。
【0054】
交換アーム61は、回転軸91を中心として回動可能に形成されている。交換アーム61は、折れ曲がった平面形状を有する。または、交換アーム61は、平面形状がL字形に形成されている。第1グリッパ62および第2グリッパ63は、交換アーム61の回転軸91が配置されている一方の端部と反対側の他方の端部に配置されている。交換アーム61を所定の回転角度にすると、第1グリッパ62に工具ホルダを抜き差しする方向がY軸と平行になる。キャリア71が第1グリッパ62に工具ホルダを着脱可能になる。さらに、別の回転角度にすると、第2グリッパ63に工具ホルダを抜き差しする方向がY軸と平行になる。キャリア71が第2グリッパ63に工具ホルダを着脱可能になる。
【0055】
第2の工作機械の工具交換装置は、フレーム67を含む。本実施の形態のフレーム67は、折れ曲がった平面形状を有する。または、フレーム67は、平面形状がほぼL字形に形成されている。フレーム67は、一方の端部に回転軸91を有し、回転軸91を中心として回動可能に形成されている。また、フレーム67の他方の端部には、開口部カバー53が固定されている。
【0056】
フレーム67は、付勢部としてのスプリング66を介して交換アーム61に連結されている。スプリング66は、回転軸91を回動中心として、交換アーム61とフレーム67とが互いに近接する向きに付勢している。交換アーム61には、ストッパ部65が形成されている。ストッパ部65は、スプリング66によるフレーム67の移動を制限している。
図4に示す状態では、開口部カバー53を隔壁51に押し当ててシール性を高めるため、フレーム67とストッパ部65とは若干離れている。
【0057】
第2の工作機械のその他の構造は、第1の工作機械と同様である。第2の工作機械の機能も、本実施の形態の第1の工作機械の機能と同様であり、以下に例示して説明する。
【0058】
図5に、第2の工作機械において工具を交換する時の第1工程の概略図を示す。
図5は、加工領域98においてワークを加工している状態である。主軸ヘッド21には、工具ホルダ41bが取り付けられている。開口部カバー53は隔壁51に当接している。シール部材54は、開口部カバー53と隔壁51とに挟まれることにより、圧縮されて開口部52を密閉している。
【0059】
工具収納領域99においては、キャリア71により工具マガジン72から工具42aが保持された工具ホルダ42bが搬送される。キャリア71は、矢印103に示すように、第2グリッパ63の2つの爪部の間に工具ホルダ42bを押圧する。スプリング63aが伸縮することにより、第2グリッパ63の2つの爪部同士の間に工具ホルダ42bを挿入することができる。
【0060】
主軸ヘッド21に取り付けられている工具を交換する場合には、交換アーム61を矢印101に示すように回動する。この時に、主軸ヘッド21は工具を交換するために待機する位置まで移動する。
【0061】
図6に、第2の工作機械において工具を交換する時の第2工程の概略図を示す。交換アーム61を回動すると、フレーム67は、交換アーム61と連動して回動する。開口部カバー53は、開口部52から離れる。第1グリッパ62は、開口部52を通って加工領域98の内部に進入する。本実施の形態では、第1グリッパ62に工具ホルダを抜き差しする方向がX軸方向と平行になるまで交換アーム61を回動する。すなわち、主軸ヘッド21をX軸方向に移動させることにより、第1グリッパ62にて工具ホルダ41bを保持可能な位置まで、交換アーム61を回動する。次に、矢印111に示すようにX軸方向に主軸ヘッド21を移動する。
【0062】
図7に、第2の工作機械において工具を交換する時の第3工程の概略図を示す。主軸ヘッド21を、X軸方向に移動することにより、工具ホルダ41bを第1グリッパ62に保持させる。そして、主軸ヘッド21は、内部機構により工具ホルダ41bの保持を解除する。次に、主軸ヘッド21は、Z軸方向の上側に移動し、工具ホルダ41bから離れる。このように、工具ホルダ41bを主軸ヘッド21から第1グリッパ62に移行する。
【0063】
次に、交換アーム61を矢印101に示す向きに更に回動する。第2グリッパ63に保持されている工具ホルダ42bを主軸ヘッド21が保持可能な位置まで回動する。本実施の形態においては、主軸ヘッド21の直下に新たな工具ホルダ42bが配置されるまで、交換アーム61を回動する。第2グリッパ63に工具ホルダを抜き差しする方向がX軸方向に平行になるまで交換アーム61を回動する。
【0064】
図8に、第2の工作機械において工具を交換する時の第4工程の概略図を示す。次に、主軸ヘッド21をZ軸の下側に移動し、主軸ヘッド21を工具ホルダ42bと係合させる。この状態で、主軸ヘッド21の内部機構により工具ホルダ42bを主軸ヘッド21に保持する。
【0065】
図9に、第2の工作機械において工具を交換する時の第5工程の概略図を示す。主軸ヘッド21が工具ホルダ42bを保持した後には、矢印112に示すように、主軸ヘッド21をX軸方向に移動する。第2グリッパ63による工具ホルダ42bの保持が解除される。工具ホルダ42bは、主軸ヘッド21のみに保持された状態になる。このように、工具ホルダ41bから工具ホルダ42bに取り替えることができる。次に、工具交換装置を工具収納領域の内部に収容する。矢印102に示すように交換アーム61を工具収納領域に向かって回動する。
【0066】
図10に、第2の工作機械において工具を交換する時の第6工程の概略図を示す。交換アーム61を所定の回転角度で回動することにより、開口部52は開口部カバー53により閉止される。すなわち、
図5に示した第1工程の状態になる。開口部52が閉止された後には、加工領域98において、工具ホルダ42bに保持された工具42aによりワークの加工を開始することができる。工具収納領域99においては、工具ホルダ41bを工具マガジン72に戻すために、更に矢印102に示す向きに交換アーム61を回動する。
【0067】
図11に、第2の工作機械において工具を交換する時の第7工程の概略図を示す。交換アーム61を回動することにより、ストッパ部65はフレーム67から離れる。スプリング66が伸びることにより、フレーム67が付勢される。開口部カバー53は、開口部52を閉じる向きに付勢される。シール部材54は、開口部カバー53と隔壁51とに挟まれた状態が維持され、密閉機能が維持される。
【0068】
図11および
図4を参照して、本実施の形態においては、キャリア71が第1グリッパ62に保持された工具ホルダ41bを取り外し可能な位置まで交換アーム61を回動する。第1グリッパ62に工具ホルダを抜き差しする方向がY軸と平行になるようにする。その後に、キャリア71が工具ホルダ41bを保持する。キャリア71が移動することにより、矢印104に示すように第1グリッパ62から工具ホルダ41bを取り外すことができる。キャリア71が工具収納領域99を移動し、工具ホルダ41bを工具マガジン72に戻すことができる。
【0069】
なお、本実施の形態の工具交換装置は、回転軸91から第1グリッパ62に保持された工具ホルダの中心軸までの距離L1と、回転軸91から第2グリッパ63に保持された工具ホルダの中心軸までの距離L2とが同一になるように形成されている。このために、
図5における第2グリッパ63の工具ホルダの受け渡し位置または受け取り位置と、
図11における第1グリッパ62の工具ホルダの受け渡し位置または受け取り位置とを同一の位置にすることができる。
【0070】
本実施の形態の第2の工作機械は、開口部カバー53が先端に配置されているフレーム67を備えている。フレーム67は、付勢部としてのスプリング66を介して交換アーム61に連結されている。このような工具交換装置を備える第2の工作機械においても、第1の工作機械と同様に工具交換装置の構造を簡易にすることができる。また、開口部カバー53が開閉するときにシール部材54が摺動することを回避することができて、シール部材の劣化を抑制することができる。
【0071】
本実施の形態の工作機械おいては、開口部カバーを付勢する付勢部として機械ばねが採用されているが、この形態に限られず、付勢部としては、開口部カバーを付勢する任意の装置や部材を採用することができる。
【0072】
図12に、本実施の形態における他の付勢部の概略断面図を示す。他の付勢部は、シリンダーにより構成されている。付勢部としてのシリンダーは、ケース81と、ケース81の内部で移動するピストン82とを含む。ピストン82により仕切られる一方の空間には、ポンプ84により、矢印121に示すように加圧された空気が供給される。また、ピストン82により仕切られる他方の空間の空気は、矢印122に示すように外部と流通する。
【0073】
ポンプ84にて一方の空間に空気を供給することにより、ピストン82は、矢印123に示す向きに付勢される。例えば、本実施の形態の第2の工作機械において、ピストン82をフレーム67に接続し、ケース81に連結されている連結棒83を交換アーム61に接続することにより、スプリング66と同様の作用および効果を得ることができる。
【0074】
本実施の形態では、交換アームはL字形を有して回転軸を中心に回動する形態を示したが、この形態に限られず、真っ直ぐな形状をしていて直動によって加工領域と工具収納領域との間で進退する形態でも良い。また、開口部カバー53と隔壁51との間には、必ずしもシール部材54を設ける必要はなく、開口部カバー53と隔壁51とが密着するように形成しても良い。この場合でも、開口部カバー53と隔壁51との間では前述の特許文献1のような摺動動作はせず、長期間にわたって切りくずや加工液の工具収納領域への侵入を防止することができる。
【0075】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される形態の変更が含まれている。
前記交換アームは、回動動作によって進退可能に形成され、前記開口部カバーと前記隔壁との当接部にはシール部材が設けられてなる請求項2または3に記載の工作機械。