【解決手段】繊維シートを基材とする活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持された触媒。
繊維シートを基材とする活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持された触媒。
繊維シートを基材とする水性ガスシフト反応用活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持され、前記活性金属が、ルテニウム、鉄、銅、ニッケル、及びコバルトからなる群より選択される1〜3種の金属である触媒。
前記活性金属が、触媒全重量を基準として0.5重量%以上30重量%以下であり、前記金属酸化物層が、触媒全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下であり、残部が前記繊維シートである請求項2記載の触媒。
繊維シートを基材とするフィッシャー・トロプシュ反応用活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持され、前記活性金属が、ルテニウム、コバルト、及び鉄からなる群より選択される1〜2種である触媒。
前記活性金属が、触媒全重量を基準として5重量%以上25重量%以下であり、前記金属酸化物層が、触媒全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下であり、残部が前記繊維シートである請求項4記載の触媒。
前記繊維シートが、フェノール樹脂、アラミド、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート、シリコン樹脂、フラン樹脂、酢酸セルロース、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、アルミナ繊維、バサルト繊維、及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種の繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の触媒。
前記金属酸化物が、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、チタニア−アルミナ、又はシリカ−チタニア−ジルコニアである請求項1〜7のいずれかに記載の触媒。
前記繊維シートが、フェノール樹脂、アラミド、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート、シリコン樹脂、フラン樹脂、酢酸セルロース、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、アルミナ繊維、玄武岩繊維、及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種の繊維を含む、請求項9又は10に記載の方法。
前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、テトラエトキシチタン、及びアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
前記アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、及び2−メチル−2−プロパノールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の触媒)
本発明の触媒は、繊維シートを基材とする活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持された触媒である。
【0013】
触媒の基材である繊維シートは可撓性、柔軟性があり、自由に曲げたり撓めたりできるため、本発明の触媒は、使用する装置の大きさや形状に制限されることなく幅広い用途に使用することができる。任意の形状、形態をとることができるため、特に小型反応装置において好適に使用することができる。幅広い態様で使用することができ、例えば、触媒層に本発明の触媒を複数枚積層させたり、あるいは、反応装置壁面に本発明の触媒を展張させたりすることができる。
また、繊維シートを基材とすることにより、従来の紛体や成形体の固体触媒と比較して通気性にすぐれるため、反応装置、特に小型反応装置の触媒層における圧力損失や反応流体の偏流を抑制することができる。
【0014】
本発明の触媒の基材として使用する繊維シートは、繊維を材料として薄い板状の形態に形成されたものをいう。繊維を材料とするため、可撓性、柔軟性があり、自由に曲げたり撓めたりできるものである。繊維シートは、例えば、不織布、織物、又は編み物等の形態であることができる。経方向及び緯方向の織物密度の調節によって通気性を制御できること、不織布や編み物の形態と比較して伸び縮みしにくく、反応装置に設置しやすいことから、繊維シートは織物の形態であることが好ましい。
【0015】
繊維シートを構成する繊維は、特に限定されないが、耐熱性の高い高分子材料が好ましい。比較的耐熱性の高い高分子材料としては、例えば、フェノール樹脂、アラミド、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート、シリコン樹脂、フラン樹脂、酢酸セルロース、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、アルミナ繊維、バサルト繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。フェノール樹脂、アラミド、ポリカーボネートは、糸の他、織物及び編み物へと製織、製編する技術も確立されているためより好ましく、フェノール樹脂が特に好ましい。
繊維シートは、上記列挙した繊維のうち1種のみから構成されてもよく、また、複数種の繊維から構成されてもよい。
繊維シートは、上記列挙した繊維からなる群より選択される少なくとも1種の繊維を含むことが好ましい。また、フェノール樹脂、アラミド、又はポリカーボネートの繊維を含むことがより好ましく、フェノール樹脂繊維を含むことが特に好ましい。
【0016】
繊維シートを構成する糸は、フィラメント糸又は紡績糸のどちらでも利用できる。繊維シートの形態が織物又は編み物の場合は、糸の滑脱抵抗力が大きく、スリップが起こりくい紡績糸が好ましい。また、糸は単糸であっても、複数の糸を合撚等によって1本にしたものであってもよいが、糸の総合繊度は20d(デニール)〜2000dであることが好ましく、50d〜500dであることがより好ましく、75d〜200dであることが特に好ましい。繊度が20d未満では糸の強度が低くなり、糸から繊維シートを構成しても金属酸化物層形成時や触媒反応時等に破断しやすくなる懸念がある。一方、繊度が2000dより太い糸では、構成した繊維シートの柔軟性が損なわれ、折り曲げ等の変形が困難になる懸念がある。
【0017】
糸は強度の向上や太さの均一化を目的として撚りをかけてもよい。撚りの方向はS方向又はZ方向のいずれの方向でもよく、撚りの回数は、例えば、5〜200T/インチであり、好ましくは15〜50T/インチであり、より好ましくは20〜25T/インチである。5T/インチより少ない撚り回数では、容易に解撚され実用上の意義が希薄であり、200T/インチより多い撚り回数では繊維シートの柔軟性が低くなり、折り曲げ等の変形が困難になる懸念がある。
【0018】
繊維シートの形態が織物又は編物である場合、経方向及び緯方向の織物密度は、20〜200本/インチであることが好ましく、30〜150本/インチであることがより好ましく、60〜100本/インチであることが特に好ましい。20本/インチより低い織物密度では、繊維シートの強度が低くなり、金属酸化物層形成時や触媒反応時等に破断しやすくなる可能性があり、また、糸の滑脱によって繊維シートの通気性が不均一になる可能性がある。200本/インチより高い織物密度では、繊維シートの通気性が低くなり、繊維シートに期待される触媒使用時の圧力損失の抑制効果が小さくなる懸念がある。
【0019】
繊維シートの形態が不織布である場合、不織布の単位面積当たりの重量は、好ましくは10〜500g/m
2であり、より好ましくは50〜250g/m
2であり、さらにより好ましくは100〜200g/m
2であり、特に好ましくは100〜150g/m
2である。単位面積当たりの重量が10g/m
2未満の場合、繊維シートの強度が低くなり、金属酸化物層形成時や触媒反応時等に破断しやすくなる可能性がある。単位面積当たりの重量が500g/m
2より重い場合、繊維シートの通気性が低くなり、繊維シートに期待される触媒使用時の圧力損失の抑制効果が小さくなる懸念がある。
【0020】
繊維シートの表面に形成される金属酸化物を含む層は、活性金属を繊維シートに担持させる機能を有する。従って、目的とする触媒の触媒活性を発揮するのに十分な活性金属を担持することを条件に、金属酸化物層は、繊維シート上に連続して形成されていてもよく、又は不連続に形成されてもよい。また、層の厚みは特に限定されない。
【0021】
また、金属酸化物層は繊維シートの補強材としても機能するため、強度や耐熱性の向上に寄与し、触媒寿命も改善される。さらに、金属酸化物層は、活性金属の活性化時や触媒反応時に溶融や熱分解が起こりにくいため、分解生成物の混入や活性金属の埋没などによる触媒活性低下も起こりにくい。
【0022】
金属酸化物は、特に限定されないが、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、チタニア−アルミナ、シリカ−チタニア−ジルコニア等が挙げられる。金属酸化物層は、上記の金属酸化物を含んでいればよく、さらに他の任意の成分を含んでいてもよい。
【0023】
全触媒に対する金属酸化物層の重量割合は、特に限定されないが、触媒全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0024】
本発明の触媒は、金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に、活性金属が担持される。活性金属は、金属酸化物層を媒介として、繊維シート上に好適に存在する。活性金属は、金属酸化物層の表面に連続して担持されていてもよく、又は不連続に担持されていてもよい。また、活性金属は、金属酸化物層の内部に存在して、金属酸化物と共に繊維シートに担持されていてもよい。
【0025】
本発明の触媒に使用する活性金属は、特に限定されず、触媒を使用する目的反応に依存して適宜決定することができる。活性金属は1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合せて使用してもよい。
活性金属としては、例えば、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅等を挙げることができる。繊維シートを構成する繊維の重量減少開始温度(例えば、250℃〜350℃)より低い温度でも進行する反応に汎用される、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケルが好ましく、触媒活性が高く炭素析出反応も起こりにくいルテニウムが特に好ましい。
活性金属は、ルテニウム、鉄、銅、ニッケル、及びコバルトからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
活性金属の担持量は、特に限定されず、触媒を使用する目的反応に依存して適宜決定することができる。例えば、本発明の触媒を水性ガスシフト反応用の触媒として用いる場合は、触媒全重量を基準として、0.5重量%以上30重量%以下が好ましく、0.5重量%以上25重量%以下がより好ましく、0.5重量%以上15重量%以下がさらに好ましい。また、本発明の触媒をフィッシャー・トロプシュ反応用の触媒として用いる場合は、触媒全重量を基準として、5重量%以上25重量%以下が好ましく、7重量%以上20重量%以下がより好ましく、10重量%以上20重量%以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明の触媒を水性ガスシフト反応に用いる場合、活性金属は、ルテニウム、鉄、銅、ニッケル、及びコバルトからなる群より選択される1〜3種を含むことが好ましい。
本発明の触媒をフィッシャー・トロプシュ反応に用いる場合、活性金属は、ルテニウム、コバルト、及び鉄からなる群より選択される1〜2種を含むことが好ましい。
本発明の触媒は、これらの活性金属の他、触媒性能を向上させることを目的として、助触媒が固着されていてもよい。
【0027】
本発明の触媒は、担持する活性金属を適宜変更することにより種々の反応に用いることができる。例えば、水性ガスシフト反応、フィッシャー・トロプシュ反応等に好適に用いることができる。
本発明の触媒の一態様は、繊維シートを基材とする水性ガスシフト反応用活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持され、前記活性金属が、ルテニウム、鉄、銅、ニッケル、及びコバルトからなる群より選択される1〜3種の金属である触媒である。
本態様において、好ましくは、活性金属が、触媒全重量を基準として0.5重量%以上30重量%以下であり、金属酸化物層が、触媒全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下であり、残部が繊維シートである。
【0028】
また、本発明の触媒の別の態様は、繊維シートを基材とするフィッシャー・トロプシュ反応用活性金属担持触媒であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成され、前記金属酸化物層の表面及び内部の少なくとも一方に前記活性金属が担持され、前記活性金属が、ルテニウム、コバルト、及び鉄からなる群より選択される1〜2種である触媒である。
本態様において、好ましくは、活性金属が、触媒全重量を基準として5重量%以上25重量%以下であり、金属酸化物層が、触媒全重量を基準として0.1重量%以上10重量%以下であり、残部が繊維シートである。
【0029】
本発明の触媒は、後述する本発明の触媒製造方法にしたがって製造することができる。
【0030】
(本発明の触媒用担体)
本発明の触媒用担体は、繊維シートを基材とする活性金属担持触媒用担体であって、前記繊維シートの表面に金属酸化物を含む層が形成された触媒用担体である。
基材として繊維シートを用いることにより、前述した本発明の触媒と同様に、可撓性、柔軟性を有し、幅広い態様で使用することができ、特に小型反応装置において好適に使用することができる。表面に金属酸化物層を形成させた繊維シートを触媒担体とすることにより、粘着剤を用いることなく、活性金属塩溶液中に含浸するのみで活性金属を容易に担持させることができる。
【0031】
本発明の触媒用担体を構成する繊維シート、金属酸化物層は、本発明の触媒について上記説明したとおりである。
本発明の触媒用担体は、後述する本発明の第一の触媒製造方法の第一の工程〜第三の工程にしたがって製造することができる。
本発明の触媒用担体を触媒として用いるためには、後述する本発明の第一の触媒製造方法の第四の工程〜第五の工程にしたがって、目的とする触媒反応に適した活性金属を担持させればよい。また、適宜、追加の工程であるアンモニア処理工程を行ってもよい。
【0032】
(本発明の触媒製造方法)
本発明の第一の触媒製造方法は、繊維シートを基材とする活性金属担持触媒を製造する方法であって、(1)溶液の全重量を基準として、金属アルコキシド10〜40重量%と、アルコール10〜50重量%と、1〜15規定の鉱酸を0.1〜0.5重量%と、残部の水とを含む溶液中に、繊維シートを浸漬する工程と、(2)前記浸漬した繊維シートを加熱する工程と、(3)前記加熱後の繊維シートを、活性金属塩溶液中に浸漬する工程と、(4)前記浸漬した繊維シートを加熱する工程とを含む。
【0033】
まず、第一の工程として、溶液の全重量を100%として、金属アルコキシド10〜40重量%と、アルコール10〜50重量%と、1〜15規定の鉱酸を0.1〜0.5重量%と、残部の水とを含む溶液中に、繊維シートを浸漬する。これにより、繊維シートに金属酸化物を含む溶液を含浸させることができる。
【0034】
繊維シートは、本発明の触媒について上記説明したとおりである。
繊維シートを浸漬する溶液は、金属アルコキシド、アルコール、水、鉱酸を含む。
繊維シートを浸漬する溶液全体を100%として、金属アルコキシドの重量割合は10〜40%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましく、25〜30%であることが特に好ましい。金属アルコキシドの重量割合が10%未満の場合、活性金属が脱落などによって十分に担持されない懸念があり、40%より多いと繊維シート表面に形成される金属酸化物層によって繊維シートの隙間が塞がれ、結果的に繊維シートの通気性が損なわれる懸念がある。
【0035】
金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン、テトラエトキシチタン、アルミニウムイソプロポキシド、マグネシウムジエトキシド、亜鉛エトキシド、及びジルコニウムエトキシドからなる群より選択される少なくとも1種を含む。テトラエトキシシラン及びアルミニウムイソプロポキシドは、加水分解によってそれぞれ触媒担体として汎用的に利用されるシリカ及びアルミナとなるため好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。
【0036】
繊維シートを浸漬する溶液の全重量を100%として、アルコールの重量割合は10〜50%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましく、40〜45%であることが特に好ましい。アルコールの重量割合が10%未満の場合には、金属アルコキシドの加水分解が急激に進行し、金属酸化物層が繊維シート表面に均一に形成されない懸念があり、50%より多い場合には、金属アルコキシドの加水分解が遅く、金属酸化物層の形成に時間がかかるため、本発明の実用上の意義が希薄になる。
アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、及び2−メチル−2−プロパノールからなる群より選択される少なくとも1種を含む。他のアルコールよりも親水性が大きいことから、メタノール及びエタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0037】
繊維シートを浸漬する溶液に含まれる水は、不純物を含まないか少ないことが好ましく、例えば、純水、蒸留水、脱イオン水等を用いることができる。
【0038】
繊維シートを浸漬する溶液の全重量を100%として、鉱酸の重量割合は0.1〜0.5%であることが好ましく、0.2〜0.5%であることが好ましく、0.3〜0.35%であることが特に好ましい。鉱酸の重量割合が0.1%未満の場合には金属アルコキシドの加水分解が遅く、金属酸化物層の形成に時間がかかるため、本発明の実用上の意義が希薄になり、1%より多い場合には、鉱酸が触媒毒として作用し、触媒性能が低下する懸念がある。
鉱酸は、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、フッ化水素酸を使用することができる。鉱酸の濃度は、例えば、1〜15規定であることが好ましく、5〜15規定であることがより好ましく、8〜12規定であることが特に好ましい。鉱酸の濃度が1規定よりも低い場合には、金属アルコキシドの加水分解速度が遅く、金属酸化物の形成が不十分となる。また、15規定よりも高い濃度であっても金属酸化物の形成に違いは無く、実用上の意義が希薄となる。
【0039】
金属アルコキシド溶液に浸漬する繊維シートと、金属アルコキシド溶液との重量比は、1:1〜1:100であることが好ましく、1:10〜1:30がより好ましく、1:15〜1:20であることが最も好ましい。浴比が1:1より少ないと繊維シート全面に金属アルコキシド溶液を十分に浸漬できず、1:100よりも大きいと繊維シート上に層形成されない金属酸化物の割合が多くなるため、活性金属の担持量が減少し、それに伴い触媒性能が低下することが懸念される。
【0040】
浸漬時間は、例えば30分以上が好ましい。浸漬時間の上限は特に限定されないが、生産性などの観点から12時間以内に浸漬工程を終えることが望ましい。
【0041】
次に、第二の工程として、第一の工程において浸漬した繊維シートを加熱する。第二の工程である加熱工程により、繊維シートを乾燥させることができ、また、金属酸化物の重合度を高めることができる。
繊維シートを乾燥させることにより、過剰な溶液を繊維シートから除去するとともに、繊維シート表面に金属酸化物層を形成することができる。また、乾燥により、活性金属を含む溶液が金属酸化物層に満遍なく行き渡る効果が高まる。
乾燥のための加熱は、当技術分野において既知の手段を用いて適宜行うことができ、また、温度や時間等の条件は適宜設定することができる。
【0042】
また、繊維シートを250〜350℃で加熱することにより、金属酸化物層における未反応のOH基やOR基が外れ、金属酸化物の重合度がより高くなる。250〜350℃の温度範囲は、水性ガスシフト反応やフィッシャー・トロプシュ反応に好ましい温度範囲であり、この温度範囲で加熱することは、予め熱履歴を与えることによって、これら反応に触媒の物性変化を抑制し、触媒が示す活性を安定化させる効果が期待できる。
【0043】
金属酸化物の重合度を高めるための加熱温度は、250〜350℃であり、好ましくは280〜320℃であり、より好ましくは295〜305℃である。250℃より低い温度では、金属酸化物層の形成が不十分となり、活性金属の担持量が減少し、それに伴い触媒性能が低下することが懸念される。350℃より高い温度では、繊維シートの熱分解によって分解ガスが生成する懸念がある。
加熱時間は15〜240分であり、好ましくは45〜120分であり、より好ましくは50〜70分である。15分より短い時間では十分に重合が進行しない懸念がある。また、240分より長い時間では繊維シートの分解による脆化が懸念される。
尚、第二の工程である加熱工程は、乾燥する工程と、250〜350℃で加熱する工程とを区別して行ってもよく、又は、250〜350℃で加熱する工程のみを行うことにより乾燥工程を兼ねてもよい。
【0044】
次に、第三の工程として、第二の工程において加熱した繊維シートを、活性金属溶液中に浸漬する。これにより、金属酸化物層が形成された繊維シートに活性金属溶液を含浸させることができる。
【0045】
活性金属溶液は、活性金属の塩を適する溶媒に溶解したものである。活性金属は、本発明の触媒について上記説明したとおりである。活性金属の塩は、用いる溶媒に溶解するものであれば特に限定されない。
活性金属溶液の溶媒は、用いる活性金属の塩を溶解できるものであれば特に限定されない。表面に金属酸化物層を形成した繊維シートに対して、活性金属の分散性を高めるためには、繊維シートの濡れ性を向上させる必要があり、このためには、活性金属溶液の溶媒は1%以上の濃度のアルコール水溶液が好ましい。1%未満のアルコール水溶液濃度では、繊維シートの濡れ性向上が不十分となるため、活性金属の分散性が低下する懸念がある。活性金属溶液としてのアルコール水溶液に用いるアルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、及び2−メチル−2−プロパノールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。他のアルコールよりも親水性が大きいことから、メタノール及びエタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0046】
第二の工程において加熱した繊維シートと活性金属溶液との重量比は、1:1〜1:20であることが好ましく、1:3〜1:10がより好ましく、1:4〜1:7であることが最も好ましい。重量比が1:1より小さいと繊維シート全面に活性金属溶液を十分に浸漬できず、1:20よりも大きいと繊維シートに担持されない活性金属の割合が多くなるため、活性金属の担持量が減少し、それに伴い触媒性能が低下することが懸念される。
【0047】
活性金属溶液中の活性金属溶解量は、特に限定されないが、例えば本発明の触媒を水性ガスシフト反応の触媒として用いる場合は、第二の工程において加熱した繊維シートに対して、活性金属が0.5〜30%の重量割合で溶解していることが好ましい。0.5%未満の場合には活性金属担持量が少ないため、反応活性が低いことが懸念され、30%より多く活性金属を繊維シートに担持させた場合、活性金属の剥落が懸念され、実用上の意義が希薄となる。また、本発明の触媒をフィッシャー・トロプシュ反応用の触媒として用いる場合は、第二の工程において加熱した繊維シートに対して、活性金属が5〜30%の重量割合で溶解していることが好ましい。5%未満の場合には活性金属担持量が少ないため、反応活性が低いことが懸念され、30%より多く活性金属を繊維シートに担持させた場合、活性金属の剥落が懸念され、実用上の意義が希薄となる。
【0048】
浸漬時間は、例えば1〜60分が好ましく、20〜45分がより好ましく、35〜40分が最も好ましい。浸漬時間が1分未満の場合には繊維シート上に活性金属が十分に担持されない懸念がある。また、1時間より長い時間浸漬しても繊維シート上への活性金属担持量に違いは見られず、実用上の意義が希薄となる。
【0049】
次に、第四の工程として、第三の工程において浸漬した繊維シートを加熱する。第四の工程である加熱工程により、繊維シートを乾燥させ、過剰な活性金属溶液を繊維シートから除去するとともに、必要な活性金属を担持することができる。
乾燥のための加熱は、当技術分野において既知の手段を用いて適宜行うことができ、また、温度や時間等の条件は適宜設定することができる。
【0050】
さらに追加の工程として、活性金属溶液の調製原料として塩化物を用いた場合には、繊維シート上に付着した金属塩化物を脱塩素化するため、アンモニア処理工程を行うことが好ましい。アンモニア処理工程は、繊維シートをアンモニア水溶液に浸漬し、加熱、水洗、乾燥する手順を必要に応じて繰り返すことにより行うことができる。
アンモニア濃度は1mol/l以上が好ましく、アンモニア水溶液に浸漬する繊維シートと、アンモニア水溶液の重量比は1:1〜1:100が好ましい。1mol/lより低い濃度のアンモニア水溶液を用いた場合、脱塩素化が不十分となる可能性がある。浴比を1:1未満とした場合、アンモニア水溶液に対して繊維シートを十分に浸漬できないため、脱塩素化が不十分となる。1:100より大きい浴比とした場合、脱塩素化の効果に変わりがなく、実用上の意義が希薄になる。
アンモニア処理工程のその他の条件は適宜設定することができる。
【0051】
また、製造された触媒の活性を向上させるため、さらに活性化処理工程を行うことが好ましい。活性化処理工程は、真空条件下、希ガス雰囲気下、窒素雰囲気下、二酸化炭素雰囲気下、あるいは水素雰囲気下において加熱処理することによって行うことができる。また、加熱処理は、例えば、300℃で1時間行うことができる。
尚、活性化処理工程は、第四の工程である加熱工程と区別して行ってもよく、又は、第四の乾燥工程を酸素不存在下で行うことにより、第四の加熱工程と活性化処理工程とを兼ねてもよい。
【0052】
本発明の第二の触媒製造方法は、繊維シートを基材とする活性金属担持触媒を製造する方法であって、(1)溶液の全重量を100%として、金属アルコキシド10〜40%と、アルコール10〜50%と、1〜15規定の鉱酸を0.1〜0.5%と、残部の水とを含む溶液中に活性金属塩を添加し、繊維シートを浸漬する工程と、(2)前記浸漬した繊維シートを加熱する工程と、を含む。
【0053】
本発明の第一の触媒製造方法は、第一の工程である金属酸化物層を形成するための浸漬工程と、第三の工程である活性金属を担持させるための浸漬工程とを分けて行うものであるところ、本発明の第二の触媒製造方法は、第一の工程において、溶液中に金属酸化物層の原料と活性金属塩を包含させることにより、金属酸化物層の形成と活性金属の担持を同時に行うものである。これにより、作業の手間を省き、時間を省略することができる。
【0054】
第一の工程は、本発明の第一の触媒製造方法の第一の工程と同様に行うことができる。活性金属塩は、例えば、本発明の触媒を水性ガスシフト反応用の触媒として用いる場合は、触媒全重量基準金属換算で、0.5重量%以上30重量%以下となるように、また、本発明の触媒をフィッシャー・トロプシュ反応用の触媒として用いる場合は、触媒全重量基準金属換算で、5重量%以上25重量%以下となるように溶液中に添加すればよい。
第二の工程は、本発明の第一の触媒製造方法の第二の工程と同様に行うことができる。具体的には、乾燥する工程と、250〜350℃で加熱する工程とを区別して行ってもよく、又は、250〜350℃で加熱する工程のみを行うことにより乾燥工程を兼ねてもよい。
また、適宜、追加の工程であるアンモニア処理工程や活性化処理工程を行ってもよい。活性化処理工程は、第二の工程である加熱工程と区別して行ってもよく、又は、第二の乾燥工程を真空条件下、希ガス雰囲気下、窒素雰囲気下、二酸化炭素雰囲気下、あるいは水素雰囲気下で行うことにより、第二の加熱工程と活性化処理工程とを兼ねてもよい。
【0055】
(本発明の触媒を用いた触媒反応)
本発明の触媒を用いた触媒反応において、反応温度は350℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。350℃より高い反応温度では、繊維シートの熱分解によって分解ガスが生成する懸念がある。
圧力は100気圧以下であることが好ましく、10気圧以下であることがより好ましく、1気圧以下であることが特に好ましい。100気圧より高い反応圧力では、繊維シートの脆化が著しく、触媒担体としての実用性が希薄になる懸念がある。
【0056】
流通系で反応を行う場合、原料ガスの通気量は、GHSV(1時間フィードが通過する体積を触媒の体積で割った数字;gas hourly space velocity)が200(vol/vol)h
−1以上30000(vol/vol)h
−1以下であることが好ましく、800(vol/vol)h
−1以上25000(vol/vol)h
−1以下であることがより好ましく、1200(vol/vol)h
−1以上5000(vol/vol)h
−1以下であることが特に好ましい。200(vol/vol)h
−1未満では空時収量が少なくなり不経済となり、30000(vol/vol)h
−1を超過すると転化率が頭打ちになり、分離工程が難しくなる懸念がある。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0058】
実施例1
(1)水性ガスシフト(WGS)反応用触媒の製造
フェノール樹脂系繊維であるノボロイド繊維(カイノール(登録商標)KF−01551HCRC、群栄化学工業株式会社)とアラミド繊維(トワロン(登録商標)、帝人株式会社)とを重量比8:2の割合で紡績した後、Z方向に22.8T/インチの割合で撚りをかけ、混紡糸の繊度が106dとなるようにした。さらにレピア織機(735型、石川製作所製)を用い、経方向及び緯方向の糸密度がそれぞれ100本/インチ及び70本/インチとなるように平織織物(以下、「NA織物」と呼ぶ。)を製織した。
【0059】
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)50.0g、エタノール75.2g、蒸留水57.0g及び10規定塩酸0.6gの混合溶液中に10gのNA織物を1時間浸漬し、12時間自然乾燥した(以下、「SiO
2−NA織物」と呼ぶ。)。このSiO
2−NA織物5gを、電気炉を用いて300℃で1時間加熱処理を行った後、蒸留水とメタノールを体積比2:1の割合で混合した溶液30mlに触媒全重量を基準としてルテニウムの重量割合が2.0重量%となるように塩化ルテニウム・n水和物(試薬特級、和光純薬工業株式会社、Ru assay 40%)を溶解させた溶液中に浸漬した。
【0060】
次に、浸漬した織物をロータリーエバポレーターに入れ、エバポレーターを50℃に設定したウォーターバス中で加熱しながら20rpmの回転速度で30分回転させた後、アスピレーターを用いて減圧乾燥し、水分を除去した。さらに、乾燥した織物を7%アンモニア水250ml中に浸漬し、浸漬した織物をロータリーエバポレーターに入れ、エバポレーターを50℃に設定したウォーターバス中で加熱しながら20rpmの回転速度で30分回転させる脱塩素化工程を2回繰り返した。脱塩素化工程後の織物を十分に水洗し、60℃の乾燥機中で4時間乾燥して、触媒1を得た。
【0061】
(2)WGS反応
触媒1を用いてWGS反応を行った。反応には、
図1に示すようなパイレックス(登録商標)硝子製循環式反応装置を用いた。循環部は内径8mmφの硝子管から成り、U字形リアクターと電磁石駆動ピストン式循環ポンプ(株式会社三鈴製)を備える。駆動用の電磁石は0.6mmφのエナメル線を約500g用いて製作し、駆動用パルス電流を与え、ピストンを上下動させることによりガスを循環させた。
反応時には、触媒床に触媒1を1.0g設置し、真空条件下において300℃で1時間加熱処理する活性化処理工程を行い、同温度で水蒸気及び一酸化炭素を、それぞれ3.33kPa(25torr)ずつ系内に導入し、WGS反応を行った。
【0062】
反応装置中における無機ガスの分析には、熱伝導度検出器型ガスクロマトグラフ(TCD−GC)(GC−8A、株式会社島津製作所製)を用いた。カラムオーブン温度は80℃から100℃までとし、10℃/minの温度勾配で昇温した。カラムはUnibeads C(80〜100mesh、ジーエルサイエンス株式会社製)を充填した4mm×3mの分離カラムを用いた。
低級炭化水素の分析には、水素炎イオン化検出器型ガスクロマトグラフ(FID−GC)(GC−9A、株式会社島津製作所製)を用いた。カラムオーブン温度は50℃から150℃までとし、5℃/minの温度勾配で昇温した。カラムはUnipak S(100〜150mesh、ジーエルサイエンス株式会社製)を充填した4mm×2mの分離カラムを用いた。
キャリヤーガスは、どちらのガスクロマトグラフもともにアルゴンを用いた。
【0063】
図2に、水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の乾きガス総量を100%とした場合のガス組成の経時変化を示す。4時間反応させた後の水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の組成は、それぞれ10.9%、16.0%、0.7%及び72.4%であった。また、一酸化炭素の転化率は99.3%を示した。
【0064】
(3)触媒の破断応力
触媒1を経方向50mm、緯方向25mmの大きさに裁断したもの(以下、「経方向試料」と呼ぶ。)と、経方向25mm、緯方向50mmの大きさに裁断したもの(以下、「緯方向試料」と呼ぶ。)をそれぞれ作製した。これらの試料について、ねじ式万能試験機(LSC−1/30−2、株式会社東京試験機製)を用いて、チャック間距離30mm、クロスヘッドスピード30mm/minの条件で破断応力を測定した。その結果、触媒1の経方向及び緯方向の破断応力は、それぞれ、0.396MPa及び0.106MPaであった。
【0065】
(4)触媒担体の熱収縮率
SiO
2−NA織物を10cm四方の大きさに裁断し、電気炉を用いて300℃、1時間の加熱処理を行った。その後、SiO
2−NA織物の寸法を測定し、以下の式(1)によって経方向及び緯方向の収縮率を算出した。
収縮率(%)={(加熱処理前の長さ)−(加熱処理後の長さ)}/(加熱処理前の長さ)×100 ・・・(1)
その結果、SiO
2−NA織物の経方向及び緯方向の収縮率は、それぞれ、4.8%及び5.0%であった。
以上の実施例1の結果から、触媒1の総合評価は適であった。
【0066】
実施例2
(1)WGS反応用触媒の製造
TEOS25.0g、エタノール37.6g、蒸留水23.5g、及び10規定塩酸0.3gの混合溶液中に、触媒全重量を基準としてルテニウムの重量割合が1.2重量%となるように塩化ルテニウム・n水和物及びNA織物を添加し、1時間浸漬した後、12時間自然乾燥した(以下、「Ru(1.2)Cl
3/SiO
2−NA織物」と呼ぶ。)。このRu(1.2)Cl
3/SiO
2−NA織物に対し、電気炉を用いて300℃で1時間加熱処理を行った。その後、加熱処理後の織物5gを7%アンモニア水250ml中に浸漬し、浸漬した織物をロータリーエバポレーターに入れ、エバポレーターを50℃に設定したウォーターバス中で加熱しながら20rpmの回転速度で30分回転させる脱塩素化工程を2回繰り返した。脱塩素化工程後の織物を十分に水洗し、60℃の乾燥機中で4時間乾燥して、触媒2を得た。
【0067】
(2)WGS反応
触媒として触媒2を用いたことを除いては、実施例1と同様に、WGS反応及びガス分析を行った。また、反応時には、触媒床に触媒2を1.0g設置し、真空条件下において300℃で1時間加熱処理する活性化処理工程を行い、同温度で水蒸気及び一酸化炭素を、それぞれ3.33kPa(25torr)ずつ系内に導入し、WGS反応を行った。
図3に、水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の乾きガス総量を100%とした場合のガス組成の経時変化を示す。4時間反応させた後の水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の組成は、それぞれ、30.2%、4.7%、10.3%及び54.8%であった。また、一酸化炭素の転化率は89.7%を示した。
【0068】
(3)触媒の破断応力
試料として触媒2を用いたことを除いては、実施例1と同様に、経方向及び緯方向の破断応力を測定した。その結果、触媒2の経方向及び緯方向の破断応力は、それぞれ、0.402MPa及び0.103MPaであった。
【0069】
(4)触媒の熱収縮率
試料としてRu(1.2)Cl
3/SiO
2−NA織物を用いたことを除いては、実施例1と同様に、収縮率を算出した。その結果、Ru(1.2)Cl
3/SiO
2−NA織物の経方向及び緯方向の収縮率は、それぞれ、4.9%及び4.9%であった。
以上の実施例2の結果から、触媒2の総合評価は適であった。
【0070】
実施例3
(1)WGS反応用触媒の製造
TEOS25.0g、エタノール37.6g、蒸留水23.5g、及び10規定塩酸0.3gの混合溶液中に、触媒全重量を基準としてルテニウムの重量割合が0.8重量%となるように塩化ルテニウム・n水和物及びNA織物を添加し、1時間浸漬した後12時間自然乾燥した(以下、「Ru(0.8)Cl
3/SiO
2−NA織物」と呼ぶ。)。このRu(0.8)Cl
3/SiO
2−NA織物5gを7%アンモニア水250ml中に浸漬し、浸漬した織物をロータリーエバポレーターに入れ、エバポレーターを50℃に設定したウォーターバス中で加熱しながら20rpmの回転速度で30分回転させる脱塩素化工程を2回繰り返した。脱塩素化工程後の織物を十分に水洗し、60℃の乾燥機中で4時間乾燥した(以下、「Ru(0.8)(OH)
3/SiO
2−NA織物」と呼ぶ)。その後、電気炉を用いて300℃で1時間加熱処理を行い、触媒3を得た。
【0071】
(2)WGS反応
触媒として触媒3を用いたことを除いては、実施例1と同様に、WGS反応及びガス分析を行った。また、反応時には、触媒床に触媒3を1.0g設置し、真空条件下において300℃で1時間加熱処理する活性化処理工程を行い、同温度で水蒸気及び一酸化炭素を、それぞれ3.33kPa(25torr)ずつ系内に導入し、WGS反応を行った。
図4に、水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の乾きガス総量を100%とした場合のガス組成の経時変化を示す。4時間反応させた後の水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の組成は、それぞれ、18.0%、1.2%、24.6%及び56.3%であった。また、一酸化炭素の転化率は75.4%を示した。
【0072】
(3)触媒の破断応力
試料として触媒3を用いたことを除いては、実施例1と同様に、経方向及び緯方向の破断応力を測定した。その結果、触媒3の経方向及び緯方向の破断応力は、それぞれ、0.391MPa及び0.110MPaであった。
【0073】
(4)触媒の熱収縮率
試料としてRu(0.8)(OH)
3/SiO
2−NA織物を用いたことを除いては、実施例1と同様に、収縮率を算出した。その結果、Ru(0.8)(OH)
3/SiO
2−NA織物の経方向及び緯方向の収縮率は、それぞれ、4.8%及び5.1%であった。
以上の実施例3の結果から、触媒3の総合評価は適であった。
【0074】
比較例1
(1)WGS反応用触媒の製造
蒸留水とメタノールを体積比2:1の割合で混合した溶液30mlに0.25gの塩化ルテニウムn水和物を溶解させ、この溶液中に、NA織物5gを浸漬した。次に、浸漬した織物をロータリーエバポレーターに入れ、エバポレーターを50℃に設定したウォーターバス中で加熱しながら20rpmの回転速度で30分回転させた後、アスピレーターを用いて減圧乾燥し、水分を除去した。さらに、乾燥した織物を7%アンモニア水250ml中に浸漬し、浸漬した織物をロータリーエバポレーターに入れ、エバポレーターを50℃に設定したウォーターバス中で加熱しながら20rpmの回転速度で30分回転させる脱塩素化工程を2回繰り返した。このとき、NA織物上より著しいルテニウム分の脱落が見られた。その後、脱塩素化工程後の織物を十分に水洗し、60℃の乾燥機中で4時間乾燥して、電気炉を用いて300℃で1時間加熱処理を行った。このようにして触媒4を得た。
【0075】
(2)WGS反応
触媒として触媒4を用いたことを除いては、実施例1と同様に、WGS反応及びガス分析を行った。
図5に、水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の総量を100%とした場合のガス組成の経時変化を示す。4時間反応させた後の水素、メタン、一酸化炭素及び二酸化炭素の組成は、それぞれ、7.1%、0.4%、85.8%及び6.7%であり、実施例1〜3で用いた触媒1〜3と比較して触媒性能は低かった。
【0076】
(3)触媒の破断応力
試料として触媒4を用いたことを除いては、実施例1と同様に、経方向及び緯方向の破断応力を測定した。その結果、触媒4の経方向及び緯方向の破断応力は、それぞれ、0.054MPa及び0.036MPaであり、実施例1〜3で調製した触媒1〜3と比較して低かった。
【0077】
(4)触媒の熱収縮率
試料としてNA織物を用いたことを除いては、実施例1と同様に、収縮率を算出した。その結果、触媒4の経方向及び緯方向の収縮率は、それぞれ、26.1%及び23.5%であった。実施例1〜3で収縮率を測定した試料と比較して、加熱処理による収縮率が大きかった。
以上の比較例1の結果から、触媒4の総合評価は不適であった。
【0078】
実施例1〜3及び比較例1の結果を次の表1に示す。
【表1】
【0079】
以上の結果から、NA織物表面に金属酸化物被膜を形成させることにより、活性金属の担持量が増加し、それに伴ってWGS反応活性も向上することが明らかとなった。