【解決手段】窒素及び有機物を含有する被処理液4を、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1脱窒処理液6を得る第1脱窒処理と、第1脱窒処理液6中に含まれるアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化菌により亜硝酸性窒素に酸化して亜硝酸化処理液9を得る亜硝酸化処理と、亜硝酸化処理液9を、独立栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理する第2脱窒処理と、亜硝酸化処理液9を第1脱窒処理へ循環し、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により亜硝酸化処理液9中の亜硝酸性窒素を窒素ガスに変換して除去する亜硝酸化処理液循環処理とを含む脱窒処理方法である。
前記亜硝酸化処理液循環処理は、前記亜硝酸化処理液に含まれる亜硝酸性窒素濃度が、前記第1脱窒処理における脱窒反応において前記被処理液中の生物化学的酸素要求量に対して理論上必要な濃度となるように、前記亜硝酸処理液の循環量を調整することを含む請求項1又は3に記載の脱窒処理方法。
前記亜硝酸化処理液循環処理において、前記被処理液の供給流量に対する前記亜硝酸化処理液の循環流量の比を以下の関係式(1)に基づいて決定することを含む請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の脱窒処理方法。
r=a×2.32/(1.32×3×(1−a/3)) ・・・(1)
((1)式において、rは被処理液の供給流量に対する前記亜硝酸化処理液の循環流量の比[−]を示し、aは被処理液の全窒素濃度に対する生物化学的酸素要求量の比(BOD/T−N比)を示す。)
前記第2脱窒処理液循環処理において、前記被処理液の供給流量に対する前記第2脱窒処理液の循環流量の比を以下の関係式(2)に基づいて決定することを含む請求項2〜6のいずれか1項に記載の脱窒処理方法。
r<Cn/200−1 ・・・(2)
((2)式において、rは被処理液の供給流量に対する前記第2脱窒処理液の循環流量の比[−]を示し、Cnは被処理液のアンモニア性窒素濃度[mg/L]を示す。)
前記第2脱窒処理液循環処理は、前記亜硝酸化処理で処理される前記第1脱窒処理液のアンモニア性窒素濃度が200mg/Lよりも高くなるように、前記第2脱窒処理液の循環流量を調整することを含む請求項2〜7のいずれか1項に記載の脱窒処理方法。
前記亜硝酸化処理は、活性汚泥共存下に硝化菌を付着固定した高分子流動担体を添加した反応槽中に前記第1脱窒処理液を供給することにより、前記第1脱窒処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に変換する部分亜硝酸化処理を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱窒処理方法。
前記第2脱窒処理は、アンモニア脱窒菌を付着固定した高分子流動担体を添加した反応槽に前記亜硝酸化処理液を供給することにより、アンモニア性窒素を水素供与体、亜硝酸性窒素を水素受容体とする独立栄養性脱窒反応を進行させることを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の脱窒処理方法。
前記第2脱窒処理で得られた第2脱窒処理液を、従属栄養性脱窒反応により脱窒する第3脱窒処理を行い、該第3脱窒処理により得られる第3脱窒処理液を曝気処理後に沈殿池に導入して固液分離し、該固液分離により得られる沈降濃縮汚泥を前記第1脱窒処理へ返送することを更に含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の脱窒処理方法。
【背景技術】
【0002】
窒素濃度の高い有機性廃液の処理方法として生物学的硝化脱窒法がよく用いられている。生物学的硝化脱窒法では、原水中のアンモニア性窒素を、好気状態の反応槽、通称硝化槽においてアンモニア酸化細菌(AOB)により亜硝酸性窒素(NO
2−N)に酸化し、次に亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌(NOB)により硝酸性窒素(NO
3−N)に酸化する。さらに、この硝化槽からの処理液を、嫌気状態の反応槽、通称脱窒槽に導入して、硝化槽処理液中の硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を従属栄養性細菌である脱窒菌を用いて有機物を電子供与体として利用しながら無害の窒素ガスに還元している。
【0003】
しかしながら、この従来の生物学的硝化脱窒処理では、流入原水中のアンモニア性窒素(NH
4−N)が、硝化槽において亜硝酸性窒素(NO
2−N)を経て最終的に硝酸性窒素(NO
3−N)に酸化される際に、NH
4−N酸化に必要な酸素を硝化槽に供給する必要がある。この酸素の必要量は原水NH
4−Nの4.57倍と高いため、曝気による酸素供給動力が大きくなり処理コスト増の要因となる。
【0004】
一方、アンモニア脱窒槽においては、電子供与体となる有機物を大量に必要とするため、原水中に有機物が少ない場合、メタノール等を添加する必要が生じ、全体のランニングコストが高いという欠点がある。
【0005】
従来の生物学的硝化脱窒法としては、例えば以下の方法が知られている。例えば、特許第3460745号公報(特許文献1)では、アンモニア性窒素(NH
4−N)を電子供与体とし、亜硝酸性窒素(NO
2−N)を電子受容体とする独立栄養性微生物を利用し、NH
4−NとNO
2−Nを嫌気状態において反応させて窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化処理法(Anaerobic Ammonium Oxidation Process)、所謂アナモックス反応による窒素除去方法またはアンモニア脱窒処理法の例が記載されている。
【0006】
特開平9−108693号公報(特許文献2)には、窒素と浮遊性有機物を含む廃水を複数の浮上濾材型濾過装置で濾過し、濾過した濾過水を硝化・脱窒装置で生物学的に処理して廃水中の窒素を除去する廃水処理方法の例が記載されている。
【0007】
特開2001−38389号公報(特許文献3)には、生物学的硝化脱窒法において廃水の化学的酸素要求量(COD)と有機性炭素濃度を検出し、検出結果に基づいて廃水の生物化学的酸素要求量(BOD)と全窒素濃度(T−N)の比が2.5以上となるように脱窒槽内の有機物供給量を制御することが記載されている。
【0008】
特開2005−324131号公報(特許文献4)には、対象原水を無酸素槽、亜硝酸生成槽、嫌気性アンモニア槽、硝化槽の順に供給し、硝化槽の処理液の一部を返送ラインにより無酸素槽に循環させる廃水処理装置及び廃水処理方法が記載されている。
【0009】
特開2005−305410号公報(特許文献5)には、廃水を2つに分配し、一方の廃水中のアンモニアを硝化槽で亜硝酸に硝化し、他方の廃水を脱窒槽で脱窒処理させ、2つの廃水を合流させて嫌気性アンモニア酸化槽に送水して嫌気性アンモニア酸化細菌によりアンモニアと亜硝酸とを同時脱窒すると共に、嫌気性アンモニア酸化槽で処理された処理水を脱窒槽に循環させる窒素除去方法が記載されている。
【0010】
特開2007−117842号公報(特許文献6)には、被処理水を脱窒槽に導入して窒素除去を行った後、脱窒槽から処理液を被処理水量より少ない量で硝化槽に導入し、被処理水のアンモニア性窒素を亜硝酸性或いは硝酸性窒素に酸化した後、硝化液を脱窒槽に返送する高濃度有機性廃水の窒素除去方法が記載されている。
【0011】
特開2010−480号公報(特許文献7)には、亜硝酸型硝化工程と脱窒工程とからなる有機性原水の脱窒方法において、亜硝酸型硝化工程の前段に有機性廃水中の有機物を分解するBOD分解工程を設けた有機性原水の脱窒方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1〜7に記載された生物学的硝化脱窒法及びその処理装置では、処理効率、処理安定性、装置の小型化及び運転操作の簡略化の面を考慮すると未だ改善の余地がある。
【0014】
上記課題を鑑み、本発明は、窒素及び有機物を含有する被処理液の生物学的硝化脱窒処理において、処理を安定して進めることができ、処理効率を向上させ、装置の小型化が可能な脱窒処理装置及び脱窒処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、窒素及び有機物を含有する被処理液を、亜硝酸化槽及び独立栄養脱窒菌を用いた脱窒槽に供給して嫌気的に処理する脱窒処理方法において、亜硝酸化槽の前段に、従属栄養脱窒菌を用いた脱窒槽を設けるとともに、亜硝酸化槽で得られた亜硝酸化処理液をその脱窒槽に返送し、亜硝酸化処理液中のNO
2−Nを脱窒槽で窒素ガスに変換させることにより、被処理液のBODを低減させ、後段の亜硝酸化処理及びアンモニア脱窒処理をより安定的且つ効率的に処理して窒素濃度の低い処理水が得られることを見出した。
【0016】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、窒素及び有機物を含有する被処理液を、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1脱窒処理液を得る第1脱窒処理と、第1脱窒処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化菌により亜硝酸性窒素に酸化して亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化処理と、亜硝酸化処理液を、独立栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理する第2脱窒処理と、亜硝酸化処理液を第1脱窒処理へ循環し、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により、亜硝酸化処理液中の亜硝酸性窒素を窒素ガスに変換して除去する亜硝酸化処理液循環処理とを含む脱窒処理方法である。
【0017】
本発明は別の一側面において、窒素及び有機物を含有する被処理液を、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1脱窒処理液を得る第1脱窒処理と、第1脱窒処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化菌により亜硝酸性窒素に酸化して亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化処理と、亜硝酸化処理液を、独立栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理する第2脱窒処理と、第2脱窒処理液の一部を第1脱窒処理へ循環する第2脱窒処理液循環処理とを含む脱窒処理方法が提供される。
【0018】
本発明に係る脱窒処理方法は一実施態様において、亜硝酸化処理液循環処理は、亜硝酸化処理液に含まれる亜硝酸性窒素濃度が、第1脱窒処理における脱窒反応において被処理液中の生物化学的酸素要求量に対して理論上必要な濃度となるように、亜硝酸処理液の循環量を調整する。
【0019】
本発明に係る脱窒処理方法は別の一実施態様において、第1脱窒処理の前に、原水を濃縮処理及び脱水処理することにより、被処理液を調製する。
【0020】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、亜硝酸化処理液循環処理において、被処理液の供給流量に対する亜硝酸化処理液の循環流量の比を以下の関係式(1)に基づいて決定することを含む。
r=a×2.32/(1.32×3×(1−a/3)) ・・・(1)
((1)式において、rは被処理液の供給流量に対する亜硝酸化処理液の循環流量の比[−]を示し、aは被処理液の全窒素濃度に対する生物化学的酸素要求量の比(BOD/T−N比)を示す。)
【0021】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、第2脱窒処理液循環処理において、被処理液の供給流量に対する第2脱窒処理液の循環流量の比を以下の関係式(2)に基づいて決定することを含む。
r<Cn/200−1 ・・・(2)
((2)式において、rは被処理液の供給流量に対する第2脱窒処理液の循環流量の比[−]を示し、Cnは被処理液のアンモニア性窒素濃度[mg/L]を示す。)
【0022】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、第2脱窒処理液循環処理は、亜硝酸化処理で処理される第1脱窒処理液のアンモニア性窒素濃度が200mg/Lよりも高くなるように、第2脱窒処理液の循環流量を調整する。
【0023】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、亜硝酸化処理は、活性汚泥共存下に硝化菌を付着固定した高分子流動担体を添加した反応槽中に第1脱窒処理液を供給することにより、第1脱窒処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に変換する部分亜硝酸化処理を含む。
【0024】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、第2脱窒処理は、アンモニア脱窒菌を付着固定した高分子流動担体を添加した反応槽に亜硝酸化処理液を供給することにより、アンモニア性窒素を水素供与体、亜硝酸性窒素を水素受容体とする独立栄養性脱窒反応を進行させる。
【0025】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、第2脱窒処理で発生する窒素ガスを反応槽内で循環させて高分子流動担体を流動させる。
【0026】
本発明に係る脱窒処理方法は更に別の一実施態様において、第2脱窒処理で得られた第2脱窒処理液を、従属栄養性脱窒反応により脱窒する第3脱窒処理を行い、該第3脱窒処理により得られる第3脱窒処理液を曝気処理後に沈殿池に導入して固液分離し、該固液分離により得られる沈降濃縮汚泥を第1脱窒処理へ返送することを更に含む。
【0027】
本発明は更に別の一側面において、窒素及び有機物を含有する被処理液を、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1脱窒処理液を得る第1脱窒槽と、
第1脱窒処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化菌により亜硝酸性窒素に酸化して亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化槽と、亜硝酸化処理液を、独立栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理する第2脱窒槽と、亜硝酸化処理液を第1脱窒槽へ循環する亜硝酸化処理液循環手段とを備え、第1脱窒処理槽内に循環した亜硝酸化処理液中の亜硝酸性窒素を第1脱窒槽内の従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により窒素ガスに変換して除去する脱窒処理装置である。
【0028】
本発明は更に別の一側面において、窒素及び有機物を含有する被処理液を、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1脱窒処理液を得る第1脱窒槽と、 第1脱窒処理液中に含まれるアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化菌により亜硝酸性窒素に酸化して亜硝酸化処理液を得る亜硝酸化槽と、亜硝酸化処理液を、独立栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理する第2脱窒槽と、第2脱窒処理液の一部を第1脱窒処理へ循環する第2脱窒処理液循環手段とを備える脱窒処理装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、窒素及び有機物を含有する被処理液の生物学的硝化脱窒処理において、処理を安定して進めることができ、処理全体のランニングコストを低減して処理効率を向上させることが可能な脱窒処理装置及び脱窒処理方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る脱窒処理装置は、
図1に示すように、窒素及び有機物を含有する被処理液4を、従属栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理して第1脱窒処理液6を得る第1脱窒槽5と、第1脱窒処理液6中に含まれるアンモニア性窒素(NH
4−N)の一部をアンモニア酸化菌により亜硝酸性窒素(NO
2−N)に酸化して亜硝酸化処理液9を得る亜硝酸化槽7と、亜硝酸化処理液9を、独立栄養性細菌を用いた脱窒反応により嫌気的に脱窒処理する第2脱窒槽10と、亜硝酸化槽7で処理された亜硝酸化処理液9を第1脱窒槽5へ循環する循環手段8とを備える。
【0033】
(濃縮・脱水装置)
第1脱窒槽5の上流側には、原水1を濃縮処理及び脱水処理することにより、原水1中の浮遊物質(SS)成分を除去して被処理液4を得るための濃縮・脱水装置2が配置されてもよい。原水1としては、窒素と有機物を含有する廃水を好ましく利用できる。より具体的には、下水消化汚泥、浸出水、畜産廃液のメタン発酵液、し尿、浄化槽汚泥の混合液等を原水1として用いることができる。
【0034】
濃縮・脱水装置としては種々の装置を用いることができる。例えば原水1として、し尿と浄化槽汚泥混合液を利用する場合は、一般的にはし尿と浄化槽汚泥混合液に対する濃縮・脱水処理は別々に行うことが好ましい。予め、汚泥の濃縮処理を行い、濃縮した汚泥に対して脱水処理を行えば、含水率の低い脱水汚泥が得られる。濃縮方式としては、重力濃縮、機械濃縮の何れも有効な濃縮方式である。高分子凝集剤を添加した濃縮処理を行うと、濃縮汚泥濃度を最大10%程度にすることができる。この濃縮汚泥に対して脱水処理を行えば、含水率70%以下の脱水汚泥が得られて顕著な汚泥減容効果が得られる。この低含水率脱水汚泥のカロリーは高く、焼却処理において補助燃料無での自燃が可能であり、省エネ、低コストとなる。
【0035】
濃縮・脱水装置2で濃縮・脱水が行われた被処理液4は、BOD、SS等の有機物濃度が大きく低減されることから、後段の各反応槽(第1脱窒槽5、亜硝酸化槽7、第2脱窒槽10)の容積をコンパクト化できる。特に、被処理液4のBOD/T−N比が3より大きく低下した場合、本発明で使用するアンモニア脱窒方式の適用メリットが高くなる。
【0036】
(第1脱窒槽)
第1脱窒槽5では、従属栄養性細菌である脱窒菌を用いて、被処理液4中の有機物を電子供与体として利用しながら窒素ガスを発生させる従属栄養脱窒反応を進行させる。従属栄養脱窒反応により脱窒できるNO
X−N量は、第1脱窒槽5に流入されるBOD量に依存する。通常は、NO
X−Nが1gに対しBODが約3g必要となる。第1脱窒槽5に流入するBODは、被処理液4のBODを測定することにより予め測定できる。このため、後述する亜硝酸化槽7から第1脱窒槽5へ循環する亜硝酸化処理液9に含まれるNO
X−N量が、第1脱窒槽5における脱窒処理により処理される被処理液4中のBOD量に対して理論上必要量(例えば約1/3倍)となるように、亜硝酸化処理液9の循環流量を調整すれば、第1脱窒槽5でNO
X−Nを確実に除去できる上、被処理液4中のBODも同時に消費して、被処理液4中のBODを小さくすることができる。
【0037】
その結果、第1脱窒槽5から得られる第1脱窒処理液6は、BOD残留が少なく、窒素成分として、主にアンモニア性窒素(NH
4−N)を含有することとなる。また、第1脱窒槽5で処理された第1脱窒処理液6の全窒素濃度(T−N)は、亜硝酸化処理液9を循環させない場合に比べて低減されていることから、後述する第2脱窒槽10(アンモニア脱窒槽)のT−N負荷も低減でき、第2の脱窒槽10がコンパクトとなる。
【0038】
(亜硝酸化槽)
亜硝酸化槽7では、硝化菌の働きにより、第1脱窒処理液6中に含まれるNH
4−Nの一部をNO
2−Nに変換する部分亜硝酸化処理が行われる。部分亜硝酸化処理では、アンモニア酸化菌を安定して亜硝酸化槽7内に維持することが望ましい。アンモニア酸化菌を安定して維持するための方法としては、亜硝酸化槽7内にアンモニア酸化菌を付着固定できる高分子流動担体(高分子生物担体)を添加すること等が挙げられる。これにより、アンモニア酸化菌を安定して付着できることから、亜硝酸化槽7において安定した亜硝酸化性能が得られる。
【0039】
亜硝酸化槽7に充填する高分子生物担体としては、ポリエチレングリコール(PEG)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリポロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0040】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は曝気槽出口のスクリーンより安定して分離できる3〜10mmが好ましい。担体比重は曝気状態において均一に流動可能となる1.01〜1.05であるものが好ましい。また、担体充填量は均一に混合流動可能となる10〜30V%であることが望ましい。
【0041】
亜硝酸化槽7では、担体添加と浮遊活性汚泥の共存が望ましい。浮遊活性汚泥の共存により、亜硝酸化槽7に流入する第1脱窒処理液6の水質が変動しても、活性汚泥処理による平均化が可能であり、アンモニア酸化菌付着の微生物担体への影響がほとんど無く、安定した亜硝酸化処理が得られる。
【0042】
(循環流量)
亜硝酸化槽7で処理された亜硝酸化処理液9の一部は、亜硝酸化槽7の出口側と第1脱窒槽5の入口側とを繋ぐ配管等の循環手段8(亜硝酸化処理液循環手段)によって循環される。ここで、亜硝酸化処理液9の循環処理は、被処理液4の供給流量(流入流量)に対する亜硝酸化処理液9の循環流量の比(r)を、以下の関係式(1)に基づいて決定することが好ましい。
r=a×2.32/(1.32×3×(1−a/3)) ・・・(1)
(1)式において、rは被処理液4の供給流量に対する前記亜硝酸化処理液の循環流量の比[−]を示し、aは被処理液4の全窒素濃度に対する生物化学的酸素要求量の比(BOD/T−N比)を示す。
【0043】
(1)式より求めた循環流量で亜硝酸化処理液を第1脱窒槽5に循環すれば、第1脱窒槽5に流入する被処理液4のBODを利用した脱窒により、循環された亜硝酸化処理液中のNO
2−N成分を完全にN
2に変換することができる。
【0044】
例えば、被処理液4のBOD/T−N比が1.6の場合、循環流量比rは2.0[−]とすることが好ましい。即ち、被処理液4を供給流量100L/dで供給する場合には、亜硝酸化処理液9の循環流量を200L/dで供給するのが好ましい。
【0045】
(第2脱窒槽)
第2脱窒処理においては、独立栄養細菌であるアンモニア脱窒菌を付着固定した高分子流動担体を添加した反応槽(第2脱窒槽10)に亜硝酸化処理液を供給することにより、アンモニア性窒素を水素供与体、亜硝酸性窒素を水素受容体とする独立栄養性脱窒反応を進行させる。ここでは、増殖の遅いアンモニア脱窒菌を槽内にできるだけ多く保持することが重要である。第2脱窒槽10にアンモニア脱窒菌を付着固定できる高分子流動担体(高分子生物担体)を充填すれば、アンモニア脱窒菌を安定して付着できることから、第2脱窒槽10において安定した脱窒性能が得られる。また、第2脱窒処理で発生する窒素ガスを第2脱窒槽10内で循環させて高分子流動担体を流動させることにより、より安定した脱窒性能が得られる。
【0046】
第2脱窒槽10に充填する高分子担体としては、ポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリポロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0047】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は脱窒槽出口のスクリーンより安定して分離できる3〜10mmが好ましい。担体として表面に微細孔径を多く有するもの、内部中空であるスポンジ、表面に無数の凹凸を有するものがアンモニア脱窒菌の付着固定が速く、短期間で高い脱窒性能が得られる。さらに長期間、脱窒槽内アンモニア脱窒菌を高濃度に維持できることから、安定した脱窒性能が得られる。
【0048】
担体比重は嫌気状態において撹拌より均一流動できる1.01〜1.10であるものが好ましい。担体充填量は脱窒槽内において局部堆積のないように10〜30V%とすることが望ましい。
【0049】
第2脱窒槽10内において担体を流動させる方法としては、攪拌羽を用いた機械攪拌、ガス循環を用いた内部ガス循環方式のいずれも効果的である。機械攪拌の場合は攪拌羽と担体との衝突による担体付着脱窒菌剥離を抑制するために攪拌羽の回転速度ができるだけ緩慢であることが望ましい。一方、ガス攪拌の場合は、担体と攪拌羽との衝突がないことから、担体付着アンモニア脱窒菌の剥離が少なく、高濃度のアンモニア脱窒菌をアンモニア脱窒リアクター内に保持することが可能である。
【0050】
(沈殿池)
第2脱窒槽10で処理された第2脱窒処理液11は、沈殿池12に導入されて固液分離される。沈殿池12で濃縮沈降した活性汚泥は返送汚泥14として第1脱窒槽5に返送される一方、清澄な上澄み液は処理水13として得られる。
【0051】
返送汚泥14の返送流量としては、汚泥沈降性や必要汚泥濃度に応じて、被処理液4流入流量に対する比率として一般的に0.25〜1.0倍とすることができる。
【0052】
このように、
図1に示す脱窒処理装置及びこれを用いた処理方法によれば、被処理液4を、第1脱窒槽5、亜硝酸化槽7、第2脱窒槽10(アンモニア脱窒槽)の順に導入して処理するとともに、亜硝酸化槽7から亜硝酸化処理液9の一部を第1脱窒槽5に循環する。その結果、第1脱窒槽5において、亜硝酸化処理液9中のNO
2−Nが従属脱窒菌の働きで被処理液4中のBODを利用した脱窒反応により窒素ガスに変換され、これにより第1脱窒槽5から流出する第1脱窒処理液6、即ち、亜硝酸化槽7に流入するBODがかなり低減されることから、亜硝酸化槽7では安定した処理が可能となる。
【0053】
更に、第1脱窒槽5に循環された亜硝酸化処理液9中のNO
2−Nの一部が除去されることから、その後に亜硝酸化槽7に流入する第1脱窒処理液6のNH
4−N濃度は、第1脱窒槽5に亜硝酸化処理液9を循環しない場合に比べて低減されるため、亜硝酸化槽7のコンパクト化が可能となる。
【0054】
更に、被処理液4のBOD/T−Nを予め測定すれば、第1脱窒槽5に循環すべき亜硝酸化処理液9の循環流量を決定できる。即ち、被処理液4中のBOD量に応じたNO
2−N量を亜硝酸化槽7から循環することにより、第1脱窒槽5において被処理液4中のBODを完全利用するとともに循環したNO
2−Nの完全除去が行われるため、第1脱窒槽5から排出される第1脱窒処理液6の水質として常にBODがほとんどなく、窒素が低減されたより安定した水質となる。
【0055】
更に本発明によれば、し尿と浄化槽汚泥混合液のようなSSの高い原水に対して、予め、濃縮と脱水処理を行うことにより、SSが大きく低減できるだけでなく、分離液及び脱水ろ液である被処理液の有機物濃度が大きく低下し、被処理液BOD/T−Nが3より大きく低下し、アンモニア脱窒に有利な水質となり、従来の脱窒処理方式より処理装置のコンパクト化やランコスの低下が得られ、さらに処理性能の安定化が図られる。
【0056】
尚、BOD/T−N比が3より低い被処理液に対しては、被処理液のBODを予め好気的に酸化分解することなく、従属脱窒の水素供与体として利用し、従属脱窒後の被処理液に対し、アンモニア脱窒方式を用いて脱窒処理することができる。
【0057】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る脱窒処理装置は、
図2に示すように、第2脱窒槽10で得られた第2脱窒処理液11を第1脱窒槽5へ循環する循環手段15(第2脱窒処理液循環手段)を更に備える点が、
図1に示す脱窒処理装置と異なる。その他の条件は第1の実施の形態とほぼ同様であるため重複した説明を省略する。
【0058】
第2脱窒槽10から第1脱窒槽5に循環する第2脱窒処理液11の循環流量比率は、第1脱窒槽5に流入する被処理液4のNH
4−N濃度に基づいて適宜に決定することが望ましい。亜硝酸化処理液9の第1脱窒槽5への循環により、第2脱窒槽10から流出する第2脱窒処理液11のNH
4−Nはほぼ無くなっている。そのため、第2脱窒処理液11を第1脱窒槽5に循環することにより、第1脱窒槽5に流入する被処理液4中のNH
4−Nを希釈することが可能となる。これにより、第1脱窒槽5の流出水、即ち、亜硝酸化槽7に流入する第1脱窒処理液6のNH
4−Nが低下する。
【0059】
ところが、亜硝酸化槽7に流入するNH
4−Nが200mg/Lより低い場合、亜硝酸化槽7での部分亜硝酸化処理が安定しないことがある。これは部分亜硝酸化処理液のNH
4−N及びNO
2−Nがいずれも低く、それに対応して、亜硝酸酸化菌に毒性効果がある遊離アンモニア(FA)及び遊離亜硝酸(FNA)が低下し、亜硝酸酸化菌増殖の抑制が不安定となるためである。
【0060】
そこで、第2脱窒処理液11の第1脱窒槽5への循環処理が、亜硝酸化処理に供給される第1脱窒処理液6のNH
4−N濃度が200mg/Lよりも高くなるように、第2脱窒処理液11の循環流量を調整することが望ましい。
【0061】
具体的には、被処理液4の供給流量に対する第2脱窒処理液11の循環流量の比は、以下の関係式(2)に基づいて決定することが好ましい。
r<Cn/200−1 ・・・(2)
(2)式において、rは被処理液4の供給流量に対する第2脱窒処理液11の循環流量の比[−]を示し、Cnは被処理液4のアンモニア性窒素濃度[mg/L]を示す。
【0062】
第2の実施の形態に係る脱窒処理装置及び脱窒処理方法によれば、第2脱窒槽10で得られた第2脱窒処理液11を第1脱窒槽5へ更に循環することにより、第1の実施の形態に係る脱窒処理装置及び装置よりもより高い窒素除去率を達成した処理水13が得られる。
【0063】
第2脱窒処理液11のT−N形態としては、ほとんどNO
X−Nである。このため、要求される処理水質に応じて、さらに後段にメタノール添加する脱窒槽を別に設ければ、処理水13の全窒素濃度(T−N)の更なる低減が可能である。
【0064】
即ち、第2脱窒槽10で得られた第2脱窒処理液11を、従属栄養性脱窒反応により脱窒する第3脱窒処理を行い、その第3脱窒処理により得られる第3脱窒処理液を曝気処理後に沈殿池12に導入して固液分離し、固液分離により得られる沈降濃縮汚泥を第1脱窒槽5へ返送させることにより、処理水13のT−Nの更なる低減が可能となる。
【0065】
(変形例)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。
【0066】
例えば、
図2に示す第2の実施形態では、亜硝酸化槽7で処理された亜硝酸化処理液9を第1脱窒槽5へ循環する循環手段8と第2脱窒槽10で得られた第2脱窒処理液11を第1脱窒槽5へ循環する循環手段15とを両方設ける例が記載されている。しかしながら、処理すべき被処理液4の成分組成(BOD/T−N比)によっては、循環手段8を機能させずに、循環手段15のみ利用すること(
図3参照)が可能であることは勿論である。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0068】
<実施例1>
(処理条件)
図1に示す処理フローに従って、し尿と浄化槽汚泥の混合液を原水として脱窒処理を実施した。表1に本実施例1における各処理槽の処理条件を示す。なお、亜硝酸化槽7には平均粒径4.2mm、比重1.02、ポリエチレングリコール主体の高分子ゲル担体(PEG担体)を20V%添加した。第2脱窒槽10には、平均粒径4.0mm、比重1.02、ポリビニルアルコール主体の高分子ゲル担体(PVA担体)を20V%添加した。各反応槽水温はほぼ25〜30℃とした。
【0069】
【表1】
【0070】
し尿と浄化槽汚泥の混合液(原水1)に対し、濃縮脱水後の分離液を被処理液4として第1脱窒槽5に100L/d流入させて脱窒処理を行った。亜硝酸化槽7からの処理液200L/dを循環液として第1脱窒槽5に返送した。流入原水に対する亜硝酸処理液9の循環流量の比(循環率)を2.0とした。これは予め測定した原水BOD/T−N比から設定した。その結果、第1脱窒槽5のNO
X−N負荷が0.4kg/m
3/d、BOD負荷が1.2kg/m
3/dとなった。亜硝酸化槽7のNH
4−N負荷を3.0kg/m
3/dとし、第2脱窒槽10のT−N負荷を2.0kg/m
3/dとし、亜硝酸化槽7のBOD負荷が0.3kg/m
3/dとなった。
【0071】
(水質)
実施例1において、安定処理期間中、被処理液4、第1脱窒槽5、亜硝酸化槽7及び第2脱窒槽10での処理後に得られる処理水13の水質の一例を示す。原水1でSS7800mg/L、BOD5200mg/L、T−N1520mg/Lであるのに対し、濃縮・脱水後の分離脱水ろ液である被処理液4では、SS、BOD及びT−Nがそれぞれ、960mg/L、1790mg/Lと1115mg/Lとなり、SS及びBODが大きく低減できた。この結果、BOD/T−N比が1.6と3.0より低く、従来法の硝化脱窒ではBOD源が不足する。
【0072】
【表2】
【0073】
第1脱窒槽5では、亜硝酸化槽7の処理液を一部循環することで流入被処理液BODを利用した従属脱窒により、出口NO
X−Nが0.1mg/L以下、NH
4−Nが525mg/Lに低下した。また、S−BODも50mg/Lに低下した。
【0074】
亜硝酸化槽7では、第1脱窒槽5で被処理液T−Nの一部が脱窒除去されたことにより、流入NH
4−Nが525mg/Lと被処理液1070mg/Lの約半分となった。BODも低いことから、部分亜硝酸化処理が安定し、亜硝酸化処理液NH
4−NとNO
2−Nがそれぞれ、225mg/Lと285mg/Lとなり、NO
2−N/NH
4−N=1.27と目標値の1.3に近い値となった。
【0075】
また、第2脱窒処理後の処理水13のNH
4−N及びNO
2−Nはそれぞれ、5mg/L、7.1mg/Lといずれも低くなった。処理水13中のT−Nが70mg/Lとなり、被処理液T−Nに対して、約93.7%の除去率が得られた。アンモニア脱窒のみでは、T−N除去率が理論的に最高88%であることから、従属脱窒と組み合わせた本実施例1のT−N除去率が高く得られることが分かる。
【0076】
第2脱窒処理後の処理水T−N形態としてはほとんどNO
X−Nである。このため、要求される処理水質に応じて、さらに後段にメタノール添加する脱窒槽を設ければ、処理水T−Nの更なる低減が可能である。
【0077】
<実施例2>
(処理条件)
図2に示す処理フローに従って、実施例1と同様に、し尿と浄化槽汚泥の混合液に対し、濃縮・脱水後の分離ろ過液である被処理液を用いた脱窒処理を実施した。実施例2における各処理槽の処理条件を表3に示す。亜硝酸化槽7から第1脱窒槽5に循環する流量を300L/dとし、被処理液4の供給流量に対する亜硝酸化処理液9の循環流量の比(循環比率)を3.0とした。また、第2脱窒槽10から第1脱窒槽5に循環する流量を200L/dとし、被処理液に対する循環率を2.0とした。亜硝酸化槽7ではNH
4−N負荷を2.0kg/m
3/dとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0078】
【表3】
【0079】
(水質)
表4に実施例2において、安定処理期間中、原水1、被処理液4、第1脱窒槽5、亜硝酸化槽7及び第2脱窒槽10での処理後に得られる処理水13の水質の一例を示す。
【0080】
【表4】
【0081】
第1脱窒槽5では、亜硝酸化槽7からの処理液及び第2脱窒槽10からの処理液の両方を一部循環することにより、循環される処理液中のNO
X−Nが原水BODを利用した従属脱窒が行われた結果、出口NO
2−N、NO
X−Nとも0.1mg/L以下となり、NH
4−Nが240mg/Lに低下した。
【0082】
亜硝酸化槽7では、第1脱窒槽5の従属脱窒と第2脱窒処理液11の希釈効果で流入NH
4−Nが240mg/Lと原水の約1/5に低下した。亜硝酸化処理液でNH
4−Nが105mg/L、NO
2−Nが129mg/Lと安定した部分亜硝酸化が得られた。
【0083】
第2脱窒槽10処理後の処理水は、NH
4−N及びNO
2−Nがそれぞれ、4.5mg/Lと5.51mg/Lといずれも実施例1に比して低くなった。また、NO
X−Nも31.5mg/L、T−Nも36mg/Lに低下しており、被処理液T−Nに対して、約96.8%の除去率が得られた。これはアンモニア脱窒処理液循環無の実施例1よりも高いT−N除去率を示している。
【0084】
実施例1と同様に実施例2においても、アンモニア脱窒処理水のT−N形態としては、ほとんどNO
X−Nである。このため、要求される処理水質に応じて、さらに後段にメタノール添加する脱窒槽を別に設ければ、処理水T−Nの更なる低減が可能である。
【0085】
<実施例3>
図3に示す処理フローに従って、実施例1と同様に、し尿と浄化槽汚泥の混合液に対し、濃縮・脱水後の分離ろ過液である被処理液を用いた脱窒処理を実施した。実施例3における各処理槽の処理条件を表5に示す。第2脱窒槽10から第1脱窒槽5に循環する水量を300L/dとし、被処理液に対する循環率を3.0とした。亜硝酸化槽7ではNH
4−N負荷を1.0kg/m
3/dとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0086】
【表5】
【0087】
表6に実施例3において、安定処理期間中、原水1、被処理液4、第1脱窒槽5、亜硝酸化槽7及び第2脱窒槽10での処理後に得られる処理水13の水質の一例を示す。
【0088】
【表6】
【0089】
第1脱窒槽5では、第2脱窒処理液11の循環により、流入NH
4−Nが希釈されることにより、第1脱窒槽処理液6のNH
4−Nが285mg/Lに低下した。さらに循環される第2脱窒処理液11中のNO
X−Nが従属脱窒にて除去されて、第1脱窒槽5の出口NO
X−Nが0.1mg/L以下となった。
【0090】
亜硝酸化槽7では、第2脱窒処理液11の希釈効果で流入NH
4−Nが285mg/Lと原水の約1/4に低下した。亜硝酸化処理液9でNH
4−Nが125mg/L、NO
2−Nが162mg/Lと安定した部分亜硝酸化が得られた。
【0091】
第2脱窒槽10処理後の処理水13は、NH
4−N及びNO
2−Nがそれぞれ、4.1mg/Lと5.8mg/Lに低下した。また、NO
X−Nも38mg/L、T−Nも42mg/Lに低下しており、被処理液T−Nに対して、約96.2%の除去率が得られた。
【0092】
<比較例>
図1の第1脱窒槽5を具備せずに亜硝酸化処理液9の循環を行わない従来の脱窒処理を実施した。即ち、
図4に示す処理フローに従って、原水1Aを脱水装置2Aで脱水した後の被処理液4Aを亜硝酸化槽7A、アンモニア脱窒槽10A、沈殿池12へ順に供給して処理水13Aを得た。沈殿池12で得られた濃縮汚泥を返送汚泥14Aとして亜硝酸化槽7Aへ返送した。各反応槽の処理条件を表7に示し、各反応槽で得られる処理液の水質の一例を表8に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
比較例では、亜硝酸化槽7Aの前段に第1脱窒槽5を設けなかったため、表6に示すように、亜硝酸化槽7Aに流入する原水BOD、NH
4−Nが高くなり、亜硝酸化槽7Aで安定したアンモニア酸化菌の保持ができなかった。そのため、亜硝酸化処理後の処理水には、処理水NH
4−Nが750mg/Lと高く残留し、NO
2−Nが230mg/Lしか生成されず、NO
2−N/NH
4−N比が0.31と目標の1.3より大きく外れた。
【0096】
その結果、アンモニア脱窒槽10Aでのアンモニア脱窒処理では、残留NH
4−Nが高いことから、高濃度遊離NH
3(FA)残留によるアンモニア脱窒菌への阻害でアンモニア脱窒処理がほとんど進行せず、処理水NH
4−N及びNO
2−Nがそれぞれ、730mg/Lと215mg/L残留した。このように、従来における
図4に示すフローでは、前段に脱窒処理、及び亜硝酸処理液の循環を行っていなかったため、亜硝酸化処理での安定化が困難であった。