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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-93344(P2015-93344A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】産業用ロボットの関節構造
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20150421BHJP
【FI】
   B25J19/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-233357(P2013-233357)
(22)【出願日】2013年11月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】春名 登志雄
(72)【発明者】
【氏名】中桐 浩
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS13
3C707CY03
3C707CY12
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】中空部にパワーケーブルと制御信号ケーブルを近接させて挿通すると、パワーケーブルからの電磁波が制御信号ケーブルに影響を与えるためにロボットの制御に支障をきたすことがある。
【解決手段】ロボットの関節構造は第2アーム50と第1アーム40間に設けられるとともに第3回転軸心J3と同軸に配置された中空部47aを有する。電磁波シールド性を有する内筒体58は中空部47aに対して遊びを以て挿通されている。パワーケーブルPC3は内筒体58内に挿通されている。制御信号ケーブルC2は、内筒体58の外周面と中空部47a内周面間に挿通されている。制御信号ケーブルに対する電磁波の影響を抑制することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側アームと、
前記固定側アームに対して回転軸心の周りで回転自在に設けられた可動側アームと、
前記可動側アームと前記固定側アーム間に設けられるとともに前記回転軸心と同軸に配置された中空部と、
前記中空部に対して遊びを以て挿通されるとともに電磁波シールド性を有する筒体と、
前記筒体内に挿通されたパワーケーブルと、
前記筒体の外周面と前記中空部の内周面間に挿通された制御信号ケーブルが設けられている産業用ロボットの関節構造。
【請求項2】
前記中空部の軸線上において、前記パワーケーブルの一部が直線状に配置されている請求項1に記載の産業用ロボットの関節構造。
【請求項3】
前記可動側アームが前記固定側アームに対して中空減速機を介して回転自在に連結されており、
前記中空部が、前記中空減速機が有する中空である請求項1または請求項2に記載の産業用ロボットの関節構造。
【請求項4】
前記筒体は、金属製である請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の産業用ロボットの関節構造。
【請求項5】
前記筒体は合成樹脂からなり、内周面に電磁波シールド材からなる電磁波シールド層が形成されている請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の産業用ロボットの関節構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業用ロボットの関節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットにおいて、アーム内の中空減速機の中空穴に溶接ケーブルを配線する例が、特許文献1で公知である。この従来例を、図8を参照して説明する。図8に示すように、産業用ロボットである溶接ロボットの固定側アーム200と可動側アーム202間に設けられた中空減速機204に溶接ケーブル208が配線されている。可動側アーム202は、可動側アーム202に設けられた図示しない駆動モータの出力が前記中空減速機204により減速されて中空減速機204の軸心Oの周りで回転する。
【0003】
前記中空減速機204の中空部206には、固定側アーム200内に配置された溶接ケーブル208が挿通されている。溶接ケーブル208の両端は、固定側アーム200の壁部に設けられた接続端子203及び可動側アーム202の各壁部に設けられた端子205に接続されている。前記溶接ケーブル208において、前記中空部206に配置される部位は、可動側アーム202に固定されたケーブルホルダ210により可動側アーム202の軸心O上に位置するように規制されている。
【0004】
また、前記溶接ケーブル208とは別に制御信号ケーブル211が、前記中空部206に挿通されている。制御信号ケーブル211は、その下端部が固定側アーム200に設けられた信号端子ボックス212に接続され、上端部は可動側アーム202に設けられた信号ボックス214に接続されている。また、制御信号ケーブル211において、中空部206に挿通された部位は、前記ケーブルホルダ210により、前記溶接ケーブル208の周囲に配置されるように規制されている。前記制御信号ケーブル211は、例えば可動側アーム202に連結される他のアーム等の駆動モータ用の制御信号の送信等を行うためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−161571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、溶接時に溶接ケーブル208に大電流が流れると、溶接ケーブル208から電磁波が漏れ出る。すると、中空部206において、溶接ケーブル208の周囲に配置された制御信号ケーブル211に前記電磁波が乗ることにより、制御信号ケーブル211に流れる制御信号に影響を与え、ロボットの動作に支障をきたす虞がある。
【0007】
本発明の目的は、制御信号ケーブルに対する電磁波の影響を抑制することができる産業用ロボットの関節構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明の産業用ロボットの関節構造は、固定側アームと、前記固定側アームに対して回転軸心の周りで回転自在に設けられた可動側アームと、前記可動側アームと前記固定側アーム間に設けられるとともに前記回転軸心と同軸に配置された中空部と、前記中空部に対して遊びを以て挿通されるとともに電磁波シールド性を有する筒体と、前記筒体内に挿通されたパワーケーブルと、前記筒体の外周面と前記中空部の内周面間に挿通された制御信号ケーブルが設けられているものである。
【0009】
また、前記中空部の軸線上において、前記パワーケーブルが直線状に配置されていることが好ましい。
また、前記可動側アームが前記固定側アームに対して中空減速機を介して回転自在に連結されており、前記中空部が、前記中空減速機が有する中空であってもよい。
【0010】
また、前記筒体は、金属製としてもよい。
また、前記筒体は合成樹脂からなり、内周面に電磁波シールド材からなる電磁波シールド層が形成されているものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御信号ケーブルに対する電磁波の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の多関節形ロボットの側面図。
図2】一実施形態の関節構造の断面図。
図3図2とは反対側からみた関節構造の断面図。
図4】要部拡大断面図。
図5】可動機構の正面図。
図6】可動機構の斜視図。
図7】他の実施形態の要部の正面図。
図8】従来例の関節構造の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態の構成)
以下、本発明を、7自由度を有するアーク溶接ロボットの関節構造に具体化した一実施形態を図1図6を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、マニピュレータ10の旋回台30は、基台20に対して第1回転軸心J1の周りに旋回可能に設けられている。前記旋回台30には前記第1回転軸心J1と直交する面内の第2回転軸心J2の周りに第1アーム40が回動可能に設けられている。また、前記第1アーム40の先端部には、前記第2回転軸心J2と直交する第3回転軸心J3の周りに第2アーム50が旋回可能に設けられている。本実施形態では第1アーム40を固定側アームの一例としている。また、第2アーム50を可動側アームの一例としている。
【0015】
さらに、第2アーム50の先端部に、第3回転軸心J3と直交する面内の第4回転軸心J4の周りに第3アーム60が回動可能に設けられている。また、前記第3アーム60の先端部には手首組立体70が取り付けられている。
【0016】
前記手首組立体70は、第3アーム60の先端部に対して、第4回転軸心J4と直交する第5回転軸心J5の周りで回動可能に設けられた胴体72と、胴体72の先端部に対して第5回転軸心J5と直交する第6回転軸心J6の周りで回転可能に設けられた揺動体74を備えている。また、手首組立体70は、揺動体74の先端に対して第6回転軸心J6と直交する第7回転軸心J7の周りで回転可能に設けられた回転体76を備えている。回転体76には作業ツールとしての溶接トーチ78が取り付けられている。マニピュレータ10の第1回転軸心J1乃至第7回転軸心J7には、減速機を介したモータが設けられていて、図示しないロボット制御装置からの指令(制御信号)を入力して駆動される。
【0017】
次に第1アーム40と第2アーム50の関節構造を図2図6を参照して説明する。
図2図3に示すように第1アーム40先端部には、収納部41が形成されている。収納部41は、底壁45、第1アーム40の底壁45から先端へ延びる周壁42、及び先端壁43により図2において横側方、上方及び一部の下方域が囲まれることにより形成されている。
【0018】
図3図4に示すように先端壁43には、第3回転軸心J3と同軸の断面円形の貫通孔43aが形成されている。また、図3図4に示すように先端壁43の上面には板状のアダプタ34が固定されている。図4に示すようにアダプタ34の中央には下方に突出した段部35が、先端壁43に設けられた貫通孔43aに嵌合されている。段部35には、円形の透孔35aが形成されている。
【0019】
図2図3及び図4に示すようにアダプタ34上面には、減速機47が配置されている。減速機47は、図示はしないが最内周側に高速軸、中間部に前記高速軸に噛合した低速軸、及び最外周側に前記低速軸に噛合した枠からなる。
【0020】
図4に示すように高速軸の上端からは、中空部47aと同軸(すなわち、第3回転軸心J3と同軸)の円筒部49が突出されている。図2に示すように円筒部49の外周には歯車49aが固定されている。
【0021】
図3に示すように、歯車49aは、第2アーム50に設けられた図示しない駆動モータの出力軸32に設けられた歯車33と噛み合いしている。前記低速軸は、アダプタ34に固定されている。また、前記枠は第2アーム50の下面に固定された減速機ケース36に固定されている。そして、前記駆動モータの駆動により、減速機47の減速比に従って第2アーム50が第3回転軸心J3の周りで回転(旋回)する。
【0022】
図4に示すように減速機47の円筒部49及び高速軸には、第3回転軸心J3と同軸であって、最小径部位が段部35の透孔35aと略同径の中空部47aが形成されている。減速機47は中空減速機の一例である。
【0023】
図2に示すように、第2アーム50の基端部には、収納部51が設けられている。収納部51は、底壁52、底壁52から上方へ立設された周壁53、及び上壁54により囲まれて形成されている。図2に示すように前記収納部51において、第2アーム50の上壁54、周壁53には、開口51aが設けられている。開口51aは、周縁部に対してビス等の取付手段により取付けされたカバー51bにより覆われている。なお、図3では、カバー51bの図示は省略されている。
【0024】
図4に示すように収納部51の底壁52には、透孔52aが形成されていて、前記透孔52aには減速機ケース36の上面から上方へ突出した段部55が嵌合されている。図4に示すように減速機ケース36の段部55には、アダプタ34の段部35の透孔35aと同径、かつ同軸(すなわち、第3回転軸心J3と同軸)に配置された円形をなす透孔55aが形成されている。
【0025】
図4に示すように、透孔55aには、円筒状の外筒体56が第3回転軸心J3と同軸となるように貫通されている。外筒体56は、その外径が透孔55aの内径と略同一に設定されるとともに、その下端がアダプタ34の段部35の透孔35a内に位置するように延出されている。
【0026】
また、外筒体56の材質は限定するものではなく、例えば合成樹脂、或いは金属製のいずれであってもよい。外筒体56の上端には外向きフランジ56aが形成されている。外筒体56の外向きフランジ56aは、ボルト57により段部55上面に取付け固定されている。
【0027】
図4に示すように、外筒体56内には円筒状の内筒体58が第3回転軸心J3と同軸となるように挿通されている。すなわち、内筒体58は、中空部47aに対して遊びをもって挿通されている。内筒体58の上端には外向きフランジ58aが形成されている。内筒体58の外向きフランジ58aは、前記ボルト57によりフランジ56aの上面に対して重なり合って段部55上面に取付け固定されている。図4に示すように、外向きフランジ58aには、複数の透孔58bが所定の間隔をおいて形成されている。透孔58bには、制御信号ケーブルC2が挿通されている。
【0028】
内筒体58の外径は、外筒体56の内径よりも小径に形成されている。上記のようにして外筒体56に対して内筒体58が挿通されていることにより、両筒体は2重円筒状に配置されており、断面視した場合、リング状の間隙を有して、制御信号ケーブルC2が移動自在に挿通されている。また、内筒体58の下端は、段部35の透孔35a内に位置するように延出されている。
【0029】
本実施形態では、内筒体58は、金属製の板材が筒状に形成されて、電磁波シールド性を有する。なお、内筒体58をメッシュ金属で形成してもよく、この場合は、電磁波シールド性を持たせるためにメッシュの穴をパワーケーブルPC3から出る電磁波の波長よりも極めて小さくすればよい。内筒体58は、電磁波シールド性を有する筒体の一例である。
【0030】
図4に示すように、前記外向きフランジ58a上面には、リング状のスペーサ59が、前記ボルト57により、外筒体56、内筒体58の両フランジ56a,58aとともに、段部55に対して共締めされて固定されている。
【0031】
図4に示すようにスペーサ59の内周面には周回する係止段部59aが形成され、係止段部59aには、ケーブルホルダ61が外周面に突出したフランジ62にて係止されている。前記フランジ62には、リング状のホルダ押さえ63が係止されている。ホルダ押さえ63は、スペーサ59に対して螺着されたボルト64により締め付け固定されている。前記ケーブルホルダ61は、エラストマー、合成ゴム、天然ゴム等の弾性部材から形成されている。図4に示すようにケーブルホルダ61は、第3回転軸心J3と同軸に配置されたパワーケーブル貫通用の大径の貫通孔65と、貫通孔65の周囲において相互に離間配置された複数個のホルダ孔66を有する。各ホルダ孔66は、前記透孔58bと相対するように配置されている。
【0032】
また、図4に示すように、アダプタ34の段部35下面には、リング状のスペーサ69が、ボルト67により締め付け固定されている。スペーサ69の内周面には周回する係止段部69aが形成され、係止段部69aには、ケーブルホルダ71が外周面に突出したフランジ71aにて係止されている。ケーブルホルダ71は、その下面周縁に当接したリング状のホルダ押さえ73が、スペーサ69に対して螺着されたボルト73aにより締め付けられることにより、スペーサ69に対して固定されている。
【0033】
前記ケーブルホルダ71は、エラストマー、合成ゴム、天然ゴム等の弾性部材から形成されている。図4に示すようにケーブルホルダ71は、第3回転軸心J3と同軸に配置されたパワーケーブル貫通用の大径の貫通孔75と、貫通孔75の周囲において相互に離間配置された複数個のホルダ孔77を有する。ホルダ孔77の数は、ケーブルホルダ61のホルダ孔66と同数としていることが好ましい。
【0034】
次に、アーム内のケーブル類の配置について説明する。
図2に示すように第1アーム40の周壁42外面、及び第2アーム50の周壁53外面には、外配されたパワーケーブルPC1を内配されたパワーケーブルPC2に中継するための電力端子部90と、外配されたパワーケーブルPC5を内配されたパワーケーブルPC4に中継するための電力端子部91とがそれぞれ設けられている。図2に示すようにパワーケーブルPC2は、その一端が前記電力端子部90に接続されるとともに他端が底壁45に設けられた第1中継端子部80に接続されている。第1中継端子部80は、端部連結部の一例である。なお、パワーケーブルPC1及びPC2は、電力端子部90で中継接続する代わりに1つのケーブルとして配置してもよい。同様に、パワーケーブルPC4及びPC5もまた、電力端子部91で中継接続する代わりに一つのケーブルとして配置してもよい。
【0035】
図5図6に示すように第1中継端子部80は、底壁45に対して一対のボルト81により取付けられた可動ブロック82に設けられている。前記可動ブロック82は絶縁材より形成され、中央の突部82aと突部82aよりも低い一対の肩部82bにより凸状に形成され、幅方向の各端が底壁45に取り付けられたボルト81に対して上下移動自在に貫通されている。
【0036】
すなわち、可動ブロック82は、肩部82bがボルト81のヘッドに規制される位置を最上位置とし、可動ブロック82が底壁45上に接した位置を最下位置とした両位置間を中空部47aの軸線(第3回転軸心J3)に対して平行に往復移動自在に設けられている。図5に示すようにこの両位置間は、ストロークS分の長さを有する。なお、ストロークSの長さは、後述するパワーケーブルPC3が第3回転軸心J3の周りで回転したときに、パワーケーブルPC3によって可動ブロック82が上動を許容する長さ以上あればよい。前記ボルト81及び可動ブロック82により可動機構が構成されている。
【0037】
図5に示すように、突部82aには、上下方向及び可動ブロック82の長手方向にそれぞれ直交する貫通孔82cが形成されている。貫通孔82cには、金属等の導電性を有する柱状の取付部材83が固定されている。図5に示すように取付部材83の両端は、貫通孔82cから外部に突出している。取付部材83の両端面には、それぞれ一対の圧着端子84,85が取付部材83を貫通したボルト86及び前記ボルト86に螺合したナット87により取付け固定されている。
【0038】
圧着端子84,85は、それぞれスリーブ状の胴部84a,85aと胴部84a,85aに一体に設けられた板状の舌部84b,85bを有し、舌部84b,85bが前記ボルト86に取り付けられている。
【0039】
図5図6に示すように圧着端子84の胴部84aには、前記パワーケーブルPC2の端部が接続されている。なお、図5では、説明の便宜上、圧着端子84の胴部は真上に向かって配置したところを図示しているが、使用上は、図2及び図6に示すように電力端子部90に向かうように横向き、或いは斜め上方横向きに使用することが好ましい。
【0040】
一方、圧着端子85は、胴部85aが上方に向かうように舌部85bが前記ボルト86に取付け固定されている。圧着端子85の胴部85aにはパワーケーブルPC3の下端が接続されている。
【0041】
図2図3に示すように前記パワーケーブルPC3は、内筒体58に挿通されている。パワーケーブルPC3の上端は、第2アーム50の収納部51において、上壁54に固定された第2中継端子部96に接続されている。図2図3に示すように第2中継端子部96は、上壁54に取付け固定された絶縁ブロック97を有する。
【0042】
絶縁ブロック97には、図示しない貫通孔が形成され、前記貫通孔には図2図3に示すように金属等の導電性を有する柱状の取付部材98が固定されている。絶縁ブロック97に固定された取付部材98は、その両端が前記貫通孔から外部に突出している。取付部材98の両端面には、図2図3に示すようにそれぞれ一対の圧着端子99,100が取付部材98を貫通したボルト101及び前記ボルト101に螺合したナット102により取付け固定されている。
【0043】
圧着端子99,100は、それぞれスリーブ状の胴部99a,100aと胴部99a,100aに一体に設けられた板状の舌部99b,100bを有し、舌部99b,100bが前記ボルト101に取り付けられている。
【0044】
図2に示すように圧着端子99の胴部99aには、前記パワーケーブルPC3の端部が接続されている。パワーケーブルPC3は、上記のように第1中継端子部80と第2中継端子部96とにより各端部が接続されることにより、図2図3に示すように、内筒体58内を直線状になって挿通されている。また、パワーケーブルPC3は、第1中継端子部80と第2中継端子部96とにより各端部が接続されることにより、その軸心が第3回転軸心J3に一致するように配置されている。また、パワーケーブルPC3は、より線で構成されて可撓性を有するとともに、より線の周囲は可撓性の絶縁材で被覆されている。また、パワーケーブルPC3は、より線で構成されているため、第3回転軸心J3の周りのねじりが許容される。
【0045】
すなわち、第1アーム40に対して第2アーム50が、第3回転軸心J3の周りでいずれか一方の方向へ旋回すると、第3回転軸心J3と同軸に配置されたパワーケーブルPC3も同軸の周りでねじられる。このねじりにより、パワーケーブルPC3の端部が引っ張られて、この引っ張りにより、可動機構の第1中継端子部80の可動ブロック82が上動する。また、上記のようにパワーケーブルPC3が一旦ねじられた状態で、前記第1アーム40に対して第2アーム50が、第3回転軸心J3の周りで逆方向に旋回した場合、第3回転軸心J3と同軸に配置されたパワーケーブルPC3も同軸の周りで前記とは反対方向にねじられる。この反対方向のねじりにより、パワーケーブルPC3の端部へ対する引っ張りが解除されて、可動機構の第1中継端子部80の可動ブロック82が図2の最下位置まで下動する。
【0046】
また、図2図3に示すように圧着端子100は、胴部100aが電力端子部91側に向くように舌部100bが前記ボルト101に取付け固定されている。図2図3に示すように圧着端子100の胴部100aには、一端が電力端子部91に接続されたパワーケーブルPC4の他端が接続されている。
【0047】
また、図2に示すように第1アーム40の周壁42外面、及び第2アーム50における収納部51の周壁53内面には、信号端子ボックス92、93がそれぞれ設けられている。前記信号端子ボックス92、93に対して、収納部41、中空部47a、及び収納部51内に配置した複数の制御信号ケーブルC2が、互いに分離してかつ各端が接続されている。なお、図3では説明の便宜上、制御信号ケーブルC2の図示は省略されている。
【0048】
図2及び図4に示すように、前記各制御信号ケーブルC2は、ケーブルホルダ71のホルダ孔77、外筒体56と内筒体58間の間隙、透孔58b及びケーブルホルダ61のホルダ孔66に挿通されている。
【0049】
前記制御信号ケーブルC2は、ホルダ孔66及びホルダ孔77に挿通されることにより、図4に示すように外筒体56、内筒体58間の間隙に挿通する部位において収納部51側及び収納部41側が保持されて、すなわち、位置の変動が抑制されている。そして、図2に示すように制御信号ケーブルC2は、収納部41内に位置する部位、外筒体56、内筒体58間の間隙に挿通する部位及び収納部51内に位置する部位により、第2アーム50が旋回原点位置に位置している際にコ字状に配置される。
【0050】
図1に示すように、旋回台30及び第1アーム40にはパワーケーブルPC1が外配されている。パワーケーブルPC1の各端は、図1に示すように、旋回台30の外面に設けられた電力端子部94及び第1アーム40の前記電力端子部90に対してそれぞれ取り外し可能に接続されている。
【0051】
前記電力端子部94は、電源装置に接続されたパワーケーブル(ともに図示しない)が接続されている。
また、図1に示すように、第2アーム50及び第3アーム60にはパワーケーブルPC5が外配されている。パワーケーブルPC5は、一端が前記電力端子部91に接続されるとともに、他端が図示しない接続用のパワーケーブルに接続されて前記溶接トーチ78に電力を供給する。なお、前述したパワーケーブルPC1、PC2、PC4、PC5は、より線で構成され、周囲は絶縁材で被覆されている。また、図1に示すように、旋回台30及び第1アーム40には、各種の制御信号を送信するための複数本の制御信号ケーブルが束ねられた状態で、可撓性、或いは弾性を有するチューブT1内に挿通されて外配されている。
【0052】
図1に示すように旋回台30の周壁内には図示しない中継用の信号端子ボックスが設けられているとともに図示しないロボット制御装置からの制御信号送出用の制御信号ケーブルが接続されている。そして、図示しない同信号端子ボックスに対して前記周壁の図示しない開口を介して、チューブT1内の複数の制御信号ケーブルC1(図2参照)の一端が接続されている。また、前記チューブT1は、図2に示すように、第1アーム40の収納部41において、下部壁44が省略された開口46に導入されている。そして、前記信号端子ボックス92に対して、チューブT1内の各制御信号ケーブルC1の一端が取り外し可能に接続されている。
【0053】
図1に示すように、第2アーム50及び第3アーム60には、各種の制御信号を送信するための複数本の制御信号ケーブルC3(図2参照)が束ねられた状態で、可撓性、或いは弾性を有するチューブT2内に挿通されて外配されている。また、前記チューブT2は、図2に示すように、第2アーム50の収納部51において、上壁54が省略された開口54aに導入されている。そして、前記信号端子ボックス93に対して、チューブT2内の各制御信号ケーブルC2の一端が取り外し可能に接続されている。また、前記チューブT2は、図1に示すように、第3アーム60の周壁に設けられた図示しない開口に導入され、該開口内に設けられた図示しない信号端子ボックスに対して、チューブT2内の各制御信号ケーブルC2の他端が取り外し可能に接続されている。前記各制御信号ケーブルにより、マニピュレータ10の各関節部に設けられた駆動モータ等の制御対象に対して図示しないロボット制御装置から制御信号が送られる。
【0054】
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成された溶接ロボットの関節構造の作用を説明する。
図4に示すように、溶接時にパワーケーブルPC3(溶接ケーブル)に溶接電流が流れると、パワーケーブルPC3から電磁波が漏れ出る。しかし、この漏れ出た電磁波は、電磁波シールド性を有する内筒体58によりシールドされるため、内筒体58の外周側に配置した制御信号ケーブルC2に電磁波が乗ることはない。この結果、制御信号ケーブルC2に流れる制御信号に影響を与え、ロボットの動作に支障をきたす虞はなくなる。
【0055】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1)本実施形態のロボットの関節構造は、第2アーム50(可動側アーム)と第1アーム40(固定側アーム)間に設けられるとともに第3回転軸心J3(回転軸心)と同軸に配置された中空部47aを有する。また、前記関節構造は、中空部47aに対して遊びを以て挿通されるとともに電磁波シールド性を有する内筒体58(筒体)を有する。そして、パワーケーブルPC3が、内筒体58(筒体)内に挿通されている。また、制御信号ケーブルC2が、内筒体58(筒体)の外周面と中空部47a内周面間に挿通されている。この結果、本実施形態によれば、パワーケーブルPC3が発した電磁波は内筒体58によりシールドされるため、制御信号ケーブルに対する電磁波の影響を抑制することができる。すなわち、中空部に配置した制御信号ケーブルに対して同じく中空部47aに配置したパワーケーブルPC3からの電磁波が影響することがないようにしたことによって、ロボットの動作の支障を軽減することができ、安全性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、中空部47aにおいて挿通されたパワーケーブルPC3と制御信号ケーブルC2は、筒体の一例である内筒体58にて分離されて配置される。このため、可動側アームである第2アーム50が旋回しても、パワーケーブルPC3と制御信号ケーブルC2とが互いに絡み合うことがない。
【0057】
さらには、第2アーム50(可動側アーム)が旋回した際、中空部47a内において、制御信号ケーブルC2は内筒体58との間で配置されていることにより、その経路が規制され、常に筒体である内筒体58の外周に沿って動作することができる。このため、想定外の制御信号ケーブルC2の挙動による負荷の発生を抑制できる。この結果、制御信号ケーブルC2の断線による不具合の可能性が減少するため、寿命、安全性が向上する。
【0058】
(2)本実施形態では、中空部47aの第3回転軸心J3(軸線)上において、パワーケーブルPC3の一部が直線状に配置されている。この結果、可動側アームが旋回したときに、筒体である内筒体58とパワーケーブルPC3との接触が防止できる。
【0059】
(3)本実施形態では、第2アーム50(可動側アーム)が第1アーム40(固定側アーム)に対して減速機47(中空減速機)を介して回転自在に連結されている。また、中空部47aを減速機47が有する中空としている。この結果、減速機47の中空部47aを利用して、電磁波シールド性を有する内筒体58(筒体)を配置することができる。
【0060】
(4)本実施形態では、内筒体58(筒体)は、金属製としている。この結果、内筒体58の電磁波シールド性を容易に得ることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図7を参照して説明する。なお、第1実施形態の構成と同一または相当する構成については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態では、内筒体58の構成が第1実施形態と異なっている。
【0061】
図7に示すように、本実施形態では、内筒体58を合成樹脂から形成するとともに、内周面全体には電磁波シールド材からなる電磁波シールド層58cが形成されているところが前記実施形態と異なっている。電磁波シールド層58cは金属を蒸着させることにより形成されている。なお、電磁波シールド層58cの形成は、蒸着方法に限定されるものではなく、他の方法により形成してもよい。
【0062】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1)本実施形態では、合成樹脂からなる内筒体58(筒体)の内周面に電磁波シールド層58cが形成されている。このことにより、中空部47aに配置した制御信号ケーブルに同じく中空部に配置したパワーケーブルからの電磁波に起因するロボットの動作の支障を軽減することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第2アーム50(可動側アーム)が旋回した際、内筒体58(筒体)の外周面側に配置された制御信号ケーブルC2が、内筒体58(筒体)の外周面に接触することがある。この場合、第1実施形態と異なり、内筒体58(筒体)は金属製ではなく、金属よりも柔らかい合成樹脂製であるため、内筒体58(筒体)に接触したことによる制御信号ケーブルC2の摩耗を低減することができる。
【0064】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、7自由度を有する多関節形ロボットに具体化したが、7自由度に限定されるものではなく、6自由度以下、或いは8自由度以上のロボットに具体化してもよい。
【0065】
・前記実施形態ではアーク溶接ロボットに具体化したが、アーク溶接ロボット以外に、スポット溶接ロボットト等の他の産業用ロボットに具体化してもよい。
・前記実施形態では、減速機47の中空部47aにパワーケーブルPC3を挿通したが、中空部は減速機47の中空部47aに限定されるものではない。例えば、固定側アームに対して可動側アームを回転自在に支持して、その回転中心軸に減速機を設けずに、中空部を有するタイプの産業用ロボットの関節構造に採用してもよい。
【0066】
・前記実施形態では、外筒体56を設けたが、省略してもよい。
・前記実施形態では、内筒体58の上端を第2アーム50側で支持するようにしたが、内筒体58の下端を第1アーム40側で支持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…マニピュレータ、40…第1アーム(固定側アーム)、
47…減速機、47a…中空部、50…第2アーム(可動側アーム)、
58…内筒体(筒体)、J3…第3回転軸心(回転軸心)、
C2…制御信号ケーブル、PC3…パワーケーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8