特開2015-9337(P2015-9337A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-9337自動締付機およびその締付け高さ位置設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-9337(P2015-9337A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】自動締付機およびその締付け高さ位置設定方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20141216BHJP
【FI】
   B23P19/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-137749(P2013-137749)
(22)【出願日】2013年7月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成25年5月8日、日東精工株式会社のホームページ http://www.nittoseiko.co.jp/j/news/main.html 及び http://www.nittoseiko.co.jp/j/news/news_130508.html にて発表 (2)金属産業新聞社発行の「金属産業新聞(発行日:平成25年5月20日)の第8面」にて発表 (3)株式会社ファスニングジャーナル発行の「ファスニングジャーナル(発行日:平成25年5月27日)の第8面」にて発表 (4)日刊工業新聞社発行の「日刊工業新聞(発行日:平成25年5月27日)の第21面」にて発表 (5)有限会社ねじの世界社発行の「ねじの世界第57巻6月号(発行日:平成25年5月27日)の第23,24ページ」にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】坂根 圭
(72)【発明者】
【氏名】戸張 正崇
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動ビット、ガイド部材の高さ位置を簡単に設定できる自動締付機およびその締付け高さ位置設定方法を提供する。
【解決手段】スクリュウガイド12に対してビット往復手段により移動する駆動ビット8およびこれらを駆動する制御装置を備え、制御装置はスクリュウガイド12の先端と駆動ビット8の先端とが同一平面上にある時のビット往復手段のZ2軸可動ナット9dの位置を基準位置Z2hとして記憶し、駆動ビット8がワークWに締付けられたねじ15に嵌合した状態でスクリュウガイド12をワークWに当接させる時にビット往復手段のZ2軸可動ナット9dおよび一体往復手段のZ1軸可動ナット2fの位置を締付け高さ位置Z1a,Z2aとして記憶し、これらの締付け高さ位置Z1a,Z2aと基準位置Z2hとに基づいてスクリュウガイド12の高さ位置を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の回転を受けて回転する駆動ビットと、駆動ビットを内包するガイド部材と、ガイド部材と駆動ビットとを相対移動させる可動部を備えた相対往復手段と、駆動ビット、ガイド部材のいずれかと相対往復手段とを一体に往復させる可動部を備えた一体往復手段と、これらを駆動する制御装置とを備え、前記制御装置はガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時に相対往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶する基準位置設定手段を有するとともに、駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時に一体往復手段の可動部、または相対往復手段および一体往復手段の両可動部の位置を締付け高さ位置として記憶し、この位置と基準位置とからガイド部材の高さ位置を設定するガイド高さ位置設定手段を有することを特徴とする自動締付機。
【請求項2】
相対往復手段はガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段であり、一体往復手段はビット往復手段とガイド部材とを一体に移動させる可動部を備え、
ガイド高さ位置設定手段は駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時の締付け高さ位置を一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置として記憶する構成をなすことを特徴とする請求項1に記載の自動締付機。
【請求項3】
回転駆動源の回転を受けて回転する駆動ビットと、駆動ビットを内包するガイド部材と、ガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段と、ガイド部材およびビット往復手段を一体に往復させる可動部を備えた一体往復手段と、これらを駆動する制御装置とを備え、
前記制御装置はガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時にビット往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶する基準位置設定手段を有するとともに、駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時の締付け高さ位置を一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置として記憶し、これら位置を記憶後にガイド部材をワークに対して移動させる一体往復手段の可動部の送り量をビット往復手段の可動部の位置に逆方向の送り量として加え、ガイド部材の高さ位置を設定するガイド高さ位置設定手段を有することを特徴とする自動締付機。
【請求項4】
回転駆動源の回転を受けて回転する駆動ビットと、駆動ビットを内包するガイド部材と、ガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段と、ガイド部材およびビット往復手段を一体に往復させる一体往復手段と、これらを駆動する制御装置とを備え、
前記制御装置はガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時にビット往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶する基準位置設定手段を有するとともに、駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時の締付け高さ位置を一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置として記憶するとともに駆動ビットの嵌合状態を保ってガイド部材がワークに当接する時にビット往復手段の可動部の位置と基準位置との差分を締付け完了オフセット位置として記憶する締付け完了オフセット位置設定手段を有し、さらに駆動ビットを基準位置に位置させる一体往復手段の可動部の送り量をビット往復手段の可動部の位置に逆方向の送り量となるように加えて、ガイド部材の高さ位置を設定するガイド高さ位置設定手段を有することを特徴とする自動締付機。
【請求項5】
回転駆動源の回転を受けて回転する駆動ビットと、駆動ビットを内包するガイド部材と、ガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段と、ガイド部材およびビット往復手段を一体に往復させる可動部を備えた一体往復手段とを備えた自動締付機にあって、
ガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時にビット往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶し、
駆動ビットをガイド部材から突き出る位置に配置して駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する状態でガイド部材をワークに当接させる時にビット往復手段の可動部の位置と基準位置との差分を締付け完了オフセット位置として記憶し、
ワークの締付け個所の締付けを行う際に、基準位置と締結具の種類に応じた締付け完了オフセット位置とを呼出して、これらとワークの締付け個所の高さ位置として記憶された一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置とからガイド部材がワークに当接しない位置を算出して、ビット往復手段の可動部の位置にガイド部材をワークに対して移動させる一体往復手段の可動部の送り量を逆方向の送り量となるように加えて、ガイド部材の高さ位置を設定することを特徴とする自動締付機の締付け高さ位置設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ、ボルト等の締結具をエア吸着機構に連接されたガイド部材により駆動ビットの先端に案内して所定締付け個所で締付けを行う自動締付機であって、ワークの種類、締結具の種類に拘わらず締結具の締付け高さ位置はもとよりガイド部材の高さ位置も簡単に設定できる自動締付機およびその締付け高さ位置設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転駆動源106の回転を受けて回転する駆動ビット108とエア吸引機構130を備えたガイド部材112とを持つ自動締付機101にあっては、図15に示すようにばね131に付勢されて後退可能なガイド部材112が駆動ビット108を内包するように配置され、これらガイド部材112および駆動ビット108が一体往復手段102により一体に移動するように構成されたものが普及している(特許文献1参照)。この種の自動締付機101にあっては、締結具115がガイド部材112に案内されて駆動ビット108の先端に吸着された後、一体往復手段102の作動にともない、駆動ビット108とガイド部材112とが一体に前進する。その後、ガイド部材112がワーク(図示せず)の表面に当接してその位置で停止することにより、駆動ビット108がガイド部材112に対して前進することとなる。これにより、駆動ビット108の先端に吸着された締結具115がガイド部材112から押し出されて、ワーク上の所定締付け個所で締付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−223132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この自動締付機101では、締付け動作毎にガイド部材112がワークの表面に当接することから、ワークの表面を損傷する恐れがあり、これを避けるためガイド部材112の高さ位置を管理することが最適な構成と考えられている。しかしながら、最近この種の自動締付機にあってはロボットアームの先端ユニットとして使用されたり、多種類のワークが流れるコンベアライン上に使用されたりすることが多くなっていることから、多種類のワークに対応できるように締付け作業開始前に締付け個所の締付け高さ位置の設定作業が必要となっている。この設定作業では、締付け作業開始前に駆動ビット108をワークの締付け個所に締付けられた締結具115に嵌合させ、その時のロボットアームのZ軸方向の位置や一体往復手段102のZ軸方向の位置から、締付け個所の締付け高さ位置を記憶する必要がある。これに加えて、ガイド部材112の高さ位置を管理するとなると、ガイド部材112の高さ位置も駆動ビット108の締付け高さ位置と同様に記憶しなければならない。そのため、煩雑な設定作業が必要となることが懸念され、ガイド部材112の高さ位置の管理を併せて行う自動締付機の開発の障害となっている。
【0005】
本発明の目的は、上記のような懸念を解消し、締付け高さ位置と併せてガイド部材の高さ位置の管理を行う自動締付機であってガイド部材の高さ位置が簡単に設定可能な自動締付機およびその締付け高さ位置設定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、回転駆動源の回転を受けて回転する駆動ビットと、駆動ビットを内包するガイド部材と、ガイド部材と駆動ビットとを相対移動させる可動部を備えた相対往復手段と、駆動ビット、ガイド部材のいずれかと相対往復手段とを一体に往復させる可動部を備えた一体往復手段と、これらを駆動する制御装置とを備え、前記制御装置はガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時に相対往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶する基準位置設定手段を有するとともに、駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時に一体往復手段の可動部、または相対往復手段および一体往復手段の両可動部の位置を締付け高さ位置として記憶し、この位置と基準位置とからガイド部材の高さ位置を設定するガイド高さ位置設定手段を有することを特徴としている。この構成によれば、相対移動する駆動ビットの締付け高さ位置とガイド部材の高さ位置とを管理する構成の自動締付機であっても、ガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する基準位置が基準位置設定手段により記憶されているので、駆動ビットをワークに締付けられた締結具に嵌合させてワークの締付け個所の締付け高さ位置をガイド高さ位置設定手段により設定すれば、基準位置を基にガイド部材の高さ位置をワークに当接しない任意の位置に簡単に設定することができる。
【0007】
また、各往復手段のストロークを短くして自動締付機の小型化を図るために、前記相対往復手段はガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段とし、前記一体往復手段はビット往復手段とガイド部材とを一体に移動させる可動部を備えた構成とするのが最適であり、この場合駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時に一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置がガイド高さ位置設定手段により締付け高さ位置として記憶される。
【0008】
さらに、本発明はガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段と、ガイド部材およびビット往復手段を一体に往復させる一体往復手段と、これらを駆動する制御装置とを備え、前記制御装置はガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時にビット往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶する基準位置設定手段を有するとともに、駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する時の締付け高さ位置を一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置として記憶し、これら位置の記憶後にビット往復手段の可動部の位置にガイド部材をワークに対して移動させる一体往復手段の可動部の送り量を逆方向の送り量として加えてガイド部材の高さ位置を設定するガイド高さ位置設定手段を有する構成であってもよい。この場合、締付け個所の高さ位置に対する駆動ビットの締付け高さ位置が変わらないように駆動ビットに対してガイド部材を移動させることができるので、ガイド部材の高さ位置を基準位置に基づいてワークに当接しない任意の位置に簡単に設定することができる。
【0009】
しかも、前記制御装置は前述の基準位置設定手段およびガイド高さ位置設定手段を持つ構成に、駆動ビットが締結具に嵌合する状態を保ってガイド部材がワークに当接する時に記憶されるビット往復手段の可動部の位置と基準位置との差分を締付け完了オフセット位置として記憶する締付け完了オフセット位置設定手段を加えたものであってもよい。この場合、ガイド部材の高さ位置の設定に際して、駆動ビットの先端とガイド部材の先端との位置関係を締付け完了オフセット位置として把握できるので、駆動ビットの高さ位置が決まれば、締付け完了オフセット位置を基にガイド部材の先端をワークに当接しない位置に簡単に設定することができる。
【0010】
その上、本発明は回転駆動源の回転を受けて回転する駆動ビットと、駆動ビットを内包するガイド部材と、ガイド部材に対して駆動ビットを移動させる可動部を備えたビット往復手段と、これらを一体に往復させる可動部を備えた一体往復手段とを備えた自動締付機にあってその締付け高さ位置設定方法を特徴とするものである。この場合、ガイド部材の先端と駆動ビットの先端とが同一平面上に位置する時にビット往復手段の可動部の位置を基準位置として記憶し、駆動ビットをガイド部材から突き出る位置に配置して駆動ビットがワークに締付けられた締結具に嵌合する状態でガイド部材をワークに当接させる時にビット往復手段の可動部の位置と基準位置との差分を締付け完了オフセット位置として記憶しておき、ワークの締付け個所の締付けを行う際に、基準位置と締結具の種類に応じた締付け完了オフセット位置とを呼出して、これらとワークの締付け個所の高さ位置として記憶された一体往復手段の可動部の位置およびビット往復手段の可動部の位置とからガイド部材がワークに当接しない位置を算出して、ガイド部材をワークに対して移動させる一体往復手段の可動部の送り量をビット往復手段の可動部の位置に逆方向の送り量となるように加えて、ガイド部材の高さ位置を設定する構成となる。この構成によれば、相対移動する駆動ビットとガイド部材の位置を管理する構成の自動締付機であっても、ガイド部材と駆動ビットとが同一面上にある駆動ビットの基準位置と締結具の種類毎の締付け完了オフセット位置とを記憶しておけば、ワークの締付け個所の締付け高さ位置をこれまでと同様の方法で記憶するだけで、ワークの締付け個所で締結具の締付けを行う際に、ガイド部材の高さを基準位置に基づいてワークに当接しない位置に簡単に設定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明によれば、駆動ビットの締付け高さ位置とガイド部材の高さ位置の管理を行うにも拘わらず、多種類のワークや多種類の締結具に対してもガイド部材の高さ位置を簡単に設定できる自動締付機およびその締付け高さ位置設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機における基準位置設定作業および締付け位置設定作業を説明する模式図。
図2】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の一部を切り欠いた側面図。
図3】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機のビット往復手段を説明する要部拡大正面図。
図4】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の制御装置を説明するブロック図。
図5】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の基準位置設定作業時における制御部の動作フローチャート。
図6】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の締付け完了オフセット位置設定作業時における制御部の動作フローチャート。
図7】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の締付け位置設定作業時における制御部の動作フローチャート。
図8】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の締付け動作時における制御部の前半部の動作フローチャート。
図9】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の締付け動作時における制御部の後半部の動作フローチャート。
図10】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機における基準位置設定作業の説明図。
図11】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機における締付け完了オフセット位置設定作業の前半部の説明図。
図12】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機における締付け完了オフセット位置設定作業の後半部の説明図。
図13】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機における締付け完了オフセット位置設定作業の模式図。
図14】本発明の実施形態に係る自動ねじ締付機の締付け動作状態を説明する要部説明図。
図15】締結具を駆動ビットの先端に吸着して締付けを行う従来の自動締付機の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈実施形態〉
以下、本発明の実施形態に係る自動締付機の一例として、自動ねじ締付機を図面に基づき説明する。図2および図3並びに図10において、1は自動ねじ締付機であり、ロボットアーム(図示せず)の先端ユニットとして使用される際、または多種類のワークW(図14参照)が流れるコンベアライン(図示せず)上に使用される際の接続部となる一体往復手段を有している。この一体往復手段2は、上、下側に取付具2a,2bが取付られたテーブル台2cを有し、このテーブル台2cにはZ1軸ACサーボモータ(以下、Z1軸モータという)2dの回転を受けて回転するZ1軸ボールねじ2eとこのZ1軸ボールねじ2eの回転によりZ軸方向に往復移動する可動部をなすZ1軸可動ナット2fが配置されている。また、このZ1軸可動ナット2fには昇降プレート3が一体に取付けられており、この昇降プレート3は前述の上、下側の取付具2a,2b間に取付られた2本のZ1軸ガイドロッド2g(図中、1本のみ現れる)に案内され、Z1軸可動ナット2fの往復移動にともない、一体に移動するように構成されている。
【0014】
前記昇降プレート3には、図3に示すようにモータ固定プレート4が3本のスペーサ5(図中、1本のみ現れる)と後記するZ2軸ガイドロッド9eとを介して取付られており、このモータ固定プレート4には回転駆動源の一例をなす締付け用ACサーボモータ(以下、締付け用モータという)6が固定されている。この締付け用モータ6の駆動軸6aには、回転部材7を介して駆動ビット8が連接されている。この回転部材7は、駆動軸6aに接続される接続軸7aと、これに直交する方向に貫通して延びるピン7bと、このピン7bおよび駆動軸6a並びに接続軸7aを案内する案内溝7cとを備え、回転部材7が駆動軸6aの軸線方向に移動しても締付け用モータ6の回転が駆動ビット8に伝達される構成となっている。また、前記回転部材7の下部およびこれに連接された駆動ビット8は昇降プレート3に穿設された貫通穴3aを挿通可能に配置され、昇降プレート3に対して移動可能に構成されている。
【0015】
前記モータ固定プレート4には、図2に示すように相対往復手段の一例のビット往復手段9を構成するZ2軸ACサーボモータ(以下、Z2軸モータという)9aがモータ台9fを介して取付けられており、その回転をカップリング機構9gを介して受けるZ2軸ボールねじ9bが前記Z1軸ボールねじ2eおよび駆動ビット8と並列に配置されている。このZ2軸ボールねじ9bは、昇降プレート3に穿設された可動ナット通過穴3bを貫通しており、その下端は昇降プレート3に固定された回転支持部材9cにより回転自在に保持されている。また、このZ2軸ボールねじ9bにはその回転にともなって往復移動する可動部をなすZ2軸可動ナット9dが配置されており、このZ2軸可動ナット9dにはプレート様の連結部材10が固定されている。
【0016】
前記連結部材10は、図3に示すように前記昇降プレート3とモータ固定プレート4とを連結するZ2軸ガイドロッド9eに案内されており、Z2軸可動ナット9dが往復移動するにともなってZ2軸ガイドロッド9eに沿って移動可能となっている。また、この連結部材10には前記回転部材7が回転自在にかつ一体に移動できるように取付られており、連結部材10の往復移動にともなって、回転部材7およびこれに連接された駆動ビット8が締付け用モータ6の駆動軸6aに対して相対移動するように構成されている。
【0017】
また、前記昇降プレート3にはガイド保持具11が前記貫通穴3aを下方から覆うように取付けられており、このガイド保持具11にはガイド部材の一例のスクリュウガイド12が前記駆動ビット8を内包し、かつ駆動ビット8に対して前記回転部材7と一体に相対移動可能に配置されている。このスクリュウガイド12と駆動ビット8との間には駆動ビット8の先端付近に達するエア吸引路12aが形成されており(図3参照)、駆動ビット8がスクリュウガイド12から突き出るまで駆動ビット8の先端に締結具の一例のねじ15(図14参照)を吸着できる構成となっている。また、前記ガイド保持具11にはエア吸引機構(図示せず)に連接されるエアホース(図示せず)接続用の継手12bが取付られており、この継手12bの先端がスクリュウガイド12に達して前記エア吸引路12aに連通している。
【0018】
前記一体往復手段2の下側の取付具2bには、前記スクリュウガイド12の摺動を案内する案内具13と、前記スクリュウガイド12に内包された駆動ビット8が通過可能なチャックユニット14とが取付けられている。このチャックユニット14は、スクリュウガイド12が貫通可能な移動路14aを有するチャック本体14bを有し、このチャック本体14bには前記移動路14aを塞ぐ位置に常時閉止するように弾力付勢された一対のチャック爪14c(図中、一方のみ現れる)が取付けられている。また、前記チャック本体14bにはねじ供給装置(図示せず)からねじ供給ホース(図示せず)を介してエア給送されるねじ15を案内するホース継手14dと、このホース継手14dに連続する案内穴14eを持つねじ供給管14fとが配置されている。このねじ供給管14fの先端は、前記スクリュウガイド12の移動路14aを塞ぐ位置に配置され、一対のチャック爪14cにより形成される保持穴14gにねじ15を案内するとともに、スクリュウガイド12の前進によりその移動路14aから後退できるように弾力的に付勢されている。
【0019】
また、前記自動ねじ締付機1はZ1軸モータ2d、Z2軸モータ9a、締付け用モータ6、エア吸引機構およびねじ供給装置を駆動する制御装置16を有している。この制御装置16は、図4に示すようにタッチパネルを備えた表示部と兼用の操作部17、制御部18、締付けを行うに際して必要な各種締付けパラメータおよびスクリュウガイド位置設定パラメータ並びに待機位置情報を記憶する記憶部19、Z1軸モータ2dを駆動するZ1軸サーボモータ駆動部20、Z2軸モータ9aを駆動するZ2軸サーボモータ駆動部21、締付け用モータ6を駆動する締付け用サーボモータ駆動部22、エア吸引機構の作動を制御するエア吸引機構駆動部23およびねじ供給装置を駆動するねじ供給装置駆動部(図示せず)からなっている。
【0020】
前記操作部17は、タッチパネル上に各種操作メニューを表示でき、この操作メニューから締付け開始指令信号を制御部18に送ることができるように構成されている。また、この操作部17は各種締付けパラメータおよびスクリュウガイド位置設定パラメータに係る設定キー(図示せず)およびデータ読込キー(図示せず)を表示できる操作メニューを有しており、選択されるキーに応じて制御部18に各種パラメータ設定指令信号および各種パラメータの読込指令信号を送ることができる構成となっている。前記設定キーは、少なくとも締付けパラメータ設定キー、基準位置設定キー、締付け完了オフセット位置設定キー、締付け位置設定キーで構成される。
【0021】
前記Z1軸サーボモータ駆動部20およびZ2軸サーボモータ駆動部21は、駆動指令信号とともに送られる位置情報に従ってZ1軸モータ2d、Z2軸モータ9aをそれぞれ駆動するように構成されている。前記位置情報は、各モータの原点校正後の回転数として算出されており、この位置情報と各ボールねじ2e,9bのリードとから各可動ナット2f,9dの位置、すなわちスクリュウガイド12,駆動ビット8の位置が算出される。また、前記Z2軸サーボモータ駆動部21は締付け時の駆動ビット8の位置に応じてZ2軸モータ9aの負荷電流を制御して駆動ビット8に加わる推力を任意に設定できる構成となっている。前記締付け用サーボモータ駆動部22は駆動指令信号とともに送られる締付けパラメータに従って締付け用モータ6を駆動し、締付けトルクが本締めトルクに達すると、トルクアップ信号を制御部18に出力するように構成されている。前記エア吸引機構駆動部23は、駆動指令信号を受けると、駆動ビット8が後記する締付け開始位置Z1s,Z2sに達するまでエア吸引を行い、その後には吸引を停止するように構成されている。前記ねじ供給装置駆動部は、1回の締付け作業の完了毎に送られる駆動指令信号により、ねじ供給装置を作動させるように構成されている。
【0022】
前記制御部18は、操作部17から締付けパラメータ設定指令信号を受けると、操作部17のタッチパネル上に仮締めトルク、本締めトルク、ねじの長さ、ワークWの厚さ、推力等締付けを行うに際して必要とする締付けパラメータおよびワーク手前オフセットwf、目標オフセットaf等のスクリュウガイド位置設定に必要となるスクリュウガイド位置設定パラメータを表示して、これらを順次修正できるように構成されている。また、前記制御部18は前述の基準位置設定キー、締付け完了オフセット位置設定キー、締付け位置設定キーに応じた設定指令信号それぞれに基づき作動する基準位置設定手段18a、締付け完了オフセット位置設定手段18bおよびガイド高さ位置設定手段18cを有している。
【0023】
前記基準位置設定手段18aは、基準位置設定指令信号を受けると、図5に示すように、
SH1)原点校正する。(Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9a)
SH2)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aそれぞれに拘束解除指令信号を出力する。
SH3)操作部17からの読込指令信号(スクリュウガイド12の先端と駆動ビット8の先端とが同一平面上に位置する時、操作部17のデータ読込キーを選択する)の入力を待つ。
SH4)Z2軸モータ9aの現在位置(−値)を基準位置Z2hとして記憶する。
SH5)エンド
の各ステップを順次実行するように構成されている。
【0024】
前記締付け完了オフセット位置設定手段18bは、締付け完了オフセット位置設定指令信号を受けると、図6に示すように、
ST1)原点校正する。(Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9a)
ST2)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aそれぞれに拘束解除指令信号を出力する。
ST3)n=1
ST4)読込指令信号(駆動ビット8が仮ワークW1に締付けられたねじ15に嵌合する状態で、スクリュウガイドがワークW1に当接する時、操作部17のデータ読込キーを選択する)の入力を待つ。
ST5)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aの各現在位置Z1ro、Z2roをそれぞれ記憶する。
ST6)基準位置Z2hとZ2軸モータ9aの現在位置Z2roとから、締付け完了オフセット位置Z2fを、
Z2f=Z2ro―Z2h
として、算出し、これを記憶する。
ST7)n=n+1
ST8)すべての種類のねじ15に対する設定が完了したかを判断し、これが完了してない時、ST4)に戻る。
ST9)エンド
の各ステップを順次実行するように構成されている。なお、この締付け完了オフセット位置の設定は、実際のワークWを使用するガイド高さ位置設定手段18cにおいて行うこともできる。この場合、後記するZ1軸モータ2d、Z2軸モータ9aの目標位置Z1a,Z2aの設定後に前述のステップST2からステップST4を実行するだけでよい。
【0025】
前記ガイド高さ位置設定手段18cは、締付け位置設定開始指令信号を受けると、図7に示すように、
SS1)原点校正する(Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9a)。
SS2)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aそれぞれに拘束解除指令信号を出力する。
SS3)m=1
SS4)モード切替信号の有無を判断し、これがある時、SS10)にジャンプする。
SS5)読込指令信号(駆動ビット8が実際のワークWに締付けられたねじ15に嵌合する時、操作部17のデータ読込キーを選択する)の入力を待つ。
SS6)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aの各現在位置Z1r、Z2rをそれぞれ記憶する。
SS7)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aの目標位置Z1a,Z2aを、
Z1a=Z1r+Z2r―Z2h
Z2a=Z2h
として、算出し、記憶する。
SS8)m=m+1
SS9)すべてのワークW(締付け個所)の設定が完了したか否かを判断し、これが完了してない時、SS4)に戻る。
SS10)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aに拘束指令信号を送る。
SS11)エンド
の各ステップを順次実行するように構成されている。
【0026】
また、前記制御部18は締付け動作プログラムを有しており、操作部17から締付け開始指令信号を受けると、締付け動作プログラムに従って必要なパラメータを記憶部19から呼出し、これらパラメータに基づいてまたはこれらパラメータとともに各駆動部に駆動指令信号を送り、各駆動部から送られる各種信号を受けて、締付け動作を完了するように構成されている。すなわち、この制御部18は、図8および図9に示すように、
S1)締付けパラメータとして予め用意されたテーブルからワークWの種類(締付け個所)に応じたワークWの厚みT、ねじ15の脚部長さL、ワーク手前オフセットwf、目標オフセットafを呼出す。
S2)締付け用サーボモータ駆動部22、エア吸引機構駆動部に駆動指令信号を出力する。
S3)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aに待機位置への駆動指令信号を出力する。
S4)ワークWの種類(締付け個所)に応じたZ1軸モータ2dの目標位置Z1a,Z2軸モータ9aの目標位置Z2a(Z2h)を呼出し、締付け開始位置Z1s,Z2sを、
Z1s=Z1a−Z2f+wf
Z2s=Z2h+Z2f−wf+L−T
として算出する。
S5)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aに締付け開始位置Z1s,Z2sへの駆動指令信号を出力する。
S6)Z2軸モータ9aの締付け完了位置Z2eを、
Z2e=Z2a+Z2f−af−wf
として算出して、Z2軸モータ9aに駆動指令信号を出力する。
S7)締付け用モータ6のトルクアップ信号の有無を判断し、これがある時、S10)にジャンプする。
S8)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aは目標位置Z1s,Z2e近辺かを判断し、目標位置Z1s,Z2e近辺でない時、S7)に戻る。
S9)締付け異常表示信号を出力して、S12)にジャンプする。
S10)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aは目標位置Z1s,Z2e近辺かを判断し、目標位置Z1s,Z2e近辺でない時、S9)に戻る。
S11)締付け完了信号を出力する。
S12)Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aに待機位置への駆動指令信号を出力する。
S13)エンド
の各ステップを順次実行するように構成されている。
【0027】
次に、上記自動ねじ締付機1の動作を説明する。まず、締付け作業を行う前に、操作部17のタッチパネル上のメニューからワークWの種類(締付け個所)に応じたワークWの厚みT、ねじ15の脚部長さL、仮締めトルク、本締めトルク等締付けを行うに際して必要とする締付けパラメータおよびワーク手前オフセットwf、目標オフセットaf等のスクリュウガイド位置設定パラメータを表示して、各値(+値)を入力する。
【0028】
続いて、操作部17のメニューを切り替えて、基準位置設定キーが選択されると、基準位置設定指令信号が出力される。これにより、Z1軸モータ2dおよびZ2軸モータ9aの原点校正が行われ、一体往復手段2およびビット往復手段9の各可動ナット2f,9dが原点位置(図1(a)中の破線参照)に戻る。その後これらモータ2d,9aの拘束が解除されるので、一体往復手段2およびビット往復手段9がその位置を保ちながら、手動で動く状態となる。この状態で、図1(a)および図10に示すように手動で駆動ビット8をスクリュウガイド12に対して前進させ、その先端とスクリュウガイド12とを同一平面上に位置させる。この状態で、操作部17でデータ読込キーが選択され、読込指令信号が制御部18に送られ、Z2軸モータ9aの現在位置、すなわちZ2軸可動ナット9dの位置が基準位置Z2hとして記憶される。
【0029】
その後、ワークWの種類、またはワークWの締付け個所に締付けられるねじ15の種類が多くある場合の対応として、ねじ15の種類毎のスクリュウガイド12の高さ位置を設定するため、操作部17で締付け完了オフセット位置設定キーが選択されると、締付け完了オフセット位置設定指令信号が出力される。これにより、図11および図13に示すように仮ワークW1(実際のワークWであってもよい)に締付けられたねじ15の種類毎に、駆動ビット8を手動でねじ15に嵌合させ(図13中、実線参照)、続いて図12および図13に示すようにスクリュウガイド12を仮ワークW1に当接させる(図13中、一点鎖線参照)。この時、駆動ビット8およびスクリュウガイド12の移動により、Z1軸モータ2d,Z2軸モータ9aにそれぞれ連結されたボールねじ2e、9bに沿って移動する可動ナット2f,9dが移動し、各モータ2d,9aの現在位置が増減する。
【0030】
この状態で、操作部17でデータ読込キーが選択され、読込指令信号が出力されて、Z1軸モータ2dの現在位置Z1roがZ1軸可動ナット2fすなわちスクリュウガイド12の位置として、Z2軸モータ9aの現在位置Z2roがZ2軸可動ナット9dすなわち駆動ビット8の位置としてそれぞれ記憶される。また、Z2軸モータ9aの現在位置Z2roと基準位置Z2hとから、駆動ビット8の突き出し量または後退量が算出され、これがスクリュウガイド12の先端と駆動ビット8の先端との位置関係を示す締付け完了オフセット位置Z2fとして記憶される。この作業が用意されたすべてのねじ15の種類について行われ、ねじ15の種類毎に締付け完了オフセット位置が記憶される。
【0031】
前述の締付け完了オフセット位置の設定作業後に、操作部17で締付け位置設定キーが選択されると、締付け位置設定指令信号が出力される。これにより、Z1軸モータ2dおよびZ2軸モータ9aの原点校正が行われ、その後これらモータ2d,9aの拘束が解除され、操作部17のモード切替の有無を監視しながら、締付け高さ位置の設定作業を行う。具体的には、図1(b)に示すように実際のワークWに締付けられたねじ15をワークWの種類毎(締付け個所毎)に用意し、駆動ビット8をスクリュウガイド12から突き出した状態でねじ15に嵌合させる。この時、スクリュウガイド12および駆動ビット8の移動により、Z1軸モータ2d,Z2軸モータ9aにそれぞれ連結されたボールねじ2e、9bに沿って移動する可動ナット2f,9dが移動し、各モータ2d,9aの現在位置が増減する。この時のZ1軸モータ2d、Z2軸モータ9aそれぞれの現在位置Z1r,Z2rを記憶する。これら現在位置Z1r,Z2rにより、駆動ビット8の高さ位置が計算できるので、この高さ位置が変わらないようにスクリュウガイド12の目標位置Z2aを基準位置Z2h(図1(b)中、二点鎖線参照)にするためのZ1軸の目標位置Z1a(図1(b)中、一点鎖線参照)が算出され、記憶される。この作業が用意されたすべてのワークWの種類または締付け個所について行われ、ワークの種類毎、または締付け個所毎に締付け高さ位置が記憶される。
【0032】
これら設定作業が完了した後、操作部17から締付け開始指令信号が出力されると、ワークWの種類(締付け個所)に応じたワークWの厚みT、ねじ15の脚部長さL、ワーク手前オフセットwf、目標オフセットafが予め用意されたテーブルから呼出される。続いて、締付け用サーボモータ駆動部22、エア吸引機構駆動部に駆動指令信号が出力され、締付け用モータ6が回転し始めるとともに、エア吸引機構が作動し、スクリュウガイド12の先端付近でエア吸引が始まる。また、Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aに待機位置への駆動指令信号が出力され、これらモータ2d,9aの作動により各可動ナット2f,9dが移動するにともなって駆動ビット8とスクリュウガイド12とが待機位置に移動する。さらに、ワークWの種類(締付け個所)に応じたZ1軸モータ2d、Z2軸モータ9aの目標位置Z1a,Z2a(=Z2h)および締付け完了オフセット位置2fが呼出され、これら値、ワークWの厚みT、ねじ15の脚部長さLおよびワーク手前オフセットwfから、締付け開始位置Z1s,Z2sが算出される。すなわち、締付け開始位置Z1sは、図14(a)に示すようにスクリュウガイド12の先端の停止位置となるもので、駆動ビット8の嵌合状態を保ちながら、スクリュウガイド12の先端が締付け完了オフセット位置Z2f分ワークWに近づく位置を得るために、Z2軸モータ9aを駆動して駆動ビット8をスクリュウガイド12に対して後退させる分、すなわちZ2f分目標位置Z1aから前進させる位置(Z1a−Z2f)が算出される。続いて、スクリュウガイド12の先端がワーク手前オフセットwfだけ離れる位置を得るために、Z2軸モータ9aを駆動してスクリュウガイド12に対して前進させる分、すなわちwf分前述の位置(Z1a−Z2f)から後退させる位置(Z1a−Z2f+wf)が算出され、この位置が締付け開始位置Z1sとなる。数式で言い換えれば、Z1s=Z1a−Z2f+wfとして得られる。また、締付け開始位置Z2sの算出にあっては、前述のZ2軸モータ9aを駆動して駆動ビット8をスクリュウガイド12に対して後退させる分(Z2f)、およびZ2軸モータ9aを駆動してスクリュウガイド12に対して前進させる分(−wf)とZ2軸モータ9aの目標位置Z2a(=Z2h)とからZ2軸モータ9aを駆動する位置(Z2h+Z2f−wf)が算出される。この目標位置の変更は、前述したようにその分Z1軸モータ2dの目標位置Z1aに逆方向の送り量となるように加算されているので、駆動ビット8をねじ15に嵌合した状態に保つに際して支障はない。この位置からねじの脚部長さLとワークの厚さTとの差分(L−T)だけワークWから離れる位置が算出され、この位置が締付け開始位置Z2sとなる。これを前述の締付け開始位置Z1sと同様に、数式で言い換えると、Z2s=Z2h+Z2f−wf+L−Tとして得られる。
【0033】
前記Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aそれぞれの締付け開始位置Z1s,Z2sが算出されると、Z1軸モータ2d、Z2軸モータ9aがそれぞれ締付け開始位置Z1s,Z2sへ移動するように駆動される。これにより、Z1軸可動ナット2fが前進し、ビット往復手段9とともに、駆動ビット8が一体に前進する。この間、スクリュウガイド12の先端がチャック本体14bに取付られたねじ供給管14fを押し出し、チャック爪14cに保持されたねじ15を駆動ビット8の先端に案内することができる。この状態で、Z1軸モータ2dおよびZ2軸モータ9aがさらに回転し、スクリュウガイド12と先端にねじ15を吸着した駆動ビット8とがさらに前進してチャック爪14cを押し開いて、駆動ビット8に吸着されたねじ15の先端がワークWに達する。この時、駆動ビット8は回転しているので、図14(a)に示すようにねじ15の先端がワークWに締付けられる。これとほぼ同時に、エア吸引が停止され、またZ1軸モータ2dは締付け開始位置Z1sに達してその回転を停止する。これにより、スクリュウガイド12はワークWからワーク手前オフセットwf離れた位置、すなわちワークWに当接しない位置で停止することができる。この間に、Z2軸モータ9aの締付け完了位置Z2eがZ2軸モータ9aの現在位置Z2aと、ワーク手前オフセットwfと、目標オフセットafとからZ2e=Z2a−wf−afとして算出され、駆動ビット8の先端が締付け完了位置Z2eに移動するようにZ2軸モータ9aはさらに駆動される。そのため、図14(b)に示すように駆動ビット8はねじ15をさらに締付けながら前進し、その先端は締付け完了位置Z2e近くに達する。前述したZ2軸モータ9aの締付け完了位置Z2eを算出する際に、目標オフセットafが考慮されているのは、ワークWの厚さに誤差があっても、駆動ビットの先端が締付け完了位置Z2eに達する前に、トルクアップ信号が出力されるようにするためである。
【0034】
その後、締付け用サーボモータ駆動部22からトルクアップ信号が出力されると、駆動ビット8の締付け高さ位置から締付けの良否が判定され、不良の時は締付け不良が、また締付け良好の時には、締付け完了が表示され、所定の締付け作業を完了することができる。
【0035】
本発明の他の実施形態として、上記構成の自動ねじ締付機1を水平方向の締付けに用いてもよい。また、前述の自動ねじ締付機1ではねじ15の種類毎に駆動ビット8の先端とスクリュウガイド12の先端との位置関係を締付け完了オフセット位置として実際のねじ15から得ているが、これに代えてねじ15の座面、駆動ビット8の先端の位置およびワークWの厚さTから締付け完了オフセット位置を算出することもできる。さらに、Z1軸モータ2dおよびZ2軸モータ9aの目標位置Z1a,Z2a並びにZ2軸モータ9aの締付け完了位置Z2sを締付け作業前に予め算出することもできる。しかも、前述の自動ねじ締付機1は駆動ビット8をスクリュウガイド12に対して移動させるビット往復手段9とスクリュウガイド12とを一体に往復移動させる構成であるが、スクリュウガイド12を駆動ビット8に対して移動させる手段(図示せず)と駆動ビット8とを一体に往復移動させる構成であっても、同様の効果が得られる。
【0036】
なお、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…自動ねじ締付機
2…一体往復手段
2d…Z1軸ACサーボモータ
8…駆動ビット
9…ビット往復手段
9a…Z2軸ACサーボモータ
12…スクリュウガイド
15…ねじ
16…制御装置
18…制御部
18a…基準位置設定手段
18b…締付け完了オフセット位置設定手段
18c…ガイド高さ位置設定手段
W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15