(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-93861(P2015-93861A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】パルボウイルス症の予防又は治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/715 20060101AFI20150421BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20150421BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20150421BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20150421BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20150421BHJP
A23L 1/30 20060101ALI20150421BHJP
【FI】
A61K37/20
A61K35/74 D
A61P31/12
A61P31/00 171
A61K39/00 H
A23L1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-235440(P2013-235440)
(22)【出願日】2013年11月13日
(71)【出願人】
【識別番号】513285952
【氏名又は名称】大川 博
(71)【出願人】
【識別番号】513286328
【氏名又は名称】加藤 明久
(71)【出願人】
【識別番号】508098394
【氏名又は名称】自然免疫応用技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500315024
【氏名又は名称】有限会社バイオメディカルリサーチグループ
(74)【代理人】
【識別番号】100110191
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明久
(72)【発明者】
【氏名】大川 博
(72)【発明者】
【氏名】稲川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】河内 千恵
(72)【発明者】
【氏名】杣 源一郎
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD27
4B018MD85
4B018ME09
4B018ME14
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA48
4C084CA04
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZC611
4C085AA03
4C085BA75
4C085BB21
4C085CC07
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087CA08
4C087CA15
4C087NA14
4C087ZB33
4C087ZC61
(57)【要約】
【課題】パルボウイルス症に対して、現在のところ特効薬がなく、死亡率が高く、効率的かつ確実で有効な予防法を含め、確たる治療法の早急な対策が強く望まれている。
【解決手段】パントエア属に属する微生物に由来するリポ多糖を有効成分として含有することを特徴とするパルボウイルス症の予防又は治療剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パントエア属に属する微生物に由来するリポ多糖を有効成分として含有することを特徴とするパルボウイルス症の予防又は治療剤。
【請求項2】
前記パントエア属に属する微生物がパントエア・アグロメランスであることを特徴とする請求項1記載の予防又は治療剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の予防又は治療剤が配合されている配合物であって、食品、医薬品、医薬部外品、動物用医薬品又は動物用医薬部外品であることを特徴とする配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルボウイルス症の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
イヌパルボウイルス感染症(CPVD)はパルボウイルス科に属する直鎖一本鎖DNAウイルスで、直径20nmの正二十面体構造を形成し、エンベロープは持たない。1970年代後半に世界中に広がり、日本でも大流行した。いったん発症すると、高い致死率と伝染性から、繁殖場やペットショップなどでは現在でも重大な問題である。当初原因不明の病気で子犬がばたばたと倒れて死亡する症例が相次いだため「ポックリ病」「コロリ病」として恐れられた。ワクチン開発も行われ、ワクチン接種の普及とともに犬パルボウイルス感染症の症例も減少した。しかし、ワクチン未接種で、体力や免疫力の弱い子犬や老犬などは、犬パルボウイルスに感染して死亡することも少なくない。
【0003】
パルボウイルス症は通常、2〜12日間の潜伏期間の後に、4〜6週齢以降の犬では、食欲不振、元気消沈、嘔吐、などの症状が現れる。血流によって全身に行き渡ったウイルスは、新生仔期には心筋細胞、それ以降では腸陰窩細胞や骨髄細胞などで複製され、心筋細胞が破壊されれば心筋炎を起こし心不全により突然死する。このためごく若齢の場合、心筋型の経過をとって突然死し、イヌパルボウイルス感染症と気づかれないことがある。腸炎型では、腸陰窩細胞が破壊されることで正常な腸粘膜形成ができず、下痢、特徴的な水様性粘血便(トマトジュース様)を呈する。また、骨髄細胞の破壊による白血球数の減少による日和見感染症により敗血症を発症し、播種性血管内凝固症候群が惹起され、多臓器不全により死亡する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/030938号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nishizawa T. et al, "Homeostasisas Regulated by Activated Macrophage. I. Lipopolysaccharide (LPS) from WheatFlour: Isolation, Purification and Some Biological Activities", Chem.Pharm. Bull., 40(2), p.479-483 (1992).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イヌパルボウイルス感染症の治療には、脱水症状やショック状態をやわらげる支持療法、対症療法のみである。感染個体に体力があればこれで、回復が見られることがあるが、生後2〜3か月程度までの若齢犬では死に至ることが多い。犬自身の免疫力を保つ手助けをする効果を期待して、猫インターフェロン製剤の投与が行われることが多いが、確立された結果は得られていない。また、嘔吐や下痢により失われた体内の水分や電解質を補給する点滴治療や、腸内細菌による二次感染を抑制するための抗生物質投与が行われる。しかしながら、現在のところ特効薬がなく、死亡率が高く、効率的かつ確実で有効な予防法を含め、確たる治療法の早急な対策が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の予防又は治療剤は、パントエア属に属する微生物に由来するリポ多糖を有効成分として含有することを特徴とするパルボウイルス症に対するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によればパルボウイルス症の予防又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の治療剤としての実験結果を示す図である。
【
図2】実施例2の予防剤としての実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
イヌパルボウイルス症の診断は極めて特徴的な臨床症状(元気・活力の有無、下痢、嘔吐、食欲の有無)の有無とイヌパルボウイルス抗原検出キット(チェックマンELISA-kit;アドテック)、またはpolymerase chain reactionによるパルボウイルス遺伝子診断により確定した。症例の一部は採血し、血液生化学検査(スポットケムEZ SP4430;アークレー株式会社)および血球計算(pocH-100iV;シスメックス株式会社)を実施した。
【0012】
対処療法としては、症例の状態に依存して、輸液(ソルデム1)、肝機能改善薬(強力ミノファーゲンC)、栄養剤(ビタミンB群、ノイロビタン)、鎮痛薬(ノイロトロピン)、抗生物質(アンピシリン、トリブリッセン、バイトリル、クリンダマイシン、コンベニア)、制吐薬(セレニア)、止瀉薬(ベリノール)を通常量与えた。
【0013】
治療として、タミフル(タミフル;中外製薬)2.2mg/kg体重を経口投与で、ネコインターフェロン(インターキャット;東レ)2,000,000単位/kg体重 を静脈注射で、パントエア菌リポ多糖(LPS)10μg/kg体重を経口で与えた。
【0014】
パントエア菌リポ多糖(LPS)は、小麦に共生するグラム陰性菌のパントエア・アグロメランスを小麦粉で培養し、菌体からLPSを熱水抽出し、固形分を除去した物を用いた(特許文献1、非特許文献1)。
【0015】
イヌパルボウイルス症例で自発食事摂取イヌを3群に分けて、上述の対処療法を施すと共に各群に治療薬としてネコインターフェロン、タミフル、又はパントエア菌リポ多糖を与えたところ、生存率(発症から2週間後)がネコインターフェロンの群は73.7% (19頭中、生存14頭、死亡5頭、平均発症9.0週齢)、タミフルの群は40.0% (5頭中、生存2頭、死亡3頭、平均発症8.6週齢)、パントエア菌リポ多糖の群は88.9%(9頭中、生存8頭、死亡1頭、平均発症9.6週齢)となり、パントエア菌リポ多糖を与えた場合は著しく優れた生存効果を示した(
図1参照)。
【0016】
パルボウイルスの悪性度は高く、通常半数程度の生存率であることから、パントエア菌リポ多糖投与による生存率は極めて高いといえる。
【実施例2】
【0017】
健康維持の目的でイヌにパントエア菌リポ多糖を事前に与えた群(7頭、平均8.6週齢)と与えなかった群(9頭、発症までの平均10.0週齢)がその後にパルボウイルス症を発症したので、発症後にはそのすべてについてパントエア菌リポ多糖を与えた。発症10日後の生存率を調べたところ、パントエア菌リポ多糖を発症前から与えた群は、生存率が85.7%(7頭中、生存6頭、死亡1頭)に達した。一方、パントエア菌リポ多糖を発症後だけに与えた群は生存率が55.6%(9頭中、生存5頭、死亡4頭)となり、パントエア菌リポ多糖を発症前から与えた場合は優れた生存効果を示した(
図2参照)。
【0018】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0019】
リポ多糖(LPS)はリピドAとコア多糖とO抗原多糖からなるが、リピドAとコア多糖の構造性は同族内では保存性が高い事が知られている。LPSの効果はマクロファージやB細胞、樹状細胞、上皮細胞などの免疫に関係する細胞のLPS受容体群、特にTLR−4に結合して作用する。生物活性にはO抗原多糖も影響を与えるが、LPSのリピドAとコア多糖の糖鎖の一部がこの結合に主に関与することが知られている。したがって、パントエア・アグロメランスのLPSが本効果を持つことは、パントエアに属する他の菌のLPSについても同様の効果を有すると言える。