【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、重量平均分子量が60万〜100万であるアクリル樹脂(C)を1〜10質量部含有し、以下(1)〜(3)を同時に満たすことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。(1)メルトフローレートが0.5〜7g/10分である。(2)190℃で測定した溶融張力の値が50mN〜200mNである。(3)結晶化速度指数が0.5〜30である。更に有機過酸化物(B)を0.1〜3質量部添加したポリ乳酸系樹脂組成物
ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、重量平均分子量が60万〜100万であるアクリル樹脂(C)を1〜10質量部含有し、以下(1)〜(3)を同時に満たすことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(1)メルトフローレートが0.5〜7g/10分である。
(2)190℃で測定した溶融張力の値が50mN〜200mNである。
(3)結晶化速度指数が0.5〜30である。
ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、有機過酸化物(B)を0.1〜3質量部、重量平均分子量が60万〜100万であるアクリル樹脂(C)を1〜10質量部添加し、溶融混練してなる請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いるポリ乳酸樹脂(A)としては、L乳酸、D乳酸を主たる構成成分とするポリマーを用いることができ、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じてその他の樹脂成分を共重合していてもよい。
【0011】
他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらのポリ乳酸樹脂は単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0012】
このようなポリ乳酸樹脂は、従来より公知の方法、すなわち、乳酸から直接重合する方法、およびラクチドを開環重合させる方法、などにより合成されたものを用いることができる。
【0013】
本発明のポリ乳酸樹脂(A)は、結晶化速度指数や耐熱性の面などから結晶性のポリ乳酸樹脂であることが好ましく、中でもD体含有量が0〜7.0モル%であることが好ましい。これらの中でもD体含有量が0.1〜6.0モル%の範囲が好ましく、1.0〜5.0モル%であることがより好ましい。D体含有量が7.0モル%より多い場合、結晶化速度指数を所定範囲内に制御することが困難になりやすく、また、結晶化度も低くなるため、得られる発泡体の耐熱性も低くなるため好ましくない。
【0014】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0015】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
【0016】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上、さらには90質量%以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が50質量%未満であると、他の樹脂等の割合が多くなることから、樹脂組成物としての発泡性能が低下し、後述する(1)〜(3)の特性値を満足することが困難となる。
【0017】
本発明におけるアクリル樹脂(C)としては、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステルなどの単量体で構成されたものがよく、これら単量体1種のみの単独重合体、または2種以上の単量体の共重合体の何れでもよく、共重合体においてはブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、あるいはこれらの組み合わせによるいずれの共重合体であってもよい。このような(メタ)アクリル酸およびそのエステルの単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルおよび(メタ)アクリル酸トリシクロデシニルなどが挙げられる。また、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどの置換スチレンなどの単量体を共重合させることもできる。
【0018】
これらのアクリル樹脂(C)のうち、市販されているものとしては、例えば三菱レイヨン社製メタブレンPシリーズや、ローム・アンド・ハース社製のパラロイドKシリーズ、また、カネカ社製カネエースPAシリーズなどが挙げられる。
【0019】
アクリル樹脂(C)は、これのみをポリ乳酸樹脂(A)に添加しても、発泡性能を発現させることはできない。しかし、詳細は不明であるが、後述する有機過酸化物(B)と併用することにより、ポリ乳酸樹脂に優れた発泡性能を付与することができる。つまり、上記した(1)〜(3)の特性値を有する樹脂組成物とすることができる。
【0020】
アクリル樹脂(C)の重量平均分子量は60万〜100万であるが、中でも70万〜95万であることが好ましい。重量平均分子量が60万未満であると、溶融張力の向上が不十分であり、発泡倍率の低い成形体しか得られない。一方、重量平均分子量が100万を超えると、溶融張力が上がりすぎて、発泡時に樹脂が伸びず、発泡倍率の不十分な成形体しか得られない。
【0021】
アクリル樹脂(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、1〜10質量部であり、中でも3〜8質量部であることが好ましい。含有量が1質量部未満であると、溶融張力の向上が不十分であるため、発泡時に樹脂が形状保持できず、発泡倍率の低い成形体しか得られない。また、得られる成形体は破泡が多く、外観に劣るものとなる。
一方、含有量が10質量部を超えると、溶融張力が上がりすぎて発泡時に樹脂が伸びず、発泡倍率の低い成形体となる。また、得られる成形体は熱収縮が大きく、加熱時の寸法安定性に劣る(耐熱性に劣る)ものとなる。
【0022】
次に、有機過酸化物(B)について説明する。
本発明では有機過酸化物(B)として、種々のものを用いることができる。例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類、ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類、t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状パーオキサイド類、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパ−オキソナン等の環状有機過酸化物類などが挙げられ、これらから1種類以上を選んで用いることができる。
【0023】
これらの中でも、ポリ乳酸の加工温度における半減期分解速度の関係から、樹脂組成物を所定範囲内の結晶化速度と溶融張力に調整することが容易であるため、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、ジ−t−ブチルペルオキシドや2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンが好ましく用いられる。
【0024】
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、有機過酸化物(B)を0.1〜3質量部、重量平均分子量が60万〜100万であるアクリル樹脂(C)を1〜10質量部添加し、溶融混練することによって得ることができる。
【0025】
有機過酸化物(B)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して0.1〜3質量部であることが必要で、中でも0.5〜2.5質量部であることが好ましい。0.1質量部未満では、発泡に適した溶融粘度と溶融張力を与えることができず、溶融粘度、溶融張力ともに低いものとなり、(1)、(2)、(3)の特性値を満足する樹脂組成物とすることができない。
一方、有機過酸化物(B)の添加量が3質量部を超える場合も、発泡に適した溶融粘度と溶融張力を与えることができず、溶融粘度、溶融張力ともに高いものとなり、(1)、(2)の特性値を満足する樹脂組成物とすることができない。
【0026】
なお、有機過酸化物(B)は、溶融混練時にポリ乳酸樹脂と反応し、低分子量体に分解し、揮発するため、溶融混練後に得られる本発明のポリ乳酸系樹脂組成物にはほとんど残存していない。
【0027】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、得られる発泡体の気泡径を細かく均一にし、かつ外観を良好なものとするために、気泡調整剤(D)を含有していることが好ましい。気泡調整剤(D)としては、酸化チタン、タルク、カオリン、クレイ、珪酸カルシウム、シリカ、クエン酸ソーダ、炭酸カルシウム、珪藻土、焼成パーライト、ゼオライト、ベントナイト、石灰石、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸第二鉄、ポリテトラフルオロエチレン粉末が挙げられる。中でも、結晶化速度を向上させる効果に優れているため、タルクを用いることが好ましい。
【0028】
気泡調整剤(D)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、中でも0.2〜3質量部であることが好ましい。気泡調整剤(D)の含有量が5質量部を超えると、結晶化速度が小さくなりすぎ、(3)の特性値を満足する樹脂組成物とすることが困難となる。また、比重が大きくなる場合があるため、好ましくない。一方、気泡調整剤(D)の含有量が0.05質量部未満では、結晶化速度指数が30を超えるため、この場合においても(3)の特性値を満足する樹脂組成物とすることが困難となる。また、得られる発泡体は気泡径が粗大なものとなり、平均気泡径が大きいものとなりやすい。
【0029】
なお、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)に有機過酸化物(B)や気泡調整剤(D)を添加し、溶融混練する際に、架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、種々のものを用いることができるが、中でもポリエチレングリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。好ましい添加量は、ポリ乳酸樹脂100質量部あたり、0.01〜20質量部である。
【0030】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、ポリ乳酸樹脂(A)、アクリル樹脂(C)以外の熱可塑性樹脂が含有されていてもよいが、このような熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、スチレン―エチレンーブタジエンースチレン(SEBS)、エチレンーαオレフィンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
【0031】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、発泡に適した溶融粘度を有するものであり、(1)の特性値を満足するものである。つまり、メルトフローレート(以下、MFRと称することがある)が0.2〜7g/10分である。ポリ乳酸系樹脂組成物の溶融粘度は、発泡倍率が高い発泡体を得るためには極めて重要な要素である。MFRは、中でも0.5〜5g/10分であることが好ましく、0.8〜4g/10分であることが最も好ましい。
発泡体を形成するには溶融粘度が高いほど発泡適性があることが知られているが、MFRが0.2g/10分未満であると、発泡の際に樹脂が伸びないために気泡が成長せず、発泡倍率が低い成形体しか得られない。また、このようなMFRの樹脂組成物を得ようとすると、重合体を製造する際の払い出しや重合度のコントロール面で問題が生じる。
一方、MFRが7g/10分を超えるものであると、溶融粘度が低すぎて破泡が生じるなど、発泡体を形成することが困難となる。また、発泡体が得られたとしても、破泡が生じるため、発泡倍率は低く、気泡径の粗大なものとなる。
【0032】
本発明におけるMFRは、JIS K−7210記載の方法に従い、温度190℃、荷重2.16kgfにて測定するものである。
【0033】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物において、JIS K−7210記載の方法に従い、温度190℃、荷重2.16kgfにて測定するMFRをMFR−1とし、JIS K−7210記載の方法に従い、温度190℃、荷重13.225kgfにて測定するMFRをMFR−2とした場合に、両者の比(MFR−2/MFR−1)が15以上であることが好ましく、中でも18以上であることが好ましい。MFR−2/MFR−1の値は樹脂組成物の分子量分布、直鎖分岐の目安でもあり、MFR−2/MFR−1の値が高いほど、分子量分布が広く、また直鎖分岐が高くなり、良好でかつ安定に高発泡倍率の発泡体を得ることができる。MFR−2/MFR−1の値が15未満では、得られる発泡体の発泡倍率が低いものとなりやすい。
【0034】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、発泡に適した溶融張力を有するものであり、(2)の特性値を満足するものである。つまり、190℃で測定した溶融張力の値が50mN〜200mNであり、中でも60mN〜180mNであることが好ましく、70mN〜150mNであることがさらに好ましい。溶融張力が50mN未満の場合、発泡成形した場合、樹脂が切れたり、破れたりするため、発泡倍率は低く、気泡径の大きいものとなる。
一方、溶融張力が200mNを超える場合、発泡成形した場合、樹脂が伸びないために気泡が成長せず、得られる成形体は発泡倍率が低いものとなる。また、成形流動性が著しく低下する場合がある。
【0035】
本発明における溶融張力は以下のようにして測定するものである。東洋精機製作所製のキャピログラフ1C(シリンダーの内径9.55mm、オリフィスの内径1.0mm、長さ10.0mm)を用いて測定する。まず、シリンダーおよびオリフィスの設定温度を190℃とし、該シリンダー中にポリ乳酸系樹脂組成物(測定試料)を充填し、5分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として190℃の溶融樹脂をオリフィスからストランド状に押出する。このストランドを、下方の直径40mmの張力検出用プーリーの円形ガイドを通過させながら巻き取り、この円形ガイドにかかる荷重を張力計で検出する。巻き取り速度を徐々に増加させていき、ストランドが破断したときの張力(すなわち測定可能な最大の張力)を溶融張力とする。
【0036】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、発泡に適した結晶化速度指数を有するものであり、(3)の特性値を満足するものである。つまり、結晶化速度指数が0.5〜30であり、中でも0.5〜20であることが好ましい。
結晶化速度指数は指数が小さいほど、降温時における結晶化が速いことを意味する。結晶化速度指数が30分よりも高いと、結晶化するのに時間がかかりすぎ、希望する成形体の形状が得られなかったり、射出成形等でのサイクルタイムが長くなったりと、生産性が悪くなる。また、得られる発泡体は、結晶化が十分に進行しないため、耐熱性や強度に劣るものとなる。
一方、0.5分未満であると、結晶化速度が早すぎることから、樹脂が発泡する前に結晶化が進行し、十分に発泡した成形体を得ることができない。
【0037】
本発明における結晶化速度指数は以下のようにして測定するものである。パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7を用い、ポリ乳酸系樹脂組成物7mgをサンプルとし、窒素気流中、20℃から200℃まで昇温速度500℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した後、200℃から130℃まで降温速度500℃/分で降温し、130℃で保持する。そして、
図1に示すように、130℃で保持した場合の結晶化ピーク(発熱)の等温開始からピークトップに至るまでの時間を、(降温時等温)結晶化速度指数とする。
【0038】
そして、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、末端封鎖剤、分散剤、充填材、顔料、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃改良剤等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。なお、本発明のポリ乳酸系樹脂にこれらの添加剤を配合する方法は特に限定されない。
【0039】
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、イオウ系難燃剤、酸系難燃剤が挙げられる。
【0041】
結晶核剤としては、例えば、ソルビトール化合物、安息香酸およびそれらの化合物の金属塩、リン酸エステル金属塩、ロジン化合物、アミド化合物としてエチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスアクリル酸アミド、エチレンビスアクリル酸アミド、ヘキサメチレンビス−9,10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9,10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等の有機結晶核剤が挙げられる。
【0042】
末端封鎖剤としては、例えば、カルボジイミド、オキサゾリン、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0043】
分散剤としては、例えば、流動パラフィン、ミネラルオイル、クレオソート油、潤滑油、シリコーンオイル等の工業用オイル、コーン油、大豆油、菜種油、パーム油、亜麻仁油、ホホバ油等の植物油、イオン性およびノニオン性の界面活性剤が挙げられる。
【0044】
充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填材、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリイミド繊維、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の有機充填材が挙げられる。
【0045】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。有機過酸化物(B)が固体状である場合、ポリ乳酸樹脂(A)に、有機過酸化物(B)、アクリル樹脂(C)および気泡調整剤(D)を別フィーダーを用いて押出機に供給する方法、これらをあらかじめドライブレンドしてから押出機に供給する方法、有機過酸化物(B)、アクリル樹脂(C)、気泡調整剤(D)をサイドフィーダーを用いて溶融混錬の途中から添加する方法などが挙げられる。
一方、有機過酸化物(B)が液体である場合、有機過酸化物(B)は加圧ポンプを用いて、溶融混練の途中から注入する方法が望ましい。溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができる。混合均一性や分散性を高める観点からは二軸押出機を使用することが好ましい。溶融混練温度は180〜240℃であることが好ましい。
【0046】
また、溶融混練する際には、有機過酸化物(B)をポリ乳酸樹脂中に高濃度に添加した過酸化物マスターペレットを予め作製し、これを用いて添加してもよい。マスターペレットを用いることで、樹脂組成物中での有機過酸化物(B)の分散性が向上し、ポリ乳酸系樹脂組成物中でムラなく反応することが可能となり、発泡性が向上する。
【0047】
マスターペレットの具体例としては、ポリ乳酸樹脂中に有機過酸化物(B)を溶融混錬してペレット状にしたもの、ポリ乳酸樹脂の粉粒体と過酸化物の粉体を混合しペレット状に圧縮造粒したもの、ポリ乳酸樹脂ペレットの表面に過酸化物を混合添着したものが挙げられる。
【0048】
次に、本発明の発泡体について説明する。本発明の発泡体は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなるものである。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物から発泡体を製造する方法については限定されず、押出発泡法、ビーズ発泡法により得られたものや、射出成形機等を用いた射出発泡法により得られたものが挙げられる。また、これらの方法により得られた発泡体をさらに金型内で成形したり、型内発泡成形等して発泡成形体としたものも本発明の発泡体に含まれる。
【0049】
本発明の発泡体の製造方法について説明する。
まず、(i)押出発泡法とは、樹脂にあらかじめ樹脂の溶融温度で分解する分解型発泡剤をブレンドしたものを押出機に投入するか、直接押出機に揮発性発泡剤を注入して、スリット状ノズルまたは丸形ノズルから押出し、シートまたはストランド(発泡体)を得る方法である。そして、これらのシートやストランドを真空成形機など金型内で成形することによって、発泡成形体を得ることができる。真空成形機などで発泡成形体を得る際には、予熱シート温度を(Tg+40℃)〜(Tm−5℃)にした直後に、温度が20℃〜(Tm−20℃)の金型で成形することが好ましい。予熱シートの温度が高すぎるとシートがドローダウンして成形できなくなり、また温度が低すぎると、成形シートの伸びが不足して割れが生じたり、深絞り成形ができなくなったりする問題が生じることがある。一方、金型温度が低すぎると、得られる容器の耐熱性が不十分となる場合があり、また、金型温度が高すぎると、金型にシートが付着し成形物の離型が悪くなることや、成形物に偏肉が生じたり、その耐衝撃性が低下したりすることがある。
【0050】
(ii)ビーズ発泡法とは、あらかじめポリ乳酸系樹脂の微粒子を作製し、揮発性発泡剤を加圧下にて含浸させた後、温度や圧力の変化で発泡させて発泡微粒子(発泡体)を得る方法である。そして、得られた発泡微粒子を型内発泡成形することによって、発泡成形体を得ることができる。
また、発泡成形体を得る際には、(i)と(ii)の複合法であってもよい。つまり、(i)の押出発泡法により作製した発泡ストランドを切断して発泡粒子とし、(ii)で記載した型内発泡成形に供する方法である。
【0051】
(i)の押出発泡法により使用する押出機のシリンダー温度は、ポリ乳酸系樹脂の融点(Tm)または流動開始温度(Tf)以上であることが好ましく、180〜230℃とすることがより好ましく、190〜220℃とすることがさらに好ましい。ノズルの温度は、130〜190℃とすることが好ましく、140〜180℃とすることがより好ましい。
【0052】
さらに、(iii)射出発泡法とは、射出成形機内に揮発性発泡剤を注入するか、分解型発泡剤をブレンドした樹脂組成物を射出成形機内に投入し、その溶融物を金型キャビティに射出し、溶融樹脂が流動末端付近に到達した時点で、金型キャビティに隣接した金型コア部(ダイプレート)を、中型キャビティの厚みが拡張する方向へ後退させる射出コアバック式の射出成形方法等により発泡体を得る方法である。射出成形機のシリンダー温度は、良好な溶融混練物を得る観点から、180〜230℃とすることがこのましく、より好ましくは190〜220℃とする。圧入された揮発性発泡剤、または分解型発泡剤は溶融状態のポリ乳酸樹脂と機械的に混練されることが好ましく、これにより溶融状態のポリ乳酸樹脂に均一に高濃度の発泡剤が溶解する。
【0053】
ここで得られた溶融物を金型内に充填する際の、若しくは後に冷却する際の金型温度は、ポリ乳酸樹脂の成形速度向上、及び成形品の変形抑制の観点から、60〜120℃が好ましく、80〜110℃が更に好ましい。なお、本発明において金型温度は、金型を冷却する冷却水温度、あるいは、金型のキャビティ近傍の温度を計測して定める。溶融物を金型内に充填すると、金型内で冷却・収縮による圧力降下が起こり、不活性物質はポリ乳酸樹脂への溶解度が低下して溶解を維持できなくなり、ガス化して発泡し、微細な発泡セルを有する発泡体が得られる。
【0054】
上記した(i)〜(iii)の方法や型内発泡で使用する揮発性発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素、水等の無機化合物、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等の各種炭化水素、フロン化合物、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、エタノールやメタノール等の各種アルコール類に代表される有機溶媒を挙げることができる。中でも、炭酸ガスおよび/あるいはブタンを用いることが好ましい。
【0055】
上記した(i)や(iii)の方法で使用する分解型発泡剤としては、熱分解型の、例えば、アゾ、N−ニトロソ、複素環式窒素含有及びスルホニルヒドラジド基のような分解しうる基を含有する有機化合物、炭酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物を挙げることができる。その具体例としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、4−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニル)セミカルバジド、4−トルエンスルホニルセミカルバジド、バリウムアゾジカルボキシレート、5−フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、4−トルエンスルフォニルアザイド、4,4’−ジフェニルジスルフォニルアザイドなどである。
【0056】
(i)押出発泡法、(ii)ビーズ発泡法や型内発泡における揮発性発泡剤の注入量は、ポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、さらに好ましくは1〜3質量部である。注入量が0.1質量部未満では発泡させるガスの量が少なく、発泡成形用ポリ乳酸系樹脂組成物を発泡させる際の発泡倍率が上がらず質量減少効果が得られない場合があり、また、10質量部を超えると、発泡の際の破泡や得られた発泡体の強度低下が起こるため、好ましくない。
【0057】
(iii)射出発泡法における揮発性発泡剤および分解型発泡剤の添加量は、ポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して0.05〜2質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。添加量が0.05質量部未満では発泡させるガスの量が少なく、発泡成形用ポリ乳酸系樹脂組成物を発泡させる際の発泡倍率が上がらず質量減少効果が得られない場合があり、また、2質量部を超えると、得られた発泡体の強度低下、射出発泡においてはシルバーストリークなどの外観不良などを起こす場合があるため好ましくない。
【0058】
そして、上記の(i)〜(ii)の方法で得られる本発明の発泡体(発泡成形体も含む)の場合は、発泡倍率が7〜25倍であることが好ましく、中でも8〜22倍であることが好ましく、さらに好ましくは10〜20倍である。発泡倍率が7倍未満では質量減少効果が得られない場合があり、また、25倍以上になると、強度を保持することが難しくなる。
【0059】
また、これらの発泡体の平均気泡径は500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。平均気泡径が500μmを超えると、発泡体の表面平滑性が低下し、また、発泡体の強度が低下する場合がある。
【0060】
これらの発泡体の結晶化度は、これらを構成しているポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が10%以上であることが好ましく、中でも12%以上であることが好ましい。結晶化度が低いと、耐熱性が劣るものとなる。結晶化度の上限は、適用するポリ乳酸系樹脂組生物の状態あるいは形態により異なり、高ければ高いほどよい。
【0061】
これらの発泡体の加熱寸法変化率は3%以内が好ましく、さらには2%以内がより好ましい。寸法変化率が3%以上となると、精密な寸法安定性が必要な用途に使用することができず、また、結晶化度が十分でないことから、耐熱性に劣るため好ましくない。
【0062】
そして、発泡体の加熱寸法変化率は、発泡体を120℃で24時間、熱風乾燥機により加熱処理し、加熱処理前後の体積を測定し、以下の式により算出する。なお、V1:加熱前の発泡体の体積、V2:加熱後の発泡体の体積とする。
体積変化率(%)=(V2−V1)/V1×100
【0063】
また、(iii)射出発泡法で得られる射出発泡体の場合は、発泡倍率が1.15〜3.0であることが好ましく、1.25〜2.8であることがより好ましい。発泡倍率が1.15未満であると、発泡体の軽量化効果が不十分となる。一方、発泡倍率が3.0を超えると、発泡体中でコア部の発泡セルが粗大化する場合や、スキン部が薄くなる場合があり、発泡体の強度が低下する。
【0064】
射出発泡体の平均気泡径は300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。平均気泡径が300μmを超えると、発泡体の表面平滑性が低下し、また、発泡体の強度が低下する場合がある。
【0065】
射出発泡体の結晶化度は、これらを構成しているポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化度が10%以上であることが好ましく、中でも15%以上であることが好ましく、さらには20%以上であることが好ましい。結晶化度が低いと、耐熱性や寸法安定性に劣る。結晶化度の上限は、適用するポリ乳酸系樹脂組成物の状態あるいは形態により異なり、高ければ高いほどよい。
【0066】
また、射出発泡体の曲げ強度は80MPa以上のものが好ましく、中でも90MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることが更に好ましい。
射出発泡体の曲げ強度は、JISK−7171に従い、変形速度1mm/分で荷重をかけて測定するものであり、降伏点、あるいは破断点を曲げ強度とする。
【0067】
なお、本発明の発泡体の発泡倍率は以下のように算出するものである。まず、ポリ乳酸系樹脂組成物と発泡体の質量を測定し、次いでこれらの見かけ体積を、湿式電子比重計(アルファ・ミラージュ社製「EW−300SG」)を用いて測定する。そして、ポリ乳酸系樹脂組成物と発泡体の質量と見かけ体積から、それぞれの見かけ密度を算出し、以下の式より算出するものである。
発泡倍率=(ポリ乳酸系樹脂組成物の見かけ密度)/(発泡体の見かけ密度)
【0068】
また、本発明の発泡体の平均気泡径は、光学顕微鏡(倍率:20〜50倍)にて50個の気泡(セル)の直径を測定し、その平均値とするものである。なお、気泡の直径とは、長軸径をいうものである。
【0069】
さらに本発明の発泡体の結晶化度は、X線回折装置(理学電気工業社製、RAD−rB、Cu−Kα線)を用いてWAXD反射法により測定し、多重ピーク分離法による積分強度比より結晶化度を求める。
【0070】
本発明の発泡体は、包装材、梱包材、緩衝材、断熱材、保温材、保冷材、消音材、吸音材、防音材、制振材、建材、クッション材、資材、容器等に用いることができる。具体例な用途としては、例えば、ソファ、ベッドマット、椅子、寝具、マットレス、電灯カバー、ぬいぐるみ、スリッパ、クッション、ヘルメット、カーペット、枕、靴、ポーチ、マット、クラッシュパッド、スポンジ、文具、玩具、DIY用品、パネル、畳芯材、マネキン、自動車内装部材・クッション、カーシート、デッドニング、ドアトリム、サンバイザー、自動車用制振材・吸音材、スポーツ用マット、フィットネス用品、スポーツ用プロテクター、ビート板、グラウンドフェンス、レジャーシート、医療用マットレス、医療用品、介護用品、リハビリ用品、建築用断熱材、建築目地材、面戸材、建築養生材、反射材、工業用トレー、チューブ、パイプカバー、エアコン断熱配管、ガスケット芯材、コンクリート型枠、土木目地、つらら防止パネル、保護材、軽量土、盛土、人工土壌、梱包材・包装資材、梱包資材、ラッピング、生鮮品・野菜・果物等の梱包材・包装材、電子機器等の梱包材・緩衝包装材、生鮮品・野菜・果物等の保温・保冷箱、カップラーメン・弁当箱等の食品容器、食用トレー、飲料容器、農業用資材、発泡模型、スピーカ用振動板が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例及び比較例における特性値の測定方法、評価方法は以下のとおりである。
(1)ポリ乳酸系樹脂組成物のMFR値
前記の方法により測定した。なお、温度190℃、荷重2.16kgfにて測定するMFRをMFR−1とし、温度190℃、荷重13.225kgfにて測定するMFRをMFR−2とした。
(2)ポリ乳酸樹脂のD体含有量
ポリ乳酸樹脂(又はポリ乳酸系樹脂組成物)0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、分解させた。この分解物5mL、純水3mL、および塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜ、静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard社製HP−6890SeriesGCsystemを用いてガスクロマトグラフィ測定をおこなった。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合を算出し、これをD体含有量(モル%)とした。
【0072】
(3)ポリ乳酸系樹脂組成物の溶融張力、結晶化速度指数
前記の方法により測定した。
(4)ポリ乳酸系樹脂組成物及び発泡体の密度、発泡体の発泡倍率
前記の方法により測定した。
(5)発泡体の平均気泡径、結晶化度、加熱寸法変化率(押出発泡体のみ)、曲げ強度(射出発泡体のみ)
前記の方法により測定した。
【0073】
実施例及び比較例に用いた原料は次のとおりである。
〔ポリ乳酸樹脂〕
A−1:トヨタ自動車社製 エコプラスチックU‘z S−12;重量平均分子量13万、MFR値8g/10分、D体含有量0.1モル%、融点178℃
A−2:ユニチカ社製 テラマックTE−4000;重量平均分子量13万、MFR値10g/10分、D体含有量1.4モル%、融点165℃
A−3:ネイチャーワークス社製8052D;重量平均分子量14万、MFR値5g/10分、D体含有量4.5モル%、融点152℃
A−4:ネイチャーワークス社製6302D;重量平均分子量13万、MFR値12g/10分、D体含有量10モル%、融点113℃
【0074】
〔有機過酸化物〕
B−1:化薬アクゾ社製 「トリゴノックス301(液状)」(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンを純度43.9%で含むもの)
B−2:日本油脂社製 「パーヘキサ25B(液状)」〔2,5−ジメチル‐2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンを純度95.4%で含むもの〕
【0075】
〔アクリル樹脂〕
C−1:メタブレンP−501(三菱レイヨン製、重量平均分子量80万)
C−2:パラロイドK−120(ロームアンドハース株式会社、重量平均分子量90万)
C−3:メタブレンP−550(三菱レイヨン製、重量平均分子量95万)
C−4:パラロイドK−400(ロームアンドハース株式会社、重量平均分子量200万)
C−5:メタブレンP−700(三菱レイヨン製、重量平均分子量50万)
【0076】
〔気泡調整剤〕
D−1:タルク(林化成社製「MW−HST」 平均粒子径2.5μm)
【0077】
実施例1
二軸押出成形機(池貝社製「PCM−30」、ダイス直径;4mm×3孔)を用い、押出ヘッド温度;230℃ 、ダイ出口温度;210℃に設定して、ポリ乳酸樹脂(A−1)を供給した。ポリ乳酸樹脂(A−1)100質量部に対してアクリル樹脂(C−1)を3質量部、気泡調整剤としてタルク(D−1)を1質量部添加した。混練機途中からポンプを用いて、トリゴノックス301(B−1)をポリ乳酸樹脂(A−1)100質量部に対して、(B−1)の含有量が0.5質量部となるように注入した。そして、溶融混練した後、押出し、ペレット状に加工してポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
次に、得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、二軸押出成形機(池貝社製「PCM−45」の先端にサークルダイ(直径65mm、リップ幅0.7mm)を備えた押出発泡試験装置に供給し、シリンダ温度200℃、吐出量50kg/h下で炭酸ガス2質量%添加して発泡体シートを作製した。得られた発泡体シートは、独立気泡からなる見掛け密度0.15g/cm
3、発泡倍率8.5倍の均一なシートであった。このシートを用いて、真空・圧空成形機(浅野研究所製)を用いて、蓋と容器部を一体成形する金型により、食品用トレー(容器の絞り比(L/D)=0.5)を得た。このとき、シートを温度110℃、5秒で予熱を行い、金型温度110℃、プレス時間5秒で成形を行った。
【0078】
実施例2〜17 、比較例1〜14
ポリ乳酸樹脂、アクリル樹脂、有機過酸化物、気泡調整剤の種類と添加量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして発泡体シートを得、さらに得られたシートを用いて実施例1と同様にして食品用トレーを得た。
【0079】
実施例18
二軸押出成形機(池貝社製「PCM−30」、ダイス直径;4mm×3孔)を用い、押出ヘッド温度;230℃ 、ダイ出口温度;210℃に設定して、ポリ乳酸樹脂(A−2)を供給した。ポリ乳酸樹脂(A−2)100質量部に対して、アクリル樹脂(C−1)を3質量部、気泡調整剤としてタルク(D−1)を1質量部添加した。混練機途中からポンプを用いて、トリゴノックス301をポリ乳酸樹脂(A−1)100質量部に対して、(B−1)の含有量が0.5質量部となるように注入した。そして、溶融混練した後、押出し、ペレット状に加工してポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
次に、得られたポリ乳酸系樹脂組成物を、二軸押出成形機(池貝社製「PCM−45」の先端にサークルダイ(直径65mm、リップ幅0.7mm)を備えた押出発泡試験装置に供給し、シリンダ温度200℃、吐出量50kg/h下でブタンガス2質量%添加して発泡体シートを作製した。得られた発泡体シートは、独立気泡からなる見掛け密度0.11g/cm
3、発泡倍率12倍の均一なシートであった。このシートを用いて、真空・圧空成形機(浅野研究所製)を用いて、蓋と容器部を一体成形する金型により、食品用トレー(容器の絞り比(L/D)=0.5)を得た。このとき、シートを温度110℃、5秒で予熱を行い、金型温度110℃、プレス時間5秒で成形を行った。
【0080】
実施例1〜18、比較例1〜14で得られたポリ乳酸系樹脂組成物の組成及び特性値、発泡体(シート及び食品用トレー)の特性値及び評価結果を表1、2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表1から明らかなように、実施例1〜18で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、メルトフローレート、溶融張力、結晶化速度指数を満足するものであった。このため得られた発泡体(シート及び食品用トレー)は、高発泡倍率で平均気泡径が小さく、結晶化度が高く、加熱寸法変化率の低いものであった。
【0084】
一方、表2から明らかなように、比較例1で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、アクリル樹脂(C)を含有せず、有機過酸化物(B)を添加する方法で製造しなかったため、溶融粘度、結晶化速度指数、溶融張力のいずれも本発明で規定する範囲外のものであった。このため、得られた発泡体は、発泡倍率が不十分であり、加熱寸法変化率も大きいものであった。また、破泡していたため、気泡径も大きく外観にも劣る発泡体であった。比較例2で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、特定分子量のアクリル樹脂を含有しなかったため、また、比較例7で得られたポリ乳酸系樹脂は、特定分子量のアクリル樹脂の含有量が少なすぎたため、ともに溶融張力が低く、得られた発泡体は、発泡倍率の低いものであった。
【0085】
比較例3〜6で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、有機過酸化物(B)を添加する方法で製造しなかったため、いずれも溶融張力が低く、結晶化速度指数が大きいものであった。このため、得られた発泡体は、発泡倍率が小さく、加熱寸法変化率の大きいものとなった。また、破泡も生じており、外観にも劣っていた。比較例8で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、特定分子量のアクリル樹脂(C)の含有量が多すぎたために、溶融張力が高くなりすぎた。このため、発泡時に樹脂が伸びず、得られた発泡体は、発泡倍率が小さいものとなった。また、加熱寸法変化率の大きいものとなった。
【0086】
比較例9〜10で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、重量平均分子量が100万以上のアクリル樹脂を用いたため、溶融張力が高くなりすぎた。このため、発泡時に樹脂が伸びず、得られた発泡体は発泡倍率の低いものであった。また、ゲルも多数発生するなど外観に劣る成形体であった。比較例11で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、気泡調整剤の量が多く、結晶化速度が小さくなりすぎたため、発泡前に樹脂が結晶化(固化)し、発泡倍率の小さい発泡体となった。比較例12で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、製造時の有機過酸化物の添加量が少なく、溶融張力の低いものとなった。このため、得られた発泡体は発泡倍率の低いものであった。また破泡が多く外観にも劣っていた。
【0087】
比較例13で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、分子量が低いアクリル樹脂を含有するものであったため、溶融張力が低いものとなった。このため、得られた発泡体は発泡倍率が低く、破泡も多く外観に劣るものであった。比較例14で得られたポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂のD体含有量が多いものであったため、結晶化速度指数が大きすぎるものとなった。このため、得られた成形体は加熱寸法変化率が大きく、耐熱性に劣るものとなった。
【0088】
実施例19
実施例1で得られたポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対し、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ビニホールAC#3;永和化成工業社製)を0.5質量部添加し、射出成形機(FANUC社製S−2000i型)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度110℃で射出成形し、射出発泡体を得た。このとき、長さ127mm、幅12.7mm、深さ1.6mmのキャビティを有する金型を用いた。また、発泡体の初期厚みは1.6mmであり、ダイプレートの後退距離を1.92mm(設定発泡倍率:2.2倍)に設定し、射出発泡体を得た。
【0089】
実施例20〜21、比較例15〜17
用いるポリ乳酸系樹脂組成物の種類を表1に示すように種々変更した以外は、実施例19と同様にして射出発泡体を得た。
【0090】
実施例19〜21、比較例15〜17で得られた射出発泡体の特性値を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
表3から明らかなように、実施例19〜21で得られた射出発泡体は、実施例1、10、15で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いたため、発泡倍率が高く、平均気泡径が小さく、結晶化度が高く、かつ曲げ強度の高いものであった。
【0093】
一方、比較例15で得られた射出発泡体は、比較例3で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いたため、結晶化度が低く、耐熱性に劣るものとなった。また、溶融張力が低いために破泡が多く発生し、曲げ強度に劣るものとなった。比較例16で得られた射出発泡体は、比較例13で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いたために、溶融張力が低く、破泡が多く発生し、曲げ強度に劣るものとなった。比較例17で得られた射出成形体は、比較例14で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いたために、結晶化速度が遅く、射出発泡において十分に結晶化が進行せず、発泡体を得ることができなかった。