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特開2015-93988ポリアミド酸、ポリイミド、およびグラファイトシートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-93988(P2015-93988A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】ポリアミド酸、ポリイミド、およびグラファイトシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20150421BHJP
   C01B 31/04 20060101ALI20150421BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C01B31/04 101Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-104459(P2014-104459)
(22)【出願日】2014年5月20日
(31)【優先権主張番号】102141200
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】向 首睿
(72)【発明者】
【氏名】秦 羲儀
(72)【発明者】
【氏名】楊 偉達
【テーマコード(参考)】
4G146
4J043
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB07
4G146AC11B
4G146AC20B
4G146AD22
4G146BA15
4G146BA20
4G146BA40
4G146BA42
4G146BB02
4G146BB06
4G146BB11
4G146BC03
4G146BC04
4G146BC07
4G146BC23
4G146BC34A
4G146BC34B
4G146BC35A
4G146BC35B
4G146BC36A
4G146BC36B
4G146BC37B
4J043PA04
4J043PA19
4J043PC01
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SB03
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA032
4J043UA042
4J043UA131
4J043UA141
4J043UA542
4J043UA552
4J043UB221
4J043UB401
4J043VA021
4J043VA022
4J043YA06
4J043YA07
4J043ZB47
4J043ZB49
(57)【要約】
【課題】ポリアミド酸、ポリイミド、およびグラファイトシートの製造方法を提供する。
【解決手段】グラファイトシートの製造方法は、ジアミンと二無水物とを重合し、ポリアミド酸を形成する工程を含む。ポリアミド酸を基板上に塗布し、ベイクにより、ポリアミド酸薄膜、または、ゲルフィルムを形成する。ポリアミド酸薄膜、または、ゲルフィルムは、高温イミド化、または、化学的イミド化で二軸延伸されて、ポリイミド薄膜を形成する。その後、ポリイミド薄膜を、炭化、および、黒鉛化して、グラファイトシートを形成する。ジアミンは、式1のジアミンと式2のジアミンとを含み、二無水物は、式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物を含む。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンと二無水物との重合により形成されるポリアミド酸であって、前記ジアミンは、下記式1および式2のジアミンを含み、前記二無水物は、下記式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物を含む
【化1】

ことを特徴とするポリアミド酸。
【請求項2】
1モル部の前記二無水物、aモル部の前記式1のジアミン、および、bモル部の前記式2のジアミンの前記重合により形成され、a+b=1、且つ、 0.11≦a:b≦9.0であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド酸。
【請求項3】
前記ジアミンは、さらに、下記式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミンを含む
【化2】

ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド酸。
【請求項4】
1モル部の前記二無水物と、
aモル部の前記式1のジアミンと、
bモル部の前記式2のジアミンと、
cモル部の前記式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミンとの前記重合により形成され、
a+b+c=1、且つ、0.11≦a:b≦9.0;
0.1:0.9≦(a+b):c<1:0であることを特徴とする請求項3に記載のポリアミド酸。
【請求項5】
さらに、金属錯体を前記重合に加え、前記二無水物と前記金属錯体とのモル比は 1:0.001 から 1:0.2であり、且つ、前記金属錯体は、下記式22の金属錯体を含み、
【化3】

各 R1 と R2 とはそれぞれ独立して、CH3 または CF3;
n は2から4の整数; および
M は、Zr、Ni、TiO、Fe、Co、Mn、Mg、Cu、Al、Cr、Ba、Pr、Pd、Sc、Na、Zn、V、Y、Pt、または Tlであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポリアミド酸。
【請求項6】
ポリイミドであって、請求項1から5のいずれかに記載のポリアミド酸の脱水により形成されることを特徴とするポリイミド。
【請求項7】
グラファイトシートの製造方法であって、
ジアミンと二無水物との重合を実行して、ポリアミド酸を形成する工程と、
前記ポリアミド酸を基板に塗布し、得られた塗布物をベイクして、ゲルフィルムを形成する工程と、
前記ゲルフィルムを、二軸延伸し、熱的または化学的に環化し、および、脱水して、ポリイミド薄膜を形成する工程と、
前記ポリイミド薄膜を炭化し、および、黒鉛化して、グラファイトシートを形成する工程と、を含み、
前記ジアミンは、下記式1および式2のジアミンを含み、前記二無水物は、下記式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物を含む
【化4】

ことを特徴とするグラファイトシートの製造方法。
【請求項8】
前記ポリアミド酸は、1モル部の前記二無水物、aモル部の前記式1のジアミン、および、bモル部の前記式2のジアミンの前記重合により形成され、a+b=1、且つ、0.11≦a:b≦9.0であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアミンは、さらに、下記式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミンを含む
【化5】

ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミド酸は、
1モル部の前記二無水物と、
aモル部の前記式1のジアミンと、
bモル部の前記式2のジアミンと、
cモル部の前記式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミンとを前記重合することにより形成され、
a+b+c=1、0.11≦a:b≦9.0; 且つ、
0.1:0.9≦(a+b):c<1:0であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリイミド薄膜を黒鉛化して、前記グラファイトシートを形成する前記工程は、温度2400℃から2800℃で実行されることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
さらに、金属錯体を前記重合に加える工程を含み、前記二無水物と前記金属錯体とのモル比は 1:0.001から1:0.2であり、且つ、前記金属錯体は下記式22の金属錯体を含み、
【化6】

各 R1 と R2 とはそれぞれ独立して、CH3 または CF3、n は2から4の整数であり、および、M は、Zr、Ni、TiO、Fe、Co、Mn、Mg、Cu、Al、Cr、Ba、Pr、Pd、Sc、Na、Zn、V、Y、Pt、または Tlであることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ポリイミド薄膜を黒鉛化して、前記グラファイトシートを形成する前記工程は、温度1800℃ から2800℃で実行されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドに関するものであって、特に、ポリイミドから、グラファイトシートを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工グラファイトシートは、1600 W/m・kの優れた熱伝導率を有し、天然グラファイトシートの熱伝導率 (わずか200 から 300 W/m・k)より大幅によく、銅の熱伝導率の2から4倍、および、アルミニウムの熱伝導率の2から6倍である。人工グラファイトシートは、少なくとも 10000 S/cmの電気伝導性を有し、天然グラファイトシートの電気伝導性の約3から5倍である。人工グラファイトシートの重量は、アルミニウムより 25% 軽く、銅より75% 軽い。このほか、人工グラファイトシートは、フレキシブル性とEMI遮蔽効果とを有する。3C電気製品の高演算速度、薄型化の要求の増加に伴い、人工グラファイトシートは、3C電気製品の高熱伝導材において優先候補のひとつである。
【0003】
従来の人工グラファイトシートの黒鉛化温度は、少なくとも 2800℃以上でないと、優れた黒鉛構造を形成することができない。さらに、現在の技術では、厚さが少なくとも 20 μm、且つ、優れた黒鉛構造を得るのが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ポリアミド酸、ポリイミド、および、グラファイトシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一具体例は、ジアミンと二無水物との重合により形成されるポリアミド酸を提供し、ジアミンは、下記式1および式2のジアミンを含み、二無水物は、下記式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物を含む。
【0006】
【化1】

【0007】
本発明の一具体例は、さらに、金属錯体を上述の重合に加え、二無水物と金属錯体のモル比は、1:0.001 から 1:0.2で、金属錯体は、下記式22金属錯体を含む。
【0008】
【化2】
【0009】
各R1 と R2はそれぞれ独立して、CH3 または CF3である; n は2から4の整数である; M は、Zr、Ni、TiO、Fe、Co、Mn、Mg、Cu、Al、Cr、Ba、Pr、Pd、Sc、Na、Zn、V、Y、Pt、または Tlである。
【0010】
本発明の一具体例は、ポリアミド酸の脱水により形成されるポリイミドを提供する。
【0011】
本発明の一具体例は、グラファイトシートを形成する方法を提供し、方法は、ジアミンと二無水物との重合を実行して、ポリアミド酸を形成する工程と、基板上にポリアミド酸を塗布し、得られるコーティング(塗布物)をベイクして、ゲルフィルムを形成する工程と、ゲルフィルムを二軸延伸し、熱的または化学的に環化する、および、脱水させて、ポリイミド薄膜を形成する工程と、ポリイミド薄膜を炭化し、および、黒鉛化して、グラファイトシートを形成する工程とを含み、ジアミンは、下記式1のジアミンおよび下記式2のジアミンを含み、二無水物は、下記式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物を含む。
【0012】
【化3】
【0013】
本発明の一具体例は、さらに、金属錯体を上述の重合に加え、二無水物と金属錯体とのモル比は、1:0.001 から 1:0.2であり、金属錯体は、下記式22の金属錯体を含む。
【0014】
【化4】
【0015】
各R1 と R2 とはそれぞれ独立して、CH3、または、CF3である。n は2から4の整数である。Mは、Zr、Ni、TiO、Fe、Co、Mn、Mg、Cu、Al、Cr、Ba、Pr、Pd、Sc、Na、Zn、V、Y、Pt、または Tlである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、比較的低い温度で、ポリイミドを黒鉛化することにより、優れた伝導性のグラファイトシートを形成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図面は、本発明の実施の形態を説明しており、同様の番号は同様の構成要素を示している。
図1】本発明の一例によるグラファイトシートのSEM断面写真である。
図2】本発明の一例によるグラファイトシートのSEM断面写真である。
図3】本発明の一例によるグラファイトシートのSEM断面写真である。
図4】本発明の一例によるグラファイトシートのSEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一具体例は、グラファイトシートの製造方法を提供し、ジアミンと二無水物とを重合し、ポリアミド酸を形成する工程を含む。たとえば、ジアミンは、下記式1のジアミンおよび式2のジアミンを含む。
【0019】
【化5】
【0020】
一具体例において、二無水物は、下記式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物を含む。
【0021】
【化6】
【0022】
この具体例において、ポリアミド酸は、1モル部の二無水物、aモル部の式1のジアミン、および、bモル部の式2のジアミンを重合してなる。a+b=1、且つ、 0.11≦a:b≦9.0である。式1のジアミンの比率が増加するとき、ポリイミド薄膜 (ポリアミド酸の熱環化により形成される)の熱膨張の係数が増加する。a:b>9の時、ポリアミド酸の重合がゲル化しやすい。式1のジアミンの比率が減少する時、ポリイミド薄膜 (ポリアミド酸の熱環化により形成される)の熱膨張係数が減少する。a:b<0.11の時、ポリイミド薄膜は、膜形成プロセスで、脆弱で、損壊しやすい。
【0023】
あるいは、ジアミンは、式1と式2のジアミンだけでなく、下記式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのその他のジアミンを含む。
【0024】
【化7】
【0025】
この具体例において、ポリアミド酸は、1モル部の二無水物、aモル部の式1のジアミン、bモル部の式2のジアミン、および、cモル部の式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミンを重合してなる。a+b+c=1, 0.11≦a:b≦9.0、および、0.1:0.9≦(a+b):c≦1:0である。式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミン比率が過度に高い場合、熱膨張を増加させ、ポリアミド酸を加熱することにより形成されるポリイミド薄膜の機械的強度を低下させるおそれがある。
【0026】
一具体例において、金属錯体が、さらに、ポリアミド酸の重合に加えられる。二無水物と金属錯体とのモル比は、1:0.001 から 1:0.2であり、金属錯体は、下記式22の金属錯体を含む。式22において、各 R1 と R2 とはそれぞれ独立して、CH3、または、CF3である。n は2から4の整数であり、M は、Zr、Ni、TiO、Fe、Co、Mn、Mg、Cu、Al、Cr、Ba、Pr、Pd、Sc、Na、Zn、V、Y、Pt、または Tlである。式22の金属錯体は、上述のジアミンの窒素原子とキレートされて、金属で修飾されたジアミンを形成し、これにより、さらに、ポリアミド酸から形成されるポリイミド薄膜の黒鉛化温度を低下させる。金属錯体の用量が過度に少ないと、ポリイミドの黒鉛化温度を効果的に低下させることが出来ないおそれがある。金属錯体の用量が過度に多いと、黒鉛化プロセスにおいて、多くの泡や空洞を形成するおそれがあり、これにより、非連続の黒鉛構造を形成する。
【0027】
【化8】
【0028】
たとえば、式1および式2のジアミン、ならびに、式3の二無水物は、下記式23に示されるように重合される。式23は説明のためのものであることが理解できる。ジアミンは、さらに、その他の式10、式11、式12、式13、式14、式15、式16、式17、式18、式19、式20、式21、または、それらの組み合わせのジアミンを含む。二無水物は、式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、または、それらの組み合わせの二無水物である。重合の溶媒は、たとえば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI)、ジメチルホルムアミド (DMF)、N-メチル-2-ピロリドン (NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド (DMAc)、γ-ブチロラクトン (GBL)、別の一般の有機極性溶媒、または、それらの組み合わせである。
【0029】
【化9】
【0030】
続いて、ポリアミド酸溶液を基板に塗布し、その後、ベイクして、ゲルフィルムを形成する。その後、ゲルフィルムは、二軸延伸し、熱的または化学的に環化されて、ポリイミド薄膜を形成する。塗布は、スピンコーティング、ディップコーティング、スリットコーティング、スプレイコーティング、または、別のコーティング方法である。ポリアミド酸薄膜の溶媒は、ポリアミド酸薄膜を加熱することにより除去される。一具体例において、溶媒を除去する加熱ステップが、80 ℃から 110℃の温度で、10分から40分実行される。このほか、加熱ステップが真空プロセスと一緒に用いられて、加熱温度を低下、および/および、加熱時間を短縮する。その後、熱環化または化学的環化により、ポリアミド酸薄膜が脱水されて、ポリイミド薄膜を形成する。式23中の製品(ポリアミド酸)が脱水されて、式24に示されるようなポリイミドを形成する。
【0031】
【化10】
【0032】
一具体例において、ポリイミドを形成する脱水は、200℃ から 350℃の温度で、1 時間から 3 時間加熱する。このほか、脱水が遠赤外線加熱と一緒に用いられて、加熱時間を減少させる。厚さが25μm から 125μmのポリイミド薄膜は、上述のプロセスにより得られる。ポリイミド薄膜が過度に厚いと、後続の炭化と黒鉛化で、高く、均一な黒鉛化レベルのグラファイトシートを形成することができないおそれがある。ポリアミド酸薄膜は、過度に薄いと、炭化または黒鉛化中に壊れやすい。本発明のグラファイトシートの製造において、金属錯体を有する、または、有さないポリアミド酸薄膜は、これに限定されないが、単一層構造を含む。たとえば、薄膜は、多層構造、たとえば、単分子層の多重コーティング、または、多層の単一コーティングである。このほか、ポリアミド酸薄膜の添加剤は、金属錯体である。たとえば、熱伝導性粒子、たとえば、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化ホウ素に包まれたアルミナ、アルミニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化チタン、リン化カルシウム、チタン酸バリウム、ナノチューブ、または、グラフェンが、ポリアミド酸薄膜に加えられる。
【0033】
その後、ポリイミド薄膜は、炭化され、および、黒鉛化されて、グラファイトシートを形成する。黒鉛化される製品の発泡レベルが高い場合、黒鉛化後に、任意で、ラミネート加工やカレンダリングを施してもよい。一具体例において、前駆体ポリアミド酸薄膜は、式22の金属錯体を含み、ポリイミドは、1800℃ から 2800℃で、グラファイトシートを形成する。あるいは、前駆体ポリアミド酸は、式22の金属錯体を含まず、ポリイミド薄膜は、2400℃ から 2800℃で、グラファイトシートを形成する。ポリアミド酸から形成されるポリイミド薄膜は、例えば、熱膨張係数が5.0 ppm/℃、100mgより大きい剛性、125μm以下の厚さを有する。一具体例において、ポリイミド薄膜は、1800℃以上の温度で黒鉛化される、500 S/cm以上の電気伝導性を有するグラファイトシートを形成する。一具体例において、ポリイミド薄膜は、2200℃以上の温度で黒鉛化されて、5000 S/cm以上の電気伝導性を有するグラファイトシートを形成する。一具体例において、ポリイミド薄膜は、2400℃以上の温度で黒鉛化されて、9000 S/cm以上の電気伝導性を有するグラファイトシートを形成する。一具体例において、ポリイミド薄膜は、2600℃以上の温度で、黒鉛化されて、12000 S/cm以上の電気伝導性を有するグラファイトシートを形成する。
【実施例】
【0034】
ポリイミド薄膜の熱膨張係数、厚さ、剛性、および、誘導結合プラズマ発光分光分析法 (ICP-OES) のスペクトルを測定した。ポリイミド薄膜の黒鉛化後、グラファイトシートの厚さ、黒鉛化レベル、電気伝導性、および、走査電子顕微鏡像 (SEM)断面観察を測定した。測定方法は以下のようである。
【0035】
ポリイミド薄膜の熱膨張係数を、動機械的熱分析 (TA instrumentsから市販されているQ400)により測定した。30℃ から 400℃の温度範囲で、ポリイミド薄膜のサイズ変化を測定し、50℃ から 200℃ の温度範囲のポリイミド薄膜のサイズ変化を考察した。
【0036】
サンプル、たとえば、ポリイミド薄膜、または、グラファイトシートの厚さを、定期的に補正されたマイクロメーター (No. 293561N)により測定した。マイクロメーターをゼロにし、その後、サンプルをテスト位置で固定し、マイクロメーターのモニターで表示される値が、サンプルの実際の厚さである。
【0037】
ポリイミド薄膜の剛性を以下のように測定した。ポリイミド薄膜を10mm×60mmのストリップ状にカットすると共に、高さ 1.5cmのU字型に曲げた。U字型ストリップを、ゼロにした精密天秤上に固定した。ストリップの曲げ程度は、材料の剛性に関連する。ストリップの剛性を、天秤により測定して、ポリイミドの剛性を算出した。
【0038】
ポリイミド薄膜のICP-OES のスペクトルをSPECTRO ARCOS により測定して、金属錯体を含むポリイミド薄膜の金属元素を測定した。
【0039】
薄膜 X-線回折計 (Bede Scientific Instrument Ltd.から市販されているBede D1)を使用し、グラファイトシートの黒鉛化レベルを、波長 0.154056nm のCuKα X-線、角度走査 24°から 29°、および、走査速度0.02°/秒により測定した。以下の等式C0 は、測定されたデータのd002 (nm)により置換して、黒鉛化レベル (g%)を得た。C0 は、六角グラファイトの層間隔 (nm)である。C0 が理想の六角グラファイト層間隔0.3354nmに近い場合、黒鉛化レベルは高い。
【0040】
【数1】
【0041】
グラファイトシートの電気伝導性を、4点探針テスター(Laresta-EP MCP-T360)により直接測定し、グラファイトシートの熱伝導率を間接的に得た。
【0042】
グラファイトシートのSEM断面を以下のように得た。グラファイトシートを銅ペースト上に固定すると共に、導電性金属をめっきして、サンプルを完成した。サンプルを電界放出電子顕微鏡 (HITACHIから市販されているS-4200)のチャンバーに入れ、チャンバーを真空にして、サンプルの断面の微細構造を観察した。サンプルが高い黒鉛化レベルを有する場合、その断面の層ごとの微細構造は密度が高く、さらに明らかである。一方、サンプルが低黒鉛化レベルを有する場合、その断面は、ブロック構造、または、非連続構造で、その層ごとの微細構造はまばらで、あまりはっきりしない。
【0043】
実施例1−1
123gの1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI)を反応ボトルに入れた。その後、0.3 mole (5.96g)の式1のジアミンと0.7 mole (8.53g)の式2のジアミンとをDMIに加えて、十分に攪拌、および、溶解した。1.0mole (12.51g)の式3の二無水物を、室温で、ジアミン溶液に加え、反応物を6時間攪拌して、固形分18wt%のポリアミド酸溶液を得た。ポリアミド酸溶液を脱気して、適当な厚さのブレードにより、離型フィルムが塗布されたガラスキャリア上に均一にコートした。ガラスキャリア上のコーティングを熱風循環炉に入れて、80℃で30分ベイクすることで大部分の溶媒を除去して、ゲルフィルムを形成した。ゲルフィルムを離型フィルムから取り外して、二軸ストレッチャー上に置き、その後、熱風循環炉に入れてベイクした。ゲルフィルムを、加熱速度1.6℃/分で230℃まで加熱し、230℃で半時間放置することで余剰の溶媒を除去して、その後、加熱速度1℃/分で350℃まで加熱して、350℃で半時間放置することで、ポリアミド酸を脱水させて、ポリイミドを形成し、その後、室温まで冷却して、ポリイミド薄膜を得た。ポリイミド薄膜の特性が表1に示される。
【0044】
ポリイミド薄膜を、黒鉛化加熱炉内の滑らかなグラファイトペーパー同士の間隔に入れた。チャンバーを窒素によりパージして、真空にし、ポリイミド薄膜中の微量の水気を除去した。その後、チャンバーを、16.7℃/分の加熱速度で1000℃まで加熱し、1000℃で半時間放置することで、ポリイミド薄膜を炭化した。その後、チャンバーを0.8kg/cm2 のアルゴンでパージし、7℃/分の加熱速度で2800℃の黒鉛化温度まで加熱し、2800℃で1 時間放置することで、炭化された薄膜を黒鉛化し、冷却してグラファイトシートを得た。グラファイトシートの特性が表1に示される。
【0045】
実施例1−2
実施例1−2は実施例1−1と類似し、異なる点は、実施例1−2は、黒鉛化温度が2400℃であることである。グラファイトシートの特性が表1に示される。
【0046】
実施例1−3
実施例1−3は実施例1−1と類似し、異なる点は、実施例1−3は、黒鉛化温度が2200℃であることである。グラファイトシートの特性が表1に示される。
【0047】
実施例1−4
実施例1−4は実施例1−1と類似し、異なる点は、実施例1−4は、黒鉛化温度が1800℃であることである。グラファイトシートの特性が表1に示される。
【0048】
表1に示されるように、高い黒鉛化レベルと高い電気伝導性とを有するグラファイトシートが、高い黒鉛化温度により形成される。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1−1
市販のポリイミド薄膜 (Kanake NPI)を、黒鉛化加熱炉内の滑らかなグラファイトペーパー同士の間隔に入れた。チャンバーを窒素によりパージして、真空にし、ポリイミド薄膜中の微量の水気を除去した。その後、チャンバーを、10℃/分の加熱速度で500℃に加熱し、500℃で半時間放置し、さらに6℃/分の加熱速度で1200℃に加熱し、1200℃で半時間放置して、ポリイミド薄膜を炭化した。その後、チャンバーを0.8kg/cm2 のアルゴンでパージし、8℃/分の加熱速度で2800℃の黒鉛化温度まで加熱し、2800℃で 2時間放置することで、炭化された薄膜を黒鉛化し、冷却して、グラファイトシートを得た。グラファイトシートの特性が表2に示される。
【0051】
比較例1−2
比較例1−2は比較例1−1に類似し、異なる点は、比較例1−2は、黒鉛化温度が2400℃であることである。グラファイトシートの特性は表2に示され、グラファイトシートのSEM (x50,000)が図3に示される。グラファイトシートの断面が、ブロック構造から積層微細構造に転移される。積層微細構造は全く密ではなく、まだ、部分的に非連続のブロック構造がある。
【0052】
比較例1−3
比較例1−3は比較例1−1に類似し、異なる点は、比較例1−3は、黒鉛化温度が2200℃であることである。グラファイトシートの特性が表2に示される。
【0053】
比較例1−4
比較例1−4は比較例1−1に類似し、異なる点は、比較例1−4は、黒鉛化温度が1800℃であることである。グラファイトシートの特性が表2に示され、グラファイトシートのSEM (x50,000)が図1に示される。グラファイトシートの断面は、ブロック、および、非連続構造である。
【0054】
表1と表2との間の比較からわかるように、実施例1−1から1−4のポリイミド薄膜は、比較例1−1から1−4の市販のポリイミド薄膜より、低係数の熱膨張、高い剛性、高い均一性の分子配列を有する。実施例1−1から1−4のグラファイトシートは、同じ黒鉛化温度下で、比較例1−1から1−4のグラファイトシートと比較して、高い黒鉛化レベルと電気伝導性とを有する。しかし、実施例1−1から1−4のグラファイトシートの電気伝導性は、2600℃より低い黒鉛化温度下で、明らかに減少する。
【0055】
【表2】
【0056】
比較例2−1
123g の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI)を反応ボトルに入れた。1 mole (13.32g)の式2のジアミンをDMIに加え、十分に攪拌、および、溶解した。1.0mole (13.68g)の式3の二無水物を、室温で、ジアミン溶液に加え、反応物を6時間攪拌して、固形分18wt%のポリアミド酸溶液を得た。ポリアミド酸溶液を脱気して、適当な厚さのブレードにより、離型フィルムが塗布されたガラスキャリア上に均一にコートした。ガラスキャリア上のコーティングを熱風循環炉に入れて、80℃ で30分ベイクし、大部分の溶媒を除去して、ゲルフィルムを形成した。ゲルフィルムを離型フィルムから取り外し、二軸ストレッチャーにおいて、熱風循環炉に入れてベイクした。ゲルフィルムを、1.6℃/分の加熱速度で230℃まで加熱し、230℃で半時間放置することで余剰の溶媒を除去して、その後、1℃/分の加熱速度で350℃まで加熱し、350℃で半時間放置することで、ポリアミド酸を脱水させて、ポリイミドを形成したが、壊れて、膜が形成できなかった。
【0057】
実施例2−1
123g の 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI)を反応ボトルに入れ、0.005 mole のジルコニウム錯体 (式22を参照。M は Zr, R1 はCH3, R2 は CF3, および n=4)をDMIに溶解させた。続いて、0.3 mole (5.92g)の式1のジアミンと0.7 mole (8.46g)の式2のジアミンとを、ジルコニウム錯体溶液に加え、十分に攪拌、および、溶解した。1.0mole (12.42g)の式3の二無水物を、室温で、ジアミン溶液に加え、反応物を6時間攪拌して、固形分18wt%のポリアミド酸溶液を得た。ポリアミド酸溶液を脱気して、適当な厚さのブレードにより、離型フィルムが塗布されたガラスキャリア上に均一にコートした。ガラスキャリア上のコーティングを熱風循環炉に入れて、80℃で30分をベイクし、大部分の溶媒を除去して、ゲルフィルムを形成した。ゲルフィルムを離型フィルムから取り外し、二軸ストレッチャーに置き、熱風循環炉に入れてベイクした。ゲルフィルムを、加熱速度1.6℃/分で230℃ まで加熱し、230℃で半時間放置することで余剰の溶媒を除去して、その後、加熱速度1℃/分で350℃まで加熱し、350℃で半時間放置することで、ポリアミド酸を脱水させて、ポリイミドを形成し、その後、室温まで冷却して、ポリイミド薄膜を得た。ポリイミド薄膜の特性は表3に示される。ポリイミド薄膜はICP-OESにより測定し、0.070wt% のZr 元素が検出された。
【0058】
ポリイミド薄膜を、黒鉛化加熱炉内の滑らかなグラファイトペーパー同士の間隔に入れた。チャンバーを窒素によりパージして、真空にし、ポリイミド薄膜中の微量の水気を除去した。その後、チャンバーを、加熱速度10℃/分で500℃まで加熱し、500℃ で半時間放置し、その後、加熱速度6℃/分で1200℃まで加熱し、1200℃で半時間放置後することで、ポリイミド薄膜を炭化した。チャンバーを0.8kg/cm2 のアルゴンでパージし、加熱速度8℃/分で黒鉛化温度2800℃まで加熱し、2800℃で2時間放置することで、炭化された薄膜を黒鉛化し、冷却して、グラファイトシートを得た。グラファイトシートの特性が表3に示される。
【0059】
実施例2−2
実施例2−2は実施例2−1に類似し、異なる点は、実施例2−2では、ジルコニウム錯体を、0.005 mole (0.1g)のニッケル錯体 (式22を参照。MはNi, R1 はCH3, R2 は CF3,および n=4)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例2−1と類似する。グラファイトシートの特性は表3に示される。
【0060】
実施例2−3
実施例2−3は実施例2−1に類似し、異なる点は、実施例2−3では、ジルコニウム錯体を、0.005 mole (0.07g)のチタン錯体 (式22を参照。Mは TiO, R1はCH3, R2は CH3, および n=2)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例2−1と類似する。グラファイトシートの特性は表3に示される。
【0061】
実施例2−4
実施例2−4は実施例2−1に類似し、異なる点は、実施例2−4では、ジルコニウム錯体を 0.005 mole (0.15g)の鉄錯体 (式22を参照。Mは Fe, R1 はCH3, R2はCF3,およびn=3)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例2−1と類似する。グラファイトシートの特性は表3に示される。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例3−1
実施例3−1は実施例2−1に類似し、異なる点は、実施例3−1では、黒鉛化温度が2400℃であることである。グラファイトシートの特性は表4に示され、グラファイトシートのSEM (x50,000)は図4に示される。グラファイトシートの断面は図3でさらに明らかである。図3図4との比較からわかるように、金属錯体は、確かに、黒鉛化を触媒する。
【0064】
実施例3−2
実施例3−2は実施例3−1に類似し、異なる点は、実施例3−2では、ジルコニウム錯体を、0.005 mole (0.1g)のニッケル錯体(式22を参照。MはNi, R1 はCH3, R2はCF3, およびn=4)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例3−1と類似する。グラファイトシートの特性は表4に示される。
【0065】
実施例3−3
実施例3−3は実施例3−1に類似し、異なる点は、実施例3−3では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.07g)のチタン錯体 (式22を参照。MはTiO, R1はCH3, R2 はCH3,およびn=2)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例3−1と類似する。グラファイトシートの特性は表4に示される。
【0066】
実施例3−4
実施例3−4は実施例3−1に類似し、異なる点は、実施例3−4では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.15g) の鉄錯体 (式22を参照。M は Fe, R1 は CH3, R2は CF3, および n=3)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例3−1と類似する。グラファイトシートの特性は表4に示される。
【0067】
【表4】
【0068】
実施例4−1
実施例4−1は実施例2−1に類似し、異なる点は、実施例4−1では、黒鉛化温度は2200℃である。グラファイトシートの特性は、表5に示される。
【0069】
実施例4−2
実施例4−2は実施例4−1に類似し、異なる点は、実施例4−2では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.1g)のニッケル錯体 (式22を参照。M は Ni, R1 は CH3, R2 は CF3, および n=4)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例4−1と類似する。グラファイトシートの特性は、表5に示される。
【0070】
実施例4−3
実施例4−3は実施例4−1に類似し、異なる点は、実施例4−3では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.07g)のチタン錯体 (式22を参照。M は TiO, R1 は CH3, R2 は CH3, および n=2)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例4−1と類似する。グラファイトシートの特性は、表5に示される。
【0071】
実施例4−4
実施例4−4は実施例4−1に類似し、異なる点は、実施例4−4では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.15g)の鉄錯体(式22を参照。M は Fe, R1 は CH3, R2 は CF3, および n=3)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例4−1と類似する。グラファイトシートの特性は、表5に示される。
【0072】
【表5】
【0073】
実施例5−1
実施例5−1は実施例2−1に類似し、異なる点は、実施例5−1では、黒鉛化温度は1800℃である。グラファイトシートの特性は表6に示され、グラファイトシートのSEM (x50,000)は図2に示される。グラファイトシートの断面は、積層微細構造を有する。図1図2との間の比較からわかるように、金属錯体は、確かに、黒鉛化を触媒する。
【0074】
実施例5−2
実施例5−2は実施例5−1に類似し、異なる点は、実施例5−2では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.1g)のニッケル錯体(式22を参照。M は Ni, R1 は CH3, R2 は CF3, および n=4)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例5−1と類似する。グラファイトシートの特性は表6に示される。
【0075】
実施例5−3
実施例5−3は実施例5−1に類似し、異なる点は、実施例5−3では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.07g)のチタン錯体 (式22を参照。M は TiO, R1 は CH3, R2 は CH3, および n=2)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例5−1と類似する。グラファイトシートの特性は表6に示される。
【0076】
実施例5−4
実施例5−4は実施例5−1に類似し、異なる点は、実施例5−4では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.15g)の鉄錯体(式22を参照。M は Fe, R1 は CH3, R2 は CF3, および n=3)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例5−1と類似する。グラファイトシートの特性は表6に示される。
【0077】
【表6】
【0078】
表3および表6に示されるように、式22の金属錯体は、明らかに、黒鉛化温度を低下させる。特に、黒鉛化温度が2600℃より低い時、表4中の2400℃で黒鉛化されるグラファイトシート電気伝導性は、表1および表2中の2400℃で黒鉛化されるグラファイトシート (金属錯体なし)の電気伝導性より明らかに高い。
【0079】
実施例6−1
実施例6−1は実施例2−1に類似し、異なるのは、実施例6−1では、ポリイミド薄膜厚さは50μmに増加し、ジルコニウム錯体用量は 0.005mole (0.2g)、および、黒鉛化温度は2400℃であることである。グラファイトシートの特性は表7に示される。
【0080】
実施例6−2
実施例6−2は実施例6−1に類似し、異なる点は、実施例6−2では、ジルコニウム錯体を0.007 mole (0.15g)のニッケル錯体(式22を参照。M は Ni, R1 は CH3, R2 は CF3, および n=4)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例6−1と類似する。グラファイトシートの特性は表7に示される。
【0081】
実施例6−3
実施例6−3は実施例6−1に類似し、異なる点は、実施例6−3では、ジルコニウム錯体を0.01 mole (0.15g)のチタン錯体に置換したことである(式22を参照。M は TiO, R1 は CH3, R2 は CH3,および n=2)。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例6−1と類似する。グラファイトシートの特性は表7に示される。
【0082】
実施例6−4
実施例6−4は実施例6−1に類似し、異なる点は、実施例6−4では、ジルコニウム錯体を0.005 mole (0.15g)の鉄錯体 (式22を参照。M は Fe, R1 は CH3, R2 は CF3, および n=3)に置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例6−1と類似する。グラファイトシートの特性は表7に示される。
【0083】
【表7】
【0084】
実施例7−1
実施例7−1は実施例2−1に類似し、異なるのは、実施例7−1では、ポリイミド薄膜厚さが75μmに増加し、ジルコニウム錯体用量は 0.02mole (0.78g)、および、黒鉛化温度は 2400℃であることである。グラファイトシートの特性は表8に示される。
【0085】
実施例7−2
実施例7−2は実施例7−1に類似し、異なる点は、実施例7−2では、ポリイミド薄膜厚さが125μmに増加し、ジルコニウム錯体用量は0.026mole (1.01g)であることである。グラファイトシートの特性は表8に示される。
【0086】
【表8】
【0087】
上述の実施例と比較例に示されるように、ポリイミド薄膜中の金属錯体は、黒鉛化温度を低下させ、グラファイトシートの電気伝導性を増加する。
【0088】
実施例8−1
実施例8−1は実施例1−1に類似し、異なるのは、実施例8−1では、ジアミンを0.6 mole (11.01g)の式1のジアミン、0.3 mole (3.37g)の式2のジアミン、および、 0.1 mole (1.06g)の式10のジアミンに置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例1−1と類似する。グラファイトシートの特性は表9に示される。
【0089】
実施例8−2
実施例8−2は実施例1−1に類似し、異なるのは、実施例8−2は、ジアミンを、0.1 mole (2.09g)の式1のジアミン、0.6 mole (7.69g)の式2のジアミン、および、0.3 mole (4.06g)の式13のジアミンに置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例1−1と類似する。グラファイトシートの特性は表9に示される。
【0090】
実施例8−3
実施例8−3は実施例1−1に類似し、 異なるのは、実施例8−3では、ジアミンを、0.1 mole (2.27g)の式1のジアミン、0.6 mole (8.34g)の式2のジアミン、および、0.3 mole (2.12g)の式21のジアミンに置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例1−1と類似する。グラファイトシートの特性は表9に示される。
【0091】
実施例8−4
実施例8−4は実施例1−1に類似し、異なるのは、実施例8−4 では、ジアミンを、0.1 mole (2.39g)の式1のジアミン、0.3 mole 4.4g) の式2のジアミン、0.5 mole (3.74g)の式21のジアミン、および、0.1 mole (1.38g)の式10のジアミンに置換したことである。ポリイミド薄膜の製造方法および黒鉛化方法は実施例1−1と類似する。グラファイトシートの特性は表9に示される。
【0092】
【表9】
【0093】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
図1
図2
図3
図4