【解決手段】横スライダ109aに取り付けた保持マグネット161a〜161cが、キー・マグネット171aを取り付けたキー105a〜105cをレディ・ポジションに位置付ける。レディ・ポジションにおける保持マグネットとキー・マグネットの相対位置は、横スライダの位置を変えることで変更することができる。吸引力は
(C)が最小になる。レディ・ポジションの吸引力は押下したキーが沈下するときの反力の降伏点を決めるため、横スライダをユーザが変更することでタクタイルをカスタマイズすることができる。
前記タクタイル調整部は、前記キー・マグネットに対する相対位置を変更するために前記保持マグネットを水平方向に移動させる横スライダを含む請求項1または請求項2に記載の入力装置。
前記タクタイル調整部は、前記横スライダに係合するガイド開口を含む縦スライダと、該縦スライダをシフトさせるラック&ピニオン機構を含んで構成された保持マグネット・スライド機構を含む請求項3に記載の入力装置。
前記第1のキー群のキー・マグネットと前記第2のキー群のキー・マグネットは、前記保持マグネットと相互に異なる吸着面積で吸着している請求項6に記載の入力装置。
前記第2のキー群の前記保持マグネットと前記キー・マグネットの吸着面積が、前記第1のキー群の前記保持マグネットと前記キー・マグネットの吸着面積の90%〜93%である請求項6または請求項7に記載の入力装置。
前記保持マグネットの前記キー・マグネットに対する相対位置をシフトさせることが可能な保持マグネット・スライド機構を有する請求項6から請求項9のいずれかに記載の入力装置。
前記保持マグネット・スライド機構が前記第1のグループのキー・マグネットに対応する第1の保持マグネットと前記第2のグループのキー・マグネットに対応する第2の保持マグネットとを取り付けたスライダを含み、シフト方向において前記第1の保持マグネットは前記第2の保持マグネットより長い請求項10に記載の入力装置。
前記タクタイル調整部が、前記保持マグネットと前記キー・マグネットの相対位置を変更する保持マグネット・スライド機構を含む請求項12に記載の携帯式コンピュータ。
前記シフトするステップが、前記基準吸引力より大きい吸引力の位置まで前記保持マグネットをシフトするステップと、前記基準吸引力より小さい吸引力の位置まで前記保持マグネットをシフトするステップを有する請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[キーボードの構造]
図1は、斜めにスライドするマグネット式のキーボード(以下、キーボード)100の概略を説明する図である。
図1(A)は全体の平面図で、
図1(B)、(C)はキー105bの近辺の平面図で、
図1(D)、(E)は
図1(A)の矢印A方向から見たキー105bの近辺の側面図である。
図1(A)には、キー・カバー101とキー105bを含むキー群105を示している。キー・カバー101には、
図1(B)、(C)に代表的に示すように各キーが配置される位置にカバー開口101bが形成されている。
【0016】
図1(B)、(D)はキー105aが指で押下される前の状態を示し、
図1(C)、(E)はキー105aが指で押下された状態を示す。ここで、
図1(A)、(D)に示すようにキーボード100に対して3次元の直行座標を定義する。直交座標はキー・カバー101の平面上で長手方向にx軸を設定し短手方向にy軸を設定し、キー・カバー101の平面に垂直な方向にz軸を定義する。また、机上に置かれたキーボード100を操作するときのz軸方向の指の位置を上といい、机の位置を下ということにする。さらにキーボード100を操作するときのy軸方向の掌の位置を手前といいその反対の位置を奥ということにする。さらに
図1(A)においてx軸方向に左と右を定義する。
【0017】
z軸方向におけるキー105bの頂部平面(キー・トップ)の位置に関して、キーを押下する前の位置をレディ・ポジションといい、押下したキーが最も下に沈下した状態の位置を押下ポジションということにする。
図1(B)、(C)の平面図において、カバー開口101bのサイズはy軸方向においてキー105bより大きい。レディ・ポジションでは
図1(B)に示すように、カバー開口101bの手前側の縁とキー105bの手前側の縁との間に長さy1の移動空間が形成され、
図1(D)に示すようにキー105bのキー・トップがキー・カバー101の平面に対して高さz1だけ突き出ている。一例としてz1は0.9ミリメートルである。
【0018】
高さz1は、キー群105を操作する際に指が対応するカバー開口の縁に触れないようにするために設けている。後に構造を説明するように各キーは押下されたときにこの移動空間を利用してz軸方向とy軸方向に同時に沈下する。押下ポジションでは
図1(C)に示すように、カバー開口101bの奥側の縁とキー105bの奥側の縁との間に長さy1の移動空間が形成され、
図1(D)に示すようにキー・トップはキー・カバー101の平面とほぼ同じ平面上に位置付けられる。なお、
図1(B)、(C)に示した移動空間を形成するカバー開口の縁とキーの縁との位置関係は一例で、たとえば、レディ・ポジションで手前側に移動空間を形成し、押下ポジションで奥側に移動空間を形成するようにしてもよい。また、移動空間をx軸方向に形成するようにしてもよい。
【0019】
図2は、キーボード100の概略の構成を説明するための分解斜視図である。キー・カバー101の下には順番に1対のスライダ・ガイド103a、103b、キー群105、1対の縦スライダ107a、107bおよび横スライダ群109、113、フレーム115、ベース117、およびセンサ・シート119を示している。さらに、縦スライダ107a、107bの位置を調整するための1対の位置調整機構131a、131b、縦スライダ107a、107bに奥側に向かうバイアス力を加えるためのスプリングを含む1対のバイアス機構133a、133bを示している。
【0020】
キー・カバー101は、キー群105の各キーが配置される位置にカバー開口が形成されており、その他の部分では表面が平坦に形成されている。スライダ・ガイド103a、103bは、主として縦スライダ107a、107bのy軸方向における移動経路を画定する。縦スライダ107a、107bは、レディ・ポジションのときに、位置調整機構131a、131bとバイアス機構133a、133bによりy軸方向にスライドすることで、横スライダ群109、113をx軸方向にスライドさせる。一例として横スライダ群109は5本の横スライダを含み、横スライダ群113は6本の横スライダを含む。横スライダ群109、113は、縦スライダ107a、107bのスライドに伴ってキー群105のレディ・ポジションを維持しながらx軸方向にスライドする。
【0021】
後に詳しく説明するように位置調整機構131a、131b、バイアス機構133a、133b、縦スライダ107、111、および横スライダ群109、113は協働して、キー群105のすべてのキーまたは一部のキーのタクタイルを変更する。フレーム115は、主として横スライダ群109、113の移動経路を画定するとともに各キーに対して後に説明するトラベリング機構を提供する。ベース117は、キーボード100の強度を確保する。センサ・シート119は、各キーの押下ポジションでクローズになり、レディ・ポジションでオープンになるようなスイッチ機能を提供する。
【0022】
センサ・シート119は、キーの機械的な圧力を検出するメンブレン・スイッチ、電極の接近を検出する静電容量スイッチ、または、キーに取り付けられたキー・マグネットの磁気を検出する磁気センサなどで構成することができる。強度が必要な縦スライダ107、111およびベース117はアルミニウムなどの軽金属で形成し、その他の要素はプラスチック材料で形成することができる。
【0023】
図3は、キーボード100のタクタイルを変更する構造を説明する図である。キー群105はx軸方向に複数の行を形成するようにほぼ整列して配置されており、行の間には横スライダ群109、113を構成する横スライダ109a〜109e、113a〜113fのいずれかが配置される。縦スライダ107a、107bにはそれぞれガイド開口153a〜153e、157a〜157fが形成されている。
【0024】
バイアス機構133a、133bは、それぞれ縦スライダ107a、107bに奥側に向かう矢印B方向(y軸方向)の弾力的なバイアス力を付与するスプリングを含んでいる。位置調整機構131a、131bは、それぞれピニオン135a、135bとラック137a、137bで構成されたラック&ピニオン機構で構成されている。ピニオン135a、135bには、ユーザがスクリュー・ドライバなどの工具で回転させるためのネジ溝が形成されている。ラック137a、137bは一端にピニオン135a、135bの歯車に係合する歯が形成され、他端に縦スライダ107a、107bの端部に係合する傾斜が形成されている。
【0025】
縦スライダ107a、107bが矢印B方向に弾力的にバイアスされているため、ピニオン135a、135bを回転させてラック137a、137bを矢印A方向(x軸方向)にスライドさせると、縦スライダ107a、107bがバイアス力で矢印B方向にスライドする。バイアス力に抗してピニオン135a、135bを回転させてラック137a、137bを反対方向にスライドさせると縦スライダ107a、107bは手前方向にスライドする。
【0026】
横スライダ109a〜109eは縦スライダ107の奥側方向へのスライドに伴ってガイド開口153a〜153eでガイドされて矢印C方向にスライドし、横スライダ113a〜113fは縦スライダ111の奥側方向へのスライドに伴ってガイド開口157a〜157fでガイドされて矢印C方向にスライドする。縦スライダ107a、107bを手前方向にスライドさせると、それに応じて横スライダ109a〜109e、113a〜113fは反対方向にスライドする。
【0027】
図4は、横スライダ群109の一部を構成する横スライダ109aの構造を説明する図である。他の横スライダの構造も
図4から理解することができる。
図4(A)は平面図で、
図4(B)は手前側からみた側面図である。横スライダ109aの上面には、x軸方向に配置された各キー105a〜105hの位置に対応して同一形状の保持マグネット161a〜161hが取り付けられている。横スライダ109aの下面の端部には縦スライダ107aのガイド開口153aと係合するスライド・ピン167が形成されている。
【0028】
さらに横スライダ109aの下面には、フレーム115に形成されたガイド開口211(
図6参照)などに係合するガイド・ピン165a〜165hが形成されている。ガイド・ピン165a〜165hは、ガイド開口211などと係合して、横スライダ109aのx軸方向への移動を許容するとともにy軸方向への移動を抑制する。
図3に戻って、ガイド開口153a〜153eには、横スライダ109a〜109eのスライド・ピンが係合し、ガイド開口157a〜157fには、横スライダ113a〜113fのスライド・ピンが係合する。
【0029】
ガイド開口153a、157aは一例として、スライド・ピンをガイドする方向のベクトル成分に関して、x成分とy成分の2つの成分を含む領域で構成されている。その他のガイド開口153b〜153e、157b〜157fは、x成分とy成分の2つの成分を含む領域と、y成分だけを含む領域で構成されている。縦スライダ107a、107bをそれぞれy軸に沿って奥側にスライドさせると、横スライダ109a〜109eは各スライド・ピンが係合するガイド開口153a〜153eのx成分によって左方向にスライドし、横スライダ113a〜113fはスライド・ピンが係合するガイド開口157a〜157fのx成分によって右方向にスライドする。
【0030】
ここで一旦キーの構造を説明する。
図5はキー群105の一部を構成するキー105bの構造を説明する図である。他のキーの構造も
図5から理解することができる。
図5(A)は手前側斜め上方からみた斜視図で、
図5(B)は奥側斜め上方からみた斜視図である。キー105bには、レディ・ポジションで保持マグネット161bに対向する位置にキー・マグネット171bが埋め込まれている。
【0031】
キー・マグネット171bは、キー群105を構成する他のすべてのキーに取り付けることができる。保持マグネット161bとキー・マグネット171bは、吸着面の極性が異なるように配置されおり接近すると両者間に吸引力が発生する。キー・マグネット171bは一例として、レディ・ポジションで保持マグネット161bに吸着するように、キー105aの側面174aから吸着面が露出した位置に取り付けられている。
【0032】
側面174bには傾斜突起173a、173bが形成され、側面174dには傾斜突起173c、173dが形成されている。傾斜突起173a〜173dは、後に説明するようにフレーム115に形成されたランプ構造と協働してトラベリング機構を提供する。
図4に戻って、横スライダ109a〜109eの平面に取り付けられた保持マグネットは一例では、それぞれレディ・ポジションで対応するキーのキー・マグネットに吸着する。マグネットは吸着しているときに最も吸引力が強い。縦スライダ107aを奥側にスライドさせるときには、横スライダ109a〜109eに取り付けられたすべての保持マグネットとキー・マグネットの吸引力の合計より大きな力が必要なる。
【0033】
図3でガイド開口153b〜153eのy成分だけを含む領域にいずれかのスライド・ピンが係合している間は、縦スライダ107aをy軸方向にスライドさせても当該横スライダの反力が加わらない。各ガイド開口153b〜153eのベクトル成分を調整することで、縦スライダ107aをシフトさせるときに各横スライダ109a〜109eが縦スライダ107aに与える反力の最大値が生ずるタイミングが同期しないようにして縦スライダ107aに加える力を軽減することができる。
【0034】
ガイド開口153a〜153eの形状は、横スライダ109a〜109eがスライドするときに縦スライダ107aに加わる力が分散するように、さまざまな曲線で形成することができる。
図3では、縦スライダ107aを奥側にスライドさせるに従って、横スライダ109aから109eまでの反力が順番に加わるようにしている。縦スライダ107bのガイド開口157a〜157fと横スライダ群113も同様の関係になるように構成されている。
【0035】
図6は、フレーム115の構造を説明する図で、
図7はランプ構造225、227を説明する斜視図である。
図6は、キー105bを保持する部分だけを拡大して示しているが、他のキーを保持する部分も同様の構造である。また
図7以外の他のランプ構造も同様に構成されている。キー105bが配置される領域は、側壁201〜207で囲まれている。側壁203、207には、キー・カバー101を支持する役割もある。キー105bが配置される領域の底部には、ベース117が露出している。ベース117の一部には開口が形成されてセンサ・シート119が露出している。ベース117には、押下されたキー105bに対するクッションの役割を果たす薄い弾力部材209が取り付けられている。
【0036】
側壁201、205には、横スライダ109a、109bのガイド・ピンが挿入されるガイド開口211、213が形成され、その上面に横スライダ109a、109bが配置される。側壁203、207には、ランプ構造221〜227が形成されている。キー105bがフレーム115に納められたときに、ランプ構造221〜227とキー105aの傾斜突起173a〜173dがそれぞれ係合して、押下されたキー105bを下側と手前側に同時に移動させるトラベリング機構を提供する。
【0037】
図7に示すようにランプ構造225、227は下向きにかつ手前側に下降するように傾斜する床側の傾斜面225a、227aとそれに対向する天井側の傾斜面225b、227b(
図8参照)を備えている。
図8は、ランプ構造225、227にキー105bの傾斜突起173c、173dが係合する様子を説明する図である。
図8(A)はレディ・ポジションを示し、
図8(B)は押下ポジションを示している。
【0038】
図8(A)に示すように、レディ・ポジションではキー105bのキー・マグネット171bと保持マグネット161bとが吸着して、キー105bは最も奥側に位置付けられている。傾斜突起173c、173dは、ランプ構造225、227の傾斜面225a、225bと傾斜面227a、227bで形成される空間領域よりも外側に位置しているが、キー105bは保持マグネット161bで拘束されているためフレーム115から離脱することはない。
【0039】
なおフレーム115または横スライダ109aに、レディ・ポジションのキー105bがマグネット同士の吸着を振り切ってキーボード100から離脱しないように機械的に拘束する構造を設けてもよい。
図8(B)に示すように、押下ポジションでは傾斜突起173c、173dがランプ構造の傾斜面225a、227aを摺動して手前方向と下方向に同時に沈下している。ランプ構造221、223を傾斜突起173a、173bが摺動する様子も同様である。押下ポジションに位置付けたキー105bから指を離すと、保持マグネット161bとキー・マグネット171bの吸引力でキー105bはレディ・ポジションに復帰する。
【0040】
図9は、スライダ・ガイド103aの構造を説明する図である。スライダ・ガイド103bの構造も
図9から理解することができる。
図9(A)は平面図で、
図9(B)は底面図である。
図9(A)には横スライダ群109も示している。スライダ・ガイド103aには底面に縦スライダ107aがy軸方向にスライドするためのガイド溝255が形成されている。
【0041】
また、スライダ・ガイド103aのx軸方向には各横スライダ109a〜109eをx軸方向に円滑に移動させるためのガイドとして機能するスリット257a〜257eが形成されている。スライダ・ガイド103aはベース117に固定され、y軸方向にスライドした縦スライダ107が横スライダ群109の反力でx軸方向に移動することを防ぐとともに、各横スライダにスライド・ピンの近辺で大きな応力がかかることを防ぐ役割を果たす。
【0042】
[キー全体のタクタイルを変更する方法]
図10は、ピニオン135a、135bを操作してキー群105のすべてのキーの保持マグネットとキー・マグネットの相対位置を変化させる様子を説明するための図である。
図10は、横スライダ109aに取り付けた保持マグネット161a〜161cと、それに対応するキー105a〜105cに取り付けたキー・マグネット171a〜171cとの関係を示しているが、他の保持マグネットとキー・マグネットの関係も同様に理解することができる。
【0043】
図10(A)〜(C)は一例として、いずれもレディ・ポジションにおいて、保持マグネット161a〜161cとキー・マグネット171a〜171cが吸着している様子を示している。一例として保持マグネット161a〜161cとキー・マグネット171a〜171cの吸着面の面積は等しくしている。吸着状態のマグネットの吸引力は吸着面積に比例するため、吸着面積を変化させることで吸引力を変化させることができる。
図10(A)は、保持マグネット161a〜161cとキー・マグネット171a〜171cが正対しており最も吸引力が大きい状態を示している。
【0044】
図10(B)は、横スライダ109aを左方向にスライドさせたため、
図10(A)の状態よりも吸着面積が小さくなって吸引力が弱い状態を示している。
図10(C)は横スライダ109aを
図10(B)の状態よりさらに左方向にスライドさせたため最も吸引力が弱い状態を示している。したがって、キーボード100は、ピニオン135a、135bをユーザが回転させて、キー群105のすべてのキーのレディ・ポジションでの吸引力を調整してタクタイルを変化させることができる。一例では、
図10(B)の吸引力を100%としたときに、
図10(A)の状態の吸引力は107%〜110%の範囲から選択し、
図10(C)の状態の吸引力は93%〜90%の範囲から選択することができる。
【0045】
タクタイルの調整方法は、たとえば、相対位置が
図10(B)の状態がタクタイルの基準吸引力となるように工場を出荷する際にピニオン135a、135bの位置を調整しておき、ユーザが使用する際に基準吸引力では弱いと感じたときは
図10(A)の状態に設定し、強いと感じたときは
図10(C)の状態に設定することができる。また、ユーザはピニオン135a、135bをそれぞれ適切に変更して左右の手に異なるタクタイルを得ることも可能である。
図10では、吸引力を3段階で調整する例を示したが、ピニオン135a、135bを任意の回転量で停止できるようにしてもよい。本実施の形態では、保持マグネットとキー・マグネットをそれぞれ同じ大きさにしながらタクタイルを変更することができるため、部品の共通化を図り製造を容易にすることができる。
【0046】
[一部のキーのタクタイルを調整する方法]
図11は、ピニオン135a、135bを操作してキー群105の一部のキーの保持マグネットとキー・マグネットの相対位置を変化させて吸引力を変更する様子を説明する図である。
図11は、横スライダ109aに取り付けた保持マグネット161a〜161fと、それに対応するキー105a〜105fに取り付けたキー・マグネット171a〜171fとの関係を示しているが、他の保持マグネットとキー・マグネットの関係も同様に理解することができる。
【0047】
一例ではキー105a、105bは小指で操作するキーで、キー105c〜105fは、その他の指で操作するキーに対応する。キー・マグネット171a〜171fは相互に同じ形状で、保持マグネット161aと1691bは相互に同じ形状で、保持マグネット161c〜161fは相互に同じ形状である。しかし、保持マグネット161c〜161fは、保持マグネット161a、161bに比べてx軸方向の長さが長くなっている。
図11(A)、(B)はいずれもレディ・ポジションを示している。吸着している状態の保持マグネットとキー・マグネットの吸引力はその吸着面積で決まるため、
図11(A)では保持マグネット161a〜161fとキー・マグネット171a〜171fのそれぞれの吸引力は等しい。
【0048】
図11(B)は、横スライダ109aを左方向にスライドさせた状態を示している。
図11(B)では、保持マグネット161a、161bとキー・マグネット171a、171bの吸引力は相互に等しく、保持マグネット161c〜161fとキー・マグネット171c〜171fの吸引力は相互に等しくかつ
図11(A)の状態にも等しい。
【0049】
しかし、保持マグネット161a、161bとキー・マグネット171a、171bのそれぞれの吸引力は相対位置の変化により吸着面積が小さくなるため、保持マグネット161c〜161fとキー・マグネット171c〜171fのそれぞれの吸引力よりは弱くなる。したがって、ピニオン135aを回転させて横スライダ109aを左方向にスライドさせると、小指以外の指で操作するキー105c〜105fのタクタイルを変更しないで小指で操作するキー105a、105bのタクタイルだけを弱くすることができる。
【0050】
本実施の形態では、キー群105の中から選択した一部の特定のキー群のタクタイルを変更するために保持マグネットとキー・マグネットの相対位置を変化させたが、保持マグネットとキー・マグネットの形状を変えてタクタイルを調整するようにしてもよい。本発明では、特定のキー群のタクタイルを強くすることもできる。なお、特定のキー群のタクタイルだけを変更するには、タクタイルを変更するキー群に対応する保持マグネットだけをスライドさせるようにし、他の保持マグネットは固定するようにしてもよい。
【0051】
[その他のタクタイルの変更方法]
これまで、タクタイルを変更するために保持マグネットの位置をシフトする例を説明したが、相対位置はキー・マグネットの位置をシフトして変更してもよい。
図10、11では、レディ・ポジションで保持マグネットとキー・マグネットが相対位置の変更の前後で吸着している例を示したが、吸引力を弱くする相対位置では、保持マグネットまたはキー・マグネットをy軸方向にシフトさせて吸着面がわずかに離れるようにしてもよい。
【0052】
図12は、レディ・ポジションで保持マグネットに対するキー・マグネットの相対位置を手前方向にシフトさせた例を示している。横スライダ109aには保持マグネット353a、353bを取り付け、キー105a、105bにはキー・マグネット355a、355bを取り付けている。保持マグネット353bと、キー・マグネット355bは吸着しているが、保持マグネット353aとキー・マグネット355aは吸着面がわずかに離れている。
【0053】
これまで、吸着面の極性が異なる保持マグネットとキー・マグネットを例にして説明してきたが、
図13は、吸着面が異なる極性のマグネットを2個並べた保持マグネット303とキー・マグネット305の例を示している。保持マグネット303は、サブ・マグネット303a、303bで構成され、キー・マグネット305はサブ・マグネット305a、305bで構成されている。
【0054】
図13(A)では、吸着面の極性が異なるサブ・マグネット303a、303bとサブ・マグネット305b、305aが吸着している様子を示している。
図13(B)は、横スライダ109aを左方向にスライドさせてサブ・マグネット303bとサブ・マグネット305bに反発力を発生させて、全体の吸引力を弱めた様子を示している。
【0055】
図14はキーボード100をノートPC501に適用する例を説明する図である。ディスプレイ505を収納するディスプレイ筐体503と表面にキーボード100を実装するシステム筐体507が、ヒンジ515a、515bで開閉できるように結合されている。システム筐体507の表面には、化粧パッド521a、521bが埋め込まれている。
【0056】
化粧パッド521a、521bを開けると、ピニオン135a、135bが露出する。ユーザは、化粧パッド521a、521bを市販のスクリュー・ドライバで開けてからピニオン135a、135bを回転させて好みのタクタイルに変更することができる。ユーザは、ディスプレイ筐体503を開放したりキーボード100を取り外したりする必要がないため、簡単にタクタイルを変更することができる。
【0057】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。