【解決手段】ベースにより支持され、ウェーハWを保持して搬送する搬送アーム22と、搬送アーム22と同一のベースに設けられた支柱と、前記支柱を介して搬送アーム22と相対し得る位置に配置され、ウェーハWを覆うことのできるカバー3と、カバー3より周辺雰囲気とは異なる性質を有するガスを供給するガス供給手段とを備えており、搬送アーム22によりウェーハWを搬送させるに際し、前記ガス供給手段より前記ガスを供給することでウェーハW表面の雰囲気を前記ガスによって置換し得るように構成した。
前記カバーが、基板に相対し得る本体部と当該本体部の縁部に設けられた壁部とを備えており、前記カバー接離手段によって前記カバーを基板に近接させた際に前記本体部と壁部との間で形成される内部空間に基板を収容させ得るように構成したことを特徴とする請求項2記載の基板搬送装置。
前記カバーを基板に近接させた際に、前記カバーの壁部の開放端が近接又は当接することで協働して前記内部空間を略閉止するカバー受け部材を前記ベースに設けたことを特徴とする請求項3記載の基板搬送装置。
前記搬送アームとの間で基板を受け渡す受け渡し位置が前記ガイドレールを挟む両側に設定されており、前記カバーが前記ガイドレールと直交する方向に延在するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の基板搬送装置。
前記ガス供給手段が、外部よりガスを導入するためのガス導入口と、当該ガス導入口より前記カバーの下方にガスを拡散させる拡散手段を備えていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の基板搬送装置。
前記基板がウェーハであり、請求項1〜9の何れかに記載の基板搬送装置と、これを覆う筐体とを備え、当該筐体の壁面に隣接して基板を受け渡すための受け渡し位置を設定したことを特徴とするEFEM。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
<第1実施形態>
第1実施形態の基板搬送装置は、
図1で示すようにウェーハ搬送装置2として構成されており、基板としてのウェーハWを搬送するものとなっている。そして、これを囲む筐体51によって略閉止されたウェーハ搬送室5が構成され、その一方の壁面51aに隣接して複数(図中では4つ)のロードポート61〜61が設けられており、これらと上記ウェーハ搬送装置2によってEFEMを構成している。なお、図中ではロードポート61上にFOUP62が載置された状態を模式的に示している。各ロードポート61は扉61aを備えており、この扉61aがFOUP62に設けられた蓋部62aと連結してともに移動することで、FOUP62がウェーハ搬送室5に対して開放されるようになっている。FOUP62内には、対をなして1枚のウェーハWを支持する載置部62b,62bが上下方向に多数設けられており、これらを用いることで多数のウェーハWを格納することができる。また、FOUP62内には通常窒素ガスが充填されるとともに、ロードポート61を介してFOUP62内の雰囲気を窒素置換することも可能となっている。
【0027】
また、EFEMを構成するウェーハ搬送室5には、ロードポート61と対向する壁面51bに隣接して処理装置PEの一部を構成するロードロック室81が接続できるようになっており、ロードロック室81の扉81aを開放することで、ウェーハ搬送室5とロードロック室81とを連通した状態とすることが可能となっている。処理装置PEとしては種々のものを使用でき、一般には、ロードロック室81と隣接して搬送室82が設けられ、さらに搬送室82と隣接して複数(図中では3つ)の処理ユニット83が設けられる構成となっている。搬送室82と、ロードロック室81や処理ユニット83〜83との間には、それぞれ扉82a,83a〜83aが設けられており、これを開放することで各々の間を連通させることができ、搬送室82内に設けられた搬送ロボット82bを用いてロードロック室81及び処理ユニット83〜83の間でウェーハWを移動させることが可能となっている。
【0028】
図2、
図3は、本実施形態におけるウェーハ搬送装置2を拡大して示した模式図であり、
図2(a)は各部を基準位置に設定した際の平面図、
図2(b)はその状態における正面図である。また、
図3(a)は、後述する搬送アーム22をFOUP62内に進入させるべく伸長させた状態を示す平面図、
図3(b)はその状態における正面図である。以下、
図2及び
図3を用いて、ウェーハ搬送装置2の構成について説明する。
【0029】
ウェーハ搬送装置2は、壁面51a,51b(
図1参照)と平行になるようにウェーハ搬送室5の底面に直線状に配置されたガイドレール24と、ガイドレール24上に支持され、このガイドレール24に沿って移動可能とされたベース21と、ベース21上で支持された搬送アーム22と、カバー支持手段4によって搬送アーム22の上方で支持されるカバー3とを備えている。
【0030】
搬送アーム22は、一般的に知られている種々の構造とすることができ、例えば、SCARA型の水平多関節ロボットや、リンク式のアームロボットなどを好適に使用することができる。この実施形態では、搬送アーム22を複数のアーム要素22a〜22cより構成し、これらを相対移動させることで、アーム要素22全体を伸長させることができるように構成している。末端のアーム要素22cの先にはU字形に形成された板状のエンドエフェクタ23が設けられており、その上部にウェーハWを載置することが可能となっている。また、搬送アーム22はベース21に対して、水平旋回することが可能となっており、エンドエフェクタ23を壁面51a,51bのいずれの方向に向けることも可能となっている。
【0031】
上記のように構成することで、ウェーハ搬送装置2は、搬送アーム22を構成するエンドエフェクタ23上に載置したウェーハWを、壁面51a,51bに平行な方向と、直交する方向の2軸に移動させることが可能となっている。さらに、ベース21は昇降動作も可能となっており、この動作を組み合わせることで、エンドエフェクタ23によりウェーハWを持ち上げることも、エンドエフェクタ23上のウェーハWを所定の受け渡し位置に移載させることも可能となっている。すなわち、本実施形態におけるベース21はガイドレール24上で搬送アーム22を支持するものであるとともに、内部に組み込まれたアクチュエータ(図示せず)を用いることで、搬送アーム22に、ガイドレール24に沿った移動、壁面51a,51bに向けた伸縮動作、及び昇降動作を行わせることができるようになっている。本実施形態におけるEFEMにおいては、複数のロードポート61に設置されるFOUP62及びこれに対向するロードロック室81(
図1参照)が、ウェーハWを受け渡すための受け渡し位置として設定されており、この間でウェーハ搬送装置2を用いてウェーハWを移動させることが可能となっている。
【0032】
本実施形態におけるウェーハ搬送装置2は、上述したように搬送アーム22上に設けられたカバー3と、このカバー3をベース21上で支持するカバー支持手段4とを備えている点に大きな特徴がある。
【0033】
カバー3は、円盤状の本体部31とその周縁より下方に向けて延在する壁部32とから構成されたフード状の形態となっている。そして、平面視においてウェーハWよりもやや大きく形成され、ウェーハWを覆うことが可能な大きさとされている。そのため、本体部31と壁部32とにより形成される下方に開放された内部空間S(
図7参照)内に、ウェーハWを収容することも可能となっている。
【0034】
カバー3は、後に詳述するように種々の構造とすることができるが、ここでは、
図7(b)に示すカバー3Bの構造のものを採用している。すなわち、上面31bの中央にガス供給口34が設けられており、図示しないガス供給源よりガス供給口34を通じて供給されるガスGを、拡散板33によって拡散させながら下方に向かって放出可能となっている。ガス供給源は、ガスGの供給と供給停止とを選択的に変更することが可能となっており、必要な際にのみガスGを供給することが可能としている。また、供給圧力や流量を変更するように構成することもできる。これらガス供給源と、ガス供給口34から拡散板33に至るカバー3内が備えるガスGの供給構造とによって、カバー3よりガスGを供給するためのガス供給手段MGは構成されている。ここでは、ガスGとして窒素ガスを用いるようにしている。
【0035】
図2,3に戻って、カバー支持手段4は、ガイドレール24の延在する方向に離間させ、搬送アーム21に干渉しない適宜の位置においてベース21より起立させた一対の支柱41,41と、これらにより上下方向にそれぞれ移動可能に支持された昇降ブロック42,42とから構成されている。昇降ブロック42,42はカバー3の本体部31の上面31b(
図7参照)を支持している。
【0036】
ここで、
図2(a),(b)に示すウェーハ搬送装置2を、90度異なる角度から見た図を
図4(a)に示す。ベース21は、上述したように、ガイドレール24によって移動可能に支持されており、搬送アーム22を支持するとともに、この搬送アーム22に伸縮動作や昇降動作を行わせることができるようにしている。上述した一対の支柱41,41は、ベース21の側面よりガイドレール24に沿った方向に張り出されてから上方に向かって起立するものとなっており、この支柱41,41の上部で上記昇降ブロック42,42は支持されるようになっている。
【0037】
なお、こうした構成に代えて、
図4(b)に示すようなウェーハ搬送装置502の構造にしても良い。すなわち、ベース521を、ガイドレール24に沿った移動機構を備える直動プレート部521aと、搬送アーム22の伸縮動作や昇降動作を行わせるための機構を備える本体部521bとから構成し、カバー3を支持するためのカバー支持手段504を、直動プレート部521aより上方に向かって起立させた支柱541と、その上部において昇降可能に支持させた昇降ブロック542によって構成してもよい。
【0038】
図2,3に戻って、本実施形態におけるウェーハ搬送装置2を構成するカバー3は、搬送アーム22と同じベース21上で支持されていることから、搬送アーム22とともにガイドレール24に沿って移動可能となっている。さらには、支柱41と可動ブロック42との相対移動によってカバー3を上下方向に移動させ、ウェーハWの表面が形成する基板面としてのウェーハ面Fに対して、カバー3を近接又は離間させることが可能となっている。すなわち、これら支柱41及び昇降ブロック42を機能的に見た場合、これらはウェーハ面Fに対してカバー3を接離させるカバー接離手段MVを構成しているといえる。
【0039】
さらに、カバー3に設けられているガス供給口34に対しては、上述したガス供給源かよりガスGが供給される配管43が接続されている。
【0040】
上記のように構成したウェーハ搬送装置2を、制御部Cp(
図1参照)により制御を行い動作させることで、以下のようにしてウェーハWの搬送を行うことが可能となる。制御部CpはEFEM全体を制御するものとして適宜に構成されており、搬送アーム22の動作と同期してカバー接離手段MVによってカバー3を移動させるとともに、ガス供給手段MGによってカバー3よりガスGの供給ができるようになっている。
【0041】
ここでは、一例として、一方の受け渡し位置であるロードポート61に接続されたFOUPより、ロードロック室81にウェーハWを搬送する場合について説明を行う。
【0042】
すなわち、
図5に示すように、ウェーハ搬送装置2は、ベース21をガイドレール24に沿って移動させ、搬送アーム22を一方の受け渡し位置であるロードポート61の前に位置させる。そして、このロードポート61の扉61aと、これに接続されたFOUP62の蓋部62aとを開放させ、搬送アーム22を伸長させてエンドエフェクタ23をFOUP62内に進入させる。この際、
図3に示すように、エンドエフェクタ23は、取り出す対象となるウェーハWの直ぐ下に僅かな隙間を持たせながら進入し、ベース21を所定量上昇させることで、エンドエフェクタ23でウェーハWを持ち上げて保持させることができる。この時点においては、カバー接離手段MVによって、カバー3における壁部32の開放端32a(
図7参照)が、エンドエフェクタ23上に持ち上げたウェーハWの上面(ウェーハ面F)よりも高い位置になるようにしている。
【0043】
そして、
図2に示すように、搬送アーム22を縮めて、エンドエフェクタ23に保持されたウェーハWをベース21の上方に位置させる。こうすることで、ウェーハWは、カバー3と相対することになる。この状態において、カバー接離手段MVを用いてカバー3を下方に移動させることで、カバー3の内部空間SにウェーハWの上部が僅かに収容されるようにしている。さらに、ガス供給手段MG(
図7参照)によって、ガスGの供給が開始され、ウェーハWの表面の雰囲気をそれまでのウェーハ搬送室5内と同じエア雰囲気よりガスGの雰囲気に置換する。
【0044】
この際、カバー3は、上述したように平面視においてウェーハWよりやや大きい形状となっていることから、内部空間S内にウェーハWを収容した場合でも、ウェーハWの周囲に隙間が形成される。そのため、ガス供給口34よりガスGを供給することで、ウェーハWの上面の雰囲気を形成していた空気はウェーハWの周囲の隙間より効率よく外部に排出されて、内部空間Sの雰囲気を窒素ガスによって置換することが可能となっている。
【0045】
また、ロードポート61は、ウェーハWが干渉しない位置になった段階で扉61aとFOUP62の蓋部62aとを閉止させ、FOUP62内を窒素ガスで満たすようにしており、取り出したウェーハW以外に収容されているウェーハW表面の酸化や水分の付着を防ぐようにしてある。
【0046】
上記のようにウェーハWの表面の雰囲気の置換と並行して、ベース21がガイドレール24に沿って移動し、ロードロック室81の前に到達する。ウェーハWの表面の雰囲気の置換を搬送の一部と並行して行うことで、時間の増加が生じないようになっている。
【0047】
そして、
図6に示すように、ロードロック室81の扉81a(
図5参照)を開放させて、この内部に搬送アーム22のエンドエフェクタ23を進入させる。この際、カバー3はカバー接離手段MVにより上昇させることで、ウェーハW及び搬送アーム22に干渉することがないようにしている。そして、ベース21を下降させることで搬送アーム22の位置を下げ、エンドエフェクタ23上のウェーハWをロードロック室81内に移載するようになっている。
【0048】
上述したように、このウェーハ搬送装置2を用いることで、ウェーハWをFOUP62よりロードロック室81に搬送する際に、ウェーハ搬送室5の内部全体の雰囲気を置換しなくても、カバー3を介してウェーハWの表面周りの局所的な雰囲気を置換することでウェーハWの表面状態を適切に維持することが可能となる。
【0049】
また、ウェーハWをロードロック室81よりFOUP62に搬送する場合にも、上述した動作を逆に行わせることで、同様にウェーハWの表面周りの局所的な雰囲気を置換させることができる。
【0050】
ここで、カバー3の具体的な構造について説明を行う。
図7〜9に示したカバー3A〜3Gの何れタイプのものでも採用することができ、目的に応じて使い分けることができる。
【0051】
図7(a)に示すカバー3Aは、最もシンプルな構造を備えるものであり、上述した円盤状の本体部31の周縁31aより壁部32を垂下させた形態となっている。上面31bの中央には、通常の気体供給用配管口と同様に構成されたガス供給口34が設けられており、配管43(
図2,3参照)を通じてガスGを供給することが可能となっている。ガス供給口34は、内部空間Sに連通しており、供給されたガスGを内部空間Sに充満させつつ下方に向けて放出することができる。この際、ガスGとして窒素ガスを用いる場合には、空気よりも軽い性質を持つことから、容易に内部空間Sより空気を排除して内部空間S内の窒素ガスの濃度を高めた状態にすることが可能となる。そのため、窒素ガスの濃度が一定以上に高まった状態となってからは、窒素ガスの供給量を減少させてもよく、このようにしてもウェーハW表面の雰囲気を窒素ガスによって置換した状態を維持することができる。
【0052】
図7(b)に示すカバー3Bは、カバー3Aの構造を基にして本体部31の下方に拡散手段としての拡散板33を設けたものとなっている。拡散板33は、多数の小孔33aを開けたものであり、ガスGはこれを通過することでほぼ均一に拡散して下方に向けて放出される。そのため、これを用いた場合には、ウェーハW表面のいずれの位置においても、適切にガスGを供給することが可能となる。
【0053】
図8(a)に示すカバー3Cは、上述したカバー3A(
図7参照)の構造を基にして本体部31の内部に、加熱手段としての加熱用ヒータ35を設けたものである。このように構成することで、供給するガスGを加熱してウェーハWの表面に供給することができ、ウェーハW表面の雰囲気温度を上昇させることができる。そのため、ウェーハW表面の温度を上げて、水分の除去を図ることができる。さらには、処理装置PE(
図1参照)の内部で昇温するプロセスが必要な場合には、予熱を与えることで処理時間を短縮することにもつながる。
【0054】
図8(b)に示すカバー3Dは、上述した3A(
図7参照)の構造を基にして本体部31の内部に、ガスGを拡散するための拡散手段として分岐配管37を設けたものである。こうすることでも、ガスGを均一に拡散して放出して、ウェーハW表面のいずれの位置においても適切にガスGを供給することが可能となる。
【0055】
図9(a)に示すカバー3Eは、上述したカバー3B(
図7参照)の構造と、カバー3C(
図8参照)の構造とを組み合わせたものである。こうすることで、ガスGを加熱するとともに拡散してウェーハW表面に適切に供給することが可能となる。また、この例で示すように拡散板33は複数(図中では2つ)設けてもよく、よりガスGを拡散させて均一に供給することが可能となる。
【0056】
図9(b)に示すカバー3Fは、上述したカバー3Eの構造を基にして、壁部32の開放端32aを下方に延長したものである。こうすることで、内部空間SによってウェーハWだけでなく、搬送アーム22を全て覆うような構成とすることも可能であり、ウェーハW周辺の空間に占めるガスGの濃度をより高めることが可能となる。
【0057】
図9(c)に示すカバー3Gは、上述したカバー3Eの構造を基にして、加熱手段を加熱ヒータ35より加熱ランプ36に変更したものである。このようにしても、ガスGを加熱するとともに拡散してウェーハW表面に適切に供給することが可能となる。また、加熱ランプ36より照射される光がウェーハWに到達するようにすることで、ガスGを媒介とすることなく直接ウェーハWの表面を昇温させるようにしても良い。
【0058】
以上のように、本実施形態における基板搬送装置としてのウェーハ搬送装置2は、ベース21により支持され、基板であるウェーハWを保持して搬送する搬送アーム22と、搬送アーム22と同一のベース21に設けられた支柱41と、支柱41を介して搬送アーム42と相対し得る位置に配置され、ウェーハWを覆うことのできるカバー3と、カバー3より周辺雰囲気とは異なる性質を有するガスGを供給するガス供給手段MGとを備えており、搬送アーム22によりウェーハWを搬送させるに際し、ガス供給手段MGよりガスGを供給することでウェーハW表面の雰囲気をガスGによって置換し得るように構成したものである。
【0059】
このように構成しているため、搬送アーム22によりウェーハWを搬送させるに際し、ガス供給手段MGによって搬送アーム22の上方に配置されたカバー3より、ウェーハWの表面に周辺雰囲気とは異なる性質を有するガスGを供給して、ガスGによってウェーハW表面の周囲の雰囲気を置換することができる。そのため、ウェーハW表面の周辺雰囲気を適切に変更することで、雰囲気による悪影響を抑制することが可能となる上に、ウェーハ搬送装置2周りの雰囲気を全て置換する場合に比べて、ガスGの使用量を削減することができ、ガスGの費用と、雰囲気の置換に要する時間を減らすことも可能となる。また、このガスGが周囲に漏れ出た場合であっても、使用量が少ないことから作業環境の悪化も抑制することができる。さらには、ガス供給手段MGを備えるカバー3が、搬送アーム22と同一のベース21に設けられていることから、全体をコンパクト化して設置面積を抑制することも可能である。
【0060】
そして、カバー3を基板面としてのウェーハ面Fに対して近接又は離間させるカバー接離手段MVを備えるように構成しているため、カバー接離手段MVによってカバー3を動作させることで、ウェーハWや搬送アーム22とカバー3との干渉を避けることができる上に、搬送状態に応じてウェーハWにカバー3を近接させ、より少量のガスGでウェーハW表面周辺の雰囲気の置換を行わせることも可能となっている。
【0061】
また、カバー3が、ウェーハWに相対し得る本体部31と本体部31の縁部31aに設けられた壁部32とを備えており、カバー接離手段MVによってカバー3をウェーハWに近接させた際に本体部31と壁部32との間で形成される内部空間SにウェーハWを収容させ得るように構成しているため、カバー3に設けた壁部32により、ウェーハW表面以外にガスGが漏れ出る量を減少させて、よりガスGの使用量の削減を図ることも可能となっている。
【0062】
さらに、ベース21を移動可能に支持するガイドレール24を備えるように構成しているため、搬送アーム22を長くすることなく、ウェーハWを搬送可能とする範囲を拡大することができる上に、ベース21に付随して搬送アーム22とカバー3とを同時に移動させることができるため、ガイドレール24に沿った方向にウェーハWを搬送させる場合には、継続してウェーハW表面の雰囲気の置換を行うことができる。
【0063】
また、ガス供給手段MGが、外部よりガスGを導入するためのガス導入口34と、ガス導入口34よりカバー3の下方にガスGを拡散させる拡散手段としての拡散板33又は分岐配管37を備えるように構成することで、ガス導入口34を一般の配管と同様に簡単な構成とした上で、ガスGを効果的に拡散させてウェーハWの表面全体に供給して効率よく表面の雰囲気を置換させることが可能となる。
【0064】
さらには、ガス供給手段MGが、ガスGを加熱する加熱手段としてのヒータ35又は加熱ランプ36を備えるように構成することで、供給するガスGを加熱して、ウェーハWの表面を昇温することができ、水分の除去を行うことも可能となる。また、処理装置PEにおいて昇温することが必要な場合には、予熱を与えて処理時間を短縮することもできる。
【0065】
さらに、基板としてウェーハWを用い、上記のウェーハ搬送装置2と、これを覆う筐体51とを備え、筐体51の壁面51a,51bに隣接してウェーハWを受け渡すための受け渡し位置としてのロードポート61と、ロードロック室81を設定するように構成することで、筐体51内に設けられたウェーハ搬送装置2を用いて、ウェーハWの表面の雰囲気を適切にしながら受け渡し位置間で搬送を行うEFEMとして有効に構成されている。
【0066】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態の基板搬送装置としてのウェーハ搬送装置102を示す模式図である。この図において、第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0067】
本実施形態におけるウェーハ搬送装置102は、搬送アーム22を支持するベース121の形状を平面視略矩形状とするとともに、カバー3を支持するカバー支持手段104の構造を第1実施形態とは異ならせている。
【0068】
具体的には、搬送アーム22の側方に支柱141を起立させて、その支柱141の上部に、ガイドレール24と直交する水平方向に延びるカバー用レール144が設けられ、このカバー用レール144に可動ブロック145が移動可能に支持されている。こうすることで、可動ブロック145は壁面51a,51b(
図1参照)に対して直交する方向に移動することが可能となっている。さらに、可動ブロック145には昇降ブロック146が垂直方向に移動可能となるよう支持され、この昇降ブロック146によりカバー3が支持されている。
【0069】
上記のように構成することで、カバー用レール144及び可動ブロック145は、搬送アーム22により移動されるウェーハWに追従してカバー3を動作させることを可能としており、これらによりカバー移動手段MHが構成されている。また、可動ブロック145に対して昇降ブロック146が相対移動することでカバー3を上下方向に移動可能としており、これらによって、ウェーハ面Fに対してカバー3を接離させるカバー接離手段MVが構成されている。
【0070】
このカバー3に設けられているガス供給口34に対しては、前述のガス供給源からの配管143が接続されている。
【0071】
このようなウェーハ搬送装置102も、制御部Cp(
図1参照)により制御を行い動作させることで、以下のようにしてウェーハWの搬送を行うことが可能となる。この際、制御部Cpは搬送アーム22の動作と同期してカバー移動手段MHとカバー接離手段MVとによってカバー3を移動させるとともに、ガス供給手段MGによってカバー3よりガスGの供給が行われる。
【0072】
まず、
図11に示すように、カバー移動手段MHによってカバー3をロードポート61の直前にまで移動させることができる。そのため、搬送アーム22を伸長させてFOUP62の内部に進入させウェーハWを取り出す際に、予めカバー3をFOUP62の手前で待機させておき、ウェーハWがFOUP62より取り出されて直ぐに、カバー3によりウェーハWを覆い相対する状態とすることができる。この状態で、カバー接離手段MVを用いてカバー3をウェーハWに近接させてガスGを供給するようにすると、ウェーハWがエア雰囲気にさらされる時間を短くすることができる。
【0073】
そして、搬送アーム22を縮める動作と連動して、カバー移動手段MHによってカバー3を移動させ、
図10の状態を経て、もう一方の受け渡し位置であるロードロック室81(
図6参照)の手前に移動させるまで、ウェーハWとカバー3とを相対させた状態でガスGを供給し続ける。ロードロック室81の直前でカバー3は搬送アーム22に連動した動作を止め、カバー接離手段MVによって上昇する。そして搬送アーム22によってウェーハWはロードロック室81の内部に移載される。
【0074】
上記のように、本実施形態におけるウェーハ搬送装置102では、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、搬送アーム22による搬送中のウェーハWに対して、より長時間ガスGを供給することができ、ウェーハW表面の雰囲気置換による効果をより高めることができる。さらには、カバー3をウェーハWとほぼ同じ大きさの小型のものとしながらも効果的にガスGを供給することができるため、ガスGの無駄を避けることもできる。
【0075】
以上のように、本実施形態におけるウェーハ搬送装置102は、カバー3をガイドレール24と直交する方向に移動可能に支持するカバー移動手段MHを備えるように構成しているため、搬送アーム22の動作と連動してカバー移動手段MHによりカバー3を移動させることで、より長時間ウェーハWを覆うことができ、ウェーハW表面の雰囲気置換による効果をより高めることが可能である。また、カバー3を小型化してガスGの供給量をさらに削減することも可能である。
【0076】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態のウェーハ搬送装置202を示す模式図である。この図において、第1実施形態及び第2実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0077】
本実施形態におけるウェーハ搬送装置202は、ベース21上でカバー支持手段204により支持されるカバー203が平面視略長方形状になっている点に特徴がある。具体的には、カバー203は長手方向をガイドレール24と直交するように配置されており、ガイドレール24を挟んで一方の受け渡し位置であるロードポート61が隣接する壁面51aと、もう一方の受け渡し位置であるロードロック室81が隣接する壁面51bとに、短辺がそれぞれ近接するものとなっている。また、短辺の長さはベース21よりもやや大きくしている。
【0078】
図13、
図14は、本実施形態におけるウェーハ搬送装置202を拡大して示した模式図であり、
図13(a)は各部を基準位置に設定した際の平面図、
図2(b)はその状態における正面図である。また、
図14(a)は、後述する搬送アーム22をFOUP62内に進入させるべく伸長させた状態を示す平面図、
図14(b)はその状態における正面図である。これらの図において、第1実施形態及び第2実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0079】
以下、
図13及び
図14を用いて、ウェーハ搬送装置202の構成について説明する。
【0080】
このウェーハ搬送装置202は、平面視略長方形状のカバー203を備えており、その下方に搬送アーム22が配されている。カバー203は、カバー支持手段204によってベース21上で支持されており、ガイドレール24に沿ったベース21の動作とともに移動することができる。
【0081】
カバー203は長方形状である以外の構造は、ほぼ上述したカバー3B(
図7参照)とほぼ同一の構造を備えており、矩形状に形成された本体部231と、その周縁より垂下するように設けられた壁部232とから構成され、これらにより下方に向かって開放された内部空間が形成されている。ただし、長手方向でガスGの供給量が極度に不均一となることがないように、本体部231の上面231bには、中央に設けたガス供給口234に加え、これより長手方向に両側に離間させた位置にガス供給口234,234を設け、これら合計3箇所のガス供給口234〜234にガス供給用の配管243を分岐させて接続するようにしている。こうすることで、長手方向の3箇所よりガスGが供給でき、カバー203の下方に向けて供給されるガスGの分布を均一化することができる。もちろん、ガス供給口234は、3箇所に留まらず4箇所以上に設けても良い。なお、
図7と同様に、ガス供給手段MGについても構成されている。
【0082】
カバー支持手段204は、上述した第1実施形態におけるカバー支持手段4(
図2参照)と同様に構成されており、ガイドレール24の延在する方向に離間させ、ベース21上で起立させた一対の支柱241,241と、これらにより上下方向に移動可能にそれぞれ支持された昇降ブロック242,242により構成されている。そして、昇降ブロック242,242はカバー203の本体部231の上面231bを支持している。これら支柱41及び昇降ブロック42を機能的に見た場合、これらはウェーハ面Fに対してカバー3を接離させるカバー接離手段MVを構成しているといえる。
【0083】
FOUP62よりウェーハWを取り出す場合には、
図13に示すように、まず、ベース21をFOUP62の前側に位置させる。この際、カバー203の短辺のうち一方がロードポート61の扉61aの直前に位置することになる。
【0084】
この状態より、ロードポート61の扉61aとFOUP62の蓋部62aとを開放し、
図14に示すように、搬送アーム22を伸長させてエンドエフェクタ23をFOUP62内に進入させる。この状態でベース部21を上昇させることで、エンドエフェクタ23上でウェーハWを保持することができる。
【0085】
図15は、この状態におけるEFEM全体を示した平面図であり、この状態より搬送アーム22を縮めてウェーハWをFOUP62の外にまで取り出す。カバー203は、FOUP62の直前にまで延びていることから、ウェーハWがFOUP62外に取り出されて直ぐにウェーハWとカバー203とは相対する位置関係となる。この状態において、カバー203はカバー接離手段(
図13,14参照)によって下方に移動され、内部空間SによってウェーハWの上方の一部を収容する。さらに、ガス供給手段(
図7参照)によってガスGの供給を開始する。
【0086】
搬送アーム22はさらに縮められて、ウェーハWがベース21の上方に位置する状態となる。この過程において、ガスGがウェーハWの表面に供給され続けることで、ウェーハWの表面の雰囲気は継続してガスGによって置換される。この際、搬送アーム22によるウェーハWの移動に合わせて、適宜ガス供給口234〜234のうち何れかが選択されて、ガスGの供給先が変更されるようにしておけば、さらにガスGの供給量を削減することもできる。
【0087】
さらに、ベース21は、ガイドレール24に沿ってロードロック室81の前にまで移動する。そして、ガスGの供給を継続したままで、搬送アーム22をロードロック室81の手前にまで移動させる。その後、搬送アーム22やウェーハWにカバー203が干渉しないようにカバー203を僅かに上昇させるとともに、ロードロック室81の扉81aを開放し、
図16に示すように搬送アーム22をさらに伸長させてエンドエフェクタ23をロードロック室81内に進入させる。この際、カバー203は、短辺の一方がロードロック室81側にも近接するように延在していることから、ガスGによるウェーハW表面の雰囲気の置換はウェーハWがロードロック室81に進入する直前まで継続して行うことができ、より長時間雰囲気の置換を行うことでウェーハW表面がエアに触れる時間を短くできるようになっている。この状態より、ベース21を下降させることで、搬送アーム22の位置を下げてウェーハWをロードロック室81内に載置することができる。
【0088】
このウェーハ搬送装置202を用いる場合でも、上述した実施形態と同様、ウェーハ搬送室5の内部全体の雰囲気を置換しなくても、カバー3を介してウェーハWの表面周りの局所的な雰囲気を置換することでウェーハWの表面状態を適切に維持することが可能となる。また、ウェーハWをロードロック室81よりFOUP62に搬送する場合にも、上述した動作を逆に行わせることで、同様にウェーハWの表面周りの局所的な雰囲気を置換させることができる。
【0089】
以上のように本実施形態におけるウェーハ搬送装置202は、搬送アーム22との間でウェーハWを受け渡す受け渡し位置としてのロードポート61とロードロック室81とがガイドレール24を挟む両側に設定されており、カバー203がガイドレール24と直交する方向に延在するように構成されていることから、ガイドレール24の延在する方向及びこれに直交する方向の2軸に対してウェーハWを搬送させるに際し、搬送中のウェーハWの表面をカバー203によって長時間覆うことができるため、簡単な構成でありながら搬送中の基板表面にガスを有効に供給することが可能となる。
【0090】
<第4実施形態>
図17は、第4実施形態おけるウェーハ搬送装置302の構造を模式的に示したものである。この図において、第1〜第3実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0091】
このウェーハ搬送装置302は、第1実施形態におけるウェーハ搬送装置2(
図2参照)の構成を基にして、カバー303の形状を変更するとともに、ベース21の上部にカバー受け部材325を設けたものとなっている。
【0092】
具体的には、カバー303は、円盤上の本体部331と、その周縁より垂下するように形成された壁部332より構成されており、これらによって下方に開口された内部空間Sを形成されている。本体部331は第1実施形態のカバー3(
図2参照)よりも大きく形成されており、搬送アーム22がベース21上で短縮された状態において、これ全体を内部空間Sに収容することができるようになっている。
【0093】
また、ベース21の上部には、円板状のカバー受け部材325が設けられている。カバー受け部材225は、平面視においてカバー303よりもやや大きな直径とされており、カバー303が下方に移動してきた場合に、カバー303における壁部332の開放端332aとカバー受け部材325の上面325aとの間が近接することで、協働して内部空間Sを略閉止することが可能となっている。こうすることで、内部空間SにガスGを供給した場合にガスGの濃度を一層高め、雰囲気置換による効果を増大させることもできる。
【0094】
もちろん、開放端332aと上面325aとを接触させるようにしてもよく、ガスGによる雰囲気の置換が終了した後に両者の接触を行わせて密閉するようにすれば、ガスGの供給を停止しても雰囲気を置換した状態で維持することができ、ウェーハWの表面が汚染されることもない。
【0095】
以上のように構成した場合でも、上記の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。さらには、カバー303をウェーハWに近接させた際に、カバー303の壁部332の開放端332aが近接又は当接することで協働して内部空間Sを略閉止し得るカバー受け部材325をベース21に設けるように構成しているため、カバー303とカバー受け部材325との間で略閉止空間を形成し、その内部にウェーハWを収容することで、一層ガスGの使用量を削減することができる。
【0096】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0097】
例えば、上述した実施形態では、ウェーハW周辺の雰囲気を置換するためのガスGとして窒素ガスを使用していたが、処理に応じて空気やオゾン等種々様々なガスGを用いることができる。ウェーハ搬送室5内ではクリーンエア雰囲気とされており、この雰囲気を構成するエアと異なる性質を持つものであればよいため、更にクリーン度の高い清浄エアを用いることも、加熱手段によって温度を上げられたエアであっても使用することができる。
【0098】
また、上述の実施形態では、カバー3,203,303が備える内部空間SにウェーハWの一部又は全体を収容させた状態でガスGを供給するようにしていたが、カバー3,203,303内にウェーハWを収容することなく、カバー3,203,303をウェーハW表面に近接させた状態でガスGを供給するようにしても上記に準じた効果を得ることができる。さらには、カバー3,203,303を本体部31,231,331のみで構成し、垂下する壁部32,232,332を有しない構成としても、同様の効果を得ることができる。
【0099】
さらには、カバー供給手段MGによるガスGの供給開始や供給停止するタイミングは、処理プロセスに応じて適宜変更することが可能である。具体的には、FOUP62より取り出してから、数秒後にガスGの供給を開始するようにしても良いし、カバー3内におけるガスGの濃度に応じて供給量を変更するようにしても良い。さらに、ガスGを供給する場合をロードロック室81より処理後のウェーハWを取り出してFOUP62内に戻す経路にのみ限定することでも、上記に準じた効果を得ることができる。
【0100】
また、上述の実施形態では、基板としてウェーハWを用いるものを前提としており、ウェーハ搬送装置2,102,202,302として構成していたが、本発明はガラス基板等様々な精密加工品を対象とする基板搬送装置に用いることができる。
【0101】
さらには、搬送アーム22としては、上述したリンク式アームロボットや、SCARA型多関節ロボットに限ることなく多様なものを使用することもできる。
【0102】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。