(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-95529(P2015-95529A)
(43)【公開日】2015年5月18日
(54)【発明の名称】抵抗素子及びこれを用いた抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 3/00 20060101AFI20150421BHJP
H01C 1/036 20060101ALI20150421BHJP
【FI】
H01C3/00 W
H01C1/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-233598(P2013-233598)
(22)【出願日】2013年11月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591181908
【氏名又は名称】ミクロン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】西村 聡
【テーマコード(参考)】
5E028
【Fターム(参考)】
5E028BA02
5E028BB01
5E028CA16
5E028EA14
5E028EB06
5E028JA15
5E028JB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抵抗値を減少させずに投影面積が小さい抵抗器及びこれに必要な抵抗素子を提供する。
【解決手段】柱状の芯3と、芯3に巻回される抵抗線2とを有し、芯3は、芯3の軸線に垂直な断面が長方向と短方向とを備える抵抗素子1及びこの抵抗素子1を備える抵抗器。投影面積を減少させるために芯3の長さを短くして芯3の断面積を大きくした場合でも、芯3の外周に巻回される抵抗線の長さを減少させないで投影面積を減少させることができる。前記断面は楕円形とすることができる。抵抗線2の両端部の各々に一体化されるキャップ4cを備え、芯3を、抵抗線2を巻き付ける巻付部3aと、巻付部3aの両端面の各々に設けられてキャップ4cが装着されるキャップ装着部3bとを備え、キャップ装着部3bの端面の形状を、巻付部3aの端面の形状と独立して形成するようにしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の芯と、該芯に巻回される抵抗線とを有し、
前記芯は、該芯の軸線に垂直な断面が長方向と短方向とを備えることを特徴とする抵抗素子。
【請求項2】
前記断面は、楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子。
【請求項3】
前記抵抗線の両端部の各々に一体化されるキャップを備え、前記芯は、前記抵抗線を巻き付ける巻付部と、該巻付部の両端面の各々に設けられて前記キャップが装着されるキャップ装着部を備え、
前記キャップ装着部の端面の形状は、前記巻付部の端面の形状と独立して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗素子。
【請求項4】
前記芯は、前記巻付部の両端面の各々から前記キャップに隣接して突出する突出部を備えることを特徴とする請求項3に記載の抵抗素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の抵抗素子を備えることを特徴とする抵抗器。
【請求項6】
該抵抗器は、
前記抵抗素子のキャップに一体化された端子板と、
前記抵抗素子を収容する溝を有する絶縁ケースとを備え、
前記抵抗素子を前記溝に収容した状態で該溝の中にセメントを充填して硬化させたセメント抵抗器であることを特徴とする請求項5に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の芯に巻回される抵抗線を備える抵抗素子、及びこの抵抗素子をセメントで封入した抵抗器等に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗器は広く一般的に用いられており、例えば、特許文献1には、
図4〜
図6に示すように、円柱状の芯22と、芯22に巻回される抵抗線23と、芯22の端部に圧入されるキャップ部24aを有する端子板24とを備える抵抗素子21を、溝26を形成した磁器ケース25に収容し、セメント32を充填して硬化させたセメント抵抗器31が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−82327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の抵抗器は、投影面積が大きいために設置スペースが大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、同じ抵抗線を使用し抵抗値を減少させずに、また製造コストの上昇を招くことなく、投影面積の小さい抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者らは、従来1つの抵抗素子を備える抵抗器の抵抗値を、2つの抵抗素子を直列に配置して確保し、これらの抵抗素子を例えば上下方向に2段に配置することで、抵抗値を減少させずに抵抗器の投影面積を小さくする方法を考案した。
【0007】
しかし、この方法では抵抗素子の数が増加することで、部品点数及び接続箇所が増加し、抵抗器を製造するにあたって工数が増加して製造コストが上昇するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ねた結果、抵抗素子の芯の横断面積を可能な限り小さくすることで上記目的を達成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明に係る抵抗素子は、柱状の芯と、該芯に巻回される抵抗線とを有し、前記芯は、該芯の軸線に垂直な断面が長方向と短方向とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、芯の軸線に垂直な断面が長方向と短方向とを備える形状とすることで、投影面積を減少させるために柱状の芯の長さを短くして断面積を大きくした場合でも、芯の外周に巻回される抵抗線の長さを減少させないで、すなわち抵抗器の抵抗値を維持しながら、抵抗器の投影面積を減少させることができる。これによって、抵抗素子の数を増加させずに抵抗器を製造することができ、製造コストの上昇を回避することができる。
【0010】
前記抵抗素子において、前記断面を楕円形とすることができ、楕円形は直線部分が存在しないため、芯に抵抗線を巻く際に、抵抗線の張力を一定に保ちながら巻くことができ、張力を強くしすぎることによって抵抗線を破損させたり抵抗素子の機能を低下させることなく抵抗器の投影面積を減少させることができる。
【0011】
また、前記抵抗素子は、前記抵抗線の両端部の各々に一体化されるキャップを備え、前記芯は、前記抵抗線を巻き付ける巻付部と、該巻付部の両端面の各々に設けられて前記キャップが装着されるキャップ装着部を備え、前記キャップ装着部の端面の形状を前記巻付部の端面の形状と独立して形成することができる。これにより、抵抗素子の抵抗値が異なることで巻付部の径が異なる場合であっても、キャップ装着部の径を共通の値とすることで、異なる抵抗素子間でキャップを共用することができ、製造コストの低減に繋がる。
【0012】
また、前記芯は、前記巻付部の両端面の各々から前記キャップに隣接して突出する突出部を備えることができ、この突出部にキャップから導出された抵抗線を巻き始めることで、抵抗線の巻き付け角が大きくなるのを回避することができるため、抵抗線に負荷がかかりにくくなり、抵抗線の破断を防止することができる。
【0013】
また、本発明の抵抗器は、上記いずれかの抵抗素子を備えるものであって、抵抗値を維持しながら投影面積の小さな抵抗器を提供することができる。
【0014】
さらに、上記抵抗器は、前記抵抗素子のキャップに一体化された端子板と、前記抵抗素子を収容する溝を有する絶縁ケースとを備え、前記抵抗素子を前記溝に収容した状態で該溝の中にセメントを充填して硬化させたセメント抵抗器とすることができ、抵抗値を維持しながら投影面積の小さなセメント抵抗器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、抵抗値を減少させずに投影面積が小さい抵抗器、及びこれに必要な抵抗素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る抵抗素子の一実施の形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【
図2】
図1の抵抗素子を備える抵抗器を示す図であって、抵抗素子をセメントで封止する前の状態を示す上面図である。
【
図3】
図2の抵抗器の抵抗素子をセメントで封止した状態を示す上面図である。
【
図5】従来の抵抗器の磁器ケースの一例を示す斜視図である。
【
図6】従来のセメント抵抗器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、本発明に係る抵抗素子をセメント抵抗器に適用した場合を例にとって説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る抵抗素子1の一実施の形態を示し、この抵抗素子1は、柱状の芯3と、芯3に巻回される抵抗線2と、芯3に装着される端子板4とで構成される。
【0019】
芯3はセラミックス等の絶縁体からなり、抵抗線2を巻き付ける巻付部3aと、端子板4のキャップ4cが装着されるキャップ装着部3bと、巻付部3aの両端面の各々からキャップ4cに隣接して突出する突出部3cとを備える。
【0020】
巻付部3aの軸線に垂直な断面、すなわち横断面は楕円形であり、楕円形とすることで、横断面を円形とした場合に比較し、芯3の横断面の外周長さを減少させないで、すなわち抵抗器の抵抗値を維持しながら、芯3の投影面積(
図1(b)において芯3を上方から下方に投影した場合の面積)を減少させることができる。
【0021】
キャップ装着部3bは、巻付部3aの両端面の各々から外側に突出する円柱状に形成され、キャップ4cが圧入される。
【0022】
突出部3cは、キャップ装着部3bの一部(
図1における上面部)を覆うように巻付部3aの両端面の各々から外側に突出し、キャップ4cから導出された抵抗線2を巻付部3aに巻き付ける際に、この突出部3cを経由して巻き付けることで、抵抗線2の巻き付け角が大きくなるのを回避するために備えられ、これによって抵抗線2に負荷がかかりにくくなり、抵抗線2の破断を防止することができる。
【0023】
端子板4は、帯板状の端子4aと、端子4aの端部に形成されたキャップ4cとで構成され、キャップ4cに抵抗線2の一端が接合される。
【0024】
次に、上記抵抗素子1を備えるセメント抵抗器について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0025】
このセメント抵抗器11は、
図2に示すように、磁器ケース12に抵抗素子1を収容した後、
図3に示すように、抵抗素子1をセメントで封止して製造される。
【0026】
磁器ケース12は、上方に開口する溝12aを有する箱状に形成され、溝12aに端子板4の端子4aの部分を除く抵抗素子1全体が収容される。上述のように芯3の投影面積を減少させたことで、磁器ケース12の投影面積(
図2及び
図3に描かれている磁器ケース12の面積)も減少する。
【0027】
図3に示すように、
図2に示した抵抗素子1をセメント13で封止してセメント抵抗器11が完成する。このセメント抵抗器11では、セメント13から端子板4の一対の端子4aが突出し、これらの端子4aを相手方の雌端子等に係合させて使用する。
【0028】
以上のように、本実施の形態では、抵抗素子1の芯3を楕円形にすることで、磁器ケース12の投影面積を減少させ、抵抗値を減少させずに投影面積の小さい抵抗器11を提供することができる。
【0029】
尚、上記実施の形態では、芯3の巻付部3aの横断面を楕円形とし、楕円形は直線部分が存在しないため、抵抗線2の張力を一定に保ちながら巻き付けることができて好ましいが、巻付部3aの横断面は、円形以外の長方向と短方向とを備える形状であればよく、例えば、長丸形状、エッジ部を丸めた菱形、長方形、半円形等にすることができる。また、これらの形状の断面を基本として、断面を一部切り欠いたようなものであってもよい。但し、断面積を小さくし過ぎると、使用時のセメント抵抗器11の内部から外部への放熱が不十分になる虞があるため留意する必要がある。
【0030】
また、上記実施の形態では、抵抗素子1をセメント抵抗器11に適用した場合を例示したが、それ以外の抵抗器に用いて同様の作用効果を奏することもできる。
【0031】
さらに、一般的なセメント抵抗器では、芯の巻付部の両端部に端子板のキャップを直接圧入固定するため、抵抗器の抵抗値が変わると芯の円形横断面の直径が変化し、それに応じて異なる内径のキャップを備えた端子板を用意する必要がある。しかし、本発明では、セメント抵抗器11の抵抗値が変化して芯3の巻付部3aの横断面の形状が変化しても、キャップ装着部3bの形状を一定にすることで同一の内径のキャップを備えた端子板を用意するだけで済み、製造コストを低減することができる。
【0032】
尚、上記実施の形態では、芯3に突出部3cを設けて抵抗線2の巻き付け角が大きくなるのを回避したが、突出部3cを設けずに直接巻付部3aに抵抗線2を巻き付けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 抵抗素子
2 抵抗線
3 芯
3a 巻付部
3b キャップ装着部
3c 突出部
4 端子板
4a 端子
4c キャップ
11 セメント抵抗器
12 磁器ケース
12a 溝
12b 上面
13 セメント