【解決手段】EMI低減回路において、SSCGは、出力クロックの変調周期の1周期ごとに、あらかじめ設定された入力クロックの周期でアクティブ状態の基準パルス信号を出力する。FiFoメモリは、最大累積遅延差に対応する段数の2倍未満の段数のセルによって構成されている。ポインタ異常検知部は、ポインタの異常発生を検知すると、アクティブ状態のポインタ異常検知信号を発生する。ポインタ異常保持部は、SSCGから出力される基準パルス信号がアクティブ状態となるまでの期間、ポインタ異常検知信号を保持してポインタ異常保持信号として出力する。リセット部は、ポインタ異常保持信号および基準パルス信号の両方がアクティブ状態になると、ライトポインタ生成部およびリードポインタ生成部をリセットするリセット信号を出力する。
入力クロックに同期して、前記入力クロックの周波数を周期的に変調した出力クロックを出力するとともに、前記出力クロックの変調周期の1周期ごとに、あらかじめ設定された入力クロックの周期でアクティブ状態の基準パルス信号を出力するSSCGと、
前記入力クロックに同期して、入力データを書き込むライトアドレスを指定するライトポインタを生成するライトポインタ生成部と、
前記出力クロックに同期して、前記ライトアドレスとは一致しない、出力データを読み出すリードアドレスを指定するリードポインタを生成するリードポインタ生成部と、
前記出力クロックの1クロック当たりの変調量に対応するセルの段数を1段として、前記入力クロックと前記出力クロックとの間の位相差を表す累積遅延差が最大となる最大累積遅延差に対応する段数の2倍未満の段数のセルによって構成され、前記入力クロックに同期して、前記ライトポインタにより指定されるライトアドレスに前記入力データを書き込み、かつ、前記出力クロックに同期して、前記リードポインタにより指定されるリードアドレスから前記出力データを読み出すFiFoメモリと、
前記リードポインタと前記ライトポインタとが一致する異常の発生を検知すると、アクティブ状態のポインタ異常検知信号を発生するポインタ異常検知部と、
前記ポインタ異常検知信号がアクティブ状態となってから、前記基準パルス信号がアクティブ状態となるまでの期間、前記ポインタ異常検知信号を保持して、ポインタ異常保持信号として出力するポインタ異常保持部と、
前記ポインタ異常保持信号および前記基準パルス信号の両方がアクティブ状態になると、前記ライトポインタ生成部および前記リードポインタ生成部をリセットするリセット信号を出力するリセット部とを備えることを特徴とするEMI低減回路。
前記SSCGは、前記累積遅延差が最小となる入力クロックの周期で前記アクティブ状態の基準パルス信号を出力するものである請求項1または2に記載のEMI低減回路。
【背景技術】
【0002】
電子機器で発生するEMIの放射ノイズを低減するために、SSCGを利用したEMI低減回路が使用されている。SSCGは、例えば、入力クロックの遅延値を1クロックごとに変化させることにより、一定の周波数(周期)の入力クロックの周波数を周期的に変調した出力クロックを出力するものである。
SSCGを使用する場合、周波数が周期的に変化する出力クロックで、入力クロックに同期したデータの受け渡しを行うために、FiFo(First-in First-out)メモリを用いて、出力クロックとデータとを同期させる必要がある。
【0003】
図8は、EMI低減回路を備える半導体集積回路のブロック図である。同図に示す半導体集積回路40は、半導体集積回路40の本来の機能を実現する論理回路42と、同図中点線で囲んで示すEMI低減回路44とによって構成されている。
【0004】
EMI低減回路44は、入力クロックの周波数(周期)を周期的に変調した出力クロックを生成し、入力クロックに同期した入力データを、出力クロックに同期した出力データとして出力するものである。
図8では一部を省略しているが、EMI低減回路44は、
図9に詳細を示すように、SSCG12bと、ライトポインタ生成部14と、リードポインタ生成部16と、FiFoメモリ18bと、ポインタ異常検知部20と、リセット部24bとを備えている。
【0005】
EMI低減回路44では、L(ローレベル)のパワーオンリセットが入力されると、リセット部24bからLのリセット信号が出力され、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされ、リードポインタとライトポインタとの関係(間隔)、つまり、FiFoメモリ18bにおける出力データの読み出しおよび入力データの書き込みの関係が初期化される。
【0006】
SSCG12bからは、リセット信号に関係なく、入力クロックに同期して、入力クロックの周波数を周期的に変調した出力クロックが出力される。
【0007】
図10は、SSCGの出力クロックの変調周期および累積遅延差を表す一例のグラフである。同図の縦軸は、周期および累積遅延差、横軸は、時間の経過を表す。また、横軸の位置の周期は、入力クロックの周期を表す。このグラフに示すように、変調(出力クロックの周期)は、時間の経過とともに、入力クロックと同じ周期から次第に増加して最大値となり、続いて、最大値から次第に減少して最小値となり、再び、最小値から次第に増加して入力クロックと同じ周期に戻る変調周期を繰り返す。
【0008】
また、累積遅延差は、入力クロックと出力クロックとの間の位相差(遅延差)を表すものである。累積遅延差は、時間の経過とともに、出力クロックの周期が増加するに従って次第に増加し、続いて、出力クロックの周期が最大値から減少して入力クロックと同じ周期に戻る位置で最大値となり、続いて、出力クロックの周期が減少するに従って次第に減少し、続いて、出力クロックの周期が最小値から増加して入力クロックと同じ周期に戻る位置で最小値となる周期を繰り返す。
【0009】
リセットの解除後、ライトポインタ生成部14では、入力クロックに同期して、入力データを書き込むFiFoメモリ18bのライトアドレスを指定するライトポインタが生成される。
一方、リードポインタ生成部16では、出力クロックに同期して、ライトアドレスとは一致しない、出力データを読み出すFiFoメモリ18bのリードアドレスを指定するリードポインタが生成される。
【0010】
続いて、FiFoメモリ18bでは、入力クロックに同期して、ライトポインタにより指定されるライトアドレスに入力データが書き込まれ、かつ、出力クロックに同期して、リードポインタにより指定されるリードアドレスから出力データが読み出される。
【0011】
また、
図11に示すように、ポインタ異常検知部20では、リードポインタとライトポインタとが一致する(リードポインタがライトポインタに追いつく)異常の発生を検知すると、アクティブ状態であるH(ハイレベル)のポインタ異常検知信号が発生される。
【0012】
ポインタ異常検知信号がアクティブ状態であるHになると、リセット部24bでは、AND回路28から、累積遅延差の状態に関係なく、Lのリセット信号が直ちに出力され、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされる。
【0013】
論理回路42では、出力クロックに同期して、出力データを処理(論理演算)して論理回路出力が出力される。
【0014】
ここで、リードポインタとライトポインタとの関係(間隔)は、
図10に示す、SSCG12bの変調プロファイルから算出した累積遅延差によって決められる。
【0015】
SSCG12bの動作開始がパワーオンリセットと連動していない場合は、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16のリセット時に、つまり、FiFoメモリ18bのリセット時に、累積遅延差の状態を把握することができない。そのため、通常は、下記(1)および(2)の2通りの場合であっても、ライトアドレスがリードアドレスに追いつかないように、FiFoメモリ18bが、出力クロックの1クロック当たりの変調量に対応するセルの段数を1段として、最大の累積遅延差に対応する段数の2倍の段数のセルによって構成されている。
(1)累積遅延差が最小の時にリセットされた場合
(2)累積遅延差が最大の時にリセットされた場合
【0016】
以下、リードポインタとライトポインタとの関係について説明する。
【0017】
図12は、出力クロックの周波数が変調されていない場合(出力クロックの周波数が一定と仮定した場合。ただし、入力クロックと出力クロックの位相は異なっていてもよい)の、リードポインタとライトポインタとの関係を表す一例の概念図である。この例のFiFoメモリ18bは、最大の累積遅延差に対応する10段の2倍の20段のセル(フリップフロップ)FF0〜FF19により構成されている。同図中、Wrは、ライトポインタにより指定されるライトアドレスのFF、Rdは、リードポインタにより指定されるリードアドレスのFFを表す。
【0018】
パワーオンリセットがLになると、リセット部24bからLのリセット信号が出力される。
これにより、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされ、リードポインタとライトポインタとは、同図の一番上に示すように、10アドレスだけ離れた状態に初期化される。
【0019】
リセットの解除後、ライトポインタの指定により、入力データの書き込み(ライト)が、同図の一番上に示すように、FF10から開始され、かつ、リードポインタにより、出力データの読み出し(リード)がFF0から開始される。
【0020】
以後同様に、同図の上から2〜4番目に示すように、ライトポインタおよびリードポインタが1つずつ増加されて、入力データがFF11〜FF19の順序で順次書き込まれ、かつ、出力データがFF1〜FF9の順序で順次読み出される。
【0021】
同図の上から4番目に示すように、入力データがFF19に書き込まれると、続いて、FF0へ戻って、入力データがFF0に書き込まれる。以後同様に、同図の上から5〜9番目に示すように、入力データが順次書き込まれる。
一方、同図の上から6番目に示すように、出力データがFF19から読み出されると、続いて、FF0に戻って、出力データがFF0から読み出される。以後同様に、同図の上から7〜9番目に示すように、出力データが順次読み出される。
【0022】
このように、出力クロックの周波数が変調されていない場合、リードポインタとライトポインタとは、10アドレスだけ離れた関係を常に維持する。
【0023】
続いて、
図13(A)は、従来のリセットのタイミングを表す概念図、同図(B)は、出力クロックの周波数が変調されている場合で、かつ、累積遅延差が最小の時にリセットされた場合の、リードポインタとライトポインタとの関係を表す一例の概念図である。
【0024】
入力データの書き込みのタイミングは、出力クロックの周波数が変調されていない場合と同様である。一方、出力データの読み出しのタイミングは、出力クロックの周波数が変調されていない場合と異なる。
【0025】
累積遅延差が最小の時にリセットされると、リードポインタとライトポインタとは、同図の一番上に示すように、10アドレスだけ離れた状態となる。
【0026】
累積遅延差が最小の時にリセットされた場合、同図(A)に示すように、その後まず、累積遅延差が最小から次第に増加するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に遅くなり、同図(B)の上から1〜5番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に長くなる。
続いて、同図(B)の上から6番目に示すように、入力データがFF9に書き込まれ、かつ、出力データがFF10から読み出される。この状態は、累積遅延差が最大の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も長い状態である。
【0027】
続いて、同図(A)に示すように、累積遅延差が最大から次第に減少するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に早くなり、同図(B)の上から7〜9番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に短くなり、同図(B)の一番上に示す状態に戻る。以後同様に、出力データが読み出される。
同図(B)の一番上の状態は、累積遅延差が最小の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も短い状態である。
【0028】
このように、累積遅延差が最小の時にリセットされた場合、リードポインタとライトポインタとの間隔は、10アドレスだけ離れた状態から次第に長くなって最も長い状態となり、その後、次第に短くなって最も短い状態となることを繰り返す。
【0029】
続いて、
図14(A)は、従来のリセットのタイミングを表す概念図、同図(B)は、出力クロックの周波数が変調されている場合で、かつ、累積遅延差が最大の時にリセットされた場合の、リードポインタとライトポインタとの関係を表す一例の概念図である。
【0030】
この場合も、入力データの書き込みのタイミングは、出力クロックの周波数が変調されていない場合と同様である。一方、出力データの読み出しのタイミングは、累積遅延差が最小の時にリセットされた場合と逆になる。
【0031】
累積遅延差が最大の時にリセットされると、リードポインタとライトポインタとは、同図の一番上に示すように、10アドレスだけ離れた状態となる。
【0032】
累積遅延差が最大の時にリセットされた場合、同図(A)に示すように、その後まず、累積遅延差が最大から次第に減少するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に早くなり、同図の上から1〜5番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に短くなる。
続いて、同図の上から6番目に示すように、入力データがFF3に書き込まれ、かつ、出力データがFF2から読み出される。この状態は、累積遅延差が最小の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も短い状態である。
【0033】
続いて、同図(A)に示すように、累積遅延差が最小値から次第に増加するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に遅くなり、同図(B)の上から7〜9番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に長くなり、同図(B)の一番上に示す状態に戻る。以後同様に、出力データが読み出される。
同図(B)の一番上の状態は、累積遅延差が最大の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も長い状態である。
【0034】
このように、累積遅延差が最大の時にリセットされた場合、リードポインタとライトポインタとの間隔は、10アドレスだけ離れた状態から次第に短くなって最も短い状態となり、その後、次第に長くなって最も長い状態となることを繰り返す。
【0035】
ここで、
図13(B)において、網掛けが付けられているFiFOメモリ18bのセルは、各々のライトポインタの位置に対して、リードポインタが移動する範囲を表す。つまり、網掛けが付けられていないFiFoメモリ18bのセルは、例えば、累積遅延差が最小の時に必ずリセットされるようにあらかじめ設定されている場合には、必要のないものである。
図14(B)における、網掛けが付けられていないFiFoメモリ18bのセルも同様である。
【0036】
しかし、パワーオンリセット、ポインタ異常発生時のリセットの何れにおいても、その時の累積遅延差の状態が不明である。そのため、従来のEMI低減回路44では、ポインタの異常発生時に、出力クロックの変調周期のどの時点でリセットされても対応できるように、実際に必要となる2倍の段数のセルで、FiFoメモリ18bを構成する必要がある。
また、入力データと出力データとの関係がリセット時の累積遅延差の状態で決まるため、入力データをFiFoメモリ18bに書き込んでから、FiFoメモリ18bから出力データを読み出すまでのレイテンシを一定にすることができず、リセット毎に、入力データと出力データとの間のレイテンシが変動する。
【0037】
ここで、本発明に関連性のある先行技術文献として、特許文献1がある。
【0038】
特許文献1には、
図15に示すように、パワーオンリセット/ライトが行われた後、入力クロックに同期して、ライトポインタで指定されるFIFOメモリのライトアドレスにデータを書き込み、続いて、読み出しのタイミングを、書き込みのタイミングよりもクロック周波数の変調量分量以上(
図15の例では5クロック分)遅延させるために、遅延器により、パワーオンリセット/ライトを遅延したパワーオンリセット/リードが行われた後、入力クロックを変調させた出力クロックに同期して、リードポインタで指定されるFIFOメモリのリードアドレスからデータを読み出すことにより、FIFOメモリに記憶させるデータ量を削減することができるEMI低減制御装置が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のEMI低減回路を詳細に説明する。
【0049】
図1は、本発明のEMI低減回路の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示すEMI低減回路10は、SSCG12aと、ライトポインタ生成部14と、リードポインタ生成部16と、FiFoメモリ18aと、ポインタ異常検知部20と、ポインタ異常保持部22と、リセット部24aとを備えている。
本実施形態のEMI低減回路10において、
図9に示す従来のEMI低減回路44と同じ構成要素には同じ符号を付けて、その詳細な説明を省略する。
【0050】
SSCG12aは、入力クロックに同期して、入力クロックの周波数を周期的に変調した出力クロックを出力するとともに、出力クロックの変調周期の1周期ごとに、あらかじめ設定された入力クロックの周期でアクティブ状態の基準パルス信号を出力するものである。
本実施形態のSSCG12aは、累積遅延差が最小となる入力クロックの周期でアクティブ状態の基準パルス信号を出力する。
【0051】
SSCG12aは、
図2に示すように、変調周期カウント部30と、遅延段数切替部32と、遅延付加部34とを備えている。
【0052】
SSCG12aでは、
図2および
図3に示すように、変調周期カウント部30により、入力クロックの数がカウントされ、そのカウント値1,2,…、nが変調周期カウント信号として出力される。また、変調周期カウント部30では、カウント値がデコードされ、カウント値が最大値であるnになると、Hの初期化信号が作成されて、入力クロックをカウントするカウンタが初期化され、以後同様に、カウントが繰り返される。この初期化信号は、変調周期において、累積遅延差が最小となる入力クロックの周期を示す基準パルスとして出力される。
【0053】
続いて、遅延段数切替部32により、変調周期カウント信号に基づいて、遅延付加部34における遅延段数を切り替える遅延段数切替信号が生成される。
【0054】
そして、遅延付加部34により、遅延なしの入力クロック、および、各々所定の段数の遅延回路36を通過して遅延された入力クロックの中から、遅延段数切替信号に対応する入力クロックがセレクタ38により選択され、出力クロックとして出力される。
【0055】
続いて、ライトポインタ生成部14、および、リードポインタ生成部16は、従来のEMI低減回路44が備える各構成要素と同じものである。
【0056】
FiFoメモリ18aは、出力クロックの1クロック当たりの変調量に対応するセルの段数を1段として、累積遅延差が最大となる最大累積遅延差に対応する段数の2倍未満の段数のセルによって構成され、入力クロックに同期して、ライトポインタにより指定されるライトアドレスに入力データを書き込み、かつ、出力クロックに同期して、リードポインタにより指定されるリードアドレスから出力データを読み出すものである。
本実施形態のFiFoメモリ18aは、最大累積遅延差に対応する段数+1段のセルによって構成されている。
このように、FiFoメモリ18aを最大累積遅延差に対応する段数の2倍未満のセルによって構成することにより、FiFoメモリ18aを、従来のEMI低減回路44のFiFoメモリ18bよりも少ない段数のセルで構成することができる。また、FiFoメモリ18aを最大累積遅延差に対応する段数+1段のセルによって構成することにより、FiFoメモリ18aを、最大累積遅延差に対応する最小の段数のセルで構成することができる。
【0057】
ポインタ異常検知部20は、従来のEMI低減回路44が備える構成要素と同じものである。
【0058】
ポインタ異常保持部22は、ポインタ異常検知信号がアクティブ状態となってから、基準パルス信号がアクティブ状態となるまでの期間、ポインタ異常検知信号を保持して、ポインタ異常保持信号として出力するものである。
本実施形態のポインタ異常保持部22では、
図4に示すように、ポインタ異常検知信号がアクティブ状態であるHとなり、その後、Lとなってから、基準パルス信号がアクティブ状態であるHとなり、その後、Lとなるまでの期間、Hのポインタ異常保持信号が出力される。
【0059】
リセット部24aは、ポインタ異常保持信号および基準パルス信号の両方がアクティブ状態になると、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16をリセットするリセット信号を出力するものである。
本実施形態のリセット部24aは、2つのAND回路26,28によって構成されている。AND回路26には、ポインタ異常保持信号および基準パルス信号が入力されている。AND回路28の反転入力端子には、AND回路26の出力信号が入力され、他方の正転入力端子には、パワーオンリセットが入力されている。
本実施形態のリセット部24aでは、パワーオンリセットがLになるか、ポインタ異常保持信号および基準パルス信号の両方がアクティブ状態であるHになると、Lのリセット信号が出力され、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされる。
【0060】
次に、EMI低減回路10の動作を説明する。
【0061】
EMI低減回路10では、Lのパワーオンリセットが入力されると、リセット部24aからLのリセット信号が出力され、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされ、リードポインタとライトポインタとの関係(間隔)、つまり、FiFoメモリ18aにおける出力データの読み出しおよび入力データの書き込みの関係が初期化される。
【0062】
SSCG12aからは、リセット信号に関係なく、入力クロックに同期して、入力クロックの周波数を周期的に変調した出力クロックが出力されるとともに、出力クロックの変調周期の1周期ごとに、累積遅延差が最小となる入力クロックの周期でアクティブ状態であるHの基準パルス信号が出力される。
【0063】
リセットの解除後、ライトポインタ生成部14では、入力クロックに同期して、ライトポインタが生成され、リードポインタ生成部16では、出力クロックに同期して、ライトアドレスとは一致しない、リードポインタが生成される。
【0064】
続いて、FiFoメモリ18aでは、入力クロックに同期して、ライトポインタにより指定されるライトアドレスに入力データが書き込まれ、かつ、出力クロックに同期して、リードポインタにより指定されるリードアドレスから出力データが読み出される。
このように、入力クロックに同期して入力データをFiFoメモリ18aに書き込み、出力クロックに同期してFiFoメモリ18aから出力データを読み出すことにより、出力クロックと出力データとを同期させることができる。
【0065】
また、
図4に示すように、ポインタ異常検知部20では、リードポインタとライトポインタとが一致する異常の発生を検知すると、アクティブ状態であるHのポインタ異常検知信号が発生される。
ポインタ異常保持部22では、ポインタ異常検知信号がアクティブ状態であるHとなってから、基準パルス信号がアクティブ状態であるHとなるまでの期間、ポインタ異常検知信号が保持され、ポインタ異常保持信号として出力される。
【0066】
ポインタ異常保持信号および基準パルス信号の両方がアクティブ状態であるHになると、リセット部24aからは、Lのリセット信号が出力される。リセット信号がLになると、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされる。
このように、ポインタの異常発生を検知して、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16をリセットすることにより、ポインタの異常が発生した場合に、パワーオンリセットを使用することなく、ポインタを正常な状態に戻すことができる。
【0067】
本実施形態のEMI低減回路10を、
図8に示す半導体集積回路40に適用すると、論理回路42では、出力クロックに同期して、出力データを処理(論理演算)して論理回路出力が出力される。
このように、入力クロックの周波数を周期的に変調した出力クロックを使用して論理回路42を動作させることにより、EMIによる放射ノイズを低減させることができる。
【0068】
次に、リードポインタとライトポインタとの関係について説明する。
【0069】
図5は、出力クロックの周波数が変調されていない場合の、リードポインタとライトポインタとの関係を表す一例の概念図である。この例のFiFoメモリ18aは、最大の累積遅延差に対応する10段+1段からなる11段のセル(フリップフロップ)FF0〜FF10により構成されている。同様に、同図中、Wrは、ライトポインタにより指定されるライトアドレスのFF、Rdは、リードポインタにより指定されるリードアドレスのFFを表す。
【0070】
パワーオンリセットがLになると、リセット部24aからLのリセット信号が出力される。
これにより、ライトポインタ生成部14およびリードポインタ生成部16がリセットされ、リードポインタとライトポインタとは、同図の一番上に示すように、1アドレスだけ離れた状態に初期化される。
【0071】
リセットの解除後、ライトポインタの指定により、入力データの書き込みがFF1から開始され、続いて、ライトポインタが1つずつ増加されて、これ以後、入力データがFF2〜FF10の順序で順次書き込まれる。
【0072】
また、リセットの解除後、同図の一番上に示すように、リードポインタにより、出力データの読み出しがFF0から開始される。
【0073】
以後同様に、同図の上から2番目に示すように、ライトポインタおよびリードポインタが1つずつ増加されて、入力データがFF2〜FF10の順序で順次書き込まれ、かつ、出力データがFF1〜FF9の順序で順次読み出される。
【0074】
入力データがFF10に書き込まれると、同図の上から3番目に示すように、続いて、FF0へ戻って、入力データがFF0に書き込まれる。以後同様に、同図の上から1〜3番目に示すように、入力データがFF1〜FF10の順序で順次書き込まれる。
一方、出力データがFF10から読み出されると、続いて、FF0に戻って、出力データがFF0から読み出される。以後同様に、同図の上から1〜3番目に示すように、出力データがFF1〜FF10の順序で順次読み出される。
【0075】
このように、出力クロックの周波数が変調されていない場合、リードポインタとライトポインタとは、1アドレスだけ離れた関係を常に維持する。
【0076】
続いて、
図6(A)は、リセットのタイミングを表す概念図、同図(B)は、出力クロックの周波数が変調されている場合で、かつ、累積遅延差が最小の時にリセットされた場合の、リードポインタとライトポインタとの関係を表す一例の概念図である。
【0077】
入力データの書き込みのタイミングは、出力クロックの周波数が変調されていない場合と同様である。一方、出力データの読み出しのタイミングは、出力クロックの周波数が変調されていない場合と異なる。
【0078】
累積遅延差が最小の時にリセットされると、リードポインタとライトポインタとは、同図の一番上に示すように、最小の1アドレスだけ離れた状態となる。
【0079】
累積遅延差が最小の時にリセットされた場合、同図(A)に示すように、その後まず、累積遅延差が最小から次第に増加するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に遅くなり、同図(B)の上から1〜3番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に長くなる。
続いて、同図(B)の上から4番目に示すように、入力データがFF5に書き込まれ、かつ、出力データがFF6から読み出される。この状態は、累積遅延差が最大の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も長い状態である。
【0080】
続いて、同図(A)に示すように、累積遅延差が最大から次第に減少するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に早くなり、同図(B)の上から5番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に短くなり、同図(B)の一番上に示す状態に戻る。以後同様に、出力データが読み出される。
同図(B)の一番上の状態は、累積遅延差が最小の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も短い状態である。
【0081】
このように、累積遅延差が最小の時にリセットされた場合、リードポインタとライトポインタとの間隔は、1アドレスだけ離れた状態から次第に長くなって最も長い状態となり、その後、次第に短くなって最も短い状態となることを繰り返す。
また、この場合、入力データをFiFoメモリ18aに書き込んでから、FiFoメモリ18aから出力データを読み出すまでのレイテンシを1〜累積遅延差の最大値のアドレスとすることができ、レイテンシを最低限の範囲に固定することができる。
【0082】
第二の実施例として、
図7(A)は、リセットのタイミングを表す概念図、同図(B)は、出力クロックの周波数が変調されている場合で、かつ、累積遅延差が最大の時にリセットされた場合の、リードポインタとライトポインタとの関係を表す一例の概念図である。
【0083】
この場合も、入力データの書き込みのタイミングは、出力クロックの周波数が変調されていない場合と同様である。一方、出力データの読み出しのタイミングは、累積遅延差が最小の時にリセットされた場合と逆になる。
【0084】
累積遅延差が最大の時にリセットされると、リードポインタとライトポインタとは、同図の一番上に示すように、10アドレスだけ離れた状態となる。
【0085】
累積遅延差が最大の時にリセットされた場合、同図(A)に示すように、その後まず、累積遅延差が最大から次第に減少するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に早くなり、同図の上から1〜3番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に短くなる。
続いて、同図の上から4番目に示すように、入力データがFF3に書き込まれ、かつ、出力データがFF2から読み出される。この状態は、累積遅延差が最小の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も短い状態である。
【0086】
続いて、同図(A)に示すように、累積遅延差が最小値から次第に増加するため、出力クロックの周波数が変調されていない場合と比べて、出力クロックの読み出しタイミングが次第に遅くなり、同図(B)の上から5番目に示すように、リードポインタとライトポインタとの間隔が次第に長くなり、同図(B)の一番上に示す状態に戻る。以後同様に、出力データが読み出される。
同図(B)の一番上の状態は、累積遅延差が最大の場合であり、リードポインタからライトポインタまでの間隔が最も長い状態である。
【0087】
このように、累積遅延差が最大の時にリセットされた場合、リードポインタとライトポインタとの間隔は、10アドレスだけ離れた状態から次第に短くなって最も短い状態となり、その後、次第に長くなって最も長い状態となることを繰り返す。
この場合も、入力データをFiFoメモリ18aに書き込んでから、FiFoメモリ18aから出力データを読み出すまでのレイテンシを1〜累積遅延差の最大値のアドレスとすることができ、レイテンシを最低限の範囲に固定することができる。
【0088】
図1に示す本実施形態のEMI低減回路10は、
図9に示す従来のEMI低減回路44において、SSCG12aからリセット部24aへ接続される1本の基準パルス信号の追加と、ポインタ異常保持部22の追加と、リセット部24aにおける回路の追加(修正)を行うだけで実現することができる。
このように、本実施形態のEMI低減回路10では、SSCG12aの内部に存在している信号を使用し、かつ、わずかな回路を追加するだけで、SSCG用のFiFoメモリ18aを構成するセルの段数を約半分に削減することができる。
【0089】
また、本実施形態のEMI低減回路10は、従来のEMI低減回路44と入出力の信号は同じであり、
図8に示す、EMI低減回路44を備える半導体集積回路40のチップトップのブロック構成も同じである。
そのため、チップトップ直下で、従来のEMI低減回路44を本実施形態のEMI低減回路10に置き換えるだけで、本実施形態のEMI低減回路10を既存チップへも容易に適用することができる。
【0090】
なお、EMI低減回路10の各構成要素の具体的な構成は何ら限定されず、同様の機能を果たす各種構成の回路を採用することができる。また、各信号の極性も何ら限定されず、適宜変更することができる。
【0091】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。